(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、
図1〜14を参照しつつ、本願発明の第1実施形態を説明する。
【0010】
(大電流用コネクタ1:
図1、2)
図1に示す大電流用コネクタ1(電気コネクタ)は、例えばブスバーなどの導電部品に取り付けられるプラグコネクタ2(第1導電性部品)と、他の導電部品に取り付けられるレセプタクルコネクタ3(第2導電性部品)と、コンタクトユニット8(電気コンタクト)と、によって構成されている。
【0011】
プラグコネクタ2は、導電部品に取り付けられる被固定部4と、被固定部4から突出して形成されるピン形状(円柱形状)のプラグ部5と、によって構成されている。
【0012】
レセプタクルコネクタ3は、導電部品に取り付けられる被固定部6と、被固定部6から突出して形成される円筒形状のソケット部7と、によって構成されている。
【0013】
コンタクトユニット8は、
図2に示すようにソケット部7の内周面7aに形成されている窪みに取り付けられて用いられる。
【0014】
以上の構成で、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3を導通させるには、
図2に示すようにレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aにコンタクトユニット8を予め取り付けた状態で、
図1のプラグコネクタ2のプラグ部5をレセプタクルコネクタ3のソケット部7に挿入する。すると、コンタクトユニット8は、プラグ部5の外周面5aとソケット部7の内周面7aとの間に介在しつつ、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3を相互に導通させるようになっている。
【0015】
(コンタクトユニット8:
図3、4)
図3及び
図4は、コンタクトユニット8の部分展開図である。
図1及び
図2に示すように、本実施形態においてコンタクトユニット8は略C字状に丸められた状態で使用されるが、説明の便宜上、
図3及び
図4には、コンタクトユニット8の展開された状態を描いている。詳しくは、
図3にはプラグ部5側から見たコンタクトユニット8の展開状態を示しており、
図4にはソケット部7側から見たコンタクトユニット8の展開状態を示している。なお、
図3及び
図4において二点鎖線は、コンタクトユニット8を部分的に図示するための仮想切断線である。
【0016】
図3及び
図4に示すように、コンタクトユニット8は、一対のコンタクトエレメント10を重ね合わせるようにして構成されている。また、本実施形態においてコンタクトユニット8は、一対のコンタクトエレメント10を完全同一形状としている。従って、先ずはコンタクトエレメント10単体の形状を説明し、次いで、
図3及び
図4に示すような一対のコンタクトエレメント10の結合状態を説明することとする。
【0017】
(コンタクトエレメント10:
図5〜8)
図5に示すように、コンタクトエレメント10は、各々が細長い形状を有する複数のコンタクト梁部15と、複数のコンタクト梁部15が相互に略平行となるように複数のコンタクト梁部15を連結するコンタクト連結部16と、によって構成されている。
【0018】
ここで、説明の便宜上、
図5〜7において、「周方向」及び「軸方向」、「内周側(第1導電性部品側)」、「外周側(第2導電性部品側)」を定義する。即ち、
図5及び
図6において「周方向」とあるのは、
図2に示すようにコンタクトユニット8が丸められてソケット部7内に取り付けられた状態におけるソケット部7の周方向に相当している。
図5及び
図6に示すように、コンタクト連結部16は周方向に延びて形成されている。また、
図5及び
図7において「軸方向」とあるのは、
図2に示すようにコンタクトユニット8が丸められてソケット部7内に取り付けられた状態におけるソケット部7の軸方向に相当している。
図5及び
図7に示すように、コンタクト梁部15は軸方向に延びて形成されている。
図6及び
図7において「内周側」とあるのは、プラグ部5側に相当している。同様に、
図6及び
図7において「外周側」とあるのは、ソケット部7側に相当している。
【0019】
(コンタクト梁部15)
図5に示すように、複数のコンタクト梁部15は、相互に略平行となるように一定の間隔をあけて並べて配置されている。また、各コンタクト梁部15は、コンタクト連結部16に支持された片持ち梁状に形成されている。
【0020】
各コンタクト梁部15は、本体部20とプラグ接触部21(第1接触部)、ソケット接触部22(第2接触部)、係合部23を有している。
【0021】
(本体部20)
本体部20は、コンタクト梁部15の基礎となる部分であって、軸方向に延びて形成されている。本体部20は、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bに向かって順に、第1捻り部20a(捻り部)と傾斜部20b、第2捻り部20c(捻り部)によって構成されている。
【0022】
第1捻り部20aは、傾斜部20bとコンタクト連結部16の間に配置されている。第1捻り部20aは、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに、コンタクトエレメント10の無負荷状態で、コンタクト連結部16を基準として反時計回りに捻られるように形成されている。
【0023】
傾斜部20bは、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに、コンタクトエレメント10の無負荷状態で、コンタクト連結部16に対して反時計回りに傾斜するように形成されている(
図6も併せて参照)。
【0024】
第2捻り部20cは、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに、コンタクトエレメント10の無負荷状態で、コンタクト連結部16を基準として時計回りに捻られるように形成されている。
【0025】
このように本体部20が第1捻り部20aと傾斜部20b、第2捻り部20cによって構成されていることで、本体部20は、両端を除く中途部(プラグ接触部21及びソケット接触部22を含む。)のみが傾斜したような形状となっている。
【0026】
(プラグ接触部21、ソケット接触部22)
プラグ接触部21は、本体部20の傾斜部20bに形成されている。プラグ接触部21は、本体部20の傾斜部20bのうち第1捻り部20aの近傍に形成されている。
【0027】
ソケット接触部22は、本体部20の傾斜部20bに形成されている。ソケット接触部22は、本体部20の傾斜部20bのうち第2捻り部20cの近傍に形成されている。
【0028】
そして、プラグ接触部21とソケット接触部22は、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに(
図6も併せて参照)、本体部20(傾斜部20b)を挟んで反対側となるように配置されている。
【0029】
プラグ接触部21は、プラグコネクタ2をレセプタクルコネクタ3に嵌合した際に、
図1に示すプラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aに対して接触する部分である。プラグ接触部21は、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに(
図6も併せて参照)、内周側に膨らみ出るように湾曲して形成されている。
【0030】
ソケット接触部22は、コンタクトユニット8がレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aの窪みに取り付けられた際に、
図1に示すレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aに対して接触する部分である。ソケット接触部22は、コンタクト梁部15の固定端15aから自由端15bを見たときに(
図6も併せて参照)、コンタクト連結部16に対して略平行となるように、本体部20(傾斜部20b)に対して傾斜して形成されている。
【0031】
(係合部23)
係合部23は、コンタクト梁部15の自由端15bに形成されている。係合部23は、
図7に示すように、本体部20に対して折り曲げられて形成されている。係合部23は、外周側に向かって折り曲げられて形成されている。
【0032】
そして、
図5及び
図6に示すように、複数のコンタクト梁部15は、何れも同じ姿勢となるように、コンタクト連結部16に支持されている。
【0033】
(コンタクト連結部16)
図5に示すように、コンタクト連結部16には、複数の被係合孔24が形成されている。各被係合孔24は、詳しくは、コンタクト連結部16のうち、コンタクト梁部15の固定端15aと、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15の固定端15aと、から略等しい距離となる部分に形成されている。
【0034】
以上に説明したコンタクトエレメント10は、
図8に示すように、例えばベリリウム銅板などの金属板材(導電性板材)をパンチ加工及び折り曲げ加工し、その後に銀メッキ処理を施すことで形成される。コンタクト梁部15の周方向におけるピッチは例えば2.5mmとされ、コンタクト梁部15の軸方向における長さは例えば10〜13mmとされる。
【0035】
(一対のコンタクトエレメント10の結合状態:
図9、10)
次に、一対のコンタクトエレメント10の結合状態について説明する。一対のコンタクトエレメント10を結合するに際しては、
図9及び
図10に示すように、先ず、一方のコンタクトエレメント10を他方のコンタクトエレメント10に対して180度、向きを変える。即ち、一方のコンタクトエレメント10のコンタクト連結部16と、他方のコンタクトエレメント10のコンタクト連結部16と、の間にすべてのコンタクト梁部15が収まるように、一方のコンタクトエレメント10を他方のコンタクトエレメント10に対して向きを変える。
【0036】
次に、一方のコンタクトエレメント10の複数のコンタクト梁部15と、他方のコンタクトエレメント10の複数のコンタクト梁部15と、が同じような間隔で交互に並ぶように、一対のコンタクトエレメント10を位置決めする。このとき、
図9に示すように、各コンタクト梁部15のプラグ接触部21が、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15の本体部20から見て内周側に位置するように留意する。また、
図10に示すように、各コンタクト梁部15のソケット接触部22が、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15の本体部20から見て外周側に位置するように留意する。そして、各コンタクトエレメント10の各コンタクト梁部15の係合部23を、他方のコンタクトエレメント10のコンタクト連結部16の各被係合孔24に係合させる。以上により、一対のコンタクトエレメント10の結合は完了する。
【0037】
このように一対のコンタクトエレメント10を結合させると、
図9及び
図10に示すように、一対のコンタクトエレメント10を組み合わせた状態で、コンタクト梁部15のプラグ接触部21と、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15のプラグ接触部21とは、コンタクト梁部15の長手方向(即ち、軸方向)においてズレて位置しており、もって、プラグ接触部21同士の物理的な相互干渉が効果的に回避されている。同様に、一対のコンタクトエレメント10を組み合わせた状態で、コンタクト梁部15のソケット接触部22と、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15のソケット接触部22とは、コンタクト梁部15の長手方向(即ち、軸方向)においてズレて位置しており、もって、ソケット接触部22同士の物理的な相互干渉が効果的に回避されている。
【0038】
なお、
図9及び
図10に示すように、一対のコンタクトエレメント10を組み合わせた状態で、第2捻り部20cは、傾斜部20bとコンタクト連結部16との間に配置されていると言うことができる。
【0039】
(作動)
次に、大電流用コネクタ1の作動を説明する。先ず、
図3及び
図4、
図9、
図10に示すようにコンタクトユニット8を組み立てたら、コンタクトユニット8を強く湾曲させ、
図2に示すレセプタクルコネクタ3のソケット部7内に挿入する。すると、コンタクトユニット8は、自己弾性復元力によってソケット部7の内周面7aに張り付き、図示しない内フランジによってコンタクトユニット8のソケット部7からの抜脱は禁止される。
【0040】
この状態で、レセプタクルコネクタ3のソケット部7にプラグコネクタ2のプラグ部5を挿入する。すると、プラグコネクタ2のプラグ部5は、コンタクトユニット8の複数のプラグ接触部21に対して接触すると共に、複数のプラグ接触部21を外周側へと押圧する。そして、この押圧により、第1に、プラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aと、コンタクトユニット8の各プラグ接触部21との接触圧が発生する。第2に、レセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aと、コンタクトユニット8の各ソケット接触部22との接触圧が強くなる。これら第1及び第2の事象により、プラグコネクタ2はレセプタクルコネクタ3と導通する。そして、第3に、プラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aの外径と、レセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aの内径と、の間の嵌合隙間量に応じて、各コンタクト梁部15のプラグ接触部21がレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aに対して近づくように、各コンタクト梁部15の本体部20がコンタクト連結部16に対して相対的に捻れ変形する。
【0041】
ここで、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3との間の主たる導通経路は、単一のコンタクト梁部15内で完結している。即ち、プラグコネクタ2のプラグ部5に供給された電荷は、コンタクト梁部15のプラグ接触部21と、コンタクト梁部15の本体部20と、コンタクト梁部15のソケット接触部22と、を介してレセプタクルコネクタ3のソケット部7に移動する。もし、プラグコネクタ2のプラグ部5による押圧によってコンタクト梁部15の本体部20が強く傾斜したことでコンタクト梁部15のプラグ接触部21がこのコンタクト梁部15に対して隣り合う他のコンタクト梁部15の本体部20に対して接触していた場合は、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3との間の導通経路として、以下の経路が追加される。即ち、プラグコネクタ2のプラグ部5に供給された電荷は、コンタクト梁部15のプラグ接触部21と、このコンタクト梁部15に対して隣り合う他のコンタクト梁部15の本体部20及びソケット接触部22と、を介してレセプタクルコネクタ3のソケット部7に移動することにより、より短い導電経路が追加される。
【0042】
(バイメタル構造:
図11〜14)
次に、
図5に示すコンタクト梁部15の本体部20の第1捻り部20aに適用されたバイメタル構造について説明する。
図11には、
図5のコンタクトエレメント10のコンタクト梁部15の本体部20から第1捻り部20aのみを抜き出した様子が示されている。本実施形態において第1捻り部20aは、通電時の発熱によってコンタクト連結部16に対する傾斜部20bの傾斜を強めるようなバイメタル構造が適用されている(
図5や
図6も併せて参照)。このようなバイメタル構造は、具体的には、
図11に示すように、第1捻り部20aの捻れ方向の裏面に相当する部位である裏面部70の熱膨張係数である第1熱膨張係数を、第1捻り部20aの捻れ方向の表面に相当する部位である表面部71の熱膨張係数である第2熱膨張係数よりも高くすることで実現している。即ち、上記のバイメタル構造は、熱膨張係数が17.8×10
-6[1/K](第2熱膨張係数)である基材としてのベリリウム銅cに、熱膨張係数が21.6×10
-6[1/K](第2熱膨張係数よりも高い第1熱膨張係数)であるアルミ合金gを貼り合わせた二層式のバイメタル構造とされている。更に詳しく言えば、
図11に示すように第1捻り部20aの肉厚は周方向において一定であるものの、アルミ合金gは周方向(コンタクト連結部16の長手方向)における第1捻り部20aの中央部72から離れるにつれて漸増する肉厚を有している。
【0043】
本実施形態では、
図5に示すコンタクト梁部15の本体部20の第2捻り部20cにも同一のバイメタル構造が適用されている。
【0044】
以上の構成で、大電流用コネクタ1に通電してコンタクトユニット8が発熱すると、
図12に示すように、第1捻り部20aのうちベリリウム銅cとアルミ合金gから成る二層式のバイメタル構造が適用された部分が一層反り返るような力pが発生してプラグ接触部21(
図5も併せて参照)をプラグ部5側に押し上げ、もって、
図1のプラグ部5の外周面5aに対する
図5のプラグ接触部21の接触圧が増大する。続けて、
図11に示すように、アルミ合金gが周方向(コンタクト連結部16の長手方向)における第1捻り部20aの中央部72から離れるにつれて漸増する肉厚を有しているので、第1捻り部20aのうちベリリウム銅cとアルミ合金gから成る二層式のバイメタル構造が適用された部分を反り返そうとする力p(
図12も併せて参照)は、中央部72から離れるほど強くなるように分布する。このように、反り返そうとする力pが中央部72から離れるほど強くなるように分布することで、第1捻り部20aには、
図12に示すように、力pを一層強力なものにするトルクTが発生する。そして、このトルクTは、ソケット接触部22をソケット部7側に押し下げるような力qも発生させ(同時にプラグ部5側に押し上げるような力も働く。)、もって、
図1のソケット部7の内周面7aに対する
図5のソケット接触部22の接触圧が増大する。これらの接触圧の上昇により、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3との間の通電時における接触抵抗を大幅に低減させることができる。
【0045】
このようなバイメタル構造を第1捻り部20aや第2捻り部20cに適用するには、
図13や
図14に示すように、基材となるベリリウム銅cの金属板材30のうち第1捻り部20aや第2捻り部20cに対応する部分のみを、打ち抜き加工前の段階で、ベリリウム銅cよりも熱膨張係数が高いアルミ合金gとの二層構造としておけばよい。
図13及び
図14に示す例では、アルミ合金gがベリリウム銅cよりも外周側となるような二層構造を採用している。
【0046】
以上に、本願発明の第1実施形態を説明したが、上記第1実施形態は、要するに、以下の特長を有している。
【0047】
即ち、コンタクトユニット8(電気コンタクト)は、プラグコネクタ2(第1導電性部品)とレセプタクルコネクタ3(第2導電性部品)との間に介在して、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3を相互に導通させるためのものである。コンタクトユニット8を構成するコンタクトエレメント10は、各々が細長い形状を有する複数のコンタクト梁部15と、複数のコンタクト梁部15が相互に略平行となるように複数のコンタクト梁部15を連結するコンタクト連結部16と、を有している。コンタクト梁部15は、本体部20とプラグ接触部21、ソケット接触部22を有する。本体部20は、コンタクト連結部16に対して傾斜する傾斜部20bと、傾斜部20bとコンタクト連結部16の間に配置され、捻られるように形成される第1捻り部20a(捻り部)と、を含む。プラグ接触部21は、本体部20の傾斜部20bに形成され、プラグコネクタ2に接触可能な部分である。ソケット接触部22は、本体部20の傾斜部20bに形成され、レセプタクルコネクタ3に接触可能な部分である。プラグ接触部21とソケット接触部22は、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3がコンタクト梁部15を挟んで対向した際に、プラグコネクタ2がプラグ接触部21に接触し、レセプタクルコネクタ3がソケット接触部22により強く接触することで、コンタクト梁部15がコンタクト連結部16に対して相対的な捻れ変形をするように配置されている。端的に言えば、プラグ接触部21とソケット接触部22は本体部20を挟んで反対側に配置されている。そして、第1捻り部20aには、通電時の発熱によってコンタクト連結部16に対する傾斜部20bの傾斜を強めるようなバイメタル構造が適用されている。以上の構成によると、通電してコンタクトユニット8が発熱した際、傾斜部20bが一層傾斜しようとし、もって、プラグコネクタ2に対するプラグ接触部21の接触圧と、レセプタクルコネクタ3に対するソケット接触部22の接触圧が高くなる。従って、トーションタイプの大電流用コネクタ1において、接触圧を効果的に確保することができる。
【0048】
なお、本願発明者によれば、本願の出願時において、第1捻り部20aや第2捻り部20cにバイメタル構造を適用することについては全く公知技術ではなく、仮に第1捻り部20aや第2捻り部20cにバイメタル構造を適用したからといって、その適用により接触圧の確保に有効であるか否かは定かではなかった。しかしながら、本願発明者は、第1捻り部20aや第2捻り部20cに上記のバイメタル構造を適用したモデルの通電時における挙動を有限要素法で解析したみたところ、また、上記適用のあるサンプル品を作製して試験してみたところ、確かに第1捻り部20aや第2捻り部20cにバイメタル構造を適用したことが接触圧の効果的な確保として結実していることを確認した。
【0049】
また、上記第1実施形態では、第1捻り部20a及び第2捻り部20cの両方にバイメタル構造を適用したが、これに代えて、第1捻り部20a又は第2捻り部20cのうち何れか一方のみにバイメタル構造を適用することとしてもよい。
【0050】
また、例えば
図5に示すように、コンタクト梁部15の自由端15bには係合部23が形成されている。コンタクト連結部16には、例えば
図5や
図9、
図10に示すように、一対のコンタクトエレメント10を組み合わせた状態で、コンタクト梁部15の係合部23が係合する被係合孔24が形成されている。以上の構成によれば、コンタクト梁部15の支持態様を実質的に両端支持にすることができる。即ち、コンタクト連結部16は、各コンタクト梁部15を両端支持するように一対で設けられている。つまり、各コンタクト梁部15の本体部20は第1捻り部20aと第2捻り部20cを有することになり、第1捻り部20a及び第2捻り部20cの双方にバイメタル構造が適用されることになる。従って、通電してコンタクトユニット8が発熱した際、傾斜部20bが一層強力に傾斜しようとするので、プラグコネクタ2に対するプラグ接触部21の接触圧と、レセプタクルコネクタ3に対するソケット接触部22の接触圧が効果的に高くなる。
【0051】
また、
図1及び
図2に示すように、プラグコネクタ2は円柱形状のプラグ部5を有し、レセプタクルコネクタ3は円筒形状のソケット部7を有する。プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3を導通させるには、先ず、レセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aにコンタクトユニット8を配置し、次いで、プラグコネクタ2のプラグ部5をレセプタクルコネクタ3のソケット部7に挿入するように構成されている。以上の構成では、プラグコネクタ2のプラグ部5をレセプタクルコネクタ3のソケット部7に挿入するのに必要となる挿入力が問題となる。これに対し、以上の構成によれば、バイメタル構造の存在により、プラグコネクタ2のプラグ部5をレセプタクルコネクタ3のソケット部7に挿入するのに必要となる挿入力を小さくなるように設定しても、通電時には十分な接触圧を確保することができるようになる。
【0052】
また、例えば、
図9や
図10に示すように、プラグコネクタ2をレセプタクルコネクタ3に嵌合させた際の、コンタクト梁部15の捻れ変形の捻れ方向と、このコンタクト梁部15に対して隣り合うコンタクト梁部15の捻れ変形の捻れ方向とは、逆になるように設定されている。
【0053】
また、コンタクトユニット8を構成する一対のコンタクトエレメント10は、同一形状である。以上の構成によれば、コンタクトユニット8を低コストで製造することができる。
【0054】
以上に本願発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は例えば以下のように変更できる。
【0055】
(1)上記実施形態では、コンタクトユニット8は、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3を相互に導通させるものとしたが、これに代えて、コンタクトユニット8は、ブスバーなどの導電性板材を相互に導通させるものとして使用してもよい。この場合は、コンタクトユニット8を例えば
図1や
図2に示すように湾曲させる必要はない。
【0056】
(2)上記実施形態では、例えば
図5に示すように、コンタクト梁部15はコンタクト連結部16によって片持ち梁状に支持されるものとしたが、これに代えて、以下の構成を採用することもできる。即ち、
図5を参照して、コンタクトエレメント10を、複数のコンタクト梁部15と、複数のコンタクト梁部15が相互に略平行となるように複数のコンタクト梁部15を両端支持する一対のコンタクト連結部16と、を備えるものとする。即ち、コンタクトエレメント10のバリエーションとして、コンタクト梁部15を単一のコンタクト連結部16で片持ち梁状に支持させるか、コンタクト梁部15を一対のコンタクト連結部16で両端支持させるか、は任意に選択することができる。
【0057】
(3)上記実施形態において一対のコンタクトエレメント10は同一形状であるとしたが、これに代えて、一対のコンタクトエレメント10を異なる形状としてもよい。
【0058】
(4)上記実施形態においてバイメタル構造は、ベリリウム銅cとアルミ合金gの組み合わせとした。しかし、熱膨張係数の異なる2種以上の組み合わせであれば、その種を問わない。
【0059】
(5)上記実施形態において第1捻り部20aは、ベリリウム銅cを基材とし、裏面部70にアルミ合金gを貼り付けたバイメタル構造を採用している。しかし、これに代えて、第1捻り部20aは、ベリリウム銅cを基材としつつも、表面部71に、ベリリウム銅cの熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有する素材を貼り付けたバイメタル構造を採用してもよい。
【0060】
(第2実施形態)
次に、
図15及び
図16を参照しつつ、本願発明の第2実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明は適宜省略する。また、上記第1実施形態の各構成要素に対応する構成要素には原則として同一の符号を付すこととする。
【0061】
上記第1実施形態では、
図11に示すように第1捻り部20aの肉厚は周方向において一定であるものの、アルミ合金gは、周方向(コンタクト連結部16の長手方向)における第1捻り部20aの中央部72から離れるにつれて漸増する肉厚を有することとした。しかし、これに代えて、本実施形態では、
図15に示すように、アルミ合金gは、均一な肉厚を有している。
【0062】
以上の構成で、大電流用コネクタ1に通電してコンタクトユニット8が発熱すると、
図16に示すように、第1捻り部20aのうちベリリウム銅cとアルミ合金gから成る二層式のバイメタル構造が適用された部分が一層反り返るような力pが発生してプラグ接触部21(
図5も併せて参照)をプラグ部5側に押し上げ、もって、
図1のプラグ部5の外周面5aに対する
図5のプラグ接触部21の接触圧が増大する。なお、力pは、ソケット接触部22をソケット部7側に積極的に押し下げようとはしないが、
図1のプラグ部5の外周面5aに対する
図5のプラグ接触部21の接触圧が増大することに伴って、
図1のソケット部7の内周面7aに対する
図5のソケット接触部22の接触圧は結果として同様に増大することになる。
【0063】
(第3実施形態)
次に、
図17〜19を参照しつつ、本願発明の第3実施形態を説明する。ここでは、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、重複する説明は適宜省略する。また、上記第1実施形態の各構成要素に対応する構成要素には原則として同一の符号を付すこととする。
【0064】
本実施形態において大電流用コネクタ1は、
図1及び
図2に示すコンタクトユニット8に代えて、
図17及び
図18に示すコンタクトエレメント40(電気コンタクト)を備えている。コンタクトエレメント40は、
図2に示すコンタクトユニット8のようにソケット部7の内周面7aに取り付けられて用いられる。
【0065】
(コンタクトエレメント40)
図17に示すように、コンタクトエレメント40は、各々が細長い形状を有する複数のコンタクト梁部45と、複数のコンタクト梁部45が相互に略平行となるように複数のコンタクト梁部45を連結する一対のコンタクト連結部46と、によって構成されている。
図17に示すように、各コンタクト梁部45は、軸方向に延びて形成されている。
図17及び
図18に示すように、コンタクト連結部46は、周方向に延びて形成されている。
【0066】
(コンタクト梁部45)
図17に示すように、複数のコンタクト梁部45は、相互に略平行となるように一定の間隔をあけて並べて配置されている。また、各コンタクト梁部45は、一対のコンタクト連結部46に両端支持された梁状に形成されている。
【0067】
図19に示すように、各コンタクト梁部45は、本体部60とプラグ接触部61(第1接触部)、一対のソケット接触部62(第2接触部)を有している。
【0068】
(本体部60)
本体部60は、コンタクト梁部45の基礎となる部分であって、軸方向に延びて形成されている。本体部60は、傾斜部60aと一対の捻り部60bによって構成されている。
【0069】
傾斜部60aは、コンタクト梁部45の長手方向に沿って見たときに、コンタクトエレメント40の無負荷状態で、コンタクト連結部46に対して反時計回りに約45度傾斜するように形成されている。
【0070】
各捻り部60bは、傾斜部60aとコンタクト連結部16の間に配置されている。各捻り部60bは、コンタクト梁部45の長手方向に沿って見たときに、コンタクトエレメント40の無負荷状態で、コンタクト連結部46に対して捻られるように形成されている。
【0071】
このように本体部60が傾斜部60aと一対の捻り部60bによって構成されていることで、本体部60は、両端を除く中途部(プラグ接触部61及びソケット接触部62を含む。)のみが傾斜したような形状となっている。
【0072】
(プラグ接触部61、ソケット接触部62)
プラグ接触部61は、本体部60の傾斜部60aに形成されている。プラグ接触部61は、本体部60の傾斜部60aの長手方向における中央に形成されている。
【0073】
各ソケット接触部62は、本体部60の傾斜部60aに形成されている。各ソケット接触部62は、本体部60の傾斜部60aのうち各捻り部60bの近傍に形成されている。
【0074】
そして、プラグ接触部61と一対のソケット接触部62は、コンタクト梁部45の長手方向に沿って見たときに、本体部60(傾斜部60a)を挟んで反対側となるように配置されている。
【0075】
プラグ接触部61は、プラグコネクタ2をレセプタクルコネクタ3に嵌合した際に、
図1に示すプラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aに対して接触する部分である。プラグ接触部61は、コンタクト梁部45の長手方向に沿って見たときに、内周側に膨らみ出るように湾曲して形成されている。
【0076】
ソケット接触部62は、コンタクトエレメント40がソケット部7の内周面7aの窪みに取り付けられた際に、
図1に示すレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aに対して接触する部分である。ソケット接触部62は、コンタクト梁部45の長手方向に沿って見たときに、コンタクト連結部46に対して略平行となるように(
図18を併せて参照)、本体部60(傾斜部60a)に対して傾斜して形成されている。
【0077】
(コンタクト連結部46)
各コンタクト連結部46には、複数の折り曲げ部63が形成されている。各折り曲げ部63は、若干外周側に折り曲げられて形成されている。
【0078】
(作動)
次に、大電流用コネクタ1の作動を説明する。先ず、コンタクトエレメント40を強く湾曲させ、
図2に示すレセプタクルコネクタ3のソケット部7内に挿入する。すると、コンタクトエレメント40は、自己弾性復元力によってソケット部7の内周面7aに張り付き、図示しない内フランジによってコンタクトエレメント40のソケット部7からの抜脱は禁止される。
【0079】
この状態で、レセプタクルコネクタ3のソケット部7にプラグコネクタ2のプラグ部5を挿入する。すると、プラグコネクタ2のプラグ部5は、コンタクトエレメント40の複数のプラグ接触部61に対して接触すると共に、複数のプラグ接触部61を外周側へと押圧する。そして、この押圧により、第1に、プラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aと、コンタクトエレメント40の各プラグ接触部61との接触圧が発生する。第2に、レセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aと、コンタクトエレメント40の各ソケット接触部62との接触圧が強くなる。これら第1及び第2の事象により、プラグコネクタ2はレセプタクルコネクタ3と導通する。そして、第3に、プラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aの外径と、レセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aの内径と、の間の嵌合隙間量に応じて、各コンタクト梁部45のプラグ接触部61がレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aに対して近づくように、各コンタクト梁部45の本体部60がコンタクト連結部46に対して相対的に捻れ変形する。
【0080】
ここで、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3との間の主たる導通経路は、単一のコンタクト梁部45内で完結している。即ち、プラグコネクタ2のプラグ部5に供給された電荷は、コンタクト梁部45のプラグ接触部61と、コンタクト梁部45の本体部60と、コンタクト梁部45の一対のソケット接触部62と、を介してレセプタクルコネクタ3のソケット部7に移動する。
【0081】
(バイメタル構造:
図19)
本実施形態のコンタクト梁部45の本体部60の一対の捻り部60bにも、上記第1実施形態におけるコンタクト梁部15の本体部20の第1捻り部20aや第2捻り部20cと同様に、バイメタル構造が適用されている。
【0082】
このように一対の捻り部60bに前述のバイメタル構造を適用すると、大電流用コネクタ1に通電してコンタクトエレメント40が発熱した際、各捻り部60bが一層捻るように変形しようとする。即ち、コンタクトエレメント40のコンタクト梁部45の本体部60の傾斜部60aがコンタクト連結部46に対する傾斜を一層強めようとする。この結果、
図1のプラグコネクタ2のプラグ部5の外周面5aに対する
図19のプラグ接触部61の接触圧が上昇する。同様に、
図1のレセプタクルコネクタ3のソケット部7の内周面7aに対する
図19のソケット接触部62の接触圧が上昇する。これらの接触圧の上昇により、プラグコネクタ2とレセプタクルコネクタ3との間の通電時における接触抵抗を大幅に低減させることができる。