【実施例1】
【0015】
まず、端子台の異常発熱対策に関する実施例1の太陽光発電システムの概要について、
図1を用いて説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施例の太陽光発電システムは、直流発電装置である複数の太陽電池アレイ100a、100b(以下、これらをまとめて「太陽電池アレイ100」と称する。)と、これらからの配線をまとめる接続箱101と、接続箱101を介して供給される太陽電池アレイ100からの直流電力を交流電力に変換する系統連係型のパワーコンディショナ装置102と、パワーコンディショナ装置102の出力側に設けられる分電盤109と、分電盤109を流れる電力を検出する電力センサユニット110とで構成されており、太陽電池アレイ100で発電した電力を商用電源系統111に逆潮流させるものである。
【0017】
また、パワーコンディショナ装置102には、太陽電池アレイ100からの配線と分電板109への配線を接続する端子台103と、端子台103から供給される直流出力電力の電気的雑音を抑えるフィルタ回路104と、フィルタ回路104が出力する直流出力電圧を昇圧するDC−DCコンバータ105と、DC−DCコンバータ105からの直流出力電圧を商用電源系統111の周波数に対応した交流電力に変換する系統連係インバータ106と、系統連係インバータ106から出力される交流電力の電気的雑音を抑えるフィルタ回路107と、商用電源系統111との接続をON/OFFする系統連係リレー108を備えている。なお、フィルタ回路104およびフィルタ回路107の構成は同様であるので、以下の説明ではフィルタ回路104のみについて述べる。
【0018】
次に、
図2を用いて、パワーコンディショナ装置102の外観を説明する。
図2は、後述するフロントパネル306を透過して表示したパワーコンディショナ装置102の斜視図である。ここに示すように、パワーコンディショナ装置102は動作状況およびエラーなどを表示する表示装置200を前面に備えており、内部には前述した端子台103を備えている。
【0019】
図3はパワーコンディショナ装置102の分解斜視図である。ここに示すように、パワーコンディショナ装置102の内部には、メイン基板300、サブ基板301、ヒートシンク302、表示装置200、端子台103が配置されている。また、パワーコンディショナ装置102は、外装上ケース303、外装下ケース304、背面ケース305、フロントパネル306で覆われている。なお、
図3に示すもののうち本実施例を理解するうえで言及不要のものは、符号を省略している。
【0020】
次に、
図4を用いて、端子台103、メイン基板300、サブ基板301の各々に配置される構成要素を詳細に説明する。
【0021】
図4に示すように、端子台103には、端子103a〜103hが設けられている。これらのうち、端子103a、103bは接続箱101に接続され、端子103c、103dは分電盤109に接続される。また、端子103aと103e、端子103bと103f、端子103cと103g、端子103dと103hは、それぞれ電気的に接続されている。さらに、端子103a〜103hの近傍には端子103a〜103hと電気的に分離した端子台温度ヒューズ402が設けられている。
【0022】
また、メイン基板300には、フィルタ回路104、DC−DCコンバータ105、系統連係インバータ106、フィルタ回路107、系統連係リレー108、ゲートドライバ403が実装されている。そして、DC−DCコンバータ105内には、スイッチング素子105a、コンデンサ105bが設けられており、ゲートドライバ403でスイッチング素子105aのスイッチングを制御することで端子台103を介して入力される直流電力を昇圧し、コンデンサ105bから所望の電圧の直流電力を出力することができる。系統連係インバータ106内には、スイッチング素子106a〜106dが設けられており、ゲートドライバ403でスイッチング素子106a〜106dのスイッチングを制御することで系統連係インバータ106から商用電源系統111の周波数に対応した周波数の交流電力を出力することができる。DC−DCコンバータ105、系統連係インバータ106は、ヒートシンク302に直接接触して固定され、スイッチング素子105a、106a〜106dを効率的に放熱する。なお、スイッチング素子105a、106a〜106dの制御方法は周知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0023】
さらに、サブ基板301には、電子部品等動作用の電源400、マイコン401が実装されている。マイコン401は、DC−DCコンバータ105のスイッチング素子105a、系統連係インバータ106のスイッチング素子106a〜106dのON/OFF動作を制御するスイッチング信号をゲートドライバ403に送信するとともに、系統連係リレー108のON/OFFや表示装置200の表示、図示しないスピーカを制御する。
【0024】
以上で説明した
図4の構成において、電源400にはフィルタ回路104の前段からの電力(太陽電池アレイから供給される直流電力)またはDC−DCコンバータ105で昇圧された直流電力が供給される。また、電源400の出力電力の一部はマイコン401に直接入力されるとともに、一部は端子台温度ヒューズ402を介してマイコン401とゲートドライバ403に入力される。すなわち、端子台103の異常発熱によって端子台温度ヒューズ402が遮断しても、マイコン401には駆動電力が供給されるため、マイコン401は正常な動作をすることができる。一方、端子台温度ヒューズ402を介して供給されていた電力は遮断されるため、ゲートドライバ403の動作が停止するとともに、マイコン401は端子台温度ヒューズ402が遮断したことを検出することができる。
【0025】
次に、
図5を用いて端子台温度ヒューズ402の具体的な配置を説明する。
図5(a)は端子台103をパワーコンディショナ装置102の上方から(
図2の矢印(a)方向から)見た図であり、
図5(b)は端子台103をパワーコンディショナ装置102の正面から(
図2の矢印(b)方向から)見た図である。また、
図5(c)は、
図5(a)のA−A位置での断面図である。
図5から明らかなように、端子103a〜103hには、ねじが設けられており、接続箱101からの配線や分電盤109への配線はねじを締め付けることで端子台103に固定される。また、
図5(c)の断面図に示すように、端子台温度ヒューズ402を各端子に近接するように端子台103内部に設けている。このような位置に端子台温度ヒューズ402を設けることで、端子台103が異常発熱した場合に、端子台温度ヒューズ402を遮断させることができる。
【0026】
なお、端子台温度ヒューズ402は、端子台103の異常発熱を受ける位置であればどこに実装されても良く、例えば、端子台103の裏側に端子台温度ヒューズ402を取り付けてもよい。
【0027】
「発明が解決しようとする課題」欄で述べたように、従来のパワーコンディショナ装置では、端子台103が異常温度となった場合にシステムを確実に安全に停止もしくは該当部を遮断する手段を持っていない。
【0028】
これに対し、本実施例では、ねじ締め付け不足や経年劣化が発生した場合に異常発熱する端子台103に端子台温度ヒューズ402を実装した。また、
図4に示すように、DC−DCコンバータ105、系統連係インバータ106を駆動するゲートドライバ403には、端子台温度ヒューズ402を介して電力が供給されているため、端子台103が異常発熱し端子台温度ヒューズ402が切れると、ゲートドライバ403への電力供給が絶たれ、DC−DCコンバータ105、系統連係インバータ106の動作も安全に停止させることができる。また、端子台温度ヒューズ402の遮断後も、電源400には太陽電池アレイ100からの電力が供給されるため、マイコン401は正常に動作しており、表示装置200に適切なエラー表示を表示させることや音で異常の発生を報知することができる。
【0029】
以上で説明したように、本実施例によれば、端子台が異常発熱し端子台温度ヒューズが切れると、ゲートドライバへの電源供給が絶たれ、DC−DCコンバータおよび系統連係インバータの動作が確実に停止するため、発煙・発火前に安全にパワーコンディショナ装置の動作が停止する。また、端子台温度ヒューズが切れた場合であっても、遮断する電源は、半導体スイッチング素子用のゲートドライバの電源のみであるため、マイコンは温度ヒューズ遮断後も動作し続け、マイコンで端子台の異常を監視することが可能となり、問題発生時に適切なエラー表示などで使用者に異常を知らせることができる。
【0030】
なお、本実施例では、直流発電装置の一例として太陽電池アレイを紹介したが、本発明の適用対象はこれに限られず、例えば、直流発電装置として燃料電池を用いても良い。
【実施例2】
【0031】
次に、フィルムコンデンサの異常発熱対策に関する実施例2の太陽光発電システムの概要を説明する。なお、実施例1と共通する点は説明を省略することとする。
【0032】
図1に示すように、フィルタ回路104の内部には、入力側の正負極間にコモンモードチョークコイル104cが設けられ、出力側の正負極間にはコモンモードチョークコイル104cと並列にフィルムコンデンサ104aとフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bの直列接続体が設けられている。また、フィルタ回路107の内部には、出力側の正負極間にコモンモードチョークコイル107cが設けられ、入力側の正負極間にはコモンモードチョークコイル107cと並列にフィルムコンデンサ107aとフィルムコンデンサ温度ヒューズ107bの直列接続体が設けられている。
【0033】
フィルムコンデンサ温度ヒューズ104bの実装は、
図6(a)〜(c)のような形態が考えられる。なお、フィルムコンデンサ温度ヒューズ107bも同様に実装されるので、その実装の説明は省略する。
【0034】
図6(a)は、フィルムコンデンサ104aの端子を上向きにするとともに、一方の端子とメイン基板300の間をジャンパ線600で接続し、他方の端子とメイン基板300の間をフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bで接続したものである。このようにフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bを配置することで、外来サージなどを受けてフィルムコンデンサ104aが異常発熱したときにフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bが遮断され、メイン基板300からフィルムコンデンサ104aを遮断することができる。
なお、この構成を用いる場合、メイン基板300の変更を必要としないという利点がある。
【0035】
図6(b)は
図6(a)の構成に、フィルムコンデンサ104aを覆うようにコンデンサケース601を追加したものである。このように、フィルムコンデンサ104aとフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bをコンデンサケース601の内部に密閉することで、フィルムコンデンサ温度ヒューズ104bはフィルムコンデンサ104aの異常発熱をより素早く検知できるとともに、フィルムコンデンサ104aが発煙した場合でも、煙が外部に漏れ出すことを防ぐことができる。
【0036】
図6(c)は、フィルムコンデンサ104aとフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bを内蔵した温度ヒューズ内蔵フィルムコンデンサ602であり、単品部品となるため、基板実装作業が簡略化され、また、作業のばらつきによる信頼性の低下を防げる利点がある。
【0037】
実施例2のフィルタ回路104のフィルムコンデンサ104aにはフィルムコンデンサ温度ヒューズ104bを直列に実装している。これによりフィルムコンデンサ104aの異常発熱時、フィルムコンデンサ温度ヒューズ104bが切れることによりフィルムコンデンサ104aが回路から遮断され、以後の発熱は発生しないこととなる。
【0038】
このように、本実施例においては、異常発熱時に、大きな出力が発生する回路の根幹とも言うべきDC−DCコンバータ105および系統連係インバータ106が、これらを駆動するための信号を伝達する、ゲートドライバ403の電源が、発熱箇所に具備された温度ヒューズにより直接的に遮断されるため、異常発生時に確実に動作が停止し、なおかつ異常の発生を使用者に知らせることを可能とし、また、フィルムコンデンサ104aの異常発熱時、フィルムコンデンサ温度ヒューズ104bが切れることによりフィルムコンデンサ104aが回路から遮断されることで、安全性を確保することができる。