特許第5732407号(P5732407)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5732407拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732407
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/60 20060101AFI20150521BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20150521BHJP
   G01N 30/00 20060101ALI20150521BHJP
   C12M 1/40 20060101ALI20150521BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N30/60 A
   G01N1/00 101K
   G01N30/00 E
   G01N1/00 C
   C12M1/40 Z
   G01N30/26 P
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-547648(P2011-547648)
(86)(22)【出願日】2010年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2010073348
(87)【国際公開番号】WO2011081091
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2013年12月16日
(31)【優先権主張番号】特願2009-298840(P2009-298840)
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502338292
【氏名又は名称】ユニバーサル・バイオ・リサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075199
【弁理士】
【氏名又は名称】土橋 皓
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀二
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201700(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/156113(WO,A1)
【文献】 実開昭62−053342(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
C12M 1/40
G01N 1/00− 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を少なくとも1方向に液が流れることが可能な流管と、該流管内を上流側と下流側とに仕切るように設けた担体封入部と、液流によって該担体封入部内に懸濁若しくは分散可能に封入され生体物質若しくは生体を吸着し、結合し、捕獲し若しくはそれらと反応することが可能な複数の拡散可能担体と、該担体封入部への液導入時の該担体封入部の上流側境界の近傍に設けられて前記担体を拡散させる乱流を生成することが可能な乱流生成部材とを有するとともに、
前記乱流生成部材は、前記担体封入部の上流側境界の内側に設けられるとともに、板状に形成され、その厚さ方向に沿った1または2以上の貫通孔または貫通溝を有し、前記貫通孔または貫通溝の上流側および下流側の開口面積が等しくかつ前記担体封入部への液の導入を行う流管の流れ方向に垂直な断面積よりも小さく形成されて、該担体封入部へ導入可能な流速を該担体封入部内の担体を上流側境界から下流側境界にまで移動可能とするような流速に拡大可能とする拡散可能担体封入流管。
【請求項2】
前記担体封入部の上流側および下流側の両境界は、内部に封入された前記担体が液流によって移動可能となる空間を有するように前記流管に沿って間隔を空けて設けられ、各々前記担体の通過を阻止するが液体を通過可能とするメッシュ状薄膜を有する請求項1に記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項3】
前記流管の内壁面に、内側方向に突出する突出部、上流側に向かって先細りの傾斜面または上流側に向かって内側方向に突設された段差を設け、前記メッシュ状薄膜または前記乱流生成部材を、上流側と下流側に前記流管を仕切るように該流管に係止して保持している請求項2に記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項4】
前記流管はチップ状管であって、少なくとも気体の吸引吐出が行われるノズルまたはノズルに装着される部材に着脱可能に装着された装着用開口部、および前記気体の吸引吐出によって液体の流入および流出が可能な口部を有し、前記担体封入部は、前記チップ状管の内部を装着用開口部側と口部側とに仕切るように設けられ、前記乱流生成部材は、前記担体封入部の口部側境界の近傍に、前記チップ状管を仕切るように設けられた請求項1に記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項5】
前記担体封入部の前記装着用開口部側および前記口部側の両境界は、内部に封入された前記担体が液流によって移動可能となる空間を有するように前記チップ状管の前記装着用開口部と前記口部とを結ぶ軸線方向に沿って間隔を空けて設けられ、前記担体封入部の前記装着用開口部側および口部側の境界は、各々メッシュ状薄膜が設けられた請求項4に記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項6】
前記チップ状管は前記担体封入部が設けられた太管、該太管より細く形成された細管、および太管と細管との移行部からなり、前記装着用開口部は前記太管に形成され、前記口部は細管の先端に形成され、前記メッシュ状薄膜および乱流生成部材を前記移行部に設けた請求項4に記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項7】
前記流管の流れ方向に垂直な断面は円形であり、前記乱流生成部材は、前記流管に嵌合可能な円板と、該円板の中心軸線が通り、その径方向に沿って延びる長孔状の開口部をもち該円板の厚さ方向に沿って貫通する中央貫通孔と、該中央貫通孔の両側に径方向に沿って対称に設けられた円形の開口部をもち前記円板の厚さ方向に沿って貫通する2つの周辺貫通孔とを有する請求項1乃至請求項のいずれかに記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項8】
前記装着用開口部と前記口部との間で前記チップ状管の内壁面を仕切るように、該内壁面に、内側方向に突出する突出部、口部に向かって先細りの傾斜面または口部に向かって内側方向に突設する段差をチップ状管の軸方向に沿って相互に離間して少なくとも2箇所に設け、これらの突出部、傾斜面または段差の内の少なくとも1を用いて前記乱流生成部材を前記チップ状管に設けた請求項4乃至請求項のいずれかに記載の拡散可能担体封入流管。
【請求項9】
気体の吸引吐出を行う1または複数連のノズルを有するノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の拡散可能担体封入チップと、種々の液体を収容しまたは収容可能な液収容部群を設けたステージと、前記ノズルヘッドを前記液収容部群に相対的に移動させる移動手段と、前記ノズルの吸引吐出の量、スピード、回数、時間または位置を、前記担体、拡散可能担体封入チップ若しくは乱流生成部材の構造、液体中に存在する生体物質若しくは生体の種類、濃度、液体の量、該液体の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、処理内容に基づいて制御する制御部とを有する拡散可能担体封入流管処理装置。
【請求項10】
気体の吸引吐出を行う1または複数連のノズルまたは該ノズルに装着された部材に、請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の拡散可能担体封入チップを前記装着用開口部を介して装着する装着工程と、
該拡散可能担体封入チップについて、前記担体、拡散可能担体封入チップ若しくは乱流生成部材の構造、液体中に存在する生体物質若しくは生体の種類、濃度、液体の量、該液体の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、処理内容に基づいて、前記ノズルの吸引吐出の量、スピード、回数、時間または位置で、外部に設けた液収容部内に収容されている液体の吸引または吐出を行う吸引吐出工程と、を有する拡散可能担体封入流管処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カラムと呼ばれる上下円板の中央部に液体取入口、液体取出口のついた円筒状の容器に、ゲルと呼ばれる粒子径10〜数百ミクロンの粒子状充填剤を液中を移動不能な程度に充填し、そこに上下の液体取入口、液体取出口のいずれかの方向から液体をポンプ等により流す時の溶質分子とゲルとの間の相互作用を利用して物質を吸着させて、液中からの物質の除去または分離を行なっていた。
【0003】
カラムを用いる場合には、カラム内に液体を一方向に流すためのポンプと、それらの液体を入れるための容器、流路を適宜切り換えるためのバルブ等を組み合わせた複雑で大掛かりなシステムとして運用されなければならないという問題点を有していた。
【0004】
また、このような大掛かりなシステムであっても処理できる検体は、1つずつということになる。このように従来のカラムでは、処理の効率が低いという問題点もあった。また、流れの向きが一方向に限られているという問題点を有していた。
【0005】
これらの点を改良するために、本願の発明者は、気体の吸引吐出が行われるノズルに装着可能な装着用開口部、および前記気体の吸引吐出によって液体の流入及び流出の双方向の流れが可能な口部を有する分注チップ内に、先端の口部を通して吸引吐出される液中の生体物質を吸着若しくは捕獲させまたは該生体物質と反応若しくは結合することが可能な担体を封入した担体封入チップを発明した(特許文献1)。
【0006】
この担体封入チップでは、前記担体は前記分注チップの太径管内に封入され、細径管の先端にある前記口部を通って外部に流出できないため、通常の分注チップのように、担体を含有する液を、吸引吐出を繰り返すことによって外部に設けた容器と分注チップとの間で移動させることができず前記担体を液体に効率良く分散または懸濁させることが困難となるおそれがあった。
【0007】
そのため、前記担体封入チップに担体を封入するには、前記担体よりも小さなポア径をもち、液流が流れ方向に垂直な方向に広がるように流れ方向に厚みのあるフィルタで該チップを仕切るように設けていた。これによって、封入された担体に液流が均等に加えられて、担体を液中に拡散させて遭遇性を高めるようにしていた。しかしながら、小さなポア径をもつ厚いフィルタでは、液中の夾雑物等により目詰まりが生じやすく、かつ処理の標的が該フィルタに吸着して、本来の担体と標的との反応、結合等が阻害されるおそれがあるという問題点を有していた。
【0008】
一方、それを避けるために、厚いフィルタの代わりに、薄いメッシュ状のフィルタを用いた場合には液流に対する抵抗が殆ど無いために、フィルタを通過する液は不規則な変動のない細径管を経由した層流で、封入された担体に広い範囲で十分な速度を与えて液中に懸濁または分散することが困難となり、液中に含有する標的と担体との遭遇性が担体によりばらつきが生じ封入された担体を一様に効率良く利用することができないおそれがあるという問題点を有していた。なお、液流の速度が大きすぎると、たとえ液流中の標的と担体とが衝突したとしても、接触時間が短いために、担体と標的との間に必要な反応時間を確保することができず、反応効率が低くなるおそれがあるという問題点を有していた。
【0009】
さらに、液中に含有する標識化された標的と反応または結合した担体について、測定を行う場合には、標識化された担体を洗浄して未結合の余分な標的を除去する必要がある。
【0010】
しかしながら、分注チップに封入された担体をその封入領域の広い範囲で懸濁しまたは分散できない場合には効率良い洗浄を行なうことが困難になるおそれがあるという問題点を有していた。また、液流の速度が大きいと、たとえ洗浄液と担体とが接触したとしても、洗浄液との反応時間が短いために、担体と洗浄液との間で洗浄に必要な反応を生ずることができないために、洗浄効率が低くなるおそれがあるという問題点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第WO2006/073170号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明の第1の目的は、標的と結合または反応等が可能な担体を封入した流管に導入した液体中に前記担体を懸濁または分散させて液体中の標的と担体との遭遇の均等性を高めて効率良く反応または結合等をさせることができる拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0013】
第2の目的は、標的と結合または反応等が可能な担体を封入した流管内に導入した液体中に前記担体を懸濁または分散させて担体または担体が保持している結合物質等と液または液中の標的との間の反応性能、結合性能、吸着性能または捕獲性能を高めることができる拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0014】
第3の目的は、標識化された標的が保持された担体を洗浄して、信頼性の高い測定を行なうことができるように、洗浄効果を高めることができる拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、内部を少なくとも1方向に液が流れることが可能な流管と、該流管内を上流側と下流側とに仕切るように設けた担体封入部と、液流によって該担体封入部内に懸濁若しくは分散可能に封入され生体物質若しくは生体を吸着し、結合し、捕獲し若しくはそれらと反応することが可能な複数の拡散可能担体と、該担体封入部への液導入時の該担体封入部の上流側境界の近傍に設けられて前記担体を拡散させる乱流を生成することが可能な乱流生成部材とを有する拡散可能担体封入流管である。
【0016】
ここで、「担体」としては、液体中の生体物質または生体を吸着、反応、結合若しくは捕獲可能な不溶性の固体であって、その形状は、例えば、粒子状、または不定形状であり、その大きさは、液中に拡散可能な大きさ、すなわち、液流によって液中に分散または懸濁可能な大きさであって、流速に依存するが、「懸濁可能な大きさ」とは、例えば、粒径が数ナノメートルから数百マイクロメートルの大きさであって、好ましくは、数ナノメートルから数十マイクロメートルである。ここで、「分散可能」とは液流が加えられている間だけ液中に懸濁可能であることをいい、液体の速さに応じて異なるが、例えば、数百マイクロメートルから数ミリメートルの大きさである。「拡散可能」であるためには、前記担体封入部の大きさは、少なくとも前記拡散可能担体の体積よりも十分に大きい容積、例えば、少なくとも前記拡散可能担体の体積の2倍に形成する必要がある。
【0017】
担体の材料としては、ゴム、シリコーン、セルロース、ナイロン等の繊維物質や樹脂、非磁性粒子若しくは磁性粒子等の金属等で形成されゲル、多孔質体、含水性のものを含む不溶性の固体である。該担体には、生体物質若しくは生体の吸着、反応、結合若しくは捕獲のための官能基等の生体物質を含む化学物質が設けられている。該担体の表面には、例えば、抗原、抗体、酵素、基質、レセプター、His-tag等のアフィニティリガンドや、アフィニティタグ等の物質等が設けられている。
【0018】
「担体の封入」とは、担体が一定領域内に閉じ込められて、その領域外に出られない状態をいう。
【0019】
「生体物質」には、例えば、核酸等の遺伝物質、タンパク、糖、糖鎖、ペプチド、色素等の生体高分子または低分子を含み、「生体」には、細菌、細胞、ウィルス、プラスミド等を含む。
【0020】
「生体物質若しくは生体を吸着し、結合し、捕獲し若しくはそれらと反応する」は、例えば、共有結合、化学吸着による場合の他、物理吸着または電気的相互作用による捕獲による場合、または、該担体に固定して設けられている結合物質との特異的反応、その他の方法で反応若しくは結合する。また、該担体を、多孔性部材、凹凸性部材、繊維質性部材で形成することによって、生体物質、生体を含む各種物質との反応能力や結合能力を高めるようにしても良い。生体物質若しくは生体との間の反応または結合のために、相補的な生体物質若しくは生体を担体に固定しておくためには、前記担体には、官能基を発現または生成するようにする。そのためには、例えば、「ポリアミド系高分子」からなる、絹等、ナイロン(3−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、7−ナイロン、12−ナイロン等)、PPTA(ポリパラフェニレンテレフタルアミド)等の全芳香族ポリアミド、や、ヘテロ環含有芳香族ポリマー等が有するペプチド結合を加水分解することで、生体物質の固定に用いる官能基を発現または生成させる。生体物質と結合可能な官能基には、例えば、カルボキシル基−COOH、アミノ基−NH2、またはその誘導基がある。ここで、生体物質の固定に適した多孔の径は、例えば、数μm以下である。
【0021】
「流管」は、内部を液体が流れることが可能な管であって、例えば、カラム、ノズルに装着して用いるチップ状管も含む。ここで、「チップ状管」とは、前記吸引吐出に用いられる部材に装着され又は装着可能な装着用開口部および液体の流入および流出が可能な口部を有し、内部に担体を収容可能な流管である。チップ状管は、太管および細管を有するのが好ましいが、太径管および細径管のような典型的なチップ形状をもつ場合に限られない。この場合、細管の先端に口部が、太管の上側に装着用開口部が設けられるのが好ましい。前記チップ状管の容積は、例えば、数μLから数100μL程度以上の液体を扱うことが可能であるのが好ましい。
【0022】
流管の材料は、光学的観測を可能にするために透光性の素材が好ましい。チップ状容器の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル等の樹脂、ガラス、金属、金属化合物等がある。サイズは、例えば、細管において数μLから数100μLの液体を収容可能な大きさである。
【0023】
「担体封入部」とは、担体を液流によって分散または懸濁可能に封入する流管の一部領域であって、該担体封入部内には、該担体が内部で移動可能となるような空間が設けられている。担体封入部の上流側および下流側境界は担体の通過は不能であるが液体が通過可能となるように後述するメッシュ状薄膜が流管を仕切るように設けられている。
【0024】
「乱流生成部材」は、流管の断面積を狭めて液流の流速を高めて前記担体封入部内の前記担体を拡散させることが可能な乱流を生成する部材である。該部材は、該流管を仕切るように設けられ流れ方向に貫通する孔または溝を有する板状部材である。通常の担体封入用のフィルタとは異なり、該貫通する孔や溝は封入される拡散可能担体が該孔や溝に侵入可能であって、進入した担体が目詰まりや吸着が生じない大きさおよび形状をもつように形成される。該乱流生成部材の構造、例えば、板の形状、厚さ、貫通孔の個数、方向、断面形状、その開口部の面積、その配置等は、流管の構造(例えば、一方向の流れか双方向の流れ、流れ方向の垂直断面が一定内径の円形かどうか、流れ方向に沿って変化するような内径をもつ円形かどうか、例えば、チップ状管かどうか)、担体、流速、溶液の性質、処理目的に基づいて定められる。通常は、乱流生成部材の厚さ、すなわち、貫通孔や溝の深さは、前記貫通孔や溝内に進入することができる前記拡散可能担体の個数または体積と関係する。
【0025】
流管が、チップ状管のように双方向の流れをもち、吸引口と吐出口が1の口部を介して行われる場合には、該乱流生成部材は、前記担体が封入された前記担体封入部にそれを通って液体が吸引される場合に担体を分散または懸濁させ、該担体封入部から、それを通って液体が吐出される場合には、液体が円滑に吐出されるものが好ましい。
【0026】
ここで、液が一方向に流れるような流管の場合には、前記上流側と下流側とは固定されているが、液が双方向に流れる場合には、上流側と下流側の位置が入れ替わることになる。液が前記担体封入部に導入される場合に該担体封入部の上流側境界の近傍(例えば、境界に接してまたは所定の間隔を空けて、またはその境界の内側若しくは外側に)に設けられた乱流生成部材は、液が該担体封入部から同じ境界を通って排出される場合には、前記乱流生成部材は、液の排出時の前記担体封入部の下流側境界の近傍、に設けられていることになる。流管がチップ状管の場合がこれにあたり、液は該担体封入部を通過せずに折り返すことになる。担体封入部を液が双方向に通過するように流れる場合には、前記担体封入部の両側の境界の近傍に前記乱流生成部材を設けることになる。なお、該乱流生成部材の素材は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリスチレン(PS)等の樹脂である。
【0027】
第2の発明は、前記担体封入部の上流側および下流側の両境界は、内部に封入された前記担体が液流によって移動可能となる空間を有するように前記流管に沿って間隔を空けて設けられ、各々前記担体の通過を阻止するが液体を通過可能とするメッシュ状薄膜を有する拡散可能担体封入流管である。
【0028】
ここで、メッシュ状薄膜は、前記担体は通さないが液体を略無抵抗で通すことができる目詰まりしにくい開口以外の面積が小さく、例えば、厚さが10μm程度の薄形部材であって、前記担体の粒径よりも小さいポア径または目開きをもつ。メッシュ状薄膜を流管に取り付けるには、弾性体で形成したOリングで上下から挟むようにして流管の内壁に径方向に付勢して取り付ける。さらに好ましくは、1のOリング枠の厚さ方向の中間位置で、中央の円形の孔を仕切るように張設することによって一体化したOリングメッシュを取り付ける。これによって、前記流管の内壁面に径方向に付勢して確実かつ容易に取り付けることができる。メッシュ状薄膜、Oリングメッシュは、例えば、ナイロン、ポリエステルによって形成する。
【0029】
なお、前記乱流生成部材は、前記メッシュ状薄膜で仕切られた境界の近傍で、前記担体封入部内で該境界に接するように設けられる。
【0030】
第3の発明は、前記内壁面に、内側方向に突出する突出部、上流側に向かって先細りの傾斜面または上流側に向かって内側方向に突設された段差を設け、前記メッシュ状薄膜または前記乱流生成部材を、上流側と下流側に該流管を仕切るように該流管に係止して保持している拡散可能担体封入流管である。
【0031】
ここで、「段差」は、内壁から内側方向に一様な高さで、または前記口部に向かって一様な厚さで突出若しくは突設するように形成する場合のみならず、高さに高低差または厚さに差を設けて形成するようにしても良い。前記「突出部」または「段差」の内側方向への突出若しくは突設の高さが一様で大きい場合には封入部としてスペーサ用部材を挟んで前記担体を支持させるのが好ましい。これによって、担体全体に対する液体の通過を円滑に行うことができる。
【0032】
第4の発明は、前記流管はチップ状管であって、少なくとも気体の吸引吐出が行われるノズルまたはノズルに装着される部材に着脱可能に装着された装着用開口部、および前記気体の吸引吐出によって液体の流入および流出が可能な口部を有し、前記担体封入部は、前記チップ状管の内部を装着用開口部側と口部側とに仕切るように設けられ、前記乱流生成部材は、前記担体封入部の口部側境界の近傍に、前記チップ状管を仕切るように設けられた拡散可能担体封入流管である。
【0033】
ここで、「ノズルに装着される部材」には、例えば、他のチップまたはアダプタ等がある。「チップ」とは、太径管及び該太径管と連通し前記太径管よりも細く形成された細径管を有し、太径管には、ノズルに装着され又は装着可能な装着用開口部を有し、細径管には、気体の吸引吐出によって液体の流入および流出が可能な口部を有するものである。
前記乱流生成部材は、前記口部側境界の近傍(例えば、境界に接しまたは所定の間隔を空けて、または境界の内側もしくはその外側)に設け、前記口部からの前記液流から乱流を生成して該担体封入部内に導入する。
【0034】
第5の発明は、前記担体封入部の前記装着用開口部側および前記口部側の両境界は、内部に封入された前記担体が液流によって移動可能となる空間を有するように前記チップ状管の前記装着用開口部と前記口部とを結ぶ軸線方向に沿って間隔を空けて設けられ、前記担体封入部の前記装着用開口部側および口部側の境界は、各々メッシュ状薄膜が前記チップ状管を仕切るように設けられた担体封入流管である。
【0035】
ここで、前記メッシュ状薄膜は、担体の粒径よりも小さいポア径または目開きをもち、前記担体封入部は、前記口部側および装着用開口部側の2つのメッシュ状薄膜および前記チップ状管の内壁で囲まれた領域に形成されている。前記口部に近い側の前記メッシュ状薄膜の前記担体封入部の近傍に前記乱流生成部材が、前記チップ状管の内部の前記装着用開口部と前記口部との間を仕切るように設けられた。
【0036】
第6の発明は、前記乱流生成部材は、前記担体封入部の上流側境界の内側に設けられるとともに、板状に形成され、その厚さ方向に沿った1または2以上の貫通孔または貫通溝を有し、前記貫通孔または貫通溝の開口面積が、前記担体封入部への液の導入時に該担体封入部内の前記担体を前記上流側境界から下流側境界にまで移動させることができる流速を生じさせる大きさをもつ拡散可能担体封入流管である。
【0037】
今、前記流管または担体封入部の流れ方向に垂直な断面積を「S」、前記乱流生成部材の貫通孔(溝)の開口面積を「St」とし、流管を通過する液体の速度を「v」とし、前記乱流生成部材中での液体の流速を「vt」とすると、簡単な近似では、S0・v0=St・vtおよびS0>Stから、|vt|>|v0|ということになり、該乱流生成部材の貫通孔等内に入り込みまたは該乱流生成部材に接近した担体に液流によって大きな運動量、したがって速度を与えて、この担体が下流側境界にまで達する程度の大きさになることが必要である。しかしながら、あまり|vt|が大きいと、標的と担体との接触時間が短くなって、標的と担体との間で一定の反応時間を必要とする場合に、最適な反応性を得ることができなくなるおそれがあり、乱流生成部材の形状、標的や担体に基づいて最適反応性を得るように決定されることになる。なお、板面には少なくとも2本の線対称軸線を有するのが好ましい(第8の発明)。
【0038】
第7の発明は、前記チップ状管は前記担体封入部が設けられた太管、該太管より細く形成された細管、および太管と細管との移行部からなり、前記装着用開口部は前記太管に形成され、前記口部は細管の先端に形成され、前記メッシュ状薄膜および乱流生成部材を前記移行部に設けられた拡散可能担体封入流管である。
【0039】
なお、前記太管の上側には、さらに前記担体封入部から流入した液体を貯溜可能な貯溜部を設け、前記装着用開口部は前記貯溜部の上側に設けるようにしても良い。これによって、液体を担体収容部よりも上側に液を移動することができるので、前記担体封入部を通過させて、前記細管や担体収容部の容量以上の液を前記担体と接触させることができる。その際、貯溜部としては、前記担体収容部よりも太く形成された最太管を設けるのが好ましい。すると、前記太管と最太管との間の段差や傾斜面、または/および、前記担体収容部を有する太管と細管との間の段差や傾斜面を利用して、前記メッシュ状薄膜や乱流生成部材を係止させて確実に保持することができる。
【0040】
第8の発明は、前記流管の流れ方向に垂直な断面は円形であり、前記乱流生成部材は、前記流管に嵌合可能な円板と、該円板の中心軸線が通り、その径方向に沿って延びる長孔状の開口部をもち該円板の厚さ方向に沿って貫通する中央貫通孔と、該中央貫通孔の両側に径方向に沿って対称に設けられた円形の開口部をもち前記円板の厚さ方向に沿って貫通する2つの周辺貫通孔とを有する拡散可能担体封入流管である。
【0041】
なお、これらの貫通孔は、担体の大きさよりも大きく形成されているので前記担体がこの貫通孔を通過しまたは入ることは可能である。また、板面は2本の線対称軸を有することになり2つの前記径方向は直交する。
【0042】
第9の発明は、前記装着用開口部と前記口部との間で前記チップ状管の内壁面を仕切るように、該内壁面に、内側方向に突出する突出部、口部に向かって先細りの傾斜面または口部に向かって内側方向に突設する段差をチップ状管の軸方向に沿って相互に離間して少なくとも2箇所に設け、これらの突出部、傾斜面または段差の内の少なくとも1を用いて前記乱流生成部材または前記メッシュ状薄膜を前記チップ状管に設けた拡散可能担体封入流管である。
【0043】
第10の発明は、気体の吸引吐出を行う1または複数連のノズルを有するノズルヘッドと、該ノズルを介して気体の吸引吐出を行う吸引吐出機構と、前記ノズルまたはノズルに装着される部材に装着されまたは装着可能な装着用開口部および前記気体の吸引吐出によって液体の流入および流出が可能な口部、該装着用開口部側と口部側とに仕切るよう設けられた担体封入部、液流によって該担体封入部内に懸濁若しくは分散可能に封入され液中の生体物質若しくは生体を吸着し、結合し、捕獲し若しくはそれらと反応することが可能な拡散可能担体、前記担体封入部の口部側境界の近傍に設けられて前記担体を拡散させる乱流を生成する乱流生成部材を有する拡散可能担体封入チップと、種々の液体を収容しまたは収容可能な液収容部群を設けたステージと、前記ノズルヘッドを前記液収容部群に相対的に移動させる移動手段と、前記ノズルの吸引吐出の量、スピード、回数、時間または位置を、前記担体、拡散可能担体封入チップ若しくは乱流生成部材の構造、液体中に存在する生体物質若しくは生体の種類、濃度、液体の量、該液体の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、処理内容に基づいて制御する制御部とを有する拡散可能担体封入流管処理装置である。
【0044】
ここで、「処理内容」とは、例えば、反応、洗浄、移送、分注、分離、抽出、加熱、冷却、清澄、測定、混合、乖離、溶出、攪拌等、またはこれらの一連の処理を、処理目的に応じて、所定順序または所定時間スケジュールに従って、重複を含みながら組み合わせたものである。「時間」には、吸引吐出の持続時間またはタイミングを含む。持続時間またはタイミングを設定することによって、間欠的、連続的または断続的な吸引吐出の設定を可能にする。
【0045】
「反応」処理の場合には、例えば、前記物質条件に応じて、該当する試薬が収容されている容器位置において、前記条件で定まる前記吸引吐出を所定のスピードで、前記細管の担体封入部の容積の例えば、80パーセントの液量で吸引吐出を繰り返す制御がされる。その吸引吐出の回数についても前記物質条件に応じて定めた制御を行う。「洗浄」処理の場合には、例えば、前記物質条件に応じて、洗浄液が収容されている容器位置において、前記吸引吐出を該処理に応じて定まる所定のスピードで、吸引吐出を所定回数繰り返すという制御がされる。同様にして、前記処理に応じた吸引吐出の制御がなされる。「スピード」としては、例えば、扱う物質がDNAの場合にはそのサイズが、タンパクに比べて小さいので、DNA同士の遭遇性を高めるためには、スピードを上げる必要があるが、反応性(結合性、吸着性等)を高めるためには、反応(結合、吸着)時間の長短に応じて、スピードを下げまたは上げるのが好ましい。また、担体は、チップにより試料液の吸引を行ない乱流を生成して、懸濁または分散させて試料中に含まれる対象物質と効率良く接触させることができる。また、従来のクロマトグラフィーでの分離の場合には、吸着容量、いわゆるダイナミックキャパシティは、流速に反比例し、吸着速度は低下するが、吸引吐出速度を制御することによって、バッチ吸着に近い吸着容量を実現できる。
【0046】
「チップの構造」には、チップの形状を含み、「拡散可能担体封入チップの構造」には、該チップ状管の形状、封入された拡散可能担体の形状、種類、性質、または乱流生成部材の構造も含む。「生体物質若しくは生体の種類」に応じて吸引吐出の動作を定めるとは、例えば、DNA等の遺伝物質のように、タンパクのサイズよりも一般に小さい場合には、扱う液量は小さく、また、スピードは速い方が扱いやすいことになる。これは、サイズが小さければ小さいほど、一般に遭遇性が低くなるからである。
【0047】
第11の発明は、気体の吸引吐出を行う1または複数連のノズルまたは該ノズルに装着された部材に、装着用開口部および気体の吸引吐出によって液体の流出入が可能な口部、該装着用開口部側と口部側とに仕切るよう設けられた担体封入部、液流によって該担体封入部内に懸濁若しくは分散可能に封入され液中の生体物質若しくは生体を吸着し、結合し、捕獲し、若しくはそれらと反応することが可能な拡散可能担体、および前記担体封入部の口部側境界の近傍に仕切るように設けられて前記担体を拡散させる乱流を生成する乱流生成部材を有する拡散可能担体封入チップを前記装着用開口部を介して装着する装着工程と、
該拡散可能担体封入チップについて、前記担体、拡散可能担体封入チップ若しくは乱流生成部材の構造、液体中に存在する生体物質若しくは生体の種類、濃度、液体の量、該液体の収容位置を含む座標位置からなる物質条件、および、処理内容に基づいて、前記ノズルの吸引吐出の量、スピード、回数、時間または位置で、外部に設けた液収容部内に収容されている液体の吸引または吐出を行う吸引吐出工程とを有する拡散可能担体封入流管処理方法である。
【発明の効果】
【0048】
第1の発明、第10の発明または第11の発明によれば、流管内またはチップ状管内の担体封入部に拡散可能担体を封入し、担体封入部への液流の導入の際に、乱流生成部材により液流から乱流を生成することによって、前記拡散可能担体を前記担体封入部内で液中に効率良く懸濁または分散させることで、液体に含有する生体物質や生体からなる標的と前記拡散可能担体との間または試薬や洗浄液との間の遭遇の均等性をより高めて、標的や試薬または洗浄液と該拡散可能担体とに関し反応、結合、吸着や捕獲を効率良く行なって処理を促進させることができる。
【0049】
さらに、流管内またはチップ状管内に封入された拡散可能担体と、吸引した液体中の生体物質や生体からなる標的や試薬若しくは洗浄液との間の反応、結合または吸着に必要な時間に応じた速度をもつような乱流を提供することによって、標的または種々の試薬や洗浄液との間の最適な反応、結合、吸着、捕獲または洗浄を行なうことができる。
【0050】
標識化された標的が保持された担体を測定する際に、効率良くかつ確実に洗浄することで、信頼性の高い測定を行なうことができる。
【0051】
簡単な構造で、乱流を生じさせることで、拡散可能担体を液中に容易に分散または懸濁させることができるので、製造費用を削減することができる。
【0052】
第2の発明または第5の発明によれば、前記拡散可能担体が移動可能となる空間を空けてメッシュ状薄膜で該流管を仕切るように設けている。したがって、担体の通過は阻止するが、液体についてはほぼ無抵抗で通過させることができるので、乱流生成部材以外では、液流のスピードが減速することはないので、乱流生成部材の形状に忠実な乱流を生成することができるので信頼性が高い。
【0053】
第3の発明によれば、段差、傾斜面または突出部によって前記乱流生成部材およびメッシュ状薄膜を液の流れによって脱着することなく確実に前記流管に係止して保持することができるとともに、メッシュ状薄膜を着脱可能に取り付けることができるので、目詰まりや汚染があった場合の交換が容易である。高い信頼性を得ることができる。
【0054】
第4の発明によれば、流管としてチップ状管を用いるとともに、乱流生成部材を前記担体封入部の口部側境界に設けている。したがって、装置全体をコンパクトに形成することができるとともに、前記口部を通して繰り返して液の吸引吐出を行なうことが可能である。したがって、同一の液を繰り返して乱流生成部材を通過させて、より効率的に乱流を前記拡散可能担体に加えることができる。そのため、担体と標的との反応、結合、吸着等の処理、担体と試薬との反応、結合等の処理、洗浄処理を促進することができるとともに、迅速な自動化処理を行なうことができる。
【0055】
第6の発明によれば、前記乱流生成部材として、板状に形成され、前記貫通孔の板面の開口面積が、前記担体封入部への液の導入時に該担体封入部内の担体を上流側境界から下流側境界にまで移動させることができる程度の流速を生じさせる大きさをもつようにしている。したがって、液の流れが該乱流生成部材によって大きく妨げられることなく安定した吸引吐出動作を行なうことができるとともに、拡散可能担体の担体封入部内での拡散に必要な程度の流速が得られて、担体との間の遭遇均等性、担体との反応性、結合性、吸着性に優れ、かつ洗浄に適した乱流を得ることができる。
【0056】
第7の発明によれば、担体封入部が設けられた太管の他に該太管より細く形成した細管を設けることで、細管の先端の口部が外部に設けた多数の少量の液を収容する液収容部に挿入可能とし、細管を移動させることで複数の液収容部との間で液のやり取りを円滑に行なうことができるとともに、前記太管内には、前記担体が液中で十分に拡散することができる容量を与えることができる。また、前記太管と細管との間の移行部の段差や斜面を利用して前記メッシュ状薄膜および前記乱流生成部材を確実に係止保持することができる。
【0057】
なお、前記太管の一部に担体封入部を設け、または、太管と連通する最太管を設けることで、液を担体封入部を通過させるように処理することができるので、吸引した液体と前記担体との接触による反応や結合等をより一層効率良く行なうことができることになる。
【0058】
第8の発明によれば、板面の中心軸を通るように1の貫通孔が形成され、この貫通孔と他の2つの貫通孔の開口部が、板面上で、2本の直交する線対称軸をもつように配置されているので、担体封入部内には、乱流が到達しない領域が生ずるような非対象性に基づく偏りが生じて、担体が非開口部付近に固まったりせずに、担体を満遍なく効率良く拡散させることができる。
【0059】
第9の発明によれば、メッシュ状薄膜および乱流生成部材をチップ状管に設けた突出部、段差または傾斜面を利用して設けるようにしているので、堅固に前記メッシュ状薄膜および乱流生成部材を前記チップ状管に取り付けることができるので、信頼性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップ処理装置である。
図2図1で用いる本発明の第2の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップのノズル装着状態を示す図である。
図3】本発明の第2の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップ、該チップで用いた乱流生成部材および乱流生成部材の候補を示す図である。
図4】本発明の第2の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップの乱流生成部材の取り付け位置の説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップの吸着効率を比較するために用いた他の担体封入チップを示す図である。
図6図5に示す3種類の担体封入チップを用いたタンパクの吸着効率の実験結果を示すグラフである。
図7図5に示す3種類の担体封入チップを用いたタンパクの洗浄効率に関する電気泳動の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、拡散可能担体をチップ状管内に封入することにより、吸引吐出機能を用いて、いわゆる移動相として所定の液体等を該チップ状管に対して、所定の量、速度、時間、回数等を設定した条件の下で高い精度での吸引または吐出を行なうことによって、より一層効率的、迅速かつ信頼性のある分離、精製を可能にするものである。
【0062】
続いて、本発明の実施の形態に係る拡散可能担体封入流管としての拡散可能担体封入チップ、その処理装置およびその処理方法について図面に基づいて説明する。各実施の形態の説明は、特に指定の無い限り、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0063】
図1(A)および図1(B)は、本発明の第1の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップ処理装置10の全体を現す正面図および斜視図を示す。
【0064】
図1(A)に示すように、該拡散可能担体封入チップ処理装置10は、筐体12と、該筐体12内に設けられ、ステージ23上に載置された各種収容部群22と、該筐体12内に設けられ、複数(この例では、6本)のノズル(図2の符号36)を有し、前記ステージ23上に載置された各種収容部群22に対して、前記ノズル36の配列方向(Y軸方向とする)に垂直な水平方向(X軸方向とする)に沿って移動可能なノズルヘッド14と、筐体12のX軸方向から見て正面側の表板に設けられた操作部24と、ユーザのIDカードを挿入するカード挿入口27とを有する。
【0065】
前記ノズルヘッド14は、前記ノズル36を支持し、上下方向(Z軸方向とする)に移動可能なZ軸移動体19と、該Z軸移動体19に取り付けられ前記ノズル36と連通し、該ノズル36に対し気体の吸引吐出を行なう吸引吐出機構として内部にプランジャが摺動可能に設けられた複数(この例では6本)のシリンジ16と、該ノズル36の下端38に着脱可能にその装着用開口部40で嵌合する前記チップ状管を有する拡散可能担体封入チップ20と、前記吸引吐出機構の前記プランジャと連動するように設けられ、前記Z軸移動体19の下方で、前記担体封入チップ20等のチップ状管を前記ノズル36の下端38から脱着するために、前記ノズル36の径よりも大きく前記チップ状管の最も太い部分の外径よりも細いU字状の孔が形成されたチップ状管脱着板18と、を有する。チップ状管の脱着は、前記プランジャを通常の吸引吐出の場合の摺動範囲よりもさらに下方にプランジャを下げることによって行われる。なお、前記移動機構については、ボール螺子機構やタイミングベルト、モータを用いて構成することができる。詳細には、例えば、前記特許文献1またはWO2008/156113号にこれらの機構の開示がある。
【0066】
前記操作部24には、表示部25と、テンキー26とを有し、ユーザは、テンキー26を通して種々の指示を行い、表示部25でその確認を行うことができる。
【0067】
図1(B)は、前記拡散可能担体封入チップ処理装置10の正面上側から見た斜視図であって、前記ステージ23に設けられた前記各種収容部群22を詳細に示すものである。該各種収容部群22には、Y軸方向に配列された複数(この例では6)個のチップ収容部28および該チップ収容部28に前記ノズル36により装着可能となるように収容された6個の分注チップ29と、前記ノズル36に装着された前記拡散可能担体封入チップ20を収容していたY軸方向に配列された複数(この例では6)個のチップ収容部30と、処理対象となる検体を収容する複数(この例では6)本のサンプル収容管32と、該処理に必要な複数種類の試薬を各々収容可能な10個の試薬用ウェル、温度制御用ウェルおよび反応用ウェルを有する複数(この例では6)本の試薬カートリッジ容器34を有する。
【0068】
図2は、チップ状管である前記分注チップ29の装着用開口部40にノズル36の下端38を挿入して装着した状態を示すものである。該分注チップ29は、その後端に前記ノズル36に嵌合する装着用開口部40を有する太径管48と、該太径管48よりも細く形成され先端に液体の流入および流出が可能な口部42を有する細径管44と、該細径管44と太径管48の間に設けられた中径管46とを有し、前記太径管48と前記中径管46との間、および前記中径管46と前記細径管44との間は、夫々段差49および45が設けられている。段差49は前記太径管48の内壁にその径方向に内壁を内側にすぼめるように突出させた環状の突条である。なお、前記口部42の内径は0.7mm、中径管46の下端の内径は5mm、太径管の下端の内径は6.8mmであり、図2はほぼ同一縮尺で示した図である。
【0069】
図3(A)は、図2で示した分注チップ29内に、拡散可能担体56を予め封入した液体吸引前の初期状態にある拡散可能担体封入チップ20を示す拡大断面図である。
前記中径管46には、細径管44との境にある段差45に設けられたOリングメッシュ52と、乱流を生成する乱流生成部材54と、粉末状の拡散可能担体56とを有する。太径管48には、中径管46との境にある段差47に設けられたOリングメッシュ50を有する。該チップ20の中径管46の内壁と、前記Oリングメッシュ50および前記Oリングメッシュ52によって囲まれた部分が、前記拡散可能担体56が拡散可能に封入された担体封入部43に相当する。該担体封入部43の容量は、前記拡散可能担体56の体積よりも十分に大きい。
【0070】
前記拡散可能担体56は、約50μmから100μmの粒径をもち液体中に懸濁可能、したがって拡散可能であって、約50μLが前記担体封入部43内に封入されている。このような拡散可能担体56としては、ポリマー樹脂で形成され、検体中のタンパク等を吸着可能な機能をもつ担体(例えば、JSR株式会社製の担体「JWT701(A)-1」)を使用する。前記Oリングメッシュ50,52を通過することができないので、前記担体封入部43内に封入されていることになる。該拡散可能担体56の表面には、目的物質と結合可能な結合物質が保持されている。
【0071】
図3(B)に示すように、前記乱流生成部材54は、円筒板状であって、その外径が5.1mmで、厚さが2mmであり、その材質はポリアセタールである。該乱流生成部材54は、厚さ方向に沿って貫通する細長貫通孔54a,円形貫通孔54b,54cを有し、細長貫通孔54aの中央には前記円筒板の中心軸線が通り、該円筒板の径方向に沿って伸び、かつその径方向に沿った線対称軸線およびそれに直交する線対称軸線をもつような長孔状の開口部をもちその厚さ方向に沿って貫通する。円形貫通孔54b,54cは、該細長貫通孔54aの両側に前記線対称軸線に関して線対称となる位置に配置されている。これによって、直交する2本の線対称軸線が設定されていることになる。
【0072】
図3(C)には、この乱流生成部材54を決定するに際して、候補(a)から候補(m)までの13種類の候補の中から、実験によって最も乱流を生成する効率が高いものを選んだものである。実験の結果、これらの候補(a)から候補(m)は次の4グループに分類されることがわかった。すなわち、グループ1は、開口部の個々の面積が小さいため、液の通りが悪く吸引・吐出動作が安定しないものであり、候補(a)から候補(g)がこれに当たる。グループ2は、開口部の配置が非対称のもので、非開口部付近に担体が溜まりやすい傾向があるものであり、候補(i)、候補(l)、候補(m)がこれに当たる。グループ3は、開口部面積が大きく、液の通りは良いが、開口面積が大きいために、吸引時に十分な流速が得られず、担体がチップ内の上層部まで巻き上がらないものであり、候補(j)および候補(k)がこれに当たる。グループ4は、開口部が高い対称性を持つように配置されており、かつ適度な開口面積を有し、最も乱流の生成に適しているものであって、候補(h)がこれに当たる。この候補(h)が前記乱流生成部材54に相当するものである。
【0073】
図3(D)は、前記Oリングメッシュ52(50)の断面図を示す。符号52aは、メッシュ状薄膜であり、符号52bはOリングであり、メッシュ状薄膜52aは、前記Oリング52bの厚さ方向の中間位置で、該Oリング52bを仕切るように設けられている。前記Oリングメッシュ50,52の大きさは、それが設けられるべきチップ状管の内径に等しい外径を持つ。この場合には、各々6.8mmと5mmであり、その厚さは、両者ともそのメッシュ薄膜自体は10μm程度で、その目開きは32μmであり、Oリングの厚さは1.5mmである。その素材は、例えば、ナイロンである。また、
【0074】
図4は、乱流生成部材54とメッシュ状薄膜としてのOリングメッシュ52との配置について最適なものを実験によって定めるためのものである。図4(A)は、前記拡散可能担体封入チップ20であって、前記乱流生成部材54が、Oリングメッシュ50,52で区切られた担体封入部43内の口部42側に配置したものであり、乱流生成部材54の前記貫通孔54a,54b,54c内には、前記担体56が進入可能であり、該担体56に乱流を加えて該担体56を効率的に拡散させることができる。
【0075】
図4(B)は、前記乱流生成部材54は、前記Oリングメッシュ50,52で囲まれた前記担体封入部41の外部に設けられており、前記担体56は、前記乱流生成部材54の前記貫通孔54a,54b,54c内には、進入せず、吸引された液体から前記乱流生成部材54によって乱流が生成されるものの、生成された乱流は、前記担体56に加えられるが、図4(A)に比較して拡散の程度は低いことが示されている。
【0076】
図5(A)は、担体封入チップ60(図6および図7の実験では、「チップA」という)を示すものであって、前記分注チップ29を利用して、前記段差47および段差45には、通常用いられる厚いフィルタ64,66が前記分注チップ29を仕切るように設けて前記拡散可能担体56を中径管46に封入したものである。ここで、前記フィルタ64,66としては、例えば、ポア径が34μm以下で、厚さが1.4mmであり、ポリエチレンで形成されたFRIT (CELLPOLE工業株式会社製)を用いた。
【0077】
図5(B)は、担体封入チップ62(図6および図7の実験では、「チップB」という)を示すものであって、前記分注チップ29を利用して、前記段差47および段差45には、前述したOリングメッシュ50および52が各々前記分注チップ29を仕切るように設けられて前記拡散可能担体56をこのOリングメッシュ50,52間の中径管46に封入したものである。すなわち、チップBは、本願の実施の形態に係る拡散可能担体封入チップ20から乱流生成部材54だけを除去したものである。
【0078】
図5(C)は、前記実施の形態に係る拡散可能担体封入チップ20(図6および図7の実験では、「チップC」という)を示すものである。以下に、これらのチップA,チップBおよび本実施の形態に係るチップC(拡散可能担体封入チップ20)を用いて、精製されたヒトIgGのレジンへの吸着効率の比較実験を行なった。
【0079】
図6および図7は、本発明の実施の形態に係るチップC(拡散可能担体封入チップ20)および前記乱流生成部材のないチップA(担体封入チップ60)、チップB(担体封入チップ62)を用いて、精製されたヒトIgGのレジンへの吸着効率を測定する比較実験と、サンプルとして採取したヒト血清からIgGの精製を行なった場合の洗浄効率を測定する比較実験を行なった場合の結果を各々示すものである。
【0080】
最初に、図6の吸着効率を測定する比較実験を行なう。
予め、これらの3本のチップA、チップB、チップCを前記拡散可能担体封入チップ処理装置10のチップ収容部30内の正面側(X軸方向)から見た図1(A)の図上の右側の3個に、各装着用開口部40が上側にくるようにして前記ノズル36に装着可能な状態で収容しておく。また、これに対応して、前記サンプル収容管32の正面側から見た図1(B)の右側3個には0.5mg/mLのヒトIgG溶液を1mLずつ収容しておく。また、10個の空のウェルからなるカートリッジ容器34を用意しておく。
【0081】
ステップS1で、前記ノズルヘッド14をX軸方向に移動させて、前記各ノズル36が、前記チップ収容部30の上方にくる位置で停止させ、前記Z軸移動体19を下方向に移動することで、前記ノズル36の下端38を、前記3本の各チップA,B,Cの装着用開口部40内に挿入して3本のチップA,B,Cを一斉にノズル36に嵌合させて装着する。
【0082】
ステップS2で、前記Z軸移動体19を上方向に移動させて、3本の前記チップA,B,Cの先端にある口部42が前記チップ収容部30の上方にくるようにする。それから、該ノズルヘッド14をX軸方向に沿って移動させて、該各チップA,B,Cを前記サンプル収容管32の上方にくるように位置させる。
【0083】
ステップS3で、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、3本の前記各チップA,B,Cの各口部42を前記サンプル収容管32内に挿入する。
【0084】
ステップS4で、前記吸引吐出機構によって、各チップA,B,Cで一斉に50回吸引吐出を繰り返すことによって攪拌させる。その際、5回の吸引および吐出ごとに、残留溶液を等量の1μLずつ抜き取り、それらを順次前記試薬カートリッジ容器34の10個の前記空のウェルに分注して収容する。この吸引吐出の繰り返しによって、前記ヒトIgGと各拡散可能担体とを接触させて吸着が行われることになる。
【0085】
測定が終了した正面側から見て右側の3本の前記試薬カートリッジ容器34を前記拡散可能担体封入チップ処理装置10から取り出し、外部に用意した光学測定装置によりその前記試薬カートリッジ容器34の各ウェルに収容した溶液の吸光度を測定して、サンプル中に含まれるタンパク量の減少率を測定したものが図6に示すものである。
【0086】
図6(A)は、サンプル中のヒトIgGの除去率を示すものであり、チップCとチップBとではほぼ同程度の除去率であることが示されている。それから得られたヒトIgGの回収率は、図6(B)に示すように、チップCとチップBとではほぼ同程度の回収率であることが示されている。これは、チップAでは、前記乱流生成部材54の2mmの厚さよりも薄いが1.4mmの厚いフィルタ64を用いて前記拡散可能担体56を封入しただけなので、液流の水平方向の広がりおよび液流の流速はあるもの、拡散可能担体56を加速することができず拡散可能担体56が十分に懸濁しないので、標的との遭遇性が低く結合が十分に行われないために前記ヒトIgG溶液からのヒトIgGの除去率が低く、したがってヒトIgGの回収率が高いことを示している。
【0087】
一方、チップBでは、前記拡散可能担体56をOリングメッシュ52によって封入したものであるため、乱流生成部材54を用いた場合に比較して液流が阻害されることはなく液流を担体封入部43に十分供給することができることになるが、液流の速度が小さく、結果的には、より液流の抵抗が大きいチップCと同程度のヒトIgG除去率および回収率を示すこととなった。
【0088】
チップCでは、前記チップBよりも厚く形成され、液流が大きな抵抗を受けるが、前記拡散可能担体56に効率的に乱流を加えて加速して、前記担体封入部43内に封入された広い範囲にある拡散可能担体56と高い均等性を持って遭遇し効率良く接触することができる。そのため、ヒトIgG除去率がチップBと同程度に低く、したがってヒトIgG回収率が高いことが示されることになる。
【0089】
次に、図7の洗浄効率を測定する比較実験を行う。そのためには5倍に希釈化された1mLのヒト血清を収容した前記サンプル収容管32を用意しておく。また、新たな前記試薬カートリッジ容器34として、少なくとも2つの第1および第2の空きウェル以外には2つのウェルに洗浄液、2つのウェルに溶出液が予め収容されているものを前記ステージ23上に載置する。
【0090】
ステップS5で、前記ノズルヘッド14の図1(A)に示す正面側から見て図上右側3本の各ノズル36に装着されてあった3本のチップA,B,Cを、前記チップ状管脱着板18を下げることによって前記チップ収容部30の上方で一斉にノズル36から脱着させて、前記チップ収容部30の正面側から見た図1(A)の図上の右側に収容した後に該チップA,B,Cを該チップ収容部30から除去した後、新たなチップA,B,Cを、前記チップ収容部30の正面側から見た図1(A)の図上左側のチップ収容部30に収容するとともに、1mLのヒト血清を収容した前記サンプル収容管32を、図1(A)に示す正面側から見て図上左側に載置しておく。
【0091】
ステップS6で、前記ノズルヘッド14をX軸方向に移動させて、前記各ノズル36が、前記チップ収容部30の上方にくる位置で停止させ、前記Z軸移動体19を下方向に移動することで、前記ノズル36の下端38を、前記チップ収容部30の正面側から見て左側に収容した前記3本の各チップA,B,Cの装着用開口部40内に挿入して3本のチップA,B,Cを一斉にノズル36に嵌合させて装着する。
【0092】
ステップS7で、前記Z軸移動体19を上方向に移動させて、3本の前記チップA,B,Cの先端にある口部42が前記チップ収容部30の上方にくるようにする。それから、該ノズルヘッド14をX軸方向に沿って移動させて、該各チップA,B,Cを前記サンプル収容管32の上方にくるように位置させる。
【0093】
ステップS8で、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、3本の前記各チップA,B,Cの各口部42を前記サンプル収容管32内に挿入する。
【0094】
ステップS9で、前記吸引吐出機構によって、各チップA,B,Cで一斉に50回吸引吐出を繰り返すことによって攪拌させる。その際、3種類の各チップA,B,Cには同一の吸引吐出力を加えていることになる。これによって、血清中に含まれたヒトIgGが前記拡散可能担体56に吸着することになる。
【0095】
ステップS10で、前記ノズルヘッド14を試薬カートリッジ容器34の洗浄液を収容しているウェルの上方にまでX軸方向に沿って移動し、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、前記口部42を該ウェル内に挿入させて、前記吸引吐出機構によって、洗浄液の吸引吐出を4回繰り返す。これによって、前記拡散可能担体56に吸着しないヒトIgG以外の不純物または夾雑物が除去されることになる。
【0096】
ステップS11で、前記Z軸移動体19を上方向に移動させて、前記口部42を前記ウェルの上方に位置させた後、さらにX軸方向に沿って該ノズルヘッド14を移動させて、溶出液が収容されている前記試薬カートリッジ容器34のウェルの上方に位置させる。次に、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、3本の前記チップA,B,Cの口部42を該ウェルに挿入させて、溶出液を吸引吐出して、該担体56に吸着された溶出産物の一定量、例えば1μLを前記第1の空きウェル中に収容させる。
【0097】
同様にして、ステップS12で、前記ノズルヘッド14の図1(A)の正面側から見た図上右側3本の各ノズル36に装着されてあった3本のチップA,B,Cを、前記チップ状管脱着板18を下げることによって前記チップ収容部30の上方で一斉にノズル36から脱着させて、前記チップ収容部30の図1(A)の図上の左側に収容した後に該チップA,B,Cを除去し、新たなチップA,B,Cを、前記チップ収容部30の図1(A)で示す正面に対して図上右側のチップ収容部30に収容しておく。
【0098】
ステップS13で、前記ノズルヘッド14をX軸方向に移動させて、前記各ノズル36が、前記チップ収容部30の上方にくる位置で停止させ、前記Z軸移動体19を下方向に移動することで、前記ノズル36の下端38を、前記チップ収容部30の図1(A)の図上右側に収容した前記3本の各チップA,B,Cの装着用開口部40内に挿入して3本のチップA,B,Cを一斉にノズル36に嵌合させて装着する。
【0099】
ステップS14で、前記Z軸移動体19を上方向に移動させて、3本の前記チップA,B,Cの先端にある口部42が前記チップ収容部30の上方にくるようにする。それから、該ノズルヘッド14をX軸方向に沿って移動させて、該各チップA,B,Cを前記サンプル収容管32の上方にくるように位置させる。
【0100】
ステップS15で、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、3本の前記各チップA,B,Cの口部42を前記サンプル収容管32内に挿入する。
【0101】
ステップS16で、前記吸引吐出機構によって、各チップA,B,Cで一斉に50回吸引吐出を繰り返すことによって攪拌させる。その際、3種類の各チップA,B,Cには同一の吸引吐出力が加わっていることになる。これによって、血清中に含まれたヒトIgGが前記拡散可能担体56に吸着することになる。
【0102】
ステップS17で、前記ノズルヘッド14を試薬カートリッジ容器34の洗浄液を収容しているウェルの上方にまでX軸方向に沿って移動し、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、前記口部42を該ウェル内に挿入させて、前記吸引吐出機構によって、洗浄液の吸引吐出を20回繰り返す。これによって、前記拡散可能担体56に吸着しないヒトIgG以外の不純物または夾雑物が除去される筈である。
【0103】
ステップS18で、前記Z軸移動体19を上方向に移動させて、前記口部42を前記ウェルの上方に位置させた後、さらにX軸方向に沿って該ノズルヘッド14を移動させて、溶出液が収容されているウェルの上方に位置させる。次に、前記Z軸移動体19を下方向に移動させることによって、3本の前記チップA,B,Cの口部42を該ウェルに挿入させて、溶出液を吸引吐出して、該担体56に吸着された溶出産物の一定量、1μLを前記第2の空きウェル中に収容させる。
【0104】
このようにして得られた洗浄の攪拌回数が4回の場合の第1の空きウェルに収容された溶出液と、洗浄の攪拌回数が20回の場合の第2の空きウェルに収容された溶出液とを、高分子マーカMおよび前記サンプル収容管32に収容された血清とともに、電気泳動を用いて測定した。その結果、図7のM列には高分子マーカ、S列には血清、攪拌回数が4回の場合のチップA,B,CについてはA1列、B1列、C1列に示され、攪拌回数が20回の場合のチップA,B,CについてはA2列、B2列、C2列に示されている。すると、70kDaのバンドに示される不純物(図7で三角の印で示している)については、チップAにおいては、図7のA1列に示すようにバンドが明瞭に示されており洗浄の効果が極めて低いことを示している。一方、図7のA2列ではバンドが不明瞭ながら確認できるので、洗浄の効果が現れているものの不純物がまだ残留していることを示している。これは、乱流生成部材54と異なり、前記フィルタによっては十分に拡散可能担体56を加速して拡散することができないと考えられる。
【0105】
また、チップBにおいては、図7のB1列およびB2列に示すように、70kDaのバンドが確認できるため、不純物がまだ残留していることが示されている。これは、チップCの乱流生成部材54に比べて抵抗の殆どないOリングメッシュ52を用いて、液流が大きいものの、液流の範囲は、あまり広がらず中央の細径管44の径範囲に限られ、遭遇の均等性が低いのみならず、液流を十分に加速することができないからと考えられる。
【0106】
一方、チップCにおいては、図7のC1列では、不純物を示す70kDaのバンドがわずかに確認されるものの、吸引吐出回数が20回の場合のC2列では、不純物を示す70kDaのバンドが消失していることが確認できる。これは、チップCは、3本のチップA,B,Cの中で最も厚さが厚く、乱流によって液流の範囲が広がり、遭遇の均等性が高く効率良く担体と洗浄液とが接触して、洗浄の効果が高められた結果であると考えられる。
【0107】
以上説明した各実施の形態は、本発明をより良く理解させる為に具体的に説明したものであって、別形態を制限するものではない。したがって、発明の主旨を変更しない範囲で変更可能である。例えば、前記実施の形態では、主としてタンパクのヒトIgGの場合のみについて説明したが、DNA物質、RNA、糖鎖等であっても良い。また、粒子状担体としては、球形の粒子状担体の場合のみについて説明したが、この場合に限られず、不定形担体にも適用できる。また、以上の説明で用いた数値、回数、形状、個数、量等についてもこれらの場合に限定されるものではない。
【0108】
また、以上の各構成要素、各拡散可能担体封入チップ、拡散可能担体、チップ状管、ノズル、加熱手段等または各装置は、適当に変形しながら任意に組み合わせることができる。さらに、生体物質としてもタンパクに限られず、DNA、オリゴヌクレオチド、RNA等の遺伝物質、免疫物質、糖鎖、さらにフェロモン、アロモン等を含み、生体としてもミトコンドア、ウィルス、プラスミド等を含む。
【0109】
また、前述した試薬や物質は例を示すものであって、他の試薬や物質を使用することも可能である。また、DNA等を捕獲した担体を前記細管等から取り出して、保存、他の処理の対象とすることができる。さらに、前記突出部、傾斜面および段差は、チップ状管内に2箇所設ける場合について説明したが、これらの場合に限られることなく、3箇所以上設けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、拡散可能担体封入流管、その処理装置およびその処理方法に関する。本発明は、遺伝子、免疫系、アミノ酸、タンパク、糖等の生体高分子、生体低分子の扱いが要求される分野、例えば、工業分野、食品、農産、水産加工等の農業分野、製薬分野、衛生、保健、免疫、疾病、遺伝等の医療分野、化学若しくは生物学等の理学の分野等、あらゆる分野に関係するものである。本発明は、特に、多数の試薬や物質を用いた一連の処理を所定の順序に連続的に実行する場合に有効な方法である。
【符号の説明】
【0111】
10 拡散可能担体封入チップ処理装置
14 ノズルヘッド
18 チップ状管脱着板
20 拡散可能担体封入チップ(拡散可能担体封入流管、チップC)
22 各種収容部群
23 ステージ
28,30 チップ収容部
29 分注チップ
43 担体封入部
50,52 Oリングメッシュ
54 乱流生成部材
56 拡散可能担体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7