(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732440
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機および洗濯乾燥機ファン駆動用電動機
(51)【国際特許分類】
D06F 25/00 20060101AFI20150521BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20150521BHJP
H02K 1/27 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
D06F25/00 A
D06F58/02 L
H02K1/27 501A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-175576(P2012-175576)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-33750(P2014-33750A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年6月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立アプライアンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 晃
(72)【発明者】
【氏名】小原木 春雄
(72)【発明者】
【氏名】豊田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 国弘
【審査官】
伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−143580(JP,A)
【文献】
特開2012−105482(JP,A)
【文献】
特開平11−155247(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0250442(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0052560(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0049663(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00−51/02
D06F 58/00−60/00
H02K 1/17
H02K 1/27
H02K 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類が収容される内槽と、この内槽を内包する外槽と、乾燥運転中に前記内槽内へ風を吹き付ける送風ユニットを備えた洗濯乾燥機において、
前記送風ユニットのファンを駆動させる電動機は、固定子鉄心に形成された複数のスロット内に電機子巻線が設けられた固定子と、回転子鉄心に形成された孔に対して回転軸方向に永久磁石が挿入された回転子、を有し、
前記永久磁石の磁性材料をサマリウム−鉄−窒素とし、
前記永久磁石の形状を、その両端側が外周へ突出しかつその中央部分が内周へ窪むようU字型の曲線形状とし、
前記回転子鉄心は、前記回転子鉄心のうち、前記U字型の曲線形状の両端を覆う部分を前記U字型の曲線形状の中央部分を覆う部分よりも薄い形状としたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1において、
前記永久磁石は、前記回転子鉄心の外周端面を基準として内径側へ0.8mmの場所より遠く、前記回転子鉄心の外周端面を基準として外径側へ5.7mmの場所よりも近い場所に、磁力線の焦点が位置するような形状としたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1において、
乾燥運転時に、8000〜20000r/minの回転速度で前記電動機を駆動させて、前記内槽内へ送風することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
固定子鉄心に形成された複数のスロット内に電機子巻線が設けられた固定子と、回転子鉄心に形成された孔に対して回転軸方向に永久磁石が挿入された回転子、を備えた洗濯乾燥機ファン駆動用電動機において、
前記永久磁石の磁性材料をサマリウム−鉄−窒素とし、
前記永久磁石の形状を、その両端側が外周へ突出しかつその中央部分が内周へ窪むようU字型の曲線形状とし、
前記回転子鉄心は、前記回転子鉄心のうち、前記U字型の曲線形状の両端を覆う部分を前記U字型の曲線形状の中央部分を覆う部分よりも薄い形状としたことを特徴とする洗濯乾燥機ファン駆動用電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機および、この洗濯乾燥機に利用される永久磁石式電動機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯乾燥機のファン駆動用の電動機には、インバータ駆動の永久磁石式電動機が採用されている。例えば、下記特許文献1には、回転電機の回転子鉄心に設けた挿入穴に、平板状の永久磁石を埋め込んだ構成が記載されている。
【0003】
一方で、家庭電器品は、高性能、省エネルギー、小型化などが昨今特に要求され、洗濯乾燥機のファン駆動用電動機についても、これらの要求を満たすため、電動機の回転子を構成する永久磁石は、磁束密度の高い希土類のネオジム系磁石が一般的に使用されてきた。しかし、レアメタルは、価格の急激な高騰などの経済的影響を受け易いため、ネオジム系以外の磁石、例えばフェライト磁石を用いた回転子も提案されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−89548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された洗濯乾燥機のファン駆動用電動機では、平板状の永久磁石を回転子鉄心の外周側に設置しているため、永久磁石自体の重心が外周側へ偏っており、電動機を駆動させたときの遠心力に伴う振動が大きくなる。
【0006】
また、上記特許文献1に記載のファン駆動用電動機において、ネオジム系磁石のように高透磁率材を用いた場合には、小さな永久磁石で十分な磁気特性が得られるため、ファン駆動用電動機全体が大型化するのを抑制でき、設置スペースの限られたコンパクトな洗濯乾燥機内にも収納することが可能である。しかしながら、このネオジム系磁石を比較的入手し易いフェライト磁石等に、単純に入れ替えた場合、十分な磁気特性を出すためには電動機全体の大型化が避けられない。
【0007】
本発明の目的は、高速回転しても発生する振動を抑制できる生産性の高い洗濯乾燥機ファン駆動用電動機および、この電動機を用いた洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、衣類が収容される内槽と、この内槽を内包する外槽と、乾燥運転中に前記内槽内へ風を吹き付ける送風ユニットを備えた洗濯乾燥機において、前記送風ユニットのファンを駆動させる電動機は、固定子鉄心に形成された複数のスロット内に電機子巻線が設けられた固定子と、回転子鉄心に形成された孔に対して回転軸方向に永久磁石が挿入された回転子、を有し、前記永久磁石の磁性材料をサマリウム−鉄−窒素とし、前記永久磁石の形状を、その両端側が外周へ突出しかつその中央部分が内周へ窪むようU字型の曲線形状とし、前記回転子鉄心は、
前記回転子鉄心のうち、前記U字型
の曲線形状の両端
を覆う部分を
前記U字型の曲線形状の中央部分を覆う部分よりも薄い形状とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高速回転しても発生する振動を抑制可能で、かつ生産性の高い洗濯乾燥機ファン駆動用電動機が提供できる。また、乾燥運転時にファン駆動用電動機を高速回転させ、風の力で衣類のしわを伸ばすことで、乾燥仕上がりの良い洗濯乾燥機を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯乾燥機の内部構造を示す側面図である。
【
図3】本実施形態に係る電動機を組み込んだ送風ユニットの断面図である。
【
図4】本実施形態に係る電動機における回転子の正面図である。
【
図5】本実施形態に係る電動機における回転子を分解して示した展開斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る電動機における回転子の永久磁石の焦点位置を説明する図である。
【
図7】本実施形態に係る電動機の誘起電圧ひずみ率曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図2は本実施形態におけるドラム式洗濯乾燥機100の内部の構造を示すために筺体の一部を切断して示した斜視図、
図4は内部の構造を示す側面図、
図5は内部の構造を示すために筐体の一部を切断して示した平面図である。
【0012】
本実施例のドラム式洗濯乾燥機100は、衣類を収容する内槽たる洗濯兼脱水槽3と、この洗濯兼脱水槽3を回転させるモータ4と、洗濯兼脱水槽3を支持する筐体1を備えている。また、衣類を出し入れするための投入口を塞ぐドア9が前面カバー1cの略中央に設けられ、前補強材に設けたヒンジで開閉可能に支持されている。
【0013】
更に、筐体1の上部中央には、操作パネルが設けられており、電源スイッチ39,操作スイッチ12,13,表示器14を備える。操作パネル6は、筐体1下部に設けた制御装置38に電気的に接続している。
【0014】
洗濯兼脱水槽3は、回転可能に支持された円筒状の回転ドラムで構成され、その外周面3eおよび背面3dに通水および通風のための多数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部3aを設けてある。開口部3aの外側には洗濯兼脱水槽3と一体の流体バランサ3cを備えている。外周面3eの内側には軸方向に延びるリフター3bが複数個設けてあり、洗濯,乾燥時に洗濯兼脱水槽3を回転すると、衣類はリフター3bと遠心力で外周面3eに沿って持ち上がり、重力で落下するように動きを繰り返す。洗濯兼脱水槽3の回転中心軸は、水平または開口部3a側が高くなるように傾斜している。
【0015】
また、洗濯水を溜めるための円筒状の外槽2が、筐体1に支持され、洗濯兼脱水槽3を同軸上に内包し、前面は開口し、後側端面の外側中央にモータ4を取り付ける。モータ4の回転軸は、外槽2を貫通し、洗濯兼脱水槽3と結合している。前面の開口部には外槽カバー2dを設け、外槽内への貯水を可能としている。外槽カバー2dの前側中央には、衣類を出し入れするための開口部2cを有している。
【0016】
そして、外槽2底面最下部には、排水口2bが設けてあり、排水ホース26が接続されている。排水ホース26の途中には排水弁(図示せず)が設けてあり、排水弁を閉じて給水することで外槽2に水を溜め、排水弁を開いて外槽2内の水を機外へ排出する。
【0017】
筐体1内の上部左側には、洗剤容器19が設けられており、前開口部から引き出し式の洗剤トレイ7を装着する。洗剤類を入れる場合は、洗剤トレイ7を
図1の二点鎖線で示すように引き出す。洗剤容器19は、筐体1の上補強材に固定されている。
【0018】
また、乾燥ダクト29が、筐体1の背面内側に縦方向に設置されており、そのダクト下部は外槽2の背面下方に設けた吸気口2aにゴム製の蛇腹管29aで接続されている。乾燥ダクト29内には、水冷除湿機構(図示せず)を内蔵しており、給水電磁弁16から水冷除湿機構へ冷却水を供給する。冷却水は乾燥ダクト29の壁面を伝わって流下し吸気口2aから外槽2に入り排水口2bから排出される。
【0019】
乾燥ダクト29の上部は、筐体1内の上部右側に前後方向に設置したフィルタダクト27に接続している。フィルタダクト27の前面には開口部を有しており、この開口部に引き出し式の乾燥フィルタ8を挿入してある。乾燥ダクト29からフィルタダクト27へ入った空気は、乾燥フィルタ8のメッシュフィルタ8aに流入し糸くずが除去される。乾燥フィルタ8の掃除は、乾燥フィルタ8を引き出してメッシュフィルタ8aを取り出して行う。また、フィルタダクト27の乾燥フィルタ8挿入部の下面には開口部が設けてあり、この開口部は吸気ダクト33と接続されており、吸気ダクト33の他端は送風ユニット28の吸気口と接続している。
【0020】
本実施形態では、洗濯兼脱水槽3内に風を吹きつける手段が、筐体1内であって外槽2の開口部側に設けられており、モータ4により洗濯兼脱水槽3を右回りに回転させたり左回りに回転させたりを繰り返しているときに、洗濯兼脱水槽3の回転によって持ち上げられた衣類に風を吹きつけて乾燥させる。ここで、上記風を吹きつける手段は、送風ユニット28と、この送風ユニット28の吐き出し側に設けられて風を加熱するヒータ31と、ヒータ31の下流に設けられたノズル32dと、これらを接続する風路とで構成されている。なお、熱源としては、ヒータ31に限らず、ヒートポンプを用いても良い。
【0021】
送風ユニット28は、駆動用のファンモータ28a,ファン羽根車28b、ファンケース28cで構成されている。ファンケース28cにはヒータ31が内蔵されており、ファン羽根車から送られる空気を加熱する。送風ユニット28の吐出口は温風ダクト30に接続されている。温風ダクト30は、ゴム製の蛇腹管30a,蛇腹管継ぎ手30bを介して外槽カバー2dに設けた温風吹き出し口32に接続している。
【0022】
図3を用いて、送風ユニット28を更に詳しく説明する。ファンケース28cは、ファン羽根車3の中央に向くところ設けた吸込口55と、ファンケース28cの外周側に設けた吐出口56を有する。ファン羽根車28bはファンモータ28aの回転軸57に固定支持されている。そして、ファンモータ28aにより回転させると、吸込口55から吸引された空気がファン羽根車28bで加圧され、吐出口56から勢い良く送風される。
【0023】
次に、ファンモータ28aについて詳細に説明する。本実施形態におけるファンモータ28aは、温風吹き出し口32から高速の風を吹き出すために、8000r/min以上20000r/min以下程度の回転速度で運転し、高速かつ高圧の風を発生させる。ただし、ファンモータ28aの回転速度を単純に高速化すると、振動による騒音も増加してしまう。そこで、本実施形態では、ファンモータの回転子で使用する永久磁石の磁性材料をサマリウム−鉄−窒素とし、かつ、永久磁石の形状を、その両端側が外周へ突出しかつその中央部分が内周へ窪むような形状とした。これにより、騒音が少なく、高効率、高出力、小型化が可能な永久磁石式電動機を実現できる。以下、具体的に説明する。
【0024】
本実施形態におけるファンモータ28aは、
図3に示すように、回転子
58と、固定子
59と、ハウジング10A、10Bと、回転軸57を回転自在に支持する軸受11A、11Bを有する。そして、回転子58は、固定子59の内周側に所定のギャップを介して回転自在に支承されている。
【0025】
ここで、固定子59は、ティースとコアバックからなる固定子鉄心と、ティース間に形成された複数のスロット内に巻装された集中巻の電機子巻線から構成されている(図示せず)。
【0026】
次に、本実施形態における回転子58について、
図4および
図5を用いて説明する。
【0027】
回転子58は、電磁鋼板等の鋼板を積層した回転子鉄心20と、この回転子鉄心20に形成された永久磁石挿入孔52に対して回転軸方向に挿入される永久磁石21と、回転軸57と嵌合する軸挿入穴24を有している。なお、回転子58の磁極中心方向に延びる軸をd軸とすると、回転子磁極53はd軸を中心に
対称となるよう構成されている。
【0028】
また、回転子鉄心20は中心に軸挿入穴24を有し、この軸挿入穴24に回転軸57が圧入される。回転軸57は、外周にステーキング加工(図示せず)が施され、回転子鉄心20と回転軸57との回り止めになっている。
【0029】
図5に示すように、回転子鉄心20には、曲線形状を有するU字型の永久磁石挿入孔52が設けられ、この永久磁石挿入孔52に、サマリウム−鉄−窒素系の永久磁石21が収納される。
【0030】
ここで、サマリウム−鉄−窒素系の永久磁石における主原材料の具体的な配合割合(重量パーセント)は、鉄:約73%、サマリウム:約24%、窒素:約3%である。これに対して、従来のネオジム磁石の場合、鉄:約66%、ネオジム:約28%、ジスプロシウム他:約5%、ボロン:約1%である。このように、サマリウム−鉄−窒素系を用いることで、希土類の配合割合が少なくなり、市場動向の影響を受けに難くでき、生産性の向上につながる。
【0031】
永久磁石21の形状については、同じU字型であっても、回転子鉄心20の中心付近まで深く窪んだ形状から、外周近傍の浅い窪みの形状まで様々のものが考えられる。永久磁石21の中央部分が、回転子鉄心20の外周端面から内径側に位置するほど、永久磁石21の重心が内周側へ移動するため、遠心力に伴う振動を低減する方向に繋がるが、永久磁石21の成形後の着磁が難しく、組立性が低下する。一方で、永久磁石21の中央部分が、回転子鉄心20の外周端面から外径側に位置するほど、永久磁石21の誘起電圧が低下する。そこで、永久磁石21の望ましい形状について分析した結果を以下説明する。
【0032】
永久磁石21の形状が変化すると、成形後に着磁したときの各磁力線の焦点距離も変化する。
図6は、サマリウム−鉄−窒素系永久磁石の磁力線の焦点位置について示すものである。サマリウム−鉄−窒素系永久磁石を用いた永久磁石の磁力線は、ラジアル方向に配向するが、永久磁石の曲線(U字型)形状によって磁力線の焦点位置は変わる。
【0033】
図7は、サマリウム−鉄−窒素系永久磁石の磁力線の焦点位置と、電動機の誘起電圧ひずみ率を表したグラフである。正弦波である誘起電圧は、ひずみが生じると、モータの性能を低下させる要因の一つになるため、例えば、ひずみ率の閾値を1.0%に設定して、この閾値以下にひずみを抑えることとする。この場合、
図7によれば、ひずみ率が1.0%以下となる磁力線焦点位置は、−0.8mm〜+5.7mmの範囲、すなわち、回転子鉄心20の外周端面を基準として内径側へ0.8mmの場所より遠く、回転子鉄心の外周端面を基準として外径側へ5.7mmの場所よりも近い場所、であることが分かる。
【0034】
更に、
図7のグラフでは、誘起電圧ひずみ率の最適値となる磁力線焦点位置は+2mmであるが、このときの永久磁石の誘起電圧は低いため、サマリウム−鉄−窒素系永久磁石の質量を増大させたり、回転子鉄心20、固定子鉄心の電磁鋼板積層枚数を増やしたりする必要がある。こうした点を考慮すると、磁力線焦点位置は、±0mm近傍、すなわち、回転子鉄心20の外周端面近傍が最も望ましい。
【0035】
このように、本実施形態によれば、周方向に複数設けられる永久磁石21が、いずれもU字型となっているので、永久磁石の重心を極力内周側へ抑制することができ、8000r/min以上20000r/min以下程度の高い回転速度でファンモータ28aを駆動させても、回転子8の遠心力による振動および騒音を抑制できる。
また、本実施形態によれば、永久磁石の材料がサマリウム−鉄−窒素系であるため、ネオジム磁石やフェライト磁石の場合と異なり、金型による成形が可能である。その結果、高精度の永久磁石が実現でき、磁極のアンバランスが低下し、高速回転化が容易となる。更には、永久磁石が成形品であるため、希土類であるサマリウムを含む材料を無駄なく有効に使うこともできる。
【0036】
そして、ネオジム磁石(残留磁束密度が約1.3T)より低透磁率材であるサマリウム−鉄−窒素系の磁石(残留磁束密度が約0.7T)を用いても、その形状をU字形型とすることで、電動機全体を大型化(積厚方向を長く)することなく、永久磁石の表面積を増やし、表面磁界を大きくでき、磁界特性の維持が可能となる。その結果、市場動向の影響を極力抑えた、高性能で小型の電動機を安定的に提供できる。
【0037】
なお、両端側が外周に向かって拡がる形状であれば、Uの字型に限らず、Vの字型、Cの字型、台形型等であっても良い。また、U字型の両端についても、固定子9側に対して露出しないよう、回転子鉄心20で覆われているが、金型成形が可能な限り薄くするのが望ましい。
【0038】
本実施形態では、温風吹き出し口32の面積を乾燥ダクト29や温風ダクト30、乾燥フィルタ8などの風路面積に比べ小さくするとともに、ファンモータ28aを高速回転して高圧力の空気を発生させている。これにより、温風吹き出し口32から高速の風をドラム内に吹き出し、この高速の風を衣類に吹き付けて、風の力で衣類に発生するしわを伸ばすことができる。ここで、高速の風とは、例えば50m/s以上である。また、送風ユニット28が筐体1内の上部右側に設けてあるので、温風吹き出し口32は外槽カバー2dの右斜め上の位置に設け、温風吹き出し口32までの距離を極力短くするようにしてある。このため、圧力損失の増加を防ぐことができ、効率よく高速の風を衣類に吹きつけることが可能となる。
【0039】
乾燥運転時の風の流れは次のようになる。送風ユニット28を運転し、ヒータ31に通電すると、ノズル32dから洗濯兼脱水槽3内に高速の温風が吹き込み(矢印41)、湿った衣類に当たり、衣類を温め衣類から水分が蒸発する。乾燥運転中は、洗濯兼脱水槽3を正逆回転させているので、リフター3bにより衣類がノズル32dの付近まで持ち上がった状態で、衣類に高速の風が当たる。このときノズル32dと衣類との距離が最も短くなるので、高速の風で衣類のしわを伸ばすことができる。高温多湿となった空気は、洗濯兼脱水槽3に設けた貫通孔から外槽2に流れ、吸気口2aから乾燥ダクト29に吸い込まれ、乾燥ダクト29を下から上へ流れる(矢印42)。乾燥ダクト29の壁面には、水冷除湿機構からの冷却水が流れ落ちており、高温多湿の空気は冷却水と接触することで冷却除湿され、乾いた低温空気となりフィルタダクト27へ入る。フィルタダクト27に設けたメッシュフィルタ8aを通り糸屑が取り除かれ(矢印43)、吸気ダクト33に入り、送風ユニット28に吸い込まれる(矢印44)。そして、ヒータ31で再度加熱され、洗濯兼脱水槽3内に吹き込むように循環する。
【0040】
上述の実施形態では、ドラム式洗濯乾燥機に用いられるファンモータについて説明したが、ドラム式ではない所謂縦型洗濯乾燥機や、洗濯機能を持たない衣類乾燥機にも適用できる。
【符号の説明】
【0041】
20 回転子鉄心
21 永久磁石
24 軸挿入穴
28 送風ユニット
28a ファンモータ
28b ファン羽根車
28c ファンケース
52 永久磁石挿入孔
53 回転子磁極
55 吸込口
56 吐出口
57 回転軸
58 回転子
59 固定子