(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5732585
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】くくり罠
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
A01M23/34
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-236505(P2014-236505)
(22)【出願日】2014年11月21日
【審査請求日】2014年12月22日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514314783
【氏名又は名称】北澤建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】北澤 行雄
【審査官】
谷山 稔男
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−21974(JP,U)
【文献】
特開昭54−10173(JP,A)
【文献】
実開昭50−135689(JP,U)
【文献】
特開2002−300842(JP,A)
【文献】
実開平3−76478(JP,U)
【文献】
特開2002−238433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるくくり用ワイヤーと、罠をセットする際に前記罠用ループを作るように前記くくり用ワイヤーを保持できる罠本体と、該罠本体が上に置かれる部材であって地中に埋められることで獣の足が落ち込む空間を作る埋設筒体とを備えるくくり罠において、
前記罠本体が、獣の足が踏み抜く踏み抜き穴と、該踏み抜き穴を形成する罠本体の枠部の側を根元としてブラシ状の毛の先端が内側に向かって延びるように植毛された状態に設けられ、前記獣の足が踏み抜いた際には該獣の足に圧接状態で抜けないように付着する植毛状抜き止め部材と、該植毛状抜き止め部材の上側で、罠をセットする際に前記罠用ループを作るように前記くくり用ワイヤーを保持すると共に、前記獣の足が罠にかかった際には前記罠用ループが内側へ外れて該獣の足をくくることができるように保持するため、内側に開いた溝状に形成される罠用ループ保持部とを備えることを特徴とするくくり罠。
【請求項2】
前記踏み抜き穴を形成する前記罠本体の枠部が、内側へ傾斜する内斜面を備えて浅いすり鉢状に設けられていることを特徴とする請求項1記載のくくり罠。
【請求項3】
前記埋設筒体の内部に設置され、獣の足が前記踏み抜き穴を通過して進入した際に、ストッパが外れて前記罠本体を押し上げるように装填される跳ね上げ用バネを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のくくり罠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一方に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるくくり用ワイヤーと、該罠用ループを作るように該くくり用ワイヤーを仮に保持するワイヤー保持部とを備えるくくり罠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、中央孔から外周に向け順次厚板とし乍ら放射状の切込部を設けた香料入り軟質の円盤内に、該切込部周辺を除いた切込のバネ鋼板と、その外周に細バネ鋼を取巻き内装し、該円盤上辺外周の数箇所に内方が切込となるワイヤー仮止孔をもつ仮止突起片を一体に設けたものとワイヤーの片端には止具で備える保持輪に該ワイヤーを貫通させて片側を輪状部とし、該ワイヤーの他側を支部とし乍ら端には止金具を備えたものとからなる猪捕獲具(特許文献1参照)が、既に提案されている。
【0003】
この猪捕獲具によれば、コイルスプリングのバネでくくり用ワイヤーを跳ね上げるタイプ(特許文献2参照)に比較して、構成が簡単であり、同等の効果を期待できるものである。しかしながら、その猪捕獲具では、罠本体の切込のバネ鋼板が獣の足に強く食い込んで簡単には抜けないように付着してしまうため、その罠本体を獣の足から適切に取り外すことが難しく、獣を痛めると共に、狩猟の作業性が悪い課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53−21974号公報(第1頁)
【特許文献2】特開2014−23525号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
くくり罠に関して解決しようとする問題点は、先行技術のくくり罠では、簡単な構成であるが、罠本体の切込のバネ鋼板が獣の足に強く食い込んで抜けないように付着してしまうため、その罠本体を獣の足から取り外すことが難しいことにある。
そこで本発明の目的は、簡単な構成でありながら、罠用ループによって獣の足を確実にくくることができると共に、罠本体を獣の足から容易に取り外すことができるくくり罠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係るくくり罠の一形態によれば、一方に設けられた通し孔に他方を通して罠用ループが作られるくくり用ワイヤーと、罠をセットする際に前記罠用ループを作るように前記くくり用ワイヤーを保持できる罠本体と、該罠本体が上に置かれる部材であって地中に埋められることで獣の足が落ち込む空間を作る埋設筒体とを備えるくくり罠において、前記罠本体が、獣の足が踏み抜く踏み抜き穴と、該踏み抜き穴を形成する罠本体の枠部の側を根元としてブラシ状の毛の先端が内側に向かって延びるように植毛された状態に設けられ、前記獣の足が踏み抜いた際には該獣の足に圧接状態で抜けないように付着する植毛状抜き止め部材と、該植毛状抜き止め部材の上側で、罠をセットする際に前記罠用ループを作るように前記くくり用ワイヤーを保持すると共に、前記獣の足が罠にかかった際には前記罠用ループが内側へ外れて該獣の足をくくることができるように保持するため、内側に開いた溝状に形成される罠用ループ保持部とを備える。
【0007】
また、本発明に係るくくり罠の一形態によれば、前記踏み抜き穴を形成する前記罠本体の枠部が、内側へ傾斜する内斜面を備えて浅いすり鉢状に設けられていることを特徴とすることができる。
【0008】
また、本発明に係るくくり罠の一形態によれば、前記埋設筒体の内部に設置され、獣の足が前記踏み抜き穴を通過して進入した際に、ストッパが外れて前記罠本体を押し上げるように装填される跳ね上げ用バネを備えることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るくくり罠によれば、簡単な構成でありながら、罠用ループによって獣の足を確実にくくることができると共に、罠本体を獣の足から容易に取り外すことができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るくくり罠の形態例を示す斜視図である。
【
図3】
図1の形態例の作動状態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る罠本体の形態例を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る埋設筒体の形態例を示す平面図である。
【
図6】獣の足が本発明に係るくくり罠にかかった際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るくくり罠の形態例を添付図面1〜6に基づき詳述する。
本発明に係るくくり罠は、基本構成として、
図1に示すように、一方に設けられた通し孔11に他方を通して罠用ループ12が作られるくくり用ワイヤー10と、罠をセットする際に罠用ループ12を作るようにくくり用ワイヤー10を保持できる罠本体20と、その罠本体20が上に置かれる部材であって地中に埋められることで獣の足が落ち込む空間を作る埋設筒体30とを備える。なお、13はワイヤー金具であり、通し孔11を形成するように、くくり用ワイヤー10の一方の端に固定されている。
【0012】
本発明に係る罠本体20は、
図1〜4に示すように、獣の足が踏み抜く踏み抜き穴21と、その踏み抜き穴21を形成する罠本体の枠部22の側を根元24aとしてブラシ状の毛24の先端24bが内側に向かって延びるように植毛された状態に設けられ、前記獣の足が踏み抜いた際にはその獣の足に圧接状態で抜けないように付着する植毛状抜き止め部材23とを備えている。本形態例の植毛状抜き止め部材23は、
図2、3に示すように、ブラシ状の毛24の根元24aが、金属で断面コの字状に設けられたリング状の毛の固定枠部25の枠溝に挿入され、その毛の固定枠部25をプレスしてブラシ状の毛24の根元24aを固定することによってリング状に設けられている。また、26は固定用リング板であり、植毛状抜き止め部材23を罠本体の枠部22の下面にビスを用いて固定するための押え板になっている。なお、本形態例のブラシ状の毛24は、水平方向に植毛されている形状になっているが、これに限定されず、ブラシ状の毛24の先端24bに向かって下方に傾斜したように植毛されていてもよい。これによれば、獣の足の踏み抜きを導入しやすく、逆に獣の足が抜けにくくなる有利な効果を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る罠本体20は、植毛状抜き止め部材23の上側で、罠をセットする際に罠用ループ12を作るようにくくり用ワイヤー10を保持すると共に、前記獣の足が罠にかかった際には罠用ループ12が内側へ外れて該獣の足をくくることができるように保持するため、内側に開いた溝状に形成される罠用ループ保持部28とを備えている。本形態例の罠用ループ保持部28は、ワイヤー通し用切り欠き部22cの部分を除き、ほぼ全周に渡って形成されているが、本発明はこれに限定されることなく、断続的に形成されていてもよく、罠用ループ12を容易に外れることができるように実質的に保持できる態様であればよい。また、本形態例では、罠本体の枠部22の下面内周に、三段の段部が形成されており、上部の段部が罠用ループ保持部28を形成するように設けられ、中段の段部が植毛状抜き止め部材23の毛の固定枠部25が嵌る部分を形成するように設けられ、下部の段部が、固定用リング板26が嵌って固定されることで、その固定用リング板26が毛の固定枠部25に当接して植毛状抜き止め部材23を固定できるように設けられている。
【0014】
これによれば、簡単な構成でありながら、
図6に示すように、罠本体20が獣の足に付着するため、その罠本体20上に置かれた罠用ループ12によって獣の足を確実にくくることができると共に、獣の足に圧接する部材が植毛状抜き止め部材23であるため、罠本体20を回転させるようにひねることで、ブラシ状の毛24が適宜に曲がって倒れて圧接状態を緩和する状態になり、その罠本体20を獣の足から容易に取り外すことができる。
【0015】
なお、本形態例の罠本体20は円形状に設けられているが、本発明はこれに限定されることなく、例えば楕円形や長円形状に設けることができるのは勿論である。また、ブラシ状の毛24である線材状の素材(材質)についても、特に限定されるものではなく、通常のデッキブラシなどで用いられている樹脂製のものの他に、天然の植物繊維からなるもの、金属製の細線材や、それらの線材を混合したものなど、適宜選択的に利用できるのは勿論である。
【0016】
また、本形態例のくくり罠は、踏み抜き穴21を形成する罠本体の枠部22が、内側へ傾斜する内斜面22aを備えて浅いすり鉢状に設けられている。
これによれば、獣の足が罠本体20の内側へ滑って、罠本体20を獣の足が踏み抜き易くなり、獣をより捕獲し易くなる。
【0017】
さらに、本形態例のくくり罠では、罠本体の枠部22の外周が、外側へ傾斜する外斜面22bになっており、これによれば、罠本体20の外径が大きくなり、埋設筒体30上に安定的に設置することができる。
【0018】
また、本形態例のくくり罠では、跳ね上げ用バネ50が、埋設筒体30の内部に設置され、獣の足が踏み抜き穴21を通過して進入した際に、ストッパ51が外れて罠本体20を押し上げるように装填されている。
これによれば、跳ね上げ用バネ50の力で罠本体20を押し上げることができるため、罠本体20がより深く獣の足に付着することになり、獣をより確実に捕獲し易くなる。
なお、本形態例では、跳ね上げ用バネ50の上面と罠本体20の下面との間は所定の間隔が開くように、跳ね上げ用バネ50が埋設筒体30の内部にセットされる。これによれば、跳ね上げ用バネ50が伸びる際に、跳ね上げ用バネ50の上面が罠本体20を叩き、罠本体20を効果的に跳ね上げることができる。
【0019】
次に、上記の跳ね上げ用バネ50に係止してセットするストッパ51の係止構成の形態例について、
図2、3、5に基づいて詳細に説明する。なお、本形態例の跳ね上げ用バネ50は、コイルスプリングになっているが、これに限定されることはなく、例えばトーションスプリングなど、他のバネ部材によって構成されてもよい。
【0020】
先ず、本形態例の跳ね上げ用バネ50は、埋設筒体30の内部でその内周に沿ってガイドされて適切に伸縮できるように、その外径が設定され、底渡し部材31の上に載置されて、上方へ跳ね上がることができるように設けられている。本形態の底渡し部材31は、埋設筒体30の底面を横断するように帯板状に形成され、その両端が折り曲げられて、その両端の部分で埋設筒体30にビスによって固定されている。なお、底渡し部材31の形態は。これに限定されず、例えば、埋設筒体30の底面全体を塞ぐように形成されてもよく、跳ね上げ用バネ50を適切に支持できる形態であればよい。
【0021】
本形態例のストッパ51は、弾性のある帯状のバネ板材が成形されて設けられ、常時は、
図3に示すように、跳ね上げ用バネ50から外れて反り返った形態となるように設けられている。また、
図2に示すように、ストッパ保持具52が一対のストッパ51の間に介在して、跳ね上げ用バネ50の上端縁にストッパ51の先端の係止部が係止されてセットされる。つまり、ストッパ保持具52の全体で、一対のストッパ51を径方向外周側へ付勢するように突っ張り棒の状態に機能して、跳ね上げ用バネ50を縮んだ状態にセットすることができる構成になっている。
【0022】
本形態例のストッパ保持具52は、踏み抜き受け部52aと、二つの突っ張り棒部52bによって構成されており、踏み抜き受け部52aの左右に突っ張り棒部52bが配されることで、全体として突っ張り棒の状態に機能する。本発明に係るストッパ保持具52は、これに限定されることなく、一対のストッパ51を径方向外周側へ付勢するようにセットでき、獣の足が埋設筒体30内に進入してきた際にはその付勢状態を解除できるものであれば、他の構成によるものを用いることができるのは勿論である。
【0023】
次に本形態例のくくり罠のセット方法及び使用状態を説明する。
先ず、罠用ループ12を罠本体20内に配して、くくり用ワイヤー10の固定端15の側をワイヤー通し用切り欠き部22cから外へ出す。次に、罠用ループ12を罠用ループ保持部28に嵌めセットする。そして、地中にセットした埋設筒体30の上に、罠本体20を置き、土などをかけてセットする。また、
図6に示すように、くくり用の杭14を地面に打ち込むと共に、くくり用ワイヤー10の固定端15を木に巻き付けるなどして固定する。くくり用の杭14は、くくり用ワイヤー10の中途部(罠用ループ12に比較的近い部位)に針金などで連結され、地面に打ち込まれて、獣の足が罠用ループ12と罠本体20を踏み抜いて罠にかかった際に、獣の足の動作に伴って罠用ループ12をくくるための引く力(獣の動きに対する抵抗力)が適切に生じるように設けられている。このようにセットされたくくり罠によれば、
図6のように、獣の足に罠本体20が付着し、その罠本体20の上に載った状態の罠用ループ12が、くくり用ワイヤー10が獣自体によって引かれることによって締まり、獣が捕獲される。
【0024】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0025】
10 くくり用ワイヤー
11 通し孔
12 罠用ループ
13 ワイヤー止金具
14 くくり用の杭
15 固定端
20 罠本体
21 踏み抜き穴
22 罠本体の枠部
22a 内斜面
22b 外斜面
22c ワイヤー通し用切り欠き部
23 植毛状抜き止め部材
24 ブラシ状の毛
24a 根元
24b 先端
25 毛の固定枠部
26 固定用リング板
28 罠用ループ保持部
30 埋設筒体
31 底渡し部材
50 跳ね上げ用バネ
51 ストッパ
52 ストッパ保持具
52a 踏み抜き受け部
52b 突っ張り棒部
【要約】
【課題】簡単な構成でありながら、罠用ループによって獣の足を確実にくくることができると共に、罠本体を獣の足から容易に取り外すことができるくくり罠を提供する。
【解決手段】くくり用ワイヤー10と、罠本体20と、埋設筒体30とを備えるくくり罠において、罠本体20が、獣の足が踏み抜く踏み抜き穴21と、踏み抜き穴21を形成する罠本体の枠部22の側を根元としてブラシ状の毛の先端が内側に向かって延びるように植毛された状態に設けられ、前記獣の足が踏み抜いた際には該獣の足に圧接状態で抜けないように付着する植毛状抜き止め部材23と、植毛状抜き止め部材23の上側で内側に開いた溝状に形成される罠用ループ保持部28とを備える。
【選択図】
図1