(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732677
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】車両用ドアヒンジ
(51)【国際特許分類】
E05D 11/06 20060101AFI20150521BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
E05D11/06
B60J5/04 L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-85721(P2011-85721)
(22)【出願日】2011年4月7日
(65)【公開番号】特開2012-219499(P2012-219499A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100086726
【弁理士】
【氏名又は名称】森 浩之
(72)【発明者】
【氏名】宮川 正純
(72)【発明者】
【氏名】森永 浩司
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−003780(JP,U)
【文献】
実開昭61−123174(JP,U)
【文献】
実公昭50−18256(JP,Y1)
【文献】
特開2006−348694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体またはドアのいずれか一方に固定される第1ヒンジ部材と、前記車体または前記ドアのいずれか他方に固定されヒンジ軸により前記第1ヒンジ部材に回動可能に連結される第2ヒンジ部材とを備え、前記第1ヒンジ部材の板厚の面に形成され前記ヒンジ軸と平行な第1ストッパ部が前記第2ヒンジ部材の第2ストッパ部に当接することにより、前記ドアの全開位置を規制するようにした車両用ドアヒンジにおいて、
前記第2ヒンジ部材における前記第2ストッパ部に近接した位置で、かつ、前記ドアの回動中に前記第1ストッパ部が描く前記第1ストッパ部の前記ヒンジ軸を中心とする円弧軌跡の僅かに内側の位置に、前記第2ストッパ部よりも前記第1ストッパ部に相対する方向へ突出する係合部を設け、
前記ドアの全開位置において前記第1ストッパ部が前記第2ストッパ部に当接して、前記第2ストッパ部が前記ドアの開方向へ変形した際、前記第1ストッパ部の角部が前記係合部に係合することによって前記ドアの開方向への回動を抑止する
ことを特徴とする車両用ドアヒンジ。
【請求項2】
前記係合部を、エンボス加工により形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアヒンジ。
【請求項3】
前記係合部を、折曲加工により形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用ドアヒンジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを車体に開閉可能に枢着するための車両用ドアヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアヒンジにおいて、車両の車体側に固定される固定ヒンジ部材と、車両のドア側に固定されると共に、固定ヒンジ部材にヒンジ軸により回動可能に連結される可動ヒンジ部材とを備え、可動ヒンジ部材に設けられその板厚に相当するストッパ部が固定ヒンジ部材に設けられるストッパ部に当接することにより、ドアの全開位置を規制する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭59−30146号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された車両用ドアヒンジは、より小型、軽量化を図るため、特に固定ヒンジ部材の板厚を下げた場合、
図11に示すように、車体Bに固定される固定ヒンジ部材100のストッパ部100aにドアDの開方向(
図11においてヒンジ軸102を中心とする時計方向)への繰り返し荷重または高荷重が作用すると、特に固定ヒンジ部材100のストッパ部100aが実線で示す変形前の位置から2点鎖線で示す位置へ変形し、ドアDに固定される可動ヒンジ部材101のストッパ部101aと固定ヒンジ部材100のストッパ部100aとの当接関係が変化し、ドアDの全開位置を一定に保つことができなくなるだけでなく、最終的にストッパ部100a、101a同士の当接が外れる虞がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、ストッパ部が変形しても両ストッパ部同士の当接関係を保持可能な構成にして小型、軽量化を可能にした車両用ドアヒンジを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、車体またはドアのいずれか一方に固定される第1ヒンジ部材と、前記車体または前記ドアのいずれか他方に固定されヒンジ軸により前記第1ヒンジ部材に回動可能に連結される第2ヒンジ部材とを備え、前記第1ヒンジ部材の板厚の面に形成され前記ヒンジ軸と平行な第1ストッパ部が前記第2ヒンジ部材の第2ストッパ部に当接することにより、前記ドアの全開位置を規制するようにした車両用ドアヒンジにおいて、前記第2ヒンジ部材における前記第2ストッパ部に近接した位置
で、
かつ、前記ドアの回動中に前記第1ストッパ部が描く前記第1ストッパ部の前記ヒンジ軸を中心とする円弧軌跡の
僅かに内側
の位置に、前記第2ストッパ部よりも前記第1ストッパ部に相対する方向へ突出する係合部を設け、前記ドアの全開位置において前記第1ストッパ部が前記第2ストッパ部に当接して、前記第2ストッパ部が前記ドアの開方向へ
変形した際、前記第1ストッパ部
の角部が前記係合部に係合することによって前記ドアの開方向への回動を抑止することを特徴とする。
【0007】
さらに、好ましくは、前記係合部を、エンボス加工または折曲加工により形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第2ヒンジ部材の第2ストッパ部がドアの開方向へ変形した場合には、第1ヒンジ部材の第1ストッパ部が第2ヒンジ部材に形成された係合部に係合してドア開方向への回動を抑止するため、特に第2ヒンジ部材の板厚を下げてもドア開方向への回動を抑止する強度を向上させることができ、ドアヒンジの小型、軽量化を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係わるドアヒンジ及び車体の左前部の斜視図である。
【
図4】
図3において矢印IV方向から見たドアヒンジの側面図である。
【
図5】
図4において矢印V方向から見たドアヒンジの平面図である。
【
図6】ドアが全開位置にあるときのドアヒンジの平面図である。
【
図7】ドアが全開位置にあるときのドアヒンジの要部の拡大断面図である。
【
図8】第2ヒンジ部材の第2ストッパ部が変形した際のドアヒンジの要部の拡大断面図である。
【
図9】他の実施例を示し、ドアが全開位置にあるときのドアヒンジの要部の拡大断面図である。
【
図10】同じく第2ヒンジ部材の第2ストッパ部が変形した際のドアヒンジの要部の拡大断面図である。
【
図11】従来技術を説明するためのドアヒンジの要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を
図1〜8に基づいて説明する。なお、以下の説明では、
図4〜6における左方及び右方をドアヒンジ1の「前方」及び「後方」とし、
図5、6における上側及び下側をドアヒンジ1の「車内側」及び「車外側」とする。
【0011】
ドアヒンジ1は、ドアD側に固定される金属製の第1ヒンジ部材2と、車体B側に固定され上下方向のヒンジ軸4により第1ヒンジ部材2に回動可能に連結される金属製の第2ヒンジ部材3とを備えて、ドアDを車体Bに開閉可能に枢着するものである。なお、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、第1ヒンジ部材2を車体B側に固定し、第2ヒンジ部材3をドアD側に固定しても良い。
【0012】
なお、ドアヒンジ1は、通常、
図1に示すように上下一組で使用されるが、上下のドアヒンジ1は主要部分が同一構成であるため、以下の説明では、上側のドアヒンジ1を代表して説明する。
【0013】
第1ヒンジ部材2は、金属製の板材をプレス加工により形成され、ドアD側の取付孔D1にボルト及びナット5により固定される上下の取付部21、21と、両取付部21、21からヒンジ軸4に対して直角な方向へそれぞれ延出する上下の支持部22、22と、上下の支持部22、22同士を連結しヒンジ軸4に平行な方向へ延出する連結部23とを有し、連結部23の端面(第2ヒンジ部材3の後述の第2ストッパ部33aに当接する板厚の面)にはヒンジ軸4に平行な第1ストッパ部23aが形成される。
【0014】
第2ヒンジ部材3は、金属製の板材をプレス加工により形成され、車体B側の取付孔B1にボルト及びナット6により固定される取付部31と、取付部31の上下部分にあってヒンジ軸4に対して直角になるように車外側に延出する上下の支持部32、32と、上下の支持部32、32間にあって、取付部31の後部から車外側へ延出する連結部33とを有し、上下の支持部32、32間に第1ヒンジ部材2の支持部22、22を配置して各支持部22、32に設けられた軸孔22a、32aにヒンジ軸4を挿入することによって、第1ヒンジ部材2に回動可能に連結される。また、斜面32bは、後述の第2ストッパ33aを跨ぐように形成される。これにより、第2ストッパ部33aは、斜面32b近傍に位置することから、強度的に優れ変形を起こし難い。
【0015】
第2ヒンジ部材3における両支持部32、32の車内外方向のほぼ中央部には、ドアDの重さにより両支持部32、32が下方へ変形しないように、両支持部32、32の曲げ強度を高めるための斜面32bが支持部32の前後幅に対して斜め方向へ延出するように折曲加工により形成される。上下の斜面32b、32bは、上下の支持部32、32間の上下方向の間隔が取付部31寄り側の間隔よりもヒンジ軸4寄り側の間隔の方が狭くなるように形成される。
【0016】
第2ヒンジ部材3の連結部33における第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aに対向する面には、第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aがドアD開方向へ面当りすることによって、ドアDの全開位置を規制するためのヒンジ軸4に平行な第2ストッパ部33aが形成される。
図3及び
図4に示すように、第2ストッパ部33aは、第1ストッパ部23aに相対する方向に突出する状態でエンボス加工により形成される。これにより、第2ストッパ部33は強度に優れ変形を起こし難い。
【0017】
さらに、第2ヒンジ部材3の連結部33における車外側の端部、すなわち第2ストッパ部33aに近接する位置には、ドアDが全開位置にあるとき、すなわち
図6、7に示すように、第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aが第2ヒンジ部材3の第2ストッパ部33aに当接した状態にあるとき、第1ストッパ部23aのヒンジ軸4を中心とする円弧軌跡T(
図7参照)よりも僅かに内側で、かつ第2ストッパ部33aよりも第1ストッパ部23aに相対する方向(
図5〜7においてヒンジ軸4を中心として反時計方向)へ突出する係合部をなす突出部34がエンボス加工により形成される。
【0018】
ドアヒンジ1を車体B及びドアDに取り付けた状態において、ドアDが閉鎖位置から全開位置へ向けて回動すると、第1ヒンジ部材2は、ドアDの閉鎖位置に対応する
図5に示す位置からヒンジ軸4を中心に時計方向へ回動し、ドアDの全開位置に対応する
図6、7に示す位置において第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aが第2ヒンジ部材3の第2ストッパ部33aに面当りしてそれ以上の回動が阻止され、ドアDは全開位置に停止する。この場合、第2ストッパ部33aは、第1ストッパ部23aに相対する方向へ突出する状態でエンボス加工されると共に、強度に優れる斜面32bの近傍に位置することから、強度に優れ変形を起こし難い。
このとき、繰り返し荷重による第2ストッパ部33aの劣化やドアDが勢いよく開かれる等して第2ストッパ部33aに高荷重が作用して第2ストッパ部33aを含む第2ヒンジ部材3の連結部33がドアDの開方向へ変形した場合には、
図8に示すように第1ヒンジ部材2が
図6、7に示す全開位置から開方向へ若干回動するものの、開方向へ若干回動した位置で第1ストッパ部23aの角部(係合部34に近接側の角部)23bが第2ヒンジ部材3の係合部34に対して開方向へ係合することで、第1ストッパ部23aと第2ストッパ部33aとの当接関係が保持されて、第2ヒンジ部材3の開方向への回動が抑止される。この場合、係合部34は、エンボス加工により形成され強度に優れることから、第1ストッパ部23aとの開方向への係合を確実なものとしつつ係合部34を含む第2ストッパ部33aの小型化が可能となる。これにより、特に第2ヒンジ部材3の板厚を従来よりも薄くしても、第1ストッパ部23aと第2ストッパ部33aとの当接関係が保持されるため、ドアヒンジ1の小型、軽量化を可能にすることができる。
【0019】
図9、10は、第2ヒンジ部材3の連結部33に形成される係合部の他の実施例を示す。他の実施例の係合部は、第2ヒンジ部材3の連結部33における車外側の端部、すなわち第2ストッパ部33aに近接する位置に折曲部35として折曲加工により形成される。折曲部35は、
図9に示すように、第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aが第2ヒンジ部材3の第2ストッパ部33aに当接した状態にあるとき、第1ストッパ部23aのヒンジ軸4を中心とする円弧軌跡Tよりも僅かに内側にあって、かつ第2ストッパ部33aよりも第1ストッパ部23aに相対する方向(
図9、10においてヒンジ軸4を中心として反時計方向)へ突出するように折曲加工により形成される。なお、他の実施例において、折曲部35以外の構成については、前述の実施例と同一であるので、
図9、10に前述の実施例と同一の符号を付して説明は省略する。
【0020】
他の実施例においては、ドアDが閉鎖位置から全開位置へ向けて回動すると、第1ヒンジ部材2は、ヒンジ軸4を中心に回動し、ドアDの全開位置に対応する
図9に示す位置において第1ヒンジ部材2の第1ストッパ部23aが第2ヒンジ部材3の第2ストッパ部33aに面当りしてそれ以上の回動が阻止されることによりドアDは全開位置に停止する。このとき、繰り返し荷重による第2ストッパ部33aの劣化やドアDが勢いよく開かれる等して第2ストッパ部33aに高荷重が作用し第2ストッパ部33aを含む第2ヒンジ部材3の連結部33がドアDの開方向へ変形した場合には、
図10に示すように第1ヒンジ部材2が
図9に示す全開位置から開方向へ若干回動するものの、開方向へ若干回動した位置で第1ストッパ部23aが第2ヒンジ部材3の折曲部35に対して開方向へ係合し、第1ヒンジ部材2の開方向への回動を抑止することができる。この場合、折曲部35は、第2ストッパ部33aに近接する位置に折曲加工により形成され第2ストッパ部23aとの係合代を大きくとることができることから、第1ストッパ部23との開方向への係合を確実なものとすることができる。また、折曲部35は、両支持部32、32との間に収容されることから、折曲部35を含む第2ストッパ部23aの小型化が可能となる。
【0021】
他の実施例においては、前述の実施例と同様に、特に第2ヒンジ部材3の板厚を従来よりも薄くしても、第1ストッパ部23aと第2ストッパ部33aとの当接関係が保持されるため、ドアヒンジ1の小型、軽量化を可能にすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 ドアヒンジ
2 第1ヒンジ部材
3 第2ヒンジ部材
4 ヒンジ軸
5 ボルト、ナット
6 ボルト、ナット
21 取付部
22 支持部
22a 軸孔
23 連結部
23a 第1ストッパ部
23b 角部
31 取付部
32 支持部
32a 軸孔
32b 斜面
33 連結部
33a 第2ストッパ部
34 突出部(係合部)
35 折曲部(係合部)
B 車体
D ドア