(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
集電体の一方の主面と電気的に結合した正極活物質層を有する正極及び前記集電体の他方の主面と電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、正極及び負極の間に配置された電解質層とが、交互に積層されてなる積層型直列電池であることを特徴とする、請求項13記載の有機電解液電池。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の解決課題は、金属に対する接着性に優れ(特にステンレスやニッケルなどの高融点金属に対しても優れた接着性を示し)、しかも、優れた耐有機溶媒性を有する樹脂組成物を提供することである。
【0009】
また、金属に対する接着性に優れ(特にステンレスやニッケルなどの高融点金属に対しても優れた接着性を示し)、比較的低温で高い接着力の接着状態を形成し得、しかも、優れた耐有機溶媒性を有する、特に有機電解液電池のシール剤として好適な樹脂組成物を提供することである。
【0010】
また、封止すべき部分が複雑な形状や狭ギャップであっても高信頼性の密閉構造に封止された有機電解液電池、特に、発電要素を挟む2枚の集電体間のギャップが従来よりも狭くても、2枚の集電体間が高信頼性の密閉構造に封止され、その封止部が長期間安定した封止性能を示す、有機電解液電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エポキシ樹脂として、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂を少なくとも使用し、かつ、かかるエポキシ樹脂に特定の硬化剤を組み合わせることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を少なくとも含むエポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)とを含有することを特徴とする、樹脂組成物。
(2)エポキシ樹脂(A)が、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)とゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)とを含むものである、上記(1)記載の樹脂組成物。
(3)芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)が、脂環式骨格が環状テルペン化合物の残基による骨格からなるテルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)である、上記(1)又は(2)記載の樹脂組成物。
(4)芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)が、脂環式骨格がジシクロペンタジエンの残基による骨格からなるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1−2)である、上記(1)は(2)記載の樹脂組成物。
(5)芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)中の芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)が2.5以上であり、
エポキシ樹脂(A)100重量部中、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を60〜80重量部及びゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)を20〜40重量部含む、上記(2)記載の樹脂組成物。
(6)芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)中の芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)が2.5未満であり、
エポキシ樹脂(A)100重量部中、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を18〜24重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂を42〜56重量部、及びゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)を20〜40重量部含む、上記(2)記載の樹脂組成物。
(7)潜在性硬化剤(B)が3級アミノ基含有変性脂肪族ポリアミンであることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(8)潜在性硬化剤(B)が尿素結合含有変性ポリアミンであることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(9)潜在性硬化剤(B)が尿素結合及びイミダゾール基含有変性ポリアミンであることを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(10)共硬化剤(C)をさらに含有することを特徴とする、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(11)共硬化剤(C)がジシアンジアミドであることを特徴とする、上記(10)記載の樹脂組成物。
(12)加熱硬化物のガラス転移温度が100℃以上である、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(13)当該樹脂組成物を介在させて2枚のステンレス箔を貼り合わせた試験片に対し、JIS K−6854−3に準じて剥離速度100mm/minでT型剥離を行った時の剥離強度が0.7N/10mm以上である、上記(1)〜(12)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(14)有機電解液電池における、集電体に接続した電極端子と外装体間の封止、及び/又は、対向する集電体の周縁部間の封止を行うシール剤用である、上記(1)〜(13)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(15)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の樹脂組成物を含む有機電解液電池用シール剤。
(16)集電体に接続した電極端子と外装体間、及び/又は、対向する集電体の周縁部間が、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の樹脂組成物により封止されてなることを特徴とする、有機電解液電池。
(17)集電体に接続した電極端子と外装体間のギャップ、及び/又は、対向する集電体の周縁部間のギャップが10〜50μmの範囲内である、上記(16)記載の有機電解液電池。
(18)集電体上に該集電体に電気的に結合した正極活物質層を有する正極と、
集電体上に該集電体に電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、
正極及び負極の間に配置された電解質層とを含んでなることを特徴とする、上記(16)又は(17)記載の有機電解液電池。
(19)集電体の一方の主面と電気的に結合した正極活物質層を有する正極及び前記集電体の他方の主面と電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、正極及び負極の間に配置された電解質層とが、交互に積層されてなる積層型直列電池であることを特徴とする、上記(18)記載の有機電解液電池。
(20)集電体及び電極端子がステンレス箔である、上記(16)〜(19)のいずれかに記載の有機電解液電池。
(21)対向する集電体の間に正極/電解質層/負極の積層単位を有し、対向する集電体の周縁部の間が上記(1)〜(13)のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物により封止されてなる単電池層を単数または複数有する有機電解液電池であって、正極/電解質層/負極の総厚みが50μm以下であり、前記樹脂組成物の硬化物が100℃以下の加熱によって硬化したものであることを特徴とする、有機電解液電池。
(22)集電体及び電極端子がステンレス箔である、上記(21)記載の有機電解液電池。
(23)上記(1)〜(13)のいずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする機能化学品。
【発明の効果】
【0013】
本発明の樹脂組成物は、比較的低温で硬化し得、その硬化物は、金属に対する接着性に優れ、ステンレスやニッケルなどの高融点金属に対しても高い接着力で接着し、しかも、優れた耐有機溶媒性を有する。また、複雑な形状や狭ギャップの部位にも、それを直接塗工して、熱硬化することができる。
従って、本発明の樹脂組成物を、例えば、有機電解液電池用のシール剤として使用することで、発電要素における対向する集電体の周縁部間や電極端子と外装体間を高信頼性の密閉構造に封止することができ、その結果、電解質層からの有機電解液の染み出しによる液絡(短絡)等が長期に亘って確実に防止される、信頼性の高い有機電解液電池を実現することができる。
また、狭ギャップの対向する2つの金属面間を高信頼性の密閉構造に封止でき、しかも、その封止作業を比較的低い温度で行うことができるので、有機電解液電池の発電要素の薄型化にも十分に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明の樹脂組成物は、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を少なくとも含むエポキシ樹脂(A)と、潜在性硬化剤(B)とを含有することが主たる特徴である。
【0016】
[エポキシ樹脂(A)]
本発明におけるエポキシ樹脂(A)は、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を少なくとも含む。
【0017】
本発明において「芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)」とは、1分子中にベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環と、炭素数が6〜11(好ましくは6〜10)の脂環式骨格とが導入されたエポキシ樹脂であり、フェノール類やナフトール類と、不飽和脂環式化合物(例えば、環状テルペン化合物、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、4−ビニルシクロヘキセン、5−ビニルノルボナ−2−エン等)との重付加反応物を原料として公知の方法により合成される、不飽和脂環式化合物の残基による脂環式骨格を有するエポキシ化合物であれば特に限定されない。なお、脂環式骨格の形態は、単環式、双環式、縮合多環式、双環を含む縮合多環式等のいずれでもよく、また、1分子中の芳香環及び脂環式骨格はそれぞれが1種類からなるものであっても、2種類以上が共存しているものであってもよい。中でも、以下に詳述する脂環式骨格が環状テルペン化合物の残基による骨格からなる「テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)」や、脂環式骨格がジシクロペンタジエンの残基による骨格からなる「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1−2)」が特に好適に使用される。
【0018】
<テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)>
本発明において、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)としては、単核多価フェノールのポリグリシジルエーテル、各核を結合する結合手の炭素原子数が4以下の多核多価フェノールのポリグリシジルエーテル、及び、ノボラック類のポリグリシジルエーテルからなる群から選ばれた少なくとも一種のエポキシ樹脂(a)に、テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)を付加させた反応生成物からなるものを挙げることができる。
【0019】
上記エポキシ樹脂(a)の具体例としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール等の単核多価フェノール化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、エチリデンビスフェノール(ビスフェノールAD)、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノ−ルA)、チオビスフェノール、メチレンビス(オルソクレゾール)、イソプロピリデンビス(オルソクレゾール)、テトラブロムビスフェノールA、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3−トリス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、スルホビスフェノール、オキシビスフェノールなどの多核多価フェノール化合物;フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、レゾルシンノボラック、ナフトールノボラック等のノボラック類のポリグリシジルエーテルが挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。中でも、ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD等)のポリグリシジルエーテルからなるエポキシ樹脂が好ましく、特に好ましくはビスフェノールFのポリグリシジルエーテルからなるエポキシ樹脂である。
【0020】
また、上記テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)は、環状テルペン化合物にフェノールまたはアルキルフェノール等のフェノール類を付加して得られるものであり、環状テルペン化合物としては、単環のテルペン化合物であってもよいし、双環のテルペン化合物であってもよい。また、環状テルペン化合物は1種であっても、2種以上であってもよい。具体例としては、リモネン(α型、β型)、テルビノーレン、ピネン(α型、β型)、テルピネン(α型、β型、γ型)、メンタジエン(3,3型、2,4型)等が挙げられる。一方、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、アミルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノール、メトキシフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、5−メチル−2−(1−メチルエチル)フェノール等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0021】
テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)において、環状テルペン化合物にフェノール類を付加する方法は、環状テルペン化合物1モルに対し、フェノール類を好ましくは0.5〜5モル使用し、例えば、酸触媒の存在下、40〜160℃で1〜10時間反応させることにより容易に行なうことができる。また、芳香族炭化水素類、アルコール類、エーテル類等の溶媒中で上記反応を行なうこともできる。また、上記反応で使用される上記酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、三フッ化ホウ素もしくはその錯体、活性白土等が挙げられる。
【0022】
テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)の具体例としては、例えば、下記の構造からなる化合物(1)〜(11)等が挙げられ、中でも、化合物(4)〜(8)が好ましく、特に好ましくは化合物(5)である。
【0030】
なお、テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)は市販品を使用してもよく、具体例としては、例えば、YP−90LL、マイティエースG125、マイティエースG150、マイティエースK125、YSレジンTO125、YSレジンTO115、YSレジンTO105、YSレジンTO85、YSレジンTR105TR、YSレジンZ115、YSレジンZ100、YSポリスター2130、YSポリスター2115、YSポリスター2100、YSポリスターU115、YSポリスターT160、YSポリスターT145、YSポリスターT130、YSポリスターTH130、YSポリスターT115、YSポリスターT100、YSポリスターT80、YSポリスターT30、YSポリスターS145、YSポリスターN125(全て、ヤスハラケミカル社製の商品名)が挙げられる。
【0031】
エポキシ樹脂(a)にテルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)を付加させて目的の反応生成物を得る方法としては、エポキシ樹脂にフェノール化合物を付加させる通常の方法を採用することができ、例えば、ジメチルベンジルアミン等の塩基性触媒の存在下に、両者を60〜200℃に加熱する方法等を用いることができる。
【0032】
エポキシ樹脂(a)とテルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)の量比は、エポキシ樹脂(a)のエポキシ基1個に対し、テルペン構造骨格フェノール化合物(b)のフェノール性水酸基が0.05〜0.8個、好ましくは0.1〜0.7個となる比率、特に上記(b)としてモノフェノール化合物を用いる場合には、好ましくは0.1〜0.5個となる比率が好適である。テルペン構造骨格フェノール化合物(b)の使用比率が上記の範囲未満(エポキシ基1個に対し、水酸基0.05個未満)の場合には、例えば、有機電解液電池のシール剤として使用する場合の樹脂組成物の集電体や外装体への密着性が不十分となり、また上記の範囲を超える(エポキシ基1個に対し、水酸基0.8個超)場合には、エポキシ当量が著しく大きくなるため、目的の樹脂組成物の硬化性が不十分となり、例えば、有機電解液電池のシール剤として使用する場合に十分に高い耐電解液性が得られにくくなる傾向となる。
【0033】
なお、本発明において、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)は、水酸基を2個以上有するテルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)をグリシジルエーテル化することによって得られたポリグリシジルエーテルであってもよい。この場合、テルペン構造骨格含有フェノール化合物(b)とエピクロルヒドリンやエピブロモヒドリンなどのエピハロヒドリンとの反応は、例えば、イソプロピルアルコールやジメチルスルホキシドのような非プロトン性極性溶媒等の不活性な有機溶媒の存在下に苛性ソーダなどを添加して反応させることによって行うことができる。また、触媒として4級アンモニウム塩を用いても良いく4級アンモニウム塩としては、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0034】
本発明におけるテルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(E1−1)は、市販品を使用することができ、例えば、(株)ADEKA製のEP9003(エポキシ当量:250)、ジャパンエポキシレジン(株)製のYL7291(エポキシ当量:229)等を挙げることができる。
【0035】
<ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1−2)>
本発明でいう、「ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1−2)」は、ジシクロペンタジエンとフェノール類又はナフトール類を反応させて得られるジシクロペンタジエン骨格含有フェノール化合物又はジシクロペンタジエン骨格含有ナフトール化合物を常法によりエピクロルヒドリンやエピブロモヒドリンなどのエピハロヒドリンと反応させることによって得られるエポキシ樹脂(ポリグリシジルエーテル)である。
【0036】
ジシクロペンタジエン骨格含有フェノール化合物やジシクロペンタジエン骨格含有ナフトール化合物は、例えば、フリーデルクラフト反応を利用し、ジシクロペンタジエンとフェノール類又はナフトール類を酸触媒の存在下で反応させる方法等によって得ることができる。フェノール類としては、例えば、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2−メチルヒドロキノン、レゾルシン、ヒドロキノン、カテコール、ブロモフェノール等を挙げることができる。また、ナフトール類としては、α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等を挙げることができる。フェノール類(ナフトール類)の仕込み量はジシクロペンタジエンの仕込み量に対して1倍モル当量以上、特に3〜8倍モル当量用いるのが好ましい。反応条件は、好ましくは、10〜200℃で、30分〜7時間、具体的には、例えば、触媒に三フッ化ホウ素・フェノール錯体を使用する場合、好ましくは20〜160℃、特に好ましくは50〜150℃の範囲である。反応終了後、反応液から触媒を除去した後、反応液を濃縮すること等により所望のジシクロペンタジエン骨格含有フェノール化合物(ジシクロペンタジエン骨格含有ナフトール化合物)を得ることができる。
【0037】
本発明において、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(E1−2)は、好ましくは、一般式(III):
【0039】
(式中、m個のRは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基又はt−ブチル基を表し、nは0〜4の整数、mは1〜3の整数を表す。)
で表されるエポキシ樹脂であり、特に好ましくは、式中のRが水素原子又はメチル基であるエポキシ樹脂(好ましくはmが1)であり、このようなエポキシ樹脂は、DIC(株)より、エピクロンHP−7200(エポキシ当量:258)、HP−7200L(エポキシ当量:247)、HP−7200H(エポキシ当量:280)等の名称で市販されている。
【0040】
本発明において、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)は、エポキシ当量が200以上であるものが好ましく、エポキシ当量が220以上であるものがより好ましく、エポキシ当量が230以上であるものがとりわけ好ましい。また、エポキシ当量が2000以下であるものが好ましく、エポキシ当量が1500以下であるものがより好ましく、エポキシ当量が300以下であるものがとりわけ好ましく、エポキシ当量が260以下であるものが特に好ましい。エポキシ当量が200未満では、例えば、目的の樹脂組成物を有機電解液電池のシール剤として使用する場合の集電体や外装材への密着性が不十分となり、2000を超えると、目的の樹脂組成物の硬化性が不十分となり、例えば、有機電解液電池のシール剤として使用する場合に十分に高い耐電解液性が得られにくくなる傾向となる。なお、本発明でいうエポキシ樹脂のエポキシ当量はJIS K 7236に記載の方法による測定値である。
【0041】
また、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)は、特に樹脂組成物の金属に対する接着性の観点から、脂環式骨格の含有量が好ましくは20重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上である。一方、脂環式骨格の含有量が多すぎると、樹脂組成物の耐電解液性が低下する傾向となるため、脂環式骨格の含有量は55重量%以下が好ましく、より好ましくは53重量%以下ある。ここで、脂環式骨格の含有量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)によって分析された重量割合で表される値である。
【0042】
また、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)における芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)は樹脂組成物の接着性、耐電解液性の観点から、1.0〜5.0が好ましく、より好ましくは1.5〜3.0である。芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)が1.0未満であると、エポキシ樹脂が半固形や固形となり、シール材の粘度が高くなる傾向となり、5.0を超えると、脂環式骨格による耐電解液性や接着性の向上効果が得られにくい傾向となる。ここで、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)は、GPC、NMRなど任意の分析方法を用いた構造解析によって測定される。
【0043】
本発明において、A成分(エポキシ樹脂(A))全体における芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)の使用量は、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)の種類によって適宜決定されるが、一般的には、エポキシ樹脂(A)100重量部中、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)が18〜100重量部(好ましくは20〜100重量部)となる範囲内で使用される。芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)の使用量が18重量部より少ないと目的の樹脂組成物の接着性が低下する傾向となり、特にステンレス等の耐熱性金属に対して良好な接着性が得られにくい傾向となる。
【0044】
本発明において、エポキシ樹脂(A)における、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)と併用可能なエポキシ樹脂(「併用エポキシ樹脂」)としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂)、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂およびこれらのエポキシ樹脂をゴム状コアシェルポリマーで変性したゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はいずれか1種を使用するか2種以上を混合して用いてもよい。また、これらのエポキシ樹脂はエポキシ当量が150〜300の範囲内のものが好ましく、エポキシ当量が160〜245の範囲内のものがより好ましい。
【0045】
樹脂組成物の耐電解液性と集電体や外装材への密着性の観点から、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート828」(エポキシ当量:190)等)、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製「エピコート806」(エポキシ当量:165)、東都化成(株)製「YDF8170」(エポキシ当量:160)等)、液状ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(例えば、東都化成(株)製「ZX1059」(エポキシ当量:165)等)又はこれらのエポキシ樹脂をゴム状コアシェルポリマーで変性したゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(EC2)(すなわち、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等)等が好ましく、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、液状ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0046】
ここで「ゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)」とは、エポキシ樹脂中にゴム状コアシェルポリマーが一次粒子の状態で分散しているエポキシ樹脂組成物を意味し、例えば、特開2004−315572号公報に記載の通りの方法で製造することができる。
【0047】
エポキシ樹脂の変性に使用するゴム状コアシェルポリマー(X)は、ジエン系単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体50重量%以上及びその他の共重合可能なビニル単量体50重量%未満を単量体成分とするゴム弾性体、ポリシロキサンゴム系弾性体、またはこれらの混合物からなるゴム粒子コア(X−1)50〜95重量%に対して、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体からなるシェル層(X−2)5〜50重量%をグラフト重合して得られるものである。
【0048】
ゴム粒子コア(X−1)を構成するジエン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等を挙げることができるが、ブタジエンが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられるが、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。その他の共重合可能なビニル単量体としては、上述のアルキル(メタ)アクリレート以外のアルキル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族系モノマー、ビニルシアン系モノマー等が例示できる。(メタ)アクリレート系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ビニル芳香族系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルシアン系モノマーとしては、(メタ)アクリロニトリル、置換アクリロニトリルを例示することができる。これらは1種或いは2種以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、ゴム粒子コア(X−1)全体の重量に対して好ましくは50重量%未満、より好ましくは40重量%未満である。
【0049】
また、ゴム粒子コア(X−1)を構成する成分として、架橋度を調節するために、多官能性モノマーを使用しても良く、多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(イソ)シアヌル酸トリアリル、(メタ)アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリル、フタル酸ジアリル等を例示できる。これらの使用量はゴム粒子コアの全重量に対して10重量%以下、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0050】
シェル層(X−2)は、ゴム状コアシェルポリマー(X)がエポキシ樹脂中で安定に一次粒子の状態で分散するための、エポキシ樹脂に対する親和性を与える機能を有する。シェル層(X−2)を構成するポリマーはゴム粒子コア(X−1)を構成するポリマーにグラフト重合されており、実質的にゴム粒子コア(X−1)を構成するポリマーと結合していることが好ましい。具体的には、シェル層(X−2)を構成するポリマーは、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上がゴム粒子コア(X−1)に結合していることが望ましい。シェル層(X−2)は、エポキシ樹脂に対して膨潤性、相容性もしくは親和性を有するものが好ましい。
【0051】
シェル層(X−2)を構成するポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル、シアン化ビニル、エポキシアルキルビニルエーテル、不飽和酸誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体およびマレイミド誘導体からなる群より選ばれる1種以上の単量体からなる。具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸無水物、マレイン酸イミド等をそれぞれ例示することができ、これらは1種或いは2種以上を適宜組み合わせて使用できる。
【0052】
ゴム状コアシェルポリマー(X)の好ましいゴム粒子コア(X−1)/シェル層(X−2)の比率(重量比)は、50/50〜95/5の範囲であることが好ましく、より好ましくは60/40〜90/10である。
【0053】
ゴム状コアシェルポリマー(X)は周知の方法、例えば、乳化重合、懸濁重合、マイクロサスペンジョン重合などで製造することができる。この中でも特に乳化重合による製造方法が好適である。
【0054】
ゴム状コアシェルポリマー(X)の粒子径には特に制限は無く、ゴム状コアシェルポリマー(X)を水性ラテックスの状態で安定的に得ることができるものであれば問題なく使用できる。なお、工業生産性の面からは、体積平均粒子径が0.03〜1μm程度のものが、製造が容易であるという点でより好ましい。なお、体積平均粒子径は、マイクロトラック法により測定することができる。
【0055】
ゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)は、水性ラテックスの状態で得られるゴム状コアシェルポリマーを有機溶剤と混合してゴム状コアシェルポリマーを有機相中に取り出し、有機溶剤へゴム状コアシェルポリマーが分散した分散体を得た後に、エポキシ樹脂と混合することで得られる。
【0056】
ゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)において、ゴム状コアシェルポリマー(X)の含有量は10〜40重量%が好ましい。
【0057】
ゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)は上市されており、市販品をそのまま使用することができる。例えば、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂として市販されている(株)カネカ製カネエースMX120(エポキシ当量:243)、MX125(エポキシ当量:243)、MX130(エポキシ当量:243)、MX960(エポキシ当量:245)、MX965(エポキシ当量:220)、レジナス化成(株)製のRKB3040(エポキシ当量:230)等を特に好適に使用することができる。
【0058】
カネエースMX120、MX125、MX130は、ゴム粒子コアがスチレン−ブタジエン共重合物からなるゴム状コアシェルポリマーを25重量%含有するものであり、カネエースMX960、MX965は、ゴム粒子コアがポリジメチルシロキサン等のポリシロキサンゴム(シリコーンゴム)からなるゴム状コアシェルポリマーを25重量%含有するものである。また、レジナス化成(株)製RKB3040はゴム粒子コアがブタジエンゴムからなるゴム状コアシェルポリマーを29重量%含有するものである。
【0059】
本発明において、エポキシ樹脂(A)は、目的の樹脂組成物に極めて高いレベルの耐電解液性を付与するという観点から、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)と、ゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)とを含む態様が好ましい。
【0060】
また、かかるエポキシ樹脂(A)として芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)とゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)を使用する態様において、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)における芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)が2.5以上(特に3.0以上)である場合、樹脂組成物のステンレス等の耐熱性金属に対する接着性とのバランスの点から、エポキシ樹脂(A)100重量部中、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を60〜80重量部(好ましくは60〜70重量部)及びゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)を20〜40重量部(好ましくは30〜40重量部)含む組成とするのが好ましい。
【0061】
また、かかるエポキシ樹脂(A)が芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)とゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)とを含む態様において、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)における芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)が2.5未満(特に2.1未満)である場合、樹脂組成物のステンレス等の耐熱性金属に対する接着性とのバランスの点から、エポキシ樹脂(A)100重量部中、芳香環及び脂環式骨格を有するエポキシ樹脂(E1)を18〜24重量部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(好ましくはビスフェノールF型エポキシ樹脂)を42〜56重量部、及びゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(E2)を20〜40重量部含む組成とするのが好ましい。
【0062】
なお、樹脂組成物を封止すべき部分(シール部)に適用する際の作業性の改善等を目的として、樹脂組成物の粘度調整のために、上述の併用エポキシ樹脂とは別に、環状骨格(脂環式骨格)を有する低粘度エポキシ樹脂(エポキシ化合物)を配合してもよい。ここでいう低粘度とは室温(25℃)での粘度が概ね10poise以下であることを意味する。このような、環状骨格を有する低粘度エポキシ樹脂としては、環状テルペンフェノール化合物とフェノール類とを等モル付加した環状テルペン骨格含有モノフェノール化合物にエピハロヒドリンを反応させた環状テルペン骨格含有モノエポキシ化合物、フェニルグリシジルエーテル、シクロへキサンジメタノールジグリシジルエーテル(例えば、(株)ADEKA製「EP4085S」等)、ジシクロペンタジエンジグリシジルエーテル(例えば、(株)ADEKA製「EP4088S」等)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、ナガセケムテックス(株)製「デナコールEX201」等)、グリシジルオルソトルイジン(例えば、日本化薬(株)製「GOT」等)、ジグリシジルアニリン(例えば、日本化薬(株)製「GAN」等)等が挙げられる。該低粘度エポキシ樹脂を使用する場合、その使用量はA成分のエポキシ樹脂100重量部中、30重量部以下の範囲内であり、好ましくは20重量部以下、より好ましくは15重量部以下である。これは、30重量部を超えると希釈効果は大きいものの耐電解液性と集電体や外装材への密着性が低下する傾向となるためである。なお、5重量部未満では粘度の希釈効果が小さいので、5重量部以上が好ましく、7重量部以上がより好ましい。
【0063】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)の含有量は樹脂組成物全体当たり55重量%以上が好ましく、より好ましくは、58重量%以上、さらにより好ましくは60重量%以上である。また、85重量%以下が好ましく、83重量%がより好ましく、80%以下がさらに好ましく、75重量%がさらにより好ましい。
【0064】
[潜在性硬化剤(B)]
本発明に使用される潜在性硬化剤は、潜在性変性ポリアミン系の硬化剤が好ましく、具体的には、マイクロカプセル化イミダゾール基含有変性ポリアミン(例えば、旭化成ケミカルズ(株)製のノバキュアHX3721、HX3721、HX3921HP、HX3941HP等)、ジシアンジアミド変性ポリアミン(例えば、(株)ADEKA製のEH3842等)、3級アミノ基含有変性脂肪族ポリアミン(例えば、(株)ADEKA製のEH4380S、EH3615S等)、イミダゾール基含有変性ポリアミン(例えば、味の素ファインテクノ(株)製のアミキュアPN23、PN31、PN40、PN50、PN-H、(株)ADEKA製のアデカハードナーEH3293S、EH3366S、EH4346S等)、尿素結合含有変性ポリアミン(例えば、富士化成工業(株)製のフジキュア−FXR1000、FXR1110、FXR1121、FXR1081等)、尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン(例えば、(株)ADEKA製のEH4353S)、尿素結合およびイミダゾール基含有変性ポリアミン(例えば、富士化成工業(株)製のFXR1110、FXR1121)、イミダゾール化合物(例えば、四国化成工業(株)製キュアゾール2MZ−A、2MA−OK、2PHZ、2P4MHZ等)等が挙げられる。かかる潜在性硬化剤はいずれか1種のみ使用しても2種以上を併用してもよい。なかでも、耐電解液性およびステンレス箔(電極端子や集電体に使用されるステンレス箔)への接着性の観点から、3級アミノ基含有変性脂肪族ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミン(尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン)、イミダゾール基含有変性ポリアミン、尿素結合およびイミダゾール基含有変性ポリアミンが好ましく、3級アミノ基含有変性脂肪族ポリアミン、尿素結合含有変性ポリアミン(尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン)、尿素結合およびイミダゾール基含有変性ポリアミンが特に好ましい。
【0065】
本発明の樹脂組成物において当該B成分の潜在性硬化剤の使用量は、A成分のエポキシ樹脂(エポキシ樹脂(A))に対して0.7〜1.3当量の範囲で使用される。特に樹脂組成物の耐電解液性及び硬化性の観点から0.9〜1.1当量が好ましい。0.7当量未満であると、硬化が遅くなり十分な架橋構造が形成され難くなる傾向があり、接着強度も低下し、耐有機溶媒性(耐電解液性)が低下してしまう傾向がある。また1.3当量を超えると未反応の硬化剤が硬化後の樹脂中に存在し有機溶媒(電解液)に溶出する傾向があり、目的の樹脂組成物を有機電解液電池のシール剤として使用した場合に、電池特性を著しく低下させる傾向となる。
【0066】
本発明の樹脂組成物は少なくとも上述のエポキシ樹脂(A)及び潜在性硬化剤(B)を含有して構成されるが、更に共硬化剤(C)を含有してもよく、当該共硬化剤(硬化促進剤)を含有することで、樹脂組成物の接着性をさらに向上させることができ、特にステンレス箔への接着性を向上させることができる。当該C成分の共硬化剤としては、ジシアンジアミド、尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン(例えば、ADEKA製のEH4353S等)等が挙げられ、ジシアンジアミド及び尿素結合含有変性脂肪族ポリアミンを併用するのが特に好ましい。
【0067】
当該C成分の共硬化剤の使用量は、A成分のエポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲で使用され、組成物の耐有機溶媒性(耐電解液性)及び硬化性の観点から、0.8〜8重量部が好ましく、1〜5重量部が特に好ましい。0.5重量部未満ではステンレス箔への接着性向上に十分に寄与しない可能性があり、10重量部を超える場合は組成物の耐有機溶媒性(耐電解液性)が低下する傾向となり、目的の樹脂組成物を有機電解液電池のシール剤として使用した場合に、電解液への溶出を生じたり、電池特性を損なう恐れがある。
【0068】
本発明の樹脂組成物には、接着性の向上、樹脂組成物の塗布時の作業性等の観点から、さらに充填剤(D)を配合することができる。充填剤の種類は特に限定されず、無機系充填剤であればいずれのものも使用可能であるが、具体的には、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、結晶性シリカ、溶融シリカ等が挙げられ、これらは1種のみ使用しても良いし、2種以上を混合して使用しても構わない。なかでも、ステンレス箔等の金属箔(集電体)への密着性の点からタルクが好ましく、耐有機溶媒性(耐電解液性)の点から炭酸カルシウムが好ましい。充填剤(D)の配合量はA成分のエポキシ樹脂100重量部に対して15〜60重量部が好ましく、20〜50重量部がより好ましく、25〜50重量部が特に好ましい。15重量部未満では、樹脂組成物の接着性、樹脂組成物の塗布時の作業性等の向上に十分に寄与しない可能性があり、60重量部を超える場合は、樹脂配合物の粘度が高くなる傾向となり、塗布時の取り扱い性が悪くなる恐れがある。なお、充填剤(D)として、タルクと炭酸カルシウムを併用する場合、それらの量比(タルク:炭酸カルシウム)は重量比で1:2〜6が好ましく、1:3〜5がより好ましい。
【0069】
本発明の樹脂組成物には、その効果を阻害しない程度に、通常樹脂組成物に使用し得る各種添加剤を配合しても良い。各種添加剤としては、顔料、染料、消泡剤、カップリング剤、界面活性剤等が挙げられる。接着性改善や粘度低減できるという観点で、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤が好ましい。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、金属に対する接着性に優れ、対向する2つの金属面同士を強固に接着し得、しかも、高い耐有機溶媒性を有することから、各種機能化学品として使用することができる。なお、ここでいう金属は特に限定されず、アルミニウム、アルミニウム系合金、銅、銅合金、ニッケル、ステンレス等の種々の技術分野の装置や部材において汎用的に使用されている種々の金属が含まれる。各種機能化学品としては、具体的には、接着剤、シール剤(コイル用シール剤、リレー用シール剤、有機電解液電池用シール剤等)、注型剤、コーティング剤(各種電子部品の耐湿コート等)、塗料(プリント基板の絶縁塗料等)等が挙げられる。なかでも、有機電解液電池の液体電解質(有機電解液)に対する耐性が極めて高く、高温の有機電解液に接触しても劣化が小さく、ニッケル、ステンレス等の高耐熱性金属に対しても高い接着力を得ることができるという観点で、有機電解液電池用シール剤として特に有用である。
【0071】
本発明の樹脂組成物は、加熱硬化によって優れた接着性及び有機電解液に対する耐劣化性を発現する。加熱硬化は100〜120℃程度の範囲内で、0.5〜1.0時間程度行えばよい。なお、100℃以下、さらには80℃以下の温度でも十分に硬化し得るので、より低温での硬化が必要である場合は、80℃付近で加熱硬化してもよい。また、本発明の樹脂組成物は、加熱硬化する前の未硬化状態では室温下(25℃)での粘度が500〜2500poise(好ましくは500〜2000poise)の範囲内の液状であり、塗布作業が行いやすく、また、塗布後に加圧等によって容易に延展(薄厚化)させることがきるので、シールすべき部分が複雑な形状(形態)であったり、狭ギャップであっても、密閉性の高いシール部を形成することができ、50μm以下というようなギャップに対しても、高い密閉性のシール部を形成する。具体的には、50μm以下のギャップで対向する2つの金属面間に高い密閉性のシール部を形成し得る。例えば、後述の実施例から明らかなように、本発明の樹脂組成物を2枚のステンレス箔の間に介在させて2枚のステンレス箔を貼り合わせた試験片に対し、JIS K−6854−3に準じて剥離速度100mm/minでT型剥離を行った時の剥離強度が0.7N/10mm以上という、高密着強度のシール構造を形成することができる。
【0072】
また、本発明の樹脂組成物は、加熱して得られる硬化物(加熱硬化物)のガラス転移温度が100℃以上であるのが好ましく、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは140℃以上である。加熱硬化物のガラス転移温度が100℃以上を示すことで有機電解液に対する耐劣化性(耐電解液性)がさらに向上する。加熱硬化物のガラス転移温度は、硬化剤の種類、配合量(エポキシとの当量比)等を変更することで調整される。なお、加熱硬化物のガラス転移温度が高くなり過ぎると、加熱硬化物の架橋密度が高くなり加熱硬化物の硬化収縮が大きくなる傾向があるため、ガラス転移温度は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましい。
【0073】
以下、本発明の樹脂組成物をシール剤に使用して封止部を形成した有機電解液電池(本発明の有機電解液電池)について説明する。
【0074】
一般に、リチウムイオン二次電池等の有機電解液電池は、基本構成として、集電体上に電気的に結合した正極活物質層を有する正極と、集電体上に電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、正極及び負極の間に配置された電解質層とを発電要素として備えるが、本発明の樹脂組成物を適用する有機電解液電池もその基本構成は同じである。本発明の樹脂組成物は有機電解液電池内の種々の密閉すべき部位の密閉に使用することができ、背景技術の欄で説明した、角型電池や円筒型電池における樹脂製絶縁ガスケットのシール性を高めるためのシール剤として使用することができる。また、シート外装タイプの電池での、(1)集電体に接続された電極端子と外装体(シート)間を密閉するためのシール剤、(2)対向する集電体の周縁部間を密閉するためのシール剤、(3)外装体であるシートの周縁部を封止するシール剤等として使用することができる。
【0075】
図1は本発明の第1例の有機電解液電池の模式断面図(
図1(a)、
図1(b))と模式平面図(
図1(c))である。
図1(a)は電極端子の配置部を通る位置での断面図であり、
図1(b)は電極端子の配置部以外の位置での断面図である。
【0076】
当該電池20において、正極1は集電体2とこの集電体2一方の主面に形成された正極活物質層3とで構成され、負極4は集電体5とこの集電体5の一方の主面に形成された負極活物質層6とで構成されている。
【0077】
正極1の集電体2は、金属箔からなり、一種若しくは複数の金属元素から形成されてもよく、または1種若しくは複数の金属元素と1種若しくは複数の非金属元素から形成されてもよい。具体例としては、ステンレス(SUS)箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔等であり、好ましくはステンレス箔である。従来、集電体に一般的に使用されているアルミニウムは金属の中でも比較的融点が低い(約500℃)のに対し、ステンレスは約1200℃まで耐えられる。従って、集電体としてステンレス箔を用いた場合、電極の耐熱性が顕著に向上する。なお、ニッケルはアルミニウムより高い融点を有しており、使用される正極によっては、ニッケル箔も耐熱性の点で好ましいものである。集電体2の厚さは、特に限定されることはないが、一般的には1〜30μmである。集電2体の大きさ(平面の面積)は、電池の使用用途に応じて決定される。また、正極活物質層3に含まれる正極活物質としては、例えば、LiCoO
2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO
2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn
2O
4などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO
2などのLi・Fe系複合酸化物およびこれらの遷移金属の一部を他の元素により置換したもの等が挙げられる。これらリチウム−遷移金属複合酸化物は、反応性、サイクル耐久性に優れる材料であり、低コストである。したがって、これらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池を形成しうる。この他の正極活物質としては、例えば、LiFePO
4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V
2O
5、MnO
2、TiS
2、MoS
2、MoO
3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO
2、AgO、NiOOHなどが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。正極活物質層3は正極活物質と、黒鉛等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤とを混合してN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中に分散させてスラリー(正極合剤)を作製し、当該スラリーを集電体2一方の主面に塗布し、乾燥及び圧縮することにより形成されている。なお、特に限定はされないが、導電剤は正極活物質100重量部当たり5〜10重量部程度が一般的である。正極活物質層3は正極活物質が集電体の片面において1〜50mg/cm
2 程度の付着量となるように形成するのが好ましい。
【0078】
負極4の集電体5は金属箔からなり、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔、ステンレス箔等が挙げられる。正極の集電体2と同様に、ステンレス箔、ニッケル箔を用いた場合、電極の耐熱性が顕著に向上するので好ましい。集電体5の厚さは、特に限定されることはないが、一般的には1〜30μmである。集電体の大きさ(平面の面積)は、電池の使用用途に応じて決定される。また、負極活物質層6に含まれる負極活物質としては、例えば各種の天然黒鉛や人造黒鉛、例えば繊維状黒鉛、鱗片状黒鉛、球状黒鉛などの黒鉛類、および各種のリチウム合金類が好適に用いられる。具体的には、カーボン、グラファイト、金属酸化物、リチウム−金属複合酸化物等が用いられうる。好ましくは、カーボンまたはリチウム−遷移金属複合酸化物が用いられる。これらは、反応性、サイクル耐久性に優れる材料であり、低コストである。そのため、これらの材料を電極に用いることにより、出力特性に優れた電池が形成されうる。なお、リチウム−遷移金属複合酸化物としては、例えば、Li
4Ti
5O
12などのリチウム−チタン複合酸化物等が挙げられる。また、カーボンとしては、例えば、黒鉛(グラファイト)、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられる。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。負極活物質層6は、負極活物質と、黒鉛等の導電剤と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の結着剤とを混合してN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶媒中に分散させてスラリー(負極合剤)を作製し、当該スラリーを集電体5の一方の主面に塗布し、乾燥及び圧縮することにより形成されている。負極活物質層6は負極活物質が集電体の片面において1〜50mg/cm
2 程度の付着量となるように形成するのが好ましい。
【0079】
正極1及び負極4の間には電解質層7が配置されており、これら正極1、負極4及び電解質層7により発電要素10が構成される。
【0080】
電解質層7を構成する電解質は特に限定されないが、液体電解質またはゲルポリマー電解質(ゲル電解質)が用いられる。
【0081】
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持電解質であるリチウム塩が溶解した有機電解液であり、有機溶媒は、特に制限されないが、例えば、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiTaF
6、LiAlCl
4、Li
2B
10Cl
10等の無機酸陰イオン塩、LiCF
3SO
3、Li(CF
3SO
2)
2N、Li(C
2F
5SO
2)
2N等の有機酸陰イオン塩の中から選ばれる、少なくとも1種類のリチウム塩を含み、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる1種または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の有機溶媒(可塑剤)等が挙げられる。
【0082】
一方、ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、あるいは、イオン導電性を持たないポリマーからなるマトリクスポリマーに、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、特に限定されないが例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ヘキサフルオロピレン(HFP)のポリマー、PAN、PMMA及びこれらの共重合体等が挙げられる。
【0083】
なお、電解質層7が液体電解質である場合や、ゲルポリマー電解質であって、その自立性が乏しい場合、電解質層7はポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン製の微多孔膜からなるセパレータとともに構成してもよい。すなわち、正極1及び負極4の間には液体電解質および/またはゲルポリマー電解質が含浸したセパレータが介在する。
【0084】
ゲルポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。化学的な架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。また、物理的な架橋構造を形成させるには、多量の溶媒でマトリックスポリマーを液体電解質とともに溶かし、それをキャストなどの方法で電極あるいはセパレータに塗工、溶媒を揮発させることで高分子鎖間を物理架橋させればよい。
どちらの架橋方法を用いるかは電池の形態、製造方法などにより選択すればよい。
【0085】
正極1の集電体2と負極4の集電体5にそれぞれ電極端子(タブ)8、9が接続され、電極端子8と外装体11A、11Bの間及び電極端子9と外装体11A、11Bの間が本発明の樹脂組成物の硬化物層12によって密閉され(
図1(a))、さらに、電極端子(タブ)8、9の配置部以外は、正極1側の外装体11Aと負極4側の外装体11Bの周縁部が本発明の樹脂組成物の硬化物層12によって密閉されている(
図1(b))。電極端子8、9にはそれぞれ、正極1、負極4の集電体2、5と同様の金属箔が使用され、溶接等で集電体2、5に接続されている。電池の耐熱性向上の観点から、電極端子8、9はステンレス箔が好ましい。また、電極端子8、9の厚みは特に限定はされないが、一般的には50〜500μm程度である。外装体11A、11Bは、アルミニウム等の金属箔や樹脂シート、又はこれらのラミネートシートが使用され、具体的には、例えば、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又は、アイオノマー等の耐電解液性及び熱融着性に優れた樹脂フィルムから構成されている内側層と、例えば、アルミニウム等の金属箔から構成されている中間層と、例えば、ポリアミド系樹脂やポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた樹脂フィルムで構成されている外側層の三層構造のラミネートシートが使用される。
【0086】
本発明の樹脂組成物の硬化物層12の厚みは特に限定されず、1〜1000μmの範囲から適宜選択できるが、より高い信頼性の封止状態を得るためには比較的薄い厚みであるという観点から、硬化物層の厚み上限値は100μmが好ましく、70μmがより好ましく、60μmが更に好ましく、50μmが更に一層好ましく、40μmが殊更好ましく、30μmが特に好ましい。しかし、厚みが薄すぎると、接着性が低下する傾向となることから、硬化物層の厚みの下限値は1μmが好ましく、2μmがより好ましく、5μmが更に好ましく、10μmが更に一層好ましい。
【0087】
なお、かかる
図1の電池では、電極板(正極1、負極4)の集電体2、5と電極端子8、9を別体で構成したが、電極板(正極1、負極4)の集電体2、5をそのまま外装体の周縁部まで延存させて電極端子(タブ)として使用することもできる。
【0088】
また、
図1の電池は発電要素が1個の単層電池であるが、本発明の電池は発電要素を複数備えた積層型並列電池であっても積層型直列電池であってもよい。有機電解液電池を電気自動車やハイブリッド電気自動車等の車両の駆動用電源に使用する場合、電池の高容量化、高電圧化が必要であり、電池の高容量化、高電圧化のために発電要素を複数備えた積層型並列電池や積層型直列電池が有利に使用される。以下、積層型並列電池及び積層型直列電池について説明する。
【0089】
<積層型並列電池>
積層型並列電池の場合、集電体の両主面とそれぞれ電気的に結合した正極活物質層を有する正極と、集電体の両主面とそれぞれ電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、これら正極及び前記負極の間に配置された電解質層とを、交互に積層し、各集電体に接続した電極端子と外装体の間及び電極端子の配置部以外の外装体の周縁部を本発明の樹脂組成物の硬化物層によって密閉する。この場合、正極の集電体及び活物質層、負極の集電体及び活物質層、電極端子並びに外装体の構成材料、厚み等は、上述の
図1の電池20のそれが踏襲される。
【0090】
<積層型直列電池>
積層型直列電池は、集電体の一方の主面と電気的に結合した正極活物質層を有する正極と、前記集電体の他方の主面と電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、正極及び負極の間に配置された電解質層とが交互に積層された構造の電池、あるいは集電体の片面に電気的に結合した正極活物質層を有する正極と、集電体の片面に電気的に結合した負極活物質層を有する負極と、正極および負極の間に配置された電解質層とにより形成された単電池を複数積層した電池であり、積層型直列電池は積層型並列電池に比して一層の高出力密度及び高電圧を有しうる利点がある。
【0091】
図2、3は本発明の第2例による有機電解液電池を示し、
図2は発電要素(セル)の模式断面図(
図2(a))と平面図(
図2(b))であり、
図3は
図2の発電要素(セル)を多重に積み重ねて完成させた積層型直列電池の模式断面図である。
【0092】
発電要素(セル)10は、
図2に示されるように、主面に正極活物質層3を形成した一方の集電体13と、主面に負極活物質層6を形成した他方の集電体13とを、電解質層7を挟んで対向させ、対向する2つの集電体13の周縁部の間を本発明の樹脂組成物の硬化物層12によって密閉している。
【0093】
図3に示されるように、積層型直列電池30は、
図2の発電要素(セル)10を多重に形成した構成であり、正極活物質層3と、負極活物質層6とが集電体13の両主面に形成された電極を複数個有し、各電極が、電解質層7を介して積層されて発電要素10を形成している。この際、一つの電極の正極活物質層3と前記一つの電極に隣接する他の電極の負極活物質層6とが電解質層7を介して向き合うように、各電極および電解質層7が積層される。
【0094】
隣接する正極活物質層3、電解質層7、および負極活物質層6は、一つの単電池層15を構成しており、従って、積層型直列電池30は、対向する集電体13の間に形成された正極/電解質層/負極の積層単位からなる単電池層15が複数積層されてなる構成を有するともいえ、単電池層15の外周にて、隣接する集電体13の間が本発明の樹脂組成物の硬化物層12によって絶縁されている。なお、両最外層に位置する集電体13a、13bには、片面のみに、正極活物質層3または負極活物質層6のいずれか一方が形成されている。
【0095】
正極側最外層集電体13aが延長されて正極端子16とされて、外装体11A、11Bの間に導出され、負極側最外層集電体13bが延長されて負極端子17とされて、外装体11A、11Bの間に導出され、正極端子16と外装体11A、11Bの間及び負極端子17と外装体11A、11Bの間が本発明の樹脂組成物の硬化物層12によって密閉されている。なお、最外層集電体に正極端子を別途設置し、外部に導出する形状としてもよい。その場合は最外層集電体に正極端子を圧着、溶接などで接合させる。好ましくは最外層集電体の電極投影部全面を覆う形状とするのが良い。
【0096】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、有機電解液電池の集電体や電極端子に使用されるステンレスやニッケル等の耐熱性金属に対しても高い接着力で接着し得、しかも、有機電解液に対して高い耐性を有し、高温の有機電解液に接しても膨潤や溶出等も生じにくい。このため、発電要素における対向する集電体の周縁部間や、電極端子と外装体間を、本発明の樹脂組成物の硬化物層12にて密封することで、電解質層7からの有機電解液の染み出しによる液絡(短絡)等が長期に亘って確実に防止される、信頼性の高い有機電解液電池を実現することができる。また、従来から有機電解液電池のシール剤として汎用されている、ポリオレフィン系や変性ポリオレフィン系の接着剤やシーラントフィルムでは困難であった、シールすべき隙間が50μm以下の狭い隙間を封止でき、有機電解液電池の薄型化に寄与する。
【0097】
従って、本発明では、例えば、ステンレス箔からなる対向する集電体の間に正極/電解質層/負極からなる総厚みが50μm以下の積層単位(発電要素)を有し、対向する集電体の周縁部の間が本発明の樹脂組成物の硬化物により封止された薄厚の単電池層を形成することができるので、単電池層を複数用いて電池の高容量化や高電圧化が図りつつ、総厚みが従来よりも薄い積層型並列電池や積層型直列電池を実現することができる。また、本発明の樹脂組成物は100℃以下、さらには80℃以下の温度でも十分に硬化し得るため、集電体の周縁部の封止作業を100℃以下、好ましくは80℃以下の温度で行うことができ、封止作業時の発電要素中の電解質層の劣化を抑制できる。従って、本発明の樹脂組成物をシール剤に使用することで、高性能かつ高信頼性の有機電解液電池を実現することができる。
【0098】
また、本発明では、以上説明した電池(本発明の有機電解液電池)の複数個を並列及び/または直列に接続して組電池を構成することができる。
【実施例】
【0099】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0100】
<樹脂組成物>
[
参考例1
、実施例2〜6、比較例1〜4]
下記の表1に示す組成の樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物の調製は、エポキシ樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)および共硬化剤(C成分)を計量し、ニーダーにて10分間混合した。その後所定量の充填剤(D成分)を投入し20分混合後、3本ロールに2回通し、ニーダーにて30分脱泡混合することで調製した。
【0101】
実施例及び比較例の樹脂組成物は、その物性(粘度、硬化物のガラス転移温度)を以下の方法で測定し、また、以下の評価試験に供した。
【0102】
1.樹脂組成物の粘度(25℃)
E型粘度計(東機産業(株)社製RE−80U)にてJIS−K7117−2に準拠した手順で、3°×R9.7のロータを用い、5rpm、2分の値を粘度の測定値とした。
【0103】
2.樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度
樹脂組成物を100℃、1時間の条件で硬化させた硬化物からなる試料(平面サイズが7mm×30mm、厚みが0.1mmの薄膜)を動的粘弾性装置DMA(SIIナノテクノロジー(株)社製DMS6100)にて、JIS−K7198に準拠した手順で25℃〜200℃、2℃/minで昇温、1Hzの条件で測定した際のtanδのピーク値をガラス転移温度とした。
【0104】
3.耐電解液性試験
樹脂組成物を100℃、1時間の条件で硬化させた硬化物からなる試料(直径(φ)24mm×厚み6mmのペレット:約4g)を、プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート=1/1(重量比)の混合液に80℃で7日間浸漬後、重量を測定する。浸漬前の試料の重量に対する浸漬後の試料の重量の増加率を求め、下記の5段階の基準で評価した。
◎:0〜5重量%、
○:5重量%超〜10重量%、
△:10重量%超〜15重量%、
▲:15重量%超〜20重量%、
×:20重量%超、または、膨潤、溶解
【0105】
4.T型剥離強度試験
(試験片の作製)
アセトン脱脂した同一サイズの2枚のステンレス箔(SUS 316−L、サイズ:15μm×50mm×70mm)を用意し、樹脂組成物を一方のステンレス箔の全面に均一に厚み25μmになるように塗布し、その上から他方のステンレス箔を貼り合わせ、オーブンを用いて、100℃、1時間で硬化し、25℃に冷却後、幅10mmに裁断し、試験片を作製した。ステンレス箔間のギャップは25μmであった。
【0106】
(剥離試験)
試験は基本的にはJIS K−6854−3に準じて実施した。
接着硬化した試験片をテンシロン(オリエンテック社製、RTM−500)を用いてクロスヘッドスピード100mm/minでT型剥離を行って、剥離強度を測定した。結果は下記の4段階の基準で評価した。
◎(優):1.0N/10mm以上
○(良):0.7N/10mm〜1.0N/10mm未満
△(可):0.5N/10mm〜0.7N/10mm未満
×(不可):0.5N/10mm未満
【0107】
また、試験片をプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート=1/1(重量比)の混合液に80℃で7日間浸漬した後、上記と同様のT型剥離を行って、剥離強度を測定した。
【0108】
5.凝集破壊率
T型剥離試験を行った試験片の剥離後の2つの破断面(2枚のステンレス箔)双方に樹脂組成物の硬化物が付着した面積について、その付着面積百分率(%)を目視により求めた。結果は下記の4段階の基準で評価した。
なお、付着面積百分率(%)は接着面積全体(2枚のステンレス箔の全面の合計面積)に対する硬化物が付着した部分の面積(凝集破壊した面積)の割合である。
◎(優):70〜100%
○(良):50〜70%未満
△(可):30〜50%未満
×(不可):0〜30%未満
【0109】
【表1】
【0110】
表1中、EP9003は(株)ADEKA製、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(脂環式骨格含有量=25.1重量%、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)=3.0、エポキシ当量=250、粘度(25℃)=200poise))、EP828はジャパンエポキシレジン(株)製、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量:190)、EPU−78−13Sは(株)ADEKA製、ウレタン変性エポキシ樹脂、EPU−1206は(株)ADEKA製、オキサゾリドン環含有エポキシ樹脂、MX960は(株)カネカ製、シリコーンゴム系のゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂、EH4380Sは(株)ADEKA製、3級アミノ基含有変性脂肪族ポリアミン、EH4353Sは(株)ADEKA製、尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン、FXR1000は富士化成工業(株)製、尿素結合含有変性脂肪族ポリアミン、FXR1110は富士化成工業(株)製、尿素結合およびイミダゾール基含有変性脂肪族ポリアミン、PN−Hは味の素ファインテクノ(株)製イミダゾール基含有変性ポリアミンである。
【0111】
[比較例5]
アセトン脱脂した同一サイズの2枚のステンレス箔(SUS 316−L、サイズ:15μm×50mm×70mm)を用意し、かかる2枚のステンレス箔の間に、厚み60μmのポリオレフィン系フィルムを挟み込み、上下から180℃、圧力0.5MPaで3秒の加熱プレスによりステンレス同士を貼り合わせ幅10mmに裁断し、試験片を作製した。該試験片に対し、前述の剥離試験を行った。その結果、電解液浸漬前の初期の剥離強度は13N/10mmと接着強度は高いものの、試験片をプロピレンカーボネート/エチレンカーボネート=1/1(重量比)の混合液に80℃で7日間浸漬した後は試験片は容易に剥離し、剥離強度は0N/10mmであった。
なお、厚みが60μmよりもさらに薄いポリオレフィン系フィルムの製造は可能であるが、フィルムの取り扱いが非常に困難になるため、電池のシール材として使用することは困難である。
【0112】
[実施例7〜13、比較例6]
下記の表2に示す組成の樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物の調製は、エポキシ樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)および共硬化剤(C成分)を計量し、ニーダーにて10分間混合した。その後所定量の充填剤(D成分)を投入し20分混合後、3本ロールに2回通し、ニーダーにて30分脱泡混合することで調製した。調整後の樹脂組成物を前記の試験に供した。
【0113】
【表2】
【0114】
表2中の記載(表1と重複するものは除く)において、EP9003−1は(株)ADEKA製、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(EP9003の低粘度化品、粘度(25℃)=90poise)、EP9003−2は(株)ADEKA製、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(EP9003の高粘度化品、粘度(25℃)=230poise)、YL7291はジャパンエポキシレジン(株)製、テルペン構造骨格含有エポキシ樹脂(脂環式骨格含有量=29.8重量%、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)=2.0、エポキシ当量:229)、HP−7200LはDIC(株)製、芳香環を含有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(脂環式骨格含有量=31.8重量%、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)=1.9、エポキシ当量:247)、HP−7200はDIC(株)製、芳香環を含有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(脂環式骨格含有量=40.5重量%、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)=1.7、エポキシ当量:258)、HP−7200HはDIC(株)製、芳香環を含有するジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(脂環式骨格含有量=52.1重量%、芳香環と脂環式骨格のモル比率(芳香環/脂環式骨格)=1.6、エポキシ当量:280)、YDF8170は東都化成(株)製、液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量:160)、EP−4088Sは(株)ADEKA製、芳香環非含有ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ当量:173)である。
【0115】
[実施例14〜
19、参考例20]
下記の表3に示す組成の樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物の調製は、エポキシ樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)および共硬化剤(C成分)を計量し、ニーダーにて10分間混合した。その後所定量の充填剤(D成分)を投入し20分混合後、3本ロールに2回通し、ニーダーにて30分脱泡混合することで調製した。調整後の樹脂組成物を前記の試験に供した。
【0116】
【表3】
【0117】
表3中の記載(表1、2と重複するものは除く)において、ZX1059は東都化成(株)製、液状ビスフェノールAD型エポキシ樹脂(エポキシ当量:165)、MX965は(株)カネカ製、シリコーンゴム系のゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(エポキシ当量:220)、RKB3040はレジナス化成(株)製のブタジエンゴム系のゴム状コアシェルポリマー変性エポキシ樹脂(エポキシ当量:230)である。
【0118】
[実施例21〜28]
下記の表4に示す組成の樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物の調製は、エポキシ樹脂(A成分)、硬化剤(B成分)および共硬化剤(C成分)を計量し、ニーダーにて10分間混合した。その後所定量の充填剤(D成分)を投入し20分混合後、3本ロールに2回通し、ニーダーにて30分脱泡混合することで調製した。調整後の樹脂組成物を前記の試験に供した。
【0119】
【表4】
【0120】
<積層型直列電池>
[実施例29]
(1)電極の作製
(a)正極の形成
以下の材料を所定の比で混合して正極スラリーを作製した。詳しくは、正極活物質としてLiMn
2O
4、導電助剤としてアセチレンブラック、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を使用し、正極活物質、導電助剤、バインダをそれぞれ85wt%、5wt%、10wt%の比率に混合し、これらの混合物40質量部に対して60質量部のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)をスラリー粘度調整溶媒として添加し(塗布工程に最適な粘度になるまでNMPを添加したものである)、混合して正極スラリーを調製した。
厚さ20μmのステンレス(SUS)箔からなる集電体の片面に、該正極スラリーを塗布し、乾燥させて厚さ10μmの電極層(正極活物質層)よりなる正極を形成した。
【0121】
(b)負極の形成
以下の材料を所定の比で混合して負極スラリーを作製した。詳しくは、負極活物質としてハードカーボン、バインダとしてPVdFを使用し、負極活物質、バインダをそれぞれ90wt%、10wt%の比率に混合し、これらの混合物40質量部に対して60質量部のNMPをスラリー粘度調整溶媒として添加し(塗布工程に最適な粘度になるまでNMPを添加したものである)、混合して負極スラリーを調製した。
該負極スラリーを正極を形成した集電体の反対面に塗布し、乾燥させて厚さ11μmの電極層(負極活物質層)よりなる負極を形成した。この際、正極面積と負極面積を同じとし、正極と負極の集電体への投影図が一致するように調整して正極及び負極を形成した。
【0122】
(c)積層型直列電極の作製
上記の通り、集電体であるSUS箔の両面に正極と負極がそれぞれ形成されることにより、積層型直列電極が形成された。この積層型直列電極を縦160mm×横130mmに切り取り、正極、負極ともに外周縁部は電極層を10mm剥がしとることにより、集電体であるSUS表面を露出させた。これにより、電極面積が140mm×110mmであり、外周縁部に幅10mmの集電体であるSUS箔が露出した積層型直列電極を作製した。
【0123】
(2)積層型直列電極及び電解質層の完成
以下の材料を所定の比で混合して電解質材料を作製した。
電解液として、1.0MのLiPF
6を含有する、プロピレンカーボネート(PC)とエチレンカーボネート(EC)(1:1(体積比))の混合液からなる電解液90wt%、ホストポリマーとしてHFP成分を10%含むポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF−HFP)10wt%、および粘度調整溶媒として、電解液とPVdF−HFPの合計量100質量部に対してジメチルカーボネート(DMC)200質量部(塗布工程に最適な粘度になるまでNMPを添加したものである)を混合してプレゲル電解質(プレゲル溶液)を調製した。
該プレゲル電解質(プレゲル溶液)を先に形成された積層型直列電極両面の正極及び負極電極部の全面に塗布し、真空乾燥によりDMCを除去、乾燥させることで、正極及び負極(の空隙部)にゲル電解質を含有してなる(ゲル電解質の染み込んだ)積層型直列電極を完成させた。
【0124】
(3)シール部前駆体の形成
上記で得られた積層型直列電極の正極周辺部の電極未塗布部分(電極の外周部の4辺全て)に、ディスペンサを用いてシール部前駆体(実施例6の樹脂組成物)を塗布した。
次に微多孔を有する厚さ12μmのポリオレフィンセパレータを正極側に集電体であるSUS箔すべてを覆うように設置した。
その後、ゲル電解質層のうち、外周部近傍のゲル電解質未塗布部分のセパレータの上から電極未塗布部分(=ゲル電解質未塗布部分;前記シール部前駆体を塗布した部分と同じ部分)にディスペンサを用いて、ゲル電解質層外周部のセパレータに実施例6の樹脂組成物を塗布し、含浸させた。ここでは、セパレータ内部(含浸)とその上部(負極周辺部の電極未塗布部分に相当する位置)にシール部前駆体が位置するように、実施例6の樹脂組成物を、必要に応じて数回に分けて塗布した。
【0125】
(4)積層
上記で得られたゲル電解質層を載せた積層型直列電極を13枚真空密封しつつ、正極(活物質層)と負極(活物質層)がゲル電解質層を挟んで対向するように順次積層することで、単電池層が12積層された積層型直列電池要素(電池構造体)を作製した。
【0126】
(5)積層型直列電池要素(電池構造体)の作製
上記で得られた積層型直列電池要素(電池構造体)を、熱プレス機により面圧1kg/cm
2、100℃で1時間熱プレスすることにより、実施例6の樹脂組成物によるシール部前駆体を硬化させた。この工程によりシール部前駆体が各層間では、各層の正極、負極、セパレータの厚み和と同等の厚み(約33μm)電池全体としては、電極部分と同等の厚み(約700μm)まで薄膜化した状態で硬化してシール部が形成された、所定の密閉構造を形成することができた。
以上の作業により、単電池層(単セル)が12セル積層された12直列(12セル直列)構造の積層型直列電池要素(電池構造体)を完成させた。
(6)積層型直列電池の完成
上記のようにして作製した電極構造体をアルミラミネートパック内に正極タブと負極タブをパック外に出した状態で封入し、積層型直列電池を完成させた。
【0127】
[実施例30]
実施例6の樹脂組成物の代わりに、エポキシ樹脂としてジシクロペンタジエン型のエポキシ樹脂を使用した実施例11の樹脂組成物を使用した以外は実施例29と同様にして、積層型直列電池を作製した。
【0128】
[比較例7]
実施例6の樹脂組成物の代わりに、エポキシ樹脂にテルペン構造骨格含有エポキシ樹脂を使用しない比較例4の樹脂組成物を使用した以外は実施例29と同様にして、積層型直列電池を作製した。
【0129】
上記の実施例29、30及び比較例7で作製した電池にそれぞれ充放電サイクル試験を実施した。温度環境は55℃で、上限電圧は50.4V、下限電圧は25Vとし、100mAで充電時は定電流−定電圧充電(CC−CV)、放電時は定電流放電(CC)として行った。
【0130】
比較例7の電池は200サイクルを超えたところで容量が半分になり、250サイクルで容量がなくなり、充放電できなくなってしまった。電池を解体し、調査したところ、シール部が電解液に膨潤、界面剥離し、シール部から外部へ電解液が漏れ出していた。この結果は、エポキシ樹脂としてテルペン構造骨格含有エポキシ樹脂を使用しない樹脂組成物の硬化物は耐電解液性が弱く、ステンレスとの密着性を維持できないため電解液が容易に漏れ出したものと考えられる。これに対し、主たるエポキシ樹脂にテルペン構造骨格含有エポキシ樹脂を使用した樹脂組成物によりシール部を形成した実施例29の電池では500サイクルを超える充放電においても顕著な容量低下は確認されなかった。また、主たるエポキシ樹脂にジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を使用した樹脂組成物によりシール部を形成した実施例30の電池においても200サイクルで大きな容量低下は確認されず、実施例29と同様の容量を維持していた。