特許第5732679号(P5732679)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732679
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】電流センサ
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/20 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   G01R15/20 C
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-522486(P2013-522486)
(86)(22)【出願日】2012年3月15日
(86)【国際出願番号】JP2012056643
(87)【国際公開番号】WO2013005458
(87)【国際公開日】20130110
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2011-148152(P2011-148152)
(32)【優先日】2011年7月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310014322
【氏名又は名称】アルプス・グリーンデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】蛇口 広行
(72)【発明者】
【氏名】三ツ谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】小寺 康夫
【審査官】 堀 圭史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−114115(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/090769(WO,A1)
【文献】 特開2005−321206(JP,A)
【文献】 特開2010−112767(JP,A)
【文献】 特開2005−283451(JP,A)
【文献】 特開昭61−80074(JP,A)
【文献】 特開2001−74783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/14−26,19/00−32
21/08−09
H01F 27/42,38/20−40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電流路と、
前記第1の電流路に近接して配置された第2の電流路と、
前記第1の電流路に設けられた第1および第2の磁電変換素子と、を備え、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子の感度軸の方向が同一であって、
前記第2の電流路の中心線から前記第1の磁電変換素子までの垂線と、前記第2の磁電変換素子までの垂線との方向および長さが等しく、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子とを結ぶ線分と、前記第2の電流路の前記線分に近接する直線部とが平行であり、前記第2の電流路の中で、当該第2の電流路の電流方向において前記第1の磁電変換素子と同位置の断面積と前記第2の磁電変換素子と同位置の断面積が同一であり、
前記第1の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子が設けられる部分と前記第2の磁電変換素子が設けられる部分の形状が異なり、前記第1の電流路を流れる電流により発生する磁界が、異なる大きさで前記第1および第2の磁電変換素子に加わり、
前記第1の電流路は、屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の磁電変換素子は前記第1の屈曲部以外に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記屈曲部に配置され、
前記第1の電流路と前記第1の磁電変換素子との距離より、前記第1の電流路と前記第2の磁電変換素子との距離が離れている
ことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
第1の電流路と、
前記第1の電流路に近接して配置された第2の電流路と、
前記第1の電流路に設けられた第1および第2の磁電変換素子と、を備え、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子の感度軸の方向が同一であって、
前記第2の電流路の中心線から前記第1の磁電変換素子までの垂線と、前記第2の磁電変換素子までの垂線との方向および長さが等しく、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子とを結ぶ線分と、前記線分に近接する前記第2の電流路の直線部とが平行であり、前記第2の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子に近接する部分の断面積と前記第2の磁電変換素子とに近接する部分の断面積が同一であり、
前記第1の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子が設けられる部分と前記第2の磁電変換素子が設けられる部分の形状が異なり、前記第1の電流路を流れる電流により発生する磁界が、異なる大きさで前記第1および第2の磁電変換素子に加わり、
前記第1の電流路における前記第1の磁電変換素子近傍と、前記第2の磁電変換素子近傍との厚みが異なり、
前記第1の電流路と前記第2の電流路とは、幅方向に近接していることを特徴とする電流センサ。
【請求項3】
前記第1の屈曲部は、前記第1の電流路を厚み方向に屈曲させて形成しており、前記第1の電流路と前記第2の電流路とは、幅方向に近接していることを特徴とする請求項1記載の電流センサ。
【請求項4】
第1の電流路と、
前記第1の電流路に近接して配置された第2の電流路と、
前記第1の電流路に設けられた第1および第2の磁電変換素子と、を備え、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子の感度軸の方向が同一であって、
前記第2の電流路の中心線から前記第1の磁電変換素子までの垂線と、前記第2の磁電変換素子までの垂線との方向および長さが等しく、
前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子とを結ぶ線分と、前記線分に近接する前記第2の電流路の直線部とが平行であり、前記第2の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子に近接する部分の断面積と前記第2の磁電変換素子とに近接する部分の断面積が同一であり、
前記第1の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子が設けられる部分と前記第2の磁電変換素子が設けられる部分の形状が異なり、前記第1の電流路を流れる電流により発生する磁界が、異なる大きさで前記第1および第2の磁電変換素子に加わり、
前記第1の電流路を流れる電流が発生する磁界は、異なる向きで前記第1および第2の磁電変換素子に加わることを特徴とする電流センサ。
【請求項5】
前記第1の電流路は幅方向に屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の屈曲部を挟んで、前記第1の磁電変換素子は中央部に配置され、前記第2の磁電変換素子は端部に配置されることを特徴とする請求項記載の電流センサ。
【請求項6】
前記第1の電流路は幅方向に屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の磁電変換素子は前記第1の屈曲部以外の領域に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記第1の屈曲部に配置されることを特徴とする請求項記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第2の電流路は幅方向に屈曲する第2の屈曲部を有し、
前記第1および第2の磁電変換素子は、前記第2の屈曲部と直交する領域外に配置されることを特徴とする請求項又は記載の電流センサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路近傍の磁界に基づいて当該電流路に流れる電流を測定する電流センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定電流を通流する被測定電流路に設置され、被測定電流路を通流する被測定電流により発生する磁界を検出し、検出された磁界に基づいて当該電流路に流れる電流を検出する電流センサが知られている。このような電流センサは、例えば、それぞれの延びる方向が平行となるように並設された3本の電流路を有する三相モータ等に搭載される。このような三相モータに搭載される電流センサにおいては、隣り合う電流路(近接電流路)を流れる電流により生じる磁界の影響を抑制して、被測定電流の測定精度の低下を防止する必要がある。近接電流路に起因する磁界の影響を抑制する方法としては、例えば、図12のように被測定電流により発生する磁界を一対の磁電変換素子で測定し、近隣電流路を流れる電流により発生する磁界が一対の磁電変換素子に同様に加わるように配置してなる電流センサが提案されている。この電流センサでは、被測定電流が発生する磁場は、一対の磁電変換素子に逆方向に加わり、近隣電流が発生する磁場は、一対の磁電変換素子に同一方向に加わる。この為、一対の磁電変換素子の出力の差分を用いることで、近隣電流が発生する磁場を相殺することができる。尚、地磁気等の外来磁界も、一対の磁電変換素子に同一方向に加わるため、相殺できる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−266290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された電流センサの場合、近隣電流路を流れる電流により発生する磁界が、被測定電流路を流れる電流により発生する磁界と同一方向に重なる。この為、各磁電変換素子は、前記双方の磁界を足し合わせた強さの磁界を測定できるようにする必要がある。よって、近隣電流路を流れる電流により発生する磁界の強さの分だけダイナミックレンジが低下する。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、地磁気等の外来磁界と、近接電流路の磁界の双方の影響を減らすと共に、ダイナミックレンジの低下を防止できる電流センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電流センサは、第1の電流路と、前記第1の電流路に近接して配置された第2の電流路と、前記第1の電流路に設けられた第1および第2の磁電変換素子と、を備え、前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子の感度軸の方向が同一であって、前記第2の電流路の中心線から前記第1の磁電変換素子までの垂線と、前記第2の磁電変換素子までの垂線との方向および長さが等しく、前記第1の磁電変換素子と前記第2の磁電変換素子とを結ぶ線分と、前記第2の電流路の前記線分に近接する直線部とが平行であり、前記第2の電流路の中で、当該第2の電流路の電流方向において前記第1の磁電変換素子と同位置の断面積と前記第2の磁電変換素子と同位置の断面積が同一であり、前記第1の電流路の中で、前記第1の磁電変換素子が設けられる部分と前記第2の磁電変換素子が設けられる部分の形状が異なり、前記第1の電流路を流れる電流により発生する磁界が、異なる大きさで前記第1および第2の磁電変換素子に加わり、前記第1の電流路は、屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の磁電変換素子は前記第1の屈曲部以外に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記屈曲部に配置され、前記第1の電流路と前記第1の磁電変換素子との距離より、前記第1の電流路と前記第2の磁電変換素子との距離が離れている。
【0007】
この電流センサによれば、被測定電流路となる第1の電流路に設けられた第1および第2の磁電変換素子の感度軸と、近接電流路となる第2の電流路を流れる電流により発生する磁界の向きを異なる構成とすることができるため、ダイナミックレンジの低下を抑制することができる。例えば、第2の電流路を流れる電流により発生する磁界の向きが、第1および第2の磁電変換素子の感度軸に対してほぼ直交する角度となる場合、第2の電流路を流れる電流により発生する磁界は、第1および第2の磁電変換素子でほとんど測定されないため、ダイナミックレンジの低下を効果的に抑制することができる。また、この電流センサによれば、第1および第2の磁気センサによって検出された磁束(磁場)を差動演算処理することにより、第2の電流路に発生する磁界の影響がキャンセルされ、第1の電流路に発生する磁界のみを差分出力することができる。このように出力された磁界に基づいて被測定電流路に流れる電流を精度よく検出できるため、磁気センサの位置精度や取り付け精度を要求することなく、近接電流路の磁界の影響によるダイナミックレンジの低下や被測定電流の測定精度の低下の防止が可能となる。
【0008】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路における前記第1の磁電変換素子近傍と、前記第2の磁電変換素子近傍との断面積が異なっていてもよい。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路(第1の電流路)に発生する磁場が、異なるベクトルで第1および第2の磁電変換素子に加わる構成とすることができるため、低コストの電流センサを実現できる。
【0009】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路における前記第1の磁電変換素子近傍と、前記第2の磁電変換素子近傍との幅が異なっていてもよい。
【0010】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路における前記第1の磁電変換素子近傍と、前記第2の磁電変換素子近傍との厚みが異なっていてもよい。
【0011】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路は、屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の磁電変換素子は前記第1の屈曲部以外に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記屈曲部に配置されていてもよい。
【0012】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の屈曲部は、前記第1の電流路を厚み方向に屈曲させて形成してもよい。
【0013】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路は、第1の分流路と第2の分流路に分流され、前記第1の磁電変換素子は前記第1の分流部および前記第2の分流路以外に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記第1の分流路に配置されていてもよい。
【0014】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路は、第1の分流路と第2の分流路に分流され、前記第1の磁電変換素子は前記第1の分流路および前記第2の分流路以外に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記第1の分流路と前記第2の分流路の間に配置されていてもよい。
【0015】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路を流れる電流が発生する磁界は、異なる向きで前記第1および第2の磁電変換素子に加わるようにしてもよい。
【0016】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路は幅方向に屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の屈曲部を挟んで、前記第1の磁電変換素子は中央部に配置され、前記第2の磁電変換素子は端部に配置されていてもよい。
【0017】
また、上記電流センサにおいて、前記第1の電流路は幅方向に屈曲する第1の屈曲部を有し、前記第1の磁電変換素子は前記第1の屈曲部以外の領域に配置され、前記第2の磁電変換素子は前記第1の屈曲部に配置されるようにしてもよい。
【0018】
また、上記電流センサにおいて、前記第2の電流路は幅方向に屈曲する第2の屈曲部を有し、前記第1および第2の磁電変換素子は、前記第2の屈曲部と直交する領域外に配置されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、磁電変換素子の位置精度や取り付け精度を要求することなく、近接電流路の磁場の影響による被測定電流の測定精度の低下を防止すると共に、ダイナミックレンジの低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】磁電変換素子の構成例を示すブロック図である。
図2】電流センサの第1の構成例を示す図である。
図3】上記電流センサの変形例を示す図である。
図4】電流センサの第2の構成例を示す図である。
図5】電流センサの第3の構成例を示す図である。
図6】電流センサの第4の構成例を示す図である。
図7】電流センサの第5の構成例を示す図である。
図8】電流センサの第6の構成例を示す図である。
図9】電流センサの第6の他の構成例を示す図である。
図10】電流センサの第8の構成例を示す図である。
図11】電流センサの第9の構成例を示す図である。
図12】従来の電流センサの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、磁電変換素子2a,2bを含む電流センサの構成例を示すブロック図である。図1に示すように、電流センサ1は、磁電変換素子2a,2bに加え、磁電変換素子2a,2bの制御を行う制御回路素子31a,31bと、制御回路素子31a,31bからの出力の差分をとってセンサ出力とする信号処理回路3とを有する。
【0022】
図1に示すように、磁電変換素子2a,2bは、被測定電流Iによって発生する誘導磁界Baを打ち消す方向の磁界を発生可能に配置されたフィードバックコイル111a,111bと、磁電変換素子112a,112bと、を含んで構成される。
【0023】
また、制御回路素子31a,31bは、磁電変換素子112a,112bの差動出力を増幅し、フィードバックコイル111a,111bのフィードバック電流を制御するオペアンプ131a,131bと、フィードバック電流を電圧に変換するI/Vアンプ132a,132bとを含んで構成される。
【0024】
フィードバックコイル111a,111bは、磁電変換素子112a,112bの近傍に配置されており、被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baを相殺するキャンセル磁界を発生する。例えば、被測定電流からの誘導磁界により抵抗値が変化するという特性を有する磁気抵抗効果素子を用いて磁電変換素子112a,112bを構成することで、高感度の電流センサ1を実現できる。
【0025】
信号処理回路3は、制御回路素子31a,31bからの出力電圧(すなわち、I/Vアンプ132a,132bの出力電圧)の差をとって出力する。信号処理回路3は、例えば、差動アンプで構成される。この差動演算処理によって、地磁気などの外部磁場の影響はキャンセルされ、高精度に電流を測定できる。
【0026】
なお、電流センサ1は上述した構成に限定されない。例えば、磁電変換素子2a,2bとしてフィードバックコイル等を用いない磁気比例式のセンサを用いてもよく、また磁気抵抗素子以外に、ホール素子などの感磁素子を用いてもよい。
【0027】
以下、外来磁場Bb’が、被測定電流路の磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わり、被測定電流路に流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わる構成を有する電流センサの構成例について、詳細に説明する。なお、磁界が磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わるとは、磁電変換素子2a,2bのそれぞれに対して、感度軸方向の成分の大きさと方向が等しい磁界が加わることを指す。また、磁界が磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わるとは、磁電変換素子2a,2bのそれぞれに対して、感度軸方向の成分の大きさと方向の両方、あるいはいずれか一方が異なる磁界が加わることを指す。
【0028】
<第1の構成例>
図2は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図2に示すように、電流センサ101においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図2におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0029】
被測定電流路5aの一部には、被測定電流路5aを幅方向(図2におけるX方向)に切り欠いた切り欠き部51aが形成されている。被測定電流路5aにおいて切り欠き部51aが形成された部分は、他の部分と比べて幅狭となっている。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは切り欠き部51aが形成された幅狭部分に設置され、磁電変換素子2bは切り欠き部51aが形成されていない通常幅(切り欠き部51aよりも広い幅)の領域に設置される。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。
【0030】
なお、図2において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。ここで、感度軸方向とは、磁電変換素子2a,2bが最大の感度を得る方向をいう。図2においては、磁電変換素子2a,2bの感度軸が紙面右方向を向く場合を示しているが、反対方向(紙面左方向)を向くように配置してもよい。
【0031】
磁電変換素子2a,2bは、磁気検出が可能な磁電変換素子であれば特に限定されない。磁電変換素子2a,2bとしては、例えば、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などの磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサ、ホール素子を用いた磁気センサなどを適用できる。
【0032】
近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に切り欠き部51bが形成されている。切り欠き部51aと51bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図2におけるZ方向において切り欠き部51bが互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図2におけるX方向)でほぼ同じ位置に互いに離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは切り欠き部51bが形成された幅狭部分に設置され、磁電変換素子21bは切り欠き部51bが形成されていない通常幅(切り欠き部51bよりも広い幅)の領域に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図2におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図2において、信号処理回路3およびプリント基板4は図示を省略する。
【0033】
このような構成の電流センサ101において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図2においては、紙面上方向(図2におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、電流路の幅(磁電変換素子2a,2b搭載面において、電流の流れる向きと直交する方向における電流路の長さ)が異なるため、互いの電流密度が異なる。磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて幅狭なため、電流密度が高くなっている。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて強くなる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が高くなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わることになる。
【0034】
図2では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0035】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界成分Bb’が生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、切り欠き部51bが形成されていない通常幅(切り欠き部51bよりも広い幅)の領域である。また、近接電流路5bの中心線から磁電変換素子2aまでの垂線と、磁電変換素子2bまでの垂線との方向および長さが概略等しく、磁電変換素子2aと磁電変換素子2bとを結ぶ線分と、線分に近接する近接電流路5bの直線部とが概略平行であり、磁電変換素子2aに近接する近接電流路5bの断面積と磁電変換素子2bとに近接する近接電流路5bの断面積が概略同一となっている。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分Bb’と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分Bb’とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界成分は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0036】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できると共にダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0037】
以上のように、電流センサ101においては、切り欠き部51aによって電流路の幅を変えることにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bb’が、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁界が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。また、電流検出機101は、電流路の同じ面に2つの磁電変換素子2a,2bが配置される構造であるため、容易に製造することが可能となる。また、電流路の同じ面に2つの磁電変換素子2a,2bを配置する構造とすることにより、電流路を幅方向(電流の流れる向きと直交する方向)に大きく曲げる必要がないため、小型化を図ることが可能となる。
【0038】
図3は、図2に示した電流路が複数本(図3において、6本)、通流方向に対して平行に並んで設けられた状態を示している。電流路50a,50b,50cにおいては、互いに重ならない位置に切り欠き部500a,500b,500cが形成されている(図3におけるZ方向において切り欠き部が互いに異なる位置にある)。電流路50a〜50cそれぞれにおいて、磁電変換素子2aは切り欠き部500a〜500cが形成された幅狭部分に設置され、磁電変換素子2bは切り欠き部500a〜500cが形成されていない通常幅(切り欠き部500a〜500cよりも広い幅)の領域に設置される。すべての磁電変換素子2a,2bは、感度軸方向が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸方向が互いに同じ方向となるように配置される。なお、図3において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。電流路50a,50b,50cにおける磁電変換素子2a,2bは、互いに重ならない位置に設けられている(図3におけるZ方向において、磁電変換素子が互いに異なる位置にある)。電流路50d〜50fは、電流路50a〜50cと同様の構成である。すなわち、図3に示す構成は、3本の電流路をセットにして、それを2セット並べた構成である。
【0039】
ここで、電流路50cを被測定電流路とする場合、図2に示した電流センサ101と同様に、電流路50dを流れる電流によって生じる磁界成分Bdは、電流路50c上の磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる。同様に、電流路50b(電流路50a,50e)を流れる電流によって生じる磁界成分Bb(磁界成分Ba,Be)(いずれも不図示)も、電流路50c上の磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる。一方、被測定電流路である電流路50cを流れる電流によって生じる誘導磁界Bcは、電流路50c上の磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わる。したがって、差動演算処理することにより、電流路50cの両隣4本分の電流路50a,50b,50d,50eによる磁界成分Ba,Bb,Bd,Beの影響はキャンセルされ、被測定電流路である電流路50cによる誘導磁界Bcは差分出力される。このように出力された磁場Bcに基づいて、電流路50cに流れる電流を精度よく検出できる。
【0040】
図3に示す構成では、3本の電流路をセットにして複数セット並べているが、これに限定されず、例えば、2本の電流路をセットにして複数セット並べた構成としてもよい。この場合には、被測定電流路としての電流路の両隣2本分の電流路による磁界Bの影響がキャンセルされ、被測定電流路である電流路による磁界Bを精度よく検出できる。このように、電流路の同じ面に2つの磁電変換素子2a,2bを配置することにより、複数の電流路セットを配置する場合であっても、容易に製造することが可能となる。また、電流路の同じ面に2つの磁電変換素子2a,2bを配置する構造とすることにより、電流路を幅方向に大きく曲げる必要がないため、複数の電流路セットを配置する場合であっても、効果的に小型化を図ることが可能となる。
【0041】
<第2の構成例>
図4は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図4に示すように、電流センサ102においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図4におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0042】
被測定電流路5aの一部には、被測定電流路5aの幅方向(図4におけるX方向)に突出する突出部52aが形成されている。被測定電流路5aにおいて突出部52aが形成された部分は、他の部分と比べて幅広となっている。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは突出部52aが形成された幅広部分に設置され、磁電変換素子2bは突出部52aが形成されていない通常幅(突出部52aよりも狭い幅)の領域に設置される。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図4において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に突出部52bが形成されている。突出部52aと52bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図4におけるZ方向において突出部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図4におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは突出部52bが形成された幅広部分に設置され、磁電変換素子21bは突出部52bが形成されていない通常幅(突出部52bよりも狭い幅)の領域に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図4におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図4において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0043】
このような構成の電流センサ102において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図4においては、紙面上方向(図におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、電流路の幅が異なるため、電流密度が異なる。磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて幅広なため、電流密度が低くなっている。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて弱い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が小さくなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0044】
図4では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0045】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界Bbが生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、突出部52bが形成されていない通常幅(突出部52bよりも狭い幅)の領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分とは、方向が同じで、大きさも同じである。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0046】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁界(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できると共に、ダイナミックレンジの低下を抑制できる。
【0047】
以上のように、電流センサ102においては、突出部52aによって電流路の幅を変えることにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bbが、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0048】
<第3の構成例>
図5は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図5に示すように、電流センサ106においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図5におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0049】
被測定電流路5aの一部には厚み(磁電変換素子2a,2b搭載面と直交する方向の電流路の長さ)方向(図5におけるY方向)に突出する段差部56a(厚み方向(図5では下方)に延出する延出部)が形成されている。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは段差部56aが形成されていない領域に設置され、磁電変換素子2bは段差部56a上に設置される。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図5において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に段差部56bが形成されている。段差部56aと56bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図5におけるZ方向において段差部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、近接電流路5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図5におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは段差部56bが形成されていない領域に設置され、磁電変換素子21bは段差部56b上に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図5におけるZ方向において段差部が互いに異なる位置にある)。なお、図5において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0050】
このような構成の電流センサ106において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図5においては、紙面右方向(図5におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、電流路の厚さが異なるため、電流密度が異なる。磁電変換素子2b近傍は、磁電変換素子2a近傍に比べて電流路が厚いため、電流密度が低くなっている。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて強い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が大きくなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0051】
図5では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0052】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界成分Bbが生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する領域は、段差部56bが形成されていない領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0053】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できると共に、ダイナミックレンジの低下を抑制できる。
【0054】
以上のように、電流センサ106においては、段差部56aによって電流路の厚みを変えることにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bbが、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0055】
<第4の構成例>
図6は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図6に示すように、電流センサ105においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図6におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0056】
被測定電流路5aの一部には、厚み方向(図6におけるY方向)に略U字状に、例えば曲げ加工された溝部55a(厚み方向(図6では下方)に延出する延出部)が形成されている。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは溝部55aが形成されていない直線領域に設置され、磁電変換素子2bは溝部55a上に設置される(図示しないが磁電変換素子2bは被測定電流路5aに支持された部材上に実装される)。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図6において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に溝部55bが形成されている。溝部55aと55bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図6におけるZ方向において溝部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、近接電流路5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図6におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは溝部55bが形成されていない直線領域に設置され、磁電変換素子21bは溝部55b上に設置される(図示しないが磁電変換素子21bは被測定電流路5bに支持された部材上に実装される)。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図6におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図6において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略するが、プリント基板は、被測定電流路5aと磁電変換素子2a,2bとの間か、あるいは、磁電変換素子2a,2b上に位置している。
【0057】
このような構成の電流センサ105において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図6においては、紙面右方向(図6におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、電流路からの距離が異なるため、磁界の強さが異なる。電流路に近づくほど磁界は強くなるため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて強い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が高くなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0058】
図6では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0059】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界成分Bbが生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、溝部55bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0060】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された磁場Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0061】
以上のように、電流センサ105においては、溝部55aによって磁電変換素子2a,2bと電流路との距離を変えることにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bbが、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0062】
<第5の構成例>
図7は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図7に示すように、電流センサ121においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図7におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0063】
被測定電流路5aの一部は幅方向(図7におけるX方向)に90度屈曲し、これにより直線領域(屈曲部61a以外の領域)と同一平面上に屈曲部61aが形成されている。被測定電流路5aの直線領域は、略同じ方向に延びているが、屈曲部61aを介して幅方向の異なる領域に設けられている。また、被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aと2bの一方(ここでは、磁電変換素子2b)は電流路の直線領域に配置されるが、他方(ここでは、磁電変換素子2a)は電流路から外れた領域に配置される。具体的には、磁電変換素子2aは、磁電変換素子2bが配置される電流路の延長方向であって、幅方向に曲げられた屈曲部61aにより電流路が設けられていない領域(電流路に近接する領域)に配置される。
【0064】
磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図7において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に屈曲部61bが形成されている。屈曲部61aと61bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図7におけるZ方向において屈曲部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図7におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aと21bの一方(ここでは、磁電変換素子21b)は電流路の直線領域に配置されるが、他方(ここでは、磁電変換素子21a)は電流路から外れた領域に配置される。なお、図7において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0065】
このような構成の電流センサ121において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図7においては、紙面上方向(図におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aから外れた領域に配置された磁電変換素子2a近傍と、被測定電流路5a上に配置された磁電変換素子2b近傍とでは、電流路からの距離が大きく異なるため、磁界の強さが異なる。電流路に近いほど磁界は強くなるため、磁電変換素子2b傍に生じる誘導磁界Ba2は、磁電変換素子2a近傍に発生する誘導磁界Ba1に比べて強い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が低くなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0066】
図7では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0067】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界成分Bb’が生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、屈曲部61bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分Bb’と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分Bb’とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0068】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bb’および地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された磁場Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0069】
以上のように、電流センサ121においては、屈曲部61aによって電流路上と電流路から外れた領域とに磁電変換素子2a,2bを設置することにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bb’が、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0070】
<第6の構成例>
図8は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図8に示すように、電流センサ122においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図8におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0071】
被測定電流路5aの一部には、被測定電流路5aを通流する電流を分流する分流路62a形成されている。分流路62aは、被測定電流路5aの中で分流路62aが設けられた部分において、直線領域(分流路62a以外の領域)に通流する電流を小さくする形状であればよく、例えば、被測定電流路5aの幅方向(図8におけるX方向)に突出するように分流路62aを形成することができる。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは分流路62aと近接する直線領域に設置され、磁電変換素子2bは分流路62aが形成されていない直線領域に設置される。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図8において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に分流路62bが形成されている。分流路62aと62bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図8におけるZ方向において分流路が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図8におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは分流路62bと近接する直線領域に設置され、磁電変換素子21bは分流路62bが形成されていない直線領域に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図8におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図8において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0072】
このような構成の電流センサ122において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図8においては、紙面上方向(図8におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、直線領域に流れる電流量が異なるため、電流密度が異なる。磁電変換素子2a近傍は、分流路62の影響により磁電変換素子2b近傍に比べて電流密度が低くなっている。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて弱い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が小さくなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0073】
図8では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0074】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界Bb’が生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、分流路62bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分Bb’と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分Bb’とは、方向が同じで、大きさも同じである。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0075】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁界(近接電流路5bによる磁場Bb’および地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0076】
なお、分流路と磁電変換素子の配置は上述した構成に限定されず、適宜変更することができる。図9に、直線領域内に分流路を設け、一方の磁電変換素子を電流路から外れた領域(分流路の間)に配置する場合について説明する。
【0077】
図9に示すように、電流センサ123においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図9におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。また、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに延びた方向を略平行にして近接して配置されている。
【0078】
被測定電流路5aの一部には、被測定電流路5aを通流する電流を分流する分流路63aが形成されている。例えば、分流路63aは、被測定電流路5aの直線領域の間に(直線領域を連接するように)設けられ、直線領域の延びる方向に対して対称となるように設けられる。したがって、被測定電流路5aの分流路63aが設けられた部分においては、直線領域が延びる領域(分流路間の領域)には電流路が設けられない構成となる。
【0079】
被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aは分流路間に設置され、磁電変換素子2bは分流路63aが形成されていない直線領域に設置される。磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向(図9におけるZ方向)に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図9において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に分流路63bが形成されている。分流路63aと63bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図9におけるZ方向において分流路が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図9におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは分流路間に設置され、磁電変換素子21bは分流路63bが形成されていない直線領域に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図9におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図9において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0080】
このような構成の電流センサ123において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図9においては、紙面上方向(図9におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、直線領域に流れる電流量が異なるため、電流密度が異なる。磁電変換素子2a近傍は、分流路63の影響により磁電変換素子2b近傍に比べて電流密度が低くなっている。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて弱い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が小さくなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0081】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって磁界Bb’が生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、分流路63bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分Bb’と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分Bb’とは、方向が同じで、大きさも同じである。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0082】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁界(近接電流路5bによる磁場Bb’および地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0083】
以上のように、電流センサ123においては、分流路によって電流路に流れる電流量を変えることにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bb’が、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0084】
<第7の構成例>
図10は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図10に示すように、電流センサ103においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図10におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。
【0085】
被測定電流路5aの一部は幅方向(図10におけるX方向)に屈曲し、これにより直線領域(屈曲部53a以外の領域)と同一平面上に屈曲部53aが形成されている。屈曲部53aを挟んで、被測定電流路5aの直線領域は略同じ方向に延びている。被測定電流路5aにおいて、磁電変換素子2aと2bは屈曲部53aを挟んで直線領域にそれぞれ配置されている。磁電変換素子2aは直線領域の中央部に設置され、磁電変換素子2bは直線領域の端部(紙面右端)に設置される。
【0086】
磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図10において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に屈曲部53bが形成されている。屈曲部53aと53bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図10におけるZ方向において屈曲部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図10におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aと21bは屈曲部53bを挟んで直線領域にそれぞれ配置されている。磁電変換素子2aは直線領域の中央部に設置され、磁電変換素子2bは直線領域の端部(紙面右端)に設置される。磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置される(図10におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にある)。なお、図10において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0087】
このような構成の電流センサ103において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図10においては、紙面上方向(図10におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。扁平型導体で構成される被測定電流路5aは、その中央部と端部とで磁界の強さが異なる。図10に示すように、中央部では磁力線の向きが被測定電流路5aの幅方向に略平行であるのに対し、端部では磁力線の向きが被測定電流路5aの幅方向に平行な成分と厚み方向に平行な成分を含むためである。そのため、磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2b近傍に発生する誘導磁界Ba2に比べて強い磁界となる。換言すると、磁電変換素子2a近傍は、磁電変換素子2b近傍に比べて磁束密度が高くなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0088】
図10では、被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bの感度軸と、近接電流路5bを流れる電流により強く発生する磁界の向きを異なる構成とすることができる。この場合、近接電流路5bに起因する磁電変換素子2a,2bのダイナミックレンジの低下を抑制することができる。
【0089】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって被測定電流Iにより発生する誘導磁界Baより小さい磁界成分Bbが生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、屈曲部53bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0090】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0091】
以上のように、電流センサ103においては、屈曲部53aによって幅方向に屈曲した電流路の中央部と端部に磁電変換素子2a,2bを設置することにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bbが、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0092】
<第8の構成例>
図11は、本発明における電流センサの構成例を示す図である。図11に示すように、電流センサ104においては、被測定電流路5aと近接電流路5bとが図11におけるZ方向に互いに平行に延びて形成されており、被測定電流路5aに被測定電流が通流し、近接電流路5bに近接電流が通流している。したがって、電流路5a,5bの延びる方向が電流の通流方向となっている。すなわち、電流路5aは、電流の通流方向(第1方向)に延びており、電流路5bは、電流路5aに略平行に近接して配置されている。第3の構成例に示した電流センサ103と同様に、被測定電流路5aの一部は幅方向(図11におけるX方向)に屈曲し、これにより直線領域と同一平面上に屈曲部54aが形成されている。屈曲部54aを挟んで、被測定電流路5aの直線領域は略同じ方向に延びている。被測定電流路5aにおいて、直線領域にそれぞれ配置されている。磁電変換素子2aは直線領域の端部(紙面左端)に設置され、磁電変換素子2bは屈曲部53aの中央部に設置される。
【0093】
磁電変換素子2a,2bは、感度軸が通流方向に対して垂直となり、かつ、感度軸が互いに同じ方向を向くように配置される。なお、図11において、磁電変換素子2a,2b上の矢印は、それぞれの磁電変換素子における感度軸方向を示す。磁電変換素子2aと2bとは、通流方向に平行な同一線上に配置される。近接電流路5bの一部にも被測定電流路5aと同様に屈曲部54bが形成されている。屈曲部54aと54bとは、互いに重ならない位置に形成されている(図11におけるZ方向において屈曲部が互いに異なる位置にある)。磁電変換素子2a,2bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図11におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、近接電流路5bから等距離に配置されている。近接電流路5bに流れる電流を検出するための磁電変換素子21aは屈曲していない直線領域に設置され、磁電変換素子21bは屈曲部54bに設置される。磁電変換素子21a,21bは、電流路5a,5bにおいて、通流方向に対して直交する方向(図11におけるX方向)でほぼ同じ位置に離間して配置され、被測定電流路5aから等距離に配置されている。なお、磁電変換素子2aを設置する直線領域は、近接電流路5bの屈曲部54bにおける通流方向と直交する領域(図11においてハッチングで示す部分)以外の領域であることが望ましい。すなわち、磁電変換素子2aは、屈曲部54bを通流する電流による誘導磁界の影響を受けない位置に配置されることが望ましい。ハッチングで示す範囲内にある直線領域では、屈曲部54bを通流する近接電流による誘導磁界の影響を受けるためである。図11に示すように、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとは、それぞれ重ならない位置に設置され(図11におけるZ方向において、磁電変換素子2a,2bと、磁電変換素子21a,21bとが互いに異なる位置にあり)、かつ、磁電変換素子2a,21aはハッチングがかかっていない直線領域に設置される。なお、図11において、信号処理回路3およびプリント基板は図示を省略する。
【0094】
このような構成の電流センサ104において、被測定電流路5aおよび近接電流路5bに電流が流れる場合を考える。図11においては、紙面上方向(図11におけるZ方向)に向けて電流Iが流れるとする。被測定電流路5aにおける磁電変換素子2a近傍と、磁電変換素子2b近傍とでは、電流路の向きが異なるため、被測定電流の向きが異なる。そのため、磁電変換素子2a近傍と磁電変換素子2b近傍とでは、磁界の向きが異なる。磁電変換素子2a近傍に生じる誘導磁界Ba1は、磁電変換素子2aの感度軸方向(図11におけるX方向)に対して略平行となる。一方、磁電変換素子2b近傍に生じる誘導磁界Ba2は、磁電変換素子2bの感度軸方向に対して斜めとなる(角度を有する)。したがって、磁電変換素子2bに検出されるのは、誘導磁界Ba2のうち感度軸方向に対して平行な成分のみとなる。これにより、磁電変換素子2aによって検出される誘導磁界Ba1と、磁電変換素子2bによって検出される誘導磁界Ba2とは、方向が同じで、大きさが異なる。すなわち、被測定電流路5aを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して異なるベクトルで加わる。
【0095】
一方、被測定電流路5a近傍には、近接電流路5bを流れる電流によって磁界成分Bbが生じている。近接電流路5bのうち磁電変換素子2a,2bに近接する部分は、屈曲部54bが形成されていない直線領域である。そのため、磁電変換素子2aによって検出される磁界成分と、磁電変換素子2bによって検出される磁界成分とは、方向が同じで、大きさも同じとなる。すなわち、近接電流路5bを流れる電流によって生じる磁界は、磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。また、地磁気も磁電変換素子2aおよび磁電変換素子2bに対して同一ベクトルで加わる。
【0096】
そのため、磁電変換素子2a,2bによって検出された磁界を信号処理回路3によって差動演算処理することにより、同一ベクトル量である外乱磁場(近接電流路5bによる磁場Bbおよび地磁気)の影響はキャンセルされ、異なるベクトル量である被測定電流路5aによる誘導磁界Baのみが差分出力される。このように出力された誘導磁界Baに基づいて、被測定電流路5aに流れる電流を精度よく検出できる。
【0097】
以上のように、電流センサ104においては、屈曲部53aによって幅方向に屈曲した電流路において磁界の向きが異なる部分に磁電変換素子2a,2bを設置することにより、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる誘導磁界Baが、磁電変換素子2a,2bに対して異なるベクトルで加わり、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁界成分Bbが、磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わる構成としている。この場合には、簡便な構成により、被測定電流路5aに生じる磁場が異なるベクトルで磁電変換素子2a,2bに加わる構成とすることができるため、位置合わせ等の工程が不要となり、低コストの電流センサを実現できる。
【0098】
以上説明したように、電流センサの各構成例によれば、被測定電流路5aと近接電流路5bとが通流方向に対して平行に並んで設けられた場合に、近接電流路5bに流れる電流によって生じる磁場Bbは被測定電流路5aに設けられた磁電変換素子2a,2bに対して同一ベクトルで加わり、被測定電流路5aに流れる電流によって生じる磁場Baは磁電変換素子2a,2bに異なるベクトルで加わる構成となるため、磁電変換素子2a,2bの位置精度や取り付け精度を要求することなく、近接電流路5bの磁場Bbの影響による被測定電流の測定精度の低下を防止できる。
【0099】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の電流センサは、例えば、電気自動車やハイブリッドカーのモータ駆動用の電流の大きさを検知するために用いることが可能である。
【0101】
本出願は、2011年7月4日出願の特願2011−148152に基づく。この内容は、全てここに含めておく。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12