特許第5732507号(P5732507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5732507組織治療装置への電力制御等のインピーダンス検出に基づく電力制御のシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732507
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】組織治療装置への電力制御等のインピーダンス検出に基づく電力制御のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20150521BHJP
   A61B 17/24 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   A61B17/39 310
   A61B17/24
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-212557(P2013-212557)
(22)【出願日】2013年10月10日
(62)【分割の表示】特願2010-518387(P2010-518387)の分割
【原出願日】2008年7月24日
(65)【公開番号】特開2014-4482(P2014-4482A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2013年10月10日
(31)【優先権主張番号】60/951,655
(32)【優先日】2007年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504329193
【氏名又は名称】アスマティックス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー ジャラード
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−65691(JP,A)
【文献】 特表2002−541905(JP,A)
【文献】 特表2008−526463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺の気道にエネルギーを送達するデバイスであって、該デバイスは、
それぞれの治療部位にエネルギーを送達するように構成された複数の電極を含む拡張可能な遠位部材と、
該複数の電極にエネルギーを供給するエネルギー供給装置と、
該複数の電極のうち隣接する電極の間の間隔、または、隣接する治療部位の間の距離に基づいて変動するインピーダンス値の関数として、該エネルギー供給装置から該複数の電極への該エネルギーの供給を制御するように構成された制御器と
を含む、デバイス。
【請求項2】
前記制御器は、前記エネルギー供給装置から前記複数の電極への前記エネルギーの供給を制御することにより、前記気道を所望の温度範囲まで加熱するようにさらに構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記所望の温度範囲は、非切除範囲である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記気道の温度を測定するように構成された温度感知構成要素をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記制御器は、前記複数の電極のうち隣接する電極の間の間隔、または、隣接する治療部位の間の距離の関数として、前記エネルギー供給装置から該複数の電極への前記エネルギーの供給を変動させるようにさらに構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記複数の電極のうちの少なくとも1つは、治療前のエネルギーパルスを送達するように構成されており、該治療前のエネルギーパルスは、少なくとも1つの初期インピーダンス値を決定するために使用され、前記制御器は、該少なくとも1つの初期インピーダンス値の関数として前記エネルギー供給装置からの前記エネルギーの供給を変動させる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記制御器は、第1の治療部位において、前記複数の電極のうち隣接する電極の間の間隔、または、隣接する治療部位の間の距離の関数として、前記エネルギー供給装置から該複数の電極への前記エネルギーの供給を制御するように構成され、第2の治療部位において、該複数の電極のうち隣接する電極の間の間隔、または、隣接する治療部位の間の距離の関数として、該エネルギー供給装置から該複数の電極への該エネルギーの供給を制御するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記制御器は、所望のインピーダンス値が到達するまで、前記エネルギー供給装置から前記複数の電極への電力の供給を制御するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記インピーダンス値は、所望のインピーダンス値であり、前記制御器は、所望の非切除範囲内にある温度に相関する所望のインピーダンス値に基づいて、前記エネルギー供給装置から前記複数の電極への電力を制御するようにさらに構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記制御器は、前記エネルギー供給装置から前記複数の電極への電力の供給を制御することにより、前記肺の平滑筋組織、粘液腺、神経、上皮組織、または、血管の特性を変更するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記拡張可能な遠位部材は、複数のレッグを有する拡張可能なバスケットである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記複数のレッグのうちの少なくとも1つは、電極である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記電極は、前記少なくとも1つのレッグの露出部分から形成され、該レッグの隣接する部分は、絶縁材料によって被覆されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記複数のレッグの各々は、電極である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記複数の電極は、単極性または双極性エネルギーを送達するように構成されている、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国仮特許出願第60/951,655号(2007年7月24日出願)の米国特許法第119条第(e)項の優先権を主張し、この出願の開示は、その全体が本明細書に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本出願は、概して、気道における気流への抵抗を低減するために、エネルギーを気道に作用させることによって肺病を治療する機器等の医療治療機器に関する。
【背景技術】
【0003】
喘息は、呼吸を困難にし、多くの場合、衰弱性であり得る病気である。喘息では、概して、(i)気管支収縮、(ii)過剰粘液分泌、および/または(iii)広範囲であるが可変である気流閉塞を引き起こす気道の炎症および腫脹の徴候が現れる。喘息は、持続性気道炎症をしばしば特徴とする慢性疾患であり得るが、喘息は、気道過敏性気道平滑筋組織の収縮を介するさらなる気道狭窄による急性発作をさらに特徴とする。
【0004】
喘息を管理するための従来の薬理学的アプローチには、(i)長期制御のために、抗炎症剤および長時間作用型気管支拡張剤を投与すること、および/または(ii)急性発作の管理のために、短時間作用型気管支拡張剤を投与することが含まれる。このような薬理学的アプローチの両方は、概して、処方薬の長期に渡る定期的な反復使用を必要とする。しかしながら、高用量のコルチコステロイド抗炎症薬は、慎重な管理を必要とする重篤な副作用を有し、また、高容量であってもステロイド治療に耐性を有する患者も居る。したがって、薬理学的管理の効果的な患者によるコンプライアンスと、喘息を引き起こす刺激を回避することが、喘息管理の成功に対する一般的な障壁となっている。
【0005】
Asthmatx,Inc.は、患者の肺における気道の平滑筋組織または他の組織(例えば、神経、粘液腺、上皮組織、血管等)の特性を変更するために、エネルギーを作用させることを伴う新しい喘息治療を開発した。このような治療に関連する方法および装置のいくつかの実施形態は、本発明の譲受人に譲渡された特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4、ならびに特許文献5および特許文献6に開示されており、これらの出願の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,411,852号明細書
【特許文献2】米国特許第6,634,363号明細書
【特許文献3】米国特許第7,027,869号明細書
【特許文献4】米国特許第7,104,987号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0010270号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0247746号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
気道の組織にエネルギーを作用させる前述の喘息治療の多くの実施形態は、肺気道によって画定される蛇行状の管路を通過させられる(例えば、進行させられる)ことが可能であるカテーテルを使用する。例えば、図1は、右気管支および左気管支94から延出するにつれて、種々の細気管支92の寸法が小さくなり、かつ多くの気管支96を有する、気管支樹90を示す。したがって、治療機器は、可変寸法の気道を治療するとともに、蛇行状の解剖学的形状を通って進行後に繰り返し配置する場合に、適切に機能するように構成されるべきである。
【0008】
また、治療部位に送達されるエネルギーの量および速度を制御することが望ましい。例えば、無線周波数(RF)エネルギーを肺気道における組織に送達するためのエネルギー送達機器であって、参照により組み込まれる本発明の譲受人に譲渡された上記特許および出願において開示されるエネルギー送達機器は、エネルギー送達中に電極のうちの1つの温度を測定することによって制御される。切除機器および焼灼機器等の肺気道の外部における他の用途のためにRFエネルギーを送達する他の種類の治療機器は、温度以外の測定要素に基づいて、心臓および血管系組織へのエネルギーの送達を制御している。例えば、切除機器および焼灼機器は、手順中にインピーダンスを監視し、インピーダンスの急増が測定されると、エネルギー送達を終了させる。この急増は、組織乾燥またはタンパク質の変性等の所望の最終結果と相関し得る。したがって、既存の切除システムおよび焼灼システムは、インピーダンスの増加と温度の増加との直接関係に基づいて、エネルギー送達を終了させ得る。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
人体の組織の治療に使用されるエネルギー送達機器に供給される電力を制御する方法であって、
該治療される組織の所望の状態に相関するインピーダンス値を決定することと、
該決定されたインピーダンス値に基づいて、電力値を同定することと、
該同定された電力値を使用して、該エネルギー送達機器を制御することと
を含む、方法。
(項目2)
治療前に上記組織の温度に相関する初期インピーダンス値を決定することと、
該初期インピーダンス値の100パーセント未満の割合であるようなインピーダンス値を選択することによって、上記所望の状態に相関する上記インピーダンス値を決定することと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
上記エネルギー送達機器を使用して、内部管路の上記組織にエネルギーを作用させることであって、該作用させられるエネルギーは、上記同定された電力値に相関する、こと
をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
上記電力値は、PIDアルゴリズムを使用して同定される、項目1に記載の方法。
(項目5)
上記エネルギー送達機器は、2つ以上の組織位置の近位に位置する2つ以上の電極を含み、そして、上記インピーダンス値を決定することは、
該組織位置の各々においてインピーダンス値を決定することと、
該組織位置における該インピーダンス値を平均化することと
を含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
上記所望の状態は、摂氏50度と80度との間の温度を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
上記電力値を同定することは、インピーダンスと上記組織の上記状態との反比例関係に基づいて該電力値を同定することを含む、項目1に記載の方法。
(項目8)
閉ループインピーダンスフィードバック電力制御システムであって、
電極を有するエネルギー送達装置と、
該エネルギー送達装置に電力供給するエネルギー供給装置と、
所望の非切除範囲内にある温度に相関する所望のインピーダンス値に基づいて、該エネルギー供給装置から該エネルギー送達装置への該電力を制御するエネルギー供給制御器と
を備える、システム。
(項目9)
上記エネルギー供給制御器は、初期インピーダンス値に基づいて、上記所望のインピーダンス値を決定する、項目8に記載のシステム。
(項目10)
上記所望のインピーダンス値は、上記エネルギー送達装置に関連する電圧測定および電流測定に基づく、初期インピーダンス値の割合である、項目8に記載のシステム。
(項目11)
上記所望のインピーダンス値は、初期インピーダンス値の70パーセントと90パーセントとの間である、項目8に記載のシステム。
(項目12)
上記所望のインピーダンス値は、上記エネルギー送達装置の特徴に基づいている、項目8に記載のシステム。
(項目13)
上記所望のインピーダンス値は、治療中に上記エネルギー送達装置を囲む管路の特徴に基づいている、項目8に記載のシステム。
(項目14)
上記所望のインピーダンス値は、初期インピーダンス値の時間変化率に基づいている、項目8に記載のシステム。
(項目15)
上記所望のインピーダンス値は、初期パルスインピーダンス、平均パルスインピーダンス、終了パルスインピーダンス、該パルスインピーダンスの変化率、またはパルスエネルギーに基づいている、項目8に記載のシステム。
(項目16)
ヒトの肺の気道内の組織の治療に使用される閉ループインピーダンスフィードバック電力制御システムであって、
細長い本体と、複数の電極を有する電極ユニットとを有するエネルギー送達機器と、
制御機器であって、所望のインピーダンス値と現在のインピーダンス値との差異に基づいて、該エネルギー送達機器に電力を出力する、制御機器と
を備える、システム。
(項目17)
上記制御機器は、上記インピーダンス値間の上記差異に基づいて、出力電力値を決定するPIDアルゴリズムを含む、項目16に記載のシステム。
(項目18)
上記所望のインピーダンス値は、上記組織の正常な体温において決定された初期インピーダンス値の割合である、項目16に記載のシステム。
(項目19)
上記初期インピーダンスは、上記治療機器の上記電極の幾何学的形状に基づいている、項目18に記載のシステム。
(項目20)
上記初期インピーダンスは、上記気道の直径に基づいている、項目18に記載のシステム。
(項目21)
上記制御機器は、双極式または単極式でエネルギーを送達するように構成される、項目16に記載のシステム。
(項目22)
上記制御機器は、20秒未満の作動時間の間、エネルギーを送達するように構成される、項目16に記載のシステム。
(項目23)
上記所望のインピーダンス値は、摂氏50度〜80度の範囲内の温度に相関する、項目16に記載のシステム。
(項目24)
上記出力電力は、40ワット未満である、項目16に記載のシステム。
(項目25)
上記エネルギーは、無線周波数エネルギーを含む、項目16に記載のシステム。
(項目26)
エネルギー送達装置を使用して肺の気道内の組織にエネルギーを送達する方法であって、
初期インピーダンス値を決定するために、低エネルギーパルスを該組織に伝達することと、
該エネルギーの送達に関連する所望の組織状態と、該初期インピーダンス値とに基づいて、所望のインピーダンス値を決定することと、
現在のインピーダンス値と該所望のインピーダンス値との差異に基づいて、該エネルギー送達装置への電力出力を調整することと
を含む、方法。
(項目27)
患者の気道の第1の位置における組織へのエネルギーの送達に使用されるエネルギー送達機器への電力出力を調整する方法であって、
現在のインピーダンス値と設定インピーダンス値との差異を同定することと、
該現在のインピーダンス値と該設定インピーダンス値との間の該同定された差異に基づいて、該電力出力を修正することと
を含む、方法。
(項目28)
上記電力出力を修正することは、上記エネルギー送達機器へ出力するための上記電力の値を決定するために、PIDアルゴリズムに上記差異を挿入することを含む、項目27に記載の方法。
(項目29)
上記エネルギー送達機器を上記気道内の第2の位置に移動させることと、
新しい設定インピーダンス値を決定することと、
該新しい設定インピーダンス値に基づいて、上記同定するステップおよび修正するステップを繰り返すことと
をさらに含む、項目27に記載の方法。
(項目30)
エネルギー送達装置を使用して肺の気道内の組織にエネルギーを送達する方法であって、
治療前の低エネルギーパルスを該組織に伝達することと、
該伝達された低エネルギーパルスの1つ以上のパラメータに基づいて、所望のインピーダンス値を決定することと、
現在のインピーダンス値と該所望のインピーダンス値との差異に基づいて、該エネルギー送達装置への電力出力を調整することと
を含む、方法。
(項目31)
上記低エネルギーパルスの上記1つ以上のパラメータには、初期パルスインピーダンス、平均パルスインピーダンス、終了パルスインピーダンス、該パルスインピーダンスの変化率、またはパルスエネルギーが含まれる、項目30に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
以下の図面は、詳細な説明を参照して読まれるべきである。異なる図面における同一の番号は、同一要素を言及する。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、本開示の実施形態を例示的に示し、本開示の範囲を限定するように意図されない。
図1図1は、ヒトの肺内の気道を示す。
図2A図2Aは、いくつかの実施形態に従うエネルギー送達のためのシステムを示す概略図である。
図2B図2Bおよび2Cは、エネルギーを体内組織に供給するための治療機器の一部分を示す部分断面における側面図である。
図2C図2Bおよび2Cは、エネルギーを体内組織に供給するための治療機器の一部分を示す部分断面における側面図である。
図3図3は、インピーダンス測定を使用して治療中に電力を制御するためのルーティンを示すフロー図である。
図4図4は、インピーダンス測定を使用して治療中に電力を制御するためのシステムを示すブロック図である。
図5図5は、管路における治療機器の例示的電極構成を示す概略図である。
図6図6は、印加電力の計算時に使用するための例示的比例積分微分(proportional integral derivative; PID)アルゴリズムを示すブロック図である。
図7図7は、治療中の時間に対する温度およびインピーダンスの関数を示すチャートである。
図8図8は、温度とインピーダンスとの相関をより詳細にさらに示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(概要)
エネルギー送達機器および/または標的組織の測定されたインピーダンスを使用して、内部組織の治療を制御するための機器、システム、および方法について説明する。いくつかの例では、システムは、測定されたインピーダンスに基づいて、エネルギー送達機器への電力を制御する。システムは、治療部位のパラメータおよび/またはエネルギー送達機器のパラメータに関連する所望または設定インピーダンスレベルを判断し、治療部位へのエネルギー送達中または送達前に、現在または現在のインピーダンスレベルを測定し、2つのインピーダンスに基づいて、温度または治療部位の他のパラメータを維持するように電力を制御し得る。
【0011】
後述する詳細のいくつかは、当業者がそれらを十分に実用化、作製、使用可能であるように、以下の例および方法を説明するために適用される。しかしながら、後述の詳細および利点のいくつかは、本技術の特定の実施形態および方法の実用化に必要がない場合がある。さらに、本技術は、請求項の範囲内にあるが、詳述されていない他の例および方法を含み得る。
【0012】
特定の機能、構造、ルーティン、ステップ、または特徴は、本技術の1つ以上の例において、任意の適切な方式で組み合わせられ得る。本明細書における表題は、便宜上だけのものであり、請求する技術の範囲または意味を限定または解釈するように意図されない。
【0013】
いくつかの例では、システムは、インピーダンスのフィードバックに基づいて、エネルギー送達機器の閉ループ電力制御を提供する。非切除低温度(例えば、組織乾燥またはタンパク質変性の温度未満の温度)におけるインピーダンスを監視することによって、システムのいくつかの実施形態によって、治療システムに使用する機器の簡略化が可能になり、および/またはより安定または一貫した治療送達がもたらされ得る。短い治療時間および/または低い電力レベルおよび温度レベルにおいて、組織の電気伝導性が、組織内の電荷担体の移動性増加に起因して増加するため、インピーダンスは、温度に逆相関し得る。インピーダンスは、このような状況において温度が増加するにつれてそれに応じて減少する(インピーダンス=1/伝導性)。温度とインピーダンスとのこの逆相関により、システムは、(a)温度または標的組織の他のパラメータに関するフィードバックを受信するために、エネルギーを標的組織に提供するエネルギー送達機器の電極を使用して、システムのインピーダンスを測定することが可能になり、また、(b)エネルギー送達機器への電力をそれに応じて調整することが可能になる。
【0014】
場合によっては、例えば、インピーダンスを測定することによって、無線周波数または他のエネルギーの組織への送達中に温度を測定する必要がなくなり得るため、システムのいくつかの実施形態は、熱電対または他の温度測定構成要素を含まずに、カテーテルを利用することができる。結果として、治療機器のいくつかの実施形態は、小型で、単純で、製造費用が比較的低くなり得る。さらに、インピーダンスの測定により電力を制御することによって、システムは、インピーダンスの測定によって、管路の単一位置だけの温度の測定よりも、組織における温度の変動が少なくなり得るため、管路の周囲の組織の状態をより正確または全体的に評価することが可能になり得る。これによって、インピーダンス監視が、治療位置内または治療位置間の温度監視よりも変動を受けにくいため、適用と適用との間でより正確な治療および/またはより一貫したエネルギー送達がもたらされ得る。
【0015】
(治療システムの実施形態)
患者の管路にエネルギーを送達するための治療システムおよび方法のいくつかの実施形態に関する具体的な詳細について説明する。実施形態の多くは、喘息を治療する患者の肺における気道へのRFエネルギーの送達に関連して後述する。他の徴候を治療するために、他のエネルギー様態を肺気道または他の種類の管路または組織(例えば、血管、皮膚等)に送達する他の実施形態は、本発明の範囲内であり得る。例えば、他の種類のエネルギー様態には、熱(抵抗および/または赤外線)、マイクロ波、レーザー、超音波(例えば、HIFU)、冷凍切除、放射、または他の様態が含まれることが可能である。さらに、本発明のいくつかの他の実施形態は、本章に説明するものとは異なる構成、構成要素、または手順を有することが可能である。
【0016】
図2Aは、本開示の実施形態に従う、患者における管路にエネルギーを送達するためのシステム100であって、電力/制御ユニット110およびエネルギー送達機器120を有するシステム100を示す概略図である。電力/制御ユニット110は、エネルギー発生器111(例えば、電力供給装置)と、プロセッサ113を有する制御器112と、ユーザインターフェース114とを含むことが可能である。エネルギー発生器111および制御器112は、RFエネルギーをエネルギー送達機器120に提供することが可能であるが、他の実施形態では、エネルギー発生器111および制御器112は、他のエネルギー様態を提供することが可能である。制御器112は、(i)エネルギー送達機器120への電力出力と、(ii)ユーザインターフェース114のインジケータ118、119、121、122とを制御する安全アルゴリズムおよび他の制御アルゴリズムを含むことが可能である。電力/制御ユニット110は、単極RF構成での任意のリターン電極115、エネルギー発生器111にエネルギーを送達させるように制御器112に指示するための任意のスイッチ116(例えば、作動ペダル)、ならびにエネルギー送達機器120に連結される導電線117およびコネクタ126のための、1つ以上の接続部123、124、125をさらに含むことが可能である。本明細書における図示が、単に例示目的のものであり、システムまたは機器の実際の形状、寸法、または寸法を必ずしも反映しないことを理解されたい。
【0017】
エネルギー送達機器120は、喘息またはヒトにおける管路に関連する他の徴候を治療するための治療機器の例である。図2Aに示すエネルギー送達機器120の実施形態は、遠位部分132および近位部分134を有する細長い本体130と、遠位部分132におけるエネルギー送達ユニット140と、近位部分134におけるハンドル150とを含む。細長い本体130の長さは、肺の気道または治療を目的とする他の管路における標的組織へのアクセスに十分であるべきである。例えば、細長い本体130の長さは、気管支鏡を通過し、かつ肺内深くの標的気道に到達可能であるように、約0.5フィートから8フィートであることが可能である。また、細長い本体130は、直径が3mmの小さい気道を治療するようにも構成可能であるが、細長い本体130は、任意の特定の寸法の気道を治療することに限定されず、3mmよりも小さいかまたは大きい気道を治療してもよい。典型的には、送達ユニット140は、3mm〜10mmの間の気道を治療するために、可変寸法に拡張/収縮する。
【0018】
細長い本体130のいくつかの実施形態は、アクセス機器(例えば、気管支鏡)の作業ルーメンを通って摺動するように構成される可撓性カテーテルである。また、細長い本体130は、アクセス機器に対してエネルギー送達ユニット140を配置するための、遠位区間132における複数のマーカ136(図2Aに図示せず)と、アクセス機器の遠位端からのエネルギー送達ユニット140の便宜的配置を支援するための近位マーカ127とを含むことが可能である。システム100における使用に適切なマーカを含む細長い本体の具体的な実施形態は、米国特許出願第11/777,225号および米国特許出願第11/551,639号ならびに米国特許出願公開第2007/0106292A1号に記載されており、これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
エネルギー送達ユニット140は、電極142等の少なくとも1つのエネルギー送達要素であって、気道または患者における他の管路の組織にエネルギーを送達するように構成されるエネルギー送達要素を有することが可能である。図2Bは、エネルギー送達ユニット140の実施形態を詳細に示す部分断面図である。本実施形態では、エネルギー送達ユニット140は、4つの電極142と、細長い本体130に固定され、かつ電極142の近位端に取り付けられる近位スリーブ138aおよび近位整列突出もしくは保持具144aと、電極142の遠位端に取り付けられる遠位スリーブ138bおよび遠位整列突出もしくは保持具144bとを含む。また、エネルギー送達機器120は、遠位スリーブ138bにおける遠位保持具144bに取り付けられ、かつ細長い本体130のルーメン147および近位保持具144aを通って移動するように構成されるワイヤ146も含むことが可能である。
【0020】
図2Bに示すエネルギー送達ユニット140の例は、「バスケット型」構成であり、本構成において、電極142は、ワイヤ146が細長い本体130に対して近位に(矢印P)移動する際に外側に(矢印O)移動する。電極142は、ハンドル150におけるバネもしくは他の弾性要素および/または電極142のバネ力がワイヤ146を遠位に駆動するように、ワイヤ146を解放することによって、内側に(矢印I)移動することが可能である。エネルギー送達ユニット140がアクセス機器180の作業ルーメン181を通って進むことが可能になるとともに、電極142が低プロファイル構成であり、電極142が管路の可変寸法に従って外側に繰り返し移動可能になることから、電極142の外側/内側への移動は、機器をルーメン内または肺の気道において動作させる際に有用である。この可視化は、アクセス機器180の撮像ルーメン128および/または光ファイバルーメン129(またはアクセス機器の遠位端に装着される光学チップもしくはファイバ)によって容易になり得る。本図面では、引張ワイヤ146は、電極142とエネルギー供給器111との間に導線も備え得る。
【0021】
図2Cは、1つの電極142の一部分をさらに詳細に示す分解図である。組織壁へ制御エネルギーを送達する電極142の非絶縁活性中心部分145を画定するように、電極142は、近位端および遠位端において外側絶縁材料または塗膜143を有する。適切な電極構成の具体的な実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国出願公開第2007/0118184において開示される。電極反転を防止し、かつバスケット拡張を防止するための適切な電極および保持具のさらなる実施形態は、米国出願公開第2007/0106292号に開示される。システム100は、多種多様の治療パターンでエネルギー送達機器120を介してエネルギーを標的部位に送達し得る。他の設計および種類の治療機器に関するさらなる詳細、エネルギーの例、および/または治療パターンの例は、本発明の譲受人に譲渡された米国特許第6,411,852号に記載され得る。
【0022】
再び図2Aを参照すると、ハンドル150の図示する例は、1人の操作者がアクセス機器(例えば、気管支鏡)を一方の手(例えば、第1の手)で保持し、他方の手(例えば、第2の手)を使用して、(i)エネルギー送達ユニット140がアクセス機器の遠位端を越えて突出し、所望の標的部位に配置されるまで、アクセス機器の作業ルーメンを通して細長い本体130を進め、(ii)ワイヤ146(図2B)を引張り、電極142が気道路の側壁に接触するまで電極142を外側に移動させるとともに、同じ第2の手で、アクセス機器に対してカテーテルを適所に保持するように構成される。また、同一の操作者が、一人で手順全体を実行可能であるように、電力/制御ユニット110のスイッチ116を動作させることも可能である。
【0023】
一実施形態では、ハンドル150は、第1の部分151と、接合部153によって第1の部分151に回転自在に連結される第2の部分152とを有する。第1の部分151および/または第2の部分152は、電極142の操作のためのアクチュエータの一例である。第1および第2の部分151〜152は、把持部154と、把持部154の上側部分に位置するヘッド部156とを形成するように構成可能である。例えば、ヘッド部156は、把持部154の一部分がヘッド部156よりも狭くなるように把持部から外側に突出可能である。図2Aに示す具体的な実施形態では、第1の部分151は、第1のネック部分163および第1のカラー部分165を含む第1の曲面161を有し、第2の部分152は、第2のネック部分164および第2のカラー部分166を含む第2の曲面162を有する。第1および第2の曲面161〜162は、側面図から見ると、これらの曲面が双曲線状把持部を画定するように配置されるように構成可能である。
【0024】
システムのいくつかの実施形態では、制御器112は、概して、システム100およびシステムの構成要素から情報を受け入れ、かつ種々のアルゴリズムに従って情報を処理して、エネルギー発生器を制御するための制御信号を生成するように構成されるプロセッサを含む。また、プロセッサは、システムおよびシステムの構成要素から情報を受け入れ、種々のアルゴリズムに従って情報を処理し、情報信号を生成してもよい。情報信号は、可視的インジケータ、デジタルディスプレイ、またはユーザインターフェースの発信音発生器に向けられ、システム状態、構成要素状態、手順状態、またはシステムにより監視される任意の他の有用な情報をユーザに報告し得る。制御器112のプロセッサは、デジタルICプロセッサ、アナログプロセッサ、または制御アルゴリズムを実行する任意の他の適切な論理または制御システムであり得る。
【0025】
図2Aおよび図2Bに示すシステム100のいくつかの実施形態は、管路の組織へのエネルギー送達前、送達中、および/または送達後にインピーダンスを測定することによって制御可能である。以下の説明は、システム100の制御が実装され得る適切な環境に関する簡略的で一般的な説明を提供する。必須ではないが、システムおよび種々の構成要素(制御器112等)の側面は、汎用コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ、ノート型コンピュータ、携帯型機器、ハンドヘルド型コンピュータ等)により実行されるルーティン等の、コンピュータにより実行可能な命令を一般的な背景として説明される。システムが、インターネット家電、他のハンドヘルド型機器(携帯情報端末(PDA)を含む)、組込型コンピュータ、マルチプロセッサシステム、マイクロプロセッサベースの電子機器またはプログラム可能家庭用電荷製品、ネットワークPC、小型コンピュータ、大型汎用コンピュータ、およびその同等物を含む、他の通信構成、データ処理構成、またはコンピュータシステム構成で実用化され得ることを、当業者は理解されたい。用語の「コンピュータ」およびその同等物は、概して、上記機器およびシステムならびに任意のデータプロセッサと交換可能に使用されてもよく、かつこれらのうちのいずれかを言及する。例えば、例示的コンピューティングシステムは、プロセッサ、入力機器、ハードディスクもしくはリムーバブルメディア等のデータ記憶装置、ディスプレイ機器、および/または出力機器を含み得る。さらに、システム100は、ネットワーク接続または無線送受信機を介して、種々のネットワーク接続環境に接続してもよい。
【0026】
システムの側面は、明細書に詳述するコンピュータにより実行可能な命令のうちの1つ以上を実行するように特別にプログラミング、構成、構築される専用コンピュータまたはデータプロセッサに組み込まれ得る。また、システムの側面は、通信ネットワークを介してリンクする遠隔処理機器によってタスクまたはモジュールを実行する分散型コンピューティング環境において実用化され得る。分散型コンピューティング環境では、プログラムモジュールは、ローカルおよび遠隔の両方のメモリ記憶装置に位置し得る。
【0027】
システムの側面は、磁気的にまたは光学的に可読であるコンピュータディスクを含むコンピュータ可読媒体上に、半導体メモリ、ナノ技術メモリ、有機メモリもしくは光学メモリ、または他の携帯型データ記憶媒体上のマイクロコードとして格納または分散され得る。当然ながら、コンピュータにより実装される命令、データ構造、画面ディスプレイ、およびシステムの側面に基づく他のデータは、インターネット上または他のネットワーク(無線ネットワークを含む)上、伝搬媒体(例えば、電磁波、音波等)上で伝搬された信号上において、ある時間分散され得るか、または任意のアナログまたはデジタルネットワーク(パケット交換型、回路交換型、または他のスキーム)上で提供され得る。本技術の一部分がサーバコンピュータ上に存在し、対応する部分がクライアントコンピュータに存在することを、当業者は認識する。
【0028】
(エネルギー送達機器への電力の監視および制御)
制御器112のいくつかの実施形態は、標的組織部位のインピーダンスの測定に基づいて、エネルギー送達の閉ループ制御を実行する。例えば、システムは、インピーダンスを測定し、所望の温度に対応するインピーダンスレベルを判断し、インピーダンスレベルに到達するまで、エネルギー送達機器に電力を供給する。また、システムは、インピーダンス測定に基づいて、標的部位における所望のレベルのエネルギーを維持するようにエネルギー送達機器に電力を供給し得る。いくつかの実施形態では、システムは、電力の電極への非印加時または電力の標的組織への最初の印加時t(例えば、第1のパルスの開始時)における初期レベルまたは基礎レベル未満のレベルにインピーダンスを維持するように電力出力を制御する。インピーダンスは、最初、組織が切除または焼灼を開始する前においては、組織の温度と反比例している。したがって、インピーダンスは、最初、治療周期の初期部分中に下降し、組織温度に反比例して変動し続ける。制御器112は、インピーダンスを維持するために、インピーダンス測定、ひいては所望の非切除範囲の温度に基づいて、電力出力を正確に調整することが可能である。
【0029】
図3は、標的領域の初期インピーダンスを決定するステップ(ブロック310)を含むインピーダンス測定に基づいて、治療中の電力を制御するためのルーティン300の実施形態に関するフロー図を示す。例えば、システムは、エネルギー送達機器の標的部位の体温における電圧および電流の初期測定に基づいて、初期インピーダンスを決定することが可能である。代替として、システムは、初期インピーダンス値を決定するために、標的部位において試験的または治療前の低エネルギーパルス(すなわち、組織を加熱せず、非治療的である)を伝達し得る。
【0030】
ルーティン300は、所望の治療温度または温度範囲に相関する所望または設定インピーダンスを決定するステップ(ブロック320)をさらに含む。場合によっては、システムは、設定インピーダンスを、ブロック310で判断した初期インピーダンスの割合として決定する。代替として、システムは、標的部位のパラメータ(例えば、管路の寸法、管路の初期温度、管路の粘液もしくは含水量、または他の生理学的要因)、エネルギー送達機器のパラメータ(例えば、拡張、収縮、間隔、長さ、幅、厚さ、半径等の電極の構成または幾何学的構造)、所望の温度範囲、試験的または治療前パルスのパラメータ、ならびに/あるいは組織に及ぼすエネルギーの影響に関連付けられる他のパラメータ(例えば、双極性または単極性エネルギー送達)に基づいて、設定インピーダンスを決定し得る。これらのパラメータは、初期インピーダンス値から自動的に検出され得るか、または測定され得る(例えば、管路の初期温度を測定するための、機器搭載センサ、非接触型赤外線センサ、または標準温度計)。また、ルーティン300は、エネルギー送達機器に適用される電力を決定するために、PIDアルゴリズム等のアルゴリズムに設定インピーダンスを適用するステップ(ブロック330)も含むことが可能である。PIDアルゴリズムに関するさらなる詳細は後述する。
【0031】
また、ルーティン300は、治療中に、現在または現在のインピーダンス値を測定するステップと、所望のインピーダンスおよび/または温度の達成、回復、維持に必要な電力を制御するために、測定したインピーダンス値をアルゴリズムに適用するステップとを含み得る。例えば、治療中、システムは、現在のインピーダンスレベルを、設定インピーダンスレベルよりも高いレベルとして同定してもよく、電極への電力出力を決定するために、現在のインピーダンスレベルおよび設定インピーダンスレベルの両方を、PIDアルゴリズムへの入力として使用してもよい。したがって、システムのいくつかの実施形態は、所望の量のエネルギーを組織に送達するために、現在または現在のインピーダンス値を少なくとも周期的に監視する。次いで、ルーティン300は、組織において所望の温度を維持するために、エネルギー送達機器を介してエネルギーを組織に送達するステップ(ブロック340)によって継続可能である。
【0032】
いくつかの例では、システムは、ルーティン300の一部または全部を周期的または連続的に実行してもよい。例えば、システムは、治療中に、設定インピーダンスを連続的に決定し、設定インピーダンスの任意の変化に基づいて電力レベルを調整し得る。システムは、設定インピーダンスを周期的に決定し、一定の閾値変化を上回る設定インピーダンスの変化に基づいて電力レベルを調整し得る。代替として、いくつかの例では、システムは、治療と治療の間に、設定インピーダンスを再び計算する。例えば、第1の標的部位における治療後、システムは、第2の標的部位に移動し、新しい設定インピーダンスを計算し、印加電力をそれに応じて調整し得る。
【0033】
図4は、インピーダンス測定に基づいて治療中に電力を維持する制御器112の実施形態のブロック図を示す。制御器112は、プロセッサ410と、メモリ等の記憶構成要素420と、制御構成要素430と、電力供給装置440と、入力構成要素450と、出力構成要素460とを含む。制御構成要素430は、ルーティン、アルゴリズム、実行可能スクリプト、または所望のインピーダンスレベル、ひいては所望の温度レベルへの到達もしくはそのレベルの維持に基づいて、インピーダンスを監視し、かつ動作(エネルギー送達機器への電力の低減または増加)を実行可能である他のデータ構造もしくはプログラムモジュールを含み得る。例えば、制御構成要素430は、エネルギー源111からエネルギー送達機器への電力の出力を制御するプロセスを実行し得る。制御器112は、双極性または単極性のいずれかの動作においてエネルギーを送達するように構成され得る。
【0034】
(設定インピーダンスの計算)
上述のように、システムは、標的部位、エネルギー送達機器、温度、または治療の他の側面に関連するパラメータを使用して、設定インピーダンスを決定し得る。図5は、気道500における電極実装の例を概略的に示す。気道500は、内部管路505を有し、複数の電極510は、管路505の周囲において離間している。電極510は、管路505の周囲の標的領域上の離散標的部位520、522、524、526に直接影響を及ぼす。本例では、電極510の間隔および管路505の寸法(例えば、直径)は、離散部位間の長さLを決定し、長さLは、初期インピーダンスに基づく設定インピーダンスに影響を及ぼし得る。例えば、長さLが短くなると、隣接する加熱標的部位間の距離が小さくなり、加熱部位が、設定インピーダンスの決定においてより大きな要因となり得るため、初期インピーダンスと設定インピーダンスとの間の割合が大きくなる。長さLが長くなると、設定インピーダンスに対する加熱部位の影響は、小さくなり得る。したがって、設定インピーダンス値は、気道直径が減少するにつれて減少し、気道直径が増加するにつれて増加し得る。
【0035】
システムは、電極の寸法および/または構成、管路の寸法、あるいは上述の標的部位またはエネルギー送達機器に関連する他の側面をモデル化することによって、設定インピーダンスを経験的に決定し得る。さらに、システムは、初期インピーダンスの時間変化率の測定に基づいて、設定インピーダンスを調整し得るか、または他の要因に基づいて、設定インピーダンスを調整し得る。例えば、システムは、最小エネルギー付与時に初期インピーダンスを測定することによって、初期インピーダンスを初めに決定し、かつ設定インピーダンスに到達するように、電極構成を初期インピーダンスと比較することによって、設定インピーダンスを決定し得る。場合によっては、システムは、類似の電極寸法および/または構成に関連する履歴情報または患者情報を閲覧し、設定インピーダンスの決定時にこの情報を使用し得る。
【0036】
代替として、システムは、試験パルス等の治療前の低エネルギーパルスの1つ以上のパラメータに基づいて、設定インピーダンスを決定し得る。システムは、(a)初期パルスインピーダンス(Z)、(b)平均パルスインピーダンス(Zavg)、(c)終了パルスインピーダンス(Zend)、(d)パルスインピーダンス曲線の傾斜(パルスインピーダンスの変化率)(Zslope)、および(e)パルスエネルギー、ならびに1つ以上の定数(k1-6)を含む試験パルスの1つ以上のパラメータから、設定インピーダ
ンス(Z)を計算し得る。試験パルスは、約0.01ジュールから約1ジュールまでのエネルギー範囲にあり、約0.01ミリアンペアから約500ミリアンペアまでの範囲の電流パルス振幅と、約0.01ミリ秒から約500ミリ秒までの範囲のパルス継続時間とを有する。一定の電流パルスを利用すると、インピーダンス変化の解釈が容易になる。短継続時間パルスでは、電極/組織界面における温度およびインピーダンス変化は、隣接組織のIR加熱に比例し、式中、Iは、パルスの電流振幅であり、Rは、隣接組織の抵抗である。パルス振幅およびパルス継続時間は、試験パルスの開始から終了までに約10%のインピーダンス変化を達成するように設定され得る。例えば、試験パルスの典型的な設定は、300ミリ秒の間に100ミリアンペアにおいて0.5ジュールであってもよく、ここで、Z=(k*Z)+(k*Zavg)+(k*Zend)+(k*Zslope)+kである。1つ以上の定数の値は、温度制御下で採取されたデータを使用して、定常状態インピーダンスに対して、試験パルスインピーダンス測定の直線フィット法を行なうことによって決定され得る。しかしながら、試験パルスのパラメータの任意の数の変化を利用して、設定インピーダンスを決定してもよいことを理解されたい。
【0037】
(設定インピーダンスを使用する電力の決定)
システムは、1つ以上の可変利得要因を有するアルゴリズム等のPIDアルゴリズムを使用して、エネルギー送達機器に出力するための電力を決定し得る。図6を参照すると、印加電力の計算に使用するPIDアルゴリズム600の例を示すブロック図が示される。例えば、制御構成要素430(図4)は、設定点610としてインピーダンス値を受信するPID制御器であり得る。PID制御器は、(a)電流誤差に対する応答を決定する比例補正630、(b)最近の誤差に基づく応答を決定する積分補正640、および(c)誤差の変化率に基づいて応答を決定する微分補正650の3つの補正を実行することによって、エネルギー送達機器に作用させるために、設定点と、電圧または電流等の出力値670との間の誤差を補正することが可能である。アルゴリズムは、3つの補正660を合計して、電力値670を出力する。さらに、システムは、連続的に誤差を更新および補正するために、ブロック620を使用して、出力値を使用して再計算し得る。治療前または試験のパルスが、上述のように、設定インピーダンスを決定するために、本インピーダンス制御アルゴリズムに付加され得ることを理解されたい。
【0038】
本例では、比例利得(アルファ)、積分利得(ベータ)、および微分利得(ガンマ)は、関与する方法、適用する温度、電極の種類、標的部位のパラメータ、または他の要因に基づいて設定され得る定数である。システムは、アルゴリズム600を使用して、出力値を所望の値へ調節する。例えば、PID制御器は、設定インピーダンスに到達する前に、所望の設定インピーダンスを超えることが可能である。PID係数の決定に適切な方法には、経験的方法、ジーグラ・ニコルス法、コーエン・クーン法、およびソフトウェアによって実装されるモデル(例えば、有限要素解析)が含まれる。
【0039】
上述のように、いくつかの実施形態は、図6の3つのパラメータ制御器を用いる。可変利得要因(G)を使用して、適応的にRFエネルギー送達を制御することによって、システムは、肺組織気管支、細気管支、および他の気道路を含む広範な種類の組織を治療することが可能になる。可変利得要因は、例えば、初期温度の増加中のエネルギー入力に対する温度応答に基づいて、係数(アルファ、ベータ、およびガンマであり、各々は3つのPIDパラメータの関数)を増減させる。PIDパラメータの例は、エネルギー送達機器および/または制御器について、本明細書においてアルファ/ベータ/ガンマ空間で提示され、表現される。これらの設定およびタイミングは、上述のようなエネルギー送達装置を使用する種々の肺組織における試験に基づき得る。場合によっては、システムは、アルファ/ベータ/ガンマ係数を可変利得要因で増減させるだけでなく、PIDまたはアルファ/ベータ/ガンマ座標空間のいずれかにおいて作用する監視温度および/またはインピーダンス応答に応じて、アルファ、ベータ、およびガンマの相対的な重み付けを変更する。これは、アルファ、ベータ、またはガンマ定数のいずれかまたは全てを個々に調整することによって実行可能である。
【0040】
一つの例では、PIDアルゴリズムEの誤差値625は、設定インピーダンスと治療中の現在インピーダンスとの間の差異(Z-Z)と等しくなるように設定される。例えば、パラメータは、Z=0.9Z、およびE=0.9Z-Zによって定義され得る。したがって、システムは、現在インピーダンスを使用して初期インピーダンスからインピーダンス補正を差し引いた、初期インピーダンスの概して100%未満、より典型的には、約70%から約90%までの範囲の割合に、設定インピーダンスを等しくし得る。次いで、システムは、アルゴリズムに入力を提供するために、現在インピーダンス(Z)を計算し得る。次いで、電力は、アルゴリズムから出力された電圧Vの値からP=IVとして見出すことが可能である。要するに、PIDアルゴリズムは、他の便益の中でも特に、治療中に使用するエネルギーの制御に使用される電力供給を調節するように適用され得る。
【0041】
(インピーダンスの温度との相関)
前述のように、一定の温度において、インピーダンスは、温度に相関し得る。例えば、短い治療時間(例えば、約10秒から20秒以下まで)ならびに/あるいは低い電力レベルおよび温度レベル(例えば、約4ワットから40ワットまでおよび摂氏約50度から80度まで)では、インピーダンスは温度に逆相関し得る。治療機器が組織を加熱するので、組織の電気伝導性は、組織内の電荷担体の移動性増加によって増加し、インピーダンスは減少する(インピーダンス=I/伝導性)。
【0042】
図7は、組織の治療中の時間に対する温度およびインピーダンスの相関関係を示すチャート700である。図を参照すると、温度710およびインピーダンス730は、時間720の関数として逆に変動する。約1.8秒〜2.0秒において示すように、温度曲線715は、摂氏約60度〜70度(例えば、65度)および約150オーム〜160オームにおいて、インピーダンス曲線735との類似性を示し始める。両曲線715、735は、時間が10秒まで経過しても、逆相関している。したがって、図7は、低い温度におけるインピーダンスと温度との相関を反映しており、この相関は、システムがインピーダンス測定を使用することにより、所望の範囲(例えば、摂氏50度から80度までの範囲の一定の治療組織温度)に組織の温度を正確に維持するために、エネルギー送達機器に適用される電力レベルを制御することが可能になる。
【0043】
図8のチャート800は、1.8秒から9.8秒までの間のチャート700の一部を詳細に示す。点840、842、844、および846における時間720に対する温度710およびインピーダンス730の変動を参照すると、インピーダンスのピークと温度のバレーとの間に、組織温度への反応に一致する直接相関および逆相関が存在する(インピーダンスが増加する低温において)。したがって、図8は、インピーダンスと温度との直接相関および逆相関を示す。
【0044】
インピーダンスに基づいて電力を制御することによって、システムのいくつかの実施形態は、多種多様のカテーテルおよび電極設計を使用して、管路の周囲のいくつかの領域における組織の状態を正確に評価することが可能になる。例えば、システムは、電極によって直接インピーダンスを測定することが可能であるため、熱電対または他の温度センサをカテーテルに組み込む必要がない。これによって、熱電対を使用する場合に比べ、エネルギー送達機器のコスト、寸法、および複雑性が低減し得る。さらに、電極の間隔によって、標的組織の検出温度と実際温度とにおける偏差を誘発する誤差がもたらされ得る。例えば、各電極における測定温度は、測定インピーダンス以上に変動し得る。インピーダンスを使用すると、インピーダンス値が全電極において平均化され得るため、システムは、これらの変動を低減し、より安定した治療を送達することが可能になる(例えば、重み付き平均またはインピーダンス値間で同等でない別の重み付け)。
【0045】
(結論)
本明細書に説明するシステムおよび方法は、インピーダンスの測定を使用して、組織へのエネルギーの付与を制御することが可能である。温度に相関するインピーダンスは、初期インピーダンスの割合等の、所望のレベルに設定され得る。設定インピーダンスは、初期インピーダンス、電極の寸法および間隔、標的管路の寸法、ならびに他のパラメータの関数であり得る。次いで、設定インピーダンスは、エネルギー送達機器に作用させる電力を抽出するために、PIDアルゴリズムまたは他の制御ループアルゴリズムに入力され得る。
【0046】
文脈から明白に反対の意味が要求されない限り、説明および請求項において、単語の「備える」およびその同等物は、排他的または包括的な意味ではなく、包含的な意味で解釈され、つまり、「含むが、これらに限定されない」の意味で解釈される。また、単数または複数を使用する単語は、複数または単数もそれぞれ含む。請求項が、2つ以上の事項のリストを参照して単語「または」を使用する場合、その単語は、リストにおける事項のいずれか、リストにおける事項の全部、およびリストにおける事項の任意の組み合わせである単語の解釈の全てを包含する。
【0047】
上述の種々の例は、さらなる例を提供するように組み合わせ可能である。本明細書において言及するおよび/または出願データシートに列挙する米国特許、米国特許出願公表、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許文献の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。必要であれば、複数の治療ユニット、種々の構成を含む熱伝導性機器、および種々の特許、出願、および文献の概念を用いて、本技術のまたさらなる実施形態を提供するように、本技術の側面を修正してもよい。
【0048】
これらの変化および他の変化を、前述の説明を考慮して本技術に加えることが可能である。一般に、以下の請求項において、使用する用語は、本明細書および請求項に開示する具体的な例に本技術を限定するように解釈されるべきではなく、請求項に従って動作する全てを含むように解釈されるべきである。したがって、本技術は、本開示によって限定されないが、代わりに、その範囲は、以下の請求項によって全体的に判断される。
図3
図4
図1
図2A
図2B
図2C
図5
図6
図7
図8