特許第5732510号(P5732510)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732510
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/12 20060101AFI20150521BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F04B39/12 D
   F04B39/00 104E
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-217988(P2013-217988)
(22)【出願日】2013年10月21日
(62)【分割の表示】特願2010-210361(P2010-210361)の分割
【原出願日】2010年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-37837(P2014-37837A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2013年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】梅田 憲
(72)【発明者】
【氏名】三橋 博
(72)【発明者】
【氏名】成澤 伸之
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−021704(JP,U)
【文献】 特開平03−249332(JP,A)
【文献】 特開昭63−065170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/12
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動されたピストンが内部で往復動することにより、空気を圧縮するシリンダと、
前記シリンダにボルトにより取り付けられたシリンダヘッドと、
前記シリンダ内の空気の流れの向きを規定する空気弁と、
前記シリンダヘッドと前記空気弁との間に配置され、前記シリンダ内の空気をシールするヘッドパッキンとを備え、
前記シリンダヘッドに設けられたボルト固定用の穴に前記シリンダヘッド内から前記ヘッドパッキンを介して漏れ出た空気から結露した水分を逃がす連通路を設け、前記ヘッドパッキンを大気と連通させることを特徴とする圧縮機。
【請求項2】
前記ボルト固定用の穴に前記連通路を複数個設けたことを特徴とする請求項1に記載の
圧縮機。
【請求項3】
前記連通路を前記シリンダヘッドの前記ヘッドパッキンと接触する部分に形成された凹
状溝としたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記シリンダヘッドと前記空気弁との間の空間は、大気から空気を吸込む吸込み室と、
空気を貯留するタンクへ空気を吐出する吐出室とに区画され、
前記吸込み室よりも前記吐出室に近い位置にあるボルト固定用の穴に設けた前記連通路
の数は前記吐出室よりも前記吸込み室に近い位置にあるボルト固定用の穴に設けた前記連
通路の数よりも多いことを特徴とする請求項2に記載の圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧縮機のシリンダヘッド固定用ボルトの発錆防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のエンジンユニットは、シリンダおよびシリンダヘッドが複数のスタッドボルトにより締着され、シリンダ側の合わせ面にスタッドボルトの挿通孔にいたる凹溝が水抜き穴として形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−249332
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のエンジンユニットは空気圧縮機にかかるシリンダではなく、シリンダヘッドとシリンダとの間に圧縮空気をシールするパッキン部を有しておらず、水抜き穴がボルト挿通孔の下方にある。このため、仮に特許文献1のシリンダヘッド部構造を圧縮機用に用いたとしても、圧縮運転停止後に結露した水分がパッキン部よりボルトのネジ部にしみこみ、ボルトが発錆し、カジリを生じることになる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、ボルト周りにパッキン部から漏れ出た水分がボルト周囲の通路を大気に連通することで水分を大気に逃がし、発錆させない圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み、本発明は、モータによって駆動されたピストンが内部で往復動することにより、空気を圧縮するシリンダと、前記シリンダにボルトにより取り付けられたシリンダヘッドと、前記シリンダ内の空気の流れの向きを規定する空気弁と、前記シリンダヘッドと前記空気弁との間に配置され、前記シリンダ内の空気をシールするヘッドパッキンとを備え、前記シリンダヘッドに設けられたボルト固定用の穴に前記シリンダヘッド内から前記ヘッドパッキンを介して漏れ出た空気から結露した水分を逃がす連通路を設け、前記パッキンを大気と連通させることを特徴とする圧縮機を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ボルト周りにパッキン部から漏れ出た水分が付着することを防止することでボルトを発錆させない圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1における圧縮機
図2】本発明の実施例1における圧縮機シリンダ回りの縦断面構造
図3】本発明の実施例1における圧縮機シリンダヘッドの横断面構造
図4】本発明の実施例1における圧縮機シリンダヘッドの縦断面構造(ボルトが無い部分)
図5】本発明の実施例1における圧縮機シリンダヘッドの縦断面構造(ボルトが有る部分)
図6】本発明の実施例2における圧縮機シリンダヘッドの縦断面構造(ボルトが有る部分)
図7】本発明の実施例3における圧縮機シリンダヘッドの縦断面構造(ボルトが有る部分)
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1−5を用いて、本発明の実施例1における構成を説明する。
【0010】
図1は本発明の実施例1における圧縮機の全体構造である。タンク1の上に圧縮機本体2とモ−タ3が配置される。モ−タ3の回転により圧縮機が駆動され、サイレンサ4から空気を吸込み、圧縮された後吐出配管5を通ってタンク1内に蓄圧されるものである。止め弁6は用途に応じて開放し蓄圧された空気を使用する際に用いられる。
【0011】
図2は圧縮機本体2のシリンダ7周りの断面図である。シリンダ7の上に空気弁パッキン8を介してシリンダ7内の空気の流れの向きを規定する空気弁9が配置されている。空気弁の上にはヘッドパッキン10を介してシリンダヘッド11が配置され、シリンダヘッド11はヘッドボルト16によりシリンダ7に取り付けられている。シリンダヘッド11と空気弁との間の空間は大気から空気を吸込む吸込み室11−2とタンクへ空気を吐出する吐出室11−1に区画されている。シリンダ7内にはピストン12がライダ−リング12−3により往復動可能なように構成されている。ピストン12はモ−タ3の回転が連接棒13に伝えられ往復動することで吸込み孔14からシリンダ7内に吸込み室11−2に空気を吸込みピストン12の動きで圧縮しシリンダヘッド内吐出室11−1に吐出され吐出孔15を通ってタンクへ吐出される。ここで、圧縮機は大気中の水分(水蒸気)を含んだ空気を圧縮し、圧縮によってヘッド周りは温度上昇するが、停止時には高温の熱が放熱し温度が低下する。従って、圧縮された空気は圧力の増加に伴い飽和水蒸気量が低下するため温度の低下に伴いシリンダヘッド11内の吐出室11−1内で結露する。
【0012】
図3図2のAA断面を示した断面図である。シリンダヘッド11には吐出室11−1と吸込み室11−2があり高圧の吐出室11−1のシ−ルはヘッドパッキン10にて行っている。圧縮機のシリンダヘッド11は圧縮時の熱で高温になりヘッドパッキン10はヘタリを生じシ−ル性の低下を生じる。また、耐熱性の良好なグラファイト製の場合はパッキンの製造工程から層状組織となっており極微量ではあるが層間で漏れを生じる。漏れを生じるとシリンダヘッド吐出室11−1内で結露した水分が漏れ出し、若しく水分を含んだ空気が漏れ出しボルト近傍で結露し、後述するボルト16に水分が付着し、発錆する可能性がある。
【0013】
図4図3のBB断面を示した断面図である。この位置では、ヘッドボルトがないため、ヘッドパッキンより漏れ出た水蒸気を含んだ空気は直接大気に出るため、ヘッドボルト16の腐食の問題は生じない。
【0014】
図5図3のCC断面を示した断面図である。図3のCC断面はヘッドボルト16を通る断面である。シリンダヘッド11のボルト穴は加工公差を逃げることとシリンダヘッドの製造面での課題からボルト16の回りには空間11−3が存在する。即ち、図5のシリンダヘッド11はダイカスト製の場合でありボルト穴に下方に広がる抜け勾配がある。この結果、ボルト16とボルト16の固定用の穴(ボルト穴)との間には空間11−3が生じる。この空間の上面はボルト16の頭で密閉されているが、本実施例ではヘッドパッキン10(即ち、ヘッドパッキン10の漏れ通路部10−1のボルト固定穴の空間11−3に面する部分を含む空間)を大気と連通するため、連通路17をシリンダヘッドパッキン10より上方(またはヘッドパッキン10と水平方向ほぼ同位置)に設けた。これにより、吐出室11−1内からヘッドパッキン10の漏れ通路10−1を介して漏れた飽和状態の空気を大気へ逃がすことができる。また、結露水が漏れだした場合も水分を乾燥させることが出来る。
【0015】
図5に示したヘッドパッキン10−1部で漏れを生じると空間11−3内に直接水分が漏れ出したり、飽和状態の空気が漏れた場合は圧力の低下により結露水を生じることになる。ここで、通路17が無い場合は空間11−3は密閉空間であり、微量でも空間内にパッキン部から漏れた水分が停留するためボルト16のネジ部を腐食させることになる。
【0016】
ここで、特許文献1のシリンダの連通路は外部より侵入した水分を流し出すためのものであり、下方に連通路を有する。従って、特許文献1のシリンダのように下方に連通路を有する場合は、水分が下方に流れた後に排出するため結露水がボルトネジ部にしみ込みネジ部を腐食させることになる。また、連通路を介して水分を乾燥させる効果についても上方に水分が滞留し乾燥効果が少なく乾燥する前にボルトネジ部に水分がしみ込み易い。腐食が進行するとシリンダ7のネジ部でカジリを生じてメンテナンスでボルト16を外す時にネジを破損させるなどの不具合原因となる。一方、本実施例では連通路17がヘッドパッキン10よりも上方に設けてあるため、空間11−3内の水分は圧縮時の熱によって蒸発してヘッドパッキン10から上方へ向けて大気へ逃がすことが出来る。これにより、ボルト16のネジ部の腐食を防止でき、上記不具合を防止することができる。
【実施例2】
【0017】
図6を用いて本発明の実施例2における構成を説明する。ここでは、実施例1と同じ構成には同じ符号で示し、その説明を省略する。図6は、図3のCC断面を示した断面図である。本実施例では、実施例1に対して連通路18を追加し、1つのボルト穴に対し、複数の連通路17、18を設け、より多量の漏れを生じた場合にも容易に空間11−3の水分を大気へ逃がすようにしたものである。
【0018】
また、本実施例では、吸込み室11−2よりも吐出室11−1に近い位置にあるボルト16については、ボルト穴に複数の連通路17、18を設け、吐出室11−1よりも吸込み室11−2に近い位置にあるボルト16についてはボルト穴に1つの連通路17を設けてもよい。これにより、圧縮熱により温度が高くなり、より多くの水分が結露する吐出室11−1の近傍にあるボルト16のボルト穴からより多くの水分を大気に逃がすことができる。また、吸込み室11−2の近傍は吐出室11−1近傍に比べて高温になりにくく、水分の結露も少ない。従って、ボルト穴の連通路を1つとすることでシリンダヘッドの加工を容易にすることができる。
【0019】
なお、ここでは、吸込み室11−2よりも吐出室11−1に近い位置にあるボルト穴については、連通路を2つとし、吐出室11−1よりも吸込み室11−2に近い位置にあるボルト穴については連通路を1つとしたが、吸込み室11−2よりも吐出室11−1に近い位置にあるボルト穴に設けられた連通路が吐出室11−1よりも吸込み室11−2に近い位置にあるボルト穴に設けれた連通路よりも多ければ連通路の数は上記のとおりでなくてもよい。
【実施例3】
【0020】
図7を用いて本発明の実施例3における構成を説明する。ここでは、実施例1と同じ構成には同じ符号で示し、その説明を省略する。図7は、図3のCC断面を示した断面図である。本実施例では、実施例1に対して、シリンダヘッドのヘッドパッキンと接触する面、すなわちヘッドパッキンと対向した位置に凹溝を設けて、ヘッドパッキンを大気に連通させるものである。図7では三角形状の溝19で構成された例示している。実施例1と比較して、シリンダヘッドのヘッドパッキンと接触する部分に溝のため、例えばダイカストでシリンダヘッドを成形する場合は型で溝を構成でき、加工性に優れた連通路を構成することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 タンク
2 圧縮機本体
3 モ−タ
4 サイレンサ
5 吐出配管
6 止め弁
7 シリンダ
8 空気弁パッキン
9 空気弁
10 ヘッドパッキン
10−1 ヘッドパッキンの漏れ通路
11 シリンダヘッド
11−1 吐出室
11−2 吸込み室
11−3 空間
12 ピストン
12−1 ピストンリング
12−3 ライダ−リング
13 連接棒
14 吸込み通路
15 吐出通路
16 ボルト(シリンダヘッド固定用)
17 連通路(実施例1)
18 連通路(実施例2)
19 連通路(実施例3)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7