【実施例】
【0071】
実施例1:2重層正孔注入層素子
図6に示す第1実施例に関して、素子100は、最初に、インジウムスズ酸化物(ITO)102から作られるパターンのあるアノードを支持する、ガラス基板を有する(
図6に図示せず)。導電性高分子、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PEDOT:PSS)104からなる正孔注入層104が、インジウムスズ酸化物102上に堆積される。さらに、PEDOT:PSS上に、正孔輸送層(HTL)としての役割を果たす、平均分子量の高いポリ(ビニルカルバゾール)(PVKH)108が堆積される。その後の放射層(EML)110は、リン光放射体種(an phosphorescent emitter species)Ir(ppy)
3を添加された、分子量の低いポリ(ビニルカルバゾール)を有する。バリウムアルミニウムカソード112が、公知の蒸発技術を使用して放射層110上に堆積される。
【0072】
素子の製作が、以下の実験の部で詳細に記述される。素子構造および素子に使用される材料のエネルギー準位図が、
図6の図解に示される。明確な多層構造が偏光解析法を使用して確認され、その全膜厚は2つの個々の膜厚の合計とほぼ等しいことが判った(±3nm)。このことは、第2半導体層110は第1層、すなわち正孔輸送層108の大部分を溶解しないことを示している。トルエンへの高分子量PVK(PVKH)膜の不溶性は、偏光解析法を使用して測定され、それは、1分間トルエン中に浸漬された高分子量PVKの110nmのアニールされた膜が、わずか5nm減少したのみであることを示している。また、層間剥離も認められなかった。それゆえ、2つの層108および110は明確に区別され、可能性として、わずか5nm未満の混合層が予測され得るのみである、とみなすことができる。
【0073】
素子構造中での、様々なPVKH層の層厚(x)下における素子のEL放射;ガラス/ITO/PEDOT:PSS(45nm)/PVKH(xnm)/PVKL:PBD(40%):Ir(ppy)
3(8%)/Ba(4nm):Al(150nm)、が
図7に示される。特に、
図7は、(a)固定EML厚さ45nmでの、可変のHTL(PVKH)層の層厚(0,12,17.4,33nm)、および(b)固定HTL厚さ19nmでの、可変のEML層の層厚(27,38.5,51nm)、における多層素子の正規化ELスペクトルを示す。矢印はスペクトルのシフト方向を示す。
【0074】
より厚いPVKH層108は、放射帯(発光帯)(emission band)の赤色側でELスペクトルの拡がりを示す(
図7a参照)。HTL(PVKH)層108を19nmに固定し、EML層の層厚を変化させると、
図7bに示すように逆の効果が見られる。そのような観測は、通常、ELスペクトルの変化が表面で測定されるところの、光路長の変化による干渉効果に起因する。本例の場合において、ELスペクトルは、ELスペクトルが全方向で平均化される、一体化された球(an integrated sphere)で測定される。同様の傾向が、素子が光学的に励起されたとき(素子PL放射)に観察された。それは空洞干渉効果であると確認される。しかしながら、素子空洞内の放射領域の配置が干渉条件を変化させるので、素子中のキャリアの再結合領域の調節(双極子配置:dipole location)がまた、EL放射プロファイルの一因となり得る。HTL厚さが増加すると、再結合領域が、相対的にアノードよりカソードに近くなり、ELスペクトルの長波長側の赤方偏移(バンド拡大:band broadening)が観察された。一方、固定されたHTL厚さでEML厚さが増加すれば、再結合領域はカソードからより遠くに配置され、ELスペクトル幅は
図7に示したように減少する。放射領域の配置(双極子配置)および高反射率カソード層による部分的干渉効果が、ELスペクトルプロファイル中でこの変化を引き起こし、それが、HTLまたはEML層の厚さが変化したときの放射領域の配置の変化の証拠である。
【0075】
スペクトルの赤色側のELの広がりは、また、ドーパント濃度が増加したとき観察された。それは、ドーパント濃度がまた、ドーパント中の電荷捕捉によって放射領域を変化させ得ることを示している。分子状にドープされた高分子に基づく、有機光放射素子の電気的特性上のPVKH膜の効果を理解するために、EML混合層で、電荷キャリアが発生させられ、輸送され、結合させられる機構に関する知識がまず必要とされる。PVKおよびPBDのみからなる単一EML層素子において、カソードから注入された電子が、主に、PBDによって捕捉され、輸送される。なぜならば、PBDのLUMO準位である−2.4から−2.6eVが、Baの仕事関数の−2.7eVに最も近いからであり、またPBDは効率的な電子輸送材料だからである。アノード側で、PEDOT:PSSの−4.9から−5.2eVに最も近いHOMOエネルギー準位は、−5.6から−5.8eVのPVKのHOMO準位である。これらの素子のEL放射測定は、PBDのLUMO準位の電子とPVKのHOMO準位の正孔との間で形成される、エキシプレックス放射(an exciplex emission)である、430nm(2.88eV)に中心がある放射ピークを示し、それは、PVK分子単位のLUMO−HOMO準位間に形成されるエキシマー(excimer)の特性吸収である400nmに中心がある放射ピークではない。PVK:PBD系の再結合過程は、次の相互作用によって記述され得る。
h(PVK)+e(PBD)→(PVK:PBD)
*→λ=430nmでのエキシプレックス放射
【0076】
この系にIr錯体すなわちIr(ppy)
3をドーピングすることによって、PBDでの電子は、Ir(ppy)
3の最低三重項状態T
1、−2.8eVに強く捕捉され、同様にPVKでの正孔は、Ir(ppy)
3のHOMO準位、−5.22eVで捕捉され、それによって、リン光励起子が発生し、512nm(2.42eV)に中心がある、Ir(ppy)
3からのEL放射のみが観察され、400nmのPVKエキシマーからの、または430nmのエキシプレックスからの放射は観察されなかった(
図7参照)。PVL:PBD:Ir(ppy)
3系の再結合過程は、次の相互作用によって記述され得る。
h(PVK)+e(PBD)+Ir(ppy)
3 → PVK+PBD+Ir(ppy)
3* → λ=512nmでの励起子放射
【0077】
それゆえ、輸送機構は、捕捉充填空間電荷制限電流(trap filling space charge limiting current)(TF−SCLC)である。PVK(しかし高分子量)からまた作製される素子へのHTLの導入は、HTLからEMLへの正孔注入過程を変化させず、しかし、それは、PVKHのHOMO準位の−2から−2.2eVに到達するために、0.4から0.6eVのポテンシャル障壁が、PBDのLUMO準位に配置される電子によって乗り越えられなければならないので、電子遮蔽層(an electron blocking layer)として働く。これらの機構が
図6の図解に示される。EML混合層中で、輸送および結合機構に関与する、2つのタイプの電子と正孔があることが指摘されるべきである。それらは、輸送すなわち電流−電圧(I−V)特性に関与する自由キャリア(free carriers)(電子および正孔)、および再結合すなわちEL特性に関与する捕捉されたキャリア(trapped carriers)である。素子効率は、2つの機構の組み合わせに注入によるキャリア発生を加えたものである。
【0078】
異なるHTL厚さを持つ素子の電気的特性が
図8および9に示される。
図8は、次の3つの素子状態の電流−電圧(I−V)特性、および差し込み図として電流−電界(I−F)特性を示す。(i)EMLの低Ir錯体ドーパント濃度(2%w/w)を持つ可変のHTL厚さ;(ii)EMLの最適Ir錯体ドーパント濃度(8%w/w)を持つ可変のHTL厚さ、および(iii)固定されたHTL(19nm)および可変のEML(27−51nm)。最初の2つのグラフ、
図8(i)および8(ii)は、可変のHTL厚さでの素子特性におけるドーパント濃度の効果の研究である。3番目の(iii)は、EML厚さの効果を示す。HTL厚さが増加すると、
図8(i)および8(ii)の素子電流は減少し、関連した外部量子効率(EQE%)および電流効率(cd/A)は増加する(
図9参照)。この特性は、励起子の発生確率を増加させることを示している。より厚いPVKH素子で測定されたより低い電流密度は、電子遮断が、より効率的な励起子発生を生じさせる錯体サイト(complex sites)での、捕捉確率を増加させることを示す。放射層(PVKL:PBD:Ir(ppy)
3)の電子移動度は、PBD(2×10
−5cm
2/Vs)によって支配され、HTL(PVKH)の正孔移動度より高い(測定されたPVK正孔移動度は、4.8×10
−9から10
−6cm
2/Vsの範囲であり、電界強度に依存する)。HTLおよびEML両者ともPVKから作られているので、それゆえ、この構造は、支障なく素子を横断する円滑な正孔輸送の利益を享受し、一方、PBDおよびIr錯体による電子輸送は、PVKのより高いLUMOのために、PVKH層によって阻止される。それゆえ、励起子の発生をより上昇させる、PVKHとPVKL:PBD:Ir(ppy)
3の界面での電子の蓄積が予期され、素子性能の著しい増大が得られ得る。PVKHはまた、PEDOTによるクエンチングを防止する電極から離れた、EML層内に制限された放射域を維持する。HTL(PVKH)厚さの増加に伴って、放射領域中に電子はより蓄積し、PVKH層を横断する高い局所電場(local field)を発生させ、素子の破壊にいたる。その破壊電圧(breakdown voltage)はHTL層の層厚に非常に依存し、素子の厚さを30nm未満に制限する。
【0079】
PVKH層は、正孔輸送に対する抵抗も増加するので(PVK正孔抵抗率は約10
9Ωcmである)、それゆえ、電子集団(electron population)は正孔の数より多く、素子効率は減少傾向となる。
図8の差し込み図のように、電界強度の関数として電流をプロットすると、素子動作領域(device operating field)が、多層素子の場合に、より低くなることが認められる。これは、励起子閉じ込めによる素子性能の増大を示している。
図8(i)の低Ir錯体濃度において、I−F特性は、HTLを持つ2重層と持たない2重層との間で、プロナウンス差異(pronounce difference)を示す。ターンオン電界(turn−on field)はPVKH厚さに依存しない。これは、Ir(ppy)
3捕捉励起子の、および、さらなる任意の、より厚いPVKHで阻止された電子の飽和のためであり、それらは、発生する励起子の数に寄与しない。より高いIrドーパント濃度(高捕捉状態密度(high trap state density))において、PVKH層の層厚の増加は、より多くの電子を阻止し、励起子集団(exciton population)が連続的に増加する結果をもたらし、それは、ターンオン電界で、より低い値への緩やかな移行を示す(
図8(ii)差し込み図)。一方、もし、固定されたIr錯体濃度(より高い値8%w/w)で放射層厚さが増加すれば、キャリアが反対の電極に到達する前に、励起子を形成するより高い確率のために、励起子の発生確率も増加する。しかし、ターンオン電界は異なるEML厚さで同じであるように見える。これらの特性は、ターンオン電界上のPVKHの影響を確かなものとし、したがって、発明に係る素子の効率を確かなものとしている。
【0080】
23cd/Aの電流効率は、PVKH層の層厚が18から25nmの間、およびPVKL:PBD:Ir(ppy)
3の放射層厚さ45nmで得られた(
図9参照、
図9は、
図6に示される溶解処理多層素子構造の、電流密度(mA/cm
2)の関数としての、a)外部量子効率、b)素子電流効率(cd/A)、c)明度(cd/m
2)、およびd)電力効率(L/W)、を示す)。HTLはターンオン電圧を顕著には増加させず、それは、EML厚さのみがターンオン電圧を制御することを示す。しかしながら、6.5L/Wの電力効率は、正孔注入に対する、PEDOT:PSSとPVK(Δφ=0.6eV)間の大きな障壁高さに関係する、8Vより大きい高ターンオン電圧によって制限された。界面でのPBDとPVKHとの間のエネルギー障壁は、また、わずかにターンオン電圧に寄与し得るが、この障壁は、励起子を閉じ込めるために必要である。
図9cに示される7000cd/m
2の制限された明度は、異なるHTL厚さでの全素子に対して、明度のIr(ppy)
3濃度への依存を反映し、放射性励起子(emissive exciton)の飽和を示す。しかしながら、より厚いEML層(100nm)で、明度は13000cd/m
2に増加するが、素子効率は14cd/Aに降下し、EQEは4%となり、素子性能は、個々のパラメーターよりむしろ、明度×素子電流効率によって記述されるべきことを示している。素子明度の増加は、放射性励起子の濃度のみに依存するのではなく、空洞最適化、ならびに三重項励起子クエンチング(三重項−三重項消滅および三重項−ポーラロンクエンチング(triplet−polaron quenching))および電場誘起クエンチングのような他のクエンチング過程にも依存する。
【0081】
電極による励起子クエンチングのHTLの効果は、また、時間分解蛍光光子計数(time resolve fluorescence photon counting)を使用して研究された。時間分解光子計数(time resolved photon counting)を使用してクエンチング強度を見積もるために、ポリ−スピロビフルオレン(poly− spirobifluorene)(PSF)が放射層として選択された。この蛍光材料は、選択的励起波長が、第2高調波Ti−サファイアレーザー(Ti−sapphire laser)(372nm)によって供給され得るので、また、その蛍光寿命が光子計数時間分解範囲(photon counting time resolve range)(5ps−3ns)内であるので、選択された。電極または他の高分子層と相互作用しない、薄膜PSFの蛍光減衰寿命は約1nsである。異なる素子層と相互作用するPSFは、放射層のクエンチングで様々な相互作用の効果を設定できる。異なる試料構成が下表1に示すように提供される。Ba/Alカソードを持つ素子構造がまた、カソード(Ba/Al)によるクエンチングを決定するためにバイアスをかけることなく、試験された。試料は、ガラス側からのレーザー光線によって光を当てられた(
図10差し込み図参照)。励起パルス波長は372nmで選択された。PVKHはこの波長で吸収を持たないが、PSFはこの波長で吸収ピークを持つので、レーザーパルスが、選択的にPSFのみを励起する。
【0082】
図10は、様々な試料構成に対するPSFの蛍光強度減衰を示す。上記したように、励起波長は372nmであり;放射波長は420nmであった。
図10の差し込み図は、素子構造および光子計数設定を示す。
【0083】
減衰プロファイルが、3つの別々の指数成分を持つグローバル分析(Globals analysis)を用いて適合させられた。この分析は、他の層と接している界面における、PSFのクエンチングを反映する高速減衰成分を、接触領域から離れて配置されるPSFの非クエンチ(unquenched)側を反映する低速減衰成分から分離することが必要である。
【0084】
図11は、異なる試料構成に対する3つの減衰成分を示す。特に、この図は、異なる試料構成に対する蛍光時間分解分析の結果を示す。3つの別々の指数項が、減衰プロファイルを適合させるために用いられた。
【0085】
【数1】
ここで、a
iはt=0での成分iの振幅を表す。τ
iは成分iの減衰時間である。χ
2は適合の質(quality of fit)である。平均蛍光寿命は下記式を用いて得られる。
【0086】
【数2】
【0087】
約1nsの最低速減衰(slowest decay)成分は、接触の型によってほんのわずかに影響される非クエンチPSFを表す。他の2つの成分は、隣接する層によって強く影響を受ける。20ps未満の最速成分は、Baカソードを持つ素子構造を除いて、全ての異なる界面で同じである。このことは、この成分はカソードによってのみ影響されることを暗示している。約250から400psの中間の成分は、金属電極クエンチングの効果を明瞭に示している。HTLは、PEDOT:PSSによってPSFクエンチングをわずかに減少させる。このことは、HTLの効果は、電極またはPEDOT:PSSによるクエンチングの防止よりむしろ、主に、励起子の閉じ込めによるものであることを暗示している。0Vバイアスでの素子構造中のBaカソードによるクエンチングは、さらなる電子輸送層(ETL)の導入が、カソードによるクエンチングの防止、および電子注入を促進することの両者によって素子性能を増加させ得ること、を示唆している。
【0088】
結論として、光放射素子を基礎とする、多層全溶解処理性高効率高分子の、単純で一般的な適用方法が、実証された。正孔輸送、電子遮蔽層として高分子量PVKを使用することによって、リン光発生域(phosphorescent zone)で励起子集団の増加をもたらす、効果的な電子遮断が達成された。最上層でのホスト材料としての低分子量PVKの使用は、PEDOTからEMLへの正孔輸送に対する障壁形成を防止し、正孔の連続性(hole continuity)を維持する。さらに、HTLは、EMLがPEDOTと接触するのを防ぐ。高分子量PVKは、多くの溶媒に対して高い抵抗力を持ち、そのため、層の混合を減少させるために、最上層の溶媒を適切に選択することが重要である。23cd/Aより大きい高い素子電流効率に適合させるために、増加させることができる乏しい正孔注入のために、電力効率は悪い(poor)。
【0089】
実験の詳細:
PVKが良好な正孔輸送高分子であることはよく知られている。加えて、PVKはまた、その高い三重項エネルギー準位2.6−2.7eVのために、多くのリン光ドーパントに対するホスト材料として広く使用されている。
【0090】
全ての素子は、インジウムスズ酸化物(ITO)が塗布され、シート抵抗が20Ω/□である、厚さ125nmのガラス基板上に作製された。Bayer A.G. ドイツ、から市販されている、ポリスチレンスルホン酸中のポリ(3,4−エチレンジオキシ−チオフェン)(PEDOT:PSS)が、2段階でスピンコートされた;500rpmで10秒間、つづいて2500rpmで60秒間行い、〜40nm厚さの正孔輸送層(HTL)が作製された。これらのHTL塗布基板は、次に、全ての残存水を取り除くために、ホットプレート上、200℃で3分間アニールされた。様々な濃度(mg/mL)の、高分子量ポリ(ビニルカルバゾール)PVKH(Mw1,100,000)のクロロベンゼン溶液が、正孔輸送材料として12−52nmを得るために、2500rpmでスピンコートされた。この第2層は、溶媒を取り除くために120℃で10分間アニールされ、室温まで冷却された。電荷キャリア輸送を釣り合わせるための電子輸送材料としての、および8%w/wのIr錯体が添加された、40%wwの2−(4−ビフェニル)−5−(4−tert−ブチル−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)を有する、低分子量PVKL(Mw=43000)、のトルエン溶液が調製された。その溶液は、2.5mmのポアフィルター(pore filter)でろ過され、正孔輸送層PVKH上に2500rpmでスピンコートされ、120℃で10分間ベークされた。この層は光放射層(EML)としての役割を果たす。各試料は、面積4×12mmの2つの同一の素子を作製するために、シャドーマスクが貼り付けられた;試料は、次に、窒素グローブボックスに入れられ、そこで、4nmのバリウムカソードが、圧力約1×10
−6mmHgの減圧下で、〜1オングストローム/sの速度で、素子上に蒸着された。これは、つづいて、同じ蒸着条件下に150nmのアルミニウムのキャッピング層(capping layer)が堆積させられた。同様の方法が、J.A.Woollam 偏光解析器(ellipsometer)を使用した膜厚測定で、SiSiO
2基板上に、単層PVKH(クロロベンゼン)およびPVKL(トルエン)、ならびに2重層PVKH(クロロベンゼン)/PVKL(トルエン)、を作製するために用いられた。
【0091】
電流−電圧(I−V)特性および放射強度(発光強度)が、Agilent Technologies 6632B電力供給装置を制御する、ホーム−リトン(home−written)のNI LabViewプログラムを使用して制御されたデータ収集とともに、目盛り付き積分球で測定された。電界発光(EL)スペクトルは、400mmのUV/Vis光ファイバー付きの、Ocean Optics USB 4000 CCD分光計を使用して測定された。
【0092】
EML蛍光効率上のHTLの効果は、時間分解蛍光光子計数を使用して測定された。372nmの励起波長は、76MHzで動作するTi−サファイアレーザーの第2調和振動数から発生させられた。トルエンに溶解したポリスピロビフルオレン(PSF)はまた、PVKH層上にスピンコートできる、EML層としても使用された。一連の異なる多層構成が、
図11に示すように、ガラスまたはガラス/ITO基板上に調製された。
【0093】
実施例2:2重層白色光放射素子
多層有機素子の具体的な第2実施例の構造が、
図12から14に示される。この実施形態は、背面照明または全般照明アプリケーション用の、白色光発生のための、いわゆる多色有機LEDを形成する。
【0094】
この実施形態で発生する白色光は、3つの飽和色(青色、緑色および赤色)の代わりに、2つの不飽和色(青色−緑色および黄色放射)のみを有する。素子構造は、実施例1に記載された順と類似の層構造を有する。第1実施例の正孔輸送層(HTL)が、ここで、クロロベンゼン溶液からスピンコートされた、ホスト材料(PVKH)、電子輸送材料、および黄色放射ドーパントの混合物を有する、黄色放射層(EML1)を形成するために使用された。ホスト材料(PVKH)は、第2層の溶媒に対するPVKHの抵抗力の喪失を避けるために、好ましくは、20%w/w未満の低濃度電子輸送材料と混合される。第2層(EML2)は青色−緑色放射層を形成し、トルエン溶液からスピンコートされた、ホスト材料(PVKL)、電子輸送材料、およびFirpic familyの1つのような青色放射ドーパントの混合物を有する。
【0095】
したがって、この第2実施例の素子構造は次の通りである:ガラス/ITO(120nm)/PEDOT:PSS(65nm)/PVKH:OXD−7(20%w/w未満):黄色放射錯体/PVKL:OXD−7(30%w/w):青色放射錯体。Ba(4nm)/Al(100nm)。この素子の結果として生じるEL放射は
図13に示される。
【0096】
2つの層(EML1とEML2)の厚さは、ここで、光出力結合(optical output coupling)を最適化するように選択され得る。望ましい白色放射のために、PVKH層の層厚は50から160nmの間であるべきであり、PVKL層の層厚は10から50nmの間であるべきである。PVKHおよびPVKLの厚さの異なる組み合わせが、(0.33,0.33)に近いCIEコーディネイトで、最高素子効率を得るために、SETFOS3.1を用いて試験された。その結果が
図14に示される。この図から推測できるように、白色CIE:x=0.32、y=0.35が、PVKH層の層厚120nmおよびPVKL層の層厚30nmで得られた。