特許第5732680号(P5732680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732680
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】煉瓦および匣鉢、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/043 20060101AFI20150521BHJP
   C04B 35/443 20060101ALI20150521BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20150521BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C04B35/04 C
   C04B35/44 101
   C04B35/64 H
   F27D1/00 N
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-261310(P2010-261310)
(22)【出願日】2010年11月24日
(65)【公開番号】特開2012-106899(P2012-106899A)
(43)【公開日】2012年6月7日
【審査請求日】2012年8月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-273111(P2009-273111)
(32)【優先日】2009年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-237168(P2010-237168)
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237868
【氏名又は名称】エヌジーケイ・アドレック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】木下 寿治
(72)【発明者】
【氏名】中西 泰久
(72)【発明者】
【氏名】稗田 耕士
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−165767(JP,A)
【文献】 特開2007−112670(JP,A)
【文献】 特開2008−103100(JP,A)
【文献】 特開2002−216758(JP,A)
【文献】 特開平09−142917(JP,A)
【文献】 特開平09−142916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/043,35/443,35/64
F27D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MgOの含有率が33〜99.5質量%、
MgO と Al23との合計含有率がMgO +Al23=95〜99.9質量%、
MgO とAl23との含有比率が、各質量%比で、Al23/ MgO=0.003 〜 2.1、嵩比重が1.0〜2.5であって、
MgO成分の2〜92%がスピネルである煉瓦および匣鉢であって、
SiOの含有率を、0.1〜3.0質量%未満の範囲に抑制し、
煉瓦および匣鉢を成形後、1400〜1700℃で焼成した際に生成されるスピネル型結晶構造からなる結合層を、ペリクレースからなる骨材の表面に有することを特徴とする煉瓦および匣鉢。
【請求項2】
該煉瓦および匣鉢がCo、Mn、Ni、Fe、Pから選択された1種類以上の元素とリチウムとの複合酸化物の熱処理に用いる、リチウム複合酸化物の熱処理用の煉瓦および匣鉢であることを特徴とする請求項1記載の煉瓦および匣鉢。
【請求項3】
常温圧縮強度が1.0〜50MPaであることを特徴とする請求項1記載の煉瓦および匣鉢。
【請求項4】
請求項1記載の煉瓦および匣鉢を製造する方法であって、純度95質量%以上で平均粒径0.8〜2mmのペリクレースを50〜100質量%と、純度99質量%以上のAl23粉末を〜50質量%を含む原料を使用し、全原料中5〜20質量%を、平均粒径10〜100μmのAl23粉末とし、造孔材とともに全原料を混練および成形後、1400〜1700℃で焼成することを特徴とする煉瓦および匣鉢の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特に、耐リチウム反応性に優れた軽量の煉瓦および匣鉢に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等に代表される二次電池の正極材料としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウム遷移金属が挙げられる。現在用いられている正極材料としては、コバルト酸リチウムが主流である。
【0003】
例えば、LiCoOを製造する場合、原料として水酸化リチウム又は硝酸リチウムと、酸化コバルト、水酸化コバルト又は炭酸コバルトとの混合物を、容器に入れて固定炉又はトンネル炉等で焼成するか、又は直接回転炉に入れて焼成する。この焼成は、酸素雰囲気にて1000℃付近の温度で行われる。
【0004】
該焼成を行う焼成炉を構成する炉材としては、一般的に、通常工業用の耐火炉で使用されるアルミナ、ムライト、コーディエライト等の耐熱セラミックス材料が使用されている。
【0005】
しかし、該耐熱セラミックス材料を炉材とする焼成炉を使用して、前記焼成温度条件下でLiCoOを製造すると、その焼成中にリチウム化合物が融解し、更に、該化合物由来のリチウム元素が炉内の高温条件下で蒸発し、該耐熱セラミックス材料に浸入する現象が生じる。このため、焼成炉の繰り返しの使用を経て、炉材にひび割れや剥離が生じ、炉材の頻繁な交換が必要であるという問題があった。
【0006】
なお、焼成用耐火物の耐反応性の向上を図る技術として、骨材としてMgO質燒結体を使用する各種の技術が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【0007】
しかし、従来のMgO質燒結体では、骨材がガラス質の結合層で結合された構造を有しており、炉材の軽量化を目的として焼結体の気孔率を上昇させた場合、ガラス質の結合層がLi成分によって浸食されやすくなるため、当該現象を回避するため、焼結体の気孔率を低く抑えた重量が大きいものが通常であり、例えば、複数階構造の焼成炉には採用できない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−112670号公報
【特許文献2】特開2007−284314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は前記問題を解決し、骨材部分および結合層部分共に耐リチウム反応性に優れ、かつ、軽量の炉材および炉材の製造方法を提供することである。尚、炉材とは、炉体を構成する煉瓦と粉末処理用に用いられる匣鉢を表す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明の煉瓦および匣鉢は、MgOの含有率が33〜99.5質量%、MgO と Al23との合計含有率がMgO +Al23=95〜99.9質量%、MgO とAl23との含有比率が、各質量%比で、Al23/ MgO=0.003 〜 2.1、嵩比重が1.0〜2.5であって、MgO成分の2〜92%がスピネルである煉瓦および匣鉢であって、SiOの含有率を、0.1〜3.0質量%未満の範囲に抑制し、煉瓦および匣鉢を成形後、1400〜1700℃で焼成した際に生成されるスピネル型結晶構造からなる結合層を、ペリクレースからなる骨材の表面に有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の煉瓦および匣鉢において、該煉瓦および匣鉢がCo、Mn、Ni、Fe、Pから選択された1種類以上の元素とリチウムとの複合酸化物の熱処理に用いる、リチウム複合酸化物の熱処理用の煉瓦および匣鉢であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の煉瓦および匣鉢において、常温圧縮強度が1.0〜50MPaであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の煉瓦および匣鉢を製造する方法であって、純度95質量%以上で平均粒径0.8〜2mmのペリクレースを50〜100質量%と、純度99質量%以上のAl23粉末を〜50質量%を含む原料を使用し、全原料中5〜20質量%を、平均粒径10〜100μmのAl23粉末とし、造孔材とともに全原料を混練および成形後、1400〜1700℃で焼成することを特徴とするものである。
【0014】
【0015】
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る煉瓦および匣鉢は、MgOの含有率が33〜99.5質量%、MgO と Al23との合計含有率がMgO +Al23=95〜99.9質量%、MgO とAl23との含有比率が、各質量%比で、Al23/ MgO=0.003 〜 2.1、嵩比重が1.0〜2.5であって、MgO成分の2〜92%がスピネルである煉瓦および匣鉢であって、SiOの含有率を、0.1〜3.0質量%未満の範囲に抑制し、煉瓦および匣鉢を成形後、1400〜1700℃で焼成した際に生成されるスピネル型結晶構造からなる結合層を、ペリクレースからなる骨材の表面に有する構成からなる。当該構成によれば、ガラス質の結合層が形成されないため、従来、ガラス質の結合層がLi成分によって浸食されていた問題が回避可能となり、かつ、軽量の煉瓦および匣鉢を実現できる。
【0017】
炉材は、通常、骨材がガラス質の結合層で結合された構造を有するが、請求項4記載の発明では、平均粒径0.8〜2mmのペリクレースまたはスピネルを用い、全原料中5〜20質量%を、平均粒径10〜100μmのAl23粉末とし、造孔材とともに全原料を混練および成形後、1400〜1700℃で焼成することにより、ペリクレース又はスピネルからなる骨材の骨材表面でスピネル型結晶構造を有する結合層を形成している。従来のように、粒界部分がガラス質の結合層で構成された炉材では、該炉材を使用してLiを含む原料を焼成後、更に水蒸気雰囲気に暴露すると、時間の経過とともに、炉材を構成する骨材間の結合が崩壊し、炉材がバラバラになる現象が観察される。これに対し、請求項6記載の発明の方法によって、骨材間の粒界部分に、焼成反応によってスピネル層を形成させた場合、該炉材を使用してLiを含む原料を焼成後、更に水蒸気雰囲気に暴露した場合であっても、炉材の崩壊を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、Co、Mn、Ni、Fe、Pから選択された1種類以上の元素とリチウムとの複合酸化物の熱処理に用いるのに適した煉瓦および匣鉢に係る発明である。
【0019】
以下、本発明に係る煉瓦および匣鉢の一実施形態について説明する。
【0020】
本発明に係る煉瓦および匣鉢は、MgOの含有率が33〜99.5質量%、MgO と Al23との合計含有率がMgO +Al23=95質量%以上、MgO とAl23との含有比率がAl23 / MgO(質量%比)=0.003 〜 2.1の化学組成を有し、スピネル(Al23・MgO)の存在比率が2〜92%の結晶構造を有している。
【0021】
炉材は、通常、骨材がガラス質の結合層で結合された構造を有するが、本発明のリチウム複合酸化物の熱処理用炉材は、炉材の焼成過程において、ペリクレースからなる骨材の骨材表面でスピネル型結晶構造を有する結合層を形成し、骨材間の粒界部分にスピネル層を有する構造を備えている。
【0022】
従来のように、粒界部分がガラス質の結合層で構成された炉材では、該炉材を使用してLiを含む原料を焼成後、更に水蒸気雰囲気に暴露すると、時間の経過とともに、炉材を構成する骨材間の結合が崩壊し、炉材がバラバラになる現象が観察されていた。本発明者の推測によると、MgOを骨材とし、結合層をMgCaSiO4とする炉材の場合、該炉材を使用してLiを含む原料を焼成すると、結合層が、MgO・CaO・SiO2(Li2O)の化学組成からなるアモルファスに変化し、このうち、Li2Oの部分が、大気中の水蒸気およびCOを吸収しやすく、Li2Oのカーボネート化により結合層から炉材の崩壊が生じるものと考えられる。これに対し、本発明では、骨材間の粒界部分に、焼成反応によってスピネル層を形成させておくことにより、Liとの反応による結合層のアモルファス化、および、その後の水蒸気暴露によるLi2Oのカーボネート化を抑制し、前記メカニズムによる炉材の崩壊を効果的に抑制可能としている。
【0023】
なお、本発明に係る煉瓦および匣鉢の嵩比重は1.0〜2.5である。嵩比重が2.5以上になると、煉瓦および匣鉢の重量が大きくなり、複数階構造の焼成炉には採用困難となるため好ましくない。一方、嵩比重が1.0以下の場合、炉を昇温する際発生する熱応力により、煉瓦および匣鉢が破損する危険性があり好ましくない。
【0024】
本発明に係る煉瓦および匣鉢の常温圧縮強度は、1.0MPa以上とすることは必要である。一方、嵩比重を1.0〜2.5とするための気孔率との関係から、常温圧縮強度50MPAが工業的に実現可能な強度の上限となっている。
【0025】
本発明に係る煉瓦および匣鉢では、MgOの含有率が33〜99.5質量%、MgO と Al23との合計含有率がMgO +Al23=95質量%以上、MgO とAl23との含有比率がAl23 / MgO(質量%比)=0.003 〜 2.1、嵩比重が1.0〜2.5とすることでMgO本来の耐食性を保持しつつ軽量化を実現している。
【0026】
MgOの割合が33%以下の場合、耐リチウム反応性が低下するため好ましくない。
【0027】
前記MgOの含有率は高いほど望ましいが、MgOはコストが高く、MgOのみから炉材を構成することは現実的ではない。そこで、Al23との混合で使用し、該Al23とMgO との合計含有率がMgO +Al23=95質量%以上、かつ、含有比率がAl23 / MgO(質量%比)=0.003 〜 2.1となる構成にすることで、耐反応性を確保することができる。Al23とMgO との合計含有率が95質量%未満である場合には、MgOの特性である耐食性が有効に発揮されなくなるため好ましくない。また、含有比率がAl23/ MgO(質量%比)=0.003未満の場合には 、MgO粒子の焼結が進みにくく、1650℃以上の高温焼成が必要となる。Al23/ MgO(質量%比)=2.1を超える場合には 、MgOの含有量が少なく、耐食性が十分に発揮されない。
【0028】
以下に、嵩比重が1.0〜2.5である本発明に係る煉瓦および匣鉢の製造方法を説明する。
【0029】
(原料)
MgO原料として、平均粒径0.8〜2mmのペリクレースを用い、全原料中5〜20質量%を、平均粒径10〜100μmのAl23粉末とし、造孔材とともに全原料を混練および成形後、1400〜1700℃で焼成することにより、ペリクレースからなる骨材の表面でスピネル型結晶構造を有する結合層を形成する。平均粒子径は、使用前に予め粉砕処理を行って調整する。
【0030】
MgO原料粉末は、MgO純度が95質量%以上であることが好ましく、平均粒子径が0.8mmの粗粒と、平均粒子径が0.1mmの細粒を組み合せとすることが好ましい。
【0031】
Al23原料粉末としては、Al23純度が99質量%以上であることが好ましい。気孔率を向上させるために、Al23バブル用いることもできる。該Al23とMgO との合計含有率は、MgO +Al23=95質量%以上、かつ、含有比率がAl23 / MgO(質量%比)=0.003 〜 2.1であることが好ましい。
【0032】
各原料には、SiOが不純物として含有されるが、含有するSiOは3質量%未満であることが好ましく、より好ましくは1質量%未満である。これらの成分の合計量が3質量%以上の場合、結晶粒界に第2相やガラス相を多く生成し、耐食性が低下するため好ましくない。尚、SiO含有量を0.1質量%以下にまで低下させるためには、極めて高純度の原料の使用が必要となり、コストの観点から工業的には好ましくない。
【0033】
(製法)
以上の原料を用いて所定の組成になるように配合し、更に、煉瓦および匣鉢に気孔を形成するための造孔材として発泡スチロール等の有機物を添加し、湿式で混練を行う混練機(カントーミキサー等)により水または有機溶媒中で混合する。造孔材としての有機物添加量は、表2〜3において、前記の全原料を100質量%として、ここに更に追加して添加する量として記載しており、これを「外配」と記載している。なお、前記のように、気孔率を向上させるために、Al23バブル用いる場合には、発泡スチロール等の有機物の添加は必須要件ではない。
【0034】
成形方法として油圧プレス成形、フリクションプレス成形等の方法を採用する場合、混合スラリーに、必要により公知の成形助剤(例えばアクリル系樹脂、PVA等)を添加し、スプレードライヤー等の公知の方法で乾燥させて成形用粉体を作製し、この成形用粉体を金型やゴム型などに充填して成形する。また、鋳込み成形法を採用する場合には、混合スラリーに必要により公知のバインダー(例えばワックスエマルジョン、アクリル系樹脂等)を添加し、石膏型あるいは樹脂型を用いて排泥鋳込法、充填鋳込法、加圧鋳込法などにより成形する。
【0035】
以上のようにして得た成形体を1300〜1700℃、より好ましくは1450〜1650℃で焼成することによって耐リチウム反応性に優れた軽量の、MgO質焼結体からなる煉瓦および匣鉢を得る。
【実施例】
【0036】
【表1】
上記の表1では、MgO原料の添加による耐Li反応性を評価している。
【0037】
表1に示す割合で各原料を配合し、更に、造孔材を添加し、湿式で混練を行う混練機(カントーミキサー等)により水または有機溶媒中で混合後、1450℃で焼成して200mm×200mm、高さ30mmのサンプルを作製した。使用したMgO原料としては粒度が0.8mm、0.1mmの何れかで、純度が95%以上のものを使用した。成形はPVAを添加した後、油圧プレス成形で行った。焼成は1450℃で行った。
(耐Li反応性評価)
得られた各サンプルより切り出した試験片(20×20×5t)と10gのLiCOをアルミナ坩堝に入れ、大気中1100℃、5時間保持を3サイクル繰り返した。加熱前後での試験片の寸法を測定し、外観と、反応後の膨張率により耐Li反応性を評価した。
【0038】
(実施例1〜4)
MgO原料として、粒度が0.8mmの粗粒と0.1mmの細粒とを、各々表1の割合で混合して使用した。いずれも、優れた耐Li反応性を示した。
(比較例1、2)
MgO質を添加しない例であり、いずれも、耐Li反応性に問題があった。
【0039】
【表2】
上記の表2では、MgO原料の平均粒子径による成形性および焼結性への影響を示している。
【0040】
表2に示す割合で各原料を配合し、更に、造孔材を添加し、湿式で混練を行う混練機(カントーミキサー等)により水または有機溶媒中で混合後、1450℃で焼成して200mm×200mm、高さ30mmのサンプルを作製した。Alは、電融Al23を使用した。実施例5では、発泡スチロールも添加した。MgO原料は粒度が2mm、0.8mm、0.1mm、0.005mmの何れかで、純度が95%以上のものを使用した。成形はPVAを添加した後、油圧プレス成形で行った。
(耐Li反応性評価)
得られた各サンプルより切り出した試験片(20×20×5t)と10gのLiCOをアルミナ坩堝に入れ、大気中1100℃、5時間保持を3サイクル繰り返した。加熱前後での試験片の寸法を測定し、反応による膨張率を評価した。
(成形性評価)
所定の配合に秤量し混合した坏土を、試験用金型(底板:100×100×10t)に入れ、10MPaの圧力をかけた。金型から取り出す際、成形体に破損が生じるかを評価した。評価は以下の3段階で行った。○:破損なし。△:一部破損。×:取り出せず。無理やり取り出した場合破損。
(焼成評価)
プレス成形後、100℃の乾燥を行い水分除去した乾燥体を、電気炉にて1450℃〜1650℃で焼成を行った。焼成後外観を観察し、クラックの有無を検査した。評価は以下の2段階で行った。○:クラック無し。×:クラック有り。
(比重評価)
煮沸法(JIS R2205)にてカサ比重を測定評価した。評価は以下の2段階で行った。○:カサ比重 1.0〜2.5。×:それ以外。
【0041】
(実施例5〜9)
MgO原料として、粒度が2mm又は0.8mmの粗粒と0.1mm又は0.005mmの細粒とを、各々表2の割合で混合して使用した。いずれも、優れた耐Li反応性・成形性を示した。また、焼成によるクラック発生の問題は生じなかった。比重も小さく、軽量化が実現された。
(比較例3)
MgO原料として、粒度が0.005mmの細粒のみを使用した。耐Li反応性には問題がなかったが、成形性に劣り、焼成時にクラックが観察された。
(比較例4)
MgO原料として、粒度が2mmの粗粒のみを使用した。耐Li反応性がやや劣り、成形中に取り扱い中の欠けが観察された。
【0042】
【表3】
【0043】
表3に示す割合で各原料を配合し、更に、造孔材を添加し、湿式で混練を行う混練機(カントーミキサー等)により水または有機溶媒中で混合後、1450℃で焼成して200mm×200mm、高さ30mmのサンプルを作製した。実施例10〜12および比較例5では、Alは、Al23バブル使用した。実施例13および比較例6では、発泡スチロールを添加した。MgO原料は粒度が2mm、0.8mm、0.1mm、0.005mmの何れかで、純度が95%以上のものを使用した。実施例14では、フリクションプレスで、200mm×200mm、で高さ50mmの匣鉢成形を行った。焼成は1450℃で行った。
(XRD測定)
焼成後のサンプルについてXRD測定を行い、MgO質がスピネル型結晶構造として存在する割合を評価した。XRD測定は、RINT−1100 X−ray diffracmeter(Rigaku製)を用いて行い、測定条件は下記の通りとした。(2θ:25〜45°、ステップ幅:0.04、係数時間:2、電圧:40kV、電流:20mA)
(耐Li反応性評価)
得られた各サンプルより切り出した試験片(20×20×5t)と10gのLiCOをアルミナ坩堝に入れ、大気中1100℃、5時間保持を繰り返した。加熱前後での試験片の寸法を測定し、試験片の寸法が10%膨張した通窯回数を測定した。評価は以下の◎、○、×で行った。◎:7回以上、○:4回〜7回未満、×:4回未満。
(比重評価)
煮沸法(JIS R2205)に準拠しカサ比重を測定した。評価は以下の○、×で行った。○:カサ比重 1.0〜2.5。×:それ以外。
(圧縮強度評価)
2000KN圧縮試験機(JTトーシ株式会社製)にて最大荷重を測定し、JIS R2206に準拠し圧縮強度を測定した。評価は以下の○、×で行った。○:圧縮強度 1.0MPa以上。×:圧縮強度 1.0MPaよりも下。
【0044】
(実施例10〜14)
MgO原料として、粒度が2mm又は0.8mmの粗粒と0.1mm又は0.005mmの細粒とを、各々表3の割合で混合して使用した。いずれも、良好な耐Li反応性・圧縮強度を示した。比重も小さく、軽量化が実現された。
(実施例16〜18)
MgO原料として、粒度が0.8mmの粗粒と0.1mmの細粒とを、各々表3の割合で混合して使用、さらにAl23原料として、粒度が0.05mmの微粉末、(実施例16では更にスピネル)を、表3の割合で混合して使用した。いずれも、極めて良好な耐Li反応性を示した。その他、圧縮強度も良好であり、比重も小さく、軽量化が実現された。
(比較例5)
MgO原料として、粒度が0.005mmの細粒のみを使用した。耐Li反応性には問題がなかったが、圧縮強度に劣る問題があった。
(比較例6)
Al23バブル使用せず、代わりに発泡スチロールのみを使用した。耐Li反応性には問題がなかったが、圧縮強度に劣る問題があった。
(比較例7)
Al23バブルも発泡スチロールも使用しなかった。耐Li反応性・圧縮強度には問題がなかったが、比重が大きくなる問題があった。
(比較例8)
ペリクレースあるいはスピネルの何れも使用せず、MgO原料を無添加とした。耐Li反応性に欠ける問題があった。
(比較例9)
スピネルを1%添加した。添加量が少ないため、耐Li反応性に欠ける問題があった。
【0045】
以上を考察すると、
表1に示すように、耐Li反応性を確保する観点から、MgO質は必須要件である。表2に示すように、成形性を確保する観点から、MgO原料は粗粒と細粒を組み合わせて使用することが好ましい。表3に示すように、長期間にわたって極めて良好な耐Li反応性を確保する観点から、MgO原料に添加して使用するAl23原料として微粉末のものを選択することが好ましい。また、同じく、長期間にわたって極めて良好な耐Li反応性を確保する観点から、XRD測定での結果として、MgO質がスピネル型結晶構造として存在する割合が0.5〜8%であることが好ましい。