(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732663
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】立方晶窒化硼素焼結体工具
(51)【国際特許分類】
B23B 27/14 20060101AFI20150521BHJP
B23B 27/20 20060101ALI20150521BHJP
C04B 35/583 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
B23B27/14 B
B23B27/20
C04B35/58 103J
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-531748(P2012-531748)
(86)(22)【出願日】2011年7月25日
(86)【国際出願番号】JP2011066814
(87)【国際公開番号】WO2012029440
(87)【国際公開日】20120308
【審査請求日】2014年3月25日
(31)【優先権主張番号】特願2010-195462(P2010-195462)
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 克己
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真知子
(72)【発明者】
【氏名】久木野 暁
【審査官】
小川 真
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/087940(WO,A1)
【文献】
特開平02−282443(JP,A)
【文献】
J. Angseryd, M. Elfwing, E. Olsson and H.-O. Andren,Detailed microstructure of a cBN based cutting tool material,International Journal of Refractory Metals and Hard Materials,Elsevier,2009年 3月,Volume 27, Issue 2,Pages 249-255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 27/14
B23B 27/20
C04B 35/583
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
立方晶窒化硼素粒子と結合相で構成される立方晶窒化硼素焼結体を少なくとも刃先に有する立方晶窒化硼素焼結体工具であって、
前記立方晶窒化硼素焼結体中の立方晶窒化硼素含有率が20体積%以上60体積%以下であり、
前記結合相に少なくともAl2O3、及びZr化合物を含み、
前記立方晶窒化硼素焼結体中の任意の直線上において、Al2O3が占める連続する距離の平均値が0.1μm以上1.0μm以下であり、かつ該Al2O3が占める連続する距離の標準偏差が0.8以下であり、
当該直線上において、Al2O3とZr化合物との接点の数をX、Al2O3と立方晶窒化硼素との接点の数と、Al2O3とAl2O3及びZr化合物以外の結合相成分との接点の数との合計をYとした場合、X/Yが0.1以上1以下であり、
Zr化合物の平均粒径が0.01μm以上0.1μm以下である
ことを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体工具。
【請求項2】
前記立方晶窒化硼素焼結体中に含まれるZr化合物として、ZrC及びZrO2を合計で0.5体積%以上5体積%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
【請求項3】
前記立方晶窒化硼素焼結体の任意の直線上において、X/Yが0.5以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立方晶窒化硼素(以下、cBNとも記載する)を主成分とするcBN焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立方晶窒化硼素を用いた高硬度の焼結体が知られている。cBN粒子は硬度、強度、靭性がセラミックス結合材より高く、焼結体中の骨格として働き、高硬度焼入鋼の切削に耐えうる材料強度を保持する役割を果たす。一方、セラミックス結合材は、難焼結性材料であるcBN粒子を工業レベルの圧力温度で焼結可能とする役割を果たすと同時に、鉄との反応性がcBNより低いため、化学的・熱的摩耗を抑制する働きを付加する。
【0003】
cBN焼結体は、大きく2つに分類され、1つはcBN含有率が高く、cBN同士が結合し、残部がCoやAlを主成分とする結合材からなるcBN焼結体(以降、高cBN含有率焼結体と略す)と、もう1つは、cBN含有率が比較的低く、cBN同士の接触率が低く、鉄との親和性の低いTiの窒化物(TiN)や炭化物(TiC)からなるセラミックスを介して結合されているものである(以降、低cBN含有率焼結体と略す)。
【0004】
前者の高cBN含有率焼結体は、切り屑が分断され、切り屑でのせん断熱の発生し難い用途では、cBNの優れた機械特性(高硬度、高強度、高靭性)と高熱伝導率により、抜群の安定性と長寿命を達成し、硬質粒子との擦れによる機械的な摩耗や損傷が支配的な鉄系焼結部品や高速断続切削時の熱衝撃による損傷が支配的なねずみ鋳鉄の高能率切削に適している。しかしながら、連続した切り屑により発生する多量のせん断熱により刃先が高温に曝される焼入鋼などの加工では、cBN成分が鉄との熱的な摩耗により、従来の超硬工具やセラミックス工具よりも急速に摩耗が発達するため短寿命となる。
【0005】
一方、後者の低cBN含有率焼結体は、cBNよりも、高温下での鉄との親和性の低いTiNやTiCセラミックスからなる結合材の働きにより、優れた耐摩耗性を発揮し、特に、従来の超硬工具やセラミックス工具では実用加工ができなかった焼入鋼加工において、従来工具の10倍〜数十倍の工具寿命を達成できる切削工具として、焼入鋼切削市場を開拓してきた。
【0006】
これらのcBN焼結体としては種々のものが開発されている。
例えば、特開2000−044347号公報(特許文献1)および特開2000−044350号公報(特許文献2)には、45〜70体積%のcBN粒子と、4a,5a,6a族元素の炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物、Alの窒化物、硼化物、酸化物、炭窒化物、硼化物、およびこれらの相互固溶体よりなる群から選択される1種以上を含む結合相とからなるcBN焼結体において、結合相の厚みの平均値と標準偏差を規定したcBN焼結体が記載されている。
【0007】
また、特開2002−302732号公報(特許文献3)には、粒径が0.01μm以上0.70μm以下の超微粒cBN粒子と、4a,5a,6a族元素、Al、それらの炭化物、窒化物、硼化物およびそれらの相互固溶体、混合体の少なくと1種からなる結合相とからなるcBN焼結体において、結合相の厚みの平均値を規定したcBN焼結体が記載されている。
【0008】
また前記のとおり、鋳鉄の高能率切削では、高cBN含有率焼結体が実用化されている。近年、自動車エンジンの高性能化に伴い、軽量化を狙いシリンダブロックのアルミ化が進んでいる。シリンダブロックのピストン摺動部分であるライナーについては強度と耐摩耗性に優れる鋳鉄が採用されるが、砂型鋳鉄より量産性に優れる遠心鋳造鋳鉄が採用されることが近年、増加している。遠心鋳造法とは、ライナーの鋳造の際に、鋳型を回転させ遠心力を利用して中子を用いずに中空の鋳物を作る手法である。
【0009】
前記遠心鋳造法では、原理上、鋳型の接触部や最内径部が急冷されるため、同領域では被削性が著しく悪いデンドライト組織やバラ状組織が生成されるが、切削加工により所望の内径に仕上げる際に、切削箇所の鋳鉄組織が前記のデンドライト組織やバラ状組織となる場合に工具寿命が著しく悪化する問題がある。さらに、ライナーの製造ロットによっても、鋳鉄組織が大きく変化するため、工具寿命が安定しない問題もあり、従来の高cBN含有率焼結体では耐摩耗性が不足し、満足する工具寿命が得られていないのが最近の実情である。
【0010】
そのような事情を鑑みて、WO2008/087940号公報(特許文献4)では、結合相の主成分にAl
2O
3を採用し、かつ、ZrO
2とTiCを適量添加することにより、遠心鋳造鋳鉄加工における工具寿命の安定化が図られてきたが、満足のいく工具寿命が得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−044347号公報
【特許文献2】特開2000−044350号公報
【特許文献3】特開2002−302732号公報
【特許文献4】WO2008/087940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みて、前記の被削性が悪いデンドライト組織やバラ状組織が混在した遠心鋳造製鋳鉄の切削において、切削性能が高く、かつ工具寿命に優れたcBN焼結体工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
デンドライト組織やバラ状組織を有する鋳鉄をcBN焼結体工具で切削した際の摩耗形態を詳細に観察した結果、Ti化合物やAl化合物で構成される結合相の中でも、耐熱性に優れるAl
2O
3粒子の界面又は粒界で亀裂が発生し、同亀裂が伝播することにより摩耗が進行し、場合によっては欠損に至っていることを突き止めた。
【0014】
従来技術では、Al
2O
3、cBN、ZrO
2、TiCで構成されるcBN焼結体は、Al
2O
3の平均厚みが厚すぎるため、耐欠損性に劣っていた。また、結合相の厚みと標準偏差を適正値に規定した技術は公知であるが、Al
2O
3含有量が小さく、遠心鋳造鋳鉄の加工では耐摩耗性が不足していた。
【0015】
そこで、発明者らは、亀裂の起点となるAl
2O
3粒子の界面又は粒界の最適配置及びAl
2O
3を強化する効果が期待できるZr化合物の最適配置を見極めるために、各成分の粒度と含有率及び混合方法を変化させたcBN焼結体を作製し、切削性能との相関を調査した。その結果、Zr化合物とcBN粒子をAl
2O
3中に最適配置させることにより、耐熱性に優れるが靭性に劣るAl
2O
3を分断し、Al
2O
3の平均厚みと標準偏差を最適な範囲に設定することによって、耐熱性と靭性を高次元で両立させることに成功した。
【0016】
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
(1)立方晶窒化硼素粒子と結合相で構成される立方晶窒化硼素焼結体を少なくとも刃先に有する立方晶窒化硼素焼結体工具であって、
cBN含有率が20体積%以上60体積%以下であり、
結合相に少なくともAl
2O
3、及びZr化合物を含み、
焼結体中の任意の直線上において、Al
2O
3が占める連続する距離の平均値が0.1μm以上1.0μm以下であり、かつ該Al
2O
3が占める連続する距離の標準偏差が0.8以下であり、
当該直線上において、Al
2O
3とZr化合物との接点の数をX、Al
2O
3とcBNとの接点の数と、Al
2O
3とAl
2O
3及びZr化合物以外の結合相成分との接点の数との合計をYとした場合、X/Yが0.1以上1以下であり、
Zr化合物の平均粒径が0.01μm以上0.1μm以下である
ことを特徴とする立方晶窒化硼素焼結体工具。
(2)前記の焼結体中に含まれるZr化合物として、ZrC及びZrO
2を合計で0.5体積%以上5体積%以下含むことを特徴とする上記(1)に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
(3)前記の焼結体の任意の直線上において、X/Yが0.5以上0.9以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の立方晶窒化硼素焼結体工具。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、切削性能が高く、かつ工具寿命に優れたcBN焼結体工具を提供することができる。すなわち、Zr化合物とcBN粒子をAl
2O
3中に最適配置させることにより、耐熱性に優れるが靭性に劣るAl
2O
3を分断し、Al
2O
3の平均厚みと標準偏差を最適な範囲に設定することによって、耐熱性と靭性を高次元で両立させることに成功した。
【0018】
また、Al
2O
3とcBN粒子は結合力が弱いため、Al
2O
3以外の結合力に優れる高反応性化合物(例えばTiAl、Ti、Al、TiZr、Zr等)を介してcBN粒子とAl
2O
3粒子を結合させ、Al
2O
3中にZr化合物を分散させることによって、より耐摩耗性と耐欠損性を高めることができる。特に、ZrやTiZrをcBN粒子に事前に被覆しておくことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るcBN焼結体工具は、cBN粒子と結合相で構成されるcBN焼結体を少なくとも刃先に有するcBN焼結体工具であって、cBN含有率が20体積%以上60体積%以下、結合相にAl
2O
3、Zr化合物を含み、焼結体中の任意の直線上において、Al
2O
3が占める距離の平均値と標準偏差がそれぞれ0.1μm以上1.0μm以下及び0.8以下であり、当該直線上において、Al
2O
3とZr化合物との接点の数をX、Al
2O
3とcBNとの接点の数と、Al
2O
3とAl
2O
3及びZr化合物以外の結合相成分との接点の数との合計をYとした場合、X/Yが0.1以上1以下であり、Zr化合物の平均粒径が0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とする。
【0020】
上記cBN焼結体工具は、超硬合金製の基材の少なくとも刃先となる部分にcBN焼結体を有するcBN焼結体工具であっても、又はcBN焼結体のみで構成されるcBN焼結体工具であってもよい。また、刃先となるcBN焼結体表面に硬質セラミックス被覆層を有していても構わない。
【0021】
以下、cBN焼結体部分について詳述する。
上記cBN焼結体は、cBN含有率が20体積%以上60体積%以下であることを特徴とする。cBN含有率が20体積%未満であると焼結体の耐欠損性が低下し、60体積%を超えると耐摩耗性が低下する。cBN含有率は、より好ましくは40体積%以上50体積%以下である。また、結合相には少なくとも、Al
2O
3、及びZr化合物を含むことを特徴とする。これにより耐摩耗性と耐欠損性を向上させることができる。
【0022】
上記cBN焼結体は、焼結体中の任意の直線上において、Al
2O
3が占める連続した距離の平均値が0.1μm以上1.0μm以下であることを特徴とする。当該平均値が0.1μm未満であると耐熱性が低下し、1.0μmを超えると耐欠損性が低下する。該平均値は、より好ましくは0.3μm以上0.6μm以下である。また、当該任意の直線上において、Al
2O
3が占める連続した距離の標準偏差は0.8以下であることを特徴とする。当該標準偏差が0.8を超えると、耐欠損性のバラツキが大きくなる。該標準偏差は、より好ましくは0.2以上0.6以下である。
【0023】
更に、上記直線上において、Al
2O
3とZr化合物との接点の数をXとし、Al
2O
3とcBNとの接点の数と、Al
2O
3とAl
2O
3及びZr化合物以外の結合相成分との接点の数との合計をYとした場合に、X/Yが0.1以上1以下であることを特徴とする。当該X/Yが0.1未満であるとZr化合物によるAl
2O
3の靭性向上効果が得られず、1を超えるとAl
2O
3による耐熱性向上効果が低下する。
【0024】
上記cBN焼結体において、Zr化合物の平均粒径が0.01μm以上0.1μm以下であることを特徴とする。Zr化合物の平均粒径が0.01μm未満の場合、Zr化合物によるAl
2O
3の靭性向上効果が得られず、0.1μmを超えるとZr化合物自体の破砕が発生しやすくなり、焼結体の耐欠損性が低下する。Zr化合物の平均粒径は、より好ましくは0.03μm以上0.06μm以下である。
【0025】
本発明は、上記の構成により、cBN焼結体においてZr化合物とcBN粒子をAl
2O
3中に最適配置させることによって耐熱性には優れるが靭性に劣るAl
2O
3を分断し、更に、Al
2O
3の平均厚みと標準偏差を最適な範囲に設定することによって、焼結体の耐熱性と靭性を高次元で両立させることを可能にした。
【0026】
また、前記の焼結体に含まれるZr化合物として、ZrC及びZrO
2を合計で0.5体積%以上5体積%以下含むことにより、耐欠損性と耐摩耗性をさらに改善できる。すなわち、本発明に係るcBN焼結体工具は、前記の焼結体に含まれるZr化合物として、ZrC及びZrO
2を合計で0.5体積%以上5体積%以下含むことが好ましい。より好ましくは、1.5体積%以上4.5体積%以下である。
【0027】
ZrCとZrO
2は特に、Al
2O
3の靭性を改善する効果が高く、両化合物が焼結体中で合計0.5体積%未満の場合は、靭性向上効果が得られず、5体積%超の場合は、相対的にAl
2O
3の含有量が低下し、耐熱性が低下する。
【0028】
さらに、前記の焼結体の任意の直線上において、X/Yが0.5以上0.9以下であることで、欠損に対する信頼性が増す。すなわち、本発明に係るcBN焼結体工具は、前記の焼結体の任意の直線上において、X/Yが0.5以上0.9以下であることが好ましい。
【実施例】
【0029】
[cBN焼結体工具の作製]
(cBN焼結体の作製)
平均粒径が50nm以下(一部の実施例および比較例を除く)の表1に示すZr化合物と、平均粒径が300nm以下のTi化合物と、平均粒径が200nm以下のAl
2O
3とを、事前にφ0.2mmのZrO
2製ボールメディアで、流速0.2〜0.5L/minのエタノールの溶媒中で30〜120分間、上記化合物を混合微粉砕し、同メディアを取り除くことにより、超微粒のZr化合物がAl
2O
3中に均一に分散した特殊結合材を作製した。X/Yの値を制御するためには、実験的に上記範囲内で粉砕混合条件を変更するか、Zr化合物の含有量を変更することにより達成できる。
【0030】
実施例1〜11については、cBN粒子と上記結合材とをφ3mmのZrO
2製ボールメディアでボールミル混合法により均一混合した混合粉末を超硬合金製支持板に積層してMo製カプセルに充填後、超高圧装置によって、圧力7.0GPa、温度1600度で30分間焼結した。
【0031】
実施例12、13については、RFスパッタリングPVD装置を用いて、予めcBN粒子にそれぞれTiZr及びZrを平均膜厚30nmで被覆し、上記と同様の方法で充填、焼結した。
【0032】
各実施例及び比較例におけるcBN焼結体の組成を表1に示す。
(工具の作製)
得られた焼結体を所定の形状に切断し、超硬合金製工具母材に市販のロウ材を用いて接合し、所定の工具形状に研削加工を施した。
[評価]
(cBN焼結体特性の測定)
上記により得た各実施例及び比較例におけるcBN焼結体について、焼結体中の任意の直線上のAl
2O
3の占める連続した距離の、平均値及び標準偏差を、次に説明する方法により測定した。
【0033】
まず、cBN焼結体を鏡面研磨して、任意の領域のcBN焼結体組織を電子顕微鏡にて反射電子像を10000倍で写真撮影した。組成に対応した濃淡のコントラストが観察され、付属のEDX(エネルギー分散型X線分析)により各種元素の重なり状態から化合物を推定した。その結果、黒色領域はcBN粒子、灰色領域と白色領域は結合相であることが確認された。さらに、濃い灰色領域はAl
2O
3であり、濃度の薄い白色領域はZr化合物(酸化物、炭化物、窒化物、硼化物、窒硼化物)であることが特定された。
【0034】
次に、同写真に任意の直線を引き、当該直線上における、Al
2O
3とZr化合物との接点の数をXとし、Al
2O
3とcBNとの接点の数と、Al
2O
3とAl
2O
3及びZr化合物以外の結合相成分との接点の数との合計をYとして、X/Yの値を求めた。
【0035】
ここで、当該直線上の接点の合計数は、組織の均一性を考慮し、少なくとも50点以上となるように直線数を決めた。また、その直線数の直線において、上記Al
2O
3が連続して占める距離(長さ)を測定し、その平均値および標準偏差を求めた。cBN含有率は、前記の焼結体組織写真から、cBN粒子領域と結合相領域を画像処理により2値化し、cBN粒子の占有面積を体積含有率とした。結合相組成に関しては、XRD(X線回折)により同定した。
【0036】
Zr化合物とTi化合物の含有率に関しても、前記の焼結体組織写真の濃淡コントラストから、それぞれの占有面積を画像処理により算出し、体積含有率とした。Zr化合物の平均粒径に関しては、仕込みの原料粉の平均粒度を記載しており、前記の焼結体組織写真から、概ね、原料粉の粒径を維持していることを確認した。結果を表1に示す。
(切削試験)
上記で作製した各工具について、以下の条件で切削試験を行った。
被削材 : FC250(遠心鋳造鋳鉄スリーブの内径加工、硬度:HB230)
工具形状 : CNGA120408
切削条件 : 切削速度 Vc=700m/min.
送り量 f=0.3mm/rev.
切り込み量 ap=0.05mm
切削液あり
工具寿命 : 逃げ面摩耗量又はチッピングが0.2mmに到達した時点を工具寿命と判断した。
【0037】
結果を表2に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
表2より明らかなように、実施例の工具は、比較例の工具に比し、優れた切削性能を示した。
【0041】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明だけではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。