(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732336
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】スクリュー式射出装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/52 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
B29C45/52
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-153974(P2011-153974)
(22)【出願日】2011年7月12日
(65)【公開番号】特開2013-18210(P2013-18210A)
(43)【公開日】2013年1月31日
【審査請求日】2014年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 玲
【審査官】
越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−515815(JP,A)
【文献】
米国特許第04988281(US,A)
【文献】
特開昭59−120431(JP,A)
【文献】
特開2005−088268(JP,A)
【文献】
特開平09−011291(JP,A)
【文献】
実用新案登録第3015629(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリューと、該スクリューに取り付けられた逆流防止装置とを備え、前記スクリューが、螺旋溝を有するスクリュー本体と、該スクリュー本体の先端部に小径の頸部を介して固定されたスクリューヘッドとからなり、前記逆流防止装置が、前記スクリュー本体のスクリューヘッド取付側の端部に固定されたチェックシートと、前記頸部に回転可能かつ前後進可能に装着されたチェックリングとからなるスクリュー式射出装置において、
前記逆流防止装置は、前記スクリューヘッドの前記チェックリング側の端面に形成され、前記スクリューヘッドの周方向に等間隔に形成された複数のボール遊嵌溝と、該ボール遊嵌溝内に転動可能に収納され、その周面の一部が平面状に形成された前記チェックリングの端面に当接されるボールとからなり、
前記ボール遊嵌溝は、深溝部と浅溝部とこれらを繋ぐ連結部とから構成されていて、前記深溝部、前記浅溝部及び前記連結部は、その内部に収納された前記ボールの周面の一部が常に前記加熱シリンダの内面に接するように形成位置が調整され、かつ、前記ボールを前記深溝部内に配置した場合には、前記チェックリングが前記チェックシートから離間して前記頸部における溶融樹脂の流通が可能となり、前記ボールを前記浅溝部内に配置した場合には、前記チェックリングが前記チェックシートに密着して前記頸部における溶融樹脂の流通が不能となることを特徴とするスクリュー式射出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に備えられるスクリュー式射出装置に係り、特に、スクリューの頸部に備えられる逆流防止用チェックリングの駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機に備えられるスクリュー式射出装置は、金型キャビティ内に所定量の溶融樹脂を射出・充填するもので、バンドヒータと呼ばれる発熱体が外周部に装着された加熱シリンダ内に、スクリューが回転可能かつ前後進可能に収納されている。金型キャビティ内への溶融樹脂の射出・充填は、樹脂の混練と可塑化、サックバック及び射出・充填の各工程を繰り返すことにより行われる。
【0003】
樹脂の混練・可塑化工程において、スクリューは加熱シリンダ内で回転駆動される。加熱シリンダの基端側には、ホッパから落下してくるペレット状の原料樹脂を加熱シリンダ内に導入するための原料供給孔が開設されており、スクリューには、加熱シリンダに開設された原料供給穴と対向する位置から先端部まで延びる螺旋溝が形成されている。したがって、加熱シリンダ内でスクリューを回転駆動すると、原料供給孔を通して加熱シリンダ内に供給された原料樹脂が、加熱シリンダの内面と螺旋溝の表面とで形成される空間内に受け入れられ、スクリューの回転に伴い、螺旋溝に沿って順次スクリューの先端側に移送される。この過程において、原料樹脂は、発熱体による加熱並びにスクリューの回転に伴う剪断発熱及び摩擦発熱によって溶融され、必要な混練及び可塑化が行われる。可塑化された溶融樹脂は、加熱シリンダの先端部に取り付けられた射出ノズルとスクリューの先端部との間に形成される樹脂溜め部に一定量が蓄えられる。
【0004】
樹脂の混練・可塑化工程が終了した後、射出ノズルからの溶融樹脂の流れ出し(ドルーリング)を防止するため、スクリューを無回転で後退させて、樹脂溜め部内の樹脂圧を下げるサックバックが行われる。
【0005】
溶融樹脂の射出・充填工程においては、スクリューが高速度で射出ノズル側に前進駆動される。これにより、樹脂溜め部に蓄えられた一定量の溶融樹脂が金型キャビティ内に射出・充填され、所望の成形品が成形される。
【0006】
スクリューには、逆流防止装置が取り付けられており、溶融樹脂の射出・充填工程において樹脂溜め部に蓄えられた溶融樹脂がスクリューの基端側に戻らないようにされている。これにより、各ショット毎の金型キャビティ内への樹脂充填量が安定し、良品を高い歩留まりで成形することができる。
【0007】
本願の出願人は、先に、スクリューに備えられる逆流防止装置として、
図6及び
図7に示すように、スクリュー本体100の先端部に小径の頸部101を介して取り付けられたスクリューヘッド102と、スクリュー本体100のスクリューヘッド102の取付側端部に固着されたチェックシート103と、頸部101に前後進可能及び回転可能に遊嵌されたチェックリング104とからなり、スクリューヘッド102の後端部には、チェックリング104側に突出して、その端面が平坦面とされた係止爪部105が設けられ、チェックリング104におけるスクリューヘッド102側の端部には、係止爪部105を収納可能に構成された凹部106と、この凹部106に連なってスクリューヘッド102側に突出し、その端面が平坦面とされた係止部107とが設けられたものを提案した(例えば、特許文献1参照。)。なお、
図6及び
図7の符号109はスクリューヘッド102に形成された係合溝を示し、符号110はチェックリング104に形成された係止爪を示している。係止爪110は係合溝109内に摺動自在に挿入され、スクリューヘッド102に対するチェックリング104の前後進を許容すると共に、スクリュー本体100及びスクリューヘッド102に対するチェックリング104の回転を規制する。
【0008】
以下に、特許文献1に記載の逆流防止装置の動作について説明する。まず、樹脂の混練・可塑化工程においては、スクリュー本体100、スクリューヘッド102及びチェックリング104が一体的に回転駆動されており、スクリュー本体100に形成された螺旋溝に沿って供給される樹脂の樹脂圧によってチェックリング104がスクリューヘッド102側に押圧されるため、
図6に示すように、スクリューヘッド102の係止爪部105がチェックリング104の凹部106内に嵌め込まれる。よって、チェックリング104がチェックシート103から離間し、チェックシート103とチェックリング104との間に形成された樹脂通路108が開いて、混練・可塑化された樹脂が樹脂溜め部側に移送される。
【0009】
樹脂の混練・可塑化工程の終了後、スクリュー本体100、スクリューヘッド102及びチェックリング104を若干量逆回転する。これにより、スクリューヘッド102の係止爪部105が、チェックリング104の凹部106から脱し、
図7に示すように、スクリューヘッド102の係止爪部105とチェックリング104の係止部107とが平坦面どうしで当接される。このとき、チェックリング104は、スクリューヘッド102の係止爪部105により押圧されてチェックシート103に密着されるので、チェックシート103とチェックリング104との間に形成された樹脂通路108が閉じられ、サックバック時及び射出・充填時における溶融樹脂の逆流が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3432782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、樹脂の混練・可塑化工程において、チェックリング104がスクリュー本体100及びスクリューヘッド102と一体的に回転するので、チェックリング104の外面と加熱シリンダ200の内面との間に摩擦を生じて、これらの各部材間に摩耗や焼き付きなどの不都合を生じやすい。特に、繊維混練樹脂の射出成形に適用した場合には、チェックリング104の外面と加熱シリンダ200の内面との間に繊維が入り込みやすいので、上述の不都合がさらに生じやすくなる。また、特許文献1に記載の技術は、スクリューヘッド102及びチェックリング104の双方に特殊な加工を施す必要があるので、製造コストが高価になるという問題もある。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、安価に実施可能であり、かつチェックリングの外面及び加熱シリンダの内面にかじりや焼き付きを生じにくいスクリュー式射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、前記課題を解決するため、加熱シリンダと、該加熱シリンダ内に回転可能かつ前後進可能に収納されたスクリューと、該スクリューに取り付けられた逆流防止装置とを備え、前記スクリューが、螺旋溝を有するスクリュー本体と、該スクリュー本体の先端部に小径の頸部を介して固定されたスクリューヘッドとからなり、前記逆流防止装置が、前記スクリュー本体のスクリューヘッド取付側の端部に固定されたチェックシートと、前記頸部に回転可能かつ前後進可能に装着されたチェックリングとからなるスクリュー式射出装置において、前記逆流防止装置は、前記スクリューヘッドの前記チェックリング側の端面に形成され、前記スクリューヘッドの周方向に
等間隔に形成された複数のボール遊嵌溝と、該ボール遊嵌溝内に転動可能に収納され、その周面の一部が平面状に形成された前記チェックリングの端面に当接されるボールとからなり、前記ボール遊嵌溝は、深溝部と浅溝部とこれらを繋ぐ連結部とから構成されていて、
前記深溝部、前記浅溝部及び前記連結部は、その内部に収納された前記ボールの周面の一部が常に前記加熱シリンダの内面に接するように形成位置が調整され、かつ、前記ボールを前記深溝部内に配置した場合には、前記チェックリングが前記チェックシートから離間して前記頸部における溶融樹脂の流通が可能となり、前記ボールを前記浅溝部内に配置した場合には、前記チェックリングが前記チェックシートに密着して前記頸部における溶融樹脂の流通が不能となることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によると、スクリューヘッドとチェックリングとの間にボールを転動可能に配置し、当該ボールの周面の一部をチェックリングの端面に当接するので、スクリュー本体及びスクリューヘッドの回転時にも加熱シリンダに対してチェックリングが回転せず、チェックリングの外面及び加熱シリンダの内面の摩耗や焼き付きが防止される。また、加熱シリンダに対してチェックリングが回転しないことから、チェックリングの外面と加熱シリンダの内面との間に異物が挟まれにくく、繊維混入樹脂の成形も高能率に行うことができる。さらに、スクリューヘッドの端面に深溝部と浅溝部とを有するボール遊嵌溝を形成し、該ボール遊嵌溝内に配置されたボールを介してチェックシートに対するチェックリングの開閉を行うようにしたので、射出・充填時及びサックバック時における溶融樹脂の逆流を確実に防止することができる。加えて、チェックリングのボール当接面は平坦面とすることができるので、チェックリングの加工コスト、ひいてはスクリュー式射出装置の製造コストの低減を図ることができる。
また、スクリューヘッドの端面の周方向に複数のボール遊嵌溝を等間隔に形成すると、各ボール遊嵌溝内に収納された複数のボールによってチェックリングを保持できるので、チェックリングの動作安定性を高めることができる。さらに、ボールの周面の一部を加熱シリンダの内面に当接させると、スクリューの回転動作及び前後進動作を安定に行うことができるので、チェックリングの外面と加熱シリンダの外面の摩耗や焼き付きを防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスクリュー式射出装置は、スクリューヘッドとチェックリングとの間にボールを転動可能に配置し、当該ボールの周面の一部を平面状に形成されたチェックリングの端面に当接するので、スクリュー本体及びスクリューヘッドの回転時にも、加熱シリンダに対してチェックリングが回転せず、チェックリングの外面及び加熱シリンダの内面の摩耗及び焼き付きが防止される。また、加熱シリンダに対してチェックリングが回転しないので、チェックリングの外面と加熱シリンダの内面との間に異物が挟まれにくく、繊維混入樹脂の成形も高能率に行うことができる。さらに、チェックリングのボール当接面を平坦面とすることができるので、チェックリングの加工コストを低減できて、スクリュー式射出装置の製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係るスクリュー式射出装置の構成図である。
【
図2】実施形態に係るスクリュー式射出装置に備えられる逆流防止装置の混練・可塑化工程における状態を示す要部断面図である。
【
図3】実施形態に係るスクリュー式射出装置に備えられる逆流防止装置の射出・充填工程における状態を示す要部断面図である。
【
図5】実施形態に係るスクリュー式射出装置に備えられる逆流防止装置の一部透視した斜視図である。
【
図6】従来例に係るスクリュー式射出装置に備えられる逆流防止装置の混練・可塑化工程における状態を示す断面図である。
【
図7】従来例に係るスクリュー式射出装置に備えられる逆流防止装置の射出・充填工程における状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係るスクリュー式射出装置につき、図を参照しながら説明する。
【0022】
実施形態に係るスクリュー式射出装置は、
図1に示すように、図示しない射出ユニットベース盤上に所定距離をおいて対向に配設されたヘッドストック1及び保持プレート2と、これらヘッドストック1と保持プレート2との間に架け渡された複数本の連結バー3と、これらの連結バー3に案内されてヘッドストック1と保持プレート2との間を前後進する直動ブロック4と、基端部がヘッドストック1に固定された加熱シリンダ5と、加熱シリンダ5の先端に取り付けられたノズル6と、加熱シリンダ5の外周に巻装されたバンドヒータ7と、加熱シリンダ5内に回転可能かつ前後進可能に配設されたスクリュー8とを備えている。スクリュー8の基端部は、回転体9に保持され、回転体9は、軸受9aを介して直動ブロック4に回転可能に保持されている。また、回転体9には被動プーリ10が固定されており、この被動プーリ10には、直動ブロック4に搭載された計量用サーボモータ11の出力軸に固定された駆動プーリ12との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー8は、駆動プーリ12、図示しないタイミングベルト、被動プーリ10及び回転体9を介して計量用サーボモータ11により回転駆動される。
【0023】
保持プレート2には、射出用サーボモータ13が搭載されると共に、軸受2aを介してボールネジ機構15のネジ軸16が回転可能に保持される。ボールネジ機構15は、ネジ軸16と、このネジ軸16に螺合されたナット体17とから構成されており、ナット体17の端部は、ロードセルユニット18を介して直動ブロック4に固定されている。ネジ軸16の端部には、被動プーリ19が固定されており、この被動プーリ19には、射出用サーボモータ13の出力軸に固定された駆動プーリ14との間に、図示しないタイミングベルトが輪掛けされている。したがって、スクリュー8は、駆動プーリ14、図示しないタイミングベルト、被動プーリ19、ボールネジ機構15、直動ブロック4及び回転体9を介して射出用サーボモータ13により前後進される。ロードセルユニット18は、図示しない金型キャビティ内への溶融樹脂の射出圧力を検出するものである。
【0024】
なお、図中の符号20は、図示しないホッパから落下・供給される成形材料を加熱シリンダ5の後端部内に供給するために、ヘッドストック1及び加熱シリンダ5の対応する位置に穿設された成形材料供給穴を示している。
【0025】
スクリュー8は、
図1乃至
図5に示すように、螺旋溝8aを有するスクリュー本体31と、スクリュー本体31の先端部に小径の頸部32を介して固定されたスクリューヘッド33とからなり、頸部32には逆流防止装置40が備えられている。
【0026】
逆流防止装置40は、
図2乃至
図5に示すように、スクリューヘッド33と、スクリュー本体31のスクリューヘッド取付側の端部に固定されたチェックシート41と、頸部32に回転可能かつ前後進可能に装着されたチェックリング42と、スクリューヘッド33とチェックリング42との間に転動可能に配置されたボール(鋼球)43とからなる。
【0027】
スクリューヘッド33のチェックリング42側の端面には、
図2乃至
図5に示すように、その周方向に延びる3つのボール遊嵌溝44が等間隔に形成されている。各ボール遊嵌溝44は、深溝部44aと、浅溝部44bと、これらの各部を繋ぐ連結部44cとが、同一の向きで等分に形成されている。
【0028】
深溝部44aは、
図2に示すように、ボール43が入ったとき、チェックシート41とチェックリング42とが離間して、チェックシート41とチェックリング42との間に形成された樹脂通路45を溶融樹脂が通過可能になるように形成される。これに対して、浅溝部44bは、
図3に示すように、ボール43が入ったとき、チェックシート41とチェックリング42とが密着して、チェックシート41とチェックリング42との間に形成された樹脂通路45が遮断されるように形成される。なお、ボール遊嵌溝44の深溝部44a、浅溝部44b及び連結部44cは、ボール43の周面の一部が常に加熱シリンダ5の内面に接するように、その形成位置が調整される。
【0029】
以下、上述のように構成された実施形態に係るスクリュー式射出装置の動作について説明する。実施形態に係るスクリュー式射出装置は、1成形サイクル毎に、計量用サーボモータ11及び射出用サーボモータ13の駆動と停止を制御することにより、樹脂の混練・可塑化工程、サックバック及び溶融樹脂の射出・充填工程をこの順に繰り返す。
【0030】
樹脂の混練・可塑化工程においては、図示しない制御装置からの指令に基づいて、計量用サーボモータ11が所定方向に回転駆動され、駆動プーリ12、図示しないタイミングベルト、被動プーリ10及び回転体9を介して、スクリュー8が所定方向に回転駆動される。このスクリュー8の回転により、図示しないホッパから原料供給穴20を通して加熱シリンダ5の内部後端側に原料樹脂が供給される。この原料樹脂は、可塑化及び混練されつつスクリュー8のねじ送り作用によって前方に移送され、溶融樹脂となってスクリュー8の前方側に貯えられる。スクリュー8の前方側に溶融樹脂が送り込まれるにつれてスクリュー8は後退するが、この際、図示しない制御装置からの指令に基づいて、射出用サーボモータ13を圧力フィードバック制御で駆動制御し、スクリュー8の直線移動位置を制御することで、スクリュー8には所定の背圧が付与される。そして、スクリュー8の先端側に1ショット分の溶融樹脂が貯えられた時点で、計量用サーボモータ11によるスクリュー8の回転駆動は停止される。
【0031】
上述のように、樹脂の混練・可塑化工程においては、スクリュー8が回転駆動され、可塑化された樹脂がスクリュー8の先端側に順次移送されるので、チェックリング42は、螺旋溝8aを通って移送される樹脂の樹脂圧によって、スクリューヘッド33側に押し付けられる。また、このときには、スクリューヘッド33とチェックリング42との間にボール43が配設されているため、スクリュー8が回転駆動されてもチェックリング42は加熱シリンダ5に対して回転せず、スクリュー本体31とチェックリング42とがその周方向に相対的に変位する。したがって、ボール43がボール遊嵌溝44の深溝部44aに入り込み、
図2に示すように、チェックリング42がチェックシート41から離間するので、チェックシート41とチェックリング42との間に形成された樹脂通路45が開いて、混練・可塑化された樹脂が樹脂溜め部側に移送される。
【0032】
樹脂の混練・可塑化工程の終了後、スクリュー8を若干量逆回転する。このときにも、スクリューヘッド33とチェックリング42との間にボール43が配設されているため、チェックリング42は加熱シリンダ5に対して回転せず、スクリュー本体31とチェックリング42とがその周方向に相対的に変位し、ボール43がボール遊嵌溝44の深溝部44aから連結部44cを通って浅溝部44bに入り込む。このときには、スクリュー8が樹脂の混練・可塑化方向に回転駆動されておらず、螺旋溝8a内の樹脂圧が低いので、チェックリング42はチェックシート41側に容易に後退する。これにより、チェックリング42がチェックシート41に密着し、チェックシート41とチェックリング42との間に形成された樹脂通路45が遮断される。
【0033】
しかる後に、スクリュー8を所定量強制的に後退させて樹脂溜め部内の樹脂圧を低下するサックバックを行う。サックバック時においては、図示しない制御装置からの指令に基づいて、射出用サーボモータ13が圧力フィードバック制御で、射出・充填工程における回転方向とは逆方向に駆動制御される。射出用サーボモータ13が回転駆動されると、その回転運動が、駆動プーリ14、図示しないタイミングベルト、被動プーリ19を介してボールネジ機構15に伝えられ、ボールネジ機構15により回転運動が直線運動に変換される。そして、その直線運動がロードセルユニット18、直動ブロック4及び回転体9を介してスクリュー8に伝達され、スクリュー8が後退駆動される。サックバック時には、スクリュー本体31側の樹脂圧が、溶融樹脂溜め部内の樹脂圧よりも高くなるが、ボール43によってチェックリング42がチェックシート41に密着されているため、チェックリング42がチェックシート41から離間せず、溶融樹脂の逆流が防止される。
【0034】
溶融樹脂の射出・充填工程は、サックバックが完了した後の適宜のタイミングで、図示しない制御装置からの指令に基づいて、射出用サーボモータ13を速度フィードバック制御で駆動制御されることにより行われる。射出用サーボモータ13が回転駆動されると、その回転運動が、サックバック時と同様の経路でスクリュー8に伝達され、スクリュー8が急速に前進駆動されて、スクリュー8の先端側に貯えられた溶融樹脂が型締状態にある金型キャビティ内に射出充填され、一次射出工程が実行される。一次射出工程に引き続く保圧工程では、図示しない制御装置からの指令に基づいて、射出用サーボモータ13が圧力フィードバック制御で駆動制御され、これにより、設定された保圧力がスクリュー8から金型内に充填された樹脂に付加される。溶融樹脂の射出・充填工程においては、溶融樹脂溜め部内の樹脂圧がスクリュー本体31側の樹脂圧よりも高くなるので、チェックリング42がチェックシート41から離間せず、溶融樹脂の逆流が防止される。
【0035】
本実施形態に係るスクリュー射出装置は、スクリューヘッド33とチェックリング42との間にボール43を転動可能に配置し、当該ボール43の周面の一部をチェックリング42の端面に当接するので、スクリュー8の回転時にも加熱シリンダ5に対してチェックリング42が回転せず、チェックリング42の外面及び加熱シリンダ5の内面の摩耗や焼き付きを防止できる。また、加熱シリンダ5に対してチェックリング42が回転しないことから、チェックリング42の外面と加熱シリンダ5の内面との間に異物が挟まれにくく、繊維混入樹脂の成形も高能率に行うことができる。さらに、本実施形態に係るスクリュー射出装置は、スクリューヘッド33の端面に深溝部44aと浅溝部44bとを有するボール遊嵌溝44を形成し、該ボール遊嵌溝44内に配置されたボール43を介してチェックシート41に対するチェックリング42の開閉を行うようにしたので、射出・充填時及びサックバック時における溶融樹脂の逆流を確実に防止することができる。加えて、本実施形態に係るスクリュー射出装置は、チェックリング42のボール当接面を平坦面としたので、チェックリング42に逆流防止用の特別な加工を施す場合に比べて、チェックリング42の加工コストを低減でき、スクリュー式射出装置の製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
その他、本実施形態に係るスクリュー射出装置は、3つのボール遊嵌溝44をスクリューヘッド33の端面の周方向に等間隔に形成したので、各ボール遊嵌溝44内に収納された3つのボール43によってチェックリング43を3点保持することができ、チェックリング42の動作安定性を高めることができる。また、本実施形態に係るスクリュー射出装置は、ボール遊嵌溝44内に収納されたボール43の一部を常に加熱シリンダ5の内面に当接させるので、スクリュー8の回転動作及び前後進動作を安定に行うことができて、チェックリング42の外面と加熱シリンダ5の外面の摩耗や焼き付きを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、スクリュー式射出装置又はスクリュープリプラ式射出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 ヘッドストック
2 保持プレート
3 連結バー
4 直動ブロック
5 加熱シリンダ
6 ノズル
7 バンドヒータ
8 スクリュー
8a 螺旋溝
9 回転体
10 被動プーリ
11 計量用サーボモータ
12 駆動プーリ
13 射出用サーボモータ
14 駆動プーリ
15 ボールネジ機構
16 ねじ軸
17 ナット体
18 ロードセルユニット
19 被動プーリ
20 成形材料供給穴
31 スクリュー本体
32 頸部
33 スクリューヘッド
40 逆流防止装置
41 チェックシート
42 チェックリング
43 ボール(鋼球)
44 ボール遊嵌溝
44a 深溝部
44b 浅溝部
44c 連結部