(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アクリル酸(塩)で単量体水溶液を調製する工程、該単量体水溶液の連続重合工程、重合時または重合後の含水ゲル状架橋重合体の細粒化工程、得られた粒子状の含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程、乾燥された吸水性樹脂粉末に表面架橋剤を連続混合機で添加する加湿混合工程、および得られた混合物の加熱処理工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法において、
上記加湿混合工程で、上記連続混合機の攪拌軸を加熱することを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
アクリル酸(塩)で単量体水溶液を調製する工程、該単量体水溶液の連続重合工程、重合時または重合後の含水ゲル状架橋重合体の細粒化工程、得られた粒子状の含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程、乾燥された吸水性樹脂粉末に表面架橋剤を連続混合機で添加する加湿混合工程、および得られた混合物の加熱処理工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法において、
上記連続混合機を、周囲圧に対して減少させた圧力で運転し、かつ、表面架橋剤の混合中に混合機内に、混合機のガス流の出口ガス温度が少なくとも40℃となるガス流を通過させることを特徴とする、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法。
吸水性樹脂の4.8kPa加圧下での0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が20g/g以上、0.69質量%生理食塩水流れ誘導性(SFC)が1(×10−7・cm3・s・g−1)以上、無加圧下吸水倍率(CRC)が20g/g以上である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂およびその製造方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更、実施し得る。具体的には、本発明は下記の各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0018】
〔1〕用語の定義
(a)「吸水性樹脂」
「吸水性樹脂」とは、水膨潤性水不溶性の「高分子ゲル化剤(gelling agent)」を意味し、以下の物性を有するものをいう。すなわち、水膨潤性として無加圧下吸水倍率(CRC)が、5g/g以上のものである。CRCは好ましくは10〜100g/g、さらに好ましくは20〜80g/gである。また、水不溶性として水可溶分(Extractables)は、0〜50質量%であることが必要である。水可溶分は、好ましくは0〜30質量%、さらに好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%である。
【0019】
なお、吸水性樹脂とは全量(100質量%)が重合体である形態に限定されず、上記性能を維持する範囲において添加剤など(後述する)を含んでいてもよい。すなわち、吸水性樹脂および添加剤を含む吸水性樹脂組成物であっても、本発明では吸水性樹脂と総称する。吸水性樹脂(ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂)の含有量は、組成物としての吸水性樹脂全体に対好ましくは70〜99.9質量%であり、より好ましくは80〜99.7質量%であり、さらに好ましくは90〜99.5質量%である。吸水性樹脂以外のその他の成分としては、吸水速度や粉末(粒子)の耐衝撃性の観点から水が好ましく、必要により後述の添加剤が含まれる。
【0020】
(b)「ポリアクリル酸(塩)」
「ポリアクリル酸(塩)」とは、任意にグラフト成分を含み、繰り返し単位として、アクリル酸(塩)を主成分とする重合体を意味する。具体的には、架橋剤を除く単量体として、アクリル酸(塩)を、必須に50〜100モル%、好ましくは70〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは実質100モル%含む重合体を意味する。重合体としての塩は、ポリアクリル酸塩を含み、好ましくは一価塩、より好ましくはアルカリ金属塩またはアンモニウム塩、さらに好ましくはアルカリ金属塩、特に好ましくはナトリウム塩を含む。なお、形状は特に問わないが、粒子または粉体が好ましい。
【0021】
(c)「EDANA」および「ERT」
「EDANA」は、European Disposables and Nonwovens Associationsの略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定方法(ERT/EDANA Recomeded Test Method)の略称である。本明細書においては、特に断りのない限り、ERT原本(公知文献:2002年改定)に基づいて、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0022】
(c−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」とは、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称であり、無加圧下吸水倍率(単に「吸水倍率」とも称することもある)を意味する。具体的には、不織布袋中の吸水性樹脂0.200gを0.9質量%食塩水で30分、自由膨潤させた後、遠心分離機で250Gにて水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)である。
【0023】
(c−2)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」とは、Absorption Against Pressureの略称であり、加圧下吸水倍率を意味する。具体的には、吸水性樹脂0.900gを0.9質量%食塩水に1時間、1.9kPaでの荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)である。なお、本発明および実施例では4.8kPaで測定した。
【0024】
(c−3)「Extractables」(ERT470.2−02)
「Extractables」とは、水可溶分量(可溶分)を意味する。具体的には、0.9質量%食塩水200mlに、吸水性樹脂1.000gを添加し、16時間攪拌した後、溶解したポリマー量をpH滴定で測定した値(単位;質量%)である。
【0025】
(c−4)「Residual Monomers」(ERT410.2−02)
「Residual Monomers」とは、吸水性樹脂中に残存しているモノマー量を意味する。具体的には、0.9質量%食塩水200cm
3に吸水性樹脂1.000gを投入し2時間攪拌後、該水溶液に溶出したモノマー量を高速液体クロマトグラフィーで測定した値(単位;質量ppm)である。
【0026】
(c−5)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」とは、Particle Size Distributionの略称であり、ふるい分級により測定される粒度分布を意味する。なお、質量平均粒子径および粒子径分布幅は欧州公告特許第0349240号明細書7頁25〜43行や国際公開第2004/069915号に記載された「(1) Average Particle Diameter and Distribution of Particle Diameter」と同様の方法で測定する。
【0027】
(c−6)その他
「pH」(ERT400.2−02):吸水性樹脂のpHを意味する。
【0028】
「Moisture Content」(ERT430.2−2):吸水性樹脂の含水率を意味する。
【0029】
「Flow Rate」(ERT450.2−02):吸水性樹脂粉末の流下速度を意味する。
【0030】
「Density」(ERT460.2−02):吸水性樹脂の嵩比重を意味する。
【0031】
(d)「通液性」
荷重下または無荷重下における膨潤ゲルの粒子間を流れる液の流れを「通液性」という。この「通液性」の代表的な測定方法として、SFC(Saline Flow Conductivity)や、GBP(Gel Bed Permeability)がある。
【0032】
「SFC」は、荷重0.3psiにおける吸水性樹脂に対する0.69質量%生理食塩水の通液性をいう。米国特許第5669894号明細書に記載されたSFC試験方法に準
じて測定される。
【0033】
「GBP」は、荷重下または自由膨張における吸水性樹脂に対する0.69質量%生理食塩水の通液性をいう。国際公開第2005/016393号パンフレットに記載されたGBP試験方法に準じて測定される。
【0034】
(e)「標準偏差」
「標準偏差」とは、データの散らばりの度合いを示す数値であり、n個からなるデータの値とその相加平均値との差、すなわち偏差の2乗を合計し、n−1で割った値の正の平方根をいう。変動に富む現象について、変動の度合いを知るために用いられる。なお、本明細書においては、目的とする所望の物性値に対する変動(振れ)を数値化するため、標準偏差を利用する。
【0036】
(f)その他
本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は、「X以上Y以下」であることを意味する。また、質量の単位である「t(トン)」は、「Metric ton(メトリック トン)」であることを意味する。さらに、吸水性樹脂の物性の測定は、特に注釈のない限り、温度:20〜25℃(単に「室温」、あるいは「常温」と称することもある)、相対湿度:40〜50%の条件下で実施している。
【0037】
〔2〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法
(1)重合工程
(a)単量体(架橋剤を除く)
本発明の単量体は、上記のアクリル酸またはその塩を主成分としている。吸水特性や残存モノマーの低減の点から、重合体の酸基が中和されていることが好ましく、中和率は10〜100モル%が好ましく、30〜95モル%がより好ましく、50〜90モル%がさらに好ましく、60〜80モル%が特に好ましい。中和は重合後の重合体(含水ゲル)に行ってもよく、単量体に行ってもよいが、生産性やAAP向上の面などから、単量体を中和しておくことが好ましい。すなわち、本発明の単量体はアクリル酸部分中和塩を含む。
【0038】
また、本発明ではアクリル酸(塩)以外の親水性または疎水性不飽和単量体を使用しても良い。使用できる単量体としては、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレートやそれらの塩などである。
【0039】
(b)架橋剤(内部架橋剤)
本発明では、吸水特性の観点から架橋剤(別称;内部架橋剤)を使用することが特に好ましい。架橋剤は物性面から、架橋剤を除く上記単量体に対して0.001〜5モル%が好ましく、0.005〜2モル%がより好ましく、0.01〜1モル%がさらに好ましく、0.03〜0.5モル%が特に好ましい。
【0040】
使用できる架橋剤としては、例えば、(アクリル酸の重合性二重結合との)重合性架橋剤、(単量体のカルボキシル基との)反応性架橋剤や、それらを併せ持った架橋剤の1種以上が例示できる。具体的には、重合性架橋剤として、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリオキシエチレン)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アリロキシアルカンなどの分子内に重合性2重結合を少なくとも2個有する化合物が例示できる。また、反応性架橋剤として、ポリグリシジルエーテル(エチレングリコールジグリシジルエーテルなど)、多価アルコール(プロパンジオール、グリセリン、ソルビトールなど)などの共有結合性架橋剤、アルミニウムなど多価金属化合物であるイオン結合性架橋剤が例示できる。これらの架橋剤の中では、吸水特性の面から、(アクリル酸との)重合性架橋剤、特に、アクリレート系、アリル系、アクリルアミド系の重合性架橋剤が好適に使用される。
【0041】
(c)中和の塩
アクリル酸の中和に用いられる塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物や炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)カリウムなどの炭酸(水素)塩等の一価塩基が好ましく、残存モノマー低減の点からアクリル酸アルカリ金属塩、水酸化ナトリウムでの中和塩が特に好ましい。なお、これらの中和処理での好ましい条件等は、国際公開2006/522181号に例示されており、該公報に記載の条件も本発明に適応され得る。中和温度は10〜100℃が好ましく、30〜90℃がより好ましい。この範囲内で適宜決定されるが、残存モノマー低減から後述の中和方法が好ましい。
【0042】
(d)単量体の濃度
これら単量体は、通常水溶液で重合され、その固形分濃度は通常10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、さらに好ましくは30〜70質量%、特に好ましくは35〜60質量%である。なお、重合は、飽和濃度を超えたスラリー(水分散液)で行ってもよいが、物性面から、好ましくは飽和濃度以下の水溶液で行う。
【0043】
(e)その他単量体の成分
さらに、不飽和単量体水溶液は、単量体とともに、澱粉、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレンイミンなどの水溶性樹脂ないし吸水性樹脂を例えば0〜50質量%、好ましくは0〜20質量%、特に好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜3質量%有していてもよい。また、各種の発泡剤(炭酸塩、アゾ化合物、気泡など)、界面活性剤や後述の添加剤等を、例えば0〜5質量%、好ましくは0〜1質量%添加して、得られる吸水性樹脂や粒子状吸水剤の諸物性を改善してもよい。なお、その他成分を使用して得られたグラフト重合体(例;澱粉アクリル酸グラフト重合体)ないし吸水性樹脂組成物も、本発明ではポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂と総称する。
【0044】
添加剤としてキレート剤、ヒドロキシカルボン酸、還元性無機塩を添加してもよく、これらは吸水性樹脂に好ましくは10〜5000質量ppm、より好ましくは10〜1000質量ppm、さらに好ましくは50〜1000質量ppm、特に好ましくは100〜1000質量ppm含まれるように添加する。好ましくはキレート剤が使用される。
【0045】
また、単量体は重合禁止剤を含むことが好ましい。重合禁止剤としては、例えば、メトキシフェノールなどが挙げられ、その含有量は200ppm以下(対単量体)が好ましく、10〜160ppmがより好ましく、20〜100ppmがさらに好ましい。
【0046】
(f)重合工程(架橋重合工程)
重合方法は、性能面や重合の制御の容易さから、噴霧重合または液滴重合でもよいが、好ましくは、通常、水溶液重合または逆相懸濁重合で行われる。従来、重合の制御や着色改善が困難であった水溶液重合が好ましく、連続水溶液重合が最も好ましい。特に1ラインで不飽和単量体水溶液を重合して吸水性樹脂を0.5t/hr以上、さらには1t/hr以上、よりさらには5t/hr以上、特に10t/hr以上の巨大スケールで製造する連続重合において好適に制御できる。よって好ましい連続重合として、連続ニーダー重合(例えば、米国特許第6987151号および同第670141号)、連続ベルト重合(例えば、米国特許第4893999号、同第6241928号および米国特許出願公開第2005/215734号)が挙げられる。
【0047】
なお、連続重合では、高温開始(単量体が30℃以上、35℃以上、さらには40℃以上、特に50℃以上。上限は沸点)、高単量体濃度(30質量%以上、特に35質量%以上、さらには40質量%以上、特に45質量%以上。上限は飽和濃度)での重合が好ましい一例として例示できる。
【0048】
このような高濃度や高温での重合でも、本発明では単量体の安定性に優れ、また、白色の吸水性樹脂が得られるため、かかる条件でより顕著に効果を発揮する。好適なかかる高温開始重合は米国特許第6906159号および同第7091253号などに例示されるが、本発明の方法では重合前の単量体の安定性に優れるので、工業的なスケール生産が容易である。
【0049】
これらの重合は空気雰囲気下でも実施できるが、着色改善からも好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気(例えば、酸素濃度1容積%以下)で行われ、また、単量体成分は、その単量体もしくは単量体を含む溶液中の溶存酸素が不活性気体で十分に置換(例えば、溶存酸素1mg/L未満)された後に重合に用いられることが好ましい。そのように、脱気しても単量体の安定性に優れているので重合前のゲル化も起らず、より高物性・高白色の吸水性樹脂を提供することができる。
【0050】
(g)重合開始剤
本発明で使用される重合開始剤としては、重合の形態によって適宜選択される。このような重合開始剤としては例えば、光分解型重合開始剤や熱分解型重合開始剤、レドックス系重合開始剤などのラジカル重合開始剤を例示できる。重合開始剤の使用量は上記単量体に対し、好ましくは0.0001〜1モル%、より好ましくは0.001〜0.5モル%の量使用される。
【0051】
重合開始剤の使用量が多い場合、着色を引き起こすことがあり、少ない場合は残存モノマーを増加させることがある。また、従来の着色改善剤では重合に悪影響を与えることがあったが、本発明の方法では重合(従来時間、諸物性など)に悪影響を与えず、着色を改善できるので好ましい。
【0052】
光分解型重合開始剤としては例えば、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、アセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アゾ化合物を例示できる。また熱分解型重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム)、過酸化物(過酸化水素、t−ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド)、アゾ化合物(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,
2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド等)を例示できる。なお、これらラジカル重合開始剤のうち、過硫酸塩、過酸化物、アゾ化合物は光重合開始剤とすることもできる。
【0053】
レドックス系重合開始剤としては、例えば、上記過硫酸塩や過酸化物に、L−アスコルビン酸や亜硫酸水素ナトリウムのような還元性化合物を併用し両者を組み合わせた系を例示できる。また光分解型開始剤と熱分解型重合開始剤を併用することも好ましい態様として挙げることができる。
【0054】
(2)ゲル細粒化工程(解砕工程)
重合で得られた含水ゲル状架橋重合体(以下、「含水ゲル」と称することもある。)はそのまま乾燥を行っても良いが、重合時または重合後、必要により解砕機(ニーダー、ミートチョッパーなど)を用いてゲル解砕され粒子状(例えば、質量平均粒子径で0.1〜5mm、さらには0.5〜3mm)にされる。
【0055】
ゲル解砕時の含水ゲルの温度は物性面から、好ましくは40〜95℃、さらに好ましくは50〜80℃に保温ないし加熱される。含水ゲルの樹脂固形分は、特に限定されるものではないが、物性面から好ましくは10〜70質量%、より好ましくは15〜65質量%、さらに好ましくは30〜55質量%である。水や、多価アルコール、水と多価アルコールの混合液、水に多価金属を溶解した溶液あるいはこれらの蒸気等を添加しても良い。また、ゲル細粒化工程で、吸水性樹脂微粉やその他各種添加剤を混錬してもよい。
【0056】
(3)乾燥工程
本発明では残存モノマーの低減やゲル劣化防止(耐尿性)、黄変防止を達成するため、重合終了後にゲル細粒化工程を経て乾燥工程を行う。ゲル細粒化工程を経て乾燥を開始するまでの時間は、短いほど好ましい。すなわち、重合後の含水ゲル状架橋重合体は、重合機から排出後に、好ましくは1時間以内、より好ましくは0.5時間以内、さらに好ましくは0.1時間以内に乾燥を開始(乾燥機に投入)する。かかる時間とするためには、重合後にゲルの貯蔵工程を行うことなく、直接、細分化ないし乾燥することが好ましい。また、残存モノマーの低減や低着色を達成するため、重合後から乾燥開始までの含水ゲル状架橋重合体の温度は、好ましくは50〜80℃、さらに好ましくは60〜70℃に制御する。
【0057】
その乾燥減量(粉末ないし粒子1gを180℃で3時間加熱)から求められる樹脂固形分が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85〜99質量%、さらに好ましくは90〜98質量%、特に好ましくは92〜97質量%の範囲に調整された乾燥物を得る。また、乾燥温度は特に限定されるものではないが、好ましくは100〜300℃の範囲内、より好ましくは150〜250℃の範囲内とすればよい。高物性と白色を両立する上で、乾燥工程は160〜235℃がより好ましく、165〜230℃がさらに好ましい。また、乾燥時間は50分以内であることが好ましい。この温度や時間を外れると、吸水倍率(CRC)の低下や可溶分(Extractables)の増加、白色度の低下を引き起こす恐れがある。
【0058】
乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、ドラムドライヤー乾燥、疎水性有機溶媒との共沸脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等、種々の方法を採用することができるが、好ましくは露点が40〜100℃、より好ましくは露点が50〜90℃の気体による熱風乾燥である。
【0059】
(4)粉砕工程および/または分級工程(乾燥後の粒度および調整)
上述の含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程後、必要により乾燥後に粒度を調整しても
よいが、後述の表面架橋での物性向上のため、好ましくは特定粒度にされる。粒度は重合工程(特に逆相懸濁重合)、粉砕工程、分級工程、造粒工程、微粉回収工程などで適宜調整できる。以下、粒度は標準篩で規定(JIS Z8801−1(2000))される。
【0060】
乾燥工程により得られた表面架橋前の吸水性樹脂粒子の質量平均粒子径(D50)としては200〜600μm、好ましくは200〜550μm、より好ましくは250〜500μm、特に好ましくは350〜450μmに調整する。また、150μm未満の粒子が少ないほどよく、通常0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%に調整する。さらに、850μm以上の粒子が少ないほどよく、通常0〜5質量%、好ましくは0〜3質量%、特に好ましくは0〜1質量%に調整する。粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、好ましくは0.20〜0.40、好ましくは0.25〜0.37、好ましくは0.27〜0.35とする。これらの測定方法については、標準篩を用いて、例えば、国際公開第2004/69915号やEDANA−ERT420.2−02に記載されている方法を採用すればよい。
【0061】
一般に粒度分布を狭く制御すると、すなわち、粒度の上下限の間を小さく制御すると、色が目立ってしまうが、本発明ではかかる色の問題のなく好ましい。よって、本発明では好ましくは乾燥後、150〜850μmの粒子の割合が90質量%以上、さらには95質量%以上、特に、98質量%以上(上限100質量%)への分級工程を含む。
【0062】
また、上記、吸水性樹脂粒子の嵩比重は、0.5〜0.75(g/cm
3)であることが好ましく、0.6〜0.7(g/cm
3)がさらに好ましい。測定方法は例えば、EDANA ERT460.2−02に詳しく記載されている。嵩比重が満たされない場合、攪拌動力指数が制御し難く、物性が低下したり、粉化したりすることがある。
【0063】
(5)表面処理工程
本発明の特徴は、アクリル酸(塩)で単量体水溶液を調製する工程、該単量体水溶液の連続重合工程、重合時または重合後の含水ゲル状架橋重合体の細粒化工程、得られた粒子状の含水ゲル状架橋重合体の乾燥工程、乾燥された吸水性樹脂粉末に表面架橋剤を連続混合機で添加する工程、および該混合物の反応工程を含む、ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の製造方法において、上記表面架橋剤の混合工程で、表面架橋剤の連続混合機の攪拌軸を加熱すること、または、上記表面架橋剤の連続混合機を、周囲圧に対して減少させた圧力で運転し、かつ、表面架橋剤の混合機中にガス流を通過させ、その際、混合機のガス流の出口ガス温度を40℃以上にすることを特徴とする。
【0064】
(5−1)加湿混合工程
この加湿混合工程は、上述の重合工程から、細粒化工程、乾燥工程および必要により分級工程を経て得られた吸水性樹脂粉体に、表面架橋剤を添加、混合する工程である。
【0065】
(a)連続混合機の攪拌軸の温度
本発明では課題を解決するために、混合機の攪拌軸を室温以上に加熱する。攪拌軸は例えば、
図1の70、
図3および
図4の6に示されるが、これらに限定されるものではない。ここで、攪拌軸の加熱は通常50℃以上であり、上限は250℃程度である。攪拌軸の温度は、好ましくは90〜170℃、より好ましくは100〜150℃である。ここで加熱は攪拌軸に対して必須的に行われ、好ましくは攪拌羽根または攪拌盤(例えば、
図1の73、
図2、
図3および
図4の7(7a、7b))も加熱される。また、混合機の攪拌軸が内壁(例えば、
図1の60、
図4の2)温度よりも高温に加熱されていることが好ましい。攪拌軸と内壁温度の温度差は、0℃を超えて200℃以下がより好ましく、5〜100℃がさらに好ましく、10〜90℃が特に好ましく、15〜80℃が最も好ましい。攪拌軸の加熱がなされない場合、表面架橋での物性低下や不安定化(経時的な低下やフレ、
標準偏差の増大)をもたらすことが見いだされた。さらに、軸の加熱が行われない場合、長時間運転では軸や回転刃への表面架橋剤を含む吸水性樹脂が徐々に付着し、さらに成長するため、表面架橋剤の混合性が低下し、物性(特にAAP/SFC)が徐々に低下することが見いだされた。さらに、最悪な場合は、付着による過負荷で混合機が停止することもある。軸加熱の有無による、かかる現象は鍬型混合機(例えば、
図1や
図2)で特に顕著であるため、本発明では鍬型攪拌翼(例えば、
図2)を有する鍬型混合機が好適に使用される。
【0066】
これら加熱は攪拌軸の一部でも全面でもよいが、好ましくは攪拌軸の表面積の50〜100%、より好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%、特に好ましくは実質100%である。軸が加熱されない場合、表面架橋後の物性(例、AAPに代表される加圧下吸水倍率、SFCやGBPに代表される通液性)が低下したり、不安定化(例;標準偏差の増大)したりするため、本発明の効果が発揮されない。また、軸が過度に加熱される場合、設備コスト的に不利であるだけでなく、後段の加熱装置に入る前に混合機内で表面架橋剤の反応が進行、特に過度に進行してしまい、吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0067】
なお、本発明では、表面架橋剤は加熱装置で反応するが、混合機内の反応を排除するものではない。表面架橋剤の反応は、吸水性樹脂の物性変化(例;AAPやSFCの向上、CRC低下)や残存表面架橋剤量で確認できるが、混合機内では表面架橋剤は実質的に反応しないか、多くても目的の0〜50%、さらには0〜10%、特に0〜1%の反応にとどめるべきである。
【0068】
加熱方法は、周知の加熱手段が適宜使用され、例えば、蒸気や温水、熱風、その他のオイル系熱媒、または、ニクロム線などの電熱線(面)を攪拌軸、さらに好ましくは攪拌羽根の内部に通すことで行われる。攪拌軸の加熱の際、熱媒や電熱線は、攪拌軸や攪拌羽根の全体に通しても、一部のみに通してもよいが、全面に通すことが好ましい。なお、攪拌軸や攪拌羽根の一部のみに熱媒や電熱線を通す場合も、攪拌軸や攪拌羽根の伝導電熱で全体を所定温度に加熱すればよい。
【0069】
本発明では混合機の攪拌軸が加熱されるが、好ましくは、混合機の内壁、すなわち、混合機の胴体の内面も加熱されることが好ましい。ここで、混合機の胴体とは、例えば、円筒状の縦型または横型混合機に代表される混合機(例えば、
図1、
図3、
図4)ではその円筒部分であり、その円筒の円柱側面および上下面である。内壁の加熱温度は好ましくは50℃以上であり、上限は250℃、好ましくは90〜170℃、より好ましくは100〜150℃である。ここで加熱は好ましくは混合機内壁の側面(胴体部分)およびその前後面(吸水性樹脂の進行方向に向かって装置の前側と後ろ側の面;例えば、横置きの円筒装置ならその前後の底面円)にもなされる。これら加熱は胴体(例;円筒の円柱側面および上下面)の一部でも全面でもよいが、好ましくは表面積の50〜100%、さらには70〜100%、90〜100%、特に実質100%である。加熱手段は上記と同様でよい。
【0070】
これら混合機の内部の圧力は常圧、加圧、減圧のいずれでもよいが、本発明を達成するうえでは、常圧または減圧が好ましく、減圧がより好ましく、後述する減圧状態がさらに好ましい。
【0071】
(b)連続混合機のガス流の温度
また、本発明の効果を得る方法として、第二の手法として、上記混合機の攪拌軸を加熱する方法に代えて、または加えて、混合機を周囲圧に対して減少させた圧力で運転し、かつ、表面架橋剤の混合中にガス流、好ましくは空気を混合機内に通過させ、その際、混合
機のガス流の温度を、少なくとも40℃の温度を示すよう制御する方法を採っても良い。
【0072】
ここで、「ガス流の温度」とは、混合機内の空間部分の温度を意味するが、実質的には、混合機の混合物出口付近の温度を指し、該出口のガス温度で規定される。本発明の課題を解決するうえで、混合機のガス流の温度は40〜95℃であることが好ましく、45〜90℃であることがより好ましく、50〜80℃であることがさらに好ましい。ここで、ガスは空気でもよく、不活性ガスでもよく、蒸気でもよく、それらの混合物でもよいが、好ましくは空気である。
【0073】
ガス流が40℃未満の場合、上記(a)と同様に、表面架橋後の物性(例、AAPに代表される加圧下吸水倍率、SFCやGBPに代表される通液性)が低下したり不安定化(例;標準偏差の増大)したりするため、本発明の効果が発揮されない傾向にある。
【0074】
ガス流を加熱する方法としては、外部より積極的に混合機に加熱されたガス流を導入してもよく、また、上記(a)に従い、混合機の軸や内壁、さらには導入する吸水性樹脂粒子を加熱しつつ、混合機に出入りするガス流を所定量に制御、好ましくは減圧にすることで、混合機内部のガス流を加熱してもよい。なお、ガス流の温度は、単純に内壁を加熱(例えば、米国特許第6576713号)すれば一義的に40℃以上となるのではなく、当然、連続混合機の入口および出口から吸水性樹脂とともに出入りするガス流量の制御が必要であり、さらには攪拌軸や羽根を加熱することでガス流の温度を制御することができる。
【0075】
なお、表面架橋剤の混合工程から表面架橋工程に入るまでの混合物(吸水性樹脂と表面架橋剤を必須的に含む)の温度は、50〜95℃が好ましく、55〜90℃がより好ましい。ガス流や吸水性樹脂の温度を制御するために、混合機中の吸水性樹脂の平均滞留時間が、0秒を超えて3分以内となるように、高速混合を行うことが好ましい。平均滞留時間は、1分以内がより好ましく、0.5分以内がさらに好ましい。温度や滞留時間が外れると、表面架橋後の物性が低下することがある。
【0076】
上記のとおりに混合機の攪拌軸の温度やガス流の温度を制御することにより、1t/hr以上のスケールアップ時にも高物性の吸水性樹脂を連続的に安定的に得ることができる。
【0077】
上記効果が得られる理由は次のように推察される。上記の混合機の攪拌軸の温度やガス流の温度を制御することにより、長期の製造において、ベースポリマーへの表面架橋剤の均一なコーティングが継続的に可能となる。このため、後の表面架橋工程でも綺麗な(未架橋部分の少ない)表面架橋層が形成され、結果として、高物性の吸水性樹脂を連続的に安定的に得ることができる。なお、本発明は、上記推察に限定されるものではない。
【0078】
なお、従来の表面架橋の混合機は上記特許文献1〜41に例示され、例えば、米国特許第6576713号は、混合機の内壁温度が40℃以上の攪拌混合機を使用する技術を開示するが、いずれも軸や羽根の加熱、内部ガス流の温度や圧力に注目するものではなく、本発明をなんら示唆しない。
【0079】
(c)連続混合機の表面粗さ
表面架橋剤の混合機については、本発明では、連続高速回転攪拌型混合機、中でも横型の連続高速回転攪拌型混合機(例えば、
図1、
図3、
図4)を用いることが好ましく、特に鍬型混合機(例えば、
図1、
図2)であることが好ましい。さらに、混合機の内面(例えば、
図1の60、
図4の2)は平滑化されていることが好ましく、その表面粗さ(Rz)は、800nm以下に制御することが好ましい。表面粗さ(Rz)は、500nm以下
がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、200nm以下が特に好ましく、185nm以下が一層好ましく、170nm以下が最も好ましい。表面粗さ(Rz)が上記範囲を満たさない場合、吸水性樹脂粒子との摩擦が大きくなり、物性が低下することがある。なお、表面粗さ(Rz)は、表面凹凸の最大高さ(nm)の最大値を意味し、JIS
B0601‐2001で規定される。表面粗さ(Rz)の下限は0nmであるが、10nm程度でも大きな差はなく、20nm程度でも十分である。表面粗さは長期安定性から、好ましくは下記金属面として制御される。
【0080】
上記の観点から、上記混合機の一部または全部は樹脂製であってもよいが、好ましくは混合機の内面(内壁、軸、羽根などの内面)の50〜100%、さらには80〜100%、特に100%が金属製、さらにはステンレス鋼製であることが好ましい。上記特許文献26(米国特許第5140076号)や特許文献28(米国特許出願公開第2004/240316号)のような内壁を樹脂コートした混合機が知られているが、かかる樹脂コートでは長時間運転での表面架橋物性の低下が見られる場合もあり、物性のフレ(標準偏差の増大)を招くことがある。すなわち、特許文献26および28などで混合機内面の樹脂(特にテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)コーティング)で付着を防止する技術も知られているが、数ヶ月単位ないし数年の長期間運転ではかかる樹脂の剥がれによって、混合機内での吸水性樹脂の付着が発生し、長時間運転では物性(例えばAAP/SFC)が徐々に低下するものであった。樹脂の剥がれに対して、定期的な混合機内面の樹脂の再コートは長期間の生産の停止を伴うものであるが、本発明ではかかる問題もない。
【0081】
材質は、好ましくは金属、さらには、上記熱媒の伝熱性の関係からステンレス鋼が好ましく、鏡面仕上げされていることが好ましい。この鏡面仕上げにより、吸水性樹脂粒子が受けるダメージが抑制される。ステンレス鋼が鏡面仕上げされることにより、ダメージ抑制効果が更に高まる。ステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS316L等が挙げられる。
上記の表面粗さ(Rz)以外の表面粗さ(Ra)についても、JIS B 0601−2001で規定されるが、その好ましい値も表面粗さ(Rz)と同じである。表面粗さ(Ra)は、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。これらの表面粗さは、触針式表面粗さ測定器によりJIS B0651−2001に準拠して測定することができる。なお、これらの表面粗さは、加熱処理装置に限らず、その前後の装置、好ましくは冷却装置、輸送配管(特に空気輸送配管)や、ホッパーにも適用することができ、表面架橋による物性向上の効果がより高くなる。
【0082】
(d)連続混合機の運転条件
攪拌は100〜10000rpm、より好ましくは300〜2000rpmでなされ、滞留時間は180秒以内、より好ましくは0.1〜60秒、さらに好ましくは1〜30秒程度である。
【0083】
また、混合機内は微減圧であることが好ましい。「減圧状態」とは、大気圧よりも気圧が低い状態を意味する。また「大気圧に対する減圧度」とは、大気圧との圧力差を意味し、気圧が大気圧よりも低い場合に正(プラス)の値として表現される。例えば、大気圧が標準大気圧(101.3kPa)である場合、「減圧度が10kPa」とは、気圧が91.3kPaであることを意味する。本願において、「大気圧に対する減圧度」は、単に「減圧度」とも称される。。減圧にしない場合、混合機の吸気口から吸水性樹脂粉末がこぼれ出てしまうことがあり好ましくない。微減圧とすることで、吸水性樹脂からダスト(吸水性樹脂の超微粒子や必要により使用する無機微粒子)が除去でき、ダスト低減の観点からも好ましい。
【0084】
減圧に起因する上記効果を高める観点から、減圧度の下限値は、0kPaを超えるのが
好ましく、0.01kPa以上がより好ましく、0.05kPa以上がさらに好ましい。過度の減圧は、ダストのみならず必要な吸水性樹脂粉末までも装置外に除去してしまうので収率低下を招くおそれがある。また、系内における粉の吊り上がりを抑制する観点、及び排気装置に対する過度のコストを抑制する観点から、減圧度は、10kPa以下が好ましく、8kPa以下がより好ましく、5kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が一層好ましい。減圧度の好ましい数値範囲は、上記下限値と上記上限値との間で任意に選択できる。
また、本発明では、乾燥された吸水性樹脂粉末に表面架橋剤を連続的に混合することによって、混合物の温度を0.5℃以上昇温させることが好ましい。すなわち、表面架橋剤および水を混合機中に添加する工程において、粒子状吸水性樹脂の温度(混合前)に対して、得られる吸水性樹脂混合物(通常、粒子状吸水性樹脂100質量部に対して、表面架橋剤0.001〜10質量部と水0.5〜10質量部を混合したもの)の温度を0.5℃以上昇温させることが好ましい。昇温は、2℃以上がより好ましく、3〜60℃がさらに好ましく、4〜50℃が特に好ましく、6〜30℃が最も好ましい。
この温度制御は、軸加熱温度や混合機内壁の温度、あるいは混合機中での混合物の滞留時間を制御することで行える。水蒸気などを用いて混合機内壁の温度を調整することで昇温範囲を上記に制御することが好ましい。混合機から取り出される吸水性樹脂混合物の温度は、50〜140℃が好ましく、60〜110℃がさらに好ましく、70〜95℃が特に好ましい。
かかる表面架橋剤および水を混合機中に添加する工程で、吸水性樹脂混合物が昇温することで、吸水性樹脂表面への表面架橋剤の浸透や拡散が促進および最適化されると推定される。このため、従来に比べて優れた物性が達成できる上に、その後の反応時間を短縮することができ、省エネルギー化できるという利点を有する。
【0085】
次に、表面架橋剤の混合工程以降の表面架橋工程において、高物性の吸水性樹脂を連続的に安定的に得るための好適な条件を下記に示す。
【0086】
(e)表面架橋剤
本発明では乾燥後の表面架橋工程をさらに含む。本発明の製造方法では、高い加圧下吸水倍率(AAP)および通液性(SFC)の吸水性樹脂の製造方法や巨大スケール(特に1t/hr)での連続生産に適用され、特に高温表面架橋での吸水性樹脂に好適に適用される。
【0087】
本発明で表面処理とは前記特許文献1〜19に記載された処理剤、特に表面架橋剤が使用される。これら中でも、スケールアップ時の物性面から、共有結合性表面架橋剤が使用され、好ましくは、共有結合性表面架橋剤およびイオン架橋性の表面架橋剤が併用される。
【0088】
(共有結合性表面架橋剤)
本発明で用いることの出来る表面架橋剤としては、種々の有機または無機架橋剤を例示できるが、有機表面架橋剤が好ましく使用できる。表面架橋剤としては、得られる吸水性樹脂の物性面の点から、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、(モノ、ジ、またはポリ)オキサゾリジノン化合物、アルキレンカーボネート化合物が好ましい。特に高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物からなる脱水反応性架橋剤が使用できる。脱水反応性架橋剤を使用しない場合、物性が低かったり、本発明の効果の差が現れにくかったりする場合もある。
【0089】
より具体的には、米国特許第6228930号、同第6071976号、同第6254990号などに例示されている化合物を挙げることが出来る。例えば、モノ,ジ,トリ,
テトラまたはプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ソルビトールなど多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンカボネートなどのアルキレンカーボネート化合物;オキセタン化合物;2−イミダゾリジノンのような環状尿素化合物等が挙げられる。
【0090】
(イオン結合性表面架橋剤)
また、上記有機表面架橋剤以外にイオン結合性の無機表面架橋剤(多価金属由来の架橋剤)を使用して、通液性などを向上させてもよい。使用できる無機表面架橋剤は、2価以上、好ましくは3価ないし4価の多価金属の塩(有機塩ないし無機塩)ないし水酸化物が挙げられる。使用できる多価金属としてはアルミニウム、ジルコニウムなどが挙げられ、乳酸アルミニムや硫酸アルミニムが使用可能である。これら無機表面架橋剤は有機表面架橋剤と同時または別途に使用される。多価金属による表面架橋は国際公開第2007/121037号、同第2008/09843号、同第2008/09842号、米国特許第7157141号、同第6605673号、同第6620889号、米国特許出願公開第2005/0288182号、同第2005/0070671号、同第2007/0106013号、同第2006/0073969号に示されている。
【0091】
また、上記有機表面架橋剤以外にポリアミンポリマー、特に質量平均分子量5000〜100万程度のものを同時または別途で使用しても通液性などを向上させてもよい。使用できるポリアミンポリマーは例えば米国特許第7098284号、国際公開第2006/082188号、同第2006/082189号、同第2006/082197号、同第2006/111402号、同第2006/111403号、同第2006/111404号などに例示されている。
【0092】
(使用量)
表面架橋剤の使用量は吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.001〜10質量部程度が好ましく、0.01〜5質量部程度がより好ましい。表面架橋剤と共に、好ましくは水が使用され得る。使用される水の量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対して0.5〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部の範囲である。無機表面架橋剤と有機表面架橋剤を併用する場合も、各々0.001〜10質量部程度(より好ましくは0.01〜5質量)使用することが好ましい。
【0093】
また、この際、親水性有機溶媒を使用してもよく、その量は、吸水性樹脂粒子100質量部に対し、0〜10質量部、好ましくは0〜5質量部の範囲である。また吸水性樹脂粒子への架橋剤溶液の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲、例えば、0〜10質量部、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0〜1質量部で、水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。用い得る界面活性剤やその使用量は米国特許7473739号などに例示されている。
【0094】
(f)吸水性樹脂の温度
本発明においては、表面架橋工程や輸送管に供給される吸水性樹脂粒子(例えば、表面架橋剤を混合した後、表面架橋工程に導入されるまでの吸水性樹脂;粒子状吸水剤ともいう。)の温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。また上限は100℃が好ましく、95℃がより好ましい。輸送管に供給される吸水性樹脂粒子(粒子状吸水剤)の温度を所定温度以上に保持することによって、粒子状吸水剤の物性の低下が抑制される。具体的には、生理食塩水流れ誘導性(SFC)などの物性維持に顕著な効果がある。
【0095】
(5−2)加熱処理工程
表面架橋剤が混合された吸水性樹脂は、その表面に表面架橋剤が被覆ないし吸収されて偏在化している。得られた混合物(吸水性樹脂と表面架橋剤)を、反応工程で架橋反応させる。反応は紫外線などの活性エネルギー線で行ってもよく、室温で行ってもよいが、加熱反応することが好ましい。特に衛生材料(特に紙おむつ)を目的とする場合、かかる表面架橋によって、後述の加圧下吸水倍率(AAP)を後述の範囲、好ましくは20g/g以上、さらには23〜30g/g程度にまで向上させることができる。
【0096】
本発明で用いられる加熱装置は、連続式が好ましく、溝型混合乾燥機、ロータリー乾燥機、ディスク乾燥機、流動床乾燥機、気流型乾燥機、赤外線乾燥機、パドル型乾燥機、振動流動乾燥機等が挙げられる。加熱温度は70〜300℃、好ましくは120〜250℃、より好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。
【0097】
これら加熱装置の中でも、物性向上および安定化の面から、パドル型乾燥機に代表される横型連続撹拌装置(例えば、
図5)が好ましく、特に下記の(a)攪拌動力指数を示す(横型)連続撹拌装置が好適に使用できる。また、混合機と加熱装置の間は連結され、(b)周期的遮蔽がなされていることが好ましい。
【0098】
以下、本発明で好ましく使用される条件等について説明する。
【0099】
(a)加熱装置の構造
(攪拌動力指数)
本発明で見いだされた攪拌動力指数は下記式で規定される。特定の装置とその特定パラメーター(攪拌動力指数)によって、1t/hr以上のスケールアップ時にも高物性の吸水性樹脂が連続的に安定的に得られる。
【0100】
(攪拌動力指数)=((表面処理時の装置の消費電力)−(空運転時の消費電力)×平均滞留時間)/(時間当たりの処理量×平均滞留時間)
攪拌動力指数は、上記の通り、表面処理時の装置の消費電力と空運転時の消費電力から容易に求められる。この攪拌動力指数が15W・hr/kgを超えると物性(特に通液性)が低下し、また、3W・hr/kgを下回っても物性(特に加圧下吸水倍率)が低下するおそれがある。攪拌動力指数は4〜13W・hr/kgがより好ましく、5〜11W・hr/kgがさらに好ましく、5〜10W・hr/kgが特に好ましく、5〜9W・hr/kgが最も好ましい。
【0101】
攪拌動力指数の制御には吸水性樹脂の供給量および排出量の調整、吸水性樹脂の粒度や嵩比重、装置の回転数、形状、表面処理剤の組成、滞留時間などで適宜決定されるが、好適な条件は下記を示す。
【0102】
また、装置は吸水性樹脂の投入口と排出口、および、複数の撹拌盤を備えた1本以上(好ましくは複数)の回転軸からなる撹拌手段と加熱手段とを有する横型連続撹拌装置が好ましい。該装置でない場合、連続生産やスケールアップ時の物性が低下する場合もある。
【0103】
以下、好ましい表面処理方法および攪拌動力指数の制御方法を記載する。
【0104】
(傾斜角)
上記混合装置で表面処理剤を添加した後の吸水性樹脂に加熱処理を行う。必須な装置は上記横型連続撹拌装置である。攪拌動力指数の制御の面からは、横型連続撹拌装置が0.1〜10°の下向き傾斜角を有することが好ましい。傾斜角は、0.5〜5°がより好ま
しく、1〜4°がさらに好ましい。傾斜角が0.1〜10°の範囲を満たさない場合、プロセスダメージにより物性が低下することがある。
【0105】
(縦横比)
上記横型連続撹拌装置の縦横比(進行方向の装置の長さ/進行方向に断面の装置幅)は、1〜20であることが好ましい。縦横比は、1.5〜10がより好ましく、2〜5がさらに好ましい。縦横比は装置内部の縦(進行方向)と横(進行方向に対して平面で直角)の長さの比で決定される。縦横比が上記範囲を満たさない場合、プロセスダメージにより物性が低下する、あるいは装置内でのピストンフロー性が悪くなり、性能の安定性が悪くなる。
【0106】
(かき上げ羽根)
上記横型連続撹拌装置は、かき上げ羽根を有することが好ましい(例えば、
図6の90a)。かき上げ羽根は上記特許文献31(特開2004−352941号公報)に記載されている。かき上げ羽根を用いれば攪拌動力指数が低く制御でき、その結果、吸水性樹脂の物性が向上する。
【0107】
(平均滞留時間)
プロセスダメージの観点から、吸水性樹脂の平均滞留時間は0.05〜2時間とすることが好ましい。平均滞留時間は0.1〜1時間がより好ましく、0.2〜0.8時間が特に好ましい。
【0108】
本発明の横型連続攪拌装置の吸水性樹脂の平均滞留時間測定について述べる。装置内の滞留時間(別称;横型連続攪拌装置内での加熱時間ないし反応時間)は、装置の有効容積(横方向に配置された攪拌軸を有する場合は、攪拌盤最上面を頂点として占有される容積。)、吸水性樹脂粒子の供給量、傾斜角度、攪拌軸回転数、かき上げ羽根の形状、吸水性樹脂粒子の嵩比重、表面処理剤の種類、横型連続攪拌装置の排出口に設置される排出堰の高さなど、種々の因子によって支配される。これらの因子は滞留時間のみならず、攪拌動力指数にも大きな影響を及ぼす。平均滞留時間の測定方法は、上記諸因子を固定した条件で実際に運転を行い、装置を停止して装置内に残留する吸水性樹脂粒子の質量を測定する。あるいは、装置投入口に特定が容易な物質(例えば硫黄を含む化合物)をトレーサー物質として非定常に導入し、排出口でその濃度変化を追跡して滞留時間分布関数を求め、滞留時間分布関数から平均滞留時間を求めることも出来る。例えばトレーサー物質として、水溶性硫酸塩などを用いることが出来る。また、濃度の分析方法としては、部分中和されたポリアクリル酸吸水性樹脂の場合、EPMA,XMA等により、硫黄と1価のカチオン(例えばナトリウム)の特性X線の強度比を求めて、濃度変化を追跡する方法などがある。詳しい滞留時間分布関数、平均滞留時間の求め方については例えば、日刊工業新聞社刊、久保田浩史著「反応工学概論」に詳しく記載されている。
【0109】
(回転軸および攪拌盤)
回転軸は1軸ないし複数、好ましくは2軸〜10軸、特に2軸である。また、攪拌盤(例えば、
図2)ないし攪拌羽根は、装置のサイズ(容量)によって適宜決定されるが、1軸あたり2〜100枚、さらには5〜50枚の範囲である。
【0110】
(周期的遮蔽)
表面架橋の物性安定や向上の面から、吸水性樹脂と表面処理剤溶液とが混合された後、横型撹拌装置へと導入される際に、攪拌型混合機と横型撹拌装置内とを、周期的に遮蔽する。周期的遮蔽の間隔は、0.001〜5分が好ましく、0.005〜1分がより好ましく、0.01〜0.1分がさらに好ましく、0.01〜0.05分が特に好ましい。周期的に遮蔽することにより、吸水性樹脂の、下流の連続装置への導入(混合機から加熱装置
への導入や、加熱装置から冷却装置への導入)を、周期的、すなわち間欠的(On−Off)に行うことができる。表面架橋工程で周期的遮蔽を行わない場合、得られる吸水性樹脂の物性が低下することがある。遮蔽率(吸水性樹脂が下流の連続装置へ遮蔽される時間の割合)としては、物性の安定化(標準偏差)の面から好ましくは1〜80%、より好ましくは2〜40%、さらに好ましくは5〜30%、特に好ましくは5〜20%、最も好ましくは5〜10%の範囲である。周期的遮蔽を行っても、前記範囲(例えば1t/hr以上)の吸水性樹脂を次の装置へフィードできればよい。例えば、ロータリーバルブの場合、遮蔽間隔は回転数(rpm)の逆数(分)で定義され、遮蔽率は高速連続混合機から供給される混合物(湿潤粉体;吸水性樹脂と表面架橋剤溶液の混合物)を排出するのに必要なロータリーバルブの1分間当たりの理論回転数(rpm)(ロータリーバルブ1回転当たりの容積と排出される混合物の質量流量、嵩比重から求められる体積流量から得られる理論回転数)を実際のロータリーバルブの回転数(rpm)で割った値に100を乗じた値で定義される。なお、遮蔽率は、具体的には、混合機から単位時間当たりに排出される湿潤粉体(吸水性樹脂と表面架橋剤の混合物)を排出するのに必要なロータリーバルブの1分間当たりの回転数(rpm)を実際のロータリーバルブの回転数で割った値で規定できる。例えば、本実施例の場合で計算すると、[1500×(1+3.5/100)/0.47/1000/0.02/60/25]×100=11.0%となる。
【0111】
周期的遮蔽による吸水性樹脂の滞留量は、処理量の0〜2質量%、さらには0を超えて1質量%とすることが好ましい。ロ−タリーバルブの1回転当たりの容積は適宜決定されるが、0.1〜0.001[m
3/lev(1回転)]が好ましく、0.2〜0.002[m
3/lev]がより好ましく、0.1〜0.01[m
3/lev]がさらに好ましい。周期的遮蔽を行う場合は、あるいはしない場合であっても、連続装置間(混合機、加熱装置、必要により冷却装置)を連結する際に、上流の装置の出口と下流の装置の入口との距離を10m以下とすることが好ましい。この距離は5m以下がより好ましく、3m以下がさらに好ましく、2m以下が特に好ましい。連結する際は、装置を上下に連結すればよく、すなわち、上流の装置の下側に下流の装置を連結する。そして上流の装置と下流の装置の間に、吸水性樹脂粒子の遮蔽装置を設ければよい。上記距離の下限は、装置の大きさや下記の遮蔽装置が収容できる範囲で、適宜決定される。距離が大きい場合、また、上記装置を上下に連結しない場合、得られる吸水性樹脂の物性が低下することがある。なお、上下に連結する場合、混合機、加熱装置、必要により冷却装置の順序で上下に連結すればよい。冷却装置の連結は、加熱装置の上でも横でも構わない。
【0112】
連続装置間の連結部に、周期的遮蔽装置として、ゲート、バルブ、ダンパ、ロータリーフィーダ、テーブルフィーダなどを設けることで、周期的遮蔽を行える。用いられるゲートとしてはスライドゲート、ローラーゲート、テンターゲート(Tainter gate)、ラジアルゲート、フラップゲート(起伏ゲート) ローリングゲート、ラバーゲートなどが挙げられる。また、用いられるバルブとしては、ハウエルバンガーバルブ〔Howell−Bunger(fixed cone dispersion)valve〕(固定コーンバルブ),ホロージェットバルブ〔Hollow jet valve〕(可動コーンバルブ) ,ジェットフローバルブ,バタフライバルブ,ゲートバルブ(仕切弁),オリフィスバルブ,ロータリーバルブ〔Rotary valve〕(円筒を回転させることにより開閉を行うバルブ),ジョンソンバルブ(円錐状の弁体を前後させることにより開閉を行うバルブ)が挙げられる。これら遮蔽装置を混合機(例えば、
図1、
図2、
図4)の出口と加熱装置(例えば、
図5)を連結させて、混合機出口、加熱装置の入口ないしその中間部に設置すればよい。また、好ましくは加熱装置の出口側でもさらに周期的遮蔽が行われ、具体的には、加熱装置(例えば、
図1)の出口と冷却装置の間にも同様に周期的遮蔽がなされる。これら遮蔽装置の中でもバルブ、さらにはロータリーバルブを介して装置間が遮蔽および連結されてなることが好ましい。バルブの大きさ(直径を指す。ただし、断面が円以外の形状である場合には、同面積の円の直径に換算する。)は適
宜決定され、例えば直径1〜100cmが好ましく、直径10〜50cmがより好ましい。
【0113】
これらの遮蔽装置は、最大処理量(kg/hr;遮蔽装置が単位時間当たりに通過させることのできる物質量の最大量)の100%未満で運転する。運転条件は、5〜95%が好ましく、10〜90%がより好ましく、20〜80%がさらに好ましい。遮蔽装置の運転条件が上記範囲から外れる場合、得られる吸水性樹脂の物性が低下したり、性能が不安定になったりする。ロータリーバルブなどの回転式遮蔽装置を用いる場合、その回転数は適宜決定されるが、例えば、1〜500rpm(回/分)が好ましい。回転数は、5〜200rpmがより好ましく、10〜100rpmがさらに好ましく、20〜100rpmが特に好ましい。遮蔽装置の最大処理能力は適宜決定されるが、例えば、0.01〜20t/hrが好ましく、0.1〜5t/hrがより好ましい。
【0114】
(b)加熱装置の運転条件
(充填率)
横型連続撹拌装置では、吸水性樹脂の充填率(容積比)は50〜90%となるように連続供給されることが好ましい。充填率は、55〜85%がより好ましく、60〜80%がさらに好ましい。充填率が上記範囲を満たさない場合、攪拌動力指数が制御し難く、得られる吸水性樹脂の物性が低下することがある。充填率100%の位置は、先に述べたように、回転軸の攪拌盤の頂点部である。
【0115】
横型連続撹拌装置での吸水性樹脂は、その質量面積比が100kg/m
2/hr以下となるように連続供給されることが好ましい。90kg/m
2/hr以下がより好ましく、50〜70kg/m
2/hrがさらに好ましい。質量面積比が上記範囲を満たさない場合、攪拌動力指数が制御し難く、得られる吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0116】
ここで、質量面積比は以下の式で定義される。
(質量面積比)=(吸水性樹脂の単位時間あたりの質量流量)/(装置の伝熱面積)
【0117】
装置トラフのジャケット面が保温のみの場合、質量面積比は以下のように規定される。
【0118】
(質量面積比)=(吸水性樹脂の単位時間あたりの質量流量)/(装置の攪拌軸および攪拌盤の伝熱面積)
【0119】
(回転数と反応時間)
本発明によれば、横型連続撹拌装置の撹拌速度を2〜40rpmとすることで均一な加熱混合ができる。2rpmを下回ると、撹拌が不充分となり、一方、40rpmよりも速いと微粉が発生しやすくなる場合がある。より好ましい撹拌速度は5〜30rpmである。また、装置内の滞留時間は、例えば10〜180分、好ましくは20〜120分である。10分未満では架橋反応が不充分となり易い。一方、180分を超えると吸水性能が低下することがある。
【0120】
(減圧)
本発明では、横型連続撹拌装置内を微減圧とすることが好ましい。「減圧状態」とは、大気圧よりも気圧が低い状態を意味する。また「大気圧に対する減圧度」とは、大気圧との圧力差を意味し、気圧が大気圧よりも低い場合に正(プラス)の値として表現される。例えば、大気圧が標準大気圧(101.3kPa)である場合、「減圧度が10kPa」とは、気圧が91.3kPaであることを意味する。本願において、「大気圧に対する減圧度」は、単に「減圧度」とも称される。減圧にしない場合、混合機の吸気口から吸水性樹脂粉末がこぼれ出てしまうことがあり好ましくない。微減圧とすることで、吸水性樹脂
からダスト(吸水性樹脂の超微粒子や必要により使用する無機微粒子)が除去でき、ダスト低減の観点からも好ましい。
【0121】
減圧に起因する上記効果を高める観点から、減圧度の下限値は、0kPaを超えるのが好ましく、0.01kPa以上がより好ましく、0.05kPa以上がさらに好ましい。過度の減圧は、ダストのみならず必要な吸水性樹脂粉末までも装置外に除去してしまうので収率低下を招くおそれがある。また、系内における粉の吊り上がりを抑制する観点、及び排気装置に対する過度のコストを抑制する観点から、減圧度は、10kPa以下が好ましく、8kPa以下がより好ましく、5kPa以下がさらに好ましく、2kPa以下が特に好ましい。減圧度の好ましい数値範囲は、上記下限値と上記上限値との間で任意に選択できる。
【0122】
(雰囲気)
横型連続撹拌装置内の雰囲気は空気でもよく、着色防止や燃焼防止ために、窒素などの不活性ガスでもよく、水蒸気が適宜追加されてもよい。また、温度や露点は適宜決定されるが、雰囲気温度(装置の上部空間のガス温度で規定)は30〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましい。露点は0〜100℃が好ましく、10〜80℃がより好ましい。
【0123】
(5−3)冷却工程
冷却工程は、加熱処理工程の後、任意に実施される工程である。表面架橋剤として、高温での反応が必要な、多価アルコール化合物、アルキレンカーボネート化合物、オキサゾリジノン化合物などの脱水反応性架橋剤を使用した場合に、冷却工程を行うことが好ましい。
【0124】
この冷却工程で用いられる冷却装置としては、特に制限はないが、先に述べた加熱処理に用いる横型連続攪拌装置でもよいし、前記特許文献41(米国特許第7378453号)などに例示され、例えば、内壁その他の伝熱面の内部に冷却水が通水されている2軸撹拌乾燥機等が用いられうる。また、この冷却水の温度は、表面処理工程における加熱温度未満とし、好ましくは25℃以上80℃未満である。本発明では任意に設置される冷却装置により、加熱による表面処理反応を制御でき、吸水性樹脂の物性が向上する。冷却装置としては特許文献41などに例示された機械的攪拌(気流による攪拌を組み合わせてもよい)又は振動による攪拌と気流による攪拌の組み合わせにより攪拌混合する冷却装置が好適に使用される。ここで、冷却装置の入口(上記加熱装置の出口と連結)、さらには冷却装置の出口にも上記周期的遮蔽がなされることが好ましい。
【0125】
冷却工程は、好ましくは前記横型連続撹拌装置内で行う。横型連続撹拌装置の攪拌動力指数は、3〜15W・hr/kgが好ましく、4〜13W・hr/kgがより好ましく、5〜11W・hr/kgがさらに好ましく、5〜10W・hr/kgが特に好ましく、5〜9W・hr/kgが最も好ましい。上記した減圧を加熱工程と同様に行ってもよく、また、好ましくは、上記周期的遮蔽を加熱工程と同様に行ってもよい。ここで前記した加熱装置(別称;加熱処理機、加熱機)の攪拌動力指数(4〜13W・hr/kg、さらに好ましくは5〜11W・hr/kg、特に好ましくは5〜10W・hr/kg、最も好ましくは5〜9W・hr/kg)と上記冷却装置の攪拌動力指数は同じでもよく異なってもよいが、物性面から好ましくは冷却装置(別称;冷却機)の攪拌動力指数の方が小さいことが好ましい。上記冷却装置の攪拌動力指数は、上記加熱装置の攪拌動力指数の0.99〜0.25倍、さらには0.95〜0.50倍、特に0.90〜0.55倍の範囲であることが好ましい。
【0126】
(5−4)その他
(a)表面処理装置の数
攪拌動力指数や物性向上の面から、重合工程を連続ベルト重合または連続ニーダー重合で行い、かつ重合工程に対して、複数の表面処理工程が並列で行うことが好ましい。
【0127】
本発明の製造方法では、重合工程一系列に対して、物性向上および安定化からも好ましくは、表面架橋工程を二系列以上で行う。本発明で一系列とは、原料(モノマー)から重合ゲル、吸水性樹脂(微粉回収品を含む)、粒子状吸水剤と最終製品が得られるまでに、工程を経るごとに進んでいく一つの系を意味する。その系が二つに分岐する場合、「二系列」という。換言すれば、「二系列以上」とは、同一工程内で、2基以上の装置を並列に配置して、同時又は交互に、稼動させる形態を指す。
【0128】
本発明において、各工程を二系列以上とする場合、それぞれの工程について、上限は10系列程度であり、中でも、二〜四系列が好ましく、二〜三系列がさらに好ましく、二系列が特に好ましい。系列数を上記範囲とすることで、得られる吸水性樹脂の物性が向上する。系列(分割)数が多い場合、分割する効果が得られず、また、運転が煩雑になり、コスト的にも経済的でないという観点から、二系列、即ち、2基以上の同じ装置(特に2基の装置)を並列で同時に稼動させることが特に好ましい。
【0129】
また、本発明においては、乾燥工程以降の工程で、重合ゲル又はその乾燥物である吸水性樹脂を二系列以上に分割するが、その分割量の割合は、工程毎に決定すればよく、特に制限されない。例えば、2分割する場合は、4:6〜6:4が好ましく、4.5:5.5〜5.5:4.5がより好ましく、4.8:5.2〜5.2:4.8が更に好ましく、5:5が最も好ましい。三系列以上の場合であっても、n分割される最大量と最小量との比が、上記範囲内に入ることが好ましい。なお、分割操作は、連続形式でもバッチ形式でもよく、上記分割量の割合は、所定時間での平均量で規定される。
【0130】
本発明において、表面架橋工程の系列数は特に限定されず、任意の系列数を選択することができるが、プラントの建設コスト、ランニングコスト等を考慮すると1系列または2系列、特に2系列であることが好ましい。すなわち、物性面から上記重合工程1系列に対して、表面架橋工程、好ましくはさらに粉砕工程、分級工程すべてが2系列以上(上限は前述の範囲)であることが最も好ましい。
【0131】
また、ひとつの装置に換えて、本発明で並列に複数の装置を設置する場合、並列の装置は適宜ダウンサイズすればよい。装置の処理能力を1/2にダウンサイズしても装置の価格は半減しないが、本発明では特定の並列の装置を設置することで、得られる吸水剤の物性が向上し、スペックアウト率も低減するため、結果的にコストダウンにも繋がることが見出された。
【0132】
なお、米国特許出願公開第2008/0227932号は「重合を二系列」で行い後半を一系列にする手法を開示し、前記特許文献30(米国特許出願公開第2007/149760号)では表面架橋で攪拌乾燥装置と加熱装置を「直列に連結」する技術、また、国際公開第2009/001954号ではベルト重合装置を「直列に連結」する技術をそれぞれ開示する。これに対し、本発明では重合機1基に対して重合工程終了後の特定の工程で「(実質的に同一の)装置を並列に配置」することで、従来以上の物性の向上および安定化を達成する。
【0133】
(分割手法)
本発明で表面架橋を2系列以上とするには分割工程を含み、好ましくは、粒子状含水ゲルまたはその乾燥物である粒子状吸水性樹脂の分割工程、より好ましくは、粒子状吸水性樹脂の分割工程を含む。
【0134】
用いられる分割方法としては、例えば、乾燥後の粒子状吸水性樹脂に対しては下記の手法(a−1)〜(a−3)が用いられる。
【0135】
(a−1)粒子状吸水性樹脂をホッパーへの貯蔵後に分割する方法。好ましくは、粉体への定量フィーダーが使用される。定量フィーダーとしてはサークルフィーダーやスクリューフィーダーなどが好適に使用される。
【0136】
(a−2)粒子状吸水性樹脂を空気輸送により複数のホッパーへ輸送する際に分割する方法。
【0137】
(a−3)粒子状吸水性樹脂を落下(例えば、自由落下)時に分割する方法。この際、分割には山や堰を設けた2分器、3分器などが使用される。なお、JIS試料縮分器(2分器)は、多数の小部屋に仕切られ、投入された試料が交互に2方向に振り分けられる構造を有している。
【0138】
例えば、重合後の重合ゲルに対する分割方法としては下記(a−4)〜(a−6)ないしそれらの併用の手法が用いられ、並列の乾燥工程に供給される。
【0139】
(a−4)ニーダーやミートチョッパーで得られた粒子状含水ゲルを落下(例えば、自由落下)時に分割する方法。分割にはニーダーやミートチョッパー出口に、山や堰を設けた2分機、3分機などが使用される。
【0140】
(a−5)上記の粒子状含水ゲルを定量フィーダーで分割する方法。
【0141】
(a−6)ベルト重合で得られたシート状ゲルを切断する方法。
【0142】
これらの中では、少なくとも、乾燥後の粒子状吸水性樹脂は分割されていることが好ましく、そのためには、重合ゲルまたは粒子状乾燥物が分割される。
【0143】
なお、上述した形態において分割される粒子状吸水性樹脂や重合ゲルの分割比の好ましい値については、上述した通りである。
【0144】
これらの中でも、定量供給性から、好ましくは手法(a−1)〜(a−3)が、更に好ましくは手法(a−1)が用いられる。
【0145】
(b)ホッパー
本発明で表面架橋物性の面から、表面架橋の前後に好ましくはホッパーが使用され、より好ましくは、逆角錐台形状や逆円錐台形状、ならびに逆角錐台の最大口径部分に同形状の角柱が付加された形状や逆円錐台の最大口径部分に同形状の円柱が付加されたホッパーが使用される。またその材質は特に限定されないが、ステンレス製が好ましく使用され、その表面粗さは好ましくは前記の範囲である。好適なホッパーやその形状はPCT/JP2009/54903号に例示され、かかるホッパーが推奨される。
【0146】
(c)表面架橋前後の吸水性樹脂輸送
表面架橋前後の吸水性樹脂の輸送方法は各種使用できるが、好ましくは、空気輸送が使用され、吸水性樹脂粒子および/または吸水性樹脂粉体の優れた物性が安定に保持されかつ閉塞現象が抑制されうるという観点から、一次空気及び必要により使用される二次空気(空気輸送中の追加空気)として、乾燥された空気が用いられるのが好ましい。この空気の露点は通常−5℃以下であり、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−12
℃以下であり、特に好ましくは−15℃以下である。露点の範囲はコストパーフォマンスを考え、−100℃以上であり、−70℃以上であるのが好ましく、さらには−50℃程度で十分である。さらに、気体の温度は10〜40℃、さらには15〜35℃程度であることが好ましい。空気輸送時に用いる圧縮空気の露点を上記範囲内とすることで、特に、製品として包装する際、SFCの低下を抑えることができるため、好ましい。
【0147】
乾燥された気体(空気)を用いる以外に、加熱された気体(空気)が用いられてもよい。加熱方法としては、特に限定されないが、気体(空気)が熱源を用いて直接加熱されてもよいし、上記輸送部や配管が加熱されることにより、通される気体(空気)が間接的に加熱されてもよい。この加熱された気体(空気)の温度は、下限として好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上であり、上限は70℃未満、より好ましくは50℃未満である。
【0148】
露点を制御する方法としては、気体、好ましくは空気を適宜乾燥すればよい。具体的には、メンブレンドライヤーを使用する方法、冷却吸着式ドライヤーを使用する方法、ダイヤフラムドライヤーを使用する方法やそれらを併用する方法が挙げられる。吸着式ドライヤーを使用する場、加熱再生式でもよく、非加熱再生式でもよく、非再生式でもよい。
【0149】
(6)その他工程
上記以外に、必要により、蒸発した単量体のリサイクル工程、造粒工程、微粉除去工程、微粉リサイクル工程などを設けてもよい。さらには、経時色安定性効果やゲル劣化防止等のために、後述の添加剤を単量体ないしその重合物に使用してもよい。
【0150】
〔3〕ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂
(1)ポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の物性
本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂を、衛生材料、特に紙おむつへの使用を目的とする場合、上記重合や表面架橋をもって、下記(a)〜(e)の少なくとも1つ、さらにはAAPを含め2つ以上、特に3つ以上に制御されることが好ましい。下記を満たさない場合、後述の高濃度おむつでは十分な性能を発揮しないことがある。本発明の製造方法は下記の物性を達成する吸水性樹脂の製造に、より効果、特に物性の安定化(小さい標準偏差)を発揮する。すなわち、下記目的物性の中でも、本発明の製造方法は好ましくは、吸水性樹脂の4.8kPa加圧下での0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が20g/g以上、0.69質量%生理食塩水流れ誘導性(SFC)が1(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、無加圧下吸水倍率(CRC)が20g/g以上である吸水性樹脂の製造方法、さらには下記範囲である製造方法に好適に適用され、物性が向上さらには安定化する。
【0151】
(a)加圧下吸水倍率(AAP)
おむつでのモレを防止するため、上記表面架橋とその後の冷却工程を達成手段の一例として、1.9kPaの加圧下さらには4.8kPaの加圧下での0.9質量%の塩化ナトリウム水溶液に対する吸水倍率(AAP)が、好ましくは20g/g以上、よりに好ましくは22g/g以上、さらに好ましくは24g/g以上に制御される。AAPは高いほど好ましいが、他の物性やコストとのバランスから、AAPの上限は1.9kPaなら40g/g、さらには4.8kPaなら30g/g程度でもよい。特に記載のない場合、AAPは4.8kPaでの値を示す。
【0152】
(b)通液性(SFC)
おむつでのモレを防止するため、上記表面架橋とその後の冷却工程を達成手段の一例として、加圧下での液の通液特性である0.69%生理食塩水流れ誘導性SFC(米国特許5669894号で規定)は1(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、好ましくは2
5(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、より好ましくは50(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、さらに好ましくは70(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上、特に好ましくは100(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上に制御される。
【0153】
本発明では通液性の向上、中でもSFC向上、特に25(×10
−7・cm
3・s・g
−1)以上へ向上させることに、より顕著に効果を発揮するため、かかる高通液性の吸水性樹脂の製法に好適に適用できる。
【0154】
(c)無加圧下吸水倍率(CRC)
無加圧下吸水倍率(CRC)は、好ましくは10g/g以上であり、より好ましくは20g/g以上、さらに好ましくは25g/g以上、特に好ましくは30g/g以上に制御される。CRCは、高いほど好ましく上限値は特に限定されないが、他の物性のバランスから、好ましくは50g/g以下、より好ましくは45g/g以下、さらに好ましくは40g/g以下である。
【0155】
(d)水可溶分量(可溶分)
水可溶分量が好ましくは0〜35質量%以下、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0156】
(e)残存モノマー
上記重合を達成手段の一例として、残存モノマー(残存単量体)量は通常500質量ppm以下、好ましくは0〜400質量ppm、より好ましくは0〜300質量ppm、特に好ましくは0〜200質量ppmを示す。
【0157】
(2)その他添加剤
さらに、目的に応じて、酸化剤、酸化防止剤、水、多価金属化合物、シリカや金属石鹸等の水不溶性無機ないし有機粉末、消臭剤、抗菌剤、高分子ポリアミン、パルプや熱可塑性繊維などを吸水性樹脂中に0〜3質量%、好ましくは0〜1質量%添加してもよい。
【0158】
(3)用途
本発明のポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の用途は、特に限定されにないが、好ましくは、紙オムツ、生理ナプキン、失禁パット等の吸収性物品に使用され得る。特に、従来、原料由来の臭気、着色等が問題になっていた高濃度オムツ(1枚のオムツに多量の吸水性樹脂を使用したもの)に使用され、特に上記吸収性物品中の吸収体上層部に使用された場合に、特に優れた性能が発揮される。
【0159】
この吸収性物品中の、任意に他の吸収性材料(パルプ繊維など)を含んでいてもよい吸収体における吸水性樹脂の含有量(コア濃度)は、30〜100質量%、好ましくは40〜100質量%、より好ましくは50〜100質量%、さらに好ましくは60〜100質量%、特に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは75〜95質量%で本発明の効果が発揮される。例えば、本発明の吸水性樹脂を上記濃度で、特に吸収体上層部に使用した場合、高通液性(加圧下通液性)のため尿等の吸収液の拡散性に優れるので、紙オムツ等の吸収性物品が効率的な液分配を行うことができ、吸収性物品全体の吸収量を向上させることができる。また、吸収体が高度な白色状態を保つため、衛生感のある吸収性物品が提供できる。
【0160】
[実施例]
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、以下におけるAAPやSFC等の測定方法は前述した通りである。
【0161】
〔製造例1〕吸水性樹脂粒子(A)の製造
重合工程(ベルト上での静置重合)、ゲル細粒化工程(解砕工程)、乾燥工程、粉砕工程、分級工程及び各工程間の輸送工程の各装置が接続され、各工程を連続して行うことができるポリアクリル酸(塩)系吸水性樹脂の連続製造装置を用いた。この連続製造装置の生産能力は、1時間あたり約1500kgである。この連続製造装置を用いて、吸水性樹脂粒子を連続製造した。
【0162】
先ず、単量体水溶液(1)として、75モル%が中和されたアクリル酸部分ナトリウム塩の水溶液を調製した。この単量体水溶液(1)は、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)を単量体の全モル数に対して0.06モル%含んでいた。上記単量体水溶液(1)において、上記単量体(上記アクリル酸部分ナトリウム塩)の濃度は、38質量%とされた。得られた単量体水溶液(1)を定量ポンプでベルト上へ連続フィードした。フィードに用いた配管の途中で窒素ガスを連続的に配管内に吹き込み、単量体水溶液(1)における溶存酸素濃度を0.5mg/L以下にした。なお、上記「平均n数」とは、ポリエチレングリコール鎖中のメチレン鎖重合度の平均数を意味する。
【0163】
次に、単量体水溶液(1)に、過硫酸ナトリウムとL−アスコルビン酸とをラインミキシングにて連続混合した。このラインミキシングにおいて、過硫酸ナトリウムの混合比率は、単量体1モル当たり0.12gとし、L−アスコルビン酸の混合比率は、単量体1モル当たり0.005gとした。このラインミキシングにより得られた連続混合物を、両端に堰を有する平面スチールベルトに厚み約30mmで供給して、連続的に30分間静置水溶液重合を行い、含水ゲル状架橋重合体(1)を得た。この含水ゲル状架橋重合体(1)を孔径7mmのミートチョッパーで約2mmに細粒化し、これを連続通風バンド乾燥機の移動する多孔板上に厚みが50mmとなるように広げて載せ、185℃で30分間乾燥し、乾燥重合体を得た。当該乾燥重合体の全量を3段ロールミルに連続供給することで粉砕した。ここで重合機出口から乾燥機入口までの時間は1分以内であった。この3段ロールミルのロールギャップは、上から順に、1.0mm/0.55mm/0.42mmであった。この粉砕の後、目開き850μmおよび150μmの金属篩網を有する篩い分け装置で分級して、150〜850μmの粒子が約98質量%の吸水性樹脂粒子(A)を得た。この吸水性樹脂粒子(A)のCRCは35g/gであり、嵩比重は0.6g/cm
3であった。
【0164】
〔実施例1〕
製造例1で使用した連続製造装置から引き続いて、表面処理工程(加湿混合工程、加熱工程および冷却工程)、整粒工程および各工程間を連結する輸送工程からなる連続製造装置を用いて、吸水性樹脂粉体(1)を製造した。すなわち、製造例1の粉砕分級工程と、実施例1の表面処理工程は、輸送工程により連結されている。
【0165】
吸水性樹脂粒子(A)を分級機から空気輸送(温度35℃、露点−15℃)で高速連続混合機(タービュライザー(例えば、
図3)/1000rpm)に1.5t/hrで連続供給しつつ、表面処理剤溶液(1)をスプレーで噴霧し混合した(加湿混合工程)。また、混合機の内壁温度は70℃、機内のガス流の温度は65℃、減圧度は0.3kPaに制御し、攪拌軸は150℃に加熱(内壁温度70℃より+80℃)した。上記表面処理剤溶液(1)は、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール及び純水の混合液であった。この表面処理剤溶液(1)は、吸水性樹脂粒子(A)100質量部に対して、1,4−ブタンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.5質量部及び純水2.7質量部の割合で吸水性樹脂粒子(A)に混合され、湿潤粉体である混合物(1)とされた。その際、混合物(1)の温度は70℃であった。
【0166】
次いで、得られた混合物(1)を1°の下向き傾斜角を有し、縦横比2.2、パドル回転数13rpm、2本の回転軸と、かき上げ羽根を有する撹拌盤とを有し、内面の表面粗さ(Rz)が500nmの横型連続攪拌装置(1)により表面処理を行った(加熱処理工程)。このとき、装置(1)内を、バグフィルターを備えた吸引排気装置によって吸引し、装置内を1kPaの減圧とした。また、上記装置(1)の入口(混合機との連結部)および出口(冷却装置との連結部)にはロータリーバルブ(周期的遮蔽装置)を設置した。事前のテストによって、平均滞留時間45分、平均充填率75%となる排出堰の位置を把握しておき、そのように、排出堰の位置を設定した。表面処理に用いた加熱源は、2.5MPaの加圧蒸気であり、上記横型連続攪拌装置(1)の排出部付近に設けられた温度計により装置内の混合物(1)の温度を測定し、その温度が198℃になるように蒸気流量を制御して加熱を行った。攪拌盤と攪拌軸の総表面積は24.4m
2であり、この総表面積(伝熱面積)と処理量とから計算される質量面積比は61.5kg/m
2/hrであった。また、表面処理時の攪拌動力は27.8kW、空運転での攪拌動力は13.5kW、平均滞留時間45分であり、攪拌動力指数は9.5W・hr/kgであった。なお、使用したロータリーバルブは300角(mm)で、能力は3t/hrであった。
【0167】
次いで、同様類似(やや小型)の横型連続攪拌装置を用いて60℃まで強制冷却した(冷却工程)。攪拌動力指数は8.5W/hr/kgであった。
【0168】
さらに、篩い分け装置で850μm通過物を分級し、850μm on品(850μm非通過物)は再度粉砕したのち、前記850μm通過物と混合することで、全量が850μm通過物である整粒された製品としての吸水性樹脂粉体(1)を得た。
【0169】
得られた吸水性樹脂粉体(1)のCRCは30.2(g/g)、SFCは29.9(×10
−7・cm
3・s・g
−1)、AAPは25.1(g/g)であった。また、各物性値の標準偏差は、CRC:0.18、SFC:0.45、AAP:0.21であった。なお、これらの物性値は、運転開始後10時間を経過するまで、2時間ごとにサンプリング(5点)を行って求めた測定値の平均値である。以下の実施例、比較例でも同様にして物性値を求めた。結果を表1に示す。
【0170】
〔実施例2〕
実施例1において、重合工程1系列に対して、表面架橋工程を2系列(すなわち、混合機、加熱装置、冷却装置それぞれ2基を並列に配置)とした以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粉体(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉体(2)のCRCは30.3(g/g)、SFCは29.7(×10
−7・cm
3・s・g
−1)、AAPは25.2(g/g)であった。また、各物性値の標準偏差は、CRC:0.15、SFC:0.40、AAP:0.15であった。結果を表1に示す。
【0171】
〔比較例1〕
実施例1において、高速連続混合機内の温度を38℃に制御し、攪拌軸の加熱を行わなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粉体(3)を得た。
【0172】
得られた吸水性樹脂粉体(3)のCRCは30.4(g/g)、SFCは28.1(×10
−7・cm
3・s・g
−1)、AAPは24.4(g/g)であった。また、各物性値の標準偏差は、CRC:0.44、SFC:1.46、AAP:0.29であった。結果を表1に示す。
【0174】
〔実施例3〕
実施例2で得られた吸水性樹脂粉体(2)を、内面の表面粗さ(Rz)200nmの配管内に圧縮空気(露点−15℃、温度35℃)を通すことで、該吸水性樹脂粉体を空気輸送して包装した。該空気輸送後のSFCは29.2(×10
−7・cm
3・s・g
−1)であり、SFC低下率は1.7%であった。
【0175】
〔実施例4〕
露点20℃の圧縮空気を使用した以外は、実施例3と同様の空気輸送を行った。該空気輸送後のSFCは28.3であり、SFC低下率は4.7%であった。
【0176】
〔実施例5〕
実施例1において、高速連続混合機(タービュライザー;1000rpm)を鍬型混合機(レディゲミキサー(例えば、
図1);400rpm;内面の表面粗さ(Rz)が400nm)に変更し、さらに、実施例1の表面処理剤溶液(1)に代えて、“1,4−ブタ
ンジオール0.3質量部、プロピレングリコール0.6質量部及び純水3.5質量部”(吸水性樹脂粒子(A)100質量部に対する量)からなる表面処理剤溶液(2)に変更した。ここで、混合機の内壁温度を90℃、機内のガス流の温度を65℃、減圧度を0.3kPaに制御し、攪拌軸は150℃に加熱(内壁温度70℃より+80℃)した。得られた混合物(2)は混合前に比べて温度が1℃上昇した。次いで実施例1と同様に加熱処理工程、冷却工程および整粒工程(分級工程)を経ることで、全量が850μm通過物である整粒された製品としての吸水性樹脂粉体(4)を得た。
吸水性樹脂(4)は、CRC=30.1(g/g)、SFC=33.0(×10
−7・cm
3・s・g
−1)、AAP=25.3(g/g)であり、それぞれの標準偏差はCRCが0.19、SFCが0.47、AAPが0.22であった。
【0177】
〔比較例2〕
実施例5において、攪拌軸の加熱をなくしたところ、軸や鋤刃に吸水性樹脂が付着し、運転時間が長くなるとともに物性は低下(AAPは0.1〜1.0ポイント低下、SFCは数ポイント低下)した。さらに、連続運転12時間では、吸水性樹脂の付着による過負荷で混合機が停止した。鍬型混合機では軸加熱を行うことで、顕著に効果が見られることがわかる。
【0178】
〔比較例3〕
実施例5において、攪拌軸の加熱にかえて、攪拌軸をテフロン(ポリテトラフルオロエチレン)でコーティングにしたところ、テフロンの剥がれによって軸や鋤刃に吸水性樹脂が徐々に付着し、実施例5では安定していた物性が、比較例3では数ヶ月単位で物性が徐々に低下(AAPは0.1〜1.0ポイント低下、SFCは数ポイント低下)したため、連続運転を停止してのテフロン樹脂の再コートが必要であった。
【0179】
(まとめ)
表1に、10時間の連続運転における物性のフレ(標準偏差)と物性(平均値)を示す。なお、表1は2時間ごとの製品を分析した結果(平均値、標準偏差)である。
【0180】
表1にあるように、加湿混合工程で、表面架橋剤の連続混合機の攪拌軸を加熱したことや、機内温度を40℃以上に制御したことにより、吸水性樹脂の物性も向上し、安定化(標準偏差の低減)が見られた。
【0181】
また、実施例3および実施例4の結果から、特定露点の圧縮空気を用いた空気輸送が好ましいことが分かる。
【0182】
(従来技術との対比)
従来の表面処理技術である前記特許文献1〜41に比べて、本願では攪拌軸を加熱またはガス流の温度を制御することで、吸水性樹脂の物性も向上し、安定化(標準偏差の低下)が行える。例えば、従来、装置面の改良では、表面架橋剤の混合機に特定の混合機を使用する技術(特許文献26〜29)、加熱装置の技術(特許文献30,31)などが知られ、例えば、米国特許第6576713号の請求項16等は、混合機の内壁温度を40℃以上とした攪拌混合機を使用する技術を開示するが、いずれも軸や羽根の加熱、内部ガス流の温度や圧力に注目するものではなく、かかる装置面の改良技術は本願を示唆せず、本願の比較例に相当する。