(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記圧力検知部は、互いに対向する第1及び第2の平面を有する板状の誘電体と、前記第1の平面に対向して配置される第1の電極と、前記第2の平面に対向して配置される第2の電極とを含んで構成され、
前記第2の電極は、弾性を有する導電体によって構成され、
前記圧力検知部は、前記第1及び第2の電極により構成されるキャパシタの静電容量が前記第2の電極と前記誘電体との接触面積に応じて変化するよう構成される
請求項1に記載の位置指示器。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図を参照しながら、本発明による位置指示器の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
[位置指示器100を含むシステム]
図1は、位置指示器100を含むシステムの構成図である。位置指示器100は、ペン型の外観を有しており、ユーザがペンのように手に持って入力操作面200aに対して位置指示などの操作を行えるように構成されている。
【0032】
位置指示器100は、後述するペン先(芯体の先端、以下同じ)と入力操作面200aとの接触位置付近(図中(X,Y))にて静電結合状態の変化を生じさせることができるように構成される。タブレット型情報端末200の位置検出部(後述)は、この変化により生ずる静電容量の容量値の変化を検出することにより、ペン先の接触位置を検出するよう構成される。
【0033】
タブレット型情報端末200は、上述した静電結合状態の変化を検出する静電容量方式のセンサである位置検出部を備えている。また、タブレット型情報端末200は、位置指示器100による操作が行われる入力操作面200aを有する。入力操作面200aは、ガラスなどによって構成される。
【0034】
図1に示した通信チャネルCHは、位置指示器100とタブレット型情報端末200との間の通信路である。位置指示器100は通信チャネルCHを通じ、筆圧データ等(図中P)の各種の情報をタブレット型情報端末200に対し送信あるいは供給する。タブレット型情報端末200は、送信された情報を受け、その内容に応じて、表示等のための処理を行う。
【0035】
[位置指示器100]
図2は、位置指示器100の機能ブロック図である。位置指示器100は、筆圧検知機構部301と筆圧信号送信部302とを含み構成される。
【0036】
筆圧検知機構部301は、芯体の先端にかかる力(あるいは、入力操作面200aの鉛直方向に得られる反作用の力、以下、筆圧と称する。)の量を電気信号として抽出可能な量(例えば、静電容量C、電圧レベルV等)へ変換する。筆圧検知機構部301は、本実施の形態に係る発明の要部の一つであり
図4以後に詳細を説明する。
【0037】
筆圧信号送信部302は、IC302aと送信回路302bとを含む。IC302aは、筆圧を所定の信号に変換するIC(Integrated Circuit)である。IC302aは、例えば、図示しない時定数回路とクロック計数部を含み構成される。時定数回路は、筆圧検知機構部301に設けられる圧力検知部4の静電容量Cに応じて決定される時定数に応じた時間に対応するタイミング制御信号をクロック計数部に出力する。クロック計数部は、時定数回路からのタイミング制御信号によって指定される時間にわたって、ICを駆動する発振器から供給されるクロックをカウントし、計数値を後段の送信回路302bに出力する。
【0038】
送信回路302bは、計数値を所定の通信方式でタブレット型情報端末200に供給する。本実施の形態では、計数値はビット列で示されるデジタル形式の筆圧データである。送信回路302bは、IC302aから供給される計数値を所定のウィンドウ時間で合計した上で(平滑化処理)、筆圧データとしてのフォーマットに整形し、Bluetooth(登録商標)などのPHY/MAC通信規格を利用して、位置指示器100の筐体のいずれかの位置に設置されたアンテナ302cを通じて筆圧データを送出する。
【0039】
[タブレット型情報端末200]
図3は、位置指示器100と共に利用されるタブレット型情報端末200の構成例を示す図である。タブレット型情報端末200は、タッチパネル(検出センサ)を構成するセンサ部210と、筆圧信号受信部220と、制御回路230とを含む。
【0040】
センサ部210は、複数の電極を含んで構成される。各電極と入力操作面の法線方向に隣接する位置には、絶縁層が配置される。センサ部210は、位置指示器100と入力操作面200aとの接触位置付近にて生じた静電結合状態の変化を電流あるいは電圧の変化として検出し、検出結果から位置情報を抽出して、制御回路230に供給する。すなわち、センサ部210は、位置指示器100による指示位置を検出する位置検出部を構成する。
【0041】
筆圧信号受信部220は、アンテナを介して位置指示器100からの筆圧に応じたビット列(筆圧データ)を受信する。受信したビット列から、
図17で例示した所望の対応曲線(筆圧カーブ)を用いて筆圧値を検出し、その結果を表示等に利用する。筆圧信号受信部220は、Bluetooth(登録商標)等での通信を実現する通信部と、ビット列を位置指示器との間で決定されているプロトコルに応じて解釈するための制御回路上で動作するソフトウェアとにより構成することができ、タブレット側には特別なハードウェアを用意する必要はない。タブレット上で受信するビット列の解釈を更新可能なソフトウェアにより与えることで、位置指示器100のペン先等を、任意の材料により構成することが可能になる。
【0042】
これにより、タブレット型情報端末200では、位置指示器100の指示位置に応じて、タブレット型情報端末200の表示画面(入力操作面200a)上の対応する位置に、供給された筆圧データに応じたデータ処理(例えば、筆圧を線の太さに反映する表示処理)を行うことができる。
【0043】
[位置指示器100の構成部]
図4は、ペン型の位置指示器100の断面図である。位置指示器100は、筐体101、芯体2、弾性部材3、及び、圧力検知部4を必須の構成とする。更に、キャップ1、芯体係止部材5、保持部材6、ホルダ7、及び/又は、回路基板8を組み合わせ構成可能である。
【0044】
位置指示器100の先端側においては、芯体2と、弾性部材3と、圧力検知部4とが、筒状に形成される芯体係止部材5の内部に収納されるようにして配設される。芯体係止部材5はその外周に、金口102の内部に設けられた螺子山と螺合する螺子山を有する部分と、筐体101の蓋部103とは反対側の内部に設けられた螺子山と螺合する螺子山を有する部分とを有している。
【0045】
芯体2は、金属や導電性樹脂などの導電性材料により形成されたものである。芯体2は、ペン先側の一端(先端部)が金口102の筐体101側とは反対側の端部から突出するように設けられる。芯体2の金口102から突出する部分には、導電ゴムなどの導電性と弾性とを備えた素材により形成されたキャップ1が取り付けられる。このキャップ1は、タブレット型情報端末200の入力操作面200aを保護する部材としても機能し、芯体2に対して着脱が可能になっている。
【0046】
圧力検知部4は、芯体2のキャップ1が取り付けられる側とは反対側の端部(後端部)によって押圧可能になっている。圧力検知部4は、芯体2から直接的に(あるいは部品を介して間接的に)伝搬される荷重により、芯体2に加えられる筆圧を検知するものである。この圧力検知部4は、ホルダ7によって保持部材6に固定される。
【0047】
図4に示すように、芯体2と圧力検知部4との間には、弾性部材3が設けられている。基板等の保持部材6は、導電性を有する材料により形成されるもので、回路基板8の長手方向に延設された構成を有する。この保持部材6には、回路基板8が固定されると共に、コイルばねによって構成された導電性の弾性部材3も接続される。保持部材6には、導電性の材料で形成された筐体101も接続される。
【0048】
筐体に触れるユーザの身体と、静電容量方式のタブレット型情報端末200とは、筐体101と、保持部材6と、弾性部材3と、芯体2と、キャップ1とを通じて導通し、静電容量方式のタブレット型情報端末200において、静電結合状態(静電容量)の変更を可能とする。
【0049】
ホルダ7は、例えば樹脂などにより形成される部材であり、圧力検知部4を保持部材6に対して固定する役割を果たす。これにより、位置指示器100の筐体101内における圧力検知部4の位置が固定される。回路基板8には、圧力検知部4からの検出出力の供給を受けてデジタル信号である押圧信号(上述した計数値)を形成するIC302aや当該押圧信号をタブレット型情報端末200に送信する送信回路302bを備えた筆圧信号送信部302(
図2)などが設けられる。また、
図4に示すように、回路基板8のペン先から遠い側の端部には、電池9が着脱可能に接続されている。電池9は、回路基板8の回路部分に対して、電源電圧を供給するものである。
【0050】
[筆圧検知機構部301]
図5は、この実施の形態の位置指示器100の筆圧検知機構部301の構成部材を説明するための図である。キャップ1は、筆圧に応じて変形する一方、タブレット型情報端末200側での位置検出を可能にするための部材である。キャップ1の材料としては、導電ゴムなどの、導電性を有し、かつ変形に対して復元力を有する弾性を持つ材料が用いられる。キャップ1は、例えば、接触面が直径5mm程度になるように変形する。
【0051】
芯体2は、キャップ保持部2aと、空気孔配置部2bと、鍔部2cと、押圧部2dと、空気孔2eとを含み構成される。キャップ保持部2aは、キャップ1が取り付けられる部分である。キャップ1は、このキャップ保持部2aに対して被せるようにして装着される。このような構成を採用したことにより、位置指示器100では、利用対象とするタブレット型情報端末200のセンサ部210(
図3)に応じて、また、圧力検知部4から独立して、キャップ1の材質や形状を選定できるようになっている。
【0052】
芯体2には、キャップ1がタブレット型情報端末200の入力操作面200aに対して押し当てられて潰れるように変形する場合に、キャップ1の内部の空気を逃がすための空気孔2eが設けられている。空気孔2eは、キャップ保持部2aから空気孔配置部2bまでは、
図5において点線で示したように、芯体2の中心軸(芯体2の長手方向に平行な芯体2の中心線)に沿う方向に設けられる。空気孔配置部2bにおいては、空気孔2eは、芯体2の中心軸と直角に交差する方向に設けられる。
【0053】
また、芯体2の鍔部2cは、芯体2のその他の部分(本体部)から、芯体2の中心軸と直交する方向に一段あるいは複数段で膨出した部分である。鍔部2cは、その膨出により軸心方向を法線とする2つの面(面A、面B)を含むことにより、以下で説明する2つの機能を持っている。
【0054】
1)まず、鍔部2c(面A)は、芯体係止部材5の端部の内周に設けられている突起5dと係合する部分となる。芯体係止部材5の端部の内周に設けられている突起5dと芯体2の鍔部2cとが係合することにより、芯体2の鍔部2cよりも押圧部2d側の部分が芯体係止部材5の端部から突出することがないようにされる。すなわち、芯体2が、必要以上に位置指示器100の外側に突出することがないように位置規制される。芯体2は、圧力検知部4が設けられている方向には、摺動移動可能になっている。芯体2の押圧部2dが、直接あるいは間接に圧力検知部4を押圧する。
【0055】
2)更に、鍔部2c(面B)は、芯体2の本体部の径に比して広い直径を有し、芯体2の本体部をとりまくようにして配置される弾性部材(コイルばね)3からの復元力を受けるための面を供給する。この面Bは、更に、芯体2の鍔部2c(面B)が、(a)弾性部材(コイルばね)3との間に電荷を導通させるための接触点(入力操作面200aの近傍において上述した静電結合状態の変化を生じさせるために、ユーザの身体とキャップ1との間で電荷の移動を発生させるための接触点)、かつ、(b)弾性部材3からの復元力の作用点、となる点を広い面積の範囲で供給する役割を持つ。
【0056】
弾性部材(コイルばね)3は、芯体2の押圧部2dが貫通するように設けられ、かつ、
図5に示すように保持部材6に対して接続されている。保持部材6の弾性部材3寄りの所定の位置には、ホルダ7によって圧力検知部4が固定される。また、保持部材6は、
図4に示した回路基板8に装着されており、これにより、位置指示器100の筐体101内において移動することがないように固定される。
【0057】
芯体係止部材5は、
図5に示すように、金口102の内部に設けられる螺子山と螺合する螺子山を備えた金口結合部5aと、位置規制部5bと、筐体101の内部に設けられる螺子山と螺合する螺子山を備えた筐体結合部5cとを含む。芯体係止部材5の内部には、芯体2、弾性部材3、圧力検知部4が収納される。芯体係止部材5は、筐体結合部5cが筐体101の内部の螺子山と螺合するように、筐体101に取り付けられる。
【0058】
弾性部材3は、芯体2と圧力検知部4とに挟まれて配置される。圧力検知部4は、芯体2の押圧部2dによって押圧可能に構成される。そして、芯体係止部材5の金口結合部5aには、金口102の内部の螺子山と螺合するように、金口102が取り付けられる。さらに、芯体2のキャップ保持部2aには、キャップ1が取りつけられる。これにより、
図4に示した外形を有し、タブレット型情報端末200用の指示体として利用される位置指示器100が得られる。
【0059】
[筆圧検出機構部301の筐体取り付け機構]
図6は、筆圧検知機構部301の筐体101への取り付け機構を示す断面図である。同図には、筆圧検知機構部301が位置指示器100に取りつけられた状態(キャップ1が入力操作面200aに接触していない状態)を示している。筐体101の金口102が設けられる側である先端側の内周に設けられている螺子山と、芯体係止部材5の筐体結合部5cの螺子山とが螺合することにより、芯体係止部材5は筐体101に取り付けられる。
【0060】
芯体係止部材5には外側に張り出すように位置規制部5bが設けられている。位置規制部5bの機能により、芯体係止部材5が必要以上に筐体101の蓋部103側に押し込められることが防止されている。位置規制部5bの取り付け位置は、芯体係止部材5が必要以上に位置指示器100の先端部から離れること(位置指示器100の内側に入り込むこと)がないように、設定される。
【0061】
芯体係止部材5に収納されるようにして、芯体2、弾性部材3、圧力検知部4が設けられる。圧力検知部4は保持部材6上の所定の位置に、ホルダ7によって固定される。また、保持部材6自体は、位置指示器100内の所定の位置に固定される。これにより、位置指示器100の筐体101内において、圧力検知部4の位置が筐体101に対して固定される。
【0062】
芯体2は、押圧部2dが圧力検知部4を押圧するように配設される。この場合、
図6に示すように、芯体2の鍔部2c(面A)と、芯体係止部材5の先端側の端部の内周に設けられている突起5dとが係合することによって、芯体2が必要以上に位置指示器100の先端部側に突出することがないように位置規制される。
【0063】
また、
図6に示すように、芯体の鍔部2c(面B)と圧力検知部4を保持するホルダ7との間には弾性部材3が設けられる。弾性部材3は、導電性の部材であり、例えば金属性のコイルばねである。弾性部材3は、
図6に示した取り付けた状態で、位置規制部5bにより規制される長さ分、自然長より短く圧縮された状態となる。
【0064】
芯体2のキャップ保持部2aにキャップ1が装着され、金口102の内部の螺子山と、芯体係止部材5の金口結合部5aとが螺合することにより、筐体101に対して金口102が取り付けられた状態となる。これにより、芯体2は、芯体係止部材5から必要以上に先端側に突出することはないが、圧力検知部4側には移動可能な状態で、位置指示器100の筐体内部に保持される。
【0065】
尚、本実施の形態の圧力検知部4としては、
図16を用いて説明した従来の可変容量コンデンサを利用することができる。すなわち、圧力検知部4は、誘電体を挟むように、第1の電極と、第2の電極が設けられ、圧力検知部4内の保持部材を介して、芯体2に加えられた筆圧に応じて、第2の電極を構成する導電体が誘電体に押し当てられる構成を有する。圧力検知部4は、第1の電極に接続された端子と第2の電極とにより、導電体の周囲に設けられた弾性部材の間の容量値(静電容量C)を、筆圧に応じて変化する量として筆圧信号送信部302に提供する。
【0066】
[筆圧検知機構部301の作用]
図7は、筆圧検知機構部301が、入力操作面200aに接触していない状態を示す図である。圧力検知部4は、保持部材6に固定される。保持部材6には回路基板8も固定されて、筐体101内の所定の位置に固定される。芯体2の押圧部2dの周囲に弾性部材3であるコイルばねが装着され、芯体2と弾性部材3とが芯体係止部材5に収納された状態で、芯体係止部材5の筐体結合部5cの螺子山と筐体101の先端部内側の螺子山とが螺合して芯体係止部材5が筐体101に固定される。
【0067】
弾性部材3の自然長(力が加えられていない状態(付勢されていない状態)での長さ)は、
図7(a)に示すようにX(復元力P=0)である。
【0068】
本実施の形態の筆圧検出機構部301においては、芯体2(鍔部2c(面A))と芯体係止部材5との係合により、
図7(b)に示すように、芯体2と圧力検知部4との間に配置された弾性部材3の長さが自然長XよりX1(オフセット長)短くなる。ここで、上述したように圧力検知部4は筐体101に対して固定された保持部材6に固定されており、このため弾性部材3は、芯体2と圧力検知部4との間に、上記X1分の圧縮に対応する所定の力Pn(初期荷重に対応する力)を付勢することができる。
【0069】
つまり、弾性部材3は、芯体2に対して、位置指示器100の先端側の方向(
図7の下側方向)に圧力値Pnの圧力を付与している状態になる。
【0070】
図8(a)は、
図7の円で囲んだ部分(芯体2と芯体係止部材5とを含む部分)の拡大図である。芯体2は、弾性部材3の復元力(弾性力)により、
図8(a)における下方向に力Pnで付勢される。芯体2(キャップ1)が入力操作面200aに接触していない状態では、鍔部2cの面Aが芯体係止部材5の突起5dにより係止されている。これにより、上記のような復元力が芯体2に加えられている状況下における、筒状の位置指示器100からの芯体2の飛び出しが防止されている。
【0071】
鍔部2cの面Aと芯体係止部材5の突起5dとの間には、弾性部材3(図中の黒点)の鍔部2cの面Bへの付勢により、上下方向の両方向の矢印で示した力の作用と反作用とが生じる。
【0072】
簡単には、芯体2は、外部から下方向への力(Pn)と、外部から上方向への力(N1、N2)とを受け以下の関係でつり合う(
図8(b))。
Pn=N1+N2;
ここで、
Pn:ばねである弾性部材3の端点から
図8(b)の下方向に芯体2に加わる力(初期荷重に対応する力)、
N1:筆圧(操作面200aからペン先を伝達して芯体2に加わる垂直抗力)、
N2:係止部材5dから与えられる残余(PnからN1を引いた残余)の垂直抗力。
【0073】
尚、N1が0の場合は、Pn=N2となり、N1がPnの場合は、Pn=N1となる。
【0074】
弾性部材3は、鍔部2cに対して先端方向に押し下げる力Pnを働かせ(作用)、これによって、芯体係止部材5の突起5dは下矢印が示す方向に力を受ける。芯体係止部材5は突起5dが芯体2の鍔部2cと係合した状態では、下矢印方向に芯体2を移動させることはないので、弾性部材3と同等の力を上矢印方向に働かせることにより(反作用N2=Pn)、芯体2の鍔部2cが芯体係止部材5の先端から突出しないようにしている。
【0075】
位置指示器100に対しては、筆圧に対する反作用として、キャップ1から筐体101に向かう方向の押圧力が加えられる。しかし、弾性部材3により先端(キャップ1)に向かう方向に力Pn分の圧力が印加されている状態にある芯体2は、力Pnを越える押圧力が加えられるまでは、圧力検知部4側に移動しない。
【0076】
キャップ1が装着された芯体2に対してキャップ1から筐体101に向かう方向に印加される押圧力が力Pn以下である間(≦Pn(gf))、芯体2が圧力検知部4側に移動することはなく、したがって、この押圧力の範囲は実質上の筆圧検出が行われない区間となる。
【0077】
図9は、キャップ1が装着された芯体2にかかる押圧力N1が、力Pn以上に達した状態(N1≧Pn)を示す図である。
図9(a)は、力Pnに等しい押圧力が、キャップ1が装着された芯体2に対して蓋部103に向かう方向に印加された場合を示している。
図9(b)は、力Pnより大きな押圧力Pn+αが、キャップ1が装着された芯体2に対して蓋部103に向かう方向に印加された場合を示している。
【0078】
図9(a)に示すように、弾性部材3によって位置指示器100の内部から芯体2にかけられた力Pnと外部からの押圧力とが釣り合う状態(力の作用と反作用が生じている状態)では、芯体2は移動せず、圧力検知部4に何らの力を伝達しない。
【0079】
一方、キャップ1が装着された芯体2にキャップ1から筐体101に向かう方向に印加される押圧力が力Pnを越えると、芯体2が圧力検知部4に向かって移動を開始する。その際、まず弾性部材3が圧縮されてその復元力を増し、この移動に対抗しようとする。ただし、位置指示器100では、
図7に示した芯体2の押圧部2dと圧力検知部4との間の間隙ΔDが後述するように非常に小さく設定されているので、以下では、この復元力の増加を無視して説明を進める。押圧力がさらに増え、芯体2が圧力検知部4に接触するようになると、それ以上弾性部材3は圧縮されなくなる。この状態に達すると、芯体2から圧力検知部4に対し、押圧力Pn+αに応じた力が伝達されるようになる。具体的には、
図9(b)に示すようにPn+α−Pn=αの力が、芯体2から圧力検知部4に伝達される。
【0080】
図10(a)は、
図9の円で囲んだ部分(芯体2と芯体係止部材5とを含む部分)の拡大図である。キャップ1が装着された芯体2にキャップ1から筐体101に向かう方向に印加される押圧力が力Pnを越えると、芯体係止部材5の突起5dと係合していた芯体2の鍔部2cが、突起5dからの反作用を得なくなり(N2が0となり)、突起5dから離れる。芯体2の押圧部2dの端部(支点)は圧力検知部4を押圧するように移動し、その結果として、圧力検知部4における押圧力の検出が可能となる。
【0081】
尚、
図7においてΔDが示すように、芯体2の押圧部2dと圧力検知部4との間には、ごく僅かな間隙がもうけられているだけである。このため、キャップ1が装着された芯体2にキャップ1から筐体101に向かう方向に印加される押圧力が力Pnを越えても、芯体係止部材5の突起5dと芯体2の鍔部2cとの間には、ごく僅かな間隙が生じる程度である(
図10(a)のΔDを参照)。好適には、この間隙は、1μm以上、かつ、300μm以下、の間の距離とすることができる。
【0082】
図7に示すように、ΔDはX1に比して実質的に無視できるほど小さい。言い換えれば、弾性部材3は実質的には伸縮するものではなく、あらかじめ力として偏倚(力の偏り)をあたえるために事前にX1の距離(オフセット長)で縮小され、その結果として力Pnを生じさせているということである。
【0083】
この点において、力Pnに対応する弾性部材3の復元力は、移動可能なペン先の突出状態を保つための力や内蔵スイッチをOFF状態に保つためのばねなどによる力とは区別される力である。この復元力は、好適には5gf以上、100gf以下の力である。特定的には、10gf以上85gf以下の力とすることができる。
【0084】
図10(a)は、芯体2にかかる力のつりあいを示す図である。図中、力Psは、圧力検知部4から芯体2が受ける力(圧力検知部4を芯体2が押圧する力の反作用)である。
【0085】
芯体2は、筆圧として上方向にN1の垂直抗力を受け、下方向に、弾性部材3からPnの力、圧力検知部4からPsの力をそれぞれ受けて釣り合う。したがって、N1=Pn+Psが成り立ち、N1=Pn+αである場合にはPs=(Pn+α)−Pn=αとなる。
【0086】
図11は、本発明の位置指示器100の作用を
図16で説明した圧力検知部を含む従来の位置指示器のシステムの入出力特性に基づいて説明する図である。
図16、
図17を用いて説明したように、可変容量コンデンサを含む構成とされた圧力検知部を備えた従来の位置指示器の場合には、芯体に少しでも押圧力が加えられると、その押圧力に応じた圧力レベルが検出される。つまり、従来の位置指示器の場合には、
図11のグラフJに示すように、位置指示器の芯体に加えられる押圧力が小さい場合(具体的には100gf以下)であっても、押圧力の検出がなされる。
【0087】
これに対し、この実施の形態の位置指示器100を用いて操作入力を行うタブレット型情報端末200は、例えば、位置指示器100に対して初期荷重の上限の例である100gfの押圧力を加えないと、位置指示器100の指示位置を安定して認識しないものであるとする。この場合、位置指示器100は、弾性部材3が芯体2を圧力値100gfで位置指示器100の先端に向かって付勢する(Pn=100gf)ように構成される。
【0088】
これにより、位置指示器100の場合には、キャップ1が装着された芯体2にかけられる押圧力が圧力値100gfに到達するまでは、芯体2が圧力検知部4に圧力を加えないので、押圧力の検出が行われない。このように、位置指示器100の場合には、
図11に示す区間A(タブレット型情報端末200側で位置指示器100の指示位置を適正に検出できない区間)を、押圧力の検出を行わないいわゆる不感帯とすることができる。
【0089】
位置指示器100の場合には、
図11においてグラフPが示すように、キャップ1が装着された芯体2にかけられる押圧力が初期荷重の上限値に対応する圧力値100gfに到達すると、押圧力に応じて、芯体2による圧力検知部4の押圧が開始される。これにより、圧力検知部4での押圧力の検知が行われる。
【0090】
これにより、タブレット型情報端末200において位置指示器100による指示位置の検知が可能になった後における、圧力検知部4での押圧力の入力レンジは、右に弾性部材3の復元力である100gf分そのままの形をシフトした100〜600gfのレンジとなり位置指示器の有効入力レンジ幅R500gfを保つことができる。
【0091】
即ち、指示位置の検出ができるようになった以上の入力荷重において、前と同じ有効入力幅Rを保持したまま押圧力への対応付けができ精度(分解能)を保つことできる。
【0092】
[実施の形態1の効果]
このように、芯体2と圧力検知部4との間の弾性部材3は、芯体2と筐体あるいは芯体係止部材5との係合により組み立て時に与えられる復元力により、初期荷重に対応する力(=Pn)を調整手段として芯体2に対して付勢する。
【0093】
この調整により、圧力検知部4から独立して、位置検出装置に応じてペン先部材を選定することが可能になる。また、圧力検知部4の有効入力レンジ幅の全域を使った筆圧検出を可能とする位置指示器を実現できる。
【0094】
(実施の形態2)
図12は、実施の形態2の初期荷重の調整について説明するための図である。この実施の形態2の位置指示器は、上述した実施の形態1の位置指示器100と同様の構成を有するが、初期荷重に対応して与えられる復元力に特徴を有する。
【0095】
実施の形態1で説明した芯体2と圧力検知部4との間の弾性部材3は、最大限に圧縮された場合に、初期荷重に対応する力(=Pn)を芯体2に対して付勢するよう構成される。この場合における弾性部材3の復元力は、タブレット型情報端末200の指示位置の検出感度に応じて想定される初期荷重の上限値まで許容できる。
【0096】
これに対し、第2の実施の形態の位置指示器100では、弾性部材3の作用により芯体2に付与する圧力を、タブレット型情報端末200の指示位置の検出感度に応じて想定される初期荷重よりやや軽い例えば85gfとする。
図12に示した不感帯領域(図中幅B)の最大荷重を、初期荷重の上限値(図中幅Aの最大荷重)より小さくするということである。
【0097】
[実施の形態2の効果]
圧力検知部4が筆圧値を検知し始めるための力(図中幅Bの最大荷重)が、タブレット型情報端末200が位置指示器100の位置を出力し始める力(図中幅Aの最大荷重)より小さいということは、タブレット型情報端末200において指示位置が検出できたときには、確実に筆圧データをタブレット型情報端末200に供給することができているということである。
【0098】
これにより、システムとして、指示位置(X,Y)は取得できているが筆圧値(P)が0しか得られない点(X,Y、P)が生ずることを回避することができる。
【0099】
(実施の形態3)
実施の形態2に説明したように位置指示器100の弾性部材3の復元力が初期荷重の上限値よりも小さい場合について敷衍する。
【0100】
弾性部材3の復元力が初期荷重の上限値より小さい場合には、弾性部材3の経年劣化により、弾性部材3の復元力が完全に失われてしまう可能性がある。また、ペン先の部材は、利用対象とする製品に応じて変更されることもありうる。
【0101】
そこで、実施の形態3の位置指示器100では、タブレット型情報端末200との連携により、初期荷重に対応した筆圧値の利用を可能とする位置指示器を実現する。
【0102】
図13は、本実施の形態における位置指示器100の動作を示すフロー図である。以下の処理は、
図2に示した筆圧信号送信部302により実現される。
【0103】
まず、S101にて、筆圧信号送信部302は、タブレット型情報端末200との通信が確立されているかを判定する。この判定は、例えばIC302aが、送信回路302bであるBluetooth(登録商標)等の通信部から、ペアリング等の所定の処理がされたことを通知されたか否かに応じて行えばよい。
【0104】
通信が確立された場合(S101の判定がYES)、筆圧信号送信部302のIC302aは、初期荷重に関する情報の送出処理を実行する(S102)。
【0105】
初期荷重に関する情報は、互いに独立して選定されたペン先部材と圧力検知部4とを組み合わせて構成した位置指示器100が、どの筆圧をかけたときにどのような出力値を生じるかを受信装置(位置検出装置)に提供するための情報である。
【0106】
この初期荷重に関する情報には、例えば、芯体2に筆圧が生じていない状態(略0荷重状態)で計数された筆圧データ(RAW_C0)を含むことができる。この通信リンクが確立された直後(ペン起動時直後)の値を、初期荷重に関する情報として利用することとしてもよい。
【0107】
また、例えば、任意のペン先に交換した場合に、所定の基準となる荷重(例えば、400gf時点での負荷等)をかけた状態でIC302aに計数値を取得させ、取得された計数値をIC302aに記憶しておき、S102では、こうして記憶された情報から取得される筆圧データを初期荷重に関する情報として用いることとしてもよい。また、筐体ごとにこれらの情報を記録しておくことで、ペン先部材の部品間の精度のばらつきを吸収することも可能である。
【0108】
ここでは、
図12に示した、位置指示器100に想定初期荷重(初期荷重の上限値。
図12の例では100gf)を印加した時に得られる筆圧データRAW_CL1(縦軸圧力レベルL1のレベルに対応する荷重(100gf)を与えたときの筆圧データ)と、位置指示器100に200gfの荷重を印加したときに得られる筆圧データRAW_CL2(縦軸圧力レベルL2に対応する荷重(200gf)を与えたときの筆圧データ)とを、初期荷重に関する情報として送出する(S102)。次に、筆圧信号送信部302は、現在の筆圧データを検出し送出する処理を行う(S103)。筆圧信号送信部302は、ステップS103の処理を通信断等の停止命令を受けるまで継続する(S103、NO)。以上が、位置指示器100側の動作である。
【0109】
タブレット型情報端末200の制御回路230は、ペアリング等により特定されている位置指示器100から送出された初期荷重に関する情報を受信する。その後、受信した初期荷重に関する情報に基づいて、L1に対応する筆圧データRAW_CL1とL2に対応する筆圧データRAW_CL2とを設定し、その部分レンジを有効入力レンジRの一部領域とした所定の予測関数により、有効入力レンジR分の筆圧対応関数(あるいは曲線)を導出する。
【0110】
以降、タブレット型情報端末200は、特定された相手から筆圧データを受信すると、上記のようにして導出した筆圧対応関数に基づいて所定のアプリケーションに用いるための調整値を算出(導出、決定)し、アプリケーションの利用に供する情報とする。
【0111】
これにより、位置の情報を得ている場合に、必ず筆圧情報を伴うアプリケーション処理を実行することができ、さらにその値をアプリケーションに適切に用いることができる。
【0112】
図14は、タブレット型情報端末200での筆圧値の調整を利用したアプリケーションの一例を説明するための図である。同図には、経年劣化により弾性部材3の復元力が弱くなっている場合を示している。この場合、初期荷重に関する情報に基づいて導出された筆圧対応関数を用いずに圧力レベル(筆圧値)を算出すると、
図14(A)に示すように、初めから太い線が描画されてしまうことになる。これに対して、初期荷重に関する情報に基づいて導出された筆圧対応関数を用いて圧力レベル(筆圧値)を算出すると、
図14(B)に示すように、初めは点の状態から徐々に太くなる線が描画できる。
【0113】
このように、本実施の形態による位置指示器100によれば、位置指示器100からの筆圧データに応じた圧力レベルの算出が開始されるタイミングと、タブレット型情報端末200での位置指示器100による指示位置の検出が開始されるタイミングとの間で、時間的なずれを生じさせないようにすることができる。さらに、位置指示器100からの筆圧データに応じた圧力レベルを適切に把握し、指示位置に加え、筆圧をも加味した表示制御処理を適切に行うことができる。
【0114】
つまり、まず、位置指示器100を実施の形態2の構成とすることで、タブレット型情報端末200において、位置指示器100による指示位置の検出よりも筆圧値の検出が遅れるといったことはなくなる。このため、指示位置の検出よりも筆圧の検出が遅れるといった場合を想定し、これに対処する必要もなくなる。
【0115】
また、位置指示器100を実施の形態3の構成とすることで、互いに独立に選定可能なペン先部材と圧力検知部との組み合わせに基づいて、圧力検出部と位置検出装置との反応荷重の差を適切に補正する処理を位置検出装置側に提供可能な位置指示器を実現することができる。
【0116】
<変形例>
各実施の形態について以下の変形が可能である。
(キャップ1、芯体2について)
芯体2のキャップ保持部2aに対しては、キャップ1が着脱可能にされるとして説明したが芯体とキャップとを一体部材としてもよい。別部材で構成する場合には、導電特性、形状、大きさが異なる複数のキャップを用意しておき、これを芯体2に対して付け替えて利用できる。この場合に、弾性部材3が芯体2に付与する初期荷重(圧力値Pn)を調整する必要が生じた場合には、上述したように、螺子山同士を螺合して結合させる芯体係止部材5と筐体101との結合位置を調整すればよい。
【0117】
また、異なる複数のタブレット型情報端末を用いる場合には、用いるタブレット型情報端末に応じて、導電特性、形状、大きさが異なるキャップに交換するようにしたり、また、芯体係止部材5と筐体101との結合位置を調整したりすることによって、指示位置の検出と押圧力の検出との両方を適切に行うことができるように、位置指示器100の状態を調整できる。
【0118】
また、キャップ1は、導電性のある種々の材料により形成することができ、内部に設ける空間の大きさなども種々の大きさのものを形成できる。また、復元力(弾性力)が大きい材料の場合には、内部に空間を設けなくてもよい。但し、キャップ内部に空間を設けたほうが、より容易に変形可能なキャップ1を構成できる。
【0119】
また、鍔部2cは一段の鍔でなくとも多段の鍔を有するとしても良い。鍔により芯体の軸心方向を法線とする二つの面をいずれかの段において構成できれば良い。
【0120】
尚、法線方向、平行、鉛直等の表現は、設計の範囲で略法線方向、略平行、略鉛直を含むことは言うまでもない。
【0121】
(弾性部材3について)
弾性部材3は、コイルばねである場合を例にして説明したが、これに限るものではない。芯体2に対して所定の初期荷重に対抗するための力を付与することができるように、例えば、板ばね、ゴム、樹脂、円筒状で蛇腹形状に構成される弾性部材など、コイルばね3と同様の作用、効果を及ぼす種々の弾性部材を用いることができる。
【0122】
(圧力検知部4について)
筆圧を検出する圧力検知部4は、特許文献2記載の筆圧検知部を用いて説明したが、これ以外の他の感圧センサを利用することも可能である。例えば、特願2012−15254等に記載のMEMS(Micro Electro Mechanical System)と呼ばれるデバイスにより、圧力検知部を構成することもできる。
【0123】
図15は、このMEMSを用いた圧力検知部の一例を説明するための図である。
図15(A)は外観を示している。
図15(B)は、
図15(A)において、位置G−Gで圧力検知部を切断した場合の断面図である。尚、この例の圧力検知部を、上述した可変容量コンデンサの構成とされた圧力検知部4と区別するために、以下、静電容量方式圧力センシング半導体デバイス(以下、圧力センシングデバイスという。)と呼ぶ。
【0124】
圧力センシングデバイスは、例えば、MEMS技術により製作されている半導体デバイスとして構成される圧力感知チップ500を、例えば立方体あるいは直方体の箱型のパッケージ510内に封止したものである。圧力感知チップ500は、印加される圧力を、静電容量の変化として検出するものである。
【0125】
芯体2の押圧部2dを圧力センシングデバイスの連通穴513に挿入し、弾性部材512により弾性的に保持させる構成とする。これにより、圧力感知チップ500の静電容量は、芯体の先端部に印加される圧力に応じた値となり、筆圧の検出が可能となる。
【0126】
又、圧力検知部は、圧電素子を用いたものとしても良い。
【0127】
圧力検知部は、圧電体に加えられた力を電圧に変換する圧電効果を利用した受動素子を有し、圧力を電圧レベルとして検出できるものであっても良い。他にも、圧力検知部の均等の範囲には、光学式のもの等が含まれる。
【0128】
(芯体係止部材5について)
図4〜
図11を用いて説明したように、芯体2、弾性部材3、圧力検知部4を筐体101内部に収納し、位置規制する手段となる芯体係止部材5は、筐体101の端部内側に設けられる螺子山と、筐体結合部5cとが螺合することにより結合される。このため、両者の螺合の状態を調整することにより、結合位置の調整が可能である。
【0129】
すなわち、芯体係止部材5の位置規制部5bが筐体101に当るまで芯体係止部材5を筐体101に螺合させた場合には、芯体2と圧力検知部4との間の距離を最も短くすることができる。この場合には、芯体2と圧力検知部4との間に設けられる弾性部材3の圧力値Pnは芯体係止部材5が筐体101に結合された状態の最大値となる。しかし、芯体係止部材5と筐体101との螺合状態を緩め、芯体係止部材5の位置規制部5bが筐体101から離れた位置にあるようにすることによって、芯体2と圧力検知部4との間に設けられる弾性部材3の圧力値Pnを小さくすることができる。
【0130】
尚、芯体係止部材5に位置規制部5bを設けない構成としてもよい。また、筐体結合部5cの中心軸心方向の長さを長くすると共に、筐体101の端部内側の螺子山を設ける部分も長く取ることにより、圧力値Pnの調整範囲を大きくすることができる。又、芯体係止部材5は、筐体101と一体部品として構成しても良い。
【0131】
(保持部材6、ホルダ7について)
上述した実施の形態では、圧力検知部4は、保持部材6の所定の位置にホルダ7を用いて固定するものとして説明した。そして、この場合に、芯体2と圧力検知部4との間にホルダ7の一部が介在する構成となる場合も考えられる。芯体2とホルダ7との間に弾性部材3が設けられる構成になっても、ホルダ7は圧力検知部4の一部と看做すことができるので、芯体2と圧力検知部4との間に弾性部材3を設ける場合と弾性部材3の作用、機能が変わることはない。
【0132】
したがって、圧力検知部4の外側筐体を厚くするなどして、圧力検知部4を保持部材6に直接固定するようにしたり、保持部材6上ではなく、筐体101内に突起を設けるなどして、筐体101に対して直接に圧力検知部4を固定したりする態様を取ることができる。また、芯体2と圧力検知部4との間にホルダ7等の何らかの部材が設けられた構成とされても、問題はなく、芯体2と圧力検知部4との対向する面間に弾性部材3が介挿された状態になっていればよい。
【0133】
(回路基板8、筆圧信号送信部302について)
実施の形態2で述べた通り、筆圧検知機構部301は、ペン先に引加される荷重が初期荷重の上限値を下回っている間、その出力(筆圧に応じて変化する量)が固定されているものとしてもよい。本発明の主旨から設計事項の範囲で変更されうる、押圧部2dと圧力検知部4との連結(当接するか否か、間接部材があるか否か、あるいは、間隙の有無等を含む)に応じて、これらの間の力の伝達の程度は異なりうる。前述したとおり弾性部材3の存在により、初期荷重の一部が徐荷された値をその値に応じて決定される信号値(アナログ信号、あるいはデジタル値)で送出あるいは供給するものであればよい。
【0134】
ここで、送出や供給はリアルタイム性を要しない。所定の間信号をメモリに保持した後送出してもよい。また、所定の統計処理を施してから送出や供給を行ってもよい。位置検出装置等の装置側とのプロトコル(フォーマット)にしたがって、何らかの平滑化処理や、ウィンドウ区間の中央値導出や、ヒストグラム平滑化処理等の統計処理等の加工をおこなってから送出しても良い。
【0135】
尚、送信回路の語は、送信回路のデータの受信を排除するものではない。
【0136】
(筐体101他)
筐体101は、所謂ペンの形状を模したものでなくてもよい。筒状の筐体とは、円柱状以外の形状であってもよいことは当然である。筒状は、芯体2の周囲の少なくとも一部を外側から包むように筐体が存在していることを意味している。また、ここでいう筒状の筐体101には、大型バッテリー搭載のためなどの目的で全部が筒状に見えなくなっているようなものも含む。
【0137】
また、公知の圧力検知部を組み入れることを前提に、本発明の趣旨に適合する限りにおいて上述の任意の部分あるいは部材を同一部材とし構成しても良い。
【0138】
(その他、システムについての変形)
尚、上述の各実施の形態では、位置指示器と共に利用される端末についてタブレット型情報端末を用いて説明したが、位置指示器の利用は所謂静電容量式タブレット端末に限るものではない。
【0139】
(位置指示器100について)
位置指示器は、位置を指示するとしているが、例えばマウス等のポインティングデバイスのように座標位置を示すためのものに限るものではない。ユーザの操作のために、かつ画面に表示される所定の領域と他の領域とを区別するために、ユーザからの何らかの入力をペン先の空間位置を用いてタブレット型情報端末に与えるものであればよい。
【0140】
(タブレット型情報端末(位置検出装置)200について)
位置指示器とともに用いる位置検出装置としては、位置指示器のペン先(芯体あるいはキャップ)と静電容量を形成することにより、あるいは、位置指示器のペン先が押圧することにより、そのペンの位置を検出することができる装置であって、各実施の形態記載の位置指示器から送出あるいは供給される筆圧に対応する値を何らかの方法で受信することができる装置であればよい。後者の例は、感圧式のセンサを搭載した位置検出器を含む。これらの例には、位置検出装置を備えた、携帯電話、各種電子文具、大画面ディスプレイ、銀行端末、所謂クラウドにおけるサーバなどが考えられる。
【0141】
又、実施の形態3における初期荷重に関する情報は、その計数値ではなく、補正のための曲線のプロファイルをIDで識別するための識別情報であるとしてもよい。
【0142】
(通信チャネルCH、アンテナについて)
尚、通信チャネルCHは、Bluetooth(登録商標)等を用いた各種無線通信を用いることができるとしたがこれに限るものではない。通信チャネルCHは、タブレット型情報端末が、芯体に対して入力操作面200aから鉛直方向に生じる力に対応する情報を位置指示器から得ることのできるものであればよい。例えば、有線であっても赤外線を利用した無線通信であっても、所謂NFC(Near Field Communication)を用いたものであってもよいし、所謂第3、4世代通信といわれる無線WAN通信規格によるものであってもよい。
【0143】
また、位置指示器がペン先を送信アンテナとしてタブレット型情報端末に情報を供給できるものである場合には、タブレット型情報端末側のアンテナとして、センサ部に配設された電極を利用できる。
【0144】
この場合、センサ部の電極を指示位置の検出と筆圧の検出とで時分割で利用するなどのことが考えられる。もちろん、タブレット型情報端末側の筆圧データを受信するアンテナを別途任意の1又は複数の位置に設けることも可能である。時間、周波数、空間、あるいは符号の1以上を多次元に組み合わせた分割多重通信とすることも可能である。
【0145】
本発明の主旨に逸脱しない範囲で、上述各実施の形態を組み合わせて構成することも可能である。
任意の位置検出装置に対し、圧力検出部の入出力特性の有効範囲を活かしつつ筆圧データを提供できる位置指示器を実現する。位置指示器は、筐体(筐体101及び金口102を含む)の軸心方向の一方の開口から外部に突出する先端部と、該先端部の反対側に位置する後端部とを備える芯体2と、上記後端部によって押圧可能とされた状態で筐体内に収納され、上記後端部から受ける圧力に基づき先端部に印加される筆圧を検出する圧力検知部4と、圧力検知部4を、筐体の軸心方向の所定位置に保持する保持部材6と、圧力検知部4と芯体2との間に設けられ、芯体2に対して、上記後端部から上記先端部に向かう方向の圧力を加えるための弾性部材3とを備える。