(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量計による1回目の昇温測定で得られるDSC曲線において、少なくとも2つの融解ピークを有し、最も低温の融解ピーク温度が100℃以上、130℃以下であり、かつ、最も高温の融解ピーク温度が140℃以上、160℃以下であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、モノマーとしてプロピレンを主成分とした樹脂であり、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂、チーグラー系触媒を使用して重合したポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。
【0020】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、組成面からは、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム3元共重合体等が例示できる。
【0021】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、低融点化が可能な点から、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂が好ましい。また、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたプロピレン系樹脂の中では、汎用性の点で、プロピレン・エチレンランダム共重合体が特に好ましい。
従来のチーグラー系重合触媒では低融点化に限界があり、市販されているものでは、融点130℃程度が下限であったのに対して、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂の場合では、130℃以下の低融点化が可能で、さらには、120℃以下の低融点化も可能である。この低融点化されたポリプロピレン系樹脂の融点は、ポリエチレン系樹脂の融点に匹敵する低融点である。
【0022】
本発明においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いられるポリプロピレン系樹脂は、低成形加熱水蒸気圧という観点からは、エチレン含有量の多い低融点樹脂が好ましい。プロピレンに共重合させる共重合成分がエチレンの場合、エチレン含有率3.0重量%以上8.0重量%以下が好ましく、3.5重量%以上7.0重量%以下がさらに好ましい。チーグラー系重合触媒の場合は、エチレン含有率5重量%程度が上限であるが、メタロセン系重合触媒の場合は、8重量%程度までのエチレン含有率のものの製造が可能である。
【0023】
広い成形加熱条件幅を実現するためには、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いられるポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂が低融点成分と高融点成分を含むことが必要である。本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いられるポリプロピレン系樹脂としては、具体的には、示差走査熱量計による融点測定で得られるDSC曲線において、少なくとも2つの融解ピークを有し、100℃以上130℃以下に最も低温の融解ピークを有し、かつ、140℃以上160℃以下に最も高温の融解ピークを有するものであることが必要である。
【0024】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂の示差走査熱量計による融点測定で得られるDSC曲線とは、示差走査熱量計を用いて、試料3〜6mgを10℃/分の昇温速度で20℃から220℃まで昇温した後、10℃/分で220℃から20℃まで降温し、さらに10℃/分で20℃から220℃まで昇温した際に、2回目の昇温時に得られるDSC曲線をいい、融点とは、当該DSC曲線における融解ピークの頂点温度を言う。
本発明のように、DSC曲線に複数の融解ピークが現れる場合は、ポリプロピレン系樹脂は複数の融点を有することになる。
【0025】
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂の最も低温の融解ピークは、100℃以上130℃以下にあり、105℃以上120℃以下にあることが好ましい。最も低温の融解ピークを構成する成分は、一般的には融点が130℃以下の樹脂は通常のチーグラー系触媒では製造が難しい場合があり、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂由来であることが好ましい。
【0026】
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂においては、最も低温の融解ピークを示す低融点成分の量が、60重量%以上95重量%以下を占めることが好ましい。
ここで、低融点成分の量とは、低融点を有するポリプロピレン系樹脂および高融点を有するポリプロピレン系樹脂を溶融混合する場合は、配合する低融点成分の重量%であり、また、多段重合法によりポリプロピレンの重合時に重合と同時に混合する場合は、生成したポリマーを昇温溶離分別法(TREF)にて測定した溶出ピーク曲線において、高温部分の面積から算出(高温部分の面積/全面積)した高融点成分の値を全成分量から差し引いた値である。
【0027】
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂の最も高温の融解ピークは、140℃以上160℃以下にあり、140℃以上155℃以下にあることが好ましい。
【0028】
最も高温の融解ピークを構成する成分は、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレンホモポリマーおよび/またはプロピレン系ランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂や、チーグラー系重合触媒を用いて重合されたプロピレン系ランダム共重合体等のポリプロピレン系樹脂に由来することが好ましい。
【0029】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂においては、最も高温の融解ピークを構成する成分の融点が高いほど、また、最も高温の融解ピークを構成する成分の量が高いほど、発泡温度、成形温度が高くなる傾向があるが、最も高温の融解ピークと最も低温の融解ピークと融点差が大きすぎたり、高融点成分の量が多すぎると、発泡温度が高温側になり、低融点成分の結晶が全融解したり溶融粘度が低くなりすぎて得られる発泡粒子の気泡構造が不均一になったり、連続気泡化する傾向がある。
【0030】
最も高温の融解ピークを構成する成分は、同一融点で比較した場合での樹脂剛性が高い点から、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂由来であることが好ましく、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレンホモポリマー由来であることがより好ましい。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂が、高温の融解ピークおよび低温の融解ピークを有するためには、低融点を有するポリプロピレン系樹脂および高融点を有するポリプロピレン系樹脂を押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融混合して得る、或いは、多段重合により、ポリプロピレンの重合時に重合と同時に混合する(混合したかのような組成とする)こともできる。
【0032】
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂同士の混合の良好さという点から、多段重合によって得られるポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。さらに、気泡径がより均一になりやすい点からも、多段重合によって得られるポリプロピレン系樹脂を使用することが好ましい。
【0033】
本発明において、メタロセン系触媒を用いてポリプロピレン系樹脂を多段重合で製造する場合、前重合(P−1)、予重合(P−2)および本重合(P−3)の工程を経る。これらの工程は、メタロセン系重合触媒存在下で順次実施することが好ましい。
前重合工程(P−1):エチレンを重合して前重合体を製造する工程。微量のエチレン前重合体を添加することにより、重合触媒を安定化させることができる。
予重合工程(P−2):前重合体の存在下でプロピレンを重合して予重合体を製造する工程。
本重合工程(P−3):予重合体の存在下でプロピレン並びにエチレンおよび/または炭素数4以上のα−オレフィンを共重合してプロピレン系共重合体を製造する工程。
【0034】
本発明のポリプロピレン系樹脂の多段重合に用いられるメタロセン系重合触媒としては、下記化1で表されるメタロセン化合物を含むメタロセン系重合触媒であることが好ましい。該メタロセン系重合触媒を使用することにより、2,1−挿入および1,3−挿入の異種結合の合計量を0.2mol%以下に減らすことができる。
【0036】
(上記化1において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14は、水素、炭化水素基、ケイ素含有基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは第4族遷移金属であり、Yは炭素原子またはケイ素原子であり、Qはハロゲン、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一または異なる組合せで選んでもよく、jは1〜4の整数である。)
【0037】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の基材樹脂として用いるポリプロピレン系樹脂は、示差走査熱量計による融点測定で得られるDSC曲線において、少なくとも3つの融解ピークを有し、100℃以上130℃以下に最も低温の融解ピークを有し、かつ、140℃以上160℃以下に最も高温の融解ピークを有し、さらに、最も低温の融解ピークと最も高温の融解ピークとの間に融解ピークを有するものであることが、気泡径の均一性、成形加熱条件幅の拡大の点から、好ましい。
【0038】
低温の融解ピークがメタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂由来であり、高温の融解ピークがメタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレンホモポリマー由来の場合に、最も低温の融解ピークと最も高温の融解ピークの間に融解ピークが現れる傾向がある。最も低温の融解ピークと最も高温の融解ピークの間に現れる融解ピークは、最も低温の融解ピークの由来であるポリプロピレン系樹脂と最も高温の融解ピークの由来であるポリプロピレン系樹脂の共晶と推定される。
最も低温の融解ピークと最も高温の融解ピークの間に現れる融解ピークがはっきり現れるような、ポリプロピレン系樹脂であることが、気泡径が均一で、成形加熱条件幅が広いポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得るために好ましい。
【0039】
本発明のポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、2g/10分以上50g/10分以下が好ましく、5g/10分以上40g/10分以下がさらに好ましい。ただし、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂の場合、分子量分布が狭く、可塑化作用を有する低分子量成分が少ない傾向があるため、基材樹脂としてのポリプロピレン系樹脂として、メタロセン系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレン系樹脂を採用する場合、MFRはチーグラー系重合触媒を用いて重合された樹脂に比べて高くした方が良好な発泡性を得るために好ましい。
ここで、MFRの測定は、JIS K7210記載のMFR測定器を用い、オリフィス2.0959±0.005mmφ、オリフィス長さ8.000±0.025mm、荷重2160g、樹脂温度230±0.2℃の条件下で測定した時の値である。ポリプロピレン系樹脂のMFRが2g/10分未満では、発泡性が悪くなる傾向があり、MFRが50g/10分を超えると、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡が破壊されて連続気泡ができやすい傾向がある。
【0040】
本発明のポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂と混合使用可能な他の熱可塑性樹脂、例えば低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブテン、アイオノマー等をポリプロプレン系樹脂の特性が失われない範囲で混合使用しても良い。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂は、通常、発泡粒子製造に利用し易いように、予め押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状等のような所望の粒子形状に加工しておくことが好ましい。
【0042】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂粒子の大きさは、1粒の重量が0.1mg〜30mgであることが好ましく、より好ましくは0.3mg〜10mgになるように加工する。
ここで、樹脂粒子の一粒の重量は、樹脂粒子をランダムに100粒採取し、重量を測定し、1粒あたりの平均として得られた平均樹脂粒子重量であり、mg/粒で表示する。
【0043】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂への添加剤としては、発泡剤としてプロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤を使用する場合は、タルク、シリカ、炭酸カルシウムのようなセル造核剤となる無機物質を添加することが好ましい。セル造核剤となる無機物質の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.005重量部以上0.5重量部以下であることが好ましい。
【0044】
発泡剤として空気、窒素、炭酸ガス、水等の無機発泡剤を使用する場合は、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂への添加剤としては、前記無機造核剤および/または吸水物質を使用することが好ましい。
吸水物質とは、当該物質をポリプロピレン系樹脂粒子中に添加し、該ポリプロピレン系樹脂粒子を水と接触させる或いは水分散系で発泡剤含浸をする際に、ポリプロピレン系樹脂粒子内に水を含有させうる物質をいう。
【0045】
吸水物質として、具体的には、例えば、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛等の水溶性無機物、ポリエチレングリコール、ポリエーテルを親水性セグメントとした特殊ブロック型ポリマー[商品名:ペレスタット;三洋化成(株)製]、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、ブタジエン(メタ)アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、カルボキシル化ニトリルゴムのアルカリ金属塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩及びポリ(メタ)アクリル酸のアルカリ金属塩等の親水性ポリマー、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、イソシアヌル酸等の多価アルコール類、メラミン等が挙げられる。これらの水溶性無機物、親水性ポリマー、多価アルコール類等は、単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0046】
吸水物質の添加量は、目的とする発泡倍率、使用する発泡剤、使用する吸水物質の種類によって異なり一概に記載することはできないが、水溶性無機物、多価アルコール類を使用する場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上2重量部以下であることが好ましく、親水性ポリマーを使用する場合、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、0.05重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
【0047】
本発明において、ポリプロピレン系樹脂に対して、帯電防止剤、顔料、難燃性改良剤、導電性改良剤、等の他の添加剤を必要により加えてもよい。その場合は、これらの添加剤は、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造する方法には、特に限定はないが、耐圧容器内にポリプロピレン系樹脂粒子を発泡剤存在下、分散剤等と共に水中に分散させ、加圧下で所定の発泡温度まで加熱すると共に発泡剤を樹脂粒子に含浸させた後、容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、耐圧容器内のポリプロピレン系樹脂粒子を含む分散物を低圧域に放出・発泡させる方法が好ましい。
【0049】
耐圧容器内から分散物を低圧域に放出させる際の耐圧容器内の温度(以下、「発泡温度」と称する場合がある)は、100℃以上130℃以下に存在する最も低温の融解ピーク温度と、140℃以上160℃以下に存在する最も高温の融解ピーク温度の中間の温度[すなわち、中間ピークが存在する場合はその温度、中間ピークが存在しない場合は、(最も低温の融解ピーク温度+最も高温の融解ピーク温度)/2(℃)であり、以下、中間温度と称する]を基準として、該中間温度−15(℃)〜該中間温度+15(℃)の間であることが、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の高温側の融解ピーク熱量の比率(QH/(QH+QL)×100)(以下、DSC比)を10%以上50%以下に調節することができる点から、好ましい。
【0050】
本発明において、発泡剤として空気、窒素、炭酸ガス、水等の無機発泡剤を使用する場合、一段目の発泡倍率が比較的低倍率であるため、高発泡倍率の発泡粒子を得る場合は、前記方法にて一旦ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を得た後、該発泡粒子に空気等の不活性ガスを含浸させて発泡力を付与した後、加熱を行って更に発泡させるという、いわゆる二段発泡法を採用してもよい。
【0051】
本発明においてポリプロピレン系樹脂粒子に含浸させる発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の炭化水素系発泡剤、空気、窒素、炭酸ガス、水等の無機発泡剤等があげられる。これらの発泡剤は単独で用いてもよく、また、2種類以上併用してもよい。これらの発泡剤のうち、好ましいのは、炭酸ガス、水や、より高倍率での発泡を可能とするイソブタンである。
【0052】
発泡剤の使用量は、使用する樹脂、発泡剤、所望の発泡倍率によって変わるが、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の所望の発泡倍率に応じて適宣使用すれば良く、通常、発泡剤の使用量はポリプロピレン系樹脂粒子100重量部に対して、1重量部以上60重量部以下であることが好ましい。
【0053】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子製造時に使用する耐圧容器には特に制限はなく、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子製造時における容器内圧力、容器内温度に耐えられるものであればよく、例えばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0054】
本発明において用いられる分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、アルミノ珪酸塩、硫酸バリウム、カオリン等の無機系分散剤が挙げられる。
【0055】
本発明において、分散剤と共に分散助剤を使用してもよく、用いられる分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、n−パラフィンスルホン酸ソーダ、α−オレフィンスルホン酸ソーダ等の界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、分散剤および分散助剤としては、第三リン酸カルシウムとn−パラフィンスルホン酸ソーダを組み合わせて使用することが好ましい。
【0056】
分散剤や分散助剤の使用量は、その種類や、用いるポリプロピレン系樹脂の種類と使用量によって異なる。例えば、ポリプロピレン系樹脂粒子と水の仕込み比が1/3〜1/1の範囲の場合、水100重量部に対して分散剤が0.1重量部以上5重量部以下、分散助剤が0.001重量部以上0.1重量部以下であることが、分散安定性を確保し、得られる発泡粒子表面に分散剤が付着しにくく型内発泡成形時に発泡粒子同士の融着を阻害させないため、好ましい。
【0057】
以上のようにして得られる本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、示差走査熱量計を用いて、試料3〜6mgを10℃/分の昇温速度で20℃から220℃まで昇温する際に得られる、いわゆる、示差走査熱量計による1回目の昇温測定で得られるDSC曲線において、少なくとも2つの融解ピークを有することが好ましい。
【0058】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の最も低温の融解ピーク温度は、100℃以上130℃以下であり、かつ、最も高温の融解ピーク温度が140℃以上160℃以下であることが、良好な成形性を得るために好ましい。最も低温の融解ピーク温度が低いほど、型内発泡成形時の成形加熱水蒸気圧を低くすることができる。また、最も高温の融解ピークを示す高融点成分の量が一定量存在することにより、高温での型内発泡成形にも耐えられ、成形加熱条件幅を広くすることができる。
ここで、最も高温の融解ピークを示す高融点成分の量とは、低融点を有するポリプロピレン系樹脂および高融点を有するポリプロピレン系樹脂を溶融混合する場合は、配合する高融点成分の重量%であり、また、多段重合法によりポリプロピレンの重合時に重合と同時に混合する場合は、生成したポリマーを昇温溶離分別法(TREF)にて測定した溶出ピーク曲線において、高温部分の面積から算出(高温部分面積/全面積)した値である。
【0059】
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量計による1回目の昇温測定で得られるDSC曲線に現れる、最も低温の融解ピーク温度と最も高温の融解ピーク温度の差は、広い成形加熱条件幅を実現するために、25℃以上40℃以下であることが好ましく、30℃以上40℃以下であることがさらに好ましい。
【0060】
基材樹脂として、融解ピークが一つしかないポリプロピレン系樹脂を用いた場合、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の最も低温の融解ピーク温度と最も高温の融解ピーク温度の差は25℃未満となり、複雑な形状の金型、大きな金型等を使用して型内発泡成形を行う場合、成形加熱条件幅が不十分となる。
【0061】
耐圧容器内にポリプロピレン系樹脂粒子を発泡剤存在下、分散剤等と共に水中に分散させ、加圧下で所定の発泡温度まで加熱すると共に、発泡剤を樹脂粒子に含浸した後、容器内の温度、圧力を一定に保持しながら、耐圧容器内の分散物を低圧域に放出・発泡させる方法で該発泡粒子を製造する場合、基材樹脂の最も高温の融解ピークの温度が高くなるほど、或いは、基材樹脂の最も高温の融解ピークに由来するポリプロピレン系樹脂の含有量が多くなるほど、発泡温度が高くなる傾向がある。
【0062】
また、基材樹脂として、高温の融解ピークが、例えば、チーグラー系重合触媒を用いて重合されたポリプロピレンホモポリマーのように融点が160℃を超えるポリプロピレン系樹脂に由来するポリプロピレン系樹脂を用いた場合、発泡温度が高くなり、得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の気泡構造が乱れて不均一セルが発生し、連続気泡化し易く、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面に窪みが発生したり、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が大きく収縮したりし易い。
【0063】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC比、すなわち、高温の融解ピーク熱量の比率(=QH/(QH+QL)×100)は、10%以上50%以下であることが好ましい。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子のDSC比が10%未満では、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の独立気泡率が低く、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の成形体変形率が大きくなる傾向にある。DSC比が50%を超えると、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡成形する際の2次発泡力が十分得られない場合があり、粟おこし状で発泡粒子同士の融着の劣るポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体が得られる場合がある。
ここで、最も低温の融解ピーク熱量QLとは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量計による1回目の昇温測定で得られるDSC曲線において、最も低温の融解ピークと最も低温の融解ピークと高温の融解ピークの間の極大点からの融解開始ベースラインへの接線で囲まれる熱量であり、高温側融解ピーク熱量QHとは、DSC曲線の高温の融解ピークと最も低温の融解ピークと高温の融解ピークの間の極大点からの融解終了ベースラインへの接線で囲まれる熱量である。
【0064】
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、30μm以上1000μm以下が好ましく、50μm以上500μm以下がさらに好ましく、100μm以上350μm以下がより好ましい。
平均気泡径が30μm未満では、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体としたときに収縮率が大きくなったり、表面美麗性が低下する場合がある。平均気泡径が1000μmを超えると、気泡径が不均一になり易く、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の倍率ばらつきも大きくなり易い傾向がある。
ここで、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の平均気泡径は、以下のようにして測定したものである。すなわち、発泡粒子をランダムに10個サンプリングし、各発泡粒子を2等分に切断した気泡断面を顕微鏡で観察する。中央部2mm(2000μm)の線上を横切る気泡の個数をカウントし、気泡径(μm)=2000/気泡の個数の式より求め、10個の発泡粒子の平均を平均気泡径とする。
【0065】
以上のようにして得られる、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内発泡成形を行ってポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とする。
【0066】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には、イ)発泡粒子をそのまま用いる方法、ロ)予め発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し、発泡能を付与する方法、ハ)発泡粒子を圧縮し粒子内圧を高めた状態で金型内に充填し成形する方法、など従来既知の方法が使用しうる。
【0067】
例えば、ロ)の場合、予め耐圧容器内で空気加圧し、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子中に空気を圧入し、発泡粒子内圧を0.12〜0.3MPa程度にすることにより発泡能を付与し、これを閉鎖しうるが密閉し得ない成形金型内に充填し、水蒸気を加熱媒体として0.1〜0.4MPa・G程度の加熱水蒸気圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形しポリプロピレン系樹脂発泡粒子同士を融着させ、その後、成形金型を水冷により型内発泡成形体取り出し後の型内発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却することで、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体とすることができる。
【0068】
得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の発泡倍率は、通常3〜100倍、好ましくは6〜60倍である。
ここで、ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の発泡倍率は、発泡成形体の乾燥重量W(g)、水没体積V(cm
3)およびポリプロピレン系樹脂の樹脂密度d=0.9g/cm
3から、発泡成形体の発泡倍率=d×V/W=0.9×V/Wの式より求められる。
【0069】
上述のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を用いて得られるポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度は、9g/L以上300g/L以下であることが好ましく、より好ましくは15g/L以上150g/L以下である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
本実施例における測定および評価は、以下のように行った。
【0072】
<ポリプロピレン系樹脂の融点測定>
示差走査熱量計(DSC)[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、ポリプロピレン系樹脂粒子3〜6mgを10℃/分の昇温速度で20℃から220℃まで昇温した後、10℃/分で220℃から20℃まで降温し、さらに10℃/分で20℃から220℃まで昇温した際に得られる、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とした。
【0073】
<発泡粒子のDSC測定>
示差走査熱量計(DSC)[セイコーインスツルメンツ(株)製、DSC6200型]を用いて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子3〜6mgを10℃/分の昇温速度で20℃から220℃まで昇温したときに得られる、1回目の昇温時のDSC曲線より、各融解ピーク温度を求めた。
【0074】
<発泡粒子の発泡倍率>
嵩体積約50cm
3のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の重量W(g)およびエタノール水没体積V(cm
3)を求め、発泡前のポリプロピレン系樹脂粒子の密度d(g/cm
3)から、次式により求めた。
発泡倍率=d×V/W
【0075】
<型内発泡成形体密度>
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の密度は、型内発泡成形体の乾燥重量W(g)と水没体積V(cm
3)から、次式により求めた。
型内発泡成形体の密度(g/L)=(W/V)×1000
【0076】
<ポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の50%圧縮強度>
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体から、縦50mm×横50mm×厚み25mmのテストピースを切り出し、NDZ−Z0504に準拠し、10mm/分の速度で圧縮した際の50%圧縮時の圧縮応力(MPa)を測定した。
約20g/Lの発泡成形体密度での50%圧縮強度により、以下の基準により評価した。
○:50%圧縮強度が0.12MPa以上。
×:50%圧縮強度が0.12MPa未満。
【0077】
<成形体評価>
ポリオレフィン発泡成形機[ダイセン株式会社製、KD−345]および、縦400mm×横300mm×厚み50mmの金型を用いて、成形加熱水蒸気圧を0.09〜0.30MPa(ゲージ圧)の間で変化させて、型内発泡成形を実施した。
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体は、1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で15時間養生乾燥を行い、再び室温に取出し、室温で4時間放置した後、下記の発泡粒子間の融着性、型内発泡成形体の表面性、寸法収縮率、変形度合いを評価して、以下の基準により、成形加熱条件幅を評価した。
すなわち、成形加熱水蒸気圧を変化させて得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体において、融着性、表面性、寸法収縮率、変形度合いの全てが合格になる、最低の成形加熱水蒸気圧および最高の成形加熱水蒸気圧を求め、その成形加熱水蒸気圧の差を成形加熱条件幅とした。
○:成形加熱条件幅が0.1MPa(ゲージ圧)以上
△:成形加熱条件幅が0.05MPa(ゲージ圧)以上、0.1MPa(ゲージ圧)未満
×:成形加熱条件幅が0.05MPa(ゲージ圧)未満
(1)融着性評価
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体を、カッターナイフで型内発泡成形体の厚み方向に約5〜10mmの切り込みを入れた後、手で切り込み部から型内発泡成形体を破断し、破断面を観察して、粒子界面ではなく、粒子が破断している割合を求めて、以下の基準にて、融着性を判定した。
合格: 粒子破断の割合が60%以上
不合格:粒子破断の割合が60%未満
(2)表面性評価
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の表面状態を目視観察し、以下の基準にて表面性を評価した。
合格: しわ、粒間少なく、美麗
不合格:しわ、ヒケがあり外観不良
(3)寸法収縮性
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の縦寸法(縦方向上辺部)を測定し、金型縦寸法(400mm)に対する収縮率を算出して、以下の基準にて寸法収縮性を判定した。
合格: 金型縦寸法に対する収縮率が5%未満
不合格:金型縦寸法に対する収縮率が5%以上
(4)変形度合い
得られたポリプロピレン系樹脂型内発泡成形体の厚み(縦方向中央部、右辺および左辺から30mmの部分厚みの平均値)を測定し、金型厚み寸法(50mm)に対する収縮率を算出して以下の判定とした。
合格: 金型厚み寸法に対する収縮率が7%未満
不合格:金型厚み寸法に対する収縮率が7%以上
【0078】
(実施例1)
<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>
(1)固体触媒担体の製造
1L枝付フラスコにSiO
2(洞海化学社製)300gをサンプリングし、トルエン800mLを入れてスラリー化した。次に、得られたスラリーを5L四つ口フラスコへ移液し、トルエン260mLを加えた。さらに、該フラスコ内に、メチルアルミノキサン(以下、MAO)トルエン溶液(アルベマール社製、10wt%溶液)を2830mL導入し、室温下で30分間撹拌した。フラスコ内の温度を1時間かけて110℃まで昇温し、110℃で4時間撹拌処理を行った。撹拌終了後、室温まで冷却した。
冷却後、上澄みトルエンを抜き出し、フレッシュなトルエンで置換し、置換率が95%になるまで置換を行った。
(2)固体触媒成分の製造(担体への金属触媒成分の担持)
グローブボックス内にて、5L四つ口フラスコ内に、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドを2.0g秤取した。該フラスコを外へ出し、トルエン0.46Lおよび(1)の方法で調製したMAO/SiO
2/トルエンスラリー1.4Lを窒素下で加え、30分間撹拌して、担持を行った。
得られたジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド/MAO/SiO
2トルエンスラリーは、n−ヘプタンにて99%置換を行い、最終的なスラリー量を4.5Lとした。この操作は、室温で行った。
(3)前重合P−1
前記(2)で調製した固体触媒成分202g、トリエチルアルミニウム109mL、n−ヘプタン100Lを、内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに導入し、内温15〜20℃に保ち、エチレンを2020g挿入し、180分間攪拌しながら反応させた。
重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去およびn−ヘプタンによる洗浄を2回行った。なお、投入した溶媒(n−ヘプタン)量および回収された溶媒量から計算される触媒洗浄率は99%であった。
得られた前重合体を精製n−ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で2g/Lとなるよう、n−ヘプタンにより調整を行った。一部、サンプリングを行い、前重合体の分析を行った結果、前重合体は固体触媒成分1g当りポリエチレンを10g含んでいた。
(4)予重合P−2
内容量58Lの管状重合器内に、プロピレンを57kg/hr、水素を4NL/hr、前記(3)で調製した前重合体の触媒スラリーを固体触媒成分として7.1g/hr、トリエチルアルミニウムを4.0mL/hrの速度にて連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状反応器の温度は30℃であり、圧力は2.6MPa・Gであった。
(5)本重合P−3
前記の(4)予重合で得られたスラリーを、内容量1000Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。その際、プロピレンを50kg/hr、エチレンを1.6kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.39mol%になるように、該重合器内へ供給し、重合温度60℃、圧力2.5MPa・Gの条件にて重合を行った。
得られたスラリーを内容量500Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。その際、プロピレンを11kg/hr、エチレンを1.1kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.39mol%になるように、重合器内へ供給し、重合温度59℃、圧力2.4MPa・Gの条件にて重合を行った。
得られたスラリーを気化後、気固分離を行い、プロピレン系共重合体を得た。得られたプロピレン共重合体は、80℃で真空乾燥を行った。
なお、得られたプロピレン−エチレンランダム共重合体は、チレン含有量5.2重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量15重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度106℃、最も高温の融解ピーク温度146℃、MFR12g/10分であった。
【0079】
<ポリプロピレン系樹脂粒子の製造>
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体100重量部に対して、セル造核剤としてタルク[林化成製、PKS]0.1重量部、吸水剤としてポリエチレングリコール[ライオン(株)製、PEG#300]0.5重量部をブレンドした後、50mm単軸押出機[大阪精機工作(株)製、20VSE−50−28型]内で樹脂温度200〜220℃にて溶融混練した。得られた溶融混練樹脂を円形ダイよりストランド状に押出し、水冷後、ペレタイザーで切断し、一粒の重量が1.2mg/粒のポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
【0080】
<ポリプロピレン系発泡粒子の製造>
容量10Lの耐圧オートクレーブ中に、得られたポリプロピレン系樹脂粒子100重量部、水200重量部、分散剤として第3リン酸カルネシウム0.5重量部、分散助剤としてn−パラフィンスルホン酸ナトリウム0.05重量部を仕込み、撹拌下、発泡剤として炭酸ガスを6.25重量部添加した。オートクレーブ内容物を昇温し、134℃の発泡温度まで加熱した後、さらに炭酸ガスを追加してオートクレーブ内圧を3.0MPa・Gとした。その後、30分間保持した後、オートクレーブ下部のバルブを開き、4.0mmφの開口オリフィスを通して、オートクレーブ内容物を大気圧下に放出して一段発泡粒子を得た。得られた一段発泡粒子の発泡倍率は11倍、DSC比は29%であった。得られた一段発泡粒子内に、空気含浸により0.32MPaの内圧を付与し、0.02MPa・Gの蒸気により加熱し、発泡倍率27倍の発泡粒子を得た。
【0081】
<ポリプロピレン系型内発泡成形体の製造>
得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、pH=1の塩酸水溶液で洗浄した後水洗し、75℃で乾燥し、耐圧容器にて加圧空気を含浸して粒子内圧を0.2MPaとした後、ポリオレフィン発泡成形機[ダイセン株式会社製、KD−345]および、縦400mm×横300mm×厚み50mmの金型を用いて、加熱水蒸気圧力を0.09〜0.30MPa・Gで変化させて、型内発泡成形を実施した。
得られた型内発泡成形体は1時間室温で放置した後、75℃の恒温室内で15時間養生乾燥を行い、再び室温に取出してから室温で4時間放置した後の粒子間の融着性、表面性、寸法収縮率、変形度合いから、成形加熱条件幅を評価した。
結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例2)
実施例1における、<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>での本重合(5)において、1000Lのベッセル重合器にて、水素を気相部の水素濃度が0.45mol%になるように供給し、500Lのベッセル重合器にて、水素を気相部の水素濃度が0.45mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様にして、プロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、エチレン含有量5.2重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量15重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度104℃、最も高温の融解ピーク温度146℃、MFR17g/10分であった。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
実施例1における、<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>での本重合(5)において、1000Lのベッセル重合器にて、水素を気相部の水素濃度が0.52mol%になるように供給し、500Lのベッセル重合器にて、水素を気相部の水素濃度が0.52mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様にして、プロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、エチレン含有量5.2重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量15重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度106℃、最も高温の融解ピーク温度146℃、MFR24g/10分であった。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例4)
実施例1における、<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>での本重合(5)において、1000Lのベッセル重合器にて、エチレンを1.4kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.44mol%になるように供給し、500Lのベッセル重合器にて、エチレンを1.0kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.44mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様にして、プロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、エチレン含有量4.6重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量25重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度107℃、最も高温の融解ピーク温度147℃、MFR16g/10分あった。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例1)
実施例1における、<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>での予重合P−2(4)を行わず、本重合(5)において、1000Lのベッセル重合器にて、エチレンを1.6kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.31mol%になるように供給し、500Lのベッセル重合器にて、エチレンを1.1kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.31mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様にして、プロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、エチレン含有量5.1重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量なし、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度107℃、MFR7g/10分であった。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例2)
実施例1における、<メタロセン系重合触媒によるプロピレン−エチレンランダム共重合体の製造>での予重合P−2(4)を行わず、本重合(5)において、1000Lのベッセル重合器にて、エチレンを1.2kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.48mol%になるように供給し、500Lのベッセル重合器にて、エチレンを0.8kg/hr、水素を気相部の水素濃度が0.48mol%になるように供給した以外は、実施例1と同様にして、プロピレン・エチレンランダム共重合体を得た。
得られたプロピレン・エチレンランダム共重合体は、エチレン含有量3.8重量%、ポリプロピレンホモポリマー含有量なし、示差走査熱量計による融点測定で得られた最も低温の融解ピーク温度114℃、MFR20g/10分であった。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(比較例3)
ポリプロピレン系樹脂として、チーグラー系重合触媒を用いて重合して得られた、エチレン含有量4.1重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた単一の融解ピーク温度134℃、MFR7g/10分であるプロピレン・エチレンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー製、F744NP)を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、結果を表1に示す。
【0089】
(比較例4)
ポリプロピレン系樹脂として、チーグラー系重合触媒を用いて重合して得られた、エチレン含有量2.4重量%、1−ブテン含有量3.7重量%、示差走査熱量計による融点測定で得られた単一の融解ピーク温度133℃、MFR7g/10分であるプロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(株式会社プライムポリマー製、F337D)を用いた以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
実施例1〜4は、最低成形加熱水蒸気圧が0.12MPa〜0.15MPaとポリエチレン系樹脂の成形加熱水蒸気圧に匹敵するほど極めて低く、成形加熱条件幅が0.10MPa以上と広い。これに対して、比較例1、2では、最低成形加熱水蒸気圧は0.12MPa、0.18MPaと低いが、成形加熱条件幅が0.02MPa、0.04MPaと狭い。チーグラー系重合触媒で重合した樹脂を用いた、比較例3、4では、樹脂融点はチーグラー系重合触媒で重合した樹脂としては低い133〜134℃であるが、最低成形加熱水蒸気圧は0.22MPa〜0.24MPaと高くなり、成形加熱条件幅も0.06MPaと△の評価であった。
【0091】
(比較例5)
ポリプロピレン系樹脂として、比較例1で用いたメタロセン系触媒で重合したプロピレン・エチレンランダム共重合体85重量%および、チーグラー系重合触媒で重合したポリプロピレンホモポリマー(融点165℃、MFR4.0g/10分、株式会社プライムポリマー製、F113G)15重量%をブレンドしたものを、2軸押出機[株式会社オーエヌ機械製、TEK―45]を用いて、樹脂温度200〜220℃にて溶融混練した以外は、実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および型内発泡成形体を得、成形体評価を行った。結果を表1に示す。
得られた発泡粒子は、不均一な気泡構造であり、連続気泡率が14.5%と高く(通常は5%未満程度)、型内発泡成形において、最低成形加熱蒸気圧は0.15MPaと低かったが、成形加熱蒸気圧を上げると、変形、収縮が大きく、成形加熱条件幅は極めて狭いものであった。