(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
スイッチング素子を上下アームとした第1レグと第2レグとが直流電源の間にそれぞれ並列に接続されたブリッジ回路と、前記スイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続された逆並列ダイオードと、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続された並列コンデンサとを有し、前記第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子とが組になって交互にオンオフし前記直流電源から入力される直流を交流に変換するインバータ回路と、
1次巻線と2次巻線とを有し前記インバータ回路で変換された交流を前記1次巻線に入力し前記2次巻線から出力するトランスと、
前記トランスの前記2次巻線の一方端子に接続され、2つの出力端子の間に互いに直列に接続される一対の共振コンデンサと、
前記一対の共振コンデンサにそれぞれ並列に接続され各々の共振コンデンサが逆極性に充電されることを防止する一対の逆充電抑制素子と、
前記トランスの前記2次巻線の他方端子に接続され、前記2つの出力端子の間に互いに直列に接続されるとともに、前記一対の共振コンデンサから前記直流電源へ電流が帰還されるのを阻止する一対の一方向性素子と、
前記組となるスイッチング素子がともにオン状態のときに前記一対の共振コンデンサとともに作用して直列共振する共振インダクタンスと、
前記組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子とのいずれか一方を先にオフさせ、遅らせてオフさせるスイッチング素子に流れる電流が前記トランスの励磁電流となった後に前記遅らせてオフさせるスイッチング素子をオフさせる制御装置とを備えたことを特徴とする直列共振型コンバータシステム。
前記制御装置は、前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子がオン信号終了後に前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子と並列に接続される並列コンデンサの放電電流が流れ終えてから前記トランスの励磁電流が前記遅らせてオフさせたアームのスイッチング素子と同じレグの他方のアームのスイッチング素子の逆並列ダイオードに流れる間に前記他方のアームのスイッチング素子及び他方の組のスイッチング素子のオンすべきスイッチング素子にオン信号を与えることを特徴とする請求項1に記載の直列共振型コンバータシステム。
前記制御装置は、前記組となるスイッチング素子のうち先にオフさせるスイッチング素子のオン信号を固定し、前記組となるスイッチング素子のうち遅らせてオフさせるスイッチング素子のオン信号終了後に前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子と同じレグの他方のアームのスイッチング素子にオン信号を与えるまでの前記遅らせてオフさせるスイッチング素子のデッドタイムを固定することを特徴とする請求項1記載の直列共振型コンバータシステム。
前記制御装置は、2個の前記レグのそれぞれについて上下アームのスイッチング素子の双方ともにオン信号を与えない4つのスイッチング素子のデッドタイムそれぞれを固定し、組となる前記一方のレグの上アームのスイッチング素子と前記他方のレグの下アームのスイッチング素子とに同時にオン信号を与えている時間を固定することを特徴とする請求項1記載の直列共振型コンバータシステム。
前記トランスの励磁電流が流れている逆並列ダイオードよりもインピーダンスが小さい前記スイッチング素子内のスイッチ素子を逆方向に導通させてから順方向に導通させることを特徴とする請求項2に記載の直列共振型コンバータシステム。
【背景技術】
【0002】
電力変換効率の高いコンバータとして、共振インダクタンスのインダクタンスと共振コンデンサのキャパシタンスとの直列共振を利用した直列共振型コンバータが広く使用されている。
【0003】
電力変換効率の高い直列共振型コンバータとして、主に共振コンデンサと共振インダクタンスとの直列共振を利用し、1次側のインバータ回路のスイッチング素子を流れる電流がほぼゼロの時にスイッチング素子をスイッチングさせるゼロ電流スイッチングを行うことで、スイッチング損失を低減するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、直列共振型コンバータとして、1次側及び2次側のそれぞれに共振コンデンサを設け、負荷電圧及び負荷電流が大きく変化するときに、共振インダクタンスと共振コンデンサからなる直列共振回路における共振キャパシタンスの大きさが自動的に変更されて、共振電流波形を正弦波状に又は正弦波形に近づけるように改善し、広い負荷範囲にわたって直列共振コンバータの電力効率を向上させるようにしたものがある(特許文献2参照)。
【0005】
一般に、フルブリッジのインバータ回路では、スイッチング素子を上下アームとした2個のレグが並列に接続されて構成され、一方のレグの上アームのスイッチング素子と他方のレグの下アームのスイッチング素子とを組にして交互にオンオフ制御し、入力端子から入力される直流を交流に変換するようにしている。
【0006】
その場合、各々のスイッチング素子の駆動信号は、
図7に示すように、4個のスイッチング素子のすべてについて、オン時間To固定でオン時間開始点の周波数(周期)を変化させて出力を制御している。いま、一方のレグの上下アームのスイッチング素子がスイッチング素子S1、S2であるとし、他方のレグの上下アームのスイッチング素子がスイッチング素子S3、S4であるとすると、スイッチング素子S1、S4が一方の組、スイッチング素子S2、S3が他方の組となって、交互にオンオフ制御される。
【0007】
例えば、時点t1でスイッチング素子S2、S3が同時にオフとなると、次に、時点t2でスイッチング素子S1、S4が同時にオンとなる。そして、時点t3でスイッチング素子S1、S4が同時にオフとなり、時点t4でスイッチング素子S2、S3が同時にオンとなる。以下、時点t5以降においても、同様に、スイッチング素子S1、S4、スイッチング素子S2、S3が組となって、交互にオンオフ制御される。この場合、すべてのスイッチング素子S1、S2、S3、S4のオン時間Toは一定である。スイッチング素子S1、
S4をオンするタイミング、及びスイッチング素子S2、S3をオンするタイミングを調整することにより、出力を制御している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1のものは、比較的広い出力電圧範囲で使用可能であるが、出力電圧が低い領域では、1次側のインバータ回路のスイッチング素子がスイッチオフするときにゼロ電流スイッチングとはならず損失が発生する。その損失は、出力電圧が低いほど増加する。これは出力電圧が低くなると、共振コンデンサと共振インダクタンスとの直列共振が行われなくなるからである。
【0010】
一方、特許文献2のものでは、広い負荷範囲にわたって電力効率を向上できるものであるが、1次側及び2次側のそれぞれに共振コンデンサが必要となるので、部品点数が多くなりコスト高となる。
【0011】
また、特許文献1、2のものでは、スイッチング素子がターンオンする際、スイッチング素子の寄生静電容量に蓄えられたエネルギーがターンオンしたスイッチング素子によって消費されるので損失となる。
【0012】
本発明の目的は、部品点数を増加させることなく、電力効率を向上させることができる直列共振型コンバータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係る直列共振型コンバータシステムは、スイッチング素子を上下アームとした第1レグと第2レグとが直流電源の間にそれぞれ並列に接続されたブリッジ回路と、前記スイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続された逆並列ダイオードと、前記スイッチング素子にそれぞれ並列に接続された並列コンデンサとを有し、前記第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子とが組になって交互にオンオフし前記直流電源から入力される直流を交流に変換するインバータ回路と、1次巻線と2次巻線とを有し前記インバータ回路で変換された交流を前記1次巻線に入力し前記2次巻線から出力するトランスと、前記トランスの前記2次巻線の一方端子に接続され、2つの出力端子の間に互いに直列に接続される一対の共振コンデンサと、前記一対の共振コンデンサにそれぞれ並列に接続され各々の共振コンデンサが逆極性に充電されることを防止する一対の逆充電抑制素子と、前記トランスの前記2次巻線の他方端子に接続され、前記2つの出力端子の間に互いに直列に接続されるとともに、前記一対の共振コンデンサから前記直流電源へ電流が帰還されるのを阻止する一対の一方向性素子と、
前記組となるスイッチング素子がともにオン状態のときに前記一対の共振コンデンサとともに作用して直列共振する共振インダクタンスと、前記組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子とのいずれか一方を先にオフさせ、
遅らせてオフさせるスイッチング素子に流れる電流が前記トランスの励磁電流となった後に前記遅らせてオフさせるスイッチング素子をオフさせる制御装置とを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明に係る直列共振型コンバータシステムは、請求項1の発明において、前記制御装置は、前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子がオン信号終了後に前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子と並列に接続される並列コンデンサの放電電流が流れ終えてから前記トランスの励磁電流が前記遅らせてオフさせたアームのスイッチング素子と同じレグの他方のアームのスイッチング素子の逆並列ダイオードに流れる間に前記他方のアームのスイッチング素子及び他方の組のスイッチング素子のオンすべきスイッチング素子にオン信号を与えることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明に係る直列共振型コンバータシステムは、請求項1の発明において、前記制御装置は、前記組となるスイッチング素子のうち先にオフさせるスイッチング素子のオン信号を固定し、前記組となるスイッチング素子のうち遅らせてオフさせるスイッチング素子のオン信号終了後に前記遅らせてオフさせるアームのスイッチング素子と同じレグの他方のアームのスイッチング素子にオン信号を与えるまでの前記遅らせてオフさせるスイッチング素子のデッドタイムを固定することを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明に係る直列共振型コンバータシステムは、請求項1の発明において、前記制御装置は、2個の前記レグのそれぞれについて上下アームのスイッチング素子の双方ともにオン信号を与えない4つのスイッチング素子のデッドタイムそれぞれを固定し、組となる前記一方のレグの上アームのスイッチング素子と前記他方のレグの下アームのスイッチング素子とに同時にオン信号を与えている時間を固定することを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明に係る直列共振型コンバータシステムは、請求項2の発明において、前記トランスの励磁電流が流れている逆並列ダイオードよりもインピーダンスが小さい前記スイッチング素子内のスイッチ素子を逆方向に導通させてから順方向に導通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある組となる第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子と第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子とのいずれか一方を先にオフさせ、遅らせてオフさせるスイッチング素子に流れる電流がトランスの励磁電流となった後に、遅らせてオフさせるスイッチング素子オフさせるので、遅れてターンオフするスイッチング素子は、そこに流れる電流を抑制した状態でオフできる。また、共振インダクタンス及びスイッチング素子の逆並列ダイオードや並列コンデンサの作用により、次にターンオンする組となる2個のスイッチング素子の電圧を抑制した状態でオンできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る直列共振型コンバータシステムの構成図である。
【0021】
直列共振型コンバータは、特許文献1の
図5に示されたものとほぼ同じものであり、特許文献1の1次側のインバータ回路を構成するスイッチング素子の帰還ダイオードが本発明の実施形態の逆並列ダイオードに相当する。すなわち、本発明の実施形態の逆並列ダイオードは、スイッチング素子の内蔵ダイオードまたはスイッチング素子のスイッチ素子に逆並列接続された逆並列ダイオードに相当する。また、本発明の実施形態の並列コンデンサは、スイッチング素子の寄生静電容量またはスイッチング素子のスイッチ素子に並列接続されたコンデンサに相当する。特許文献1では並列コンデンサを図示していないが、本発明の実施形態では並列コンデンサの動作も考慮する必要があるため並列コンデンサを明確に図示している。
【0022】
本発明の実施形態では、スイッチング素子の逆並列ダイオード及び並列コンデンサを考慮に入れて、制御装置は、スイッチング素子がターンオンする直前にスイッチング素子の両端の電圧をほぼゼロにし、広い出力電圧範囲で使用した場合でも4個のスイッチング素子のうち、2個のスイッチング素子のターンオフ時のスイッチング損失を低減できるように、スイッチング素子のオンオフ制御を行うものである。
【0023】
図1において、まず、直列共振型コンバータについて説明する。直列共振型コンバータの1次側と2次側とは、1次巻線11a及び2次巻線11bを有したトランス11を介して接続されている。
【0024】
トランス11の1次側は、入力端子側に直流電源12に並列に接続されたインバータ回路13を有する。インバータ回路13は、スイッチング素子S1を上アームとしスイッチング素子S2を下アームとしたレグ14aと、スイッチング素子S3を上アームとしスイッチング素子S4を下アームとしたレグ14bとを直流電源12の間に並列に接続してブリッジ回路(フルブリッジ回路)を構成している。
【0025】
スイッチング素子S1、S2は、スイッチ素子Q1、Q2に並列に逆並列ダイオードD1、D2及び並列コンデンサC1、C2を有している。同様に、スイッチング素子S3、S4は、スイッチ素子Q3、Q4に並列に逆並列ダイオードD3、D4及び並列コンデンサC3、C4を有している。
【0026】
インバータ回路13は、一方のレグ14a(14b)の上アームのスイッチング素子S1(S3)と他方のレグ14b(14a)の下アームのスイッチング素子S4(S2)とが組になって交互にオンオフする。すなわち、スイッチング素子S1、S4が組となり、スイッチング素子S3、S2が組となって、交互にオンオフし、直流電源12から入力される直流を交流に変換する。
【0027】
また、スイッチング素子S1、S2の接続点は、共振インダクタンスLを介してトランス11の1次巻線11aの一方端子に接続され、スイッチング素子S3、S4の接続点は、トランス11の1次巻線11aの他方端子に接続される。これにより、インバータ回路13で変換された交流はトランス11の1次巻線11aからトランス11の2次巻線11bに出力され、2次側に供給される。
【0028】
トランス11の2次側は、一対の共振コンデンサCa、Cb、この一対の共振コンデンサCa、Cbにそれぞれ並列接続された逆充電抑制ダイオードDa、Db、一対の一方向性素子Dc、Dd、及び出力端子側に平滑コンデンサCcを有する。一対の逆充電抑制ダイオードDa、Dbは、各々の共振コンデンサCa、Cbが逆極性に充電されることを防止するものである。
【0029】
共振コンデンサCa、Cbは、トランス11の2次巻線の一方端へ接続され、負荷が接続される2つの出力端子の間に互いに直列に接続される。この共振コンデンサCa、Cbは共振インダクタンスLとともに作用して直列共振する。一方向性素子Dc、Ddは、トランス11の2次巻線11bの他方端子に接続され、2つの出力端子の間に互いに直列に接続されるとともに、一対の共振コンデンサCa、Cbから直流電源12へ電流が帰還されるのを阻止する。なお、共振インダクタンスLはトランス11の2次巻線11b側に接続されてもよい。
【0030】
制御装置15は、組となる一方のレグ14a(14b)の上アームのスイッチング素子S1(S3)と他方のレグ14b(14a)の下アームのスイッチング素子S4(S2)とのいずれか一方のターンオフを遅らせ、組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御する。
【0031】
例えば、一方のレグ14a(14b)の上アームのスイッチング素子S1(S3)を先にターンオフさせた場合には、組となる他方のレグ14b(14a)の下アームのスイッチング素子S4(S2)を遅れてターンオフさせる。
【0032】
あるいは、一方のレグ14a(14b)の下アームのスイッチング素子S2(S4)を先にターンオフさせた場合には、組となる他方のレグ14b(14a)の上アームのスイッチング素子S4(S1)を遅れてターンオフさせる。また、これらの組合せで組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御する。
【0033】
以下の説明では、一方のレグ14bの下アームのスイッチング素子S4を先にターンオフさせ、組となる他方のレグ14aの上アームのスイッチング素子S1を遅れてターンオフさせるとともに、一方のレグ14bの上アームのスイッチング素子S3を先にターンオフさせ、組となる他方のレグ14aの下アームのスイッチング素子S2を遅れてターンオフさせる場合について説明する。
【0034】
図2は、本発明の実施形態におけるスイッチング素子のスイッチ素子のオンオフ制御の一例を示すタイミング図である。
図7に示した従来例に対し、すべてのスイッチング素子S1、S2、S3、S4のオン時間Toを固定することに代えて、レグ14bの下アームのスイッチング素子S4のオン時間To、及びレグ14bの上アームのスイッチング素子S3のオン時間Toを固定し、レグ14aの上下アームのスイッチング素子S1、S2が双方ともオフしているデッドタイムTdを固定としたものである。ここで、デッドタイムは、同じレグの上下アームのスイッチング素子S1、S2が同時に導通しないように、一方のスイッチング素子S1(S2)のスイッチ素子Q1(Q2)がオフした後に他方のスイッチング素子S2(S1)のスイッチ素子Q2(Q1)を遅らせてオンさせるときに必要とする所定時間である。
【0035】
図2に示すように、時点t1で、組となるスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1とスイッチング素子S4のスイッチ素子Q4とに同時にターンオンさせるためのオン信号を与え、固定のオン時間Toが経過した時点t2で、スイッチング素子S4を先にターンオフさせる。
【0036】
スイッチング素子のターンオフは、オン信号が継続して与えられているときにオン状態を保つ素子である場合には、オン信号を与えるのをやめてターンオフさせる。一方、一旦オン状態になるとオン状態を保持する素子である場合には、オフ信号を与えてターンオフさせる。
【0037】
スイッチング素子S4を先にターンオフさせた後の時点t3でスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1をターンオフさせる。スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1のオン信号を終了してスイッチ素子Q1がオフした時点t3では、オフしたスイッチング素子S1と同じレグ14bの他方のスイッチング素子S2はオフ状態である。
【0038】
そこで、時点t3から固定のデッドタイムTdが経過した時点4で、別の組となるスイッチング素子S2のスイッチ素子Q2とスイッチング素子S3のスイッチ素子Q3とに同時にオンさせるためのオン信号を与える。その後、固定のオン時間Toが経過した時点t5で、スイッチング素子S3を先にターンオフさせる。さらに、その後の時点t6でスイッチング素子S2をターンオフさせる。
【0039】
以下、同様に、時点t6から固定のデッドタイムTdが経過した時点t7で、組となるスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1とスイッチング素子S4のスイッチ素子Q4とに同時にオンさせるためのオン信号を与え、固定のオン時間Toが経過した時点t8で、スイッチング素子S4を先にターンオフさせる。その後の時点t9でスイッチング素子S1をターンオフさせる。時点t10以降も同様である。
【0040】
これにより、遅らせてオフさせるスイッチング素子に流れる電流がトランスの励磁電流となった後に、遅らせてオフさせるスイッチング素子をオフさせるので、遅れてオフするスイッチング素子S1(S2)に流れる電流を抑制する。そして、電流が抑制された状態でターンオフする。また、共振インダクタンスL及びスイッチング素子S1〜S4の逆並列ダイオードD1〜D4や並列コンデンサC1〜C4の作用により、次にターンオンする組となる2個のスイッチング素子S2、S3(S1、S4)のスイッチング素子の電圧も抑制する。そして、電圧を抑制した状態でターンオンする。
【0041】
次に、直列共振型コンバータシステムの出力電圧Eoが低い場合の動作について説明する。
図3は、
図2に示すタイミングで各々のスイッチング素子S1、S2、S3、S4をオンオフ制御した場合に形成される直列共振型コンバータシステムの回路図、
図4は、そのスイッチング素子S1、S2、S3、S4の電圧及び電流の波形図、
図5は、
図4のT期間の時間軸を引き延ばしたスイッチング素子S1、S2の電圧及び電流の波形図である。
【0042】
いま、
図1に示す直列共振型コンバータシステムのスイッチング素子S2のスイッチ素子Q2、及びスイッチング素子S3のスイッチ素子Q3の双方がオフしており、スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1、及びスイッチング素子S4のスイッチ素子Q4の双方がオンしているとする。スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1、及びスイッチング素子S4のスイッチ素子Q4の双方がオンしている状態のうち、
図4の時点t1から時点t2における状態では、
図3(a)に示す回路が形成され、共振インダクタンスLと共振コンデンサCa、Cbとの共振によって正弦波状の電流が流れている。
図3(a)の矢印は電流の向きを示している。
【0043】
出力電圧Eoが低いことから、この状態で、
図4の時点
t11において、共振コンデンサCbが出力電圧Eoまで充電され、共振コンデンサCaが0Vまで放電されると、
図3(b)の回路が形成される。すなわち、逆充電抑制ダイオードDa、Ddが導通し、共振コンデンサCa、Cbに電流が流れなくなり共振は止まる。つまり、共振インダクタンスLには入力電圧Ein−(N1/N2)Eoの電圧が印加され電流は直線状になる。なお、N1/N2はトランスTの巻数比である。この場合、出力電圧Eoが低いほど電流が減少しなくなる。
【0044】
次に、
図4の時点
t2でスイッチング素子S4のスイッチ素子Q4が先にオフしたとすると、
図3(c)の回路が形成される。スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1を介して電流が流れ、共振インダクタンスLとスイッチング素子S3、S4の並列コンデンサC3、C4との共振によって、並列コンデンサC4の電圧は上昇し、並列コンデンサC3の電圧は下降する。
【0045】
そして、並列コンデンサC3の電圧が0Vになると、
図3(d)の回路が形成され、スイッチング素子S3の逆並列ダイオードD3が導通し、トランスTに印加される電圧はほぼ0Vとなり、共振インダクタンスLに印加される電圧は−(N1/N2)Eoとなる。そのため、電流は直線的に下降していく(
図4の時点
t2〜
t21)。
【0046】
逆充電抑制ダイオードDaと一方向性素子Ddの電流が0Aになると、逆充電抑制ダイオードDa、Dbが遮断され2次側に電流が流れなくなる。これにより、
図3(e)の回路が形成される。このとき、スイッチ素子Q1と並列ダイオードD3にトランスTの励磁電流が流れている。この励磁電流が流れている状態でスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1をオフすると、励磁電流は微少であるから事実上、ゼロ電流でターンオフできる。
【0047】
次に、
図4の時点
t3でスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしたとすると、
図3(f)の回路が形成され、共振インダクタンスLと並列コンデンサC1、C2による共振で並列コンデンサC1の電圧が上昇するとともに、並列コンデンサC2の電圧が下降する。このとき、共振コンデンサCa、Cbにも電流が流れるが、共振コンデンサCa、Cbの容量は、並列コンデンサC1、C2の容量よりはるかに大きいため共振にはほとんど影響しない。従って、トランスの励磁インダクタンスの値を調整し、適切な励磁電流の値にしていると並列コンデンサC2の電圧を0Vまで下げることができる。この場合、スイッチング素子S2の並列コンデンサC2に蓄えられたエネルギーは、直流電源12に回生されるのでほとんど損失とならない。
【0048】
図5において、時点
t3でスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしたとすると、共振インダクタンスLと並列コンデンサC1、C2による共振で、スイッチング素子S1の並列コンデンサC1が充電されるため、スイッチング素子S1にはまだ電流が流れている。時点
t31で、並列コンデンサC1の充電が終わり、スイッチング素子S1に電流が流れなくなると、スイッチング素子S1の両端の電圧は入力電圧Einとなる。スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしてから、並列コンデンサC1に電流が流れなくなるまで、すなわちスイッチング素子S1に電流が流れなくなるまでの時間が最小デッドタイムTd0である。
【0049】
一方、スイッチング素子S1と同じレグのスイッチング素子S2は、時点
t3でスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしたとすると、共振インダクタンスLと並列コンデンサC1、C2による共振で、スイッチング素子S2の並列コンデンサC2が放電して並列コンデンサC2の電圧が下降する。そして、時点
t31で、並列コンデンサC2が放電し終え、並列コンデンサC2の電圧が0Vとなると逆並列ダイオードD2が導通し、
図3(g)に示す回路が形成される。
【0050】
この逆並列ダイオードD2が導通しているとき、つまり、スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしてから最小デッドタイムTd0を経過した後の時点
t4にスイッチング素子S2のスイッチ素子Q2にオン信号を与えて導通可能な状態にさせるように、デッドタイムTdを設定する。逆並列ダイオードD2が導通しているときにスイッチング素子S2のスイッチ素子Q2を順方向に導通可能な状態にするので、スイッチ素子Q2は順方向に電流が流れ始めるときにゼロ電圧でオンできる。
【0051】
以上のように、本発明の実施形態では、オンしているスイッチング素子S1のスイッチ素子Q1を励磁電流分のみが流れる状態の時点
t3でオフする。スイッチング素子S1をオフするタイミングは、スイッチング素子S1がスイッチング素子S4より遅れてオフするタイミングであり、デッドタイムTdを適切に設定することで決められる。デッドタイムTdは、スイッチング素子S1のスイッチ素子Q1がオフしてからスイッチング素子S2のスイッチ素子Q2を導通可能な状態にする時点までの時間である。
【0052】
このようにして、次に、ターンオンするスイッチング素子S2の電圧をゼロまで降下させ、スイッチング素子S2の電圧がゼロとなった時点
t31以降で逆並列ダイオードD2が導通している時点
t4でスイッチング素子S2にオン信号を与えて導通可能な状態にする。従って、スイッチング素子S2はゼロ電圧でターンオンできるので、スイッチング損失が発生しない。
【0053】
図5に示すように逆並列ダイオードD2が導通している時点
t4でスイッチング素子S2にオン信号を与えて導通可能な状態にすると、スイッチング素子のスイッチ素子が逆方向に導通可能な素子である場合に、スイッチ素子のインピーダンスが逆並列ダイオードよりも小さければ電流がスイッチ素子を逆方向に電流に流れる。このスイッチ素子に流れる逆方向の電流がゼロになるとスイッチ素子を順方向に導通する。逆並列ダイオードよりもインピーダンスが小さいスイッチ素子に電流が流れることで電流損失を減らすことができる。
【0054】
以上の説明では、レグ14bの上下アームのスイッチング素子S3、S4のオン時間Toを固定し、レグ14aの上下アームのスイッチング素子S1、S2が双方ともオフしているデッドタイムTdを固定としたが、レグ14aの上下アームのスイッチング素子S1、S2とのオン時間Toを固定し、レグ14bの上下アームのスイッチング素子S3、S4が双方ともオフしているデッドタイムTdを固定した場合も同様である。また、2個のレグ14a、14bの上アームのスイッチング素子S1、S3のオン時間Toを固定し、レグ14a、14bの下アームのスイッチング素子S2、S4のデッドタイムTd、すなわち下アームのスイッチング素子S2(S4)のスイッチ素子Q2(Q4)をオフしてからもう一方の上アームのスイッチング素子S1(S3)のスイッチ素子Q1(Q3)を導通可能な状態にするまでの時間を固定としてもよい。同様に、2個のレグ14a、14bの下アームのスイッチング素子S2、S4のオン時間Toを固定し、レグ14a、14bの上アームのスイッチング素子S1、S3のデッドタイムTdを固定としてもよい。また、
図6に示すように、2個のレグのそれぞれについて上下アームのスイッチング素子のデッドタイムを固定し、組となる一方のレグの上アームのスイッチング素子と他方のレグの下アームのスイッチング素子とが同時にオンしているオン時間を固定するようにしてもよい。
【0055】
図6は、本発明の実施形態におけるスイッチング素子のオンオフ制御の他の一例を示すタイミング図である。
図6に示すように、スイッチング素子S1、S2のデッドタイムTd、スイッチング素子S3、S4のデッドタイムTdを固定とし、スイッチング素子S1(S2)と、スイッチング素子S4(S3)とが同時にオンするオン時間Toが一定となるよう位相をずらして(位相シフト)周波数変調を行う。この場合も、
図2で示した場合と同様の作用効果が得られる。
【0056】
なお、本発明の実施形態において、組となる第1又は第2のレグの上アームのスイッチング素子S1(S3)のスイッチ素子Q1(Q3)と第2又は第1のレグの下アームのスイッチング素子S4(S2)のスイッチ素子Q4(Q2)とに同時にオン信号を与えている例を示したが、逆並列ダイオードD1(D3)と逆並列ダイオードD4(D2)とに電流が流れている期間であれば同時でなくてもよい。
【0057】
このように、本発明の実施形態によれば、特許文献1の
図5に示される直列共振型コンバータに対して、スイッチング素子がターンオンする直前にスイッチング素子に印加する電圧をほぼゼロにする機能(ゼロ電圧スイッチング)と、広い出力電圧範囲で使用した場合でも4個のスイッチング素子のうち2個のスイッチング素子のターンオフ時のスイッチング損失を低減できる機能とを制御装置15に持たせので、部品点数を増加させることなく、ターンオフ時やターンオン時の電力損失を軽減でき電力効率を向上できる。
【0058】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。