特許第5732273号(P5732273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5732273耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732273
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   B32B15/08 G
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-29016(P2011-29016)
(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公開番号】特開2011-224975(P2011-224975A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2013年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2010-77367(P2010-77367)
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503378420
【氏名又は名称】新日鐵住金ステンレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100129403
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 裕士
(72)【発明者】
【氏名】松山 宏之
(72)【発明者】
【氏名】有吉 春樹
(72)【発明者】
【氏名】安田 洋一郎
【審査官】 平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−313630(JP,A)
【文献】 特開2007−098883(JP,A)
【文献】 特開2008−149607(JP,A)
【文献】 特開2004−050657(JP,A)
【文献】 特開2005−028851(JP,A)
【文献】 特開平10−193508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00〜 43/00
C09D 1/00〜 10/00
101/00〜201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の片面または両面に塗布されたクリヤ塗装膜と、を具備してなり、
前記クリヤ塗装膜は、
水酸基、カルボキシル基またはアルコキシシラン基のうち1種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が30〜90℃であり、数平均分子量が3000〜50000であるアクリル樹脂(A1)、前記アクリル樹脂(A1)を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂(A2)、を含む熱硬化性樹脂組成物(A)と、
前記熱硬化性樹脂組成物の固形分100質量部あたり0.5〜4.0質量部の樹脂ビーズ(B)と、を含有し、前記樹脂ビーズ(B)の平均粒径が、2.4〜5.0μmであり、かつ前記クリヤ塗装膜の膜厚の0.8〜1.0倍であることを特徴とする耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項2】
前記クリヤ塗装膜の膜厚が、3〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
【請求項3】
前記樹脂ビーズが、架橋型アクリル樹脂ビーズ、架橋型ウレタン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズのうちの1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
クリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス特有の美麗な金属光沢を活かした高級感のある外観が得られることから、家電製品の筐体や内装材、表装材に使われるケースが多くなってきた。しかし、クリヤ塗装ステンレス鋼板は、表面光沢が非常に高いのが特長であるがゆえに、鋼板の巻取り時の圧力により発生するプレッシャーマークや、塗装表面の擦り疵が目立ちやすいという問題がある。
【0003】
耐疵付き性及び加工性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板として、2コート2ベイク方式で下塗を低弾性率塗膜で高膜厚に塗布し、上塗には高弾性率塗膜で低膜厚に塗布することで、加工性と耐疵付き性を高めたクリヤ塗装ステンレス鋼板の製造方法が報告されているが(たとえば、特許文献1)、2コート2ベイクという塗装工程でなければならないことや、下塗と上塗の塗料を区別するとともに、膜厚もそれぞれコントロールしなければならない必要性があり、非常に煩雑な塗装管理が要求され、作業性面を考慮すると現実的でない。
【0004】
また、母材の表裏両面塗装方式で、裏面塗装部に樹脂粒子を添加することによる耐プレッシャーマークの改善が報告されている(特許文献2)。通常、普通鋼による塗装鋼板の場合、さびを抑制するために裏面塗装することが多いが、製造された塗装鋼板を使用した製品によっては、裏面への塗装自体が制限される場合があるほか、裏面用に特殊な塗装を行う必要があることから余分なコストアップに繋がる。
【0005】
さらには、2コート2ベイクのプレコート鋼板の上塗り塗膜に粒径を規定した樹脂ビーズを添加することによる耐プレッシャーマークの改善方法が報告されている(特許文献3)。しかし、プレコート鋼板は、塗膜の膜厚が厚く、またビーズ粒径が大きいため、ステンレスクリヤ塗装へ適用することは意匠性の観点から困難である。
【0006】
なお、樹脂ビーズ量を規定した先行技術として、ステンレスクリヤ塗装の意匠性を1コート1ベイクで改善したものがある(特許文献4)。しかし、製造時の耐プレッシャーマーク性については述べられていない。
【0007】
かかる耐プレッシャーマーク性や耐擦り疵性と加工性のバランスがとれ、かつ短時間焼付けが可能という作業性に優れた1コート1ベイク方式でのクリヤ塗装ステンレス鋼板は未だ開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−15439号公報
【特許文献2】特開2005−28851号公報
【特許文献3】特開平10−193508号公報
【特許文献4】特開2005−313630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、ステンレス鋼板のクリヤ塗装の意匠性を劣化させるような、ステンレス鋼板の巻取り時の圧力により発生するプレッシャーマーク及び擦り疵が目立ちにくく、1コート1ベイクという生産性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板を検討した結果、熱硬化系アクリル樹脂組成物の特性と所定の量のアクリル樹脂ビーズを添加することが有効であることを見出した。しかしながら、製造コストの観点から量産製造時のコイル単重を大きくすると、プレッシャーマークを必ずしも回避できないことも見出した。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、量産製造時にコイル単重を大きくできるような経済的に優れ、耐プレッシャーマーク性と耐疵付き性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこでさらなる検討を行った結果、樹脂ビーズの選定とクリヤ塗膜厚と樹脂ビーズ平均粒径の関係が重要であるとの知見を得たものであり、本発明に至った。
【0012】
(1) ステンレス鋼板と、前記ステンレス鋼板の片面または両面に塗布されたクリヤ塗装膜と、を具備してなり、
前記クリヤ塗装膜は、
水酸基、カルボキシル基またはアルコキシシラン基のうち1種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が30〜90℃であり、数平均分子量が3000〜50000であるアクリル樹脂(A1)、前記アクリル樹脂(A1)を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂(A2)、を含む熱硬化性樹脂組成物(A)と、
前記熱硬化性樹脂組成物の固形分100質量部あたり0.5〜4.0質量部の樹脂ビーズ(B)と、を含有し、前記樹脂ビーズ(B)の平均粒径が、2.4〜5.0μmであり、かつ前記クリヤ塗装膜の膜厚の0.8〜1.0倍であることを特徴とする耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
(2) 前記クリヤ塗装膜の膜厚が、3〜5μmであることを特徴とする(1)に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
(3) 前記樹脂ビーズが、架橋型アクリル樹脂ビーズ、架橋型ウレタン樹脂ビーズ、フッ素樹脂ビーズのうちの1種または2種以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板。
【発明の効果】
【0013】
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板によれば、アクリル樹脂と架橋硬化させる為の樹脂としてブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物に、添加量を規定した樹脂ビーズを含有させたクリヤ塗装膜を塗装することで、クリヤ塗装ステンレス鋼板の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性を高めることができる。
更に、本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板によれば、樹脂ビーズの平均粒径をクリヤ塗装膜の膜厚との関係で規定することで、クリヤ塗装ステンレス鋼板の耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板は、ステンレス鋼板の片面または両面に、クリヤ塗装用樹脂組成物からなるクリヤ塗装膜が塗布されてなるものである。クリヤ塗装用樹脂組成物は、アクリル樹脂(A1)及び架橋硬化樹脂(A2)を含む熱硬化性樹脂組成物(A)と、熱硬化性樹脂組成物(A)の固形分100質量部あたり0.5〜4.0質量部の樹脂ビーズ(B)と、を含有するものである。
【0015】
まず、クリヤ塗装用樹脂組成物のベース樹脂である熱硬化性樹脂組成物(A)について記述する。
【0016】
「熱硬化性樹脂組成物(A)」
熱硬化性樹脂組成物(A)は、水酸基、カルボキシル基またはアルコキシシラン基のうち1種以上の架橋性官能基を含み、ガラス転移点が30〜90℃であり、数平均分子量が3000〜50000であるアクリル樹脂(A1)と、前記アクリル樹脂を架橋硬化させるブロックイソシアネート樹脂及びアミノ樹脂よりなる架橋硬化樹脂(A2)と、を少なくとも含有する。
【0017】
「アクリル樹脂(A1)」
本発明における水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基などから選ばれる1種、2種の架橋性官能基を有するアクリル樹脂(A1)は、塗料用樹脂として既知の方法により得られるものである。
【0018】
アクリル樹脂(A1)は、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ラウリル等の脂肪族又は環式アクリート、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のエーテル類、スチレン、a−メチルスチレン等のスチレン類、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド系単量体等から選ばれる1種または2種以上の非官能性単量体を、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基等の架橋性官能基を持った重合性単量体の1種または2種以上と反応させることにより得ることができる。
【0019】
1分子中に水酸基1つ以上含有する重合性単量体としては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシアルキルエステル、プラクセルFM1〜5、FA−1〜5(ダイセル化学工業製)ラクトン変性水酸基含有ビニル重合モノマーを挙げることができる。また、ここに例示した化合物は何れも、水酸基とともに重合性不飽和二重結合を有する重合性単量体でもある。
【0020】
また、カルボキシル基を有する重合体単量体は、1分子中にカルボキシル基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する化合物であり、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。
【0021】
更に、アルコキシシラン基を有する重合体単量体は、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。ここに例示した化合物は、1分子中にアルコキシシラン基及び重合性不飽和二重結合をそれぞれ1つ以上含有する化合物でもある。
【0022】
以上の原料により調製されたアクリル樹脂(A1)は、水酸基、カルボキシル基、アルコキシシラン基等の架橋性官能基を1分子あたり、2個以上有することができる。
【0023】
また、アクリル樹脂(A1)の数平均分子量は3000〜50000の範囲が好ましく、特に4000〜20000の範囲にあるのが好ましい。数平均分子量が3000未満になると、架橋剤との反応性が乏しすぎて塗膜を形成できないので好ましくなく、数平均分子量が50000超だと、溶剤に対する溶解性が不足して樹脂液にならないので好ましくない。
【0024】
更に、アクリル樹脂(A1)のガラス転移点は30〜90℃が好ましく、さらには50〜90℃の範囲内にあるのがより好ましい。アクリル樹脂(A1)のガラス転移点が30℃未満の場合は、連続プレス時の摩擦、加工発熱のため鋼板表面の温度が80〜100℃に上昇することにより、塗膜の軟化を生じ、金型に塗膜樹脂が付着する。また、ガラス転移点が90℃超の場合には、ピンホール、レベリング不足等の塗装時の作業性が悪くなる。
【0025】
「架橋硬化樹脂(A2)」
次に、熱硬化性樹脂組成物(A)のもう一つの構成成分である架橋硬化樹脂(A2)は、ブロックイソシアネート樹脂とアミノ樹脂の混合物である。
【0026】
ブロックイソシアネート樹脂は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であり、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネート、該ポリイソシアネートのビューレットタイプの付加物、イソシアヌル環タイプ付加物等であり、これらのポリイソシアネートをフェノール類、オキシム類、活性メチレン類、ε−カプロラクタム類、トリアゾール類、ピラゾール類等のブロック剤で封鎖したものであり、ジブチルチンジラウリレート等の有機錫触媒がブロック剤の解離促進剤として使用される。
【0027】
ブロックイソシアネート樹脂の市販品としてはデスモジュールBL1100、BL1265MPA/X、VPLS2253/1、BL3475BS/SN、BL3272MPA、BL3370MPA、BL4265SN、デスモーサム2170、スミジュール3175(以上、住化バイエルウレタン(株)製)、デュラネート17B-60PX、TPA-B80X、MF-B60X、MF-K60X、E-402-B80T(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、バーノックDB-980K、D-550、B3-867、B4-887-60(以上、DIC(株)製)、コロネート2515、2507、2513(以上、日本ポリウレタン工業(株)製)などが挙げられ、これらを単独もしくは併用して使用してよい。
【0028】
アミノ樹脂は、アミノ化合物(メラミン、グアナミン、尿素)とホルムアルデヒド(ホルマリン)を付加反応させ、アルコールで変性した樹脂を総称し、塗料用樹脂としてはメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化尿素メラミン樹脂、グリコールウリル樹脂、アセトグアナミン樹脂、シクロヘキシルグアナミン樹脂があるが、その中でも熱硬化性に起因する耐疵付き性、耐薬品性という面からメラミン樹脂が好ましい。変性するアルコールの種類によってメチル化メラミン樹脂、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、混合アルキル化メラミン樹脂等に分かれる。
【0029】
メチル化メラミン樹脂としては、サイメル300、301,303、350、370、771、325、327、703、712、715、701、267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック(株)製)、LUWIPAL063、066、068、069、072、073(以上BASF(株)製)、スーパーベッカミンL-105(以上、DIC(株)製)、メラン522、523、620、622、623(以上、日立化成工業(株)製)を例示できる。
また、n-ブチル化メラミン樹脂としては、マイコート506、508(以上、三井サイテック(株)製)、ユーバン20SB、20SE、21R、22R、122、125、128、220、225、228、28-60、20HS、2020、2021、2028、120(以上、三井化学(株)製)、PLASTOPAL EBS 100A、100B、400B、600B、CB(以上、BASF(株)製)スーパーベッカミンJ-820、L-109、L-117、L-127、L-164(以上、DIC(株)製)、メラン21A、22、220、1303、2000、2030、8000(以上、日立化成工業(株)製)、テスアジン3020、3021、3036(以上、日立化成ポリマー(株)製)を例示できる。
更に、イソブチル化メラミン樹脂としては、ユーバン60R、62、62E、360、361、165、166-60、169、2061(以上、三井化学(株)製)、スーパーベッカミンG-821、L-145、L-110、L-125(以上、DIC(株)製)、PLASTOPAL EBS 4001、FIB、H731B、LR8824(以上、BASF(株)製)メラン27、28、28D、245、265、269、289(以上、日立化成工業(株)製)を例示できる。
更にまた、混合アルキル化メラミン樹脂としては、サイメル267、285、232、235、236、238、211、254、204、212、202、207(以上、三井サイテック(株)製)などを例示できる.
これらは、単独もしくは併用で使用しても良い。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物(A)におけるアクリル樹脂(A1)と架橋硬化樹脂(A2)の両成分の構成比率は目的に応じ広い範囲内にわたり変えることができ、アクリル樹脂(A1)中の(OH+COOH)基1モルに対して、ブロックイソシアネート樹脂中のイソシアネート基が0.1〜1.0モル、好ましくは0.2〜0.8モルが良い。またアミノ樹脂はアクリル樹脂(A1)固形分100質量部に対して5〜25質量部、好ましくは8〜15質量部とすることが良い。架橋硬化樹脂(A2)の添加量が少ないと耐擦り性に劣り、添加量が多くなると曲げ加工性が劣るため、加工時に塗膜に微細クラックが入り耐食性の低下につながる。
【0031】
一般にアミノ樹脂の硬化触媒としては、スルホン酸系やアミン系の触媒が使用されるが、本発明の特長である短時間焼付けを可能とする目的にはスルホン酸系触媒であるP−トルエンスルホン酸やドデシルベンゼンスルホン酸が好ましく、熱硬化性樹脂組成物(A)の固形分100質量部あたり固形分量で0.1〜3.0質量部、好ましくは0.3〜1.0質量部含有することが望ましい。アミノ樹脂の硬化触媒が0.1質量部以下では、その効果が得られず、3質量部以上では硬化が飽和するだけでなく、加工性も劣化する。
【0032】
また、ブロックイソシアネート樹脂の硬化触媒としては、ジ-n-ブチルチンオキサイド、n-ジブチルチンクロライド、ジ-n-ブチルチンジラウリレート、ジ-n-ブチルチンジアセテート、ジ-n-オクチルチンオキサイド、ジ-n-オクチルチンジラウリレート、テトラ-n-ブチルチン等が挙げられ、それぞれ必要に応じて添加すればよく、単独もしくは、混合して使用しても良い。
【0033】
クリヤ塗装用樹脂組成物には、更に添加剤としてレベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、艶消し剤、シランカップリング剤等を混合させ、塗料化しても良いし、顔料又は染料を分散させ、カラークリヤとすることやアルミペーストやパール顔料などの光輝材を混合して意匠性を出してもよい。また、必要に応じてエポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂等を含んで良い。
【0034】
このような組成のアクリル樹脂(A1)と架橋硬化樹脂(A2)を含むことで、1コート1ベイクでステンレス特有の美麗な外観を活かしたクリヤ塗装ステンレス鋼板の製造が可能となる。
【0035】
「樹脂ビーズ(B)」
続いて、クリヤ塗装ステンレス鋼板の品質を確保するために重要な耐プレッシャーマーク性と耐疵付き性を発現させる樹脂ビーズ(B)について述べる。
【0036】
本発明のクリヤ塗装用樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物(A)の100質量部あたり、樹脂ビーズ(B)を0.5〜4.0質量部含有する。
含有する樹脂ビーズ量が0.5質量部未満では、耐疵付き性の効果が得られない。また、4.0質量部超では、クリヤ塗装膜の透明性が劣化すると共に、塗装作業性も低下する。この樹脂ビーズ量は、特には1.0〜3.0質量部が好ましく、さらには1.0〜2.0質量部が好ましい。
【0037】
樹脂ビーズ(B)は、クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の0.20〜3.0倍の平均粒径を用いることが好ましい。クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の0.20〜3.0倍の平均粒径の樹脂ビーズを用いることにより、クリヤ塗装膜の表面光沢を著しく落とすことなく本発明の特徴である良好な耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性が得られる。塗装必要膜厚の0.20倍未満では、樹脂ビーズの粒径が小さすぎる為に、骨材としての機能が低下し、耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性に効果がない。塗装必要膜厚の3.0倍超になると塗膜表層の樹脂ビーズの頭出しが多くなり表面にざらつきが出て、且つ表面光沢が落ちる。
樹脂ビーズ(B)の平均粒径は、クリヤ塗装膜の塗装必要膜厚の0.3〜2.0倍が特に好ましく、さらには0.5〜1.3倍が好ましい。さらに望ましいのは0.8〜1.0倍である。樹脂ビーズ(B)の平均粒径は一般にレーザー回折法による粒度分布から求められる。
【0038】
樹脂ビーズ(B)には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾクアナミン樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等があるが、本目的である耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性を得るには樹脂本来の硬さが必要であることからアクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。また、塗料が溶剤系であるため耐溶剤性が必要なことから、架橋型の樹脂ビーズが好ましい。
【0039】
架橋型アクリル樹脂ビーズには、アートパールA-400、G-200、G-400、G-600、G-800、GR-200、GR-300、GR-400、GR-600、GR-800、J-4P、J-5P、J-7P、S-5P(以上、根上工業(株)製)、テクポリマーMBX-8、MBX-12、MBX-15、MBX-30、MBX-40、MBX-50、MB20X-5、MB20X-30、MB30X-5、MB30X-8、MB30X-20、BM30X-5、BM30X-8、BM30X-12、ARX-15、ARX-30、MBP-8、ACP-8(以上、積水化成品工業(株)製)、ケミスノーMX-150、MX-180TA、MX-300、MX-500、MX-500H、MX-1000、MX-1500H、MX-2000、MX-3000、MR-2HG、MR-7HG、MR-10HG、MR-3GSN、MR-2G、MR-7G、MR-10G、MR-20G、MR-30G、MR-60G、MR-90G(以上、綜研化学(株)製)、スタフィロイドAC-3355、AC-3816、AC-3832、AC-4030、AC-3364、GM-0401S、GM-0801、GM-1001、GM-2001、GM-2801、GM-4003、GM-5003、GM-9005、GM-6292等が例示される。
また架橋型ウレタン樹脂ビーズには、アートパールC-100、C-200、C-300、C-400、C-800、CZ-400、P-400T、P-800T、HT-400BK、U-600T、CF-600T、MT-400BR、MT-400YO(以上、根上工業(株)製)等が例示される。
更に、フッ素樹脂ビーズにはDYNEON PTFE マイクロパウダー TF-9201、TF-9205、TF-9207(以上、住友3M(株)製)、Fluon PTFE ルブリカント L-150J、L-169J、L-170J、L-172J、L-173J(以上、旭硝子(株)製)等が例示される。
これらはそれぞれ必要に応じて添加すればよく、単独もしくは、混合して使用しても良い。
【0040】
また、クリヤ塗装用樹脂組成物の他の添加成分として、ポリエチレンワックスやラノリンワックス等のワックスを配合すれば、スリック性が向上し耐擦り疵性をさらに向上させる。
【0041】
また、クリヤ塗装用樹脂組成物を着色するために、各種透明性のある有機顔料および無機顔料を添加しても良い。また、クリヤ塗装用樹脂組成物の意匠性を向上するために各種パール顔料、アルミペースト等の光輝材を含有してもよい。その場合、意匠性に対する要求がより厳しくなり、従来の透明クリヤであればほとんど問題ないならない程度の微小なプレッシャーマークや擦り疵であっても問題となる場合があり、より好ましい範囲での塗膜厚管理や樹脂ビーズ粒径管理が必要となる。そのためには分散工程を経ることで樹脂ビーズ粒径分布をより狭いものにして添加するなどの手法が望ましい。
【0042】
本発明のクリヤ塗装ステンレス鋼板におけるクリヤ塗装膜の膜厚は、1〜10μmが望まく、さらには2〜6μmが望ましい。より好ましくは3〜5μmである。膜厚が10μmを超えると1コート1ベイクでの塗装作業性が劣化するとともに、クリヤ塗膜の曲げ加工性が低下して、曲げ加工時に微小クラックが入り耐食性の低下につながる。さらに膜厚が厚くなると、耐プレッシャーマーク性を確保するために添加する樹脂ビーズの平均粒径を大きくする必要があるが、樹脂ビーズの平均粒径が大きくなるとクリヤ塗装ステンレス鋼板としての意匠性が低下する。また、膜厚が1μm未満では、膜厚コントロールが困難になり、意匠性が低下する。
【0043】
ステンレス鋼板には、クリヤ塗装膜を塗装する前に、化成処理を実施しておくことが好ましい。化成処理液としては、環境問題を考慮したときノンクロメートが好ましい。一般にはアミノシラン系、エポキシシラン系カップリング剤が好ましく、付着量が2〜50mg/m(蛍光X線にてSiO量を測定)になるように処理し、ステンレス鋼板素材の表面到達温度(PMT)が60〜140℃程度で焼付け乾燥される。
【0044】
アミノシラン系カップリング剤としては、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
また、エポキシ系シランカップリング剤としては、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。
これらは、単独もしくは混合して使用しても良い。
【0045】
化成処理液の塗布は、スプレー、ロールコート、カーテンフローコート、静電塗布等の方法を用いて行うことができる。
【0046】
乾燥は、水分を蒸発させれば良く、その温度はステンレス鋼板素材の表面到達温度(PMT)にして60〜140℃が適当である。この処理に際し、必要に応じてアルカリ脱脂や酸、アルカリによるエッチング等の公知の前処理を施しても構わない。
【0047】
クリヤ塗装膜は、ステンレス鋼板の表面側だけではなく、裏面にも施してもいい。また、ステンレス鋼板の裏面はクリヤ塗装でなくても構わない。ステンレス鋼板の裏面の塗装膜厚は1〜6μm程度であればよい。樹脂種は特に限定されないが、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系などが用いられる。裏面塗装があれば耐プレッシャーマーク性は良好となる。
【0048】
本実施形態のクリヤ塗装ステンレス鋼板によれば、アクリル樹脂を架橋硬化させるための架橋性硬化樹脂としてブロックイソシアネート樹脂およびアミノ樹脂を含有させ、更に一定粒径の架橋系樹脂ビーズを添加したクリヤ塗装膜を塗装することで、耐プレッシャーマーク性及び耐擦り疵性を良好にできる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例および比較例について説明する。
温度計、還流冷却器、攪拌器、滴下ロート、窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに表1の通りトルエン、酢酸ブチルを規定量入れ、110℃まで昇温し窒素ガスを吹き込みながら攪拌し、メタアクリル酸メチル、スチレン、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)から選ばれる原料の混合物を3時間かけて滴下し、滴下終了後さらにAIBNを追加して同温度でさらに3時間反応させることにより、不揮発分50重量%のアクリル系共重合体(アクリル樹脂)を得た。
なお、表1に、アクリル樹脂の数平均分子量及びガラス転移点を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
得られたアクリル樹脂に、表1に示す架橋性硬化樹脂を混合することにより、熱硬化性樹脂組成物A−1〜B−2を得た。なお、架橋性硬化樹脂のブロックイシシアネートは、NCO基含有率が10.5%のデスモジュールVPLS2253(住化バイエルウレタン(株)製)を用いた。また、メラミン樹脂には、サイメル327(三井サイテック(株)製)を用いた。アクリル樹脂と架橋性硬化樹脂との混合比は表1に記載の通りである。なお、表1の配合比は質量部である。
【0052】
得られた熱硬化性樹脂組成物A−1〜B−2に、表2〜4に示す添加成分及び樹脂ビーズを混合することにより、実施例1〜8、12〜14、参考例9〜11及び比較例1〜5のクリヤ塗装用樹脂組成物を得た。なお、表2〜表4の配合は全て質量部である。ただし、混合時に添加したシンナーは乾燥時に揮発するため、熱硬化性樹脂組成物の固形分100重量部あたりの樹脂ビーズ質量部を、「樹脂ビーズ/熱硬化性樹脂組成物固形分」として記載した。
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
ステンレス鋼板としては、SUS430/No.4研磨仕上げ材を用いた。
【0057】
これらのステンレス鋼板上にノンクロメートの化成処理液をロールコーターにて蛍光X線にてSiO2が2〜10mg/mになるように塗装し、表面到達温度(PMT)が100℃になるよう乾燥させた。
【0058】
続いて得られたクリヤ塗装用樹脂組成物を、塗付量3.0〜4.0g/mとなるようバーコーターにて塗装し、表面到達温度(PMT)が232℃になるように焼付けて、表2〜表3に示す実施例1〜7及び比較例1〜5のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
また、表4に示すように、塗膜厚さと樹脂ビーズ平均粒径の影響を確認するために、塗膜厚さを3、10、18μmとなるように実施例8、参考例9〜11のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
更に、表4に示すように、樹脂ビーズの種類の影響を確認するために、実施例12〜14のクリヤ塗装ステンレス鋼板を得た。
【0059】
尚、表2〜4中、熱硬化性樹脂組成物の質量部は固形分表示であり、酸触媒(P-トルエンスルホン酸)及びスズ触媒(ジ-n-ブチルチンジラウリレート)、レベリング剤や消泡剤(ともにアクリル系樹脂)は有効成分としての表示である。なお、樹脂ビーズA〜Cはガンツ化成製の架橋型アクリル樹脂ビーズであり、平均粒径は樹脂ビーズAが3μm、Bが7μm、Cが10μmである。
また、樹脂ビーズDは、根上工業製の架橋型ウレタン樹脂ビーズであり、平均粒径は3μmである。更に、樹脂ビーズEは、旭硝子製のフッ素系樹脂ビーズであり、平均粒径は3μmで有る。
さらに、実施例14に用いた樹脂ビーズFは、BYK−Chemie製のPE樹脂ビーズであり、平均粒径は3.5μmである。
また、ポリエチレンワックスは、CERAFLOUR 961(BYK−Chemie(ビックケミー)社製)の平均粒径3.5μmのものを用いた。
【0060】
実施例1〜8、12〜14、参考例9〜11及び比較例1〜5のクリヤ塗装ステンレス鋼板について、耐プレッシャーマーク性、耐擦り疵性、クリヤ塗装膜の加工性、硬さ、光沢度及び耐薬品性を調べた。
評価方法は以下の通りである。結果を表2〜4に示す。
【0061】
(1)耐プレッシャーマーク性
供試材を2枚重ね、40℃の雰囲気で10kg/cmの圧力でプレスし、24時間後にその耐プレッシャーマーク性を評価した。評価はランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:プレッシャーマークがない(合格)
ランク4:ほとんどプレッシャーマークが目立たない(合格)
ランク3:見る角度によっては、はっきりとプレッシャーマークが確認できる(不合格)
ランク2:プレッシャーマークによって色調・光沢の劣化が見られる。(不合格)
ランク1:著しく光沢が低下し、どの方向からもプレッシャーマークが確認できる(不合格)
【0062】
(2)耐擦り疵性
摩擦子を、クレンザーを染み込ませたガーゼとして、供試材に対して荷重200gで50往復研磨した後、その耐擦り疵性を評価した。評価はランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:擦り疵がない(合格)
ランク4:ほとんど擦り疵が目立たない(合格)
ランク3:はっきりと擦り疵が確認できる(不合格)
ランク2:擦り疵で塗膜の光沢がなくなっている(不合格)
ランク1:塗膜が削れ、素地に達している(不合格)
【0063】
(3)塗膜の加工性
JIS K5600 5−2(耐カッピング性)に従って評価した。評価は、クラックが生じた深さによって、ランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:7mm以上(合格)
ランク4:5〜7mm(合格)
ランク3:3〜5mm(不合格)
ランク2:1〜3mm(不合格)
ランク1:1mm以下(不合格)
【0064】
(4)塗膜表面硬さ
JIS K5600 5−4 引っかき硬度(鉛筆法)に従って評価した。評価は、下記のランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:4H以上(合格)
ランク4:3H(合格)
ランク3:2H(不合格)
ランク2:H(不合格)
ランク1:H未満(不合格)
【0065】
(5)光沢度
JIS K5600 4−7 鏡面光沢度に従って評価した。評価は、下記のランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:100以上(合格)
ランク4:80〜100(合格)
ランク3:60〜80(不合格)
ランク2:40〜60(不合格)
ランク1:40未満(不合格)
【0066】
(6)耐薬品性
5%硫酸と5%水酸化ナトリウムを供試材に2mL滴下し、蓋をしたのち、16時間後の塗膜の状態を観察、評価した。評価は、下記のランク1〜5の5段階で評価した。
ランク5:跡が全く無い(合格)
ランク4:跡が僅かに認められる(合格)
ランク3:跡がやや目立つ(不合格)
ランク2:跡が濃く残る(不合格)
ランク1:剥離する(不合格)
【0067】
実施例1〜8、12〜14、参考例9〜11については、アクリル樹脂を架橋硬化させる樹脂としてブロックイソシアネート樹脂とアミノ樹脂を含有する熱硬化性樹脂組成物に、所定の量および平均粒径の樹脂ビーズを含有する事で、耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性に優れたクリヤ塗装ステンレス鋼板が得られることが分かる。
つまり、実施例1〜8、参考例9、実施例12、13は、A−1〜A−4の熱硬化性樹脂組成物と、所定の量の樹脂ビーズとを含み、樹脂ビーズ平均粒径/塗装厚が0.20〜3.0倍であることから、耐プレッシャーマーク性と耐すり疵性のいずれか一方または両方の評価が5と大変良好であった。また、参考例10、11は樹脂ビーズの平均粒径に対して塗膜厚が薄い場合と厚い場合の例であるが、所定の量の樹脂ビーズを含有しているため耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性は合格レベルであった。さらに、実施例14は樹脂ビーズの種類がPEのものであるが、所定の量の樹脂ビーズを含有しているため耐プレッシャーマーク性及び耐すり疵性は合格レベルであった。
【0068】
一方、比較例について、B−1の熱硬化性樹脂組成物を用いたもの(比較例1)は耐プレッシャーマーク性や耐擦り疵性だけではなく、クリヤ塗装膜の一般的な特性として重要な、加工性、硬さ及び耐薬品性に劣っていた。また、B−2の熱硬化性樹脂組成物を用いたもの(比較例2)は、全ての評価項目において劣っていた。
樹脂ビーズ含有量が少ないもの(比較例3)は、耐プレッシャーマーク性及び塗膜の加工性に劣る。
また、樹脂ビーズ含有量が多いもの(比較例4,5)では耐プレッシャマーク性や耐擦り疵性には優れるが、塗膜の加工性およびクリヤ塗装ステンレス鋼板の意匠性として重要な光沢度で劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0069】
以上述べたように、本発明は家電製品の筐体や内装材、外装に使用されるステンレス特有の美麗な金属光沢を活かしたクリヤ塗装ステンレス鋼板の意匠性を劣化させずに製造して提供することが可能となり、産業的価値は大きい。