特許第5732701号(P5732701)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許57327013−置換キノリンまたはキノキサリン誘導体およびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤としてのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732701
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】3−置換キノリンまたはキノキサリン誘導体およびホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20150521BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20150521BHJP
   A61K 31/506 20060101ALN20150521BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 1/00 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 7/06 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 7/04 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 13/10 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 17/06 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 19/02 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 21/04 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 27/02 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 37/02 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 37/08 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20150521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   C07D401/12CSP
   C07D401/14
   !A61K31/506
   !A61K31/4709
   !A61P1/00
   !A61P7/06
   !A61P7/04
   !A61P13/10
   !A61P17/00
   !A61P17/06
   !A61P19/02
   !A61P21/04
   !A61P25/00
   !A61P27/02
   !A61P29/00
   !A61P29/00 101
   !A61P37/02
   !A61P37/08
   !A61P35/00
   !A61P43/00 111
【請求項の数】10
【全頁数】59
(21)【出願番号】特願2009-554599(P2009-554599)
(86)(22)【出願日】2008年3月24日
(65)【公表番号】特表2010-522178(P2010-522178A)
(43)【公表日】2010年7月1日
(86)【国際出願番号】US2008003936
(87)【国際公開番号】WO2008118455
(87)【国際公開日】20081002
【審査請求日】2011年3月22日
(31)【優先権主張番号】60/919,571
(32)【優先日】2007年3月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100103920
【弁理士】
【氏名又は名称】大崎 勝真
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100140523
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 千尋
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(72)【発明者】
【氏名】チエン,イー
(72)【発明者】
【氏名】クツシング,テイモシー・デイー
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,シヤオリン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,シヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ライヒエルト,アンドレーアス
(72)【発明者】
【氏名】ルザサ,ロバート・エム
(72)【発明者】
【氏名】セガニツシユ,ジエニフアー
(72)【発明者】
【氏名】シン,ヨンスク
(72)【発明者】
【氏名】チヤン,タワイ
【審査官】 瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−508946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
C07D 401/14
A61K 31/4709
A61K 31/506
A61P 1/00
A61P 7/04
A61P 7/06
A61P 13/10
A61P 17/00
A61P 17/06
A61P 19/02
A61P 21/04
A61P 25/00
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 35/00
A61P 37/02
A61P 37/08
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式:
【化1】
[式中、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
は、Rによって置換されたフェニルであり、該フェニルはさらにハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;
は、F、Cl、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルおよびヘテロアリールから選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルおよびヘテロアリールは、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、メチルであり、
は、Hであり、
は、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルおよびヘテロアリールから選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジルおよびヘテロアリールは、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)ORおよび−S(=O)N(R)C(=O)NRから選択され、
は、Hであり、
11は、HまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、ならびに
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、前記フェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換され、
前記アルキルは、1個又は2個の二重結合又は三重結合を含んでもよい。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩。
【請求項2】
がFまたはlである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容できる希釈剤または担体を含む、医薬組成物。
【請求項4】
Yが、N(R11)である請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Yが、NHである請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
が、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR又は−NR2−6アルキルORによって置換されたフェニルであり、前記アルキルは、1個又は2個の二重結合又は三重結合を含んでもよい請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−SR、−S(=O)R又は−S(=O)によって置換されたフェニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
が、F、Cl及びC1−6アルキルから選択され、該アルキルは、1個又は2個の二重結合又は三重結合を含んでもよい請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、OR及びNRから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
が、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR及び−C(=O)NRから選択され、該アルキルは、1個又は2個の二重結合又は三重結合を含んでもよい請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2007年3月23日に出願した米国仮出願第60/919,571号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概してホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)酵素に関し、より詳細には、PI3K活性の選択的阻害剤およびそのような物質の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
3’−リン酸化ホスホイノシチドを介する細胞シグナリングは、多様な細胞過程、例えば、悪性転換、増殖因子シグナリング、炎症および免疫に関与するとされている(総説は、Ramehら、J.Biol Chem、274:8347−8350頁(1999)を参照)。これらのリン酸化シグナリング産物の生成を司る酵素ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3−キナーゼ;PI3K)は、当初、ウイルス性癌タンパク質に関連し、ホスファチジルイノシトール(PI)およびこのイノシトール環の3’−ヒドロキシルにおけるそのリン酸化誘導体をリン酸化する増殖因子受容体チロシンキナーゼに関連する活性を有するものとして同定された(Panayotouら、Trends Cell Biol、2:358−60頁(1992))。
【0004】
ホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸(PIP3)、つまりPI3−キナーゼ活性化の一次産物のレベルは、多様な刺激による細胞の処理時に上昇する。これは、増殖因子の大多数ならびに多くの炎症性刺激、ホルモン、神経伝達物質および抗原のための受容体を介するシグナリングを含み、したがって、PI3Kの活性化は、最も一般的とは言わないまでも、哺乳動物の細胞表面受容体の活性化に関連する1つのシグナル伝達事象を表す(Cantley、Science、296:1655−1657頁(2002);Vanhaesebroeckら、Annu.Rev.Biochem、70:535−602頁(2001))。したがって、PI3−キナーゼ活性化は、細胞増殖、移動、分化およびアポトーシスを含む広範な細胞応答に関与している(Parkerら、Current Biology、5:577−99頁(1995);Yaoら、Science、267:2003−05頁(1995))。PI3−キナーゼ活性化に続いて生成されたリン酸化脂質の下流標的は完全に特徴付けられていないが、プレクストリン相同(PH)ドメイン含有タンパク質およびFYVEフィンガードメイン含有タンパク質は、種々のホスファチジルイノシトール脂質に結合する際に活性化されることが知られている(Sternmarkら、J Cell Sci、112:4175−83頁(1999);Lemmonら、Trends Cell Biol、7:237−42頁(1997))。PI3Kエフェクターを含有するPHドメインの2つの群、つまりTECファミリーのチロシンキナーゼおよびAGCファミリーのセリン/トレオニンキナーゼのメンバーは、免疫細胞シグナリングとの関連で研究されてきた。PtdIns(3,4,5)Pに対する明らかな選択性を有しているPHドメインを含有するTecファミリーのメンバーは、Tec、Btk、ItkおよびEtkを含む。PHのPIPとの結合は、Tecファミリーメンバーのチロシンキナーゼ活性にとって重大である(SchaefferおよびSchwartzberg、Curr.Opin.Immunol.、12:282−288頁(2000))。PI3Kによって調節されるAGCファミリーメンバーは、ホスホイノシチド依存性キナーゼ(PDK1)、AKT(PKBとも称される)ならびにプロテインキナーゼC(PKC)およびS6キナーゼのいくつかのアイソフォームを含む。AKTには3つのアイソフォームがあり、AKTの活性化は、PI3K依存性増殖および生存シグナルに強く関連している。AKTの活性化は、PDK1によるリン酸化に依存しており、AKTは、3−ホスホイノシチド選択的PHドメインも有することにより、このドメインを膜に動員し、膜内でPDK1はAKTと相互作用する。その他の重要なPDK1基質は、PKCおよびS6キナーゼである(DeaneおよびFruman、Annu.Rev.Immunol.、22_563−598頁(2004))。インビトロにおいて、プロテインキナーゼC(PKC)の一部のアイソフォームはPIP3によって直接活性化される(Burgeringら、Nature、376:599−602頁(1995))。
【0005】
現在、PI3−キナーゼ酵素ファミリーは、それらの基質特異性に基づいて3つのクラスに分類されている。クラスI PI3Kは、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトール−4−リン酸およびホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PIP2)をリン酸化し、それぞれホスファチジルイノシトール−3−リン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール−3,4−二リン酸およびホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸を生成することができる。クラスII PI3KはPIおよびホスファチジルイノシトール−4−リン酸をリン酸化し、クラスIII PI3KはPIしかリン酸化することができない。
【0006】
PI3−キナーゼの初期精製および分子クローニングは、PI3−キナーゼがp85およびp110サブユニットからなるヘテロ二量体であることを明らかにした(Otsuら、Cell、65:91−104頁(1991);Hilesら、Cell、70:419−29頁(1992))。その後、それぞれ異なる110kDa触媒サブユニットおよび調節サブユニットからなる、PI3Kα、β、δおよびγと指定されている4つの異なるクラスI PI3Kが同定された。より具体的には、触媒サブユニットのうち3つ、すなわちp110α、p110βおよびp110δはそれぞれ同じ調節サブユニットp85と相互作用し、一方、p110γは異なる調節サブユニットp101と相互作用する。以下に記述されているように、ヒトの細胞および組織におけるこれらのPI3Kのそれぞれの発現パターンも異なっている。概して最近のPI3−キナーゼの細胞機能に関する大量の情報が蓄積されているが、個々のアイソフォームによって担われる役割は十分に理解されていない。
【0007】
ウシp110αのクローニングが記載された。このタンパク質は、液胞タンパク質プロセシングに関与しているタンパク質であるサッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)タンパク質:Vps34pに関係するものとして同定された。組換えp110α産物は、p85αと結合して、トランスフェクトされたCOS−1細胞においてPI3K活性を生じさせることも示した。Hilesら、Cell、70、419−29頁(1992)を参照されたい。
【0008】
p110βと指定されている第2のヒトp110アイソフォームのクローニングは、Huら、Mol Cell Biol、13:7677−88頁(1993)において記載されている。このアイソフォームは、細胞中のp85と結合すると言われており、p110β mRNAは、多数のヒトおよびマウスの組織中、ならびにヒト臍帯静脈内皮細胞、ジャーカットヒト白血病T細胞、293ヒト胎児腎臓細胞、マウス3T3線維芽細胞、HeLa細胞およびNBT2ラット膀胱癌細胞中に見られるため、普遍的に発現していると言われている。そのような広範な発現は、このアイソフォームがシグナリング経路において広く重要であることを示唆している。
【0009】
PI3−キナーゼのp110δアイソフォームの同定は、Chantryら、J Biol Chem、272:19236−41頁(1997)に記載されている。ヒトp110δアイソフォームが組織限定的に発現していることが観察された。p110δアイソフォームは、リンパ球およびリンパ組織において高レベルで発現しており、免疫系内のPI3−キナーゼによって媒介されるシグナリングにおいて主要な役割を果たすことを示した(Al−Alwanら、JI 178:2328−2335頁(2007);Okkenhaugら、JI、177:5122−5128頁(2006);Leeら、PNAS、103:1289−1294頁(2006))。P110δは、乳腺細胞、メラニン形成細胞および内皮細胞において、より低いレベルで発現していることも示され(Vogtら、Virology、344:131−138頁(2006)、そのため、乳癌細胞に選択的移動特性を与えることに関与してきた(Sawyerら、Cancer Res.、63:1667−1675頁(2003))。P110δアイソフォームに関する詳細は、米国特許第5,858,753号、第5,822,910号および第5,985,589号にも見られる。また、Vanhaesebroeckら、Proc Nat.Acad Sci USA、94:4330−5頁(1997)および国際公開WO97/46688も参照されたい。
【0010】
PI3Kα、βおよびδサブタイプのそれぞれにおいて、p85サブユニットは、そのSH2ドメインの、標的タンパク質中の(適切な配列関係で存在している)リン酸化チロシン残基との相互作用により、PI3−キナーゼを原形質膜に局在化させるように作用する(Ramehら、Cell、83:821−30頁(1995))。3個の遺伝子によってコードされたp85の5つのアイソフォーム(p85α、p85β、p55γ、p55αおよびp50α)が同定された。Pik3rl遺伝子の代替転写物は、p85α、p55αおよびp50αタンパク質をコードする(DeaneおよびFruman、Annu.Rev.Immunol.、22:563−598頁(2004))。p85αは普遍的に発現しており、一方、p85βは主に脳およびリンパ組織において見られる(Voliniaら、Oncogene、7:789−93頁(1992))。p85サブユニットの、PI3−キナーゼp110α、βまたはδ触媒サブユニットとの結合は、これらの酵素の触媒活性および安定性に必要であるように思われる。加えて、Rasタンパク質の結合も、PI3−キナーゼ活性を上方調節する。
【0011】
p110γのクローニングは、PI3Kファミリーの酵素内の複雑性をさらに一層明らかにした(Stoyanovら、Science、269:690−93頁(1995))。p110γアイソフォームは、p110αおよびp110βと密接に関係している(触媒ドメインにおいて45−48%の同一性)が、言及されている通り、p85を標的化サブユニットとして利用しない。代わりに、p110γは、ヘテロ三量体Gタンパク質のβγサブユニットにも結合しているp101調節サブユニットを結合する。PI3Kガンマ用のp101調節サブユニットは、当初はブタにおいてクローン化され、その後、ヒトオーソログが同定された(Krugmannら、J Biol Chem、274:17152−8頁(1999))。p101のN末端領域とp110γのN末端領域との間の相互作用は、GβγによってPI3Kγを活性化することが知られている。最近、p110γを結合するp101ホモログ、p84またはp87PIKAP(87kDaのPI3Kγアダプタータンパク質)が同定された(Voigtら、JBC、281:9977−9986頁(2006);Suireら、Curr.Biol.、15:566−570頁(2005))。p87PIKAPは、p110γおよびGβγを結合するエリア内においてp101と相同であり、Gタンパク質共役受容体下流のp110γの活性化も媒介する。p101と違って、p87PIKAPは心臓において高度に発現しており、PI3Kγ心機能にとって重大となり得る。
【0012】
構成的に活性なPI3Kポリペプチドは、国際公開WO96/25488に記載されている。この公開は、SH2間(iSH2)領域として知られているp85の102残基断片がリンカー領域を介してマウスp110のN末端と融合した、キメラ融合タンパク質の調製を開示している。p85 iSH2ドメインは、明らかに、インタクトなp85に匹敵する様式でPI3K活性を活性化することができる(Klippelら、Mol Cell Biol、14:2675−85頁(1994))。
【0013】
このように、PI3−キナーゼは、それらのアミノ酸同一性によってまたはそれらの活性によって定義され得る。この増大しつつある遺伝子ファミリーのさらなるメンバーは、サッカロマイセス・セレヴィシエのVps34 TOR1およびTOR2(ならびにFRAPおよびmTOR等、それらの哺乳動物ホモログ)を含むより遠い関係の脂質およびプロテインキナーゼ、運動失調末梢血管拡張遺伝子産物(ataxia telangiectasia gene product)(ATR)ならびにDNA依存性プロテインキナーゼ(DNA−PK)の触媒サブユニットを含む。概して、Hunter、Cell、83:1−4頁(1995)を参照されたい。
【0014】
PI3−キナーゼは、白血球活性化の多数の態様にも関与している。p85が関連しているPI3−キナーゼ活性は、抗原に応答したT細胞の活性化のための重要な共刺激分子であるCD28の細胞質ドメインと物理的に結合することを示した(Pagesら、Nature、369:327−29頁(1994);Rudd、Immunity、4:527−34頁(1996))。CD28によるT細胞の活性化は、抗原による活性化の閾値を低下させ、増殖応答の大きさおよび持続時間を増大させる。これらの作用は、重要なT細胞増殖因子であるインターロイキン−2(IL2)を含む多数の遺伝子の転写の増大と連関している(Fraserら、Science、251:313−16頁(1991))。もはやPI3−キナーゼと相互作用することができないようなCD28の突然変異はIL2生成の開始失敗につながり、T細胞活性化におけるPI3−キナーゼの重大な役割を示唆している。
【0015】
酵素ファミリーの個々のメンバーに対する特異的阻害剤は、各酵素の機能を解明するための貴重なツールを提供する。2つの化合物、LY294002およびワートマニンは、PI3−キナーゼ阻害剤として広く使用されてきた。しかしながら、これらの化合物は、クラスI PI3−キナーゼの4つのメンバー間の識別をしないため、非特異的なP13K阻害剤である。例えば、種々のクラスI PI3−キナーゼのそれぞれに対するワートマニンのIC50値は、1−10nMの範囲内である。同様に、これらのPI3−キナーゼのそれぞれに対するLY294002のIC50値は、約1μMである(Frumanら、Ann Rev Biochem、67:481−507頁(1998))。それ故、個々のクラスI PI3−キナーゼの役割を研究する際におけるこれらの化合物の効用は限定されている。
【0016】
ワートマニンを使用する研究に基づいて、PI3−キナーゼ機能が、Gタンパク質共役受容体を介する白血球シグナリングの一部の態様にも必要であることの証拠がある(Thelenら、Proc Natl Acad Sci USA、91:4960−64頁(1994))。その上、ワートマニンおよびLY294002は好中球移動およびスーパーオキシド放出をブロックすることが示された。しかしながら、これらの化合物は、PI3Kの種々のアイソフォーム間の識別をしないため、特定のPI3Kアイソフォーム(1つまたは複数)がこれらの現象のいずれに関与するのか、また異なるクラスI PI3K酵素が正常組織および患部組織の両方において、概してどの機能を実施するのかは、これらの研究からは不明瞭なままである。ほとんどの組織におけるいくつかのPI3Kアイソフォームの共発現は、最近まで、各酵素の活性を分離するための努力を複雑にしていた。
【0017】
種々のPI3Kアイソザイムの活性の分離は、最近、アイソフォーム特異的なノックアウトマウスおよびキナーゼデッドのノックインマウスの研究を可能にした遺伝子操作されたマウスの開発によって、ならびに異なるアイソフォームの一部に対してより選択的な阻害剤の開発によって進歩した。P110αおよびp110βノックアウトマウスが作出されたが、いずれも胚致死であり、p110アルファおよびベータの発現および機能に関する情報は、これらのマウスからほとんど得られない(Biら、Manun.Genome、13:169−172頁(2002);Biら、J.Biol.Chem.、274:10963−10968頁(1999))。より最近では、キナーゼ活性を損なうが突然変異型p110αキナーゼ発現を維持するATP結合ポケットのDFGモチーフ中に単一点突然変異を有するp110αキナーゼデッドのノックインマウス(p110αD933A)が作出された。ノックアウトマウスと対照的に、ノックインアプローチは、シグナリング複合体の化学量論、足場機能および擬似小分子(mimics small molecule)アプローチをノックアウトマウスよりも現実的に維持する。p110αKOマウスと同様に、p110αD933Aホモ接合型マウスは胚致死である。しかしながら、ヘテロ接合型マウスは成育可能および出産可能であるが、インスリン受容体基質(IRS)タンパク質、インスリンの主要メディエーター、インスリン様増殖因子1およびレプチン作用により著しく鈍化したシグナリングを見せる。これらのホルモンに対する不完全反応性は、ヘテロ接合体における、高インスリン血症、耐糖能障害、過食症、脂肪増加および全体的増殖の減少につながる(Foukasら、Nature、441:366−370頁(2006))。これらの研究は、他のアイソフォームによって代用されないIGF−1、インスリンおよびレプチンシグナリングにおける中間体としての、p110αの定義された必須的役割を明らかにした。我々は、このアイソフォームの機能をさらに理解するために、p110βキナーゼデッドのノックインマウスの記載を待たねばならない(マウスは作製されたが未だ刊行されていない;Vanhaesebroeck)。
【0018】
P110γノックアウトマウスおよびキナーゼデッドのノックインマウスが両方作出されており、先天性免疫系の細胞の移動における主要な欠陥およびT細胞の胸腺の発生における欠陥を有する同様のおよび軽度の表現型を全体的に示す(Liら、Science、287:1046−1049頁(2000);Sasakiら、Science、287:1040−1046頁(2000);Patruccoら、Cell、118:375−387頁(2004))。
【0019】
p110γと同様に、PI3Kデルタノックアウトマウスおよびキナーゼデッドのノックインマウスが作製されており、軽度のおよび類似の表現型を有する成育可能なものである。p110δD910A突然変異型ノックインマウスは、境界域B細胞およびCD5+B1細胞がほぼ検出できないB細胞の発生および機能における、ならびにB細胞およびT細胞の抗原受容体シグナリングにおけるデルタの重要な役割を実証した(Claytonら、J.Exp.Med.、196:753−763頁(2002);Okkenhaugら、Science、297:1031−1034頁(2002))。p110δD910Aマウスは、広範囲にわたって研究され、デルタが免疫系内で果たす多様な役割を解明した。T細胞依存性およびT細胞非依存性の免疫応答は、p110δD910Aにおいて著しく減衰され、TH1(INF−γ)およびTH2サイトカイン(IL−4、IL−5)の分泌が損なわれる(Okkenhaugら、J.Immunol.、177:5122−5128頁(2006))。p110δに突然変異を有するヒト患者も最近記載された。以前は原因不明であった原発性B細胞免疫不全および低ガンマグロブリン血症に罹患している台湾人男児は、p110δのエクソン24中のコドン1021において、m.3256GからAへの単一塩基対置換を呈した。この突然変異は、p110δタンパク質の高度に保存された触媒ドメイン内に位置するコドン1021において、ミスセンスアミノ酸置換(EからK)をもたらした。この患者は、他の同定された突然変異は有しておらず、この患者の表現型は、研究されている範囲ではマウスにおけるp110δ欠失と一致している(Jouら、Int.J.Immunogenet.、33:361−369頁(2006))。
【0020】
アイソフォーム選択的な小分子化合物が開発され、すべてのクラスI PI3キナーゼアイソフォームに対して効果が様々であった(Itoら、J.Pharm.Exp.Therapeut.、321:1−8頁(2007))。アルファに対する阻害剤は、p110αにおける突然変異がいくつかの固形腫瘍において同定されたために望ましく、例えば、アルファの増幅突然変異は、卵巣癌、子宮頸癌、肺癌および乳癌の50%に関連し、活性化突然変異は、腸癌の50%超および乳癌の25%において記載されている(Hennessyら、Nature Reviews、4:988−1004頁(2005))。山之内製薬株式会社は、アルファおよびデルタを等効力で阻害し、ベータおよびガンマに対してそれぞれ8倍および28倍選択的である化合物YM−024を開発した(Itoら、J.Pharm.Exp.Therapeut.、321:1−8頁(2007))。
【0021】
P110βは、血栓形成に関与しており(Jacksonら、Nature Med.、11:507−514頁(2005))、このアイソフォームに特異的な小分子阻害剤は、後に凝固障害を含む適応症用に考えられる(TGX−221:ベータにおいて0.007uM、デルタに対して14倍選択的であり、ガンマおよびアルファに対して500倍超選択的である)(Itoら、J.Pharm.Exp.Therapeut.、321:1−8頁(2007))。
【0022】
p110γに対する選択的な化合物は、いくつかのグループにより、自己免疫疾患用の免疫抑制剤として開発されている(Runkleら、Nature Reviews、5:903−918頁(2006))。注目すべきことに、AS605240は、関節リウマチのマウスモデルにおいて有効であること(Campsら、Nature Medicine、11:936−943頁(2005))および全身性エリテマトーデスのモデルにおいて疾患の発症を遅延させること(Barberら、Nature Medicine、11:933−935頁(205))を示した。
【0023】
デルタ選択的な阻害剤も最近記載された。最も選択的な化合物は、キナゾリノンプリン阻害剤(PIK39およびIC87114)を含む。IC87114は高ナノモル範囲(3桁)内のp110δを阻害し、p110αに対して100倍超の選択性を有し、p110βに対して52倍選択的であるが、p110γに対する選択性に乏しい(約8倍)。この化合物は、試験されたいかなるプロテインキナーゼに対しても活性を示さない(Knightら、Cell、125:733−747頁(2006))。
【0024】
デルタ選択的な化合物または遺伝子操作されたマウス(p110δD910A)を使用し、BおよびT細胞活性化において主要な役割を果たすことに加えて、デルタは好中球移動および感作された好中球の呼吸バーストにも部分的に関与しており、抗原IgEによって媒介されるマスト細胞脱顆粒の部分的ブロックにつながることが示された(Condliffeら、Blood、106:1432−1440頁(2005);Aliら、Nature、431:1007−1011頁(2002))。それ故、p110δは、自己免疫疾患およびアレルギーを含むがこれらに限定されない異常な炎症状態に関与することも知られている多くの主要な炎症応答の重要なメディエーターとして出現してきている。この概念を支持するために、遺伝子ツールおよび薬理作用物質の両方を使用した研究に由来する、増大しつつあるp110δ標的検証データがある。このように、デルタ選択的な化合物IC87114およびp110δD910Aマウスを使用して、Aliら(Nature、431:1007−1011頁(2002))は、デルタがアレルギー性疾患のマウスモデルにおいて重大な役割を果たすことを実証した。機能的なデルタがない場合、受身皮膚アナフィラキシー(PCA)は有意に減少し、抗原IgEによって誘発されたマスト細胞活性化および脱顆粒の減少に起因し得る。加えて、IC87114によるデルタの阻害は、オボアルブミンによって誘発された気道炎症を使用した喘息のマウスモデルにおける炎症および疾患を有意に寛解させることが示された(Leeら、FASEB、20:455−465頁(2006)。化合物を利用したこれらのデータは、異なるグループによるアレルギー性気道炎症の同じモデルを使用したp110δD910A突然変異型マウスにおいて裏付けられた(Nashedら、Eur.J:Immunol.、37:416−424頁(2007))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許第5,858,753号明細書
【特許文献2】米国特許第5,822,910号明細書
【特許文献3】米国特許第5,985,589号明細書
【特許文献4】国際公開第97/46688号
【特許文献5】国際公開第96/25488号
【非特許文献】
【0026】
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【非特許文献7】Sternmarkら、J Cell Sci、112:4175−83頁(1999)
【非特許文献8】Lemmonら、Trends Cell Biol、7:237−42頁(1997)
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【非特許文献10】DeaneおよびFruman、Annu.Rev.Immunol.、22_563−598頁(2004)
【非特許文献11】Burgeringら、Nature、376:599−602頁(1995)
【非特許文献12】Otsuら、Cell、65:91−104頁(1991)
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【非特許文献15】Chantryら、J Biol Chem、272:19236−41頁(1997)
【非特許文献16】Al−Alwanら、JI 178:2328−2335頁(2007)
【非特許文献17】Okkenhaugら、JI、177:5122−5128頁(2006)
【非特許文献18】Leeら、PNAS、103:1289−1294頁(2006)
【非特許文献19】Vogtら、Virology、344:131−138頁(2006)
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【非特許文献38】Foukasら、Nature、441:366−370頁(2006)
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【非特許文献42】Claytonら、J.Exp.Med.、196:753−763頁(2002)
【非特許文献43】Okkenhaugら、Science、297:1031−1034頁(2002)
【非特許文献44】Okkenhaugら、J.Immunol.、177:5122−5128頁(2006)
【非特許文献45】Jouら、Int.J.Immunogenet.、33:361−369頁(2006)
【非特許文献46】Itoら、J.Pharm.Exp.Therapeut.、321:1−8頁(2007)
【非特許文献47】Hennessyら、Nature Reviews、4:988−1004頁(2005)
【非特許文献48】Jacksonら、Nature Med.、11:507−514頁(2005)
【非特許文献49】Runkleら、Nature Reviews、5:903−918頁(2006)
【非特許文献50】Campsら、Nature Medicine、11:936−943頁(2005)
【非特許文献51】Barberら、Nature Medicine、11:933−935頁(205)
【非特許文献52】Knightら、Cell、125:733−747頁(2006)
【非特許文献53】Condliffeら、Blood、106:1432−1440頁(2005)
【非特許文献54】Aliら、Nature、431:1007−1011頁(2002)
【非特許文献55】Leeら、FASEB、20:455−465頁(2006)
【非特許文献56】Nashedら、Eur.J:Immunol.、37:416−424頁(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
炎症および自己免疫状況におけるPI3Kδ機能のさらなる特徴付けの必要性が存在する。さらに、PI3Kδに関する我々の理解には、その調節サブユニットおよび細胞中の他のタンパク質の両方によるp110δの構造的相互作用のさらなる精密化を必要とする。アイソザイムp110アルファ(インスリンシグナリング)およびベータ(血小板活性化)に対する活性に伴う潜在的毒性を回避するために、PI3Kデルタのより強力なおよび選択的なまたは特異的な阻害剤の必要性も残っている。特に、PI3Kδの選択的なまたは特異的な阻害剤は、このアイソザイムの役割をさらに探求するために望ましく、アイソザイムの活性を調節するための優れた医薬品の開発のために望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0028】
(発明の要旨)
本発明は、ヒトPI3Kδの生物活性を阻害するために有用な、一般式:
【0029】
【化1】
を有する新規クラスの化合物を含む。本発明の別の態様は、他のPI3Kアイソフォームに対して比較的低い阻害能を有しながら、PI3Kδを選択的に阻害する化合物を提供することである。本発明の別の態様は、ヒトPI3Kδの機能を特徴付ける方法を提供することである。本発明の別の態様は、ヒトPI3Kδ活性を選択的に調節し、それにより、PI3Kδ機能不全によって媒介された疾患の医学的治療を促進する方法を提供することである。本発明の他の態様および利点は、当業者には容易に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の一態様は、構造式:
【0031】
【化2】
[式中、
はC(R)またはNであり、
はC(R10)またはNであり、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
nは、0、1、2または3であり、
は、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)直接結合または酸素結合している飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;またはRは、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、複素環、−(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−(C1−3アルキル)複素環、−O(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−O(C1−3アルキル)複素環、−NR(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−NR(C1−3アルキル)複素環、−(C1−3アルキル)フェニル、−O(C1−3アルキル)フェニルおよび−NR(C1−3アルキル)フェニルから選択され、そのすべてが、C1−4ハロアルキル、OC1−4アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、それぞれの場合において独立に、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成し、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており;またはRは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されており、
10は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRであり、
11はHまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、このフェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩に関する。
【0032】
本発明の別の態様は、構造式:
【0033】
【化3】
[式中、
はC(R)またはNであり、
はC(R10)またはNであり、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
nは、0、1、2または3であり、
は、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)直接結合または酸素結合している飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;またはRは、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、複素環、−(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−(C1−3アルキル)複素環、−O(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−O(C1−3アルキル)複素環、−NR(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−NR(C1−3アルキル)複素環、−(C1−3アルキル)フェニル、−O(C1−3アルキル)フェニルおよび−NR(C1−3アルキル)フェニルから選択され、そのすべてが、C1−4ハロアルキル、OC1−4アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、それぞれの場合において独立に、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成し、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており;またはRは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されており、
10は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRであり、
11はHまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、このフェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩に関する。
【0034】
本発明の別の態様は、構造式:
【0035】
【化4】
[式中、
はC(R)またはNであり、
はC(R10)またはNであり、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
nは、0、1、2または3であり、
は、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)直接結合または酸素結合している飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;またはRは、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、複素環、−(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−(C1−3アルキル)複素環、−O(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−O(C1−3アルキル)複素環、−NR(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−NR(C1−3アルキル)複素環、−(C1−3アルキル)フェニル、−O(C1−3アルキル)フェニルおよび−NR(C1−3アルキル)フェニルから選択され、そのすべてが、C1−4ハロアルキル、OC1−4アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、それぞれの場合において独立に、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成し、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており;またはRは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されており、
10は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRであり、
11はHまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、このフェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩に関する。
【0036】
本発明の別の態様は、構造式:
【0037】
【化5】
[式中、
はC(R)またはNであり、
はC(R10)またはNであり、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
nは、0、1、2または3であり、
は、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)直接結合または酸素結合している飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;またはRは、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリール、複素環、−(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−(C1−3アルキル)複素環、−O(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−O(C1−3アルキル)複素環、−NR(C1−3アルキル)ヘテロアリール、−NR(C1−3アルキル)複素環、−(C1−3アルキル)フェニル、−O(C1−3アルキル)フェニルおよび−NR(C1−3アルキル)フェニルから選択され、そのすべてが、C1−4ハロアルキル、OC1−4アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、それぞれの場合において独立に、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成し、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており;またはRは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されており、
10は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRであり、
11はHまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、このフェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩に関する。
【0038】
本発明の別の態様は、構造式:
【0039】
【化6】
[式中、
はC(R)またはNであり、
はC(R10)またはNであり、
Yは、N(R11)、OまたはSであり、
nは、0、1、2または3であり、
は、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択され;またはRは、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、そのすべてが、C1−4ハロアルキル、OC1−4アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、それぞれの場合において独立に、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルまたはC1−4ハロアルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成し、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており、
は、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されており;またはRは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されており、
10は、H、C1−3アルキル、C1−3ハロアルキル、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRであり、
11はHまたはC1−4アルキルであり、
は、それぞれの場合において独立に、HまたはRであり、
は、それぞれの場合において独立に、フェニル、ベンジルまたはC1−6アルキルであり、このフェニル、ベンジルおよびC1−6アルキルは、ハロ、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。]を有する化合物または任意の薬学的に許容できるその塩に関する。
【0040】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、XはC(R)であり、XはNである。
【0041】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、XはC(R)であり、XはC(R10)である。
【0042】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、0または1個のR置換基によって置換されているフェニルであり、このフェニルは、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0043】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rはフェニルである。
【0044】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、Rによって置換されているフェニルであり、このフェニルは、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0045】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、2−メチルフェニル、2−クロロフェニル、2−トリフルオロメチルフェニル、2−フルオロフェニルおよび2−メトキシフェニルから選択される。
【0046】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、(N、OおよびSから選択された1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)直接結合または酸素結合している飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0047】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、(N、OおよびSから選択された1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)不飽和の5または6員の単環式環であり、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0048】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、(N、OおよびSから選択された1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)不飽和の5または6員の単環式環であり、この環は、0または1個のR置換基によって置換されており、環は、ハロ、ニトロ、シアノ、C1−4アルキル、OC1−4アルキル、OC1−4ハロアルキル、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルおよびC1−4ハロアルキルから独立に選択された1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0049】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、N、OおよびSから選択された1、2、3または4個の原子を含有する不飽和の5または6員の単環式環である。
【0050】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rはピリジルおよびピリミジニルから選択される。
【0051】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0052】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはHである。
【0053】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、F、Cl、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0054】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、それぞれの場合において独立に、H、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルであり;または両方のR基が一緒になって、ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されているC3−6スピロアルキルを形成する。
【0055】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはHである。
【0056】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、一方のRはS−メチルであり、他方はHである。
【0057】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、少なくとも1個のRは、ハロ、C1−6アルキル、C1−4ハロアルキルまたは(ハロ、シアノ、OH、OC1−4アルキル、C1−4アルキル、C1−3ハロアルキル、OC1−4アルキル、NH、NHC1−4アルキル、N(C1−4アルキル)C1−4アルキルから選択された1、2または3個の置換基によって置換されている)C1−6アルキルである。
【0058】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはHである。
【0059】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはNRである。
【0060】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはNHである。
【0061】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはNHC1−6アルキルである。
【0062】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によって置換されている。
【0063】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択される。
【0064】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはHである。
【0065】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、C1−6ハロアルキル、Br、Cl、F、I、OR、NR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、C1−6ハロアルキル、OC1−6アルキル、Br、Cl、F、IおよびC1−6アルキルから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0066】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択される。
【0067】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、H、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)ORおよび−S(=O)N(R)C(=O)NRから選択される。
【0068】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはNRである。
【0069】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、C1−3ハロアルキル、Br、Cl、FおよびC1−6アルキルから選択される。
【0070】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、RはHである。
【0071】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルOR、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環から選択され、ここで、C1−6アルキル、フェニル、ベンジル、ヘテロアリールおよび複素環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNR、−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2または3個の置換基によってさらに置換されている。
【0072】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、Rは、(N、OおよびSから選択された0、1、2、3または4個の原子を含有するが1個を超えるOまたはSを含有しない)飽和、部分飽和または不飽和の5、6または7員の単環式環であり、この環の利用可能な炭素原子は、0、1または2個のオキソ基またはチオキソ基によって置換されており、この環は、ハロ、C1−4ハロアルキル、シアノ、ニトロ、−C(=O)R、−C(=O)OR、−C(=O)NR、−C(=NR)NR、−OR、−OC(=O)R、−OC(=O)NR、−OC(=O)N(R)S(=O)、−OC2−6アルキルNR、−OC2−6アルキルOR、−SR、−S(=O)R、−S(=O)、−S(=O)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、−NR、−N(R)C(=O)R、−N(R)C(=O)OR、−N(R)C(=O)NR、−N(R)C(=NR)NR、−N(R)S(=O)、−N(R)S(=O)NR、−NR2−6アルキルNRおよび−NR2−6アルキルORから選択された0、1、2、3または4個の置換基によって置換されている。
【0073】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、R10はHである。
【0074】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、R10は、シアノ、ニトロ、CO、C(=O)NR、−C(=NR)NR、−S(=O)N(R)C(=O)R、−S(=O)N(R)C(=O)OR、−S(=O)N(R)C(=O)NR、S(=O)R、S(=O)またはS(=O)NRである。
【0075】
別の実施形態において、上記または下記実施形態のいずれかに関連して、R11はHである。
【0076】
本発明の別の態様は、PI3Kによって媒介される状態または障害を治療する方法に関する。
【0077】
いくつかの実施形態において、PI3Kによって媒介される状態または障害は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患および自己免疫疾患から選択される。他の実施形態において、PI3Kによって媒介される状態または障害は、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧、深部静脈血栓症、脳卒中、心筋梗塞、不安定狭心症、血栓塞栓症、肺塞栓症、血栓崩壊性疾患、急性動脈虚血、末梢血栓閉塞および冠動脈疾患から選択される。また他の実施形態において、PI3Kによって媒介される状態または障害は、癌、結腸癌、膠芽腫、子宮内膜癌、肝細胞癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌、甲状腺癌、細胞リンパ腫、リンパ増殖性疾患、小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、神経膠腫、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌および白血病から選択される。さらに別の実施形態において、PI3Kによって媒介される状態または障害は2型糖尿病から選択される。また他の実施形態において、PI3Kによって媒介される状態または障害は、呼吸器疾患、気管支炎、喘息および慢性閉塞性肺疾患から選択される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0078】
本発明の別の態様は、上記実施形態のいずれかによる化合物を投与するステップを含む、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患または自己免疫疾患の治療に関する。
【0079】
本発明の別の態様は、上記または下記実施形態のいずれかによる化合物を投与するステップを含む、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患および自己免疫疾患、炎症性腸障害、炎症性眼障害、炎症性または不安定膀胱傷害、炎症性成分による皮膚病訴、慢性炎症状態、自己免疫疾患、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、関節リウマチ、急性散在性脳脊髄炎、特発性血小板減少性紫斑病、多発性硬化症、シェーグレン症候群および自己免疫性溶血性貧血、アレルギー状態ならびに過敏症の治療に関する。
【0080】
本発明の別の態様は、上記または下記実施形態のいずれかによる化合物を投与するステップを含む、p110δ活性によって媒介される、p110δ活性に依存するまたはp110δ活性に関連する癌の治療に関する。
【0081】
本発明の別の態様は、上記または下記実施形態のいずれかによる化合物を投与するステップを含む、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、慢性骨髄性白血病、T細胞急性リンパ性白血病、B細胞急性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、固形腫瘍および乳癌から選択される癌の治療に関する。
【0082】
本発明の別の態様は、上記実施形態のいずれかによる化合物および薬学的に許容できる希釈剤または担体を含む医薬組成物に関する。
【0083】
本発明の別の態様は、上記実施形態のいずれかによる化合物の薬剤としての使用に関する。
【0084】
本発明の別の態様は、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患および自己免疫疾患の治療用の薬剤の製造における、上記実施形態のいずれかによる化合物の使用に関する。
【0085】
本発明の化合物は、概していくつかの不斉中心を有し得、典型的にラセミ混合物の形態で描写される。本発明は、ラセミ混合物、部分的ラセミ混合物ならびに別個の鏡像異性体およびジアステレオマーを包含することを意図されている。
【0086】
別段の規定のない限り、以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲において見られる用語に当てはまる。
【0087】
「Cα−βアルキル」は、最少α個および最大β個の炭素原子を、分岐関係、循環関係もしくは直線関係またはこれら3つの任意の組合せ中に含む(ここで、αおよびβは整数を表す。)アルキル基を意味する。この章に記載されているアルキル基は、1個または2個の二重結合または三重結合も含有し得る。C1−6アルキルの例は、以下を含むがこれらに限定されない。
【0088】
【化7】
【0089】
「ベンゾ基」は、単独でまたは組合せで、別の環に隣接して結合するとベンゼン様環を形成する、例えばテトラヒドロナフチレン、インドール等を形成する二価の基C=(その1つの表現は−CH=CH−CH=CH−である。)を意味する。
【0090】
「オキソ」および「チオキソ」という用語は、それぞれ基=O(カルボニル中のもの等)および=S(チオカルボニル中のもの等)を表す。
【0091】
「ハロ」または「ハロゲン」は、F、Cl、BrおよびIから選択されたハロゲン原子を意味する。
【0092】
「Cv−wハロアルキル」は、上述した通り、アルキル鎖に結合している任意の数(少なくとも1個)の水素原子が、F、Cl、BrまたはIによって置き換えられているアルキル基を意味する。
【0093】
「複素環」は、少なくとも1個の炭素原子ならびにN、OおよびSから選択された少なくとも1個の他の原子を含む環を意味する。特許請求の範囲において見られ得る複素環の例は、以下を含むがこれらに限定されない。
【0094】
【化8】
【0095】
「利用可能な窒素原子」は、(複素環の一部であり、例えばHまたはCHによる置換に利用可能な外部結合を脱離して、2個の単結合(例えば、ピペリジン)によって結合されている)窒素原子である。
【0096】
「薬学的に許容できる塩」は、従来の手段によって調製された塩を意味し、当業者によってよく知られている。「薬理学的に許容できる塩」は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸等を含むがこれらに限定されない、無機酸および有機酸の塩基性塩を含む。本発明の化合物がカルボキシ基等の酸性官能基を含む場合、カルボキシ基の適切な薬学的に許容できるカチオン対は当業者によく知られており、アルカリカチオン、アルカリ土類カチオン、アンモニウムカチオン、第四級アンモニウムカチオン等を含む。「薬理学的に許容できる塩」のさらなる例については、以下およびBergeら、J.Pharm.Sci.、66:1頁(1977)を参照されたい。
【0097】
「飽和、部分飽和または不飽和の」は、水素で飽和されている置換基、水素でまったく飽和されていない置換基および水素で部分的に飽和されている置換基を含む。
【0098】
「脱離基」は、概して、アミン、チオールまたはアルコール求核試薬等の求核試薬によって容易に置き換え可能な基を指す。そのような脱離基は、当該技術分野においてよく知られている。そのような脱離基の例は、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシベンゾトリアゾール、ハロゲン化物、トリフレート、トシレート等を含むがこれらに限定されない。好ましい脱離基は、必要に応じて本明細書に示されている。
【0099】
「保護基」は、概して、カルボキシ、アミノ、ヒドロキシ、メルカプト等の選択された反応基を、求核、求電子、酸化、還元等の進行中の望ましくない反応から保護するために使用される、当該技術分野においてよく知られている基を指す。好ましい保護基は、必要に応じて本明細書に示されている。アミノ保護基の例は、アラルキル、置換アラルキル、シクロアルケニルアルキルおよび置換シクロアルケニルアルキル、アリル、置換アリル、アシル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、シリル等を含むがこれらに限定されない。アラルキルの例は、(ハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、アシルアミノ、アシル等で場合によって置換されていてよい)ベンジル、オルトメチルベンジル、トリチルおよびベンズヒドリル、ならびにホスホニウム塩およびアンモニウム塩等の塩を含むがこれらに限定されない。アリール基の例は、フェニル、ナフチル、インダニル、アントラセニル、9−(9−フェニルフルオレニル)、フェナントレニル、デュレニル(durenyl)等を含む。シクロアルケニルアルキルまたは置換シクロアルキレニルアルキル基(好ましくは6−10個の炭素原子を有する。)の例は、シクロヘキセニルメチル等を含むがこれらに限定されない。適切なアシル、アルコキシカルボニルおよびアラルコキシカルボニル基は、ベンジルオキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、イソ−ブトキシカルボニル、ベンゾイル、置換ベンゾイル、ブチリル、アセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、フタロイル等を含む。保護基の混合物は、同じアミノ基を保護するために使用でき、例えば第一級アミノ基はアラルキル基およびアラルコキシカルボニル基の両方によって保護され得る。アミノ保護基は、それらが結合された窒素とともに、複素環を形成する、例えば、1,2−ビス(メチレン)ベンゼン、フタルイミジル、スクシンイミジル、マレイミジル等を形成することもでき、この場合、これらの複素環基は、隣接するアリールおよびシクロアルキル環をさらに含み得る。加えて、複素環基は、ニトロフタルイミジル等、一置換、二置換または三置換されていてよい。アミノ基は、酸化等の望ましくない反応に対し、塩酸塩、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等の付加塩の形成によって保護されることもできる。アミノ保護基の多くは、カルボキシ、ヒドロキシおよびメルカプト基を保護するのにも適している。例えば、アラルキル基である。アルキル基も、tert−ブチル等、ヒドロキシおよびメルカプト基を保護するための適切な基である。シリル保護基は、(1個以上のアルキル、アリールおよびアラルキル基で場合によって置換された)ケイ素原子である。適切なシリル保護基は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、ジメチルフェニルシリル、1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジメチルシリル)エタンおよびジフェニルメチルシリルを含むがこれらに限定されない。アミノ基のシリル化は、モノ−またはジ−シリルアミノ基を提供する。アミノアルコール化合物のシリル化は、N,N,O−トリシリル誘導体をもたらし得る。シリルエーテル官能基からのシリル官能基の除去は、例えば、不連続の反応ステップとしてまたはアルコール基との反応中にインシチュでのいずれかにおいて、金属水酸化物またはフッ化アンモニウム試薬による処理によって容易に遂行される。適切なシリル化剤は、例えば、塩化トリメチルシリル、tert−ブチル−ジメチルシリルクロリド、塩化フェニルジメチルシリル、塩化ジフェニルメチルシリルまたはこれらのイミダゾールもしくはDMFとの組合せ生成物である。アミンのシリル化およびシリル保護基の除去の方法は、当業者によく知られている。これらのアミン誘導体の、対応するアミノ酸、アミノ酸アミドまたはアミノ酸エステルからの調製方法も、アミノ酸/アミノ酸エステルまたはアミノアルコール化学を含む有機化学の技術分野の当業者によく知られている。
【0100】
保護基は、分子の残部に影響を及ぼさない条件下で除去される。これらの方法は、当該技術分野においてよく知られており、酸加水分解、水素化分解等を含む。好ましい方法は、アルコール、酢酸等またはこれらの混合物等の適切な溶媒系中、パラジウム炭素を利用する水素化分解によるベンジルオキシカルボニル基の除去等、保護基の除去を含む。t−ブトキシカルボニル保護基は、ジオキサンまたは塩化メチレン等の適切な溶媒系中、HClまたはトリフルオロ酢酸等の無機酸または有機酸を利用して除去され得る。得られたアミノ塩は、容易に中和され、遊離アミンを得ることができる。メチル、エチル、ベンジル、tert−ブチル、4−メトキシフェニルメチル等のカルボキシ保護基は、当業者によく知られている加水分解および水素化分解条件下で除去され得る。
【0101】
本発明の化合物は、環式および非環式のアミジンおよびグアニジン基、ヘテロ原子置換ヘテロアリール基(Y’=O、S、NR)等の互変異性形態(以下の例:
【0102】
【化9】
において図解されており、本明細書においては1つの形態が命名され、記載され、表示されおよび/または特許請求されているが、すべての互変異性形態は、そのような命名、記載、表示および/または特許請求の範囲に本質的に含まれることを意図されている。)で存在し得る基を含有し得ることに留意すべきである。
【0103】
本発明の化合物のプロドラッグも、本発明によって企図されている。プロドラッグは、患者へのプロドラッグの投与後、加水分解、代謝等のインビボ生理作用によって化学修飾されて本発明の化合物になる活性化合物または不活性化合物である。プロドラッグを作製することおよび使用することに関与する適合性および技術は、当業者によく知られている。エステル類を含むプロドラッグの一般的考察については、SvenssonおよびTunek Drug Metabolism Reviews 165(1988)ならびにBundgaard Design of Prodrugs、Elsevier(1985)を参照されたい。マスクされたカルボン酸アニオンの例は、アルキル(例えば、メチル、エチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、アラルキル(例えば、ベンジル、p−メトキシベンジル)およびアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ピバロイルオキシメチル)等、多様なエステル類を含む。アミン類は、遊離薬物およびホルムアルデヒドをインビボ放出するエステラーゼによって開裂されたアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされている(Bungaard、J.Med.Chem.、2503頁(1989))。また、イミダゾール、イミド、インドール等の酸性NH基を含有する薬物は、N−アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard Design of Prodrugs、Elsevier(1985))。ヒドロキシ基は、エステル類およびエーテル類としてマスクされている。EP039,051(SloanおよびLittle、1981年11月4日)は、マンニッヒ系ヒドロキサム酸プロドラッグ、これらの調製および使用を開示している。
【0104】
本明細書および特許請求の範囲は、「…および…から選択された」および「は、…または…である」という言い回しを使用する種の列挙(時にマーカッシュグループと称される)を含有する。この言い回しが本出願において使用される場合、別段の定めがない限り、このグループ全体またはその任意の単一メンバーまたはその任意のサブグループを含むことを意図されている。この言い回しの使用は、簡略化目的にすぎず、個々の要素またはサブグループの必要に応じた除去を限定することを決して意図されていない。
【0105】
実験
以下の略語が使用される。
【0106】
aq. 水溶液
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
cond 濃縮
DCM ジクロロメタン
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
EtO ジエチルエーテル
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エチルアルコール
h 時間(複数可)
min 分
MeOH メチルアルコール
rt 室温
satd 飽和
THF テトラヒドロフラン
【0107】
一般
以下で使用される試薬および溶媒は、商業的供給源から得ることができる。H−NMRスペクトルは、Bruker 400MHzおよび500MHz NMR分光計で記録した。有意なピークは、次の順に作表されている:多重度(s、一重項;d、二重項;t、三重項;q、四重項;m、多重項;brs、広域一重項)、ヘルツ(Hz)でのカップリング定数(複数可)およびプロトン数。質量分析結果は、質量電荷比として報告され、続いて、各イオンの相対存在量(括弧内はエレクトロスプレーイオン化(ESI)質量分析をAgilent1100シリーズLC/MSDエレクトロスプレー質量分析計で行った。すべての化合物は、アセトニトリル:0.1%ギ酸を含む水を送達溶媒として使用するポジティブESIモードで分析され得る。逆相分析用HPLCは、固定相としてAgilent Eclipse XDB−C18 5μmカラム(4.6×150mm)上のAgilent1200シリーズを使用して実行し、アセトニトリル:0.1%TPAを含むHOで溶離して実行した。逆相半分取HPLCは、固定相としてPhenomeriex Gemini(商標)10μm C18カラム(250×21.20mm)上のAgilent1100シリーズを使用して実行し、アセトニトリル:0.1%TFAを含むHOで溶離して実行した。
【0108】
【化10】
【0109】
2−クロロ−キノリン−3−カルバルデヒド(1当量)、アリールボロン酸(1.1当量)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(5mol%)および炭酸ナトリウム(2M水溶液、5.0当量)のCHCN−水(3:1、0.1M)中の混合物を、N下、100℃で数時間加熱した。混合物をEtOAcとHOとに分配し、有機層を分離し、水層をEtOAcで抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、0%から25%勾配のヘキサン中EtOAcを使用するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、2−アリールキノリン−3−カルバルデヒドを得た。
【0110】
【化11】
【0111】
固体水素化ホウ素ナトリウム(1.5当量)を、2−アリールキノリン−3−カルバルデヒド(1当量)のTHF(0.5M)中溶液に0℃で添加し、混合物を0℃で2時間攪拌した。反応物を水の添加によってクエンチした。水層をEtOAc(3回)で抽出した。合わせた有機層をNaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。残留物を、50%のヘキサン中EtOAcを使用するシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、(2−アリールキノリン−3−イル)メタノールを得た。
【0112】
【化12】
【0113】
CHCl(0.25M)中の(2−アリールキノリン−3−イル)メタノール(1当量)をSOCl(5当量)によって室温で2時間処理した。溶媒を減圧下で除去し、残留物をEtOAcと飽和NaHCO水溶液とに分配した。有機層を分離し、水およびブラインで洗浄し、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。粗生成物を、0から100%勾配のヘキサン中EtOAcを使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、3−(クロロメチル)−2−アリールキノリンを得た。
【0114】
【化13】
【0115】
3−(クロロメチル)−2−アリールキノリン(1当量)のDMSO(0.25M)中溶液に、NaN(3当量)を室温で添加し、混合物を室温で4時間攪拌した。混合物を水で希釈し、EtOAc(2回)で抽出し、合わせた有機層を水(2回)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。残留物をMeOHに溶解し、10%Pd−C(5wt%)で処理し、その後、混合物を、Hバルーン下、終夜攪拌した。混合物をセライトパッドに通してろ過し、続いて溶媒を除去し、(2−アリールキノリン−3−イル)メタンアミンを得た。
【0116】
【化14】
【0117】
3−(クロロメチル)−2−アリールキノリン(1当量)の16mLのDMF中攪拌溶液に、NaN(2当量)を室温で添加した。混合物を室温で1時間攪拌した。混合物をEtOAcとHOとに分配した。有機層をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、3−(アジドメチル)−2−アリールキノリンを得た。粗生成物を精製することなく次のステップに用いた。3−(アジドメチル)−2−アリールキノリンのTHF−HO(4:1、0.21M)中攪拌溶液に、PMe(THF中1.0M溶液、1.2当量)を室温で滴下添加し、混合物を室温で1時間攪拌した。混合物にEtOAcを添加し、混合物を1N HCl(2回)で抽出した。合わせた抽出物を固体重炭酸ナトリウムで中和し、EtOAc(2回)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、暗色のシロップを得た。粗生成物を、0から100%勾配のCHCl:MeOH:CHCl中NHOH(89:9:1)を溶離液として使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、(2−アリールキノリン−3−イル)メタンアミンを得た。
【0118】
【化15】
【0119】
2−アリールキノリン−3−カルバルデヒド(1当量)、DCE(0.2M)およびPMBNH(1.5当量)の混合物を室温で攪拌した。1時間後、混合物にNaBH(OAc)(3当量)を添加し、混合物を50℃で2時間攪拌した。混合物に飽和NaHCO水溶液を添加し、混合物を15分間攪拌した。有機層を分離し、水層をCHCl(2回)で抽出した。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮した。残留物を、0から100%勾配のヘキサン中EtOAcを使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、N−(4−メトキシベンジル)(2−アリールキノリン−3−イル)メタンアミンを得た。
【0120】
【化16】
【0121】
N−(4−メトキシベンジル)(2−アリールキノリン−3−イル)メタンアミン(1当量)および硝酸セリウム(iv)アンモニウム(3.5当量)のCHCN−HO(2:1、0.22M)中の混合物を室温で24時間攪拌した。混合物に0.5M HCl(12当量)を添加し、混合物をCHCl(3回)で洗浄し、生成された4−メトキシベンズアルデヒドを除去した。その後、有機画分を0.5M HCl(2回)で抽出した。合わせた酸性の水層を2N HaOHでpH9.0に塩基性化した。得られた沈殿物をろ過によって収集した。粗生成物を、0から100%勾配のCHCl:MeOH:CHCl中NHOH(89:9:1)を溶離液として使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、(2−アリールキノリン−3−イル)メタンアミンを得た。
【0122】
【化17】
【0123】
2−フェニルキノリン−3−カルバルデヒド(1.0当量)の0℃のTHF(0.28M)中の混合物にグリニャール試薬(3M、2当量)の溶液を滴下添加し、反応物を終夜攪拌した後、NHCl飽和溶液でクエンチした。混合物をEtOAc(2×10mL)で抽出し、合わせた有機層を乾燥させ(NaSO)、減圧濃縮した。残留物を、シリカゲル(溶離液:EtOAc/ヘキサン、1/1)上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、1−(2−フェニルキノリン−3−イル)アルコールを得た。
【実施例】
【0124】
実施例1:5−クロロ−N4−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0125】
【化18】
【0126】
(2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メタンアミン(0.050g、0.18mmol)および4,5−ジクロロ−2−アミノピリミジン(0.029g、0.18mmol、1当量)の混合物を、1−ペンタノール(0.9mL)中、80℃で4日間攪拌した。精製後、5−クロロ−N4−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)ピリミジン−2,4−ジアミン[PI3Kδ IC50=165nM]が白色固体として得られた。1H NMR(400MHz,DMSO−d)δ ppm 8.18(1H,s)、7.86(1H,d,J=7.8Hz)、7.72(1H,s)、7.45−7.64(7H,m)、7.28(1H,t,J=5.9Hz)、6.02(2H,s)、4.46(2H,d,J=18.8Hz)、2.65(3H,s)質量スペクトル(ESI)m/e=410.0および412.1(M+1)
【0127】
実施例2:N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)−メチル)ピリミジン−4,6−ジアミンの調製
【0128】
【化19】
【0129】
エタノール(1mL)中の、8−クロロ−3−(クロロメチル)−2−(2−クロロフェニル)キノリン(0.035g、0.11mmol)、4,6−ジアミノピリミジン塩酸塩(0.032g、0.22mmol、2当量)およびDIEA(0.55mL、2.2mmol、20当量)を使用し、手順Hによって調製した。N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)ピリミジン−4,6−ジアミン[PI3Kδ IC50=6868nM]が、精製後、白色固体として得られた。1H NMR(400MHz,DMSO−d)δ ppm 8.32(1H,s)、8.05(1H,dd,J=8.4,1.0Hz)、7.95(1H,dd,J=7.4,1.2Hz)、7.84(1H,s)、7.51−7.67(5H,m)、7.24(1H,s)、6.19(2H,s)、5.32(1H,s)、4.33(1H,s)質量スペクトル(ESI)m/e=396.1および398.0(M+1)
【0130】
実施例3および4:N4−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2,4−ジアミンおよびN2−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2,4−ジアミンの調製
【0131】
【化20】
【0132】
(2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メタンアミン(81.1mg、0.261mmol)、2,4−ジクロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン(51.6mg、0.261mmol)およびDIEA(0.09mL、0.52mmol、2当量)の1−ペンタノール(1.3mL)中の混合物を、80℃で30分間攪拌した。混合物を圧力容器に移し、アンモニアガスを混合物に通して室温で15分間発泡させた。混合物を100℃で14時間攪拌した。混合物を減圧濃縮した。粗生成物を、14分間にわたる0から100%勾配のヘキサン中EtOAcを溶離液として使用する40gのRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、N4−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2,4−ジアミン[PI3Kδ IC50=127nM]を淡黄色固体(実施例3)として得て、N2−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチル)−5−(トリフルオロメチル)ピリミジン−2,4−ジアミン[PI3Kδ IC50=2825nM](実施例4)を淡黄色固体として得た。実施例3:H NMR(DMSO−d)δ ppm 8.12(1H,s)、8.01(1H,d,J=0.8Hz)、7.82(1H,d,J=8.2Hz)、7.43−7.65(6H,m)、7.17(1H,t,J=5.7Hz)、6.57(2H,br.s.)、4.51(2H,t,J=5.9Hz)、2.65(3H,s);質量スペクトル(ESI)m/e=444.1(M+1)。実施例4:H NMR(DMSO−d)δ ppm 8.17−8.28(1H,m)、8.00(1H,s)、7.85(1H,d,J=7.8Hz)、7.23−7.72(7H,m)、6.68(2H,s)、4.39(2H,s)、2.65(3H,s);質量スペクトル(ESI)m/e=444.1(M+1)。
【0133】
実施例5:6−クロロ−N−((8−クロロ−2−フェニルキノリン−3−イル)メチル)−5−メトキシピリミジン−4−アミン
【0134】
【化21】
【0135】
(8−クロロ−2−フェニルキノリン−3−イル)メタンアミン(0.035g、0.13mmol)のn−ブタノール(3mL)中の混合物を、DIEA(0.046mL、0.26mmol、2.0当量)で処理し、続いて4,6−ジクロロ−5−メトキシピリミジン(0.025g、0.14mmol、1当量)によって100℃で8時間処理した。反応混合物を濃縮し、0から100%勾配のCHCl:MeOH:CHCl中NHOH(89:9:1)を溶離液として使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、6−クロロ−N−((8−クロロ−2−フェニルキノリン−3−イル)メチル)−5−メトキシピリミジン−4−アミンを白色固体として得た。H−NMR(DMSO−d)δ ppm 8.33(s,1H)、8.20(t,1H)、8.02−8.04(m,1H)、7.99(s,1H)、7.93−7.95(m,1H)、7.70(d,J=6.60,1H)、7.46−7.61(m,1H)、4.73(d,J=5.71,2H)、2.51(s,3H)、質量スペクトル(ESI)m/e=412(M+1)。
【0136】
実施例6:5−クロロ−N4−((S)−1−(8−クロロ−2−(ピリジン−2−イル)キノリン−3−イル)エチル)ピリミジン−2,4−ジアミン
【0137】
【化22】
【0138】
(1S)−1−(8−クロロ−2−(ピリジン−2−イル)キノリン−3−イル)エタンアミン(0.090g、0.32mmol)のn−ブタノール(3mL)中の混合物をDIEA(0.11mL、0.64mmol、2.0当量)で処理し、続いて4,5−ジクロロピリミジン−2−アミン(0.062g、0.38mmol、1.2当量)によって100℃で8時間処理した。反応混合物を濃縮し、0から100%勾配のCHCl:MeOH:CHCl中NHOH(89:9:1)を溶離液として使用するRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、5−クロロ−N4−((S)−1−(8−クロロ−2−(ピリジン−2−イル)キノリン−3−イル)エチル)ピリミジン−2,4−ジアミン[PI3Kδ IC50=105nM]を白色固体として得た。H−NMR(DMSO−d)δ ppm 8.65−8.76(m,1H)、8.53(s,1H)、8.11−8.20(m,1H)、8.07(d,J=1.96Hz,1H)、7.91−8.00(m,2H)、7.86(s,1H)、7.62(t,J=8.02Hz,1H)、7.51−7.58(m,1H)、6.03−6.25(m,1H)、1.38−1.63(d,J=7.04,3H)、質量スペクトル(ESI)m/e=412(M+1)。
【0139】
実施例7
【0140】
【化23】
【0141】
CHCl(140ml)中の1−(2−クロロフェニル)エタノン(11.9g、76.97mmol)にピリジニウムトリブロミド(29.5g、92.4mmol)を添加した。混合物を室温で4時間攪拌した。混合物をCHClとHOとに分配した。合わせた有機層を乾燥させ、濃縮し、3:7 CHCl−ヘキサンを使用するシリカゲル上での残留物のフラッシュクロマトグラフィーにより、2−ブロモ−1−(2−クロロフェニル)エタノンを得た。H−NMR(CDCl)δ 7.58(d,J=7.4Hz,1H)、7.43−7.52(m,2H)、7.40−7.36(m,1H)、4.53(s,2H)。質量スペクトル(ESI)m/e=234.9(M+1)。
【0142】
【化24】
【0143】
EtOH(60ml)中のピリジン(2.1ml、26mmol)に、EtOH(40ml)中の2−ブロモ−1−(2−クロロフェニル)エタノン(6.1g、26mmol)を10分間かけて滴下添加した。得られた混合物を60−70℃で1時間加熱し、室温まで冷却した。混合物に、ピリジン(1.25ml)、2−アミノ−3−クロロベンズアルデヒド(3.72g、24.0mmol)およびDMAP(0.05g、触媒)を添加した。混合物を48時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却し、ピロリジン(4.60ml、55.0mmol)を添加した。終夜加熱還流後、得られた混合物を濃縮した。残留物を飽和NaHCO水溶液とCHClとに分配した。合わせた有機層を乾燥させ、濃縮した。3:7 EtOAc−ヘキサンを使用するシリカゲル上での残留物のフラッシュクロマトグラフィーにより、8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)−キノリン−3−アミンを得た。H−NMR(DMSO−d)δ 7.67(d,J=8.0Hz,1H)、7.63(d,J=8.0Hz,1H)、7.50−7.57(m,3H)、7.46(d,J=8.0Hz,1H)、7.42(s,1H)、7.39(t,J=8.0Hz,1H)、5.32(br,2H)。質量スペクトル(ESI)m/e=289.0(M+1)。
【0144】
【化25】
【0145】
8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−アミン(3.5g、12mmol)をアセトニトリル(49.0ml)および酢酸(3ml)に室温で溶解し、HCl(濃縮、3ml、85mmol)を添加し、クリーム状混合物を得た。0℃で、亜硝酸ナトリウム(1.0g、15mmol)の2.0mLの水中溶液を1分間かけて滴下添加した。温度は、添加中に5℃まで上昇した。攪拌を30分間続けた。SO(16g、254mmol)の酢酸(30ml、520mmol)中飽和溶液を反応混合物中に注いだ。その後、塩化銅(II)二水和物(1.0g、6mmol)の1.25mlの水中溶液を添加した。2.5時間攪拌後、混合物中に形成された固体をろ過し、6mLのアセトニトリル、6mLの水および6mLのアセトニトリルですすいだ。固体を乾燥させ、8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−スルホニルクロリドを得た。H−NMR(DMSO−d)δ 8.88(s,1H)、8.15(d,J=7.9Hz,1H)、7.97(d,J=7.3Hz,1H)、7.64(t,J=7.9Hz,1H)、7.48(d,J=7.9Hz,1H)、7.45(d,J=7.3Hz,1H)、7.40(t,J=7.3Hz,1H)、7.33(t,J=7.3Hz,1H)。質量スペクトル(ESI)m/e=372.0(M+1)。
【0146】
【化26】
【0147】
密閉フラスコ中の、8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−スルホニルクロリド(2.3g、6.2mmol)、水酸化アンモニウム(50ml)およびアセトニトリル(50ml)の混合物を攪拌し、100℃で終夜加熱した。溶媒を蒸発させ、固体をろ過し、水ですすいだ。固体を乾燥させ、純粋な生成物8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−スルホンアミドとして収集した。H−NMR(DMSO−d)δ 9.11(s,1H)、8.27(d,J=8.2Hz,1H)、8.15(d,J=7.4Hz,1H)、7.78(t,J=8.0Hz,1H)、7.62(s,2H)、7.40−7.59(m,4H)。質量スペクトル(ESI)m/e=352.9(M+1)。
【0148】
【化27】
【0149】
フラスコに、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加物(53.2mg、51.4μmol)、炭酸セシウム(402mg、1.23mmol)、4−ブロモ−ピコリンアミド(103.4mg、0.514mmol)、8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−スルホンアミド(200mg、0.566mmol)、tBuXPhos(37.0mg、77.2μmol)を投入し、Nで満たした。その後、トルエン(15.0ml)を添加し、Nを混合物に通して10分間発泡させた。混合物を100℃で16時間加熱した。混合物を室温まで冷却し、溶媒を蒸発させ、CHCl−MeOH(1:1、25mL)で希釈し、Celite(商標)のパッドに通してろ過した。混合物を濃縮し、残留物をMeOHで希釈した。溶液を、HPLC、35分で20%−70%のBによって精製した。収集された画分を濃縮し、NaHCO水溶液を添加することによって中和した。ろ過および水でのすすぎにより、4−(8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−スルホンアミド)ピコリンアミドを得た。H−NMR(MeOD)δ 9.33(s,1H)、8.21(d,J=8.0Hz,1H)、8.09(d,J=7.8Hz,1H)、7.74(t,J=7.8Hz,1H)、7.61(s,1H)、7.36−7.50(m,6H)、7.08(d,J=8.0Hz,1H)。質量スペクトル(ESI)m/e=472.9(M+1)。
【0150】
実施例8
【0151】
【化28】
【0152】
フラスコに、A−1216 US PSP、手順Dから得られた2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メタンアミン(100.0mg、0.354mmol)、4−ブロモピコリンアミド(92mg、0.460mmol)、ジイソプロピルエチルアミン(0.080ml、0.460mmol)および1−ブタノール(2.0ml)を投入し、密閉した。混合物に、180℃で4時間マイクロ波を受けさせた。室温まで冷却後、混合物を濃縮し、残留物をMeOHで希釈した。溶液を、HPLC、35分で25%−45%のBによって精製した。収集した画分を濃縮し、CHClに溶解し、NaHCO水溶液で洗浄することによって中和した。CHCl層を乾燥させ、濃縮し、4−((2−(2−クロロフェニル)−8−メチルキノリン−3−イル)メチルアミノ)ピコリンアミドを得た。H−NMR(MeOD)δ 8.21(s,1H)、8.01(d,J=5.6Hz,1H)、7.71(d,J=8.0Hz,1H)、7.41−7.62(m,6H)、7.20(d,J=2.4Hz,1H)、6.50(dd,J=5.6,2.4Hz,1H)4.42(d,J=11.0Hz,1H)、4.27(d,J=11.0Hz,1H)、2.73(s,1H)。質量スペクトル(ESI)m/e=403.1(M+1)。
【0153】
実施例9:N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミンの調製
2−クロロ−N−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−4−アミン
【0154】
【化29】
【0155】
2,4−ジクロロ−5−フルオロピリミジン(0.06548g、0.3922mmol)、8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メタンアミン(0.1189g、0.3922mmol)およびn,n−ジイソプロピルエチルアミン(0.1366ml、0.7843mmol)の2mlの1−ペンタノール中の混合物を、80℃で攪拌した。80℃で2時間後、混合物を室温まで冷却し、減圧濃縮し、黄色シロップを得た。粗混合物を、14分間にわたる0−100%勾配のヘキサン中EtOAcを溶離液として使用する40gのRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、回収された反応物質、2−クロロ−N−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−4−アミンをオフホワイトの固体として得た。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ ppm 8.58(1H,br.s.)、8.48(1H,s)、8.03−8.12(2H,m)、7.97(1H,dd,J=7.3,1.0Hz)、7.64(1H,t,J=7.8Hz)、7.56(1H,dd,J=7.6,1.5Hz)、7.40−7.51(3H,m)、4.46−4.64(2H,m);LC−MS(ESI)m/z 433.0および435.0[M+H]
【0156】
N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミン
【0157】
【化30】
【0158】
シュレンク管に、2−クロロ−N−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)−キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−4−アミン(0.1027g、0.2368mmol)、ベンゾフェノンイミン(0.04751ml、0.2842mmol)、トリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウム(0)(0.05421g、0.05920mmol)、rac−2,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1−ビナフチル(0.1106g、0.1776mmol)、ナトリウムtert−ブトキシド(0.03186g、0.3315mmol)および2mlのトルエンを投入し、混合物をアルゴンでパージし、80℃で攪拌した。19.5時間後、混合物を室温まで冷却し、EtO(40ml)で希釈し、ろ過し、EtO(40ml)ですすぎ、減圧濃縮し、N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−N2−(ジフェニルメチレン)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミンを橙色シロップ:LC−MS m/z 578.0および580.1[M+H]として得た。この橙色シロップを精製することなくそのまま次のステップに用いた。
【0159】
N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−N2−(ジフェニルメチレン)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミン(0.1370g、0.237mmol)の室温の6mlのMeOH中溶液に、無水酢酸ナトリウム(0.0661g、0.805mmol)を添加し、続いてヒドロキシルアミン塩酸塩(0.0461g、0.663mmol)を添加し、混合物を室温で15時間攪拌した。その後、混合物を加熱還流した。70℃で6時間後、混合物を減圧濃縮した。粗残留物を、14分間にわたる0−100%勾配のヘキサン中EtOAcを溶離液として使用し、その後、10分間100%アイソクラチックのEtOAcを溶離液として使用する40gのRedi−Sep(商標)カラム上でのカラムクロマトグラフィーによって精製し、N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミンを黄色シロップとして得て、この黄色シロップを、28分間にわたる10−90%勾配の水(0.1%のTFA)中CHCN(0.1%のTFA)を溶離液として使用するGemini(商標)10μC18カラム(250×21.2mm、10μm)上での半分取HPLCによって精製し、所望の生成物をTFA塩として得た。TFA塩としての精製された生成物を、飽和NaHCO(20ml)で処理し、CHCl(30ml×2)で抽出した。合わせた有機層をHO(30ml×2)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、ろ過し、減圧濃縮し、N4−((8−クロロ−2−(2−クロロフェニル)キノリン−3−イル)メチル)−5−フルオロピリミジン−2,4−ジアミンを淡黄色フィルムとして得た。H NMR(400MHz,DMSO−d)δ ppm 8.38(1H,s)、8.07(1H,dd,J=8.4,1.2Hz)、7.95(1H,dd,J=7.5,1.3Hz)、7.48−7.67(7H,m)、5.76(2H,br.s.)、4.42(2H,d,J=19.4Hz);LC−MS(ESI)m/z 414.0および416.0[M+H]
【0160】
生物学的アッセイ
PI3Kの組換え発現
ポリHis標識でN末端標識したPI3kα、βおよびδの完全長p110サブユニットを、sf9昆虫細胞中、バキュロウイルス発現ベクターを有するp85と共発現させた。P110/p85ヘテロ二量体を、順次Ni−NTA、Q−HP、Superdex−100クロマトグラフィーによって精製した。精製されたα、βおよびδアイソザイムを、20mMトリス、pH8、0.2M NaCl、50%グリセロール、5mM DTT、2mMコール酸Na中、−20℃で保存した。ポリHis標識でN末端標識した切断されたPI3Kγ、残基114−1102を、Hi5昆虫細胞中、バキュロウイルスとともに発現させた。γアイソザイムを、順次Ni−NTA、Superdex−200、Q−HPクロマトグラフィーによって精製した。このγアイソザイムを、NaHPO、pH8、0.2M NaCl、1%エチレングリコール、2mM β−メルカプトエタノール中、−80℃で冷凍保存した。
【0161】
【表1】
【0162】
インビトロ酵素アッセイ
アッセイは、白色ポリプロプリエンプレート(Costar3355)中の上記最終濃度を有する25μLの成分中で実施した。ホスパチジルイノシトールホスホアクセプター、PtdIns(4,5)P2 P4508は、Echelon Biosciences製のものであった。アルファおよびガンマアイソザイムのATPアーゼ活性は、これらの条件下ではPtdIns(4,5)P2によってあまり刺激されなかったため、これらのアイソザイムのアッセイから省略した。試験化合物をジメチルスルホキシドに溶解し、3倍連続希釈で希釈した。DMSO(1μL)中の化合物を試験ウェルごとに添加し、化合物を含有しない反応物に対する阻害を酵素ありおよび酵素なしで測定した。室温でのアッセイインキュベーション後、反応を停止させ、残留ATPを、製造業者の取扱説明書による等体積の市販のATP生物発光キット(Perkin Elmer EasyLite)の添加によって測定し、AnalystGT照度計を使用して検出した。
【0163】
【表2】
【0164】
抗IgMによるヒトB細胞増殖刺激
ヒトB細胞を単離する
Leukopacからまたはヒト新鮮血からPBMCを単離する。MiltenyiプロトコールおよびB細胞単離キットIIを使用してヒトB細胞を単離する。ヒトB細胞は、AutoMacsカラムを使用して精製した。
【0165】
ヒトB細胞の活性化
96ウェル平底プレートを使用し、50000/ウェルの精製されたB細胞をB細胞増殖培地(DMEM+5%FCS、10mMのHepes、50μMの2−メルカプトエタノール)中に平板培養する;150μLの培地に250ng/mLのCD40L−LZ組換えタンパク(Amgen)および2μg/mLの抗ヒトIgM抗体(Jackson ImmunoReseach Lab.#109−006−129)を含有させ、PI3K阻害剤を含有する50μLのB細胞培地と混合し、37℃のインキュベーターで72時間インキュベートする。72時間後、B細胞を0.5−1uCi/ウェルのHチミジンで終夜約18時間パルス標識し、TOMハーベスターを使用して細胞を収穫する。
【0166】
IL−4によるヒトB細胞増殖刺激
ヒトB細胞を単離する
Leukopacからまたはヒト新鮮血からヒトPBMCを単離する。Miltenyiプロトコール−B細胞単離キットを使用してヒトB細胞を単離する。ヒトB細胞は、AutoMacsカラムを使用して精製した。
【0167】
ヒトB細胞の活性化
96ウェル平底プレートを使用し、50000/ウェルの精製されたB細胞をB細胞増殖培地(DMEM+5%FCS、50μMの2−メルカプトエタノール、10mMのHepes)中に平板培養する。培地(150μL)に250ng/mLのCD40L−LZ組換えタンパク質(Amgen)および10ng/mLのIL−4(R&D system #204−IL−025)を含有させ、化合物を含有する50 150μLのB細胞培地と混合し、37℃のインキュベーターで72時間インキュベートする。72時間後、B細胞を0.5−1uCi/ウェルの3Hチミジンで終夜約18時間パルス標識し、TOMハーベスターを使用して細胞を収穫する。
【0168】
特異的なT抗原(破傷風トキソイド)によって誘発されたヒトPBMC増殖アッセイ
ヒトPBMCは冷凍ストックから調製するまたはヒトPBMCはフィコール勾配を使用して新鮮ヒト血から精製する。96ウェル丸底プレートを使用し、培養培地(RPMI1640+10%FCS、50uMの2−メルカプトエタノール、10mMのHepes)を用いて2×10PBMC/ウェルで平板培養する。IC50測定のために、PI3K阻害剤を、10μMから0.001μMまで、半対数単位(half log increments)でおよび3通りに試験した。破傷風トキソイド、T細胞特異的抗原(University of Massachusetts Lab)を1μg/mLで添加し、37℃のインキュベーターで6日間インキュベートした。上清をIL2 ELISAアッセイのために6日後に収集し、その後、細胞にH−チミジンを約18時間パルスして増殖を計測した。
【0169】
クラスIaおよびクラスIII PI3Kの阻害を検出するためのGFPアッセイ
AKT1(PKBa)を、マイトジェン因子(IGF−1、PDGF、インスリン、トロンビン、NGF等)によって活性化されたクラスIa PI3Kによって調節する。マイトジェン刺激に応答して、AKT1はサイトゾルから原形質膜に転座する。
【0170】
フォークヘッド(FKHRL1)はAKT1用の基質である。この基質は、AKTによってリン酸化(生存/増殖)されると細胞質になる。AKTの阻害(静止/アポトーシス)−核へのフォークヘッド転座
FYVEドメインはPI(3)Pに結合する。大多数はPI3KクラスIIIの構造的作用によって生成される。
【0171】
AKT膜ラッフリングアッセイ(CHO−IR−AKT1−EGFP細胞/GE Healthcare)
細胞をアッセイ緩衝液で洗浄する。アッセイ緩衝液中の化合物で1時間処理する。10ng/mLのインスリンを添加する。室温で10分後に固定し、撮像する。
【0172】
フォークヘッド転座アッセイ(MDA MB468フォークヘッド−DiversaGFP細胞)
細胞を増殖培地中の化合物で1時間処理する。固定および撮像する。
【0173】
クラスIII PI(3)Pアッセイ(U2OS EGFP−2XFYVE細胞/GE Healthcare)
細胞をアッセイ緩衝液で洗浄する。アッセイ緩衝液中の化合物で1時間処理する。固定および撮像する。
【0174】
3つすべてのアッセイ用の対照は10uMのワートマニンである。
AKTは細胞質である。
フォークヘッドは核である。
PI(3)Pをエンドソームから枯渇させる。
【0175】
バイオマーカーアッセイ:CD69またはB7.2(CD86)発現のB細胞受容体刺激
ヘパリン化されたヒト全血を10μg/mLの抗IgD(Southern Biotech、#9030−01)によって刺激した。90μLの刺激された血液を、その後、96ウェルプレートのウェルごとにアリコートし、IMDM+10%FBS(Gibco)中で希釈した10μLの種々の濃度のブロッキング化合物(10−0.0003μM)で処理した。試料を一緒に37℃で4時間(CD69発現の場合)から6時間(B7.2発現の場合)インキュベートした。処理された血液(50μL)を、各10μLのCD45−PerCP(BD Biosciences、#347464)、CD19−FITC(BD Biosciences、#340719)およびCD69−PE(BD Biosciences、#341652)で抗体染色するために、96ウェルディープウェルプレート(Nunc)に移した。第2の50μLの処理された血液を、各10μLのCD19−FITC(BD Biosciences、#340719)およびCD86−PeCy5(BD Biosciences、#555666)で抗体染色するために、第2の96ウェルディープウェルプレートに移した。すべての染色は、暗所、室温で15−30分間実施した。その後、血液を溶解させ、450μLのFACS溶解溶液(BD Biosciences、#349202)を使用して室温で15分間固定させた。その後、試料をPBS+2%FBS中で2回洗浄した後、FACS分析した。試料は、CD69染色のためにCD45/CD19二重陽性細胞にゲートをかけまたはCD86染色のためにCD19陽性細胞にゲートをかけた。
【0176】
ガンマカウンタースクリーニング:ホスホAKT発現のためのヒト単球の刺激
ヒト単球細胞株THP−1を、RPMI+10%FBS(Gibco)中に維持した。刺激の1日前に、細胞を、血球計上でトリパンブルー排除を使用してカウントし、培地1mL当たり1×10細胞の濃度で懸濁させた。その後、100μlの細胞プラス培地(1×10細胞)を4枚の96ウェルディープウェルシャーレ(Nunc)のウェルごとにアリコートし、8種の異なる化合物を試験した。細胞を終夜静止させた後、種々の濃度(10−0.0003μM)のブロッキング化合物で処理した。培地(12μL)中で希釈した化合物を37℃で10分間、細胞に添加した。ヒトMCP−1(12μL、R&D Diagnostics、#279−MC)を培地中で希釈し、50ng/mLの最終濃度で各ウェルに添加した。刺激は、室温で2分間継続した。予め加温したFACS Phosflow溶解/固定緩衝液(37℃のもの1mL)(BD Biosciences、#558049)を各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃でさらに10−15分間インキュベートした。プレートを1500rpmで10分間回転させ、上清を吸引除去し、1mLの氷冷90%MEOHを激しく振とうしながら各ウェルに添加した。次いで、プレートを−70℃で終夜または氷上で30分間インキュベートした後、抗体染色した。プレートを回転させ、PBS+2%FBS(Gibco)中で2回洗浄した。洗浄液を吸引し、細胞を残った緩衝液に懸濁させた。1:100のウサギpAKT(50μL、Cell Signaling、#4058L)を、室温で1時間振とうしながら各試料に添加した。細胞を洗浄し、1500rpmで10分間回転させた。上清を吸引し、細胞を残った緩衝液に懸濁させた。二次抗体である1:500のヤギ抗ウサギAlexa647(50μL、Invitrogen、#A21245)を、室温で30分間振とうしながら添加した。その後、細胞を緩衝液中で1回洗浄し、FACS分析のために150μLの緩衝液に懸濁させた。細胞は、フローサイトメーターを操作する前に、ピペッティングによって非常によく分散される必要がある。細胞をLSRII(Becton Dickinson)上で操作し、前方および側方散乱にゲートをかけ、単球集団におけるpAKTの発現レベルを測定した。
【0177】
ガンマカウンタースクリーニング:マウス骨髄におけるホスホAKT発現のための単球の刺激
マウス大腿骨を5匹の雌BALB/cマウス(Charles River Labs.)から切開し、RPMI+10%FBS培地(Gibco)中に収集した。マウス骨髄は、大腿骨の端部を切断することおよび25ゲージ針を使用して1mLの培地で洗い流すことによって除去した。その後、骨髄を、21ゲージ針を使用して培地中に分散させた。培地体積を20mLまで増大させ、細胞を、血球計上でトリパンブルー排除を使用してカウントした。その後、細胞懸濁液を培地1mL当たり7.5×10細胞まで増大させ、100μL(7.5×10細胞)を4枚の96ウェルディープウェルシャーレ(Nunc)中にウェルごとにアリコートし、8種の異なる化合物を試験した。細胞を37℃で2時間静止させた後、種々の濃度(10−0.0003μM)のブロッキング化合物で処理した。培地(12μL)中で希釈した化合物を37℃で10分間、骨髄細胞に添加した。マウスMCP−1(12μL、R&D Diagnostics、#479−JE)を培地中で希釈し、50ng/mLの最終濃度で各ウェルに添加した。刺激は、室温で2分間継続した。37℃の予め加温したFACS Phosflow溶解/固定緩衝液(BD Biosciences、#558049)1mLを各ウェルに添加した。その後、プレートを37℃でさらに10−15分間インキュベートした。プレートを1500rpmで10分間回転させた。上清を吸引除去し、1mLの氷冷90%MEOHを激しく振とうしながら各ウェルに添加した。次いで、プレートを−70℃で終夜または氷上で30分間インキュベートした後、抗体染色した。プレートを回転させ、PBS+2%FBS(Gibco)中で2回洗浄した。洗浄液を吸引し、細胞を残った緩衝液に懸濁させた。その後、Fcブロック(2μL、BD Pharmingen、#553140)を室温で10分間ウェルごとに添加した。ブロック後、緩衝液中で希釈した50μLの一次抗体;1:50のCD11b−Alexa488(BD Biosciences、#557672)、1:50のCD64−PE(BD Biosciences、#558455)および1:100のウサギpAKT(Cell Signaling、#4058L)を、室温で1時間振とうしながら各試料に添加した。洗浄緩衝液を細胞に添加し、1500rpmで10分間回転させた。上清を吸引し、細胞を残った緩衝液に懸濁させた。二次抗体である1:500のヤギ抗ウサギAlexa647(50μL、Invitrogen、#A21245)を、室温で30分間振とうしながら添加した。その後、細胞を緩衝液中で1回洗浄し、FACS分析のために100μLの緩衝液に懸濁させた。細胞をLSRII(Becton Dickinson)上で操作し、CD11b/CD64二重陽性細胞にゲートをかけ、単球集団におけるpAKTの発現レベルを測定した。
【0178】
pAKTインビボアッセイ
ビヒクルおよび化合物を、強制飼養(Oral Gavage Needles Popper&Sons、New Hyde Park、NY)によってマウス(トランスジェニック系統3751、雌、10−12週齢、Amgen Inc、Thousand Oaks、CA)に、抗IgM FITC(50ug/マウス)(Jackson Immuno Research、West Grove、PA)の点滴注射(0.2mls)の15分前に経口投与(0.2mL)する。45分後、マウスをCOチャンバー内で屠殺する。血液を心臓穿刺(0.3mL)(1cc、25gシリンジ、Sherwood、St.Louis、MO)によって抜き出し、15mL円錐バイアル(Nalge/Nunc International、Denmark)に移す。血液を6.0mLのBD Phosflow溶解/固定緩衝液(BD Bioscience、San Jose、CA)によって直ちに固定し、3回反転させ、37℃の水浴に入れる。脾臓の半分を除去し、0.5mLのPBS(Invitrogen Corp、Grand Island、NY)を含有するエッペンドルフ管に移す。脾臓を、組織グラインダー(Pellet Pestle、Kimble/Kontes、Vineland、NJ)を使用して破砕し、6.0mLのBD Phosflow溶解/固定緩衝液によって直ちに固定し、3回反転させ、37℃の水浴に入れる。組織が収集されたら、マウスを頸椎脱臼させ、死体を処分する。15分後、15mL円錐バイアルを37℃の水浴から除去し、組織がさらに処理されるまで氷上に置く。破砕された脾臓を70μm細胞ろ過器(BD Bioscience、Bedford、MA)に通して別の15mL円錐バイアル中にろ過し、9mLのPBSで洗浄する。脾臓細胞および血液を2,000rpmで10分間回転(冷却)させ、緩衝液を吸引する。細胞を2.0mLの冷(−20℃)90%メチルアルコール(Mallinckrodt Chemicals、Phillipsburg、NJ)に再懸濁させる。円錐バイアルを急速にボルテックスしながら、メタノールをゆっくり添加する。その後、組織を、FACS分析のために細胞が染色できるまで、−20℃で保存する。
【0179】
複数回投与TNP免疫化
血液は、免疫化前0日目、眼窩後出血によって7−8週齢のBALB/c雌マウス(Charles River Labs.)から収集した。血液を30分間凝固させ、血清マイクロテナー管(Becton Dickinson)中、10,000rpmで10分間回転させた。血清を収集し、Matrix管(Matrix Tech.Corp.)中にアリコートし、ELISAが実施されるまで−70℃で保存した。マウスに、免疫化前および分子寿命に基づいてその後の期間、化合物を経口で与えた。マウスは、その後、50μgのTNP−LPS(Biosearch Tech.、#T−5065)、50μgのTNP−Ficoll(Biosearch Tech.、#F−1300)または100μgのTNP−KLH(Biosearch Tech.、#T−5060)プラスPBS中の1%ミョウバン(Brenntag、#3501)のいずれかによって免疫化した。TNP−KLHプラスミョウバン溶液は、免疫化の1時間前、10分ごとに3−5回、混合物をそっと反転させることによって調製した。最後の処置後5日目、マウスをCO屠殺し、心臓穿刺した。血液を30分間凝固させ、血清マイクロテナー管中、10,000rpmで10分間回転させた。血清を収集し、Matrix管中にアリコートし、さらなる分析が実施されるまで−70℃で保存した。その後、血清中のTNP特異的IgG1、IgG2a、IgG3およびIgMレベルをELISAによって計測した。TNP−BSA(Biosearch Tech.、#T−5050)を使用して、TNP特異的抗体を捕捉した。TNP−BSA(10μg/mL)を使用して、384ウェルELISAプレート(Corning Costar)を終夜コーティングした。その後、プレートを洗浄し、10%BSA ELISAブロック溶液(KPL)を使用して1時間ブロックした。ブロッキング後、ELISAプレートを洗浄し、血清試料/標準物質を連続的に希釈し、プレートに1時間結合させた。プレートを洗浄し、Ig−HRP共役二次抗体(ヤギ抗マウスIgG1、Southern Biotech #1070−05、ヤギ抗マウスIgG2a、Southern Biotech #1080−05、ヤギ抗マウスIgM、Southern Biotech #1020−05、ヤギ抗マウスIgG3、Southern Biotech #1100−05)を1:5000で希釈し、プレート上で1時間温置した。TMBペルオキシダーゼ溶液(KPL製SureBlue Reserve TMB)を使用して、抗体を可視化した。プレートを洗浄し、試料を、分析されたIgに応じて約5−20分、TMB溶液中で展開させた。反応を2M硫酸によって停止し、プレートを450nmのODで読み取った。
【0180】
関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患および自己免疫疾患等のPI3Kδによって媒介される疾患の治療のために、本発明の化合物は、従来の薬学的に許容できる担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する用量単位製剤で、経口的に、非経口的に、吸入噴霧によって、経直腸的にまたは局所的に投与され得る。非経口という用語は、本明細書において使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、注入技術または腹腔内を含む。
【0181】
本明細書における疾患および障害の治療は、例えば、関節リウマチ、強直性脊椎炎、変形性関節症、乾癬性関節炎、乾癬、炎症性疾患および自己免疫疾患等、予防的治療の必要があると考えられている対象(すなわち、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒト)への、本発明の化合物、その薬学的な塩またはいずれかの医薬組成物の予防的投与を含むことも意図されている。
【0182】
PI3Kδによって媒介される疾患、癌および/または高血糖を治療するための、本発明の化合物および/または本発明の組成物による投薬レジメンは、疾患の種類、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、状態の重症度、投与経路および用いられる特定の化合物を含む多様な要因に基づく。したがって、投薬レジメンは広く変動し得るが、標準的方法を使用して慣例的に決定できる。1日当たり体重1キログラムにつき約0.01mgから30mg、好ましくは約0.1mgから10mg/kg、より好ましくは約0.25mgから1mg/kg程度の用量レベルは、本明細書において開示されているすべての使用方法に有用である。
【0183】
本発明の薬学的に活性な化合物は、ヒトおよび他の哺乳動物を含む患者に投与するための薬剤を生成するための従来の調剤方法に従って加工できる。
【0184】
経口投与の場合、医薬組成物は、例えば、カプセル、錠剤、懸濁液または液体の形態であってよい。医薬組成物は、好ましくは、所定量の有効成分を含有する用量単位の形態で作製される。例えば、これらは、約1から2000mg、好ましくは約1から500mg、より好ましくは約5から150mgの量の有効成分を含有し得る。ヒトまたは他の哺乳動物のための適切な日用量は、患者の状態および他の要因に応じて広く変動し得るが、やはり常法を使用して決定できる。
【0185】
有効成分は、生理食塩水、ブドウ糖または水を含む適切な担体との組成物として、注射によって投与されてもよい。1日非経口投薬レジメンは、約0.1から約30mg/全体重kg、好ましくは約0.1から約10mg/kg、より好ましくは約0.25mgから1mg/kgである。
【0186】
無菌注射用の水性または油性懸濁剤等の注射用製剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用する既知の技術によって配合できる。無菌注射用製剤は、非毒性で非経口的に許容できる希釈剤または溶媒中の無菌注射用の溶液または懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中溶液等であってもよい。許容できるビヒクルおよび溶媒のうち、用いられ得るのは、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の固定油は、溶媒または懸濁化媒質として慣行的に用いられる。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油が用いられ得る。加えて、オレイン酸等の脂肪酸が注射液の調製における使用を見出している。
【0187】
薬物の直腸投与用の坐薬は、(常温では固体であるが、直腸温では液体であり、したがって、直腸内で融解し、薬物を放出する)ココアバターおよびポリエチレングリコール等の適切な非刺激性賦形剤と薬物を混合することによって調製できる。
【0188】
本発明の化合物の有効成分の適切な局所用量は、1日1回から4回、好ましくは1回または2回、0.1mgから150mg投与される。局所投与の場合、有効成分は、製剤の約0.001%から10%w/w、例えば約1%から2重量%を構成し得るが、有効成分は、製剤の最大10%w/w、ただし好ましくは5%w/w以下、より好ましくは0.1%から1%を構成してもよい。
【0189】
局所投与に適した製剤は、皮膚を介する浸透に適した液体または半液体製剤(例えば、リニメント、ローション、軟膏、クリームまたはペースト)および目、耳または鼻への投与に適した滴剤を含む。
【0190】
投与のために、本発明の化合物は、通常、指示された投与経路に適切な1種以上のアジュバントと組み合わせられる。化合物は、ラクトース、スクロース、デンプン粉末、アルカン酸のセルロースエステル、ステアリン酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウム塩およびカルシウム塩、アカシア、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリジンならびに/またはポリビニルアルコールと混和され得、従来の投与用に錠剤化またはカプセル化され得る。代替として、本発明の化合物は、生理食塩水、水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、トラガカントガムおよび/または種々の緩衝液に溶解され得る。その他のアジュバントおよび投与モードは、薬学技術分野においてよく知られている。担体または希釈剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を、単独でまたはロウもしくは当該技術分野においてよく知られている他の材料とともに含み得る。
【0191】
医薬組成物は、固体形態(顆粒、粉末または坐薬を含む)でまたは液体形態(例えば、溶液、懸濁液またはエマルション)で構築され得る。医薬組成物は、滅菌等の従来の製薬工程に付されてよいおよび/または保存料、安定剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝液等の従来のアジュバントを含有してよい。
【0192】
経口投与用の固体剤形は、カプセル、錠剤、丸薬、粉末および顆粒を含み得る。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトースまたはデンプン等の少なくとも1種の不活性希釈剤と混和され得る。そのような剤形は、通常の実務と同様に、不活性希釈剤以外の追加物質を含んでもよく、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の平滑剤を含んでもよい。カプセル、錠剤および丸薬の場合、剤形は緩衝剤を含んでもよい。錠剤および丸薬は、腸溶コーティングでさらに調製できる。
【0193】
経口投与用の液体剤形は、(水等の当該技術分野において一般に使用される不活性希釈剤を含有する)薬学的に許容できるエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含み得る。そのような組成物は、湿潤剤、甘味剤、香味剤および着香剤等のアジュバントを含んでもよい。
【0194】
本発明の化合物は、1個以上の不斉炭素原子を有することができ、したがって、光学異性体の形態でおよびそのラセミ混合物または非ラセミ混合物の形態で存在することができる。光学異性体は、従来の方法によるラセミ混合物の分解によって得られ、例えば、光学的に活性な酸または塩基での処理によるジアステレオ異性体塩の形成によって得られる。適切な酸の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸およびカンファースルホン酸であり、その後、結晶化によるジアステレオ異性体の混合物の分離、続いてこれらの塩からの光学的に活性な塩基の遊離が行われる。光学異性体の分離のための異なる方法は、鏡像異性体の分離を最大化するために最適に選定されたキラルクロマトグラフィーカラムの使用を含む。また別の利用可能な方法は、本発明の化合物を活性型の光学的に純粋な酸または光学的に純粋なイソシアン酸塩と反応させることによる、共有結合したジアステレオ異性体分子の合成を含む。合成されたジアステレオ異性体は、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化または昇華等の従来の手段によって分離でき、その後、加水分解されて鏡像異性的に純粋な化合物を送達することができる。本発明の光学活性化合物は、同様に、活性な出発原料を使用することによって得られる。これらの異性体は、遊離酸、遊離塩基、エステルまたは塩の形態であってよい。
【0195】
同様に、本発明の化合物は、異性体として存在し得る、すなわち、同じ分子式であるが、その中の原子が互いに対して異なって配置されている化合物として存在し得る。特に、本発明の化合物のアルキレン置換基は、通常および好ましくは、左から右へ読まれるこれらの基それぞれの定義において指示されているように、分子中に配置および挿入される。しかしながら、いくつかの場合において、当業者は、これらの置換基が分子中の他の原子に対して逆の配向にされている本発明の化合物を調製することが可能であると理解する。すなわち、挿入される置換基は、分子中に逆配向で挿入されることを除き、上述のものと同じであってよい。当業者は、本発明の化合物のこれらの異性体形態が、本発明の範囲内に包含されるものとして解釈されるべきであることを理解する。
【0196】
本発明の化合物は、無機酸または有機酸に由来する塩の形態で使用され得る。この塩は、以下のものを含むがこれらに限定されない:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳、樟脳スルホン酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホネート、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2−ナフタレンスルホネート、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、2−フェニルプロピオネート、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩およびウンデカン酸塩。また、塩基性窒素含有基は、塩化、臭化およびヨウ化メチル、塩化、臭化およびヨウ化エチル、塩化、臭化およびヨウ化プロピルならびに塩化、臭化およびヨウ化ブチル等のハロゲン化低級アルキル;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチルおよび硫酸ジアミルのような硫酸ジアルキル;塩化、臭化およびヨウ化デシル、塩化、臭化およびヨウ化ラウリル、塩化、臭化およびヨウ化ミリスチルならびに塩化、臭化およびヨウ化ステアリル等の長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジルおよび臭化フェネチルのようなアルキルハロゲン化物等の作用物質で四級化することができる。水溶性もしくは油溶性または分散性の生成物がそれによって得られる。
【0197】
薬学的に許容できる酸付加塩を形成するために用いられ得る酸の例は、塩酸、硫酸およびリン酸等の無機酸ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸およびクエン酸等の有機酸を含む。その他の例は、ナトリウム、カリウム、カルシウムもしくはマグネシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属との塩または有機塩基との塩を含む。
【0198】
本発明の範囲に包含されるものには、本発明の化合物の代謝的に不安定なエステルまたはプロドラッグ形態を含む、カルボン酸含有基またはヒドロキシル含有基の薬学的に許容できるエステルもある。代謝的に不安定なエステルは、例えば、血中レベルの上昇を引き起こすことができ、対応する非エステル化形態の化合物の効能を延長することができるものである。プロドラッグ形態は、投与される際は活性型の分子ではないが、(代謝、例えば、酵素的または加水分解性開裂等の)何らかのインビボ活性または生体内変換後、治療的に活性になるものである。エステル類を含むプロドラッグの一般的考察については、SvenssonおよびTunek Drug Metabolism Reviews 165(1988)ならびにBundgaard、Design of Prodrugs、Elsevier(1985)を参照されたい。マスクされたカルボン酸アニオンの例は、アルキル(例えば、メチル、エチル)、シクロアルキル(例えば、シクロヘキシル)、アラルキル(例えば、ベンジル、p−メトキシベンジル)およびアルキルカルボニルオキシアルキル(例えば、ピバロイルオキシメチル)等、多様なエステル類を含む。アミン類は、遊離薬物およびホルムアルデヒドをインビボ放出するエステラーゼによって開裂されたアリールカルボニルオキシメチル置換誘導体としてマスクされている(Bungaard、J.Med.Chem.、2503頁(1989))。また、イミダゾール、イミド、インドール等の酸性NH基を含有する薬物は、N−アシルオキシメチル基でマスクされている(Bundgaard Design of Prodrugs、Elsevier(1985))。ヒドロキシ基は、エステル類およびエーテル類としてマスクされている。EP039,051(SloanおよびLittle、1981年11月4日)は、マンニッヒ系ヒドロキサム酸プロドラッグ、これらの調製および使用を開示している。本発明の化合物のエステルは、例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステルおよびブチルエステルを含み得、ならびに酸性部分とヒドロキシル含有部分との間に形成された他の適切なエステルを含み得る。代謝的に不安定なエステルは、例えば、メトキシメチル、エトキシメチル、イソ−プロポキシメチル、α−メトキシエチル;α−((C−C)−アルキルオキシ)エチル等の基、例えば、メトキシエチル、エトキシエチル、プロポキシエチル、イソプロポキシエチル等;5−メチル−2−オキソ−1,3,ジオキソレン−4−イルメチル等の2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イルメチル基;C−Cアルキルチオメチル基、例えば、メチルチオメチル、エチルチオメチル、イソプロピルチオメチル等;アシルオキシメチル基、例えば、ピバロイルオキシメチル、α−アセトキシメチル等;エトキシカルボニル−1−メチル;またはα−アシルオキシ−α−置換メチル基、例えばα−アセトキシエチルを含み得る。
【0199】
さらに、本発明の化合物は、エタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、水等の一般的な溶媒から結晶化できる結晶性固体として存在し得る。したがって、本発明の化合物の結晶形態は、親化合物または薬学的に許容できるそれらの塩の多形体、溶媒和物および/または水和物として存在し得る。そのような形態のすべては、同様に、本発明の範囲内に入るものとして解釈されるべきである。
【0200】
本発明の化合物は、単独の活性薬剤として投与できるが、これらの化合物は、1種以上の本発明の化合物または他の作用物質との組合せでも使用され得る。組合せとして投与される場合、治療剤は同時にもしくは異なった時間に与えられる別個の組成物として配合され得る、または治療剤は単一の組成物として与えられ得る。
【0201】
前述は、本発明の説明にすぎず、本発明を開示されている化合物に限定することを意図されていない。当業者に明白な変形および変更は、添付の特許請求の範囲において定義されている本発明の範囲および性質内であることを意図されている。
【0202】
前述の記載から、当業者は、本発明の本質的特徴を容易に把握することができ、その趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明を種々の使用法および条件に適合させるために、本発明の種々の変更および修正を為すことができる。