特許第5732420号(P5732420)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5732420複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732420
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/46 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   H02J3/46
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-65166(P2012-65166)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-198352(P2013-198352A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2014年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平野 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 信幸
(72)【発明者】
【氏名】御園 浩一
(72)【発明者】
【氏名】古川 幸雄
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−169234(JP,A)
【文献】 特開2012−017680(JP,A)
【文献】 特開昭59−056829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00 − 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
要求された送電電力と前記吸気冷却器を含む所内動力とから発電電力を定める発電出力算出手段と、大気温度のときの軸発電設備の最大発電出力を算出する最大出力演算手段と、該最大出力演算手段の最大発電出力の範囲内で、前記発電出力算出手段の発電電力を複数の軸発電設備に配分する複数の送電電力配分手段と、該複数の送電電力配分手段による複数の配分パターンにより軸発電設備を運転したときのそれぞれの送電端効率を求める送電端効率算出手段と、該送電端効率算出手段の複数の送電端効率を比較し、送電端効率の高い配分パターンを決定する配分パターン決定手段を備え、
決定された配分パターンにより各軸発電設備を運転することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
前記最大出力演算手段は、大気温度と軸発電設備の吸気冷却器運転台数から吸気冷却器出口大気温度を求め、この温度の時の軸発電設備の最大発電出力を算出することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項3】
請求項2に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
前記最大出力演算手段は、吸気冷却器の使用と不使用を選択するための吸気冷却器使用不使用選択手段を含むことを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項4】
請求項1に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
前記吸気冷却器を含む所内動力を、過去運転時の所内動力を運転状態ごとに記憶した情報と、大気温度と吸気冷却器運転台数から求めた吸気冷却器の動力とから求めることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項5】
請求項4に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
前記運転状態は、前記送電電力配分手段において配分された電力で運転するときの運転状態に対応する過去の運転状態とされることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項6】
請求項1に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
前記複数の送電電力配分手段は、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手段と、送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手段のうちから複数の送電電力配分手段を備えていることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の発電スケジュール演算装置において、
最大出力軸優先送電電力配分手段または最小出力軸優先送電電力配分手段を使用するときに、最後に割り振られる軸発電出力が当該軸の最低安定出力以下である時に他の軸の発電出力が当該軸に割り振られて当該軸の最低安定出力を確保することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項8】
請求項6に記載の発電スケジュール演算装置において、
前記複数の送電電力配分手段の出力から運転に使用する送電電力配分手段の出力を選択するための送電電力配分選択手段を備えることを特徴とする発電スケジュール演算装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の発電スケジュール演算装置において、要求された送電電力は規定時間単位に設定されており、前記配分パターン決定手段により決定された配分パターンは規定時間単位で決定されることを特徴とする発電スケジュール演算装置。
【請求項10】
燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
給電指令装置からの規定時間単位の要求電力量を入力する要求電力量入力手段と、規定時間単位の要求電力量から瞬時に必要な送電電力を求める送電電力算出手段と、吸気冷却器運転台数を設定する吸気冷却器運転台数入力手段と、大気温度および吸気冷却器運転台数から吸気冷却器台数の所内動力を求める吸気冷却器運転台数の所内動力算出手段と、大気温度および吸気冷却器運転台数から吸気冷却器台数による冷却可能な吸気温度を求める吸気冷却器運転台数の吸気温度算出手段と、冷却可能な吸気温度によりガスタービンの最大出力を求めるガスタービン最大出力算出手段と、発電設備全体の送電電力と所内動力の合計から求まる発電出力から発電設備として運転すべき運転軸数を求める必要運転軸数算出手段と、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手段と、運転軸ごとに吸気冷却器運転状況より送電可能な送電電力が異なり、送電電力に合わせ配分出力を変更させ送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手段と、発電設備の運転データをもとに発電設備の運転出力帯ごとに規定時間の送電電力量、発熱量、燃料消費量を収集する発電設備データ収集手段と、前記発電出力と前記所内動力の差分から求まる送電電力を使用して送電端効率を求める送電端効率算出手段と、該送電端効率算出手段の複数の送電端効率を比較し、送電端効率の高い配分パターンを決定する配分パターン決定手段と、決定された配分パターンでの統括スケジュールを演算する統括スケジュール演算手段と、軸ごとに配分される発電出力により軸ごとの発電スケジュールを決めるための軸スケジュール演算手段を備え、前記配分パターン決定手段で決定した配分パターンの発電出力にしたがって発電設備を運転することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置。
【請求項11】
燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
要求された送電電力と前記吸気冷却器を含む所内動力とから発電電力を定め、大気温度のときの軸発電設備の最大発電出力を算出し、該最大発電出力の範囲内で記発電電力を複数の軸発電設備に複数の配分手法にて配分して複数の配分パターンを定め、該複数の配分パターンにより軸発電設備を運転したときのそれぞれの送電端効率を求め、該複数の送電端効率を比較し、送電端効率の高い配分パターンを決定し、決定された配分パターンにより各軸発電設備を運転することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法。
【請求項12】
請求項11に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
前記最大出力は、大気温度と軸発電設備の吸気冷却器運転台数から吸気冷却器出口大気温度を求め、この温度の時の軸発電設備の最大発電出力を算出することを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法。
【請求項13】
請求項11に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
前記吸気冷却器を含む所内動力を、過去運転時の所内動力を運転状態ごとに記憶した情報と、大気温度と吸気冷却器運転台数から求めた吸気冷却器の動力とから求めることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法。
【請求項14】
請求項13に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
前記運転状態は、前記配分された送電電力で運転するときの運転状態に対応する過去の運転状態とされることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法。
【請求項15】
請求項11に記載の複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
前記複数の配分手法は、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手法と、送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手法と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手法と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手法のうちから複数の送電電力配分手法を備えていることを特徴とする複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置及び方法に係り、特に全軸合計での送電端効率を高効率とするために、各軸の発電設備に配分する送電電力を発電所全体で高効率運用が可能となる運転スケジュールを決定する発電スケジュール演算手段に関する。
【背景技術】
【0002】
近年PPS(Power Producer&Supplier:特定規模電気事業者)対応の発電装置の運用が実施されており、発電プラントの起動および停止は、自動プラント起動停止装置により運転員の負担軽減および迅速な運転が運用されている。
【0003】
PPS対応の発電設備は、各売電先顧客の状況に応じて要求される送電電力が時々刻々変化し、起動・停止が頻繁に発生する。発電設備(発電プラント)における発電出力は発電に伴い発生する所内動力と送電電力の合計から求められる。要求される送電電力に対し高効率な送電端で正確に発電することが重要となる。
【0004】
このため、要求される送電電力に対し運転軸での送電電力配分を最適にして、全軸での総合的な高効率送電端となる送電電力配分を行うことが望まれる。係るPPS対応の発電装置の運用について、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−125185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電設備で発電される送電電力は複数軸の発電出力で供給される。大気温度の変化によりガスタービン出力を高くするためにガスタービンの空気吸い込み部に設置される吸気冷却器で吸気温度を下げることが重要となる。しかし、吸気冷却器を運転することにより吸気冷却器の所内動力が高くなるため、発電設備を要求電力量に対し正確かつ高効率で運用することは容易ではない。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、発電設備の運転中における所内動力を考慮して全軸での総合的な送電端効率を正確に把握した発電スケジュールを生成することができる演算手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するため、燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
要求された送電電力と吸気冷却器を含む所内動力とから発電電力を定める発電出力算出手段と、大気温度のときの軸発電設備の最大発電出力を算出する最大出力演算手段と、最大出力演算手段の最大発電出力の範囲内で、発電出力算出手段の発電電力を複数の軸発電設備に配分する複数の送電電力配分手段と、複数の送電電力配分手段による複数の配分パターンにより軸発電設備を運転したときのそれぞれの送電端効率を求める送電端効率算出手段と、送電端効率算出手段の複数の送電端効率のうち最大送電端効率となる配分パターンを決定する配分パターン決定手段とを備え、決定された配分パターンにより各軸発電設備を運転することを特徴とする。
【0009】
また最大出力演算手段は、大気温度と軸発電設備の吸気冷却器運転台数から吸気冷却器出口大気温度を求め、この温度の時の軸発電設備の最大発電出力を算出することを特徴とする。
【0010】
また最大出力演算手段は、吸気冷却器の使用と不使用を選択するための吸気冷却器使用不使用選択手段を含むことを特徴とする。
【0011】
また吸気冷却器を含む所内動力を、過去運転時の所内動力を運転状態ごとに記憶した情報と、大気温度と吸気冷却器運転台数から求めた吸気冷却器の動力とから求めることを特徴とする。
【0012】
また運転状態は、送電電力配分手段において配分された電力で運転するときの運転状態に対応する過去の運転状態とされることを特徴とする。
【0013】
また複数の送電電力配分手段は、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手段と、送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手段のうちから複数の送電電力配分手段を備えていることを特徴とする。
【0014】
また最大出力軸優先送電電力配分手段または最小出力軸優先送電電力配分手段を使用するときに、最後に割り振られる軸発電出力が当該軸の最低安定出力以下である時に他の軸の発電出力が当該軸に割り振られて当該軸の最低安定出力を確保することを特徴とする。
【0015】
また複数の送電電力配分手段の出力から運転に使用する送電電力配分手段の出力を選択するための送電電力配分選択手段を備えることを特徴とする。
【0016】
また要求された送電電力は規定時間単位に設定されており、配分パターン決定手段により決定された配分パターンは規定時間単位で決定されることを特徴とする。
【0017】
本発明は上記課題を解決するため、本発明は上記課題を解決するため、燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置において、
給電指令装置からの規定時間単位の要求電力量を入力する要求電力量入力手段と、規定時間単位の要求電力量から瞬時に必要な送電電力を求める送電電力算出手段と、吸気冷却器運転台数を設定する吸気冷却器運転台数入力手段と、大気温度および吸気冷却器運転台数から吸気冷却器台数の所内動力を求める吸気冷却器運転台数の所内動力算出手段と、大気温度および吸気冷却器運転台数から吸気冷却器台数による冷却可能な吸気温度を求める吸気冷却器運転台数の吸気温度算出手段と、冷却可能な吸気温度によりガスタービンの最大出力を求めるガスタービン最大出力算出手段と、発電設備全体の送電電力と所内動力の合計から求まる発電出力から発電設備として運転すべき運転軸数を求める必要運転軸数算出手段と、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手段と、運転軸ごとに吸気冷却器運転状況より送電可能な送電電力が異なり、送電電力に合わせ配分出力を変更させ送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手段と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手段と、発電設備の運転データをもとに発電設備の運転出力帯ごとに規定時間の送電電力量、発熱量、燃料消費量を収集する発電設備データ収集手段と、発電出力と前記所内動力の差分から求まる送電電力を使用して送電端効率を求める送電端効率算出手段と、送電端効率から最も高効率な出力配分パターンを求めるための最高送電端効率送電電力配分パターン決定手段と、最高送電端効率となる場合の送電電力配分での統括スケジュール演算手段と、軸ごとに配分される発電出力により軸ごとの発電スケジュールを決めるための軸スケジュール演算手段を備え、
高効率な送電端効率となる送電電力配分決定手段で決定した発電出力にしたがって発電設備を運転することを特徴とする。
【0018】
本発明は上記課題を解決するため、燃焼器入口に吸気冷却器を備えるガスタービンとガスタービンにより駆動される発電機を含む軸発電設備を複数軸備えた複数軸発電設備の発電スケジュール演算方法において、
要求された送電電力と吸気冷却器を含む所内動力とから発電電力を定め、大気温度のときの軸発電設備の最大発電出力を算出し、最大発電出力の範囲内で記発電電力を複数の軸発電設備に複数の配分手法にて配分して複数の配分パターンを定め、複数の配分パターンにより軸発電設備を運転したときのそれぞれの送電端効率を求め、複数の送電端効率のうち最大送電端効率となる配分パターンを決定し、決定された配分パターンにより各軸発電設備を運転することを特徴とする。
【0019】
また最大出力は、大気温度と軸発電設備の吸気冷却器運転台数から吸気冷却器出口大気温度を求め、この温度の時の軸発電設備の最大発電出力を算出することを特徴とする。
【0020】
また吸気冷却器を含む所内動力を、過去運転時の所内動力を運転状態ごとに記憶した情報と、大気温度と吸気冷却器運転台数から求めた吸気冷却器の動力とから求めることを特徴とする。
【0021】
また運転状態は、配分された送電電力で運転するときの運転状態に対応する過去の運転状態とされることを特徴とする。
【0022】
また複数の配分手法は、発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手法と、送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手法と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手法と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手法のうちから複数の送電電力配分手法を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以上の構成を備えるため、要求電力量に対する高精度の送電電力量を確保可能となり、省力化運転操作で高効率な送電端を確保できる運用を可能とする発電スケジュールを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】発電スケジュール演算装置100の詳細構成を示す図。
図2】複数軸発電設備200の全体構成例を示す図。
図3】要求電力量・送電電力・所内動力の関係を説明する図。
図4】1日間の大気温度変化曲線を説明する図。
図5】圧縮機入口空気温度と発電出力・所内動力の関係を説明する図。
図6】圧縮機入口空気温度を判断基準とした出力優先判断手法を説明する図。
図7】要求電力量に対する各軸の送電電力配分を説明する図。
図8】送電電力均等配分手法を説明する図。
図9】送電電力割合均等配分手法を説明する図。
図10】最大出力軸優先送電電力配分手法を説明する図。
図11】最小出力軸優先送電電力配分手法を説明する図。
図12】最大出力軸優先時における最小軸の再配分手法を説明する図。
図13】最小出力軸優先時における最大軸の再配分手法を説明する図。
図14】最高送電端効率配分パターン決定手段112で実行される送電電力の配分フローを説明する図。
図15】統括スケジュール演算用入力設定フローを説明する図。
図16】統括スケジュール演算用入力設定手段を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0026】
図2は、発電スケジュール演算装置100により制御される複数軸発電設備200の全体構成例を示す図である。
【0027】
図2の複数軸発電設備200は、ガスタービンと蒸気タービンにより発電機を駆動する複合発電設備CPを複数組(複数軸)備えて構成される。図の例では、第1軸発電設備CP1から第n軸発電設備CPnまでのn組で構成されている。
【0028】
複合発電設備CPは、ガスタービン設備として吸気冷却器ACで冷却した空気Aを圧縮する圧縮機3と、圧縮空気と燃料Fを用いて燃焼を行う燃焼器4と、高圧燃焼ガスで駆動されるガスタービンGTを備える。なお吸気冷却器ACは複数台で構成されている。
【0029】
ガスタービンGTで仕事をした後の燃焼排ガスは高温高圧であることから、この保有エネルギーを回収するために蒸気タービン設備を備える。蒸気タービン設備は、ガスタービン燃焼排ガスで水Wを加熱して蒸気を得る排熱回収ボイラBと、蒸気で駆動される蒸気タービンSTと、蒸気タービンSTから排出された蒸気を復水して再度水に戻して再利用するための復水器5を備える。発電機Gは、ガスタービンGTと蒸気タービンSTにより駆動されて発電を行う。
【0030】
以上のように構成された複合発電設備CPは、複合発電設備ごとに設けられた軸制御装置CTにより駆動される。軸制御装置CTは、発電スケジュール演算装置100からの制御指令を受けて、当該軸の複合発電設備を制御する。軸制御装置CTの具体的な操作端は、燃焼器4に与える燃料Fの供給量を制御する燃料調節弁VF、排熱回収ボイラBに与える給水Wの供給量を制御する給水調節弁VW、圧縮機3に与える空気を冷却する吸気冷却器ACの運転台数などである。
【0031】
係る構成の複数軸発電設備200を高い運転効率で運用することを考えた場合に、各軸の軸制御装置CTに制御指令を与える発電スケジュール演算装置100は、以下の観点で機能することが求められる。
【0032】
まず複合発電設備CP自体が高効率運転可能な設備であるが、現在求められている総合出力を達成するための複合発電設備CPの組み合わせを決定することが必要である。このためには、効率以外に運転停止計画なども考慮される必要がある。
【0033】
また複数軸発電設備200全体としてみたときには、設備内補機を駆動するための動力(所内動力)を最少化する必要がある。ここでの補機は、給水Wや燃料Fを導くためのポンプを回転駆動させるためのモータ、吸気冷却器ACを回転駆動させるためのモータなどである。これらの動力は、発電機Gで発電した後の電力を利用しているので送電端から送出する電力を最大化するためには、所内動力の最小化が求められる。
【0034】
また各複合発電設備CP単体としてみたときには、この複合発電設備CPの効率を最大とするための水W、燃料F、空気Aの組み合わせを最適値とする必要がある。
【0035】
図2の発電スケジュール演算装置100は、以上の事項を総合的に勘案して総括スケジュール演算手段113において全体スケジュールを決定する。また総括スケジュール演算手段113の出力を受けて、各軸の軸スケジュール演算手段SCが軸ごとの制御指令を決定して各複合発電設備CPの軸制御装置CTに与える。
【0036】
より具体的に述べると、統括スケジュール演算手段113で各軸へ配分する発電出力を算出し各軸スケジュール演算手段SCへ渡す。各軸スケジュール演算手段SCでは配分された発電出力にしたがい、目標出力、目標出力到達時刻等を決め、ガスタービンGTの起動時刻、併入時刻、出力上昇時刻等のスケジュールを算出する。本スケジュールは各個別軸制御装置CTへ送信され、制御装置CTはスケジュールにより吸気冷却器ACの起動台数、起動時刻、燃料調節弁VF、給水調節弁VWの制御を行い、各軸発電設備CPが運転され発電出力を得る。
【0037】
発電スケジュール演算装置100の詳細構成が図1に示されている。発電スケジュール演算装置100の出力は図2に示し説明したとおりであるが、設定入力としては中央給電指令所などに設置された給電指令装置101から、要求電力量入力手段102を介して規定時間単位(例えば1時間ごと)の要求電力量Pdを受ける。
【0038】
また発電スケジュール演算装置100の処理を実行するうえで使用する複数軸発電設備200のプロセス信号を得るために、データ収集手段110、130、大気温度検出器140を備える。さらに運転条件などを定めるための運転条件設定手段として、吸気冷却器運転台数入力手段141、統括スケジュール演算用入力設定手段150を備える。
【0039】
これらの検出信号や設定信号の詳細については、順次説明することにし、最初に要求電力量Pdの取り扱いについて説明する。
【0040】
図3上段には、規定時間単位の要求電力量Pdの一例を示している。この例では、0時から24時までの1時間ごとの要求電力量Pdとして、午前5時から午前7時まで順次電力を増加し、18時から20時にかけて順次電力を減少させて停止する1日の計画が提示されている。
【0041】
発電スケジュール演算装置100内では、この計画Pdを達成すべく、送電電力算出手段103において、規定時間単位の要求電力量Pdから、瞬時に必要な送電電力PSを求める。図3中段には、瞬時に必要な送電電力PSの一例を示している。この例では、午前5時から午前7時までの時間単位の階段状順次増加信号を時間経過とともに増加する信号に変換する。18時から20時にかけても同様に順次減少信号に変換する。
【0042】
さらに発電スケジュール演算装置100内では、この計画Pdを達成すべく、加算回路ad1において1時間ごとの要求電力量Pdに1時間ごとの所内動力PLを加味して発電出力Pgを得る。図3下段には、1時間ごとの所内動力PLの一例を示している。1時間ごとの要求電力量Pdの例では、稼働時間帯(5時から20時まで)の電力値が示されたのに対し、所内動力としてはこの時間帯の前後を含む時間帯での電力値を考慮する。つまり、5時から直ちに発電開始するためには、その前の例えば1時30分から稼働させておき、停止後の23時まで運転継続させるべき補機が存在する。
【0043】
以上説明した要求電力量Pdと、送電電力PSと、所内動力PLと、発電出力Pgの関係を整理すると、「要求電力量Pdに所内動力PLを加算した発電出力Pgとなるように複合発電設備CPを制御することにより、要求電力量Pdに合致する送電電力PSを得ることができる」ということになる。
【0044】
本発明では、所内動力PLを、発電出力帯別データ収集手段130からの第1の所内動力PL1と、吸気冷却器運転台数の所内動力算出手段144からの第2の所内動力PL2の和として加算回路ad2で求める。つまり本発明では、吸気冷却器運転台数の観点から所内動力を定め制御に反映させることで高効率化を達成する。次に、吸気冷却器ACの所内動力を高効率化させることについて説明する。
【0045】
図4は、1日間の大気温度変化曲線を示す図である。典型的な1日の大気温度Taの変化状況によれば、夜間は温度が低く、昼間の正午過ぎに高くなる。これに対し発電機出力Pgは、圧縮機入口空気温度に左右される。圧縮機入口空気温度を低下させることにより、発電機出力Pgが増加する場合と変化しない場合がある。そのしきい値温度を吸気冷却器利用判断基準温度T0とする。
【0046】
大気温度Taがしきい値T0よりも低い場合は、吸気冷却器ACを使用してもガスタービンGTの空気圧縮機4の入口温度を大気温度Ta以下に低下させることが不可能である。よって大気温度Taがしきい値T0よりもよりも低い場合は、発電機出力を増加させることができないため発電機出力は変わらない。この状態(図4の時間帯403、405)で吸気冷却器ACを運転しても、発電機出力の一部が吸気冷却器ACの関連補機に使用されるだけである。この動力は発電に貢献せず、効率が低下することになるので吸気冷却器ACを利用する価値が無いことになる。
【0047】
これに対し、大気温度Taがしきい値T0よりも高い場合は、吸気冷却器ACを使用することにより発電機出力Pgが増加する。このため、吸気冷却器ACの運転により発電機出力Pgの一部が使用されても総合的に発電機出力が増加する。さらに吸気冷却器ACの運転に使用される発電機出力量によっては、平均発電端効率が変化する。この状態(図4の時間帯404)では、吸気冷却器ACを運転することで発電機出力の一部が使用されるが、効率が低下しないので吸気冷却器ACを利用する価値があることになる。
【0048】
このように、図4において大気温度Taがしきい値T0よりも低い時間帯(403と405)においては吸気冷却器ACの利用価値が無いと判断され、大気温度Taがしきい値T0よりも高い時間帯404においては吸気冷却器ACの利用価値が有ると判断される。
【0049】
図5は、圧縮機入口空気温度と発電出力・所内動力の関係を説明する図である。この特性図の横軸は圧縮機入口空気温度Taであり、縦軸に発電機出力Pgおよび吸気冷却器所内動力PL2を示している。
【0050】
このうち吸気冷却器ACの運転に必要な所内動力は、圧縮機入口空気温度Taが高くなると共に冷却能力を増加させる必要があるため、右上がりに増加する2点鎖線で記載したカーブPL2となる。
【0051】
発電機出力は、圧縮機入口空気温度Taが高くなると共に低下する傾向にあるため右下がりの実線で記載したカーブPgとなる。発電機出力の右肩下がりの特性Pgは、空気冷却器ACを使用しない場合と、使用した場合に分けて把握することができる。前者の場合の特性がPg1である。後者の場合には、しきい温度T0以上での運用となるので特性Pg2で表すことができる。特性Pg2も特性Pg1と同様に右肩下がりの傾向を示すが、特性Pg1よりも高い効率を維持する。
【0052】
これらの発電機出力特性Pg1、Pg2に対し、空気冷却器AC所内動力PL2を考慮した送電端電力はそれぞれ特性Pg3、Pg4で表すことができる。
【0053】
図1の本発明の実施例では、図5の関係を利用して吸気冷却器ACの所内動力PL2を定め、また発電出力算出手段104での処理に応用する。
【0054】
まず所内動力PL2を定めることについて説明する。図5に示すように、吸気冷却器ACの所内動力はカーブPL2に示すように圧縮機入口空気温度(大気温度)Taに対して右肩上がりの傾向を示す。従って、大気温度検出器140で検出した大気温度Taと吸気冷却器運転台数入力手段141で設定した運転台数とから、吸気冷却器運転台数の所内動力算出手段144において、その温度の時の1台当たりの所内動力に運転台数を乗算して吸気冷却器合計の所内動力を得ることができる。
【0055】
但し、ここでいうところの運転台数が、図5の関係を加味していることは言うまでもない。図5の特性Pg1に従って運転するのであれば吸気冷却器運転台数は0台であり、図5の特性Pg2に従って運転するのであれば吸気冷却器運転台数はそのときの実運転台数とされる。
【0056】
図5の特性に鑑み本発明ではさらに図6の判断により、現在状態で出力可能な発電機出力を算出する。この演算は図1の発電出力算出手段104で実施される。図6は、圧縮機入口空気温度を判断基準とした出力優先判断手法を説明する図である。
【0057】
ここでの判断ではまず比較判断ステップS101において、圧縮機入口空気温度Taと吸気冷却器利用判断基準温度T0を比較する。圧縮機入口空気温度Taが吸気冷却器利用判断基準温度T0より低い場合(No)は吸気冷却器の利用価値が無いので、図5における吸気冷却器不使用時の発電機出力Pg1を本発電軸の出力と設定する。この場合の発電機出力Pg1としては、図5の横軸における温度T0以下の領域の出力が設定される。
【0058】
比較判断ステップS101において圧縮機入口空気温度Taが吸気冷却器利用判断基準温度T0より高い場合(YES)は、吸気冷却器ACの利用価値がある。この場合、可否判断ステップS102では、吸気冷却器ACが使用可能状態にあるか若しくは故障等で不可能状態にあるかの使用可能状態を判断する。吸気冷却器ACが使用不可能状態であれば、図5における吸気冷却器不使用時の発電機出力Pg1を本発電軸の出力と設定する。この場合の発電機出力Pg1は、図5の横軸における温度T0以上の領域の出力が設定される。
【0059】
吸気冷却器ACが使用可能状態であるときは、吸気冷却器の使用・不使用押しボタン選択ステップS103において、統括スケジュール計算における吸気冷却器の使用・不使用を運転員に判断、選択せしめる。
【0060】
図16は、図1の入力設定手段150の設定内容を示している。ここでの設定内容では、吸気冷却器の使用を設定する押しボタンPB10、不使用を設定する押しボタンPB11が、複合発電設備の軸番号ごとに設けられている。運転員は、押しボタン操作により軸ごとに使用、不使用を選択する。
【0061】
発電設備運転員が吸気冷却器ACの不使用を選択した状態は、ステップS102の「否」の状態に相当し、図5における吸気冷却器不使用時の発電機出力Pg1を本発電軸の出力と設定する。この場合の発電機出力Pg1は、図5の横軸における温度T0以上の領域の出力が設定される。
【0062】
発電設備運転員が吸気冷却器ACの使用を選択した時は、圧縮機入口空気温度が低下することにより発電機出力が増加し、発電機出力Pg2になる。但し、吸気冷却器運転により所内出力が必要であるため発電機出力Pg2から吸気冷却器所内出力PL2を差し引いた差分が発電出力Pg4となり該当発電軸の出力となる。
【0063】
以上要するに図5においてしきい値T0以下の領域ではPg1での運転を行い、しきい値T0以上の領域では発電設備運転員の判断により、Pg4またはPg1での運転を実行することになる。以上の判断が図1の発電出力算出手段104で実施される。
【0064】
図6の処理は、複合発電設備のガスタービンごとに実施され、最終的には全ての複合発電設備に対して判断される。この結果を受けて、図1の運転軸数算出手段105では、発電出力を確保するために必要な運転軸数を決定する。
【0065】
次に図1の処理では、発電設備に要求された要求電力量を、複数の複合発電設備CPに配分し分担させる。この配分の考え方には4種類のものがある。
【0066】
第1番目の配分手法は、送電電力均等配分手段106で実行される送電電力均等配分の考え方である。図8は、送電電力均等配分の考え方を説明する図である。ここでは、発電設備に要求される合計の送電電力がPS(kw)である。また複合発電設備CPはn台とする。この場合には、各複合発電設備CPにPS/n(kw)の送電電力を配分する。
【0067】
なお図8において白抜きのバーグラフは、発電出力算出手段104で求めた各軸の最大発電出力である。各軸の最大発電出力は、吸気冷却器ACの使用有無を考慮し、圧縮機入口空気温度から図5を用いて求めたものである。なお、第1軸の最大発電出力はPS1m(kw)、第2軸の最大発電出力はPS2m(kw)、第n軸の最大発電出力はPSnm(kw)であり、このいずれもが均等配分した電力PS/n(kw)以上である時に送電電力均等配分が行われる。
【0068】
第2番目の配分手法は、送電電力割合均等配分手段107で実行される送電電力割合均等配分の考え方である。図9は、送電電力割合均等配分の考え方を説明する図である。
【0069】
この場合にも白抜きのバーグラフは、発電出力算出手段104で求めた各軸の最大発電出力PS1m、PS2m、PSnmである。また、この合計が白抜きの合計最大発電出力PSmである。この場合に、合計最大発電出力PSmに対する送電電力PSの割合(PS/PSm)がQ(%)であったとする。各軸の送電電力は、各軸の最大電力にQ(%)を乗じた値として算出される。
【0070】
第1軸について、その最大電力PS1mにQ(%)を乗じた値PS1が第1軸の送電電力として設定され、第2軸について、その最大電力PS2mにQ(%)を乗じた値PS2が第2軸の送電電力として設定され、第n軸について、その最大電力PSnmにQ(%)を乗じた値PSnが第n軸の送電電力として設定される。この考え方が送電電力割合均等配分である。
【0071】
第3番目の配分手法は、最大出力軸優先送電電力配分手段108で実行される最大出力軸優先送電電力配分の考え方である。図10は、最大出力軸優先送電電力配分の考え方を説明する図である。
【0072】
この場合にも白抜きのバーグラフは、発電出力算出手段104で求めた各軸の最大発電出力PS1m、PS2m、PSnmである。この配分手法では、最大発電出力が大きい軸から順に送電電力を配分する。かつ配分する送電電力量は、その軸の最大発電出力とする。つまり全量割当を実行する。
【0073】
例えば最大発電出力は、PS1m<PS2m<PSnmであったとすると、最初に最大発電出力が最大である軸として本例では第n軸に、最大発電出力PSnmを割り当てる。そのあとで、最大発電出力が次に大きい第2軸に、その最大発電出力PS2mを割り当てる。この全量割当の結果、後続の軸では、割り当てられた合計の送電出力が送電出力PSを超過することが起こりえる。本方式の割当てでは、送電出力PSに合致させ、これを超過することはないので、後続の軸には残余の送電出力が割当てられる。これにより配分された送電出力の合計は、設定された送電出力PSに合致させる。
【0074】
第4番目の配分手法は、最小出力軸優先送電電力配分手段109で実行される最小出力軸優先送電電力配分の考え方である。図11は、最小出力軸優先送電電力配分の考え方を説明する図である。
【0075】
この場合にも白抜きのバーグラフは、発電出力算出手段104で求めた各軸の最大発電出力PS1m、PS2m、PSnmである。この配分手法では、最大発電出力が小さい軸から順に送電電力を配分する。かつ配分する送電電力量は、その軸の最大発電出力とする。つまり全量割当を実行する。
【0076】
例えば最大発電出力は、PS1m<PS2m<PSnmであったとすると、最初に最大発電出力が最小である軸として本例では第1軸に、最大発電出力PS1mを割り当てる。そのあとで、最章発電出力が次に小さい第2軸に、その最大発電出力PS2mを割り当てる。この全量割当の結果、後続の軸では、割り当てられた合計の送電出力が送電出力PSを超過することが起こりえる。本方式の割当てでは、送電出力PSに合致させ、これを超過することはないので、後続の軸には残余の送電出力が割当てられる。これにより配分された送電出力の合計は、設定された送電出力PSに合致させる。
【0077】
図10図11は送電電力を割振る順序を最大からとするか、最少側からとするかの相違はあるものの、いずれの考えもその最大発電出力の全量を割り当てる考え方である。この結果、後続の軸では、これに対する配分量がその最大発電出力に比して著しく少なくなることが発生しえる。例えば、その最大発電出力に比して30%程度の送電電力しか配分されないような場合には、かえってこの軸の発電効率が著しく低下する結果となり、発電設備全体としてみたときに最良の結果にはならないことが生じえる。
【0078】
このような場合には、残余の送電電力が割り当てられた軸に対して、相当量の送電電力を負担するように再配分を試みるのが有効である。図12は、最大出力軸優先時における最小軸の再配分手法を説明する図である。
【0079】
図10の例では最大出力軸から優先的に配分するため、例えば最小軸の第1軸には送電電力から最小軸以外に配分した送電電力を差し引いた残りの送電電力を配分することになる。このときには、図12に示すように第1軸の配分値PS1が、第1軸が連続運転できる最低安定出力PS10より下回ることが発生する場合がある。そこで第1軸の最低安定出力PS10までの不足分を第2軸から補う。第2軸が不足分を補ったことにより、第2軸がその最低安定出力よりも小さくなる場合はさらに1つ大きい第3軸から第2軸の不足分を補う。このように不足分が発生した場合は、最大出力の大きい順番側へ順次遡るように不足分を補うものとする。
【0080】
同様の対策は、最少電力優先で全量割当てを実行する場合にも生じえる。図13は、最小出力軸優先時における最大軸の再配分手段を説明する図である。
【0081】
図11の例では最小出力軸から優先的に配分するため、例えば最大軸の第n軸には送電電力から最大軸以外に配分した送電電力を差し引いた残りの送電電力を配分することになる。このときには、図13に示すように第n軸の配分値PSmが、第n軸が連続運転できる最低安定出力PSnm0より下回ることが発生する場合がある。そこで第n軸の最低安定出力までの不足分を第n−1軸から補う。第n−1軸が不足分を補ったことにより最低安定出力よりも小さくなる場合はさらに1つ小さい第n−2軸から第n−1軸の不足分を補う。このように不足分が発生した場合は、最大出力の小さい順番側へ順次遡るように不足分を補うものとする。
【0082】
以上図8図11に示す4つの電力配分手法を実現するために、各配分手段(送電電力均等配分手段106、送電電力割合均等配分手段107、最大出力軸優先送電電力配分手段108、最小出力軸優先送電電力配分手段109)は、以下の入力を得ている。まず、送電電力算出手段103から送電電力PS、発電出力算出手段104からは空気冷却器使用/不使用時の発電機出力、運転軸数算出手段105からは運転軸数、最大出力算出手段145からGT最大出力を得る。
【0083】
なお、最大出力算出手段145においてGT最大出力を得るためには、図5の関係を利用する。例えば、吸気温度算出手段143において、現在の大気温度(検出器140)で、吸気冷却器をm台運転(運転台数入力手段141)したときにガスタービン燃焼器3に導かれる吸気温度を計算により求める。そのうえで最大出力算出手段145では、計算により求めた吸気温度を図5の横軸に当てはめて縦軸の発電機出力を参照すればよい。
【0084】
電力の配分パターンとしては以上の4通りが存在するが、次の段階ではこのうちのどれが現在の運転に適しているのかを決定する必要がある。具体的には、各配分パターンにおける送電端効率を演算し、どの配分パターンを最終的な配分とするかを決定する必要がある。
【0085】
最終的な配分パターン決定は、図1の最高送電端効率配分パターン決定手段112により行うが、その前提として送電端効率算出手段111において配分パターンごとの効率を算出する。ここでの効率算出には、2組の過去データが参照される。1組は、図1のデータ収集手段110であり、他の1組は図1のデータ収集手段130である。これらのデータ収集手段は、データ収拾して記憶しているデータベース機能を有する装置である。
【0086】
データ収集手段110は、4種類の配分パターン、規定時間帯、発電出力の各条件項目のときの送電端効率算出に使用する情報(送電電力量、発熱量、燃料消費量)を複合発電設備から入手し、記憶している。例えば、配分パターンが均等割当て、規定時間帯が朝5時から6時の時間帯、発電出力が50Kwを指定したときに、この運転条件での過去データを検索し、送電電力量、発熱量、燃料消費量を抽出できるようなデータベースを構成している。
【0087】
データ収集手段130は、発電設備の運転データをもとに発電設備の運転出力帯ごとに規定時間の所内動力を収集し記憶している。本発明ではこのような過去実績が初期運転状態で設定され、さらには実運転を通じて蓄積されているものとする。
【0088】
送電端効率算出手段111では、データ収集手段110、130に記憶された情報を用いて以下のようにして指定された運転を実行するときの送電端効率を推定する。この推定は、配分パターンごとに相違しており、具体的には以下のように実行される。
【0089】
まず図8の出力均等配分パターン時は、(1)式により各軸の配分発電出力を算出する。
【0090】
[数1]
1軸分の配分発電出力=(1軸分送電電力+1軸分の発電出力帯別過去収集所内動力)
/運転軸数 (1)
この配分パターンでの送電端効率は、(2)式により算出する。(2)式の演算に使用する全軸の送電電力量、全軸の発熱量、全軸の燃料消費量はそれぞれ過去データから(3)(4)(5)式により求められる。
【0091】
[数2]
規定時間の発電出力帯別における送電端効率
=(規定時間の発電出力帯別における全軸の送電電力量×3600
/(規定時間の発電出力帯別における全軸の発熱量
×規定時間の発電出力帯別における全軸の燃料消費量)×100 (2)
[数3]
規定時間の発電出力帯別における全軸の送電電力量
=第1軸分の送電電力量+…………+第n軸分の送電電力量 (3)
[数4]
規定時間の発電出力帯別における全軸の発熱量
=第1軸分の発熱量+…………+第n軸分の発熱量 (4)
[数5]
規定時間の発電出力帯別における全軸の燃料消費量
=第1軸分の燃料消費量+…………+第n軸分の燃料消費量 (5)
次に図9の出力割合均等配分パターン時は、まず(6)式により軸ごとの最大発電出力を算出する。
【0092】
[数6]
軸ごとの最大発電出力=吸気冷却器の使用有無を考慮した大気温度より求まる
発電機出力−吸気冷却器の所内動力 (6)
また軸ごとの最大発電出力に対する送電電力割合は(7)式により軸ごとに算出し、このときの全軸合計の送電電力を(8)式により求める。なお、この配分パターンでの送電端効率は(2)式により算出する。
【0093】
[数7]
第1軸送電電力=第1軸最大発電出力×第2軸送電電力/第2軸最大発電出力
第2軸送電電力=第2軸最大発電出力×第n軸送電電力/第n軸最大発電出力 (7)
[数8]
全軸合計の送電電力
=第1軸送電電力+…………+第n軸送電電力 (8)
次に図10の最大出力軸優先配分パターン時は、(6)式により各軸の最大発電出力を算出する。次に各軸への配分を実行するが、ここでは図10の例で、第1軸以外は全量割当てができたものとする。従って、第1軸以外の場合には(9)式を行う。
【0094】
[数9]
第n軸送電電力=第n軸最大発電出力 (9)
第1軸が全量割当てできないとすると、このときには(10)式を実行する。
【0095】
[数10]
第1軸送電電力(初期)=全軸合計の送電電力−(第2軸送電電力+…+第n軸送電電力)
また図12の関係について判断する。ここでは、第1軸送電電力(初期)と第1軸最低安定出力PS10との比較を行う。この比較において、第1軸送電電力(初期)≧第1軸最低安定出力となる場合は、第1軸送電電力は第1軸送電電力(初期)とする。
【0096】
この比較において、第1軸送電電力(初期)<第1軸最低安定出力となる場合は、(11)式を適用する。
【0097】
[数11]
第1軸送電電力=第1軸最低安定出力
第2軸送電電力=第2軸最大発電出力
−(第1軸最低安定出力−第1軸送電電力(初期)) (11)
なお、この配分パターンでの送電端効率は(2)式により算出する。
【0098】
次に図11の最小出力軸優先配分パターン時は、(6)式により各軸の最大発電出力を算出する。次に各軸への配分を実行するが、ここでは図11の例で、第n軸以外は全量割当てができたものとする。従って、第n軸以外の場合には(12)式を行う。
【0099】
[数12]
軸送電電力=軸最大発電出力 (12)
第n軸が全量割当てできないとすると、このときには(13)式を実行する。
【0100】
[数13]
第n軸送電電力(初期)=全軸合計の送電電力−(第1軸送電電力+…+第n−1軸送電電力) (13)
また図13の関係について判断する。ここでは、第n軸送電電力(初期)と第n軸最低安定出力PSnm0との比較を行う。この比較において、第n軸送電電力(初期)≧第n軸最低安定出力となる場合は、第n軸送電電力は第n軸送電電力(初期)とする。
【0101】
この比較において、第n軸送電電力(初期)<第n軸最低安定出力となる場合は、(14)式を適用する。
【0102】
[数14]
第n軸送電電力=第n軸最低安定出力
第n−1軸送電電力=第n−1軸最大発電出力−
(第n軸最低安定出力−第n軸送電電力(初期)) (14)
なお、この最小出力軸優先配分パターン時での送電端効率は(2)式により算出する。
【0103】
図14は、最高送電端効率配分パターン決定手段112で実行される送電電力の配分フローを説明する図である。
【0104】
ここでの判定においては、図8図9図10図11に示した配分パターンのときの送電端効率が準備されている。これらの4組の送電端効率は上述の(2)式によりそれぞれ算出されたものである。図14では、これらの効率は、出力均等配分時の送電端効率F1、出力割合均等配分時の送電端効率F2、最大出力軸優先配分時の送電端効率F3、最小出力軸優先配分時の送電端効率F4として示されている。
【0105】
最高送電端効率配分パターン決定手段112ではこの内から、最大の送電端効率となる配分手法を選択する。図16図1の入力設定手段150の設定内容を示しており、この中には送電電力配分手法を選択する押しボタンが設けられている。
【0106】
図14での一連の処理では、先ず判定ステップS201において、出力均等配分時の送電端効率F1と、出力割合均等配分時の送電端効率F2の大きい側を選択する。
【0107】
出力均等配分時の送電端効率F1が大きい場合は、ステップS204において図16の出力均等配分押しボタンPB1をフリッカさせる。運転員がこのフリッカを確認して出力均等配分押しボタンPB1を押す(ステップS208)ことにより、ステップS212において出力均等配分機能が選択される。
【0108】
判定ステップS201において出力割合均等配分時の送電端効率F2の方が大きい場合は、判定ステップS202の処理に移る。ここでは、出力割合均等配分時の送電端効率F2と最大出力軸優先配分時の送電端効率F3を大小比較する。
【0109】
出力割合均等配分時の送電端効率F2が大きい場合は、ステップS205において図16の出力割合均等配分押しボタンPB2をフリッカさせる。運転員がこのフリッカを確認して出力割合均等配分押しボタンPB2を押す(ステップS209)ことにより、ステップS213において出力割合均等配分機能が選択される。
【0110】
判定ステップS202において最大出力軸優先配分時の送電端効率F3の方が大きい場合は、判定ステップS203の処理に移る。ここでは、最大出力軸優先配分時の送電端効率F3と最小出力軸優先配分時の送電端効率F4を大小比較する。
【0111】
最大出力軸優先配分時の送電端効率F3が大きい場合は、ステップS206において図16の最大出力軸優先配分押しボタンPB3をフリッカさせる。運転員がこのフリッカを確認して最大出力軸優先配分押しボタンPB3を押す(ステップS210)ことにより、ステップS214において最大出力軸優先配分機能が選択される。
【0112】
最小出力軸優先配分時の送電端効率F4が大きい場合は、ステップS207において最小出力軸優先配分押しボタンPB4をフリッカさせる。運転員がこのフリッカを確認して図16の最大出力軸優先配分押しボタンPB4を押す(ステップS211)ことにより、ステップS215において最小出力軸優先配分機能が選択される。
【0113】
なお図14の配分選択手法は一例を示したものであり、選択に際しては幾つかの考え方を採用できる。この事例では、出力均等配分が優先的に採用される考え方を示しているが、効率最大値を示すものが選択されてもよい。また、押しボタンPBへの表示と操作により、運転員の介在による選択手法としているが、自動的に選択するものとすることもできる。
【0114】
図14の選択論理によれば、スケジュール演算結果が出力均等配分を選択する決定を行わなかった場合でも、運転員の判断で出力配分を選択する場合は出力均等配分押しボタンPB1の選択ステップS208により選択することが可能となる。同様にスケジュール演算結果とは異なる配分パターンを選択する場合は、出力割合均等配分押しボタンPB2選択ステップS209、最大出力軸優先配分押しボタンPB3選択ステップS210、最小出力軸優先配分押しボタンPB4選択ステップS211で行うことができる。
【0115】
図15は、統括スケジュール演算用入力設定フローを説明する図である。統括スケジュール演算の入力設定手法には、各軸への発電出力配分を手動入力した場合のステップS301と、手動入力せずにスケジュール演算により高効率となる配分パターンを自動選択させる場合のステップS302がある。なお、図15の処理においては、各種の押しボタンPBを使用し、表示あるいは運転員による選択を行わせる。ここで使用する押しボタンPBは、図1の入力設定手段150に設けられたものであり、この詳細が図16に示されている。
【0116】
手動入力、自動演算のいずれの場合にも、次にステップS303において、運転員が統括スケジュール演算開始押しボタンPB21を押して、ON状態とする。
【0117】
配分を手動入力済の場合はこの演算開始指示を受けて、図1の統括スケジュール演算(ステップS113)が実行される。その演算結果が算出されると、ステップS308において統括スケジュール演算確定押しボタンPB23をフリッカさせる。これを受けて運転員がステップS309において、統括スケジュール演算確定押しボタンPB23をONさせる。これによりステップS310において、各軸に対する送電出力配分等のスケジュール演算結果が計算機内部の実行エリアに設定され確定する。
【0118】
一方、高効率となる配分パターンを自動選択させる場合のステップS302の場合は、統括スケジュール演算開始押しボタンPB21のON(ステップS303)を受けてステップS304を実行する。ステップS304では、4組の配分パターンでの送電端効率について、最も高効率の出力配分パターンを算出し、全軸全体としての出力配分パターンを決定する。なお図15のステップS304は、図1の最高送電端効率配分パターン決定手段112に相当する。
【0119】
図15のステップS204からS211は、図14のステップS204からS211に相当しており、要するに最高効率の配分パターンの押しボタンのフリッカと、運転員による選択確認(押しボタンON)が行われる。
【0120】
この結果、例えば出力均等配分時の送電端効率が最も高い場合は、出力均等配分押しボタンPB1がフリッカされ、運転員により当該押しボタンPB1がONされる。決定された本出力配分パターンで統括スケジュール演算(図1統括スケジュール演算手段113に相当する)を実行するために、統括スケジュール演算再開押しボタンPB22がフリッカ(ステップS305)される。運転員は、統括スケジュール演算を再開するために統括スケジュール演算再開押しボタンPB22をON(ステップS306)する。これを受けて、ステップS307では、統括スケジュール演算を実行する。
【0121】
ステップS305からステップS307に至る一連の操作は、出力割合均等配分時、最大出力軸優先配分時、最小出力軸優先配分時の送電端効率が最も高い場合にも同様に実行される。
【0122】
ステップS307で統括スケジュール演算結果が決定したことにより、最終的な結果を確定させることを促す統括スケジュール演算確定押しボタンPB23をフリッカ(ステップS308)させ、運転員による統括スケジュール演算確定押しボタンPB23をON(ステップS309)させることで、各軸に対する送電出力配分等のスケジュール演算結果が計算機内部の実行エリアに設定され確定する(ステップS310)。
【0123】
図16は、図1の統括スケジュール演算用入力設定手段150を説明する図である。全軸の統括スケジュール演算用入力設定手段150は、吸気冷却器関係設定部、送電電力配分選択関係設定部、統括スケジュール演算実行関係設定部、統括スケジュール演算確定関係設定部の各操作に分かれる。
【0124】
このうち吸気冷却器関係設定部は軸ごとに準備され、吸気冷却器使用時は吸気冷却器使用選択押しボタンPB10を、不使用時は吸気冷却器不使用選択押しボタンPB11を選択入力する。
【0125】
送電電力配分選択関係設定部は、出力均等配分押しボタンPB1、出力割合均等配分押しボタンPB2、最大出力軸優先配分押しボタンPB3、最小出力軸優先配分押しボタンPB4の何れかを選択入力する。
【0126】
統括スケジュール演算関係設定部は、初期の開始時は統括スケジュール演算開始押しボタンPB21を用い、再開時は統括スケジュール演算再開押しボタンPB22を用いる。最終的な演算結果を本スケジュールとして確定する場合は、統括スケジュール演算確定押しボタンPB23を用いる。
【0127】
図7は、要求電力量Pdに対する各軸の送電電力配分を説明する図である。要求電力量Pdは、規定時間単位ごとに1日間の電力量Pdとして受信されている。この規定時間単位ごとの要求電力量Pdから求めた最高効率送電端の配分パターンに従い、統括スケジュール演算手段113で、複数軸発電設備全体としてのスケジュールが決定される。このスケジュールに従い各軸配分用発電出力算出手段において各軸への送電電力として配分され、各軸のスケジュール演算手段115、116に渡される。各軸スケジュール演算手段115、115では配分された送電電力を元に目標出力、目標出力到達時刻、通常運転中の発電出力を決定する。最終的に配分された各軸の送電電力が図7の701、702となる。
【0128】
以上詳細に説明した本発明の複数軸発電設備の発電スケジュール演算装置及び方法について、再度整理して簡単に説明すると以下のようである。
【0129】
まず本発明は、ガスタービンおよび発電機を結合した複合発電設備を複数組備えた発電設備を対象とし、発電設備を通常起動停止運転させるときの発電スケジュール演算機能である。発電設備の通常起動停止運転のために、給電指令装置101から規定時間単位の要求電力量を要求電力量入力手段102に得、送電電力算出手段103において規定時間単位の要求電力量から瞬時に必要な送電電力を求める。
【0130】
また必要な送電電力を得るときに必要な発電電力を、所内動力を加味して算出する。所内動力算出のために、ガスタービン燃焼器入口に設けられる吸気冷却器の運転台数を設定する吸気冷却器運転台数入力手段141の与える吸気冷却器運転台数と、大気温度140から吸気冷却器運転台数所内動力算出手段144において吸気冷却器台数分の所内動力を求める。さらに発電設備データ収集手段130において発電設備の運転データをもとに発電設備の運転出力帯ごとに規定時間の所内動力を収集する。発電出力算出手段104では、吸気冷却器所内動力と過去の吸気冷却器以外の所内動力および送電電力の合計から発電出力を求める。
【0131】
所内動力のうち吸気冷却器所内動力は大気温度に依存することから、吸気冷却器台数の吸気温度算出手段143において、大気温度140および吸気冷却器運転台数から吸気冷却器台数による冷却可能な吸気温度を求め、当該冷却可能な吸気温度のときのガスタービンGTの最大出力をGT最大出力算出手段145で求める。
【0132】
次に、各個別軸への出力配分パターンを想定する。この演算のために、発電出力と送電電力と運転必要軸数とGT最大出力を用いる。
【0133】
まず想定する配分パターンの設定手段は、例えば発電軸において均等に送電電力を配分する送電電力均等配分手段106と、運転軸ごとに吸気冷却器運転状況より送電可能な送電電力が異なり、送電電力に合わせ配分出力を変更させ送電可能電力に対する送電電力の出力割合を平均にするための送電電力割合均等配分手段107と、発電軸のうち最大出力軸の大きい順に送電電力を配分し、最小出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最大出力軸優先送電電力配分手段108と、発電軸のうち最大出力軸の小きい順に送電電力を配分し、最大出力軸には残りの送電電力を割り振るような配分を行うための最小出力軸優先送電電力配分手段109とされる。
【0134】
次に各パターンでの総合的な送電端効率が最も高くなる出力配分を決定する。このため、まず発電出力配分のパターン106、107、108、109から発電設備の運転データをもとに発電設備データ収集手段110において発電設備の運転出力帯ごとに規定時間の送電電力量、発熱量、燃料消費量を収集する。送電端効率算出手段111で発電設備データ収集手段110のデータから送電端効率を求め、最高送電端効率配分パターン決定手段112において送電端効率から最も高効率な出力配分パターンを求める。
【0135】
最高送電端効率となる場合の送電電力配分での統括スケジュール演算手段113により、各軸への発電出力を求めるための各軸配分用発電出力算出手段114と、軸ごとに配分された発電出力により軸ごとの発電スケジュールを決めるための軸スケジュール演算手段115、116を備える。
【0136】
高効率な送電端効率となる発電出力配分で決定した軸スケジュール演算結果のより各制御装置CT1、CTnは各発電設備CP1、CPnへ制御信号を出力し運転を行う。各発電設備の発電出力の合計が、本発電設備全体の合計発電出力となる。
【符号の説明】
【0137】
100:発電スケジュール演算装置
101:給電指令装置
102:要求電力量入力手段
103:送電電力算出手段
104:発電出力算出手段
105:運転軸数算出手段
106:送電電力均等配分手段
107:送電電力割合均等配分手段
108:最大出力軸優先送電電力配分手段
109:最小出力軸優先送電電力配分手段
110:発電出力帯別データ収集手段
111:送電端効率算出手段
112:最高送電端効率配分パターン決定手段
113:統括スケジュール演算手段
114:各軸配分用発電出力算出手段
115:1軸スケジュール演算手段
116:n軸スケジュール演算手段
CT:軸制御装置
CP:軸発電設備
121:発電設備合計発電出力
130:発電出力帯別データ収集手段
140:大気温度検出器
141:吸気冷却器運転台数入力手段
143:吸気冷却器運転台数の吸気温度算出手段
144:吸気冷却器運転台数の所内動力算出手段
145:吸気温度によるGT最大出力算出手段
Pd:規定時間単位における要求電力量
PS:規定時間単位における送電電力
PL:規定時間単位における所内動力
Ta:日間の大気温度曲線
T0:吸気冷却器利用判断基準温度
403、405:吸気冷却器の不使用エリアにおける大気温度
404:吸気冷却器の使用エリアにおける大気温度
Pg1:吸気冷却器不使用時の発電機出力曲線
Pg3:吸気冷却器使用時の発電機出力曲線
Pg4:吸気冷却器不使用時の発電出力曲線(圧縮機入口空気温度T℃以上)
Pg2:吸気冷却器使用時の発電出力曲線(圧縮機入口空気温度T℃以上)
PL2:吸気冷却器の所内動力曲線
F2:送電電力割合均等配分時の送電端効率
F3:最大出力軸優先時送電電力配分時の送電端効率
F4:最小出力軸優先時送電電力配分時の送電端効率
150:統括スケジュール演算用入力設定手段
PB10:吸気冷却器使用選択押しボタン
PB11:吸気冷却器不使用選択押しボタン
PB1:出力均等配分押しボタン
PB2:出力割合均等配分押しボタン
PB3:最大出力軸優先配分押しボタン
PB4:最小出力軸優先配分押しボタン
PB21:統括スケジュール演算開始押しボタン
PB22:統括スケジュール演算再開押しボタン
PB23:統括スケジュール演算確定押しボタン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図16