【実施例】
【0039】
本実施例では
図1に示すCVD装置1を用いて、配向カーボンナノチューブの製造を行った。
【0040】
基板9は、シリコンを基材とし、該基材上にアルミニウムをスパッタ法または抵抗加熱と電子ビームとの併用法により蒸着させ、5〜70nmの厚さのアルミニウムからなる反応防止層を形成した。また、前記反応防止層上に鉄をスパッタ法または抵抗加熱と電子ビームとの併用法により蒸着させ、0.025〜1.5nmの厚さの鉄からなる触媒材料層を形成した。さらに、前記触媒材料層上に分散層を形成する場合には、アルミニウムをスパッタ法、抵抗加熱法又は電子ビーム蒸着法等により蒸着させ、0.025〜2nmの厚さのアルミニウムからなる分散層を形成した。
【0041】
基板9を基板加熱部8上に載置し、原料ガス導入部3から原料ガスを導入する一方、ガス排出部4からチャンバー2内のガスを排出して、チャンバー2内を減圧した。前記原料ガスとして、メタン5sccm、水素45sccmで流通させ、チャンバー2内の圧力を2.66kPaから10.6kPaの範囲に保持した。
【0042】
この状態で、基板加熱部8により基板9を690℃〜740℃の範囲で加熱し、マイクロ波導波管5から周波数2.45GHzのマイクロ波をチャンバー2内に照射し、アンテナ6の先端部6aにプラズマを発生させた。マイクロ波の出力(プラズマ発生のために印加する電力)は、60Wから180Wの範囲とし、基板9とプラズマ発生領域7との距離dは50mmとした。尚、マイクロ波の照射は、基板9の温度が室温から前記温度に達してから5分後に行った。
【0043】
それぞれの製造条件により得られたカーボンナノチューブの長さと、製造に要した時間とから、それぞれの製造条件に対するカーボンナノチューブの成長速度を算出した。配向カーボンナノチューブの製造条件と、それぞれの製造条件に対するカーボンナノチューブの成長速度とを表1,2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
〔比較例〕
本比較例では
図1に示すCVD装置1を用いて、配向カーボンナノチューブの製造を行った。
【0047】
基板9は、シリコンを基材とし、該基材上にアルミニウムをスパッタ法、抵抗加熱法又は電子ビーム蒸着法により蒸着させ、5〜70nmの厚さのアルミニウムからなる反応防止層を形成した。また、前記反応防止層上に鉄をスパッタ法、抵抗加熱法又は電子ビーム蒸着法により蒸着させ、0.1〜2nmの厚さの鉄からなる触媒材料層を形成した。さらに、前記触媒材料層上に分散層を形成する場合には、アルミニウムをスパッタ法、抵抗加熱法又は電子ビーム蒸着法により蒸着させ、0.25〜2nmの厚さのアルミニウムからなる分散層を形成した。
【0048】
基板9を基板加熱部8上に載置し、原料ガス導入部3から原料ガスを導入する一方、ガス排出部4からチャンバー2内のガスを排出して、チャンバー2内を減圧した。前記原料ガスとして、メタン5sccm、水素45sccmで流通させ、チャンバー2内の圧力を2.66kPaに保持した。
【0049】
この状態で、基板加熱部8により基板9を600℃に加熱し、マイクロ波導波管5から周波数2.45GHzのマイクロ波をチャンバー2内に照射し、プラズマを発生させた。マイクロ波の出力(プラズマ発生のために印加するる電力)は、60Wとし、基板9とプラズマ発生領域7との距離dは50mmとした。尚、マイクロ波の照射は、基板9の温度が室温から前記温度に達してから5分後に行った。
【0050】
それぞれの製造条件により得られたカーボンナノチューブの長さと、製造に要した時間とから、それぞれの製造条件に対するカーボンナノチューブの成長速度を算出した。配向カーボンナノチューブの製造条件と、それぞれの製造条件に対するカーボンナノチューブの成長速度とを表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
表1〜3から、本比較例の製造方法によれば成長速度が0.2mm/時以下であるのに対し、本実施例の製造方法によれば0.6〜4mm/時と格段に優れた効果を奏することが明らかである。
【0053】
次に、(1)実施例のサンプル8と比較例のサンプル3とで得られたカーボンナノチューブの長さと製造時間との関係、(2)実施例のサンプル14と比較例のサンプル5とで得られたカーボンナノチューブの長さと製造時間との関係、(3)実施例のサンプル18,19と比較例のサンプル7とで得られたカーボンナノチューブの長さと製造時間との関係、の3組を
図4に示す。前記3組は、組毎にそれぞれ実施例のサンプルと比較例のサンプルとの基板の条件が同一になっている。
【0054】
図4においては、それぞれのラインの傾きがそれぞれの製造条件における成長速度を示している。
図4からも、本実施例の製造方法によれば、カーボンナノチューブの成長速度について、格段に優れた効果を得ることができることが明らかである。
【0055】
次に、本実施例に用いた基板と、本比較例に用いた基板とで、形成された触媒粒子を比較した。本実施例のサンプル24の基板について、表1に記載の温度(690℃)に加熱した後、カーボンナノチューブの製造を行うことなく室温に冷却して取り出したものの走査型電子顕微鏡写真を
図5(a)に示す。また、本比較例のサンプル10の基板について、表2に記載の温度(690℃)に加熱した後、カーボンナノチューブの製造を行うことなく室温に冷却して取り出したものの走査型電子顕微鏡写真を
図5(b)に示す。
【0056】
図5(a),(b)から、本実施例に用いた基板では、触媒の粒子密度は、1.2×10
12個/cm
2であったのに対し、本比較例に用いた基板では2×10
11個/cm
2であった。この結果より、触媒材料層の厚さを2nm未満とすることにより、触媒の粒子径を小さくすることができ、かつ製造されるカーボンナノチューブの面密度に直接関係する触媒の粒子密度を大きくすることができることが明らかである。
【0057】
次に、本実施例のサンプル17の製造条件で得られたカーボンナノチューブの走査型電子顕微鏡写真を
図6に、本実施例のサンプル10の製造条件で得られたカーボンナノチューブの透過型電子顕微鏡写真を
図7に、それぞれ示す。
図6よりカーボンナノチューブが基板に対し垂直方向に長尺化していることが明らかである。また、
図7より、本実施例の方法により製造されるナノチューブは細径の単層カーボンナノチューブが多く含まれることが明らかである。
【0058】
次に、本実施例のサンプル11の製造条件で得られたカーボンナノチューブのラマンスペクトル(励起波長632.8nmのHe−Neレーザーにて測定)を
図8に示す。
図8によれば、1600cm
−1付近にグラファイト網面に由来するGバンドが観察され、1550cm
−1付近に細径金属チューブに由来するBWFピークが観察され、1300cm
−1付近に欠陥に由来するDバンドが形成される。さらに、100〜450cm
−1の範囲に単層カーボンナノチューブ等の径の細いチューブに由来するRBMピークが観察される。従って、
図8から、本実施例のサンプル11の製造条件で得られたカーボンナノチューブは径が細く、単層カーボンナノチューブを多く含むものであることが明らかである。
【0059】
次に、本実施例のサンプル9の製造条件で得られたカーボンナノチューブのラマンRBMスペクトルを
図9に示す。
図9によれば、100〜450cm
−1の範囲に明確なピークが観察され、平均直径2nm以下の細径の単層カーボンナノチューブの存在が示唆される。