【実施例】
【0053】
以下に本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
なお、評価方法は以下のとおりとする。評価結果を表1に示す。
【0054】
[平均核体数]
可溶性エポキシ樹脂の平均核体数は、可溶性エポキシ樹脂の数平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置(Waters社製 2414)で測定(ポリスチレン換算)し、算出した。
〔ガラス転移温度〕
可溶性エポキシ樹脂のガラス転移温度は、DSC(Differental Scaning Calorymeter)セイコー電子工業(セイコー電子工業社製DSC220C)を用いて測定した。
[アミノ基量]
可溶性エポキシ樹脂のアミノ基量は、電位差測定装置(京都電子工業社製AT−510)を用い、電位差滴定により求めた。
[数平均分子量]
可溶性エポキシ樹脂の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)装置(Waters社製 2414)で測定(ポリスチレン換算)することにより求めた。
[MEQ(A)]
可溶性エポキシ樹脂のMEQ(A)は、電位差測定装置(京都電子工業社製AT−510)を用い、電位差滴定により求めた。
【0055】
[浴安定性]
金属表面処理用組成物を温度40℃の条件下に30日放置して、放置後の外観を目視にて、下記の基準で評価した。
○;化成浴に濁りが無く、沈殿物も生成していない。
△;化成浴の底部に沈殿物が生成しているが、簡易攪拌により初期の状態に戻る。
×;化成浴の底部に沈殿物が生成し、簡易攪拌を行っても初期の状態に戻らない。
【0056】
[化成皮膜中のジルコニウム量]
化成皮膜中のジルコニウム金属量(mg/m
2)は、「XRF1700」(島津製作所社製蛍光X線分析装置)により測定した。
[化成皮膜中の炭素量]
化成皮膜中の炭素量(mg/m
2)は、「RC412」(LECO社製炭素・水分分析装置)により測定した。
【0057】
[電着塗装の付きまわり性]
電着塗装の付きまわり性は、特開2000−038525号公報に記載された「4枚ボックス法」により評価した。即ち、
図1及び
図2に示すように、後述する化成処理を施した金属材料を、4枚立てた状態で、間隔20mmで平行に配置し、両側面下部及び底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、金属材料4を除く金属材料1、2、3には下部に直径8mmの貫通穴5を設けた。
このボックス10を、カチオン電着塗料で満たした電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴5のみからカチオン電着塗料がボックス10の内部に浸入する。
マグネチックスターラーでカチオン電着塗料を攪拌しながら、各金属材料1から4を電気的に接続し、金属材料1との距離が150mmとなるように対極21を配置した。各金属材料1から4を陰極、対極21を陽極として電圧を印加し、カチオン電着塗装を行った。塗装は、金属材料1のA面に形成される塗膜の膜厚が20μmに達する電圧まで、印加開始から30秒間で昇圧し、その後150秒間その電圧を維持することにより行った。このときの浴温は30℃に調整した。
塗装後の各金属材料1から4は水洗した後、170℃で25分間焼付けし、空冷後、対極21に最も近い金属材料1のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極21からもっとも遠い金属材料4のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比により付きまわり性を評価した。この値が大きいほど、付きまわり性がよいと評価できる。
【0058】
[耐食性試験(SDT)]
化成処理及び電着塗装を施した鋼板に、素地まで達する縦平行のカットを2本入れ、5%NaCl水溶液にて、55℃で240時間の浸漬を行った。次いで、水洗及び風乾を行った後、
カット部に密着テープ「エルパックLP−24」(ニチバン社製)を密着させ、更に密着テープを急激に剥離した。剥離した密着テープに付着した塗料の最大幅(片側)の大きさを測定した。
【0059】
実施例1
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に式(1)のノボラック型エポキシ樹脂に該当するEPICLON HP−7200HH(DIC社製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)927質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル309質量部、MIBK309質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン(MEtA)248質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル15質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度65質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0060】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸109質量部と純水2780質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.28mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、DN−1と称することがある。)を調製した。
【0061】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物1を調製した。
得られた金属表面処理用組成物1について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0062】
<電着塗膜の形成>
市販の冷延鋼板;SPCC−SD(日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)に、下記の条件で、塗装前処理、電着塗装を施した。
(1)塗装前処理
脱脂処理:2質量%「サーフクリーナーEC92」(日本ペイント社製脱脂剤)で40℃、2分間浸漬処理した。
脱脂後水洗処理:水道水で30秒間スプレー処理した。
化成処理:上述のとおりにして調製した金属表面処理用組成物1の浴温度を40℃に調整した後、冷延鋼板(SPCC−SD)を90秒及び600秒間浸漬処理した。
化成後水洗処理:水道水で30秒間スプレー処理した。
純水水洗処理:純水による流水洗、30秒間スプレー処理した。
乾燥処理:水洗処理後の冷延鋼板を電気乾燥炉において、40℃で2分間乾燥し、化成皮膜が形成された鋼板を得た。得られた化成皮膜について、化成皮膜中のジルコニウム量及び炭素量を測定した。
【0063】
(2)電着塗装
上記塗装前処理(1)を行って化成皮膜が形成された冷延鋼板を「パワーニクス1010」(日本ペイント社製カチオン電着塗料)を用いて乾燥膜厚15μmになるように電着塗装し、水洗後、170℃で20分間加熱して焼き付けを行い、電着塗膜が形成された鋼板を得た。
この電着塗膜が形成された鋼板について、上記の電着塗装の付きまわり性及び耐食性試験(SDT)の評価を行った。
【0064】
実施例2
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
固形分濃度30質量%、アミノ基量0.28mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を調製した。
【0065】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を固形分として1200ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物2を調製した。得られた金属表面処理用組成物2について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0066】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0067】
実施例3
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に式(2)のノボラック型エポキシ樹脂に該当するYDCN−700−10(新日鐵化学社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)614質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル205質量部、MIBK205質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン226質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル43質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度65質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0068】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸77.7質量部と純水1990質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.36mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、CN−1と称することがある。)を調製した。
【0069】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−1)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物3を調製した。得られた金属表面処理用組成物3について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0070】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0071】
実施例4
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に式(2)のノボラック型エポキシ樹脂に該当するYDCN−704(新日鐵化学社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)926質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル309質量部、MIBK309質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン334質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル61質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度65質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0072】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸116.6質量部と純水2985質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.35mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、CN−2と称することがある。)を調製した。
【0073】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−2)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物4を調製した。得られた金属表面処理用組成物4について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0074】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0075】
実施例5
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に式(1)のノボラック型エポキシ樹脂に該当するEPICLON HP−7200HH(DIC社製ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)927質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル309質量部、MIBK309質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン210質量部、アミノエチルエタノールアミンMIBKブロック体(アミノエチルエタノールアミン封鎖体)131質量部と、エチレングリコールモノブチルエーテル16質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度65質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た
【0076】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸109質量部と純水2780質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.34mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、DN−2と称することがある。)を調製した。
【0077】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−2)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物5を調製した。
得られた金属表面処理用組成物5について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0078】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0079】
実施例6
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
固形分濃度30質量%、アミノ基量0.28mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を調製した。
【0080】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン150ppm、フッ素イオン187ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を固形分として400ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物6を調製した。
得られた金属表面処理用組成物6について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0081】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0082】
実施例7
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
固形分濃度30質量%、アミノ基量0.28mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を調製した。
【0083】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン100ppm、フッ素イオン125ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を固形分として200ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物7を調製した。
得られた金属表面処理用組成物7について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0084】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0085】
実施例8
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
固形分濃度30質量%、アミノ基量0.35mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−2)を調製した。
【0086】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−2)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物8を調製した。
得られた金属表面処理用組成物8について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0087】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0088】
比較例1
<金属表面処理用組成物の製造>
可溶性エポキシ樹脂溶液(DN−1)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、金属表面処理用組成物9を調製した。
得られた金属表面処理用組成物9について、上記の浴安定性の評価を行った。
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0089】
比較例2
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂組成物の製造
攪拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に液状エポキシ樹脂DER−331(ダウケミカル社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂)182質量部、ビスフェノールA56質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル20質量部、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.06質量部を仕込んで固形分濃度90質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、145℃に昇温した後、3時間保温してエポキシ当量500のビスフェノールA型エポキシ樹脂組成物を合成した。得られたビスフェノールA型エポキシ樹脂組成物にプロピレングリコールモノメチルエーテルを56質量部添加することにより固形分濃度80質量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂組成物とし、90℃に冷却した。
【0090】
(2)アミン変性
次に、90℃に冷却されたビスフェノールA型エポキシ樹脂組成物を734質量部(固形分として588質量部)に、アミノエチルエタノールアミンMIBKブロック体(アミノエチルエタノールアミン封鎖体)110質量部と、メチルエタノールアミン14質量部を添加し、エポキシ1当量に対してアミン(メチルイソブチルケトンによって封鎖されたアミンを除く)1当量となるように配合した。更に、固形分濃度80質量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加した後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させ、その後放置により100℃に冷却して、アミノ基を付加したエポキシ樹脂を合成した。
【0091】
(3)中和
次に、90質量%の酢酸48質量部と純水617質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.33mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、BPA−1と称することがある。)を調製した。
【0092】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(BPA−1)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物10を調製した。得られた金属表面処理用組成物10について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0093】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物10を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0094】
比較例3
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアミン変性
攪拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器にEPICLON2050(DIC社製BPA型エポキシ樹脂)230質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル77質量部、MIBK77質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン109質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル4質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度62質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0095】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸19.9質量部と純水645質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.14mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、BPA−2と称することがある。)を調製した。
【0096】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(BPA−2)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物11を調製した。得られた金属表面処理用組成物11について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0097】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物11を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0098】
比較例4
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器に式(2)のノボラック型エポキシ樹脂に該当するYDCN−700−2(新日鐵化学社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)436質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル145質量部、MIBK145質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン164質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル33質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度65質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0099】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸55.5質量部と純水1421質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.37mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、CN−3と称することがある。)を調製した。
【0100】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−3)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物12を調製した。
得られた金属表面処理用組成物12について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0101】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物12を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0102】
比較例5
<可溶性エポキシ樹脂溶液の製造>
(1)ノボラック型エポキシ樹脂のアミン変性
撹拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた反応容器にYDCN−700−10(新日鐵化学社製クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)892質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル297質量部、MIBK297質量部を仕込んで固形分濃度60質量%の組成物とし、この反応容器を窒素ガスでパージしながら、100℃に昇温した。次いで、メチルエタノールアミン109質量部、エチレングリコールモノブチルエーテル19質量部の混合物を30分かけて滴下した。滴下後、組成物の温度を115℃に調整して1時間保温して反応させた。その後放置により80℃に冷却して、固形分濃度62質量%のアミノ基を付加したエポキシ樹脂組成物を得た。
【0103】
(2)中和
次に、88質量%の蟻酸80質量部と純水2505質量部との混合物を滴下し、減圧による脱溶剤工程を経て、固形分濃度30質量%、アミノ基量0.15mol/固形分100gの可溶性エポキシ樹脂溶液(以下、CN−4と称することがある。)を調製した。
【0104】
<金属表面処理用組成物の製造>
ジルコンフッ化水素酸、フッ化水素酸、硝酸、シランカップリング剤を用いて、ジルコニウムイオン450ppm、フッ素イオン560ppm、硝酸イオン5000ppm、シランカップリング剤200ppmとし、上記可溶性エポキシ樹脂溶液(CN−4)を固形分として600ppmを添加し、アンモニアを用いてpHを4.2に調整した金属表面処理用組成物13を調製した。
得られた金属表面処理用組成物13について、上記の浴安定性の評価を行った。
【0105】
<電着塗膜の形成>
金属表面処理用組成物1に代えて金属表面処理用組成物13を用いたこと以外は実施例1と同様にして、電着塗膜を形成した。また、実施例1と同様の評価を行った。
【0106】
【表1】
【0107】
[結果]
表1に示すとおり、化成皮膜量の処理時間依存性は、可溶性エポキシ樹脂を含まない比較例1と比べて、可溶性エポキシ樹脂を含む比較例2〜5及び実施例1〜8の方が小さいことが明らかである。特に、実施例1〜8は、90秒処理の化成皮膜と600秒処理の化成皮膜との皮膜量の違いが1.8倍未満である点において、1.8倍以上である比較例1〜5と比べて、より化成皮膜量の処理時間依存性に優れている。
電着塗装の付きまわり性に関しては、90秒処理と600秒処理のいずれにあっても、実施例1〜8の方が比較例1〜5よりも優れている。また、90秒処理と600秒処理とにおける付きまわり性の差は、比較例1〜5では7%以上であるのに対して、実施例1〜8では5%以下であり、付きまわり性を示すG/A(%)は処理時間によらず55%以上確保できる。さらに、このことから、実施例1〜8では、化成処理時間にばらつきが生じても、安定した付きまわり性を確保することができることがわかる。特に実施例5〜7では、特定の可溶性エポキシ樹脂のアミン化にてケチミンを併用した場合や、金属表面処理用組成物のジルコニウムイオン濃度を200ppm未満に調整することで、90秒処理の化成皮膜と600秒処理の化成皮膜との皮膜量の違いが1.5倍未満となり、より優れた化成皮膜量の処理時間依存性と付きまわり性を得ることができることがわかる。