(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732487
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ポップアウト型扉用ロックハンドル装置
(51)【国際特許分類】
E05B 5/04 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
E05B5/04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-106181(P2013-106181)
(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公開番号】特開2014-227672(P2014-227672A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2013年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108708
【氏名又は名称】タキゲン製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078950
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 忠
(72)【発明者】
【氏名】小粥 一弘
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特許第2704387(JP,B2)
【文献】
実公昭52−006545(JP,Y2)
【文献】
特開2001−073597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 5/00−5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる軸筒部と、この軸筒部の前端部に設けられる鍔部とを具備し、鍔部を筐体の扉の前面に当接させて当該扉に固着されるハンドルケースと、
前記ハンドルケースの軸筒部内に回転可能かつ前後に移動不能に嵌挿される内筒と、
前記内筒の後端部に連結され、扉を筐体に対して錠止する施錠位置と解放する解錠位置との間で内筒と一体に正逆回転する錠止部材と、
前記内筒に回転不能に嵌挿され、前記ハンドルケース内に没する後方位置とハンドルケースから突出する前方位置との間で前後に摺動自在で、前方位置において前記内筒と一体に施錠位置と解錠位置との間を回転操作可能な概略円筒状のハンドル軸と、
前記内筒と前記ハンドル軸との間に挿入され、前記ハンドル軸を前方に付勢するばね部材と、
前記ハンドル軸の後部に設けられ、後方位置にあるハンドル軸を前記内筒に対して拘束し、又は解放する施錠機構と、
前記ハンドル軸の前部に組み込み固定され、キー操作によるロータの回転によって前記施錠機構を拘束又は解放動作させるように直接又は間接的に駆動する錠前ユニットと、
前記ハンドル軸の前端に固着され、前記錠前ユニットの前端部を露出させる開口を有し、ハンドル軸が後方位置にあるとき前記ハンドルケースの鍔部の前面を覆う硬質材からなるハンドル板と、を具備し、
扉への装着状態において、扉の前面側に前記硬質材からなるハンドル板のみが露出するように構成されることを特徴とするポップアウト型扉用ロックハンドル装置。
【請求項2】
前記ハンドル板は、前記ハンドルケースの鍔部の前面よりわずかに大面積に構成され、前記ハンドル軸が後方位置にあるとき鍔部を嵌合させて鍔部の前面を覆う凹部と、この鍔部の外周を囲む起立縁部とを具備することを特徴とする請求項1に記載のポップアウト型扉用ロックハンドル装置。
【請求項3】
前記ハンドル板は、前記開口の周縁から後方へ突出して前記ハンドル軸の前端側の内周に嵌合する環状突部を具備し、この環状突部において、ハンドル軸の前端部に結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載のポップアウト型扉用ロックハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機等の扉に使用され、ハンドル軸に組み込まれた錠前ユニットのロータを正規のキーで所定方向に回すと、ハンドルがハンドルケースから突出し、ハンドルを回す解錠操作が可能となるポップアウト型の扉用ロックハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポップアウト型の扉用ロックハンドル装置が特許文献1に記載されている。このロックハンドル装置は、扉に固着されるハンドルケースの軸筒部に内筒を回転可能かつ前後に移動不能に嵌挿し、扉を筐体に対して錠止する錠止部材を前記内筒の後端部に連結し、ハンドル軸を前記内筒に回転不能かつ前後に摺動可能に嵌挿し、前記内筒と前記ハンドル軸間に挿入したバネ部材によってハンドルを前方に移動付勢し、前記ハンドル軸の後部に設けた施錠機構によって前記ハンドル軸を前記内筒に対して拘束し、前記ハンドル軸の前部に錠前ユニットを組み込み固定し、前記錠前ユニットのロータの回転によって前記施錠機構を直接または間接的に駆動して、前記ハンドル軸の移動拘束を解除するように構成し、前記錠前ユニットの頭部を硬質材のガードフードの筒部に嵌合して、前記錠前ユニットを前記ハンドル軸の前部の錠前格納部に嵌合し、前記筒部の前端周縁の外向き鍔部を前記錠前格納部の前端周縁の環状凹部に嵌合し、前記錠前ユニットの前記頭部と主体胴部間にある段差肩面部を前記筒部の後端周縁の内向き鍔部に当接させ、前記主体胴部の外周螺子部に螺合した固定リングを前記ガードフードの内向き鍔部に当接させ、前記ハンドル軸の横断方向の受孔にU字形固定金具を嵌挿し、前記固定金具の脚部の制止突起を前記固定リングの外周溝に係合させ、前記固定金具を前記ハンドル軸にビスによって締付け固着し、前記U字形固定金具の一対の脚部を互いに平行に形成し、前記錠前格納部に一部交差するように一対の受孔を前記ハンドル軸にその直径方向に貫通して形成し、前記U字形固定金具の前記脚部を前記ハンドル軸の前記受孔その全長にわたって嵌挿したものである。
また上記のような構成において、ガードフードの後端部の内向き鍔部の内周面で形成される開口部の形状を小判型とし、該小判型開口部に前記横断面小判型の主体胴部を嵌合して、前記ガードフードを前記錠前ユニット及び前記ハンドル軸に対して回転不能にするとともに、前記ガードフードの前記外向き鍔部の外周形状と前記ハンドルケースの前記環状凹部の内周形状を縦長の非円形状にしたものが特許文献2に記載されている。このロックハンドル装置は、ガードフードが切削破壊阻止部材としての機能を有し、防犯性能に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2704387号公報
【特許文献2】特許第4240320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に記載のロックハンドル装置は、ガードフードが硬質材で構成されるが、筐体の前面側に露出する他の部材は硬質材でないから、なお破壊からの防御に十分とはいえない。また前面側に、ハンドルケースの鍔部、ハンドル、ガードフードの三者が大きく露出する構造であって、小型化によるコスト抑制の要請がある。
したがって、本発明は、破壊に対する防御性能が高く、しかも小型、低コスト化が可能なポップアウト型扉用ロックハンドル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、本発明のロックハンドル装置は、ハンドルケース2、内筒5、錠止部材6、ハンドル軸7、ばね部材8、施錠機構9、錠前ユニット10を具備する。
ハンドルケース2は、前後方向に延びる軸筒部3と、この軸筒部3の前端部に設けられる鍔部4とを具備し、鍔部4を筐体の扉1の前面に当接させて当該扉1に固着される。
内筒5は、ハンドルケース2の軸筒部3内に回転可能かつ前後に移動不能に嵌挿される。
錠止部材6は、内筒5の後端部に連結され、扉1を筐体に対して錠止する施錠位置と、解放する解錠位置との間で内筒5と一体に正逆回転する。
ハンドル軸7は、概略円筒状に構成され、内筒5に回転不能に嵌挿され、ハンドルケース2内に没する後方位置と、ハンドルケース2から突出する前方位置との間で前後に摺動自在であり、前方位置において内筒5と一体に施錠位置と解錠位置との間を回転操作可能である。
ばね部材8は、内筒5とハンドル軸7との間に挿入され、ハンドル軸7を前方に付勢する。
施錠機構9は、ハンドル軸7の後部に設けられ、ハンドル軸7を後方位置で内筒5に対して拘束し、又は解放する。
錠前ユニット10は、ハンドル軸7の前部に組み込み固定され、キー操作によるロータ11の回転によって、施錠機構9を拘束又は解放動作させるように、直接又は間接的に駆動する。
硬質材からなるハンドル板12が、ハンドル軸7の前端に固着される。ハンドル板12は、錠前ユニット10の前端部を露出させる開口12aを有し、ハンドル軸7が後方位置にあるときハンドルケース2の鍔部4の前面を覆う。
【発明の効果】
【0006】
本発明のポップアウト型扉用ロックハンドル装置は、扉の前面側へ露出する部分が全て硬質材からなるハンドル板12により覆われるので、破壊に対する防御性能が高く、しかも扉1の前面側へ大きく露出する従来のハンドルが省略され、またこの大きなハンドルを受けるハンドルケースの鍔部も縮小され、小型化による低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るポップアウト型扉用ロックハンドル装置の断面図である。
【
図4】
図1のロックハンドル装置のハンドルケースの断面図である。
【
図5】
図1のロックハンドル装置のハンドルケースの正面図である。
【
図6】
図1のロックハンドル装置のハンドルケースの背面図である。
【
図7】
図1のロックハンドル装置の内筒の断面図である。
【
図8】
図1のロックハンドル装置の内筒の正面図である。
【
図9】
図1のロックハンドル装置の内筒の背面図である。
【
図10】
図1のロックハンドル装置のハンドル軸の断面図である。
【
図11】
図1のロックハンドル装置のハンドル軸の正面図である。
【
図12】
図1のロックハンドル装置のハンドル軸の背面図である。
【
図13】
図1のロックハンドル装置のハンドル板の断面図である。
【
図14】
図1のロックハンドル装置のハンドル板の正面図である。
【
図15】
図1のロックハンドル装置の固定リングの正面図である。
【
図16】
図1のロックハンドル装置の固定金具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、ロックハンドル装置は、ハンドルケース2、内筒5、錠止部材6、ハンドル軸7、ばね部材8、施錠機構9、錠前ユニット10を具備する。
【0009】
図1,4,5,6において、ハンドルケース2は、前後方向に延びる軸筒部3と、この軸筒部3の前端部に設けられる鍔部4とを具備し、鍔部4を筐体の扉1の前面に当接させて当該扉1に固着される。
【0010】
図1,7,8,9において、内筒5は、ハンドルケース2の軸筒部3内に回転可能に嵌挿され、かつ前方のフランジ部5aと後方の止め板13とにより、軸筒部3に対して前後に移動不能とされる。内筒5は、前方に開放し、後方は端壁5bで閉じられる。
【0011】
図1において、錠止部材6は、内筒5の後端部に連結され、扉1を筐体に対して錠止する施錠位置と、解放する解錠位置との間で内筒5と一体に正逆回転する。
【0012】
図1,10,11,12において、ハンドル軸7は、概略円筒状に構成され、内筒5に回転不能に嵌挿され、ハンドルケース2内に没する後方位置と、ハンドルケース2から突出する前方位置との間で前後に摺動自在であり、前方位置において内筒5と一体に施錠位置と解錠位置との間を回転操作可能である。
【0013】
図1において、ばね部材8は、内筒5の端壁5bとハンドル軸7との間に蓋板14を介して挿入され、ハンドル軸7を内筒5に対して前方に付勢する。
【0014】
図1において、施錠機構9は、ハンドル軸7内の後部に設けられ、ハンドル軸7が後方位置にあるとき、これを内筒5に対して拘束し、又は解放する。
【0015】
図1において、錠前ユニット10は、ハンドル軸7の前部に組み込み固定され、キー操作によるロータ11の回転によって、施錠機構9を拘束動作又は解放動作させるように、直接又は間接的に駆動する。
【0016】
図1,13,14において、硬質材からなるハンドル板12が、ハンドル軸7の前端に固着される。ハンドル板12は、錠前ユニット10の前端部を露出させる開口12aを有する環状突部2bを具備する。環状突部12bは、開口12aの周縁から後方へ突出してハンドル軸7の前端側の内周に嵌合固定される。ハンドル板12は、ハンドル軸7が後方位置にあるとき、ハンドルケース2の鍔部4の前面を覆う。すなわち、ハンドル板12は、ハンドルケース2の鍔部4の前面よりわずかに大面積の相似外形状に構成され、鍔部4が嵌合する凹部12cと、鍔部4の周囲を囲む起立縁部12dとを具備する。ハンドル軸7が後方位置にあるとき、ハンドル板12の凹部12cに鍔部4が嵌合し、鍔部4の前面がハンドル板12に覆われる。
【0017】
図1において、施錠機構9は、錠前ユニット10のロータ11からの回転力を受け、施錠動作部を内筒5に対して係合、離脱させる。錠前ユニット10の胴部には、全長にわたって外周螺子部10aが形成され、また相対向する側面部には互いに平行に削除された平面部10bが形成され、胴部の横断面は所謂小判型に形成される。
図10,11,12に示すように、ハンドル軸7の中間壁7aには、小判型開口部7bが形成され、これに錠前ユニット10の胴部後端が嵌合する。したがって、錠前ユニット10は、ハンドル軸7に対して回転不能である。
【0018】
図1において、錠前ユニット10の外周螺子部10aには、固定リング15が螺合され、ハンドル板12の環状突部12bの後端に当接している。U字形固定金具16が、ハンドル軸7の直径方向の受孔に嵌挿され、ビス17で固着される。固定金具16の平行な二又の脚部16a(
図16)が、固定リング15の外周溝15a(
図15)に係合することにより、錠前ユニット10は、ハンドル軸7に対して前後方向に固定される。脚部16aの平行な当接面16bは、錠前ユニット10の平面部10bに当接しているため、これによっても錠前ユニット10はハンドル軸7に対して回転不能である。
【0019】
ハンドル板12の環状突部12bは、外側突出部12eを有し、これがハンドル軸7の前端部内周に形成された回り止め凹部7cに嵌合することによりハンドル軸7に対して回り止めされ、またビス18によりハンドル軸7に結合される。環状突部12bの後方端には、
図13,14に示すように、シリンダ錠ユニット10の胴部に嵌合する小判型の開口12fを有する内側フランジ12gが形成される。
【0020】
ハンドル軸7の後部に螺合されたガイドビス19が、内筒5に形成された前後方向のガイド溝5c(
図7)に係合しており、これによってハンドル軸7は内筒5に対して回転不能であって前後方向に摺動可能になっている。
【0021】
この実施形態のポップアウト型扉用ロックハンドル装置は、扉1の前面側へ露出する部分が全て硬質材からなるハンドル板12により覆われるので、破壊に対する防御性能が高く、しかも扉1の前面側へ大きく露出する従来のハンドルが省略され、またこの大きなハンドルを受けるハンドルケースの鍔部も縮小され、小型化による低コスト化が可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 扉
2 ハンドルケース
3 軸筒部
4 鍔部
5 内筒
6 錠止部材
7 ハンドル軸
8 バネ部材
9 施錠機構
10 錠前ユニット
10a 外周螺子部
10b 平面部
11 ロータ
12 ハンドル板
12a 開口
12b 環状突部
12c 凹部
12d 起立縁部
12e 外側突出部
12f 小判型開口
12g 内側フランジ
13 止め板
14 蓋板
15 固定リング
16 固定金具
16a 脚部
16b 当接面
17 ビス
18 ビス
19 ガイドビス