特許第5732473号(P5732473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5732473-ジルコニア顆粒を含む粉末 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732473
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ジルコニア顆粒を含む粉末
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/48 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   C04B35/48 C
【請求項の数】17
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-545516(P2012-545516)
(86)(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公表番号】特表2013-515666(P2013-515666A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】IB2010055993
(87)【国際公開番号】WO2011077381
(87)【国際公開日】20110630
【審査請求日】2013年11月13日
(31)【優先権主張番号】0959581
(32)【優先日】2009年12月24日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511104875
【氏名又は名称】サン−ゴバン サントル ド レシェルシュ エ デテュド ユーロペアン
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】ボキャレリ,アンリ
(72)【発明者】
【氏名】ナハ,ナビル
【審査官】 原田 隆興
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−515665(JP,A)
【文献】 特開2002−249382(JP,A)
【文献】 特開2006−328435(JP,A)
【文献】 特開2009−269812(JP,A)
【文献】 特開2004−269331(JP,A)
【文献】 特開平07−082019(JP,A)
【文献】 特開2011−251901(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0115084(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒を含む粉末であって、前記粉末が、乾燥物質に基づいて、重量による以下の化学組成:
− 100%となるまでの残分のZrO
− Y、Sc、MgO、CaO、CeO、およびそれらの混合物から形成される群から選択されるジルコニア安定剤であって、ジルコニアおよび安定剤の含有量の合計を基準とした安定剤の重量による含有率は、2.0%〜20%の間であり、MgO+CaOの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の含有量の合計を基準として5.0%未満である、ジルコニア安定剤;
− 少なくとも1.0%の、25℃以下のガラス転移温度を示す第1のバインダー;
− 0〜4.0%の、25℃より高いガラス転移温度を示す追加のバインダー;
− 0〜5.0%のアルミナ;
− 第1のバインダーおよび追加のバインダー以外の0〜4.0%の一時的添加剤であって、前記第1のバインダー、前記追加のバインダーおよび前記一時的添加剤の合計含有率が9.0%未満である、一時的添加剤;
− 2.0%未満の不純物;
を示し、
前記顆粒のメジアン直径D50が80〜130μmの間であり、パーセンタイルD99.5が500μm未満であり、前記顆粒の相対密度が30%〜60%の間である、
粉末。
【請求項2】
− 前記安定剤が、Y、Sc、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、前記安定剤の含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有の合計を基準として6.5%未満である;または
− 前記安定剤が、MgO、CaO、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、前記安定剤の含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有の合計を基準として4%未満である;または
− 前記安定剤がCeOであり、前記安定剤の含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有の合計を基準として10%を超えかつ15%未満である、
請求項1に記載の粉末。
【請求項3】
前記安定剤が、Y、CeO、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、10%≦3.Y+CeO≦20%の関係に従い、上記重量による含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有量の合計を基準として表される、請求項1に記載の粉末。
【請求項4】
が単独の安定剤であり、Yの含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有の合計を基準として3%を超えかつ6.5%未満である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項5】
− 前記安定剤がYであり、
− 前記安定剤の含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有の合計を基準として4.5%〜5.5%の間であり、
− 前記アルミナの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.1%を超えかつ1%未満であり、
− 第1のバインダーの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で2.5%〜4%の間であり、
− 不純物の含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満であり、
− 残留含水率が、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項6】
− 前記ジルコニア安定剤がCeOであり、
− 前記安定剤の含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有量の合計を基準として10%〜15%の間であり、
− 前記アルミナの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.1%を超えかつ1%未満であり、
− 第1のバインダーの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で2.5%〜4%の間であり、
− 不純物の含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満であり、
− 残留含水率が、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間である;または
− 前記ジルコニア安定剤がYとCeOとの混合物であり、
− 前記Yの含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有量の合計を基準としてパーセント値で1%〜2%の間であり、
− 前記CeOの含有率が、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有量の合計を基準としてパーセント値で11%〜13%の間であり、
− 前記アルミナの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.1%を超えかつ1%未満であり、
− 第1のバインダーの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で2.5%〜4%の間であり、
− 不純物の含有率が0.5%未満であり、
− 残留含水率が、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間である;
請求項1または3に記載の粉末。
【請求項7】
前記顆粒が、前記ジルコニアが安定化されている粒子を含む;および/または
前記顆粒が、メジアン直径D50が1μm未満であるジルコニア粒子を含む;および/または
前記顆粒がアルミナAlを含み、前記アルミナの含有率が、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.2%を超えかつ0.6%未満である;
請求項1〜6のいずれか一項に記載の粉末、ここで該顆粒は粒子の凝集体である
【請求項8】
前記第1のバインダーが−30℃より高くかつ15℃未満のガラス転移温度を示す、請求項1〜7のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項9】
前記第1のバインダーが、非晶質有機ポリマー、ポリアクリル樹脂、純粋なアクリレートに基づくポリマー、アクリレートとスチレンとに基づくコポリマー、およびそれらのブレンドから選択される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項10】
前記第1のバインダーおよび/または前記追加のバインダーが、無機元素を含まないポリマーから選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項11】
前記一時的添加剤が有機添加剤であり、前記有機添加剤の含有率が1%未満であり、バインダーおよび有機添加剤の合計含有率が5%未満であり、前記有機添加剤が、分散剤または界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項12】
前記安定剤の少なくとも一部が、前記安定剤の前駆体の同等量で置換されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項13】
前記顆粒のメジアン直径D50が90μmを超えかつ120μm未満である;および/または
前記顆粒の10パーセンタイルD10が40μmを超える;および/または
前記顆粒の90パーセンタイルD90が300μm未満である;および/または
前記顆粒の99.5パーセンタイルD99.5が400μm未満である、
請求項1〜12のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項14】
残留含水率が、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間である、請求項1〜4および7〜13のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項15】
前記顆粒の80%超が前記化学組成を示す、請求項1〜14のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項16】
前記ジルコニア、前記アルミナ、前記第1のバインダー、前記追加のバインダー、および前記一時的添加剤が、前記粉末の前記顆粒中に均一に分散されている、請求項1〜15のいずれか一項に記載の粉末。
【請求項17】
焼結部品の製造方法であって:
A)請求項1〜16のいずれか一項に記載の顆粒を含む粉末を含む出発投入材料を形成するために、出発物質を混合する段階であって、前記顆粒を含む粉末が、前記出発投入材料の重量の少なくとも60%を占める段階と、
B)前記出発投入材料からプリフォームを形成する段階と
)前記焼結部品を得るように前記プリフォームを焼結する段階
含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニアを主成分とする顆粒を含む粉末、そのような顆粒の製造方法、およびそのような顆粒から得られる焼結部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアを主成分とする焼結部品では、機械的強度は、部品中の欠陥の量とともに減少し、密度とともに増加する。
【0003】
特開平8−217448号公報には、焼結後の密度および3点曲げ強度を増加させるための、ジルコニアを主成分とする顆粒の使用が記載されている。これらの顆粒は、1リットル当たりの重量が0.08〜1.2g/cmの間に調節されたスリップの噴霧によって得られる。この1リットル当たりの重量は、激しく撹拌することによって、あるいは起泡剤または発泡防止剤の使用によって調節される。乾燥物質のパーセント値として3%のアクリル樹脂をスリップに加えることも実施例に開示されている。これらの顆粒は、0.01〜0.2mmの間の直径、および約60ミクロンのメジアン直径を示す。これらは、プリフォームの製造中に金型に好適に充填することができ、成形圧力の作用下で変形する能力を示し、それによって、プレス加工後のプリフォーム中に存在する欠陥数を制限することができる。
【0004】
しかし、特開平8−217448号公報に記載の顆粒は、大きな寸法の部品の製造、特に100cmを超える体積の部品の製造には適していない。その理由は、特開平8−217448号公報に記載の顆粒から得られる大きな寸法の部品は、焼結後、中心部に亀裂を示し、主として剥離欠陥である表面欠陥をも示すことがあるためである。
【0005】
ジルコニアを主成分とし、体積が100cmを超え、特にすべての寸法が2cmを超え、良好な機械的性能および高密度を有する焼結部品の製造が可能となる粉末が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つはこの要求を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特にセラミック焼結部品の製造が意図された顆粒を含む粉末であって、前記粉末は、乾燥物質に基づいて、重量による以下の化学組成:
− 100%となるまでの残分のZrO
− Y、Sc、MgO、CaO、CeO、およびそれらの混合物から形成される群から選択されるジルコニア安定剤であって、ジルコニアおよび安定剤の含有の合計を基準とした安定剤の重量による含有率は、2.0%〜20%の間であり、MgO+CaOの重量を基準とした含有率は、ジルコニアおよび安定剤の含有の合計を基準として5.0%未満であり;
− 少なくとも1.0%の、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を示す第1のバインダー;
− 0〜4.0%の、25℃より高いガラス転移温度を示す追加のバインダー;
− 0〜5.0%のアルミナ;
− 第1のバインダーおよび追加のバインダー以外の0〜4.0%の一時的添加剤であって、前記第1のバインダー、前記追加のバインダーおよび前記一時的添加剤の合計含有率が9.0%未満である、一時的添加剤;
− 2.0%未満の不純物;
を示し、
前記顆粒のメジアン直径D50が80〜130μmの間であり、パーセンタイルD99.5が500μm未満であり、顆粒の相対密度が30%〜60%の間である、粉末を提供する。
【0008】
好ましくは、80%を超え、90%を超え、さらには実質的に100%の顆粒が、本発明の粉末の組成による組成を示す。
【0009】
本明細書の説明の続きでより詳細に示されるように、本発明者らは、第1のバインダーと、追加のバインダーと、一時的添加剤との全含有率が9.0%未満に制限されるのであれば、本発明による顆粒の特定のサイズ分布によって、優れた機械的性能を得ることが可能なことを発見した。これは本発明者らが、メジアン直径に比例してバインダー含有率が増加する通常の実施に反して、請求されるメジアン直径範囲において、第1のバインダーの含有率を比較的低く維持することが好都合なことを発見したからである。特に、本発明者らは、第1のバインダーの含有率のこの制限によって、永久的な内部欠陥、すなわち前記顆粒をプレス成形することによって得られるプリフォームの焼結中に除去されない欠陥の発生が制限されることを発見した。
【0010】
本発明者らは、グリーン状態における機械的強度を改善するために高いガラス転移温度を示すバインダーを加える通常の実施に反して、25℃未満のガラス転移温度を示すバインダーを選択すると好都合であることをも見いだした。これは、本発明者らは、この種類のバインダーがプレス成形中の顆粒の変形を促進するが、グリーン状態におけるそれらの機械的強度を容認できないほど低下させることはないことを発見したからである。
【0011】
低いガラス転移温度を示すバインダーの使用は、グリーン状態における機械的強度がバインダーのガラス転移温度とともに低下すると考えることによる技術的予想とは逆になっている。
【0012】
本発明による粉末は、以下の任意選択で好ましい性質の1つ以上をも含むことができる:
【0013】
− 顆粒の相対密度は40%〜50%の間である。
【0014】
− 前記安定剤の含有率は、ZrO、Y、Sc、MgO、CaO、およびCeOの合計を基準として、15%未満、好ましくは12%未満、好ましくは10%未満、好ましくは8%未満、好ましくは6.5%未満、かつ/または4%を超える。
【0015】
− 前記安定剤の含有率、ジルコニアおよび安定剤の含有率の合計を基準として、15%未満、好ましくは12%未満、好ましくは10%未満、好ましくは8%未満、好ましくは6.5%未満、かつ/または4%を超える。
【0016】
− 顆粒は、メジアン直径が0.8μm未満、好ましくは0.5μm未満である前記安定剤の粒子を含む。
【0017】
− 前記安定剤の少なくとも一部は、同等量の前記安定剤の前駆体で置換される。
【0018】
− 顆粒は、メジアン直径(D50)が1μm未満、好ましくは0.8μm未満、さらには0.5μm未満であるジルコニア粒子を含む。
【0019】
− 顆粒はアルミナAlを含み、アルミナの含有率は、好ましくは0.1%を超え、好ましくは0.2%を超え、かつ/または2%未満、好ましくは1%未満、より好ましくは0.6%未満である。
【0020】
− 第1のバインダーは、−30℃より高く、かつ/または20℃未満、好ましくは15℃未満のガラス転移温度を示す。
【0021】
− 第1のバインダーは、非晶質有機ポリマー、ポリアクリル樹脂、純粋なアクリレートに基づくポリマー、アクリレートおよびスチレンに基づくコポリマー、ならびにそれらのブレンドから選択される。好ましくは、第1のバインダーは、ポリアクリル樹脂、純粋なアクリレートに基づくポリマー、アクリレートおよびスチレンに基づくコポリマー、ならびにそれらのブレンドから選択される。より好ましくは、第1のバインダーは、ポリアクリル樹脂、アクリレートおよびスチレンに基づくコポリマー、ならびにそれらのブレンドから選択される。
【0022】
− 好ましくは、ジルコニアおよび/または第1のバインダーおよび/または追加のバインダーおよび/または一時的添加剤、好ましくはジルコニアおよび第1のバインダーおよび追加のバインダーおよび一時的添加剤は、粉末の顆粒中に均一に分散する。
【0023】
− 第1のバインダーおよび/または追加のバインダーは、無機元素を含まないポリマーから選択される。
【0024】
− 一時的添加剤の含有率は1%未満である。好ましくは、一時的添加剤は、分散剤または界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、潤滑剤、およびそれらの混合物から好ましくは選択される有機添加剤である。
【0025】
− 不純物の含有率は、1.0%未満、好ましくは0.5%未満、さらには0.3%未満、さらには0.1%未満である。好ましくは、不純物は酸化物である。
【0026】
− 粉末のメジアン直径(D50)は90μmを超え、かつ/または120μm未満である。
【0027】
− 10パーセンタイル(D10)は、40μmを超え、好ましくは50μmを超え、より好ましくは60μmを超える。
【0028】
− 90パーセンタイル(D90)は、300μm未満、好ましくは250μm未満、より好ましくは200μm未満である。
【0029】
− 99.5パーセンタイル(D99.5)は、400μm未満、より好ましくは300μm未満である。
【0030】
好都合な一実施形態では、安定剤はY、Sc、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、前記安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として6.5%未満である。
【0031】
好都合な一実施形態では、安定剤はMgO、CaO、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、前記安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として4%未満である。
【0032】
好都合な一実施形態では、安定剤はCeOであり、前記安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として、10%を超えかつ15%未満である。
【0033】
好都合な一実施形態では、安定剤はY、CeO、およびそれらの混合物から形成される群から選択され、好ましくはジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準としたパーセント値で10%≦3.Y+CeO≦20%の関係に従う。
【0034】
好都合な一実施形態では、安定剤はYであり、すなわち顆粒は安定剤としてYのみを含む。特にこの実施形態では、Yの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として好ましくは3%を超え、好ましくは4%を超え、好ましくは4.5%を超え、かつ/または6.5%未満、好ましくは5.5%未満である。
【0035】
顆粒は、安定化ジルコニア、あるいは安定化または非安定化ジルコニア粒子および前記安定剤粒子の混合物、あるいは安定化または非安定化ジルコニアと前記安定剤とが均質に混合された粒子の混合物を含むことができる。一実施形態では、顆粒は、安定化または非安定化ジルコニアと安定剤とが均質に混合された粒子を含む。好ましくは、顆粒は、ジルコニアが安定化された粒子、すなわち安定剤がジルコニア粒子中の固溶体中に存在する粒子を含む。好ましくは、顆粒は、安定化ジルコニアとアルミナとが均質に混合された粒子を含む。
【0036】
第1の特定の実施形態では、安定剤はYであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として4.5%〜5.5%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0037】
第2の特定の実施形態では、安定剤はYであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として4.5%〜5.5%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0038】
第3の特定の実施形態では、安定剤はYであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として4.5%〜5.5%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、一時的添加剤の含有率は0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0039】
第4の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はCeOであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として10%〜15%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0040】
第5の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はCeOであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として10%〜15%の間であり、アルミナの含有率は、0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0041】
第6の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はCeOであり、安定剤の含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として10%〜15%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、一時的添加剤の含有率は0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0042】
第7の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はYとCeOとの混合物であり、Yの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として1%〜2%の間であり、CeOの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として11%〜13%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0043】
第8の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はYとCeOとの混合物であり、Yの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として1%〜2%の間であり、CeOの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として11%〜13%の間であり、アルミナの含有率は0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0044】
第9の特定の実施形態では、ジルコニア安定剤はYとCeOとの混合物であり、Yの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として1%〜2%の間であり、CeOの含有率は、ジルコニアおよび安定剤の重量による含有率の合計を基準として11%〜13%の間であり、アルミナの含有率は、0.1%を超えかつ1%未満、好ましくは0.25%に実質的に等しく、第1のバインダーの含有率は2.5%〜4%の間であり、追加のバインダーの含有率は0.5%〜2%の間、好ましくは0.5%〜1%の間であり、一時的添加剤の含有率は0.5%〜1%の間であり、不純物の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で0.5%未満、好ましくは0.1%未満であり、残留含水率は、湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で0.2%〜1%の間、好ましくは0.2%〜0.6%の間である。
【0045】
好ましくは、本発明による粉末は、スリップの噴霧によって、好ましくは後述の段階a)〜d)を含む方法により製造される。
【0046】
このような方法は、好都合には、60%未満、さらには50%未満の相対密度を示す顆粒の製造が可能となる。
【0047】
本発明は、焼結部品の製造方法であって:
A)出発投入材料を形成するための出発物質を混合する段階と、
B)プリフォームを得るために前記出発投入材料を成形する段階と、
C)場合により前記プリフォームを機械加工する段階と、
D)前記焼結部品を得るように前記プリフォームを焼結する段階と、
E)場合により、前記焼結部品の機械加工および/または粉砕を行う段階と
を含む方法にも関し、
この方法は、出発投入材料が本発明による顆粒を含む粉末を含むことが注目される。
【0048】
本発明は、本発明による製造方法の少なくとも段階A)およびB)、さらにはC)を含む方法を実施することによって得られるプリフォームにも関する。
【0049】
本発明は、本発明によりプリフォームを焼結し、場合により機械加工して得られるセラミック焼結部品にも関する。特に、焼結部品の全ての寸法が2cmを超えることができる。
【0050】
定義
− 「バインダー」は、乾燥後に、破壊が生じることなく、取り扱いが可能となる、たとえばある容器から別の容器に移すことが可能となる、または金型中に入れることが可能となる(特に工業条件下で)凝集力を示す顆粒を形成することが、好適な量で、造粒作業中に可能となる構成要素を意味するものと理解される。好ましくは、この凝集力は、少なくともポリマーバインダーを使用して得られるものである。造粒作業は、限定されず、特に噴霧または造粒機の使用を含む。したがって、本発明は、噴霧によって製造された顆粒に限定されるものではない。
【0051】
− 「一時的添加剤」は、1000℃以上の温度にさらされたとき、たとえば1000℃以上の温度における焼結作業中に、除去される構成要素を意味するものと理解されたい。
【0052】
− 構成要素の前駆体は、本発明による粉末から得られたプリフォームの焼結中に、その構成要素を得ることができる化合物である。この構成要素の前駆体の「同等」量を、構成要素の代わりに使用すると、本発明による粉末を焼結することによって得られる焼結製品中の前記構成要素の量は変化しない。
【0053】
− 「不純物」は、不本意でありやむを得ず出発物質とともに導入されるか、これらの構成要素との反応によって生じるかである不可避の構成要素を意味するものと理解される。不純物は、必要な構成要素ではなく、単に許容される構成要素である。
【0054】
− 「顆粒」は、粒子の凝集体を意味するものと理解され、前記凝集体は0.6を超える球形度指数を示し、すなわち実質的に球形で提供される。
【0055】
− 顆粒の「球形度指数」は、その最小直径のその最大直径に対する比を意味するものと理解され、この直径は、たとえば10倍の倍率の光学顕微鏡法によって撮影された写真上で測定される。
【0056】
− 顆粒を含む粉末の「ゆるめかさ密度」(loose packed density)は、体積が既知の前記粉末の重量を前記体積で割って得られる値に等しい比を意味するものと理解され、この体積は、振動を避けながら粉末を自由落下させることによって満たされる。ゆるめかさ密度は規格NF EN 725−9に準拠して測定され、g/cmの単位で表される。
【0057】
− 顆粒を含む粉末の「絶対密度」は、閉気孔が全く残留しなくなるように微細に粉砕した後の前記粉末の乾燥物質の重量を、粉砕後のこの重量の体積で割った値に等しい比を意味するものと慣習的に理解されている。これはヘリウム比重測定法によって測定することができる。
【0058】
− 顆粒を含む粉末の「真密度」は、この粉末の各顆粒のかさ密度の平均を意味するものと理解される。
【0059】
− 顆粒の「かさ密度」は、顆粒の重量を、前記顆粒が占める体積で割った値に等しい比を意味するものと慣習的に理解されている。
【0060】
− 顆粒を含む粉末の「相対密度」は、真密度を絶対密度で割った値に等しい比を意味するものと理解され、パーセント値で表される。
【0061】
− バインダーの「ガラス転移温度」は、前記バインダーが徐々により粘稠になり液体状態から固体状態に変化する「転移領域」として知られる温度範囲の中央を意味するものと慣習的に理解されている。ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって測定することができる。主要な種類のポリマーのガラス転移温度の一覧が、Polymer Handbook(4th edition)1999;2005 John Wiley & Sonsに示されている。転移範囲の広さは、慣習的には約5〜10℃である。
【0062】
− 粉末の10(D10)、50(D50)、および90(D90)のパーセンタイルまたは「百分位数」は、粉末の粒度の累積粒度分布曲線上のそれぞれ10%、50%、および90%の重量パーセント値に対応する粒度であり、粒度は、増加する順序で分類される。たとえば、粉末の顆粒の10重量%は、D10未満の粒度を有し、顆粒の90重量%はD10よりも大きい粒度を有する。粒度およびパーセンタイルは、レーザー粒度測定器を使用して得られる粒度分布を用いて決定することができる。50パーセンタイルD50は、慣習的に「メジアン直径」とも呼ばれている。
【0063】
− 「有機構成要素」は、炭素、酸素、窒素、および水素の元素のみを含む構成要素を意味するものと慣習的に理解されている。
【0064】
− ジルコニア粒子源中では、HfOをZrOから化学的に分離することができない。したがって「ZrO」は、慣習的に、これら2つの酸化物の全含有率を意味する。本発明によると、HfOは、出発投入材料に故意に加えられることはない。したがってHfOは、微量の酸化ハフニウムのみを意味し、この酸化物は常に5%未満、さらには2%未満の含有率でジルコニア源中に本来存在する。したがって明確にするために、ジルコニアおよび微量の酸化ハフニウムの含有率は、区別することなく、「ZrO+HfO」または「ZrO」または「ジルコニア含有率」によって表すことができる。
【0065】
特に明記しない限り、「1つを含む」は、「少なくとも1つを含む」と理解すべきである。
【0066】
「第1のバインダー」(または「追加のバインダー」)は、ちょうど1種類の化合物に必ずしも相当するのではなく、それぞれが25℃以下(またはそれぞれ25℃より高い)ガラス転移温度を示す数種類の化合物の混合物に相当することができる。同様に、「安定剤」または「一時的添加剤」は、それぞれが安定剤または一時的添加剤となる数種類の化合物の混合物に相当することができる。
【0067】
特に明記しない限り、すべてのパーセント値は、安定剤に関するパーセント値を除いて、乾燥粉末の重量を基準として示されている。これは、酸化物の安定剤の含有率は、通常は、前記酸化物および前記安定剤の全含有率を基準とした重量パーセント値で慣習的に定義されているためである。
【0068】
粉末の性質は、実施例に使用される特性決定方法によって評価することができる。
【0069】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の説明を読み添付の図面を精査することによって、より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】実施例6の顆粒の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明による顆粒を含む粉末は、スリップを噴霧する段階を含む方法によって製造することができる。このような方法は特に、以下:
a)本発明による顆粒を含む粉末を段階b)の終了時に得るために、必要な種々の出発物質を液体中に、好ましくは水中に懸濁させることによってスリップを調製する段階と;
b)顆粒を形成するために前記スリップを噴霧する段階と;
c)場合により、段階b)で得られた顆粒をふるい分けする段階と;
d)場合により、段階b)またはc)で得られた顆粒を乾燥させる段階と
を含むことができる。
【0072】
段階a)において、出発物質が液体、たとえば蒸留水と混合され、それによってスリップが形成される。
【0073】
スリップ中、乾燥物質の重量を基準とした含有率は35%〜70%の間であってよい。スリップ中の乾燥物質の含有率は、段階b)の終了時に得られる顆粒の相対密度が30%〜60%の間となるように調節される。この含有率の増加は、段階b)の終了時に得られる顆粒の相対密度を増加させることによって一般に実現される。
【0074】
好ましくは、ジルコニアは、本発明による顆粒を含む粉末のジルコニアの含有率が80%を超え、さらには90%を超えるように、出発投入材料中に投入される。
【0075】
投入されるジルコニアは、前記安定剤によって安定化することができる。安定剤は、ジルコニアとは独立して加えることもできる。一実施形態では、ジルコニアは、安定化または非安定化ジルコニアの粒子の形態で導入することができ、安定剤は、場合によりアルミナ粒子とともに均質に混合される。
【0076】
好ましい一実施形態によると、ジルコニアは安定化ジルコニア粒子の形態で投入され、すなわち安定剤がジルコニア粒子中の固溶体中に存在する。
【0077】
別の好ましい一実施形態では、安定化ジルコニアとアルミナとが均質に混合された粒子の形態でジルコニアが投入される。
【0078】
安定化ジルコニア粒子および/または安定化ジルコニアとアルミナとが均質に混合された粒子の使用は、前述の特定の実施形態の場合に特に好ましい。
【0079】
バインダーは、噴霧中に凝集を引き起こすことが可能となる出発投入材料の構成要素である。
【0080】
従来、顆粒の製造にはPVA型またはPEG型のバインダーが使用され;600Daを超える分子量を有するPVA型またはPEGのバインダーは、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を示さない。本発明者らは、25℃以下のガラス転移温度(Tg)を示すバインダー、すなわち「第1のバインダー」が存在することは、プレス成形中の顆粒の変形に好都合であり、欠陥の数が減少することを発見した。したがって、それによって、本発明による粉末から得られた焼結部品の機械的性質が改善される。
【0081】
しかし、第1のバインダーの含有率が1%未満であると、定量化可能な効果は得られない。好ましくは、第1のバインダーは、−30℃より高く、好ましくは−20℃より高く、さらには−15℃より高く、かつ/または20℃未満、さらには15℃未満のガラス転移温度を示す。
【0082】
第1のバインダーは、ポリマーから選択することができる。このようなポリマーの一覧が、Polymer Handbook(4th Edition),1999;2005,John Wiley & Sonsに開示されている。好ましくは、第1のバインダーは、非晶質有機ポリマーおよびそれらのブレンドから選択される。好ましくは、第1のバインダーは、アクリレート(モノマー−(CH=CHCOO−)−)に基づく純粋なポリマー、または(たとえばスチレンモノマーとの)コポリマーの形態、およびそれらのブレンドから選択される。したがって、これらのポリマーはアクリル樹脂であってよい。好ましくは、第1のバインダーは、純粋なアクリレートに基づくポリマー(モノマー−(CH=CHCOO−)−)、アクリレート(モノマー−(CH=CHCOO−)−)とスチレン(モノマー−(C))とに基づくコポリマー、およびそれらのブレンドから選択される。
【0083】
好ましくは、第1のバインダーは、硬化後に、規格DIN53455に準拠して測定される破壊強度が1N/mmを超え、さらには5N/mmを超える有機ポリマーから選択される。
【0084】
さらに好ましくは、第1のバインダーは、硬化後に、規格DIN53455に準拠して測定される破断時伸びが100%を超え、好ましくは200%を超え、さらには500%を超える有機ポリマーから選択される。
【0085】
好ましくは、第1のバインダーは、無機元素、特に1族の元素、特にリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、およびカリウム(K)、ならびに17族の元素、特にフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、およびヨウ素(I)を含まないポリマーから選択される。好都合には、不純物の含有率が低下し、本発明による顆粒を含む粉末から製造された焼結部品の機械的強度が増加する。
【0086】
好ましくは、第1のバインダーの含有率は、製造された粉末中で2%を超え、好ましくは2.5%を超え、かつ/または8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、好ましくは4%未満となるように決定される。
【0087】
追加のバインダーは、好ましくは、ガラス転移温度が25℃より高く、100℃未満、好ましくは80℃未満、好ましくは50℃未満、さらには40℃未満であるポリマー、およびそれらのブレンドから選択される。
【0088】
好ましくは、追加のバインダーの含有率は、3%未満、好ましくは2%未満、より好ましくは1%未満、かつ/または0.5%を超える。
【0089】
好ましくは、追加のバインダーは、無機元素、特に1族および17族の元素を含まないポリマーである。好都合には、不純物の含有率が低下し、本発明による顆粒から製造された部品の機械的強度が増加する。
【0090】
好ましくは、追加のバインダーは、非晶質有機ポリマーおよびそれらのブレンドから選択される。好ましくは、追加のバインダーは、アルコールを主成分とする化合物から選択される。好ましくは、追加のバインダーは、ポリビニルアルコールおよびポリアルキレングリコールから選択され、好ましくは分子量が600Daを超えるポリエチレングリコールから選択される。
【0091】
一時的添加剤は、顆粒の製造中に加えることができる。
【0092】
一時的添加剤は、好ましくは、当業者に周知の規則により、顆粒の製造またはその成形を促進するために加えることができる有機添加剤である。
【0093】
一時的添加剤の含有率は、乾燥物質を基準とした重量パーセント値で好ましくは0.5%を超えかつ/または1%未満であり、バインダーと一時的添加剤との全含有率は、好ましくは8%未満、好ましくは6%未満、好ましくは5%未満、さらには4%未満である。好ましくは、有機添加剤は、分散剤または界面活性剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤または殺生物剤、潤滑剤、ならびにそれらの混合物から選択される。たとえば、分散剤または界面活性剤は、Zschimmer−Schwarzより販売される一連のDolapix製品またはR.T.Vanderbilt Companyより販売されるDarvan製品またはメタクリル酸の、ポリアクリレート、あるいはイオン性または非イオン性界面活性剤であってよい。増粘剤は、Zschimmer−SchwarzまたはBASFより販売されるアクリル酸エマルジョンであってよい。消泡剤は、Zschimmer−Schwarzより販売される範囲のものであってよい。防腐剤または殺生物剤は、Zschimmer−SchwarzまたはBASFより販売される第4級アンモニウム塩であってよい。潤滑剤は、Zschimmer−Schwarzにより販売される範囲のものであってよい。
【0094】
好ましくは、本発明による顆粒を含む粉末中の不純物の含有率が、1%未満、好ましくは0.5%未満、さらには0.3%未満、さらには0.1%未満となるように、出発物質の純度が決定される。酸化ハフニウムは不純物とは見なされない。
【0095】
好ましくは、不純物は酸化物である。
【0096】
好ましくは、ジルコニア、ジルコニウム安定剤、アルミナ、バインダー、一時的添加剤、残留水分、および不純物以外の構成要素を全く含まないように、出発物質が選択される。
【0097】
好ましくは、ジルコニア、アルミナ、および安定剤を含む粉末は、場合による一時的添加剤およびバインダーの前にスリップ中に投入される。
【0098】
顆粒の種々の出発物質のそれぞれ、特に耐火性酸化物を含む粉末は、好ましくは、メジアン直径が50μm未満、好ましくは20μm未満、好ましくは10μm未満であり、および/または比表面積が好ましくは30m/g未満、好ましくは20m/g未満である。
【0099】
段階a)の終了時には、調製されたスリップの乾燥物質は、好ましくは、メジアン直径が1μm未満、好ましくは0.5μm未満、より好ましくは0.3μm未満となり、比表面積5m/gを超え、好ましくは6m/gを超え、かつ/または30m/g未満、好ましくは20m/g未満となる。
【0100】
この目的のためには、特に出発物質が好適なメジアン直径および/または好適な比表面積を示さない場合には、当業者に周知の方法により、たとえばスリップをミル、好ましくはアトリションミルに通すことによって、スリップが好ましくは分散または粉砕される。この段階で、好都合には、段階a)の終了時に所望の粉末における種々の化合物の良好な均一性を得ることができる。特に、この段階で、粉末の顆粒中において第1のバインダーが実質的に均一に分散する。
【0101】
段階a)が粉砕作業を含む場合、任意選択の追加のバインダーおよび任意選択の一時的添加剤、さらに第1のバインダーは、好ましくはこの段階の後に投入される。
【0102】
段階b)において、噴霧によって、30%〜60%の間の低い相対密度の粉末が得られ、高い相対密度が従来得られている圧延造粒またはドリップキャスティング(drip casting)などの方法とは異なる。
【0103】
好ましくは、噴霧は、顆粒が残留水分を含み、含水率が好ましくは湿潤粉末を基準とした重量パーセント値で1%未満、好ましくは0.6%未満、かつ/または0.2%を超えるように行われる。好都合には、残留含水率が0.2%を超えると、圧縮作用下での顆粒が変形する。しかし、残留含水率が1%を超えると、本発明による顆粒を含む粉末から開始してプレス成形すると、たとえばプレス成形に使用した金型の壁に前記プレフォームが付着した後に、製造されたプリフォームの表面欠陥の数が増加することがある。
【0104】
80%を超え、好ましくは90%を超える数の顆粒は、球形度指数が0.6を超え、好ましくは0.7を超え、好ましくは0.8を超え、好ましくは0.9を超える。
【0105】
段階c)において、場合によるふるい分けは、好ましくは500μm未満、さらには400μm未満の開口部を有するふるいを用いて行われる。好都合には、この段階によって、ある種の用途で使用可能な最も粗い顆粒を除去することができる。
【0106】
段階d)において、場合による乾燥は、好ましくは80℃〜110℃の間の温度において、好ましくは2時間を超える時間で行われる。
【0107】
好ましくは、本発明の方法は段階d)を含まない。
【0108】
本発明者らは、本発明による粉末が以下の性質を示すことができることを見いだした:
− 顆粒の相対密度は、好ましくは40%を超え、かつ/または50%未満である。
【0109】
− 粉末のゆるめかさ密度は、1.4g/cmを超え、好ましくは1.5g/cmを超え、好ましくは1.6g/cmを超え、かつ/または1.8g/cm未満、好ましくは1.7g/cm未満である。
【0110】
− 粉末の流動性は、1g/sを超え、好ましくは1.5g/sを超え、好ましくは2g/sを超える。
【0111】
本発明による顆粒を含む粉末を使用して、段階A)〜E)により焼成部品を製造することができる。
【0112】
段階A)は、段階a)およびb)、さらにはc)および/またはd)を含むことができる。
【0113】
出発投入材料は、本発明による顆粒を含む粉末で構成されることができる。
【0114】
別の形態では、出発投入材料は、本発明による顆粒を含む粉末と、1種類以上の別の粉末とを含むことができる。好ましくは、本発明による顆粒を含む粉末は、出発投入材料の重量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%である。
【0115】
段階B)においては、好ましくはプレス成形、プラスチック射出成形、または押出成形、好ましくはプレス成形によって成形が行われる。好ましくは、プレス成形は、冷間プレス成形および冷間静水圧プレス成形技術から選択される。
【0116】
プレス成形による成形の場合、出発投入材料が金型中に投入され、次に好ましくは80MPaを超え、かつ好ましくは200MPa未満、さらには150MPa未満の圧力が加えられて、グリーン部品、または「プリフォーム」が形成される。本発明による粉末の顆粒は、この圧力の作用下で効果的に変形する。プリフォームは次に金型から取り外される。
【0117】
場合により段階C)において、プリフォームは、当業者に周知のあらゆる技術により機械加工することができる。
【0118】
段階D)においては、焼結部品を形成するために、プリフォームが、好ましくは空気下で、好ましくは大気圧また加圧下(熱間プレス成形および/または熱間静水圧プレス成形(HIP))、1300℃〜1500℃の間、好ましくは1350℃より高く、かつ/または1450℃未満の温度で焼結される。
【0119】
段階B)およびD)は、たとえば熱間プレス成形によって、1つの段階で行うことができる。
【0120】
場合による段階E)においては、焼結部品は、当業者に周知のあらゆる技術により機械加工される。
【実施例】
【0121】
以下の非限定的な実施例は、前述の段階A)〜E)を含む方法により製造した。
【0122】
段階A)は、以下の段階a)、b)、およびc)を表している。
【0123】
段階a)において、実施した各実施例で、主要な特性が以下の表1に示されるジルコニア粉末を微粉砕することによって分散させる このジルコニア粉末のアルミナは、焼結添加剤として好都合に作用する。
【0124】
【表1】
【0125】
この微粉砕は、湿式ビーズミル(3mol%のYを含み直径0.8mmであるジルコニアビーズ)またはアトリションミルで行われる。微粉砕の後、粉末は0.35μmのメジアン直径を示す。懸濁液の乾燥物質含有率は50重量%である。
【0126】
続いて50重量%溶液の形態のバインダーが懸濁液に加えられる。
【0127】
こうして得られたスリップは、12時間攪拌が続けられる。
【0128】
段階b)において、続いてスリップは、Gea Niroより販売されるFSD Minor装置で噴霧され、噴霧器の入口温度は280℃であり、噴霧器の出口温度は100℃である。段階b)終了後、顆粒を含む粉末が得られる。
【0129】
段階c)において、顆粒を含む粉末は、400μmのふるいでふるい分けされる。
【0130】
段階B)において、段階A)の終了時に得られた顆粒を含むそれぞれの粉末について、以下のプリフォームを作製した:
− 100MPaの圧力で一軸プレス成形することによって、かさ密度測定用の直径32mmおよび重量8グラムのペレットを作製し、
− 100MPaの圧力で一軸プレス成形することによって、歩留まり試験用の断面が4×5cmおよび長さが10cmの10本のバーを作製し、
− 100MPaの圧力で一軸プレス成形することによって、3点曲げ試験用の断面が1×1cmで長さが3cmのバーを作製した。
【0131】
こうして得たプリフォームは段階C)を行わなかった。
【0132】
段階D)において:
− 温度を100℃/hで500℃まで上昇させ、
− 500℃で2時間維持し、
− 温度を100℃/hで1450℃まで上昇させ、
− 1450℃で2時間維持し、
− 自然冷却によって温度を低下させる、
というサイクルにより、前記プリフォームを焼結した。
【0133】
段階E)において、3点曲げ測定が意図されたバーを、この測定を行うのに必要な寸法(25×10×3mm)まで機械加工した。
【0134】
実施例の性質を、以下の特性決定方法により評価した:
【0135】
− 乾燥物質は、110℃で少なくとも2時間乾燥させた後で測定される。
【0136】
− 顆粒を含む粉末の流動性は、規格NF EN 658−5に準拠した「フォードカップ」型の装置で測定される。この測定は、200gの粉末が内径10mmの漏斗を流れ出るのに要する時間を測定することにある。粉末の流動性は、粉末の重量を、粉末が漏斗を流れ出るのに要した時間で割った値に等しい比によって計算される。
【0137】
− 顆粒を含む粉末のゆるめかさ密度は、規格NF EN 725−9に準拠した「フォードカップ」型の装置によって測定される。この測定は、標準寸法を有する容器を満たした後で、投入された顆粒を含む粉末の重量を測定することにある。続いて、ゆるめかさ密度は、粉末の重量の、容器の容積に対する比を求めることによって計算される。
【0138】
− 顆粒を含む粉末の絶対密度は、Micromeretics(登録商標)のAccuPyc 1330装置でのヘリウム比重測定法によって測定される。顆粒を含む粉末は、あらかじめ500℃で2時間焼成される。
【0139】
− 顆粒を含む粉末の真密度は、Micromeretics(登録商標)より販売されるAutoPores IV 9500水銀ポロシメーター装置での水銀ポロシメトリーによって測定される。1グラムの重量の顆粒を含む粉末を装置に投入する。低真空下で5分間置いた後、少しずつ3447Pa(すなわち0.5psi)の水銀を導入する。真密度は:
【数1】
によって計算され、全体積は、測定チャンバーの空の容積に等しく、体積Hg100psiは、粉末の存在するチャンバー中に0.689MPa(すなわち100psi)の圧力で導入された水銀Hgの体積である。
【0140】
− 焼結部品のかさ密度は、考慮される実施例による顆粒を含む粉末を100MPaでプレス成形した後に得られる直径30mmおよび厚さ3mmのサンプル上で測定され、サンプルは以下のサイクルにより焼結される:100℃/hの速度で500℃まで上昇、500℃で2時間の停止段階、100℃/hの速度で1450℃まで上昇、1450℃で2時間の停止段階、200℃/hの速度で500℃まで低下、次に自由冷却。
【0141】
破壊係数は、考慮される実施例による顆粒を含む粉末を100MPaでプレス成形して得られた部品から機械加工した25×10×3mmのバーに対して測定し、これらのバーは、以下のサイクルにより焼結される:100℃/hの速度で500℃まで上昇、500℃で2時間の停止段階、100℃/hの速度で1450℃まで上昇、1450℃で2時間の停止段階、200℃/hの速度で500℃まで低下、次に自由冷却。
【0142】
− 粒度分布は、株式会社堀場製作所より販売されるPartica LA−950レーザー粒度計を使用して求められる。顆粒を含む粉末は、懸濁させずに、直接レーザー粒度計中に投入して測定される。
【0143】
− 化学分析は、0.1重量%を超える含有率の元素に関してはX線蛍光分光法により測定され;元素の含有率が0.1重量%未満の場合は、Vista AXモデル(Varianより販売される)上でのICP(誘導結合プラズマ)によって測定される。
【0144】
− 球形度指数は、Malvern Instrumentsより販売されるMorphologi 3G装置で測定される。顆粒を含む粉末は、直接装置中に投入されて測定される。顆粒の球形度指数は、10倍の倍率で光学顕微鏡法によって撮影された顆粒の写真上で測定される最小直径対最大直径の比によって求められる。特定の球形度を示す顆粒のパーセント値を測定するために、500〜1000枚の写真から観察される顆粒に対して統計的計数が行われる。
【0145】
− 3点曲げにおける破壊係数は、規格NF EN 658−5に準拠して、Lloydプレス上で、外部支持体間の距離15mmで、長さ25mm、幅10mm、および厚さ3mmのバーに対して測定される。
【0146】
− 特にポリマーでできた、一時的添加剤およびバインダーの性質およびの含有率は、Perkin Elmerより販売されるSpectrum 400装置による赤外分光法で測定される。強度データは、1cm−1刻みで4000〜1000cm−1の範囲にわたって記録される。ポリマーは、たとえば、文献の"Handbook of Fourier transform Raman and infrared spectra of polymers",A.H.Kuptsov and German Nikolaevich Zhizhin,vol.45,1998,Elsevierに示されるFTIR(フーリエ変換赤外分光法)データとの比較によって同定される。ポリマーの性質および含有率は、分離すべき化合物の性質および数に適した分離カラムが取り付けられた液相クロマトグラフィー(HPLC)などの他の周知の方法によって確認することもできる。直径1.9μmのHypersil Goldカラムが取り付けられたThermo Scientificより販売されるSurveyor Plusなどの装置を使用することができる。
【0147】
− 一時的構成要素の全含有率は、乾燥後の全重量に関しては、1000℃で焼成した後の粉末の重量、および110℃で乾燥させた後の粉末の重量の差によって求められる。
【0148】
【表2】
【0149】
図1に示されるように、実施例6による顆粒10は実質的に円環状である。したがって、これらは中心を通って貫通する開口部12を示している。これらの顆粒の球形度指数は0.8を超える。
【0150】
本発明者らは、金型に充填される能力は、粉末のゆるめかさ密度およびその流動性によって評価できると考えている。高いゆるめかさ密度および高い流動性値は、金型に充填される能力が良好であることに対応している。
【0151】
表2から、以下のように考えることができる:
実施例6および7の粉末と同じバインダーが使用される実施例1の顆粒を含む粉末は、より低いゆるめかさ密度およびより小さい流動性値を示している。この金型に充填される能力は、実施例2〜7の粉末よりも低い。寸法10×5×4cm(体積200cm)の部品の製造歩留まりは、実施例2、6、および7の顆粒を含む粉末で得られた結果よりもはるかに低く、これは、メジアン直径D50が80μmを超えることの利点を示している。
【0152】
25℃未満のガラス転移温度を示さないバインダーを使用した実施例2および3の顆粒を含む粉末では、プレス成形および焼結の後で、高密度と3点曲げでの高い破壊係数とを示す焼結部品を得ることができない。
【0153】
バインダーの全含有率が8%である実施例4の顆粒を含む粉末とは異なり、バインダーの全含有率が9%を超える実施例5の顆粒を含む粉末は、プレス成形および焼結の後で、高密度と3点曲げでの高い破壊係数とを示す焼結部品を得ることができない。
【0154】
本発明による実施例8の顆粒を含む粉末は、−10℃のガラス転移温度を示すアクリル樹脂を2.5%含む。
【0155】
本発明による実施例9の顆粒を含む粉末は、20℃のガラス転移温度を示すアクリル樹脂を2.5%含む。
【0156】
本発明による実施例6および7の顆粒を含む粉末は、大きな体積を有し、および/または注目すべき機械的性質を示す焼結部品を高い歩留まりで製造することが可能である。
【0157】
当然ながら、本発明は、実施例として提供される実施形態に限定されるものではない。
【0158】
特に、本発明による焼結部品のかさ密度は限定されない。
【0159】
さらに、本発明による顆粒を含む粉末の製造に噴霧以外の他の方法を使用することができ、たとえば凍結乾燥段階を伴う方法、あるいは流動床造粒段階、またはパドルミキサーを使用した造粒段階を伴う方法を使用することができる。
図1