特許第5732344号(P5732344)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5732344音波を用いた探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732344
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】音波を用いた探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/06 20060101AFI20150521BHJP
   G01N 29/44 20060101ALI20150521BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N29/06
   G01N29/44
   G01H9/00 C
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-164004(P2011-164004)
(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公開番号】特開2013-29343(P2013-29343A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】593232206
【氏名又は名称】学校法人桐蔭学園
(73)【特許権者】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】杉本 恒美
(72)【発明者】
【氏名】阿部 冬真
(72)【発明者】
【氏名】赤松 亮
(72)【発明者】
【氏名】歌川 紀之
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−042421(JP,A)
【文献】 Tsuneyoshi Sugimoto et al.,Non contact acoustic imaging method in the extremely shallow underground using optimum frequency range method by SLDV,Proceedings of 20th International Congress on Acoustics, ICA2010,2010年 8月23日,pp.1-4
【文献】 阿部冬真 他,SLDVを用いた極浅層地中映像化に関する研究(V),日本音響学会講演論文集,2010年 3月,pp.1417-1418
【文献】 赤松亮 他,SLDVとLRADを用いた非破壊探査のための非接触音響映像法に関する研究,日本音響学会講演論文集 春季,2011年 3月 2日,pp.1569-1570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00−29/52
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程と、
前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、次式(1)によってGxを求める工程と、
【数1】
測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製する工程と、
を備える探知方法。
【請求項2】
前記音波がホワイトノイズである、請求項1に記載の探知方法。
【請求項3】
前記被照射体の表面の振動速度をレーザ振動計またはレーザ変位計を用いて測定する、請求項1または2に記載の探知方法。
【請求項4】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面の複数個所に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムであって、
前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、
前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定するために用いる解析装置とを有し、
請求項1〜3のいずれかに記載の探知方法を行うことができる、非接触音響探知システム。
【請求項5】
被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所であるP1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)の各々に、周波数がωの音波を照射し、Pxにおける前記振動速度であるEx(ω)を計測して、E1(ω)〜En(ω)を出力する計測器と、
前記計測器から出力されたE1(ω)〜En(ω)を入力し、前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、
前記解析装置が、
入力されたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に示す処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGxを求める処理と、
測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製し、表示部に表示する処理と
を行う、請求項4に記載の非接触音響探知システム。
【請求項6】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラムであって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させ、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)を計測した計測器から与えられたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に示す処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGxを求める処理と、
測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・Px・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製し表示部に表示する処理とを、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を用いた探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
音波を照射し、それによる物体の表面の振動等を検出して、その内部の構造を把握する方法等が、従来、いくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スピーカー等を用いて音を照射してコンクリート構造物にたわみ振動を励起し、レーザ変位計やレーザドップラー振動計を用いてたわみ振動を検出し、たわみ振動の振動数と振幅から、コンクリート構造物の内部の空洞の位置を特定する検査方法が記載されている。また、これに関連する方法および装置が、特許文献2〜6および非特許文献1〜4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69301号公報
【特許文献2】特開2001−264302号公報
【特許文献3】特開2002−168841号公報
【特許文献4】特開2002−228642号公報
【特許文献5】特開平8−248006号公報
【特許文献6】特開平4−83156号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】James M.Sabatier、Ning Xiang、「An Investigation of Acoustic-to-SeismicCoupling to Detect Buried Antitank Landmines」,IEEETRANSACTIONS ON GEOSCIENCE AND REMOTE SENSING,VOL.39,NO.6,JUNE 2001,p.1146-1154
【非特許文献2】杉本恒美、阿部冬真、「SLDVを用いた極浅層地中映像化に関する検討−埋設物の検出に関する検討−」、電気情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.109
【非特許文献3】杉本恒美、他3名、「SLDVを用いた極浅層地中映像化に関する研究(IV)」、日本音響学会2010年春季研究発表会講演論文集
【非特許文献4】杉本恒美、阿部冬真、「SLDVを用いた極浅層地中映像化に関する研究(V)」、日本音響学会2010年春季研究発表会講演論文集
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来法では、コンクリート構造物の内部の空洞等の探知対象物の位置を正確に把握することができなかった。
本発明は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、探知対象物の位置を正確に把握することができる探知方法を提供することを目的とする。また、その探知方法を行うことができるシステムを提供することを目的とする。また、そのシステムで用いるプログラムを提供することを目的とする。また、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(i)〜(vii)である。
(i)探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程と、
前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、次式(1)によってGxを求める工程と、
【数1】
測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製する工程と、
を備える探知方法。
(ii)前記音波がホワイトノイズである、上記(i)に記載の探知方法。
(iii)前記被照射体の表面の振動速度をレーザ振動計またはレーザ変位計を用いて測定する、上記(i)または(ii)に記載の探知方法。
(iv)探知対象物を内部に含む被照射体の表面の複数個所に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムであって、
前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、
前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定するために用いる解析装置とを有し、
上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の探知方法を行うことができる、非接触音響探知システム。
(v)被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所であるP1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)の各々に、周波数がωの音波を照射し、Pxにおける前記振動速度であるEx(ω)を計測して、E1(ω)〜En(ω)を出力する計測器と、
前記計測器から出力されたE1(ω)〜En(ω)を入力し、前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、
前記解析装置が、
入力されたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に示す処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGxを求める処理と、
測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製し、表示部に表示する処理と
を行う、上記(iv)に記載の非接触音響探知システム。
(vi)探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラムであって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させ、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)を計測した計測器から与えられたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に示す処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGxを求める処理と、
測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・Px・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製し表示部に表示する処理とを、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラム。
(vii)上記(vi)に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、探知対象物の位置を正確に把握することができる探知方法を提供することができる。また、その探知方法を行うことができる非接触音響探知システムを提供することができる。また、そのシステムで用いるプログラムを提供することができる。また、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の非接触音響探知システムの好適態様を示す概略図である。
図2図1における被照射体1の表面および2つの音響発信源11を上側から見た概略図である。
図3図3(a)はPkにおけるωと振動速度Ek(ω)との関係図(実例)であり、図3(b)はω−Dk(ω)の関係図(実例)である。
図4図3(b)の実例を、概略概念図として示した図である。
図5】Gxの配置図の例である。
図6】実施例における実験セットアップ図である。
図7】実施例における輝度映像結果である。
図8】比較例における輝度映像結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体(コンパクトディスク(CD)やフロッピーディスク(FD)など)であり、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムによれば、被照射体の内部の探知対象物の位置を正確に把握することができる。被照射体としては、例えば、コンクリート構造物、地面(土、砂、石、アスファルト等)、木、液体、人体が挙げられる。具体的には、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムによれば、例えば、地面に埋められている地雷の位置を正確に把握することができる。この場合、地雷が探知対象物である。また、コンクリート構造物の内部の欠陥部の位置を正確に把握することができる。この場合、欠陥部が探知対象物である。また、人体の内部に存在する腫瘍等の位置を正確に把握することができる。この場合、腫瘍等が探知対象物である。また、各種製品等の内部の欠陥部の位置を正確に把握することができる(すなわち、非破壊検査することができる)。この場合、欠陥部が探知対象物である。また、池、海、湖等の液面の近くに位置する探知対象物(周囲の液体と音響インピーダンスが異なる物体)の位置を正確に把握することができる。
このような中でも、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムは、コンクリート構造物の内部の異物の位置を把握するために好ましく用いることができる。例えばコンクリート構造物の内部に埋設された異物(発泡スチロール等)は、地中埋設物とは違い、複数の応答周波数帯が比較的近い周波数帯域に存在し、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムを好ましく適用できることを本発明者は見出した。
【0011】
本発明の探知方法は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムである本発明の非接触音響探知システムによって実現することが好ましい。本発明の非接触音響探知システムは、前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、前記被照射体の表面における振動速度分布から、前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、前記解析装置によって特定の情報処理を行うことができる。本発明の非接触音響探知システムとして、具体的には、例えば図1に示す装置が挙げられる。
【0012】
図1は、被照射体1の表面を振動させ得る音波を発生させる2つの音響発信源11、11と、被照射体1の表面の振動速度を測定する計測器13と、被照射体1の表面における振動速度分布から被照射体1の内部の探知対象物3の位置を特定するために用いる解析装置151を含むコンピュータ15とを有する装置10を示す概略図である。図1に示す装置10は、さらに、任意波形発生装置17およびアンプ19を有しており、加えて、コンピュータ15は制御装置152および表示部153を含んでおり、制御装置152によって任意波形発生装置17を制御して、所望の周波数の音波を2つの音響発信源11、11から発生することができる。任意波形発生装置17が発生するトリガ信号に制御装置152を同期させて計測することもできる。表示部153には、後に説明するω−Dx(ω)図や振動速度分布図を表示することができる。なお、表示部153は複数存在していて、各図を示すものであってもよい。また、複数の図を1つの表示部153に示してもよい。表示部とはディスプレイ画面等を意味する。
【0013】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、音響発信源11はフラットスピーカであり、図1に示すように2つのフラットスピーカを向い合せ、被照射体1の表面に対して20°傾けて(フラットスピーカ面と被照射体1の表面とのなす角度が70°となるように)配置している。このように傾けて配置するとフラットスピーカから発生する空中放射音波から地中内への第2種縦波に変換される割合が大きくなるので好ましい。第2種縦波は、被照射体の表面が砂や土からなる多孔質な面の場合、その表面を好ましく振動させることができる。
なお、本発明の非接触音響探知システムにおいて音響発信源の数やスピーカの角度等は特に限定されない。
【0014】
音響発信源はフラットスピーカの他、パラメトリックスピーカも好ましく用いることができ、また、具体的に、アメリカンテクノロジー社製のLRAD(登録商標)を好ましく用いることができる。また、ラウドスピーカを用いることもできるが、この場合は、音響発信源と被照射体との距離を比較的近くする。その他に用いることができる音響発信源としては、パルスレーザ、高圧ガスガン、衝撃波管が挙げられる。
【0015】
また、音響発信源から被照射体へ照射される音波は、所望の周波数(ω)に調整することができ、かつ、被照射体の表面をその振動速度が計測器によって測定できる程度に、表面に平行方向ではない方向(好ましくは、表面に垂直方向)へ振動させることができる音波であればよく、空気中で振動振幅が減衰し難い可聴帯域の音波(音響波)が好ましい。なお、超音波は用い難い。超音波は空気中で振動振幅の減衰が大きいからである。
また、被照射体の共振周波数帯が不明な場合には、音響発信源から被照射体へ照射される音波は、ホワイトノイズであることが好ましい。全ての周波数を含んでいるからである。
【0016】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、計測器13はレーザドップラー振動計であり、レーザ131を被照射体1に照射して、その表面の振動速度を測定することができる。得られた振動速度のデータは解析装置151で解析するために用いられる。
なお、本発明の非接触音響探知システムにおいて計測器は、被照射体の表面の振動速度を非接触で測定できるものであれば特に限定されず、例えばレーザ変位計を用いることができ、レーザドップラー振動計であることが好ましい。被照射体と計測器とが比較的離れていても、被照射体の表面の振動を正確に測定することができるからである。
また、1度に1点の振動計測が可能なシングルレーザタイプのレーザ振動計を用いることは可能であるが、スキャニングレーザタイプのレーザ振動計を用いることが好ましい。スキャニング振動計であるレーザドップラー振動計としては、具体的に、ポリテックジャパン社製のPSV400−H4が挙げられる。このレーザドップラー振動計は解析装置の一部および制御装置を含むものである。
【0017】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、解析装置151は、被照射体1における探知対象物3の位置を特定するための特定の情報処理を行うことができるものであれば特に限定されない。この特定の情報処理は本発明の探知方法および本発明のプログラムが備えるものであり、後に詳細に説明する。例えば、この解析装置自体に対象面上でスキャンされた周波数毎の速度振幅データが蓄積されていき、後の解析時に利用される。
【0018】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、任意波形発生装置17は、制御装置152の指令によって所望の周波数の音波を音響発信源11から発生させることができる装置である。例えば、ノイズ波やバースト波を発生可能な市販のファンクションジェネレータ等を用いることができる。送信する音波の波形は通常この任意波形発生装置により制御することができる。通常は簡単のために手動で制御するが、解析装置側から制御するようにシステムを構成することも可能である。任意波形発生装置17が発生するトリガ信号に制御装置152を同期させて計測することもできる。
また、アンプ19は特に限定されず、例えば、市販オーディオアンプ等を用いることができる。
【0019】
次に、本発明の探知方法について説明する。
なお、本発明のプログラムは、本発明の探知方法と同様の内容であるので、以下では主に本発明の探知方法について説明する。
本発明の探知方法は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程を備える。この工程は、例えば前述の本発明の非接触音響探知システムを用い、音響発信源から被照射体へホワイトノイズを照射して行うことができる。本発明の非接触音響探知システムはコンピュータに本発明のプログラムをインストールしたものであることが好ましい。
また、本発明の探知方法は、さらに、以下に説明する特定の情報処理を行う各工程を備える。
【0020】
本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程を備える。
【0021】
この工程について、図2を用いて具体的に説明する。
図2は、図1における被照射体1の表面および2つの音響発信源11を上側(計測器13が存在する側)から見た図である。
図2においてn箇所の測定箇所は碁盤の目状に配置されており、図2に示すように、左下から右上へ向かってP1、P2、P3・・・・Px-1、Px、Px+1・・・Pn-2、Pn-1、Pnと付されている。ただし、本発明の探知方法において測定箇所の配置は特に限定されず、例えばランダムに配置されていてもよい。
そして、n箇所の測定箇所の各々において、音響発信源11から照射した音波の周波数がωである場合の被照射体1の表面の振動速度を測定する。ここで、照射した音波の周波数がωである場合のPx(xは1〜nの整数)における前記振動速度をEx(ω)とする。すなわち、各測定箇所におけるωと振動速度Ex(ω)との関係を把握する。ωと振動速度Ex(ω)との関係を図に表すと、例えば図3(a)のようになる。図3(a)は、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωと振動速度振動速度Ek(ω)との関係図である。なお、図3(a)には振動速度E1(ω)〜En(ω)の平均値であるA(ω)も示されている。
振動速度の測定は、例えば前述の本発明の非接触音響探知システムを用い、レーザドップラー振動計などのレーザ変位計によって行うことができる。
【0022】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程を備える。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、ω−Dx(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に示すことができる。また、本発明のプログラムでは、ω−Dx(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に示す。
【0023】
この工程について、図3を用いて具体的に説明する。
図3(a)には、上記のEk(ω)の他に、各測定箇所P1〜Pnにおける振動速度E1(ω)〜En(ω)の平均であるA(ω)の実例が示されている。
そして、振動速度E1(ω)〜En(ω)およびA(ω)を用いて、Dx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)を求める。Dx(ω)は、Pxにおける振動速度差の規格値である。周波数によっては、振動速度の値自体は小さくても平均値との差が大きい場合があり、周波数毎に各測定箇所の振動速度の値で割り算を行って、平均値との相対的な差が明確になるように規格化を行う。規格化により求められた規格値であるDx(ω)は、1を最大値とし、平均振動速度A(ω)との相対的な振動速度差を意味する。
図3(b)は、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωとDk(ω)との関係図の実例である。ω−Dx(ω)図は、測定箇所の数だけ(すなわちn個)作成することができる。
なお、図3(b)における直線20は、次の工程の説明において詳細に述べる閾値を示す直線である。
【0024】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出し、抜き出したm個の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とし、後述する式(1)によってGxを求める工程を備える。
【0025】
この工程について、図4を用いて具体的に説明する。
図4は、図3(b)の実例を、概略概念図として示した図である。すなわち、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωとDk(ω)との関係図である。
この工程では、n個作成された図4に示すようなω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切る。例えば、200〜400Hzの周波数区間と、400〜500Hzの周波数区間と、500〜800Hzの周波数区間と、800〜1300Hzの周波数区間とで、n個の全てのω−Dx(ω)図を区切る。
そして、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定する。図4においてDk(ω)の最大値は0.9程度であるので、その30〜70%(好ましくは40〜60%、より好ましくは0.5程度)の間に含まれる値(Dk(ω)=0.5)を閾値として設定した。この閾値を図4中に直線20として示す。
【0026】
次に、n個のω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が閾値(ここでは0.5)以上である部分を含む周波数区間を抜き出す。図4では、200〜400Hzの周波数区間、400〜500Hzの周波数区間、および800〜1300Hzの周波数区間において、Dk(ω)の値が閾値以上である部分を含んでいるので、これらの周波数区間を抜き出すことができる。また、x=kでない場合のω−Dx(ω)図において、500〜800Hzの周波数区間もDx(ω)の値が閾値以上である部分を含んでいるものがあれば、この周波数区間も抜き出すことができる。
n個のω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が閾値以上である部分を含む周波数区間を全て抜き出すことが好ましいが、一部の周波数区間のみを抜き出してもよい。抜き出した周波数区間の数をm個とする。
【0027】
次に、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とする。例えば、200〜400Hzの周波数区間、400〜500Hzの周波数区間、および800〜1300Hzの周波数区間を抜き出した場合、1個目の周波数区間である200〜400Hzの初めの周波数(ω)はfα1=200Hz、終りの周波数(ω)はfβ1=400Hzであり、2個目の周波数区間である400〜500Hzの初めの周波数(ω)はfα2=400Hz、終りの周波数(ω)はfβ2=500Hzであり、3個目の周波数区間である800〜1300Hzの初めの周波数(ω)はfα3=800Hz、終りの周波数(ω)はfβ3=1300Hzである。
そして、次式(1)によってGxを求める。すなわち、n個存在するω−Dx(ω)図の各々において、閾値以上の部分を含む周波数区間の積分値を求め、それらを合計し、得られた値をGXとする。
【0028】
【数2】
【0029】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製する工程を備える。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、振動速度分布図を表示部(ディスプレイ等)に示すことができる。また、本発明のプログラムでは、振動速度分布図を表示部(ディスプレイ等)に示す。
【0030】
この工程について、図5を用いて具体的に説明する。
図5に示すように、この工程では、測定箇所PxにおけるGx(ωy)(yは1〜mの整数である。)を、図2に示したような実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す。図5は測定箇所PxにおけるGx図2に示した実際のP1、P2・・・Px・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した振動速度分布図である。図5に示す振動速度分布図のG1〜Gnの位置に、G1〜Gnの実際の数値を示してもよいし、その数値の大きさを色で示してもよい。例えば、後に説明する図7はG1〜Gnの数値を色で示した振動速度分布図の実例である。図7では、白色に近いほどGxの値が大きく、黒色に近いほどGxの値が小さいが小さいことを示している。
【0031】
このような本発明によれば、従来のものと比較して、探知対象物の位置をより正確に把握することができる。特にコンクリート構造物の内部の異物の位置をより正確に把握することができる。例えばコンクリート構造物の内部に埋設された異物(発泡スチロール等)は、地中埋設物とは違い、複数の応答周波数帯が比較的近い周波数帯域に存在するが、このような場合であっても、本発明によって、探知対象物の位置をより正確に把握することができる。
【実施例】
【0032】
本発明の実施例および比較例を説明する。
【0033】
<実施例>
図1に示した装置を用い、音波発信源から照射した音波によって励起した地表面の振動をレーザドップラー振動計(ポリテック社製、PSV400−H4)によって取得した。このレーザ振動計が取得する振動は地表面の垂直方向振動である。もし地表面付近に埋設物が存在すると、その埋設物と周囲の土壌の振動特性に差が生じる。音波発信源としては、平面スピーカ(FPS Corp, 2030M3P1R)を2個使用し、図1に示すように互いに向い合う位置に配置にした。第二種縦波を発生させるため、平面スピーカを約20°傾けた状態で実験を行った。
【0034】
また、図1に示した装置を上側から見た図が図6である。具体的には研究室内の槽(50cm×56cm×50cm)にコンクリートを流し込み、ここへ埋設物(探知対象物)として発泡スチロール(300mm×300mm×25mm)を斜めに埋設した。埋設深度は平均で5cm(最大15cm)とした。また、送振波はnoise波またはチャープ波(chirp波)を用いた。チャープは時間的に周波数が変化する波である。
【0035】
そして、図2に示したように、被照射体(コンクリート)の表面の測定箇所を決めた。また、測定箇所の個数(n)は195箇所とした。そして、n箇所(n=195)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とした。
【0036】
次に、周波数に応じた振動速度を、各測定箇所における振動速度であるEx(ω)と、全スキャンポイントの振動速度の平均であるA(ω)を用いて、Dx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)から、周波数毎に規格化した。特定の測定箇所(n=k)における振動速度:Ek(ω)およびそれらの平均値:A(ω)のグラフは、図3(a)に示したような態様となる。また、規格化して得られるω−Dx(ω)図は、図3(b)に示したような態様となる。
【0037】
次に、n個(195個)作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切った。具体的には1100Hz、1500Hz、1750Hz、2450Hzで区切った。そして、各図においてDx(ω)の最大値の50%における任意の値を閾値として設定し、n個(195個)の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間をm個抜き出した。具体的には、1100〜1500Hzおよび1750〜2450Hzの2個の周波数区間を抜き出した。
次に、抜き出したm個(2個)の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβy(yは1〜mの整数である。)とした。つまり、fα1=1100Hz、fβ1=1500Hz、fα2=1750Hz、fβ2=2450Hzとした。
そして、次の式(1−1)によってGxを求めた。
【0038】
【数3】
【0039】
次に、測定箇所PxにおけるGxを、実際のP1、P2・・・PX・・Pn(n=195)の位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図を作製した。作成した振動速度分布図を図7に示す。図7では、白色に近いほどGxの値が大きく、黒色に近いほどGxの値が小さいが小さいことを示している。
図7から、埋設物の位置を鮮明な画像で確認することができた。
【0040】
<比較例>
上記の実施例では、1100〜1500Hzおよび1750〜2450Hzの2個の周波数区間を抜き出して、抜き出したm個(2個)の周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfαy、終りの周波数(ω)をfβyとした後、式(1−1)によってGxを求めたが、実施例と同様の方法で特定して抜き出した1100〜1500Hzおよび1750〜2450Hzの2個の周波数区間について、初めの周波数と終わりの周波数とを同様に定義した後、次の式(2−1)、式(2−2)を用いて、2つの振動速度分布図を作成した。式(2−1)を用いた振動速度分布図を図8(a)、式(2−2)を用いた振動速度分布図を図8(b)に示す。
【0041】
【数4】
【0042】
【数5】
【0043】
図8(a)および(b)の振動速度分布図と、図7に示した振動速度分布図とを比較すると、本発明に相当する図7に示した振動速度分布図の方がより鮮明であることが分かる。なお、図8(a)の振動速度分布図と図8(b)の振動速度分布図とを合成すると、図7に示した振動速度分布図となる。
【符号の説明】
【0044】
1 被照射体
3 探知対象物
10 本発明の非接触音響探知システム
11 音響発信源
13 計測器
131 レーザ
15 コンピュータ
151 解析装置
152 制御装置
153 表示部
17 任意波形発生装置
19 アンプ
20 閾値
図1
図2
図4
図5
図3
図6
図7
図8