(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明は、以下の成分(A)、(B)を含有することを特徴とする樹脂組成物に関する。(ただし、(A)成分と(B)成分の合計を100重量%とする)
(A)酸価が0.01〜0.30mmol/gであり、かつ、ガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂99.9〜70重量%、
(B)酸価が0.2〜5.5mmol/gであり、かつガラス転移温度が40〜115℃であるアクリル系樹脂0.1〜30重量%。
【0018】
本発明に用いられるアクリル系樹脂(A)は、酸価が0.01〜0.30mmol/gであり、かつガラス転移温度が120℃以上であるアクリル系樹脂である。
【0019】
アクリル系樹脂(A)における酸価は好ましくは0.05〜0.30mmol/g、さらに好ましくは0.10〜0.30mmol/gである。ガラス転移温度は好ましくは130℃以上である。上限は特に制限されないが、好ましくは180℃以下である。
【0020】
本願においてアクリル系樹脂とは、アクリル系モノマーを主原料として得られる重合体、並びに、それらを変成及び/又は反応させた樹脂の総称である。この中でも、その主鎖骨格に6員環構造を有する耐熱アクリル系樹脂が好適に用いられる。具体的には、グルタルイミド構造や無水グルタル酸構造、ラクトン環構造を分子中の主要単位とするアクリル系樹脂が挙げられる。この中でもグルタルイミド構造を有するアクリル系樹脂(以下グルタルイミドアクリル樹脂とする)が好適に用いられる。
【0021】
より具体的には、例えば下記一般式(1)
【0023】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2)
【0025】
(式中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミドアクリル樹脂を好適に用いることができる。
【0026】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)
【0028】
(式中、R
7は、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0029】
上記一般式(1)において、R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、R
3は水素、メチル基、ブチル基、シクロヘキシル基であることが好ましく、R
1はメチル基であり、R
2は水素であり、R
3はメチル基であることがより好ましい。
【0030】
上記グルタルイミドアクリル樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみ含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR
1、R
2、およびR
3が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0031】
なお、グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより形成することができる。
【0032】
また、無水マレイン酸等の酸無水物、またはこのような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
【0033】
上記一般式(2)において、R
4およびR
5はそれぞれ独立して、水素またはメチル基であり、R
6は水素またはメチル基であることが好ましく、R
4は水素であり、R
5はメチル基であり、R
6はメチル基であることがより好ましい。
【0034】
上記グルタルイミドアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR
4、R
5およびR
6が異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0035】
上記一般式(3)において、R
7として好ましくは水素またはメチル基であり、さらに好ましくは水素である。R
8として好ましくはフェニル基である。また、上記グルタルイミドアクリル樹脂は、芳香族ビニル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R
7およびR
8が異なる複数の樹脂を含んでいてもよい。
【0036】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、R
3の構造等に依存して変化させることが好ましい。
【0037】
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル樹脂の20重量%以上とすることが好ましく、20重量%〜95重量%とすることがより好ましく、40重量%〜90重量%とすることがさらに好ましく、50重量%〜80重量%とすることが特に好ましい。
【0038】
グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の耐熱性および透明性が低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が極端に低下したりすることがない。
【0039】
一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に低くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0040】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではなく、求められる物性に応じて適宜設定すればよいが、グルタルイミドアクリル樹脂の0〜50重量%とすることが好ましく、0〜20重量%とすることがさらに好ましく、0〜15重量%とすることが特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の耐熱性が不足する傾向がある。
【0041】
上記グルタルイミドアクリル樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
【0042】
その他の単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸単位、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単位、グルタル無水物単位、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単位の重合体の構成単位を挙げることができる。
【0043】
これらのその他の単位は、上記グルタルイミドアクリル樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0044】
また、これらのその他の単位は、その単位を構成する単量体を、グルタルイミドアクリル樹脂及び/又はグルタルイミドアクリル樹脂を得る原料となる樹脂に対し、共重合成分として用いても良いし、前記のイミド化反応を行う際に、上記その他の単位が副生して存在してもよく、また、グルタルイミドアクリル樹脂に対し、その他の単位を含む単量体等を共重合させるなどして導入してもよい。
【0045】
上記グルタルイミドアクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×10
4〜5×10
5であることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
【0046】
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0047】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、耐熱性が要求される用途においては適用範囲が制限される。
【0048】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂の酸価は0.01mmol/g以上、0.3mmol/g以下のものが好適に用いられる。酸価が0.3mmol/gを超えると、溶融押出時の粘度が高くなり成形性が低下したり、成型品に気泡が発生したりする傾向がある。0.01mmol/g以下であると耐溶剤性が劣る場合がある。なお、本発明における酸価とは、溶剤に溶解した樹脂に所定量の水酸化ナトリウム水溶液を加え、その溶液を塩酸水溶液で中和滴定することにより測定した値であり、具体的にはJIS K0070記載の方法で測定できる。
【0049】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(1)〜(3)で表される単位の含有量(換言すれば、割合)は、特に限定されるものではなく、グルタルイミドアクリル樹脂に要求される物性や、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムに要求される特性等に応じて決定すればよい。
【0050】
例えば、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムを光学用途に用いる場合、得られるフィルムに要求される光学特性などに応じて決定すればよい。
【0051】
ここで、上記グルタルイミドアクリル樹脂の製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
まず、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。なお、上記グルタルイミドアクリル樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合には、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとを共重合させ、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を製造する。任意の量の芳香族ビニル単位を含有する(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体は市販品を用いてもよいし、例えば、特開2001−31046、特開昭57−149311、特開昭57−153009、特開平10−152505、特開2004−27191など公知の方法で製造できる。
【0053】
この工程において、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0054】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。複数種の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、最終的に得られるグルタルイミドアクリル樹脂に複数種類の(メタ)アクリル酸エステル単位を与えることができる。
【0055】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとの重合割合を調整することにより、芳香族ビニル単位の割合を調整することができる。
【0056】
上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、および(メタ)アクリル酸エステル重合体の構造は、特に限定されるものではなく、イミド化反応が可能なものであればよい。具体的には、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
【0057】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
【0058】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体に、一級アミン(すなわち、イミド化剤)を添加し、イミド化を行う。これにより、上記グルタルイミドアクリル樹脂を製造することができる。
【0059】
上記一級アミン、すなわち、イミド化剤は、特に限定されるものではなく、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであればよい。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
【0060】
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0061】
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0062】
なお、このイミド化の工程においては、上記一級アミンに加えて、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
【0063】
このイミド化の工程において、上記一級アミンの添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミドアクリル樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
【0064】
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の物性や、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
【0065】
上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化することができる。
【0066】
上記グルタルイミドアクリル樹脂を押出機を用いて製造する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0067】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマー(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体)に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
【0068】
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
【0069】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。
【0070】
また、押出機には、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
【0071】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0072】
上記グルタルイミドアクリル樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
【0073】
具体的には、原料ポリマーを加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
【0074】
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
【0075】
上説したような方法によれば、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位の比率が所望に制御されたグルタルイミドアクリル樹脂を容易に製造することができる。
【0076】
次に、本発明における(B)成分であるアクリル系樹脂について述べる。
【0077】
(B)成分のアクリル系樹脂の酸価は0.2〜5.5mmol/gが好ましく、2.0〜4.5mmol/gがより好ましい。酸価が0.2mmol/g未満では、本発明の耐薬品性の向上が期待できないことがあり、酸価が5.5mmol/gを超えると、樹脂の成型加工性が低下したり、成型品の透明性が損なわれたりすることがあり好ましくない。
【0078】
前記(B)成分のアクリル系樹脂のガラス転移温度は40〜115℃が好ましく、60〜115℃がより好ましい。ガラス転移温度が40℃未満の場合は、配合量にもよるが樹脂のガラス転移温度の低下が顕著になることがあり、樹脂の耐熱性が不足する場合があり好ましくない。ガラス転移温度が115℃を上回ると、樹脂の成型加工性が低下したり、機械的強度が低下したりすることがあるので好ましくない。
【0079】
前記(B)成分のアクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、3×10
3〜1×10
5であることが好ましい。上記範囲内であれば、樹脂の表面性が悪くなったり、成形性が低下したりすることがない。好ましくは5×10
3〜8×10
4であり、さらに好ましくは8×10
3〜5×10
4である。
【0080】
(B)成分のアクリル系樹脂を形成するアクリル系単量体は、特に制限されないが、アクリル酸、メタクリル酸のほかに、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、などのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸メチル、などが好適に用いられる。
【0081】
また、これらの単量体と共重合可能な単量体としては、特に制限されないが、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;ビニルトルエン、ビニルナフタレン、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸塩;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド等のアクリル酸アルキルエステル誘導体;メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸塩、メタクリルアミド、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸アルキルエステル誘導体、無水マレイン酸、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、等があげられる。これらの単量体は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。アクリル系単量体に共重合する場合、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルが好ましい。
【0082】
グラフト共重合体を得る方法としては、乳化重合や溶液重合、塊状重合等の既知の方法を用いることができる。
【0083】
本発明中の樹脂組成物における(A)成分と(B)成分の合計100重量%中、(A)成分の割合は、99.9重量%から70重量%であり、好ましくは99.5重量%から80重量%、より好ましくは98重量%から90重量%である。即ち、(A)成分と(B)成分の合計100重量%中、(B)成分の割合は、0.1〜30重量%であり、好ましくは、0.5重量%〜20重量%であり、より好ましくは2〜10重量%である。(A)成分の割合が99.9重量%を上回ると、(B)成分の添加による耐薬品性の改善効果が十分ではなく、70重量%を下回ると、耐熱性が低下したり成形加工性が低下することがあるので好ましくない。
【0084】
なお、本発明の樹脂組成物に対し、必要に応じて滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤やフィラー等の公知の添加剤やその他の樹脂を含有しても良い。
【0085】
本発明の樹脂組成物は、その耐熱性、透明性等の性質を利用して、フィルムとして用いることができる。具体的には、食品、医薬品等の保護・保存用フィルム、食品用成形シート、農業用の防湿や保温用、コンデンサやモータなどの電気絶縁用として、また、耐電防止、熱線遮断、紫外線遮断などの機能性フィルム、テープ、ラベル、シールなどの工業用・一般装飾用フイルム、ネガフィルムやビデオテープなどの保存媒体用フィルム、などが挙げられる。
【0086】
また、本発明の樹脂組成物を使用して、光学用フィルムとして利用可能なフィルムを製造することができる。
【0087】
本発明の樹脂組成物からなる成形体を成形する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である、例えば射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物を溶融可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法も可能である。その何れをも採用することができるが、溶剤を使用しない溶融押出フィルム成形法が、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境等の影響の観点から好ましい。
【0088】
本発明にかかる光学用フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10μm〜200μmであることが好ましく、15μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0089】
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
【0090】
一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、フィルムの取扱が困難になることがある。
【0091】
本発明にかかる光学用フィルムは、ヘーズが3%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下が特に好ましい。
【0092】
本発明にかかる光学フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0093】
本発明にかかる光学用フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
【0094】
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0095】
また、本発明にかかるフィルムは、厚みに調整や機械的強度を向上させることを目的として、延伸フィルムとすることができる。フィルムを延伸する方法としては、一軸延伸や二軸延伸等の従来公知の任意の延伸方法が採用されうる。具体的には、例えば、ロールを用いた縦延伸、テンターを用いた横延伸、およびこれらを遂次組み合わせた遂次二軸延伸等がある。また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法も採用可能である。
【0096】
フィルムの延伸温度および延伸倍率は、得られたフィルムの機械的強度および表面性、厚み精度を指標として適宜調整することができる。延伸温度の範囲は、DSC法によって求めたフィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、好ましくはTg−30℃〜Tg+30℃の範囲であり、より好ましくはTg−20℃〜Tg+20℃であり、さらに好ましくはTg〜Tg+20℃の範囲である。延伸温度が高すぎる場合、得られたフィルムの厚みむらが大きくなりやすい上に、伸び率や引裂伝播強度、耐揉疲労等の力学的性質の改善も不十分になりやすい。また、フィルムがロールに粘着するトラブルが起こりやすい。逆に、延伸温度が低すぎる場合、延伸フィルムのヘーズが高くなりやすく、また、極端な場合は、フィルムが裂けたり割れたりする等の問題を引き起こしやすい。好ましい延伸倍率は1.1倍〜3倍、より好ましくは1.3倍〜2.5倍、さらに好ましくは1.5〜2.3倍である。
【0097】
また、本フィルムには、ハードコート処理や反射防止処理等のコーティングを実施することができる。これらの処理に用いられる樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば活性エネルギー線硬化型樹脂などが挙げられる。
【0098】
このような活性エネルギー線硬化型樹脂としては、特に制限はなく、紫外線や電子線により硬化し、表面硬度の向上など所望の機能を付与する樹脂であれば、任意に使用することができる。このような紫外線硬化型樹脂としては、アクリレート樹脂が好適に用いられる。アクリレート樹脂の例としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、およびジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸、メタクリル酸などのヒドロキシアルキルエステルなどから合成されるウレタンアクリレート樹脂、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0099】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光子保護フィルムに使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。
【0100】
より具体的には、面内位相差は20nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0101】
また、厚み方向位相差は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0102】
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる光学用フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる。
【0103】
一方、フィルムの面内位相差が20nmを超えたり、厚み方向位相差が50nmを超えたりすると、本発明にかかる光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルムを、液晶表示装置の偏光板として用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0104】
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。つまり、3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。
【0105】
Re=(nx−ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
【0106】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、配向複屈折の値が、0〜0.1×10
−3であることが好ましく、0〜0.01×10
−3であることがより好ましい。
【0107】
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
【0108】
なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「配向複屈折」とは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、前述のnx、nyを用いて説明すると、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
【0109】
本発明にかかる光学用フィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10
−12m
2/N以下であることが好ましく、10×10
−12m
2/N以下であることがより好ましく、5×10
−12m
2/N以下であることがさらに好ましい。
【0110】
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0111】
一方、光弾性係数の絶対値が20×10
−12m
2/Nより大きいと、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
【0112】
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
【0113】
c=△n/△F
ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
【0114】
本発明にかかる光学用フィルムは、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。具体的には、例えば、本発明にかかる光学用フィルムを、表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明にかかる光学用フィルムに表面処理を施すことが好ましい。
【0115】
このような表面処理を施すことにより、本発明にかかる光学用フィルムと、コーティングまたはラミネートされる別のフィルムとの間の相互の密着性を向上させることができる。
【0116】
なお、本発明にかかる光学用フィルムに対する表面処理の目的は、作用効果を目的とするものに限定されるものではない。つまり、本発明にかかる光学用フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。
【0117】
上記表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理であることが好ましい。
【0118】
また、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物において、アクリル系樹脂(A)が前記一般式(1)〜(3)で表される化合物を含有するアクリル系樹脂である場合(ただし、前記一般式(3)で表される化合物は含まれていなくてもよい)、上記一般式(1)〜(3)で表される構造単位の組成比を変更することにより、位相差の大きなフィルムを製造することができる。つまり、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、位相差フィルム等の光学補償フィルムの製造に好適に用いることができる。
【0119】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したような特性を有するため、そのまま最終製品として各種用途に用いることができる。また、上説したような各種加工を施すことにより、用途の幅を広げることができる。
【0120】
本発明にかかる光学用フィルムの用途は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤー、BDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤー、BDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。
【0121】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
【0122】
また、本発明の光学用フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、各成分の合成例の記載における部は重量部を示す。
【0124】
イミド化率の算出は、IRを用いて下記の通り行った。すなわち、生成物のペレットを塩化メチレンに溶解し、その溶液をSensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたIRスペクトルより、1720cm
-1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Abs
ester)と、1660cm
-1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Abs
imide)との比からイミド化率(Im%(IR))を求めた。なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0125】
酸価の測定方法は、JIS K0070に記載の方法に基づいて行った。
【0126】
各組成物のガラス転移温度は、JIS K7121に記載の方法に基づき、(株)島津製作所 示差走査熱量計DSC−50型を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
【0127】
フィルムの延伸は、(株)柴山科学器械製作所 二軸延伸装置 SS−70を用いて行った。
1.グルタルイミドアクリル樹脂(A−1)の合成
原料の樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(スチレン量11モル%)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化樹脂を製造した。
【0128】
使用した押出機は口径15mm、L/D=90の噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数は150rpmとした。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下、「MS樹脂」ともいう)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して25重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(I)を得た。
【0129】
次いで、口径15mm、L/D=90の噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化MS樹脂(I)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して8重量部の炭酸ジメチルと2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化MS樹脂(II)を得た。
【0130】
さらに、イミド化MS樹脂(II)を、口径15mm、L/D=90の噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮した樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、グルタルイミドアクリル樹脂A−1を得た。
【0131】
なお、得られたグルタルイミドアクリル樹脂A−1は、上説の実施形態に記載した一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位と、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位とが共重合したグルタルイミドアクリル樹脂に相当する。
【0132】
グルタルイミドアクリル樹脂A−1について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、屈折率を測定した。その結果、イミド化率は70モル%、ガラス転移温度は140℃、酸価は0.20mmol/g、屈折率は1.53であった。
2.グルタルイミドアクリル樹脂(A−2)の合成
グルタルイミドアクリル樹脂A−1の合成法に準じて、カルボキシル基の低減の際に、4重量部の炭酸ジメチルと1重量部のトリエチルアミンの混合液を注入したほかは、A−1の合成と同じ方法により、グルタルイミドアクリル樹脂A−2を得た。
【0133】
グルタルイミドアクリル樹脂A−2のイミド化率は70モル%、ガラス転移温度は140℃、酸価は0.32mmol/g、屈折率は1.53であった。
3.実施例及び比較例
口径30mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を240℃、スクリュー回転数250rpmとし、グルタルイミドアクリル樹脂(A−1)およびアクリル系樹脂(B)の混合物を、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
【0134】
加工性は滞留熱安定性と、フィルム化時の発泡の有無で評価した。
【0135】
滞留熱安定性は、(株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1Dを使用して評価した。具体的には、9.55mmφのバレル内で270℃にて樹脂約20gを溶解し、ピストン速度2.0mm/minで、1mmφ×10mmのダイスより押し出された樹脂の気泡発生開始時間を測定した。
【0136】
得られたペレットを、出口にTダイを接続した溶融押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を280℃、スクリュー回転数100rpm、樹脂ペレットの供給量を10kg/hrの割合で供給し、溶融押出することにより厚み約130μmのフィルムを得た。このフィルムを目視観察することにより、気泡の有無を判定した。
【0137】
上記のフィルムを145℃にて二軸延伸を実施し、厚み40μmの延伸フィルムを得た。
【0138】
耐溶剤性は以下に述べるキシレン塗布試験により判定した。具体的には、フィルム上に30mm×30mmのガーゼを載せ、その上からキシレン0.5mlを静かに滴下した。キシレンの揮発を防ぐために滴下部に蓋をして3分間放置した。その後、ガーゼを除去し、基材を乾いた布で拭いた。フィルムの拭き取った部分の表面荒れを3段階で判定した。雰囲気ならびにキシレンの温度は23±1℃とした。
【0139】
判定基準
○:痕が見られない
△:痕がわずかに認められる
×:痕がはっきり認められる
アクリル系樹脂(B)の酸価、Tg、ならびに分子量を表1に示す。ここで、JONCRYL(登録商標)シリーズは、BASF製であり、ARUFON(登録商標)シリーズは東亞合成(株)製である。また、アクリル樹脂(A)との配合比と、フィルムの気泡発生有無、滞留熱安定性、ならびにキシレン塗布試験の結果を表2に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】
【0142】
このように、特定以下の酸価であり、かつガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂に対し、特定の酸価とガラス転移温度とを持つアクリル系樹脂を添加することによって、加工性及び耐薬品性に優れた樹脂組成物を得ることができる。