特許第5732709号(P5732709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5732709
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】水素ガス冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20150521BHJP
   F17C 5/06 20060101ALI20150521BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20150521BHJP
   F25B 5/02 20060101ALI20150521BHJP
   H01M 8/06 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   F25B7/00 D
   F17C5/06
   F25B7/00 Z
   F25B1/00 397E
   F25B1/00 399Y
   F25B5/02 530Z
   !H01M8/06 R
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-179970(P2014-179970)
(22)【出願日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年9月19日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】清水 卓也
(72)【発明者】
【氏名】丸山 真也
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中根 孝浩
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−155232(JP,A)
【文献】 特開平04−222355(JP,A)
【文献】 特開2013−148197(JP,A)
【文献】 特開2012−047234(JP,A)
【文献】 特開平07−035386(JP,A)
【文献】 特開平08−028913(JP,A)
【文献】 特開2006−220275(JP,A)
【文献】 特開2009−127853(JP,A)
【文献】 特許第5632065(JP,B1)
【文献】 国際公開第2008/075509(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
F17C 5/06
F25B 1/00
F25B 5/02
H01M 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温側冷凍回路における第1の蒸発器によって低温側冷凍回路の凝縮器を冷却すると共に当該低温側冷凍回路における第2の蒸発器によって熱媒液を冷却可能に構成された二元冷凍回路を有する複数の冷凍ユニットと、
前記各冷凍ユニットおよび水素ガス冷却用熱交換器の間で前記熱媒液を循環させる熱媒液循環路を構成する熱媒液配管と、
前記各冷凍ユニットの動作を制御する制御部とを備え、
前記高温側冷凍回路は、前記熱媒液を冷却可能な第3の蒸発器と、前記第1の蒸発器および前記第3の蒸発器への冷媒の供給量を調整する冷媒供給量調整弁とを備え、
前記熱媒液配管は、前記熱媒液が前記第3の蒸発器および前記第2の蒸発器をこの順で通過するように前記各冷凍ユニット毎に当該両蒸発器を相互に接続し、
前記制御部は、複数の前記冷凍ユニットを動作させている状態で前記熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回ってから予め規定された時間が経過した時点において当該予め規定された第1の位置における当該熱媒液の温度が当該予め規定された第1の温度を実質的に下回っているとの第1の条件が満たされたときに動作中の当該各冷凍ユニットのうちの1台の冷凍能力を低下させる第1の処理を実行すると共に、前記冷凍ユニットを1台だけ動作させている状態で前記第1の条件が満たされたときに動作中の当該冷凍ユニットを停止させることなく動作させた状態を維持し、
前記予め規定された第1の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を実質的に超えているとの第2の条件が満たされたときに、冷凍能力を低下させている前記冷凍ユニットのうちの少なくとも1台の冷凍能力を上昇させる第2の処理を実行すると共に、当該第2の処理において停止状態の前記冷凍ユニットの動作を開始させることで当該冷凍ユニットの冷凍能力を上昇させるときに、前記第2の蒸発器による前記熱媒液の冷却を行うことなく前記第3の蒸発器によって当該熱媒液を冷却する処理Aを実行した後に、前記冷媒供給量調整弁を制御して前記第1の蒸発器への冷媒の供給量を前記処理Aの実行時よりも増加させて当該第1の蒸発器によって前記凝縮器を冷却しつつ前記第2の蒸発器によって前記熱媒液を冷却する処理Bを実行する水素ガス冷却装置。
【請求項2】
前記水素ガス冷却用熱交換器から回収した前記熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した当該熱媒液を前記各冷凍ユニットに供給可能に配設された貯液槽と、
前記熱媒液配管のうちの前記冷凍ユニットによって冷却した前記熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給する第1の配管に配設されて当該水素ガス冷却用熱交換器への当該熱媒液の供給量を調整する第1の調整弁、および当該第1の配管に配設されて前記貯液槽への当該熱媒液の戻り量を調整する第2の調整弁の少なくとも一方の調整弁とを備え、
前記制御部は、前記熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第3の条件が満たされたときに、前記少なくとも一方の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を減少させる第3の処理を実行する請求項1記載の水素ガス冷却装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が前記第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第4の条件が満たされたときに、前記少なくとも一方の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を増加させる第4の処理を実行する請求項記載の水素ガス冷却装置。
【請求項4】
前記冷凍ユニットによって冷却された前記熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した当該熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給可能に配設された貯液槽と、
前記熱媒液配管のうちの前記貯液槽に貯液した前記熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給する第2の配管に配設されて当該水素ガス冷却用熱交換器への当該熱媒液の供給量を調整する第3の調整弁とを備え、
前記制御部は、前記熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第5の条件が満たされたときに、前記第3の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を減少させる第5の処理を実行する請求項1記載の水素ガス冷却装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が前記第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第6の条件が満たされたときに、前記第3の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を増加させる第6の処理を実行する請求項記載の水素ガス冷却装置。
【請求項6】
前記貯液槽に配設されて当該液槽内に貯液された前記熱媒液の温度を検出する温度センサとを備え、
前記制御部は、前記温度センサからのセンサ信号に基づいて特定した前記熱媒液の温度を前記予め規定された第1の位置の前記熱媒液の温度として特定する請求項からのいずれかに記載の水素ガス冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍ユニットによって冷却した熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に供給して水素ガス冷却用熱交換器において水素ガスを冷却可能に構成された循環型の水素ガス冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記の特許文献1には、燃料としての水素ガスを自動車等に充填する燃料充填装置が開示されている。この場合、この種の燃料充填装置が設置されるガスステーションでは、充分な量の水素ガスを蓄えておくことができるように、現地で生成した水素ガス(オンサイト型ステーションの場合)、または、別所で生成されて搬送された水素ガス(オフサイト型ステーションの場合)を充分に圧縮した状態でガスタンク内に蓄えておく構成が採用されている。また、自動車等に水素ガスを充填する際には、ガスステーションのガスタンク(以下、「貯留タンク」ともいう)から、給気配管および給気ノズル等を介して自動車のガスタンク(以下、「車両側タンク」ともいう)に水素ガスが流入させられる。
【0003】
この際に、水素ガスは、給気配管等に配設されている各種の弁などの通過に際して断熱膨張させられたときに、ジュールトムソン効果によって温度上昇する性質を有していることが知られている。このため、単に貯留タンクから車両側タンクに水素ガスを充填したときには、給気配管等の通過時に温度上昇した高温の水素ガスが車両側タンクに流入することとなる。また、水素ガスが消費されて低圧となっている車両側タンク内にガスステーションから水素ガスを流入させたときには、流入した水素ガスが車両側タンク内において断熱膨張してさらに温度上昇することとなる。このため、車両側タンクへの水素ガスの充填効率が低下する結果、充分な量の水素ガスを車両側タンクに充填するのが困難となる。したがって、特許文献1に開示の燃料充填装置では、車両側タンクへの充填に先立って水素ガスを冷却することで充填効率の低下を回避する構成が採用されている。
【0004】
具体的には、特許文献1に開示の燃料充填装置では、水素ガス貯留タンク(貯留タンク)から自動車等に水素ガスを供給する供給経路に、流量調整弁、積算流量計および遮断弁などが配設されると共に、自動車等に接続される連絡管(フレキシブルホース)と上記の遮断弁との間に水素ガス冷却用の冷却手段(熱交換器)が配設されている。この場合、この燃料充填装置では、上記の冷却手段として、エチレングリコールを冷媒とするチラー冷却器などが採用されている。これにより、この燃料充填装置では、貯留タンク内の水素ガスが、流量調整弁、積算流量計および遮断弁などの通過に際して断熱膨張するものの、冷却手段においてエチレングリコールと熱交換させられて温度低下した状態で連絡管を介して車両側タンクに流入させられるため、充填効率の低下をある程度回避することが可能となっている。
【0005】
一方、出願人は、特許文献1に開示の燃料充填装置の構成と同様にしてチラー冷却器によって冷却したエチレングリコール等の冷媒(以下、冷凍回路中の冷媒と区別するために「熱媒液」ともいう)によって水素ガスを冷却した後に車両側タンクに充填する構成の装置を試作して水素ガスの充填を試みた。しかしながら、エチレングリコールを熱媒液として使用するチラー冷却器(冷凍回路によって冷却する熱媒液の下限温度がエチレングリコールの凍結温度よりも高いチラー冷却器)では、水素ガスを短時間で充分に冷却することができず、車両側タンクへの水素ガスの充填効率を充分に向上させるのが困難であることが判明した。そこで、出願人は、エチレングリコールよりも凍結温度が低い熱媒液を採用すると共に、そのような極低温まで熱媒液を冷却可能な不活性ガスを冷媒として使用する冷凍回路を搭載したチラー冷却器によって熱媒液を冷却して水素ガスを冷却する構成を試みた。
【0006】
しかしながら、熱媒液を極低温まで冷却可能な冷凍回路を有するチラー冷却器では、冷凍回路内の冷媒温度が外気温と同程度まで温度上昇している状態(例えばチラー冷却器を長時間に亘って停止させていた状態)において熱媒液の冷却を開始したときに、蒸発器の温度を充分に低下させて熱冷媒を極低温まで冷却可能な状態となるまでに非常に長い時間を要する。このため、出願人は、熱冷媒を極低温まで冷却する冷凍回路(以下、「低温側冷凍回路」ともいう)の凝縮器を、常温域における冷凍能力が高い冷凍回路(以下、「高温側冷凍回路」ともいう)の蒸発器によって冷却することで低温側冷凍回路の冷却効率を向上させる「二元冷凍回路」を有する冷凍ユニットを備えたチラー冷却器によって熱媒液を冷却して水素ガスを冷却する構成を試みた。これにより、例えばチラー冷却器を長時間に亘って停止させていた状態からでも、熱媒液を極低温まで冷却するのに要する時間を充分に短縮することが可能となった。
【0007】
この場合、例えば、水素ガスを冷却しない状態(車両等への水素ガスの充填を行わない状態)が長時間に亘って続いたときには、冷凍回路によって極低温まで充分に冷却されている熱媒液を不要に冷却し続けることで冷凍ユニットにおける冷媒の圧縮機等を動作させているエネルギーが無駄になる。また、熱媒液を不要に冷却し続けることで熱媒液が過冷却され、これに起因して、水素ガス冷却用の熱交換器が過剰に低い温度まで温度低下させられて熱交換器内の配管(熱媒液と熱交換させるために水素ガスを通過させる配管)が劣化するおそれもある。したがって、出願人は、水素ガスの冷却に適した極低温まで熱媒液の温度が低下したときに冷凍ユニットを停止させ、熱媒液の温度が予め規定された温度まで上昇したときに、冷凍ユニットを再稼働させるようにチラー冷却器を改良した。これにより、冷凍ユニットの不要な動作に起因するエネルギーの浪費や、熱媒液の過冷却に起因する配管等の劣化を好適に回避することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−116619号公報(第4−10頁、第1−6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、出願人が、水素ガスの冷却を目的として上記の特許文献1に開示の燃料充填装置におけるチラー冷却器の構成を改良したチラー冷却器には、以下のような改善すべき課題が存在する。すなわち、出願人が開発したチラー冷却器では、熱媒液の過冷却に起因するエネルギーの浪費や配管等の劣化を回避するために、熱媒液の温度に応じて冷凍ユニットを動作/停止させる構成が採用されている。この場合、水素ガスの冷却を目的としたチラー冷却器では、車両等への水素ガスの充填(水素ガスの冷却)が開始されたときに、極低温まで冷却されている熱媒液が熱交換器において水素ガスと熱交換させられることで急激に温度上昇する。
【0010】
このため、1台の車両に対して大量の水素ガスを充填するとき、および複数台の車両に対して水素ガスを連続して充填するとき(極低温の熱媒液を熱交換器に対して長時間に亘って供給する必要があるとき)や、複数台の車両に対して水素ガスを同時に(並列的に)充填するとき(極低温の熱媒液を複数の熱交換器に対して並列的に供給する必要があるとき)には、熱交換器に対して極低温の熱媒液を継続的に供給することができるように、水素ガスの冷却によって温度上昇した熱媒液を水素ガスの冷却に適した極低温まで速やかに温度低下させる必要がある。しかしながら、熱媒液の過冷却を回避するために冷凍ユニットを停止させている状態で車両等への水素ガスの充填が開始されたときには、熱媒液の温度上昇に応じて冷凍ユニットを再稼働させたとしても、高温の熱媒液を極低温まで温度低下させることが可能な状態となるまでにある程度の時間を要する。
【0011】
したがって、出願人が改良したチラー冷却器では、熱媒液の過冷却を回避するために冷凍ユニットを停止させている状態において車両等への水素ガスの充填が開始されたときに、水素ガスの冷却によって温度上昇した熱媒液を短時間で極低温まで冷却するのが困難となり、これに起因して、水素ガスの冷却に適した温度よりもやや高い温度の熱媒液が水素ガス冷却用熱交換器に対して供給されるおそれがある。このため、この点を改善するのが好ましい。
【0012】
本発明は、かかる改善すべき課題に鑑みてなされたものであり、熱媒液の過冷却に起因するエネルギーの浪費や配管等の劣化を招くことなく、水素ガス冷却用熱交換器に対して水素ガスの冷却に適した極低温の熱媒液を確実に供給し得る水素ガス冷却装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の水素ガス冷却装置は、高温側冷凍回路における第1の蒸発器によって低温側冷凍回路の凝縮器を冷却すると共に当該低温側冷凍回路における第2の蒸発器によって熱媒液を冷却可能に構成された二元冷凍回路を有する複数の冷凍ユニットと、前記各冷凍ユニットおよび水素ガス冷却用熱交換器の間で前記熱媒液を循環させる熱媒液循環路を構成する熱媒液配管と、前記各冷凍ユニットの動作を制御する制御部とを備え、前記高温側冷凍回路は、前記熱媒液を冷却可能な第3の蒸発器と、前記第1の蒸発器および前記第3の蒸発器への冷媒の供給量を調整する冷媒供給量調整弁とを備え、前記熱媒液配管は、前記熱媒液が前記第3の蒸発器および前記第2の蒸発器をこの順で通過するように前記各冷凍ユニット毎に当該両蒸発器を相互に接続し、前記制御部は、複数の前記冷凍ユニットを動作させている状態で前記熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回ってから予め規定された時間が経過した時点において当該予め規定された第1の位置における当該熱媒液の温度が当該予め規定された第1の温度を実質的に下回っているとの第1の条件が満たされたときに動作中の当該各冷凍ユニットのうちの1台の冷凍能力を低下させる第1の処理を実行すると共に、前記冷凍ユニットを1台だけ動作させている状態で前記第1の条件が満たされたときに動作中の当該冷凍ユニットを停止させることなく動作させた状態を維持し、前記予め規定された第1の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を実質的に超えているとの第2の条件が満たされたときに、冷凍能力を低下させている前記冷凍ユニットのうちの少なくとも1台の冷凍能力を上昇させる第2の処理を実行すると共に、当該第2の処理において停止状態の前記冷凍ユニットの動作を開始させることで当該冷凍ユニットの冷凍能力を上昇させるときに、前記第2の蒸発器による前記熱媒液の冷却を行うことなく前記第3の蒸発器によって当該熱媒液を冷却する処理Aを実行した後に、前記冷媒供給量調整弁を制御して前記第1の蒸発器への冷媒の供給量を前記処理Aの実行時よりも増加させて当該第1の蒸発器によって前記凝縮器を冷却しつつ前記第2の蒸発器によって前記熱媒液を冷却する処理Bを実行する
【0016】
請求項記載の水素ガス冷却装置は、請求項1記載の水素ガス冷却装置において、前記水素ガス冷却用熱交換器から回収した前記熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した当該熱媒液を前記各冷凍ユニットに供給可能に配設された貯液槽と、前記熱媒液配管のうちの前記冷凍ユニットによって冷却した前記熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給する第1の配管に配設されて当該水素ガス冷却用熱交換器への当該熱媒液の供給量を調整する第1の調整弁、および当該第1の配管に配設されて前記貯液槽への当該熱媒液の戻り量を調整する第2の調整弁の少なくとも一方の調整弁とを備え、
前記制御部は、前記熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第3の条件が満たされたときに、前記少なくとも一方の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を減少させる第3の処理を実行する。
【0017】
請求項記載の水素ガス冷却装置は、請求項記載の水素ガス冷却装置において、前記制御部は、前記予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が前記第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第4の条件が満たされたときに、前記少なくとも一方の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を増加させる第4の処理を実行する。
【0018】
請求項記載の水素ガス冷却装置は、請求項1記載の水素ガス冷却装置において、前記冷凍ユニットによって冷却された前記熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した当該熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給可能に配設された貯液槽と、前記熱媒液配管のうちの前記貯液槽に貯液した前記熱媒液を前記水素ガス冷却用熱交換器に供給する第2の配管に配設されて当該水素ガス冷却用熱交換器への当該熱媒液の供給量を調整する第3の調整弁とを備え、前記制御部は、前記熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第5の条件が満たされたときに、前記第3の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を減少させる第5の処理を実行する。
【0019】
請求項記載の水素ガス冷却装置は、請求項記載の水素ガス冷却装置において、前記制御部は、前記予め規定された第2の位置における前記熱媒液の温度が前記第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第6の条件が満たされたときに、前記第3の調整弁を制御して前記水素ガス冷却用熱交換器への前記熱媒液の供給量を増加させる第6の処理を実行する。
【0020】
請求項記載の水素ガス冷却装置は、請求項からのいずれかに記載の水素ガス冷却装置において、前記貯液槽に配設されて当該液槽内に貯液された前記熱媒液の温度を検出する温度センサとを備え、前記制御部は、前記温度センサからのセンサ信号に基づいて特定した前記熱媒液の温度を前記予め規定された第1の位置の前記熱媒液の温度として特定する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1記載の水素ガス冷却装置では、二元冷凍回路を有する複数の冷凍ユニットを備えると共に、制御部が、複数の冷凍ユニットを動作させている状態で熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回ってから予め規定された時間が経過した時点において予め規定された第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回っているとの第1の条件が満たされたときに動作中の各冷凍ユニットのうちの1台の冷凍能力を低下させる第1の処理を実行すると共に、冷凍ユニットを1台だけ動作させている状態で第1の条件が満たされたときに動作中の冷凍ユニットを停止させることなく動作させた状態を維持する。
【0022】
したがって、請求項1記載の水素ガス冷却装置によれば、水素ガス冷却用熱交換器に供給する熱媒液の温度が第1の温度まで充分に低下し、すべての冷凍ユニットを動作させ続ける必要がないときに第1の処理の実行によって少なくとも1台の冷凍ユニットの冷凍能力を低下させることで、熱媒液が過冷却される事態を回避することができると共に、冷凍能力を低下させた冷凍ユニットの分だけ水素ガス冷却装置によるエネルギーの消費量を低減することができる。また、少なくとも1台の冷凍ユニットを動作させ続けることで、例えば水素ガスの冷却によって熱媒液の温度が上昇したとしても、動作を継続させている冷凍ユニットによってその熱媒液を速やかに冷却し、水素ガスの冷却に適した温度の熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に対して継続的に供給することができるため、水素ガス冷却用熱交換器において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0023】
また、請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、制御部が、予め規定された第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を実質的に超えているとの第2の条件が満たされたときに、冷凍能力を低下させている冷凍ユニットのうちの少なくとも1台の冷凍能力を上昇させる第2の処理を実行することにより、例えば水素ガスの冷却によって熱媒液の温度が急激に上昇したとしても、冷凍能力を上昇させた冷凍ユニットによってこれを速やかに冷却することができるため、水素ガスの冷却に適した温度の熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に対して確実に供給することができ、水素ガス冷却用熱交換器において水素ガスを一層確実に冷却することができる。
【0024】
さらに、請求項記載の水素ガス冷却装置では、低温側冷凍回路の凝縮器を冷却するための第1の蒸発器に加え、熱媒液を冷却可能な第3の蒸発器と、第1の蒸発器および第3の蒸発器への冷媒の供給量を調整する冷媒供給量調整弁とを備えて高温側冷凍回路が構成され、かつ、熱媒液が高温側冷凍回路における第3の蒸発器および低温側冷凍回路における第2の蒸発器をこの順で通過するように熱媒液配管によって両蒸発器が相互に接続されると共に、制御部が、第2の処理において停止状態の冷凍ユニットの動作を開始させることで冷凍ユニットの冷凍能力を上昇させるときに、第2の蒸発器による熱媒液の冷却を行うことなく第3の蒸発器によって熱媒液を冷却する処理Aを実行した後に、冷媒供給量調整弁を制御して第1の蒸発器への冷媒の供給量を処理Aの実行時よりも増加させて第1の蒸発器によって凝縮器を冷却しつつ第2の蒸発器によって熱媒液を冷却する処理Bを実行する。
【0025】
したがって、請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、熱媒液の温度が高温で冷凍能力を上昇させる際に低温側冷凍回路による熱媒液の冷却を実行しないことで、低温側冷凍回路内の冷媒圧力が過剰に上昇するのを回避することができるため、低温側冷凍回路の圧縮機が破損する事態や、圧縮機の破損を回避するために低温側冷凍回路を緊急停止させる事態を回避することができる。また、熱媒液の温度が高温のときに処理Aを実行して、高温の熱媒液の冷却に適した高温側冷凍回路(第3の蒸発器)によって熱媒液を冷却することで高温の熱媒液を短時間で温度低下させ、低温側冷凍回路によって好適に冷却可能な温度まで熱媒液の温度が低下したときに処理Bを実行して極低温まで熱媒液を冷却可能な低温側冷凍回路(第2の蒸発器)によって熱媒液を冷却することにより、高温の熱媒液を目標温度まで短時間で確実に冷却することができる。これにより、熱媒液を目標温度まで低下させるのに要するエネルギー量も少量化することもできる。
【0026】
請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、水素ガス冷却用熱交換器から回収した熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した熱媒液を各冷凍ユニットに供給可能に配設された貯液槽と、冷凍ユニットによって冷却した熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に供給する第1の配管に配設されて水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を調整する第1の調整弁、および第1の配管に配設されて貯液槽への熱媒液の戻り量を調整する第2の調整弁の少なくとも一方の調整弁とを備え、制御部が、熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第3の条件が満たされたときに、少なくとも一方の調整弁を制御して水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を減少させる第3の処理を実行することにより、水素ガス冷却用熱交換器が過冷却される事態を好適に回避できる結果、水素ガス冷却用熱交換器内の配管の過冷却に起因する劣化を回避して水素ガス冷却用熱交換器の耐用寿命を充分に長くすることができる。
【0027】
請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、制御部が、予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第4の条件が満たされたときに、少なくとも一方の調整弁を制御して水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を増加させる第4の処理を実行することにより、水素ガスの冷却に適した極低温の熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に対して確実に供給することができる結果、水素ガス冷却用熱交換器において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0028】
請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、冷凍ユニットによって冷却された熱媒液を貯液可能に構成されると共に貯液した熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に供給可能に配設された貯液槽と、熱媒液配管のうちの貯液槽に貯液した熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に供給する第2の配管に配設されて水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を調整する第3の調整弁とを備え、制御部が、熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回っているとの第5の条件が満たされたときに、第3の調整弁を制御して水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を減少させる第5の処理を実行することにより、水素ガス冷却用熱交換器が過冷却される事態を好適に回避できる結果、水素ガス冷却用熱交換器内の配管の過冷却に起因する劣化を回避して水素ガス冷却用熱交換器の耐用寿命を充分に長くすることができる。
【0029】
請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、制御部が、予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が第3の温度よりも高温の予め規定された第4の温度を実質的に超えているとの第6の条件が満たされたときに、第3の調整弁を制御して水素ガス冷却用熱交換器への熱媒液の供給量を増加させる第6の処理を実行することにより、水素ガスの冷却に適した極低温の熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器に対して確実に供給することができる結果、水素ガス冷却用熱交換器において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0030】
請求項記載の水素ガス冷却装置によれば、制御部が、貯液槽に配設された温度センサからのセンサ信号に基づいて特定した熱媒液の温度を予め規定された第1の位置の熱媒液の温度として特定することにより、例えば、第1の位置とは異なる位置の熱媒液の温度を監視して第1の位置における熱媒液の温度を演算し、演算した温度に基づいて第1の条件などが満たされているかを判別して第1の処理などを実行する構成の水素ガス冷却装置とは異なり、温度センサからのセンサ信号によって特定した熱媒液の温度に基づいて第1の条件などが満たされているか否かを直接的に判別することができるため、煩雑な演算処理を実行することなく、第1の処理等を的確に実行して熱媒液を効率良く冷却することができる。また、大量の熱媒液が貯留される貯液槽内の熱媒液の温度を監視する構成を採用することで、水素ガス冷却装置全体としての熱媒液の平均的な温度に基づいて第1の条件などが満たされているか否かを的確に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施の形態に係る水素ガス冷却装置1の構成を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る水素ガス冷却装置1における冷凍ユニット2a〜2dの構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して、水素ガス冷却装置の実施の形態について説明する。
【0033】
最初に、水素ガス冷却装置1の構成について、添付図面を参照して説明する。
【0034】
図1に示す水素ガス冷却装置(水素ガス冷却用チラー)1は、「水素ガス冷却装置」の一例であって、冷凍ユニット2a〜2d、水素ガス冷却用熱交換器3、ブラインタンク4、ブライン配管5、液送ポンプ6a,6bおよび制御部7を備え、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを冷却することができるように構成されている。
【0035】
なお、同図では、水素ガス冷却装置1とガスステーション側設備Xとの関係に関する理解を容易とするために、ガスステーション側設備Xについては、水素ガスを貯留しておくためのガスタンク(貯留タンク)Xa、図示しない水素燃料電池車などの自動車などに設けられている給気口に接続可能なディスペンサーXb、およびガスタンクXaとディスペンサーXbとを相互に接続するガス配管Xcだけを図示すると共に、ガス配管Xcに配設された流量調整弁、流量計および遮断弁などの図示を省略している。
【0036】
一方、図2に示すように、冷凍ユニット2a〜2d(以下、区別しないときには「冷凍ユニット2」ともいう)は、「複数の冷凍ユニット」の一例であって、高温側冷凍回路10および低温側冷凍回路20からなる「二元冷凍回路」を備えてブライン(熱媒液)をそれぞれ冷却可能に構成されている。また、高温側冷凍回路10は、圧縮機11、凝縮器12、電磁弁13a、電子膨張弁13b、蒸発器14、電磁弁15a、電子膨張弁15bおよび蒸発器16を備えて構成されている。この場合、凝縮器12には、制御部7の制御に従って凝縮器12を冷却する凝縮器ファン(図示せず)が取り付けられている。さらに、低温側冷凍回路20は、圧縮機21、凝縮器22、電子膨張弁23および蒸発器24を備えて構成されている。なお、水素ガス冷却装置1(冷凍ユニット2)の構成についての理解を容易とするために、高温側冷凍回路10や低温側冷凍回路20における上記の各構成要素以外の構成要素に関する図示および説明を省略する。
【0037】
この場合、本例の冷凍ユニット2では、高温側冷凍回路10の蒸発器14が「第1の蒸発器」に相当し、「低温側冷凍回路の凝縮器」に相当する凝縮器22を冷却する。また、本例の冷凍ユニット2では、低温側冷凍回路20の蒸発器24が「第2の蒸発器」に相当し、後述するようにブライン配管5を介して供給されるブラインを冷却する。さらに、本例の冷凍ユニット2では、高温側冷凍回路10の蒸発器16が「第3の蒸発器」に相当し、後述するようにブライン配管5を介して供給されるブラインを冷却する。なお、本例の冷凍ユニット2では、一例として、カスケードコンデンサ30によって上記の蒸発器14および凝縮器22が一体的に構成され、これにより、後述するように蒸発器14によって凝縮器22を冷却する構成が採用されている。
【0038】
また、本例の冷凍ユニット2では、電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bによって「冷媒供給量調整弁」が構成されている。具体的には、本例の冷凍ユニット2では、電磁弁13aの開閉状態、および電子膨張弁13bの開度を変更することで蒸発器14への冷媒の供給量が調整され、電磁弁15aの開閉状態、および電子膨張弁15bの開度を変更することで蒸発器16への冷媒の供給量が調整される構成が採用されている。なお、本例の冷凍ユニット2における電子膨張弁13b,15bを全閉状態に移行させたときに冷媒の通過を完全に遮断することができる場合には、電磁弁13a,15aを不要とすることもできる。また、電子膨張弁13b,15bに代えて、「冷凍回路」における「膨張弁」としてキャピラリーチューブを配設することもできるが、その場合には、キャピラリーチューブよりも上流側に電磁弁13a,15aと同様の「開閉弁」を設けて蒸発器14,16への冷媒の供給量を調整可能に構成するのが好ましい(図示せず)。
【0039】
水素ガス冷却用熱交換器3は、「水素ガス冷却用熱交換器」の一例であって、図1に示すように、ガスステーション側設備XにおけるガスタンクXaおよびディスペンサーXbの間(ガス配管Xc)に配設されている。この水素ガス冷却用熱交換器3は、各冷凍ユニット2によって冷却されてブライン配管5を介して供給されるブラインと、ガス配管Xcを介してガスタンクXaから供給される水素ガスとの間で熱交換させることにより、ディスペンサーXbから自動車などに充填される直前の水素ガスを予め規定された温度(一例として、−33℃〜−40℃の温度範囲内の温度)まで冷却する。
【0040】
この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、水素ガス冷却用熱交換器3内を「熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置」として、この水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度を検出可能な温度センサ3aが水素ガス冷却用熱交換器3内に配設されている。なお、本例の水素ガス冷却装置1では、「水素ガス冷却用熱交換器」の一例である水素ガス冷却用熱交換器3を一体的に備えて構成されているが、水素ガス冷却装置1の構成から水素ガス冷却用熱交換器3を除外して、外部機器としての「水素ガス冷却用熱交換器」にブラインを供給する構成を採用することもできる。このような構成においては、外部機器としての「水素ガス冷却用熱交換器」内に温度センサ3aを配設すればよい。
【0041】
ブラインタンク4は、「貯液槽」の一例であって、水素ガス冷却用熱交換器3から回収したブラインを貯液可能に構成されると共に、貯液したブラインを各冷凍ユニット2に供給可能にブライン配管5に接続されている。具体的には、本例の水素ガス冷却装置1では、水素ガス冷却用熱交換器3におけるブラインの流出口と、冷凍ユニット2におけるブラインの導入口との間に水素ガス冷却用熱交換器3が配設されている。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブラインタンク4内を「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置」として、このブラインタンク4内のブラインの温度を検出可能な温度センサ4a(「温度センサ」の一例)がブラインタンク4内に配設されている。
【0042】
ブライン配管5は、「熱媒液循環路を構成する熱媒液配管」の一例であって、ブラインタンク4と各冷凍ユニット2(蒸発器16)とを相互に接続する配管5a、各冷凍ユニット2内において蒸発器16,24を相互に接続する配管5b(「熱媒液が第3の蒸発器および第2の蒸発器をこの順で通過するように各冷凍ユニット毎に両蒸発器を相互に接続している」との構成の一例:図2参照)、各冷凍ユニット2(蒸発器24)と三方弁Va,Vbとを相互に接続する配管5c、三方弁Va,Vbと水素ガス冷却用熱交換器3とを相互に接続する配管5d、および水素ガス冷却用熱交換器3とブラインタンク4とを相互に接続する配管5eを備え、ブラインタンク4、各冷凍ユニット2および水素ガス冷却用熱交換器3の間でブラインを循環させることができるように構成されている。
【0043】
また、本例の水素ガス冷却装置1では、三方弁Va,Vbと配管5eとを相互に接続する一対の配管5f,5fを備えると共に、上記した配管5dに二方弁Vcが配設されている。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、三方弁Va,Vbが流量可変型の弁で構成されると共に、二方弁Vcが開口率可変型の弁で構成されている。これにより、本例の水素ガス冷却装置1では、後述するように、制御部7が三方弁Va,Vbや二方弁Vcを制御することによって、各冷凍ユニット2から水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量を調整する構成が採用されている。
【0044】
なお、本例の水素ガス冷却装置1では、冷凍ユニット2a,2bの2つが配管5cを介して三方弁Vaに接続されると共に、冷凍ユニット2c,2dの2つが他の配管5cを介して三方弁Vbに接続されている。また、二方弁Vcについては、配管5dに代えて、配管5eにおける配管5fの接続部位よりも水素ガス冷却用熱交換器3側に配設してもよい。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、ブライン配管5における配管5c,5dが「第1の配管」に相当する。また、本例の水素ガス冷却装置1では、二方弁Vcが「第1の調整弁」に相当し、制御部7の制御に従って各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインの水素ガス冷却用熱交換器3への供給量を調整する。さらに、本例の水素ガス冷却装置1では、三方弁Va,Vbが「第2の調整弁」に相当し、制御部7の制御に従ってブラインタンク4へのブラインの戻り量(水素ガス冷却用熱交換器3を通過することなく各冷凍ユニット2からブラインタンク4に直接的に流入させるブラインの量)を調整する。
【0045】
液送ポンプ6a,6b(以下、区別しないときには「液送ポンプ6」ともいう)は、ブライン配管5における上記の配管5aにそれぞれ配設され、液送ポンプ6aがブラインタンク4から冷凍ユニット2a,2bにブラインを液送(圧送)し、液送ポンプ6bがブラインタンク4から冷凍ユニット2c,2dにブラインを液送(圧送)する。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、上記したようにブライン配管5の各配管5a〜5fによって形成される「ブライン流路(熱媒液循環路)」が閉鎖流路のため、両液送ポンプ6によってブラインタンク4から各冷凍ユニット2にブラインを液送する圧力によって各冷凍ユニット2から水素ガス冷却用熱交換器3(または、ブラインタンク4)にブラインが圧送される(供給される)と共に水素ガス冷却用熱交換器3からブラインタンク4にブラインが圧送される(回収される)。
【0046】
制御部7は、「制御部」の一例であって、水素ガス冷却装置1を総括的に制御する。具体的には、制御部7は、各冷凍ユニット2における圧縮機11,21、電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bを制御して高温側冷凍回路10の冷凍能力や低温側冷凍回路20の冷凍能力を変化させる(制御する)。また、制御部7は、両液送ポンプ6を制御してブラインタンク4から各冷凍ユニット2にブラインを液送させる。さらに、制御部7は、三方弁Va,Vbおよび二方弁Vcを制御して、各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインを水素ガス冷却用熱交換器3やブラインタンク4に流入させる。
【0047】
この水素ガス冷却装置1では、例えば、ガスステーション側設備Xおよび水素ガス冷却装置1が設置されているガスステーションの開店に先立って水素ガス冷却装置1が起動されたときに、制御部7が、各冷凍ユニット2を制御してブラインの冷却処理を開始させると共に、両液送ポンプ6を制御してブラインタンク4から冷凍ユニット2へのブラインの液送を開始させる。これに応じて、各冷凍ユニット2における高温側冷凍回路10の圧縮機11および低温側冷凍回路20の圧縮機21による冷媒の圧縮処理を開始されると共に、ブラインタンク4から配管5aを介して各冷凍ユニット2にブラインが供給される。また、制御部7は、水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度を特定し、特定した温度に基づいて三方弁Va,Vbおよび二方弁Vcを制御する処理を開始する。
【0048】
具体的には、制御部7は、水素ガス冷却装置1が起動された直後から、温度センサ3aからのセンサ信号S3aに基づいて水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度を特定する処理を継続的に実行する。この際に、制御部7は、特定される温度が、「第3の温度」の一例である−38℃を下回る温度になるまで、三方弁Va,Vbを制御して各冷凍ユニット2から配管5cに流出したブラインのすべてを配管5dに案内させると共に、二方弁Vcを100%の開口率に制御する。これにより、後述するように各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインのすべてが水素ガス冷却用熱交換器3に供給される状態となる。
【0049】
また、制御部7は、後述するように、各冷凍ユニット2によるブラインの冷却によって水素ガス冷却用熱交換器3に供給されるブラインの温度が低下し、これにより、センサ信号S3aに基づいて特定される温度が、−38℃を下回る温度に低下したときに、「第3の条件」が満たされたとして、三方弁Va,Vbを制御して各冷凍ユニット2から配管5cに流出したブラインのうちの例えば5%を配管5dに案内させ、残りの95%を配管5fに案内させると共に、二方弁Vcの開口率を低下させることで水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給を減少させる「第3の処理」を実行する。これにより、後述するように各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインの大半が配管5f,5eを介してブラインタンク4に回収され、僅かな量のブラインだけが配管5dを介して水素ガス冷却用熱交換器3に供給される状態となる。
【0050】
この状態においては、配管5d、水素ガス冷却用熱交換器3および配管5e内に極低温の少量のブラインが供給され続けることで、冷凍ユニット2から水素ガス冷却用熱交換器3を介してブラインタンク4に至るブライン流路内が、外気や地熱によって過剰に温度上昇した状態となるのが回避される。また、各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインの大半が水素ガス冷却用熱交換器3を通過させられることなくブラインタンク4に流入させられて、冷凍ユニット2およびブラインタンク4の間で循環させられる状態となるため、ブラインタンク4内のブラインの温度が短時間で好適に温度低下させられる。
【0051】
さらに、制御部7は、例えば、水素ガス冷却用熱交換器3において大量の水素ガスが冷却されてブラインの温度が上昇し、センサ信号S3aに基づいて特定される水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度が、「第4の温度」の一例である−35℃を超える温度に上昇したときに、「第4の条件」が満たされたとして、三方弁Va,Vbを制御して各冷凍ユニット2から配管5cに流出したブラインのすべてを配管5dに案内させると共に、二方弁Vcの開口率を上昇させることで水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給を増加させる「第4の処理」を実行する。これにより、後述するように各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインの大半が配管5dを介して水素ガス冷却用熱交換器3に供給される状態(水素ガスの冷却に必要な充分な量の低温のブラインが水素ガス冷却用熱交換器3に供給される状態)となる。
【0052】
このように、本例の水素ガス冷却装置1では、制御部7が、温度センサ3aからのセンサ信号S3aに基づく水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度の特定と、特定結果に基づく「第3の処理」および「第4の処理」のいずれかの実行とを継続的に行うことにより、水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度が、水素ガスの冷却に適した−33℃〜−40℃の範囲内の温度に維持されると共に、水素ガス冷却用熱交換器3内の配管が過冷却されて劣化する事態が回避される。
【0053】
また、本例の水素ガス冷却装置1では、制御部7が、上記のような三方弁Va,Vbや二方弁Vcの制御(各冷凍ユニット2から水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量の調整)と並行して、ブラインタンク4内に配設されている温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づくブラインタンク4内のブラインの温度の特定と、特定した温度に基づく各冷凍ユニット2の冷凍能力の調整とを継続的に実行する。
【0054】
この場合、水素ガス冷却装置1の起動以前に、ある程度長い時間に亘って水素ガス冷却装置1を停止させていたときには、水素ガス冷却装置1の起動時に、ブラインタンク4内やブライン配管5内のブラインの温度が、水素ガスの冷却に適した温度よりも高温(一例として、外気温と同程度の25℃程度)となっている。このような高温のブラインを冷凍ユニット2における低温側冷凍回路20の蒸発器24によって冷却しようとしたとき(高温のブラインが液送されている状態において低温側冷凍回路20を動作させたとき)には、蒸発器24内における冷媒の気化量が増加して低温側冷凍回路20内の冷媒圧力が過剰に高くなり、圧縮機21に大きな負担が掛かるだけでなく、高温のブラインを短時間で温度低下させるのが困難であることに起因して、水素ガスを好適に冷却し得る状態になるまでに長時間を要することとなる。したがって、本例の水素ガス冷却装置1では、制御部7がブラインタンク4内のブラインの温度に応じて各冷凍ユニット2の動作状態を変更することで、低温側冷凍回路20を高負荷状態とすることなく、高温のブラインを短時間で温度低下させる構成が採用されている。
【0055】
具体的には、制御部7は、温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいて特定したブラインタンク4内のブラインの温度が、一例として、−33℃以上になっているとの条件(以下、「条件A」ともいう)が満たされているときに、低温側冷凍回路20(蒸発器24)によるブラインの冷却を行うことなく、高温側冷凍回路10(蒸発器16)によってブラインを冷却する処理(「処理A」の一例)を各冷凍ユニット2に実行させる。また、制御部7は、センサ信号S4aに基づいて特定したブラインタンク4内のブラインの温度が、−33℃を下回っているとの条件(以下、「条件B」ともいう)が満たされているときに、電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bを制御して蒸発器14への冷媒の供給量を増加させて蒸発器14によって低温側冷凍回路20の凝縮器22を冷却しつつ低温側冷凍回路20(蒸発器24)によってブラインを冷却する処理(「処理B」の一例)を各冷凍ユニット2に実行させる。
【0056】
この際に、長時間に亘る停止状態の後の起動直後であることに起因してブラインの温度が25℃程度となっている本例では、制御部7が上記の「処理A」を実行する。具体的には、制御部7は、まず、電子膨張弁23を制御して開度を低下させることで蒸発器24への冷媒の吐出量を減少させる。これにより、低温側冷凍回路20によるブラインの冷却が実質的に停止した状態となり、配管5a,5bを介して蒸発器24に高温のブラインが供給されても、蒸発器24内における冷媒の気化量が過剰に増加する事態(低温側冷凍回路20内の冷媒圧力が過剰に高くなる事態)が回避される。また、制御部7は、電磁弁13aを制御して凝縮器12から電子膨張弁13b(蒸発器14)への冷媒の通過を遮断させると共に、電磁弁15aを制御して凝縮器12から電子膨張弁15b(蒸発器16)への冷媒の通過を許容させる。これにより、凝縮器12において凝縮された冷媒が電子膨張弁15bを介して蒸発器16に供給される結果、配管5aを介して蒸発器16に供給されるブラインが蒸発器16において好適に冷却される。
【0057】
また、蒸発器16において冷却されたブラインは、配管5bを介して蒸発器24に供給されるものの、上記したように電子膨張弁23の開度が低下させられて蒸発器24への冷媒吐出量が減少させられているため、蒸発器24によって殆ど冷却されることなく、配管5c,5d、水素ガス冷却用熱交換器3および配管5eを介してブラインタンク4内に回収される。さらに、ブラインタンク4内に回収されたブラインは、両液送ポンプ6によって再び各冷凍ユニット2に供給されて高温側冷凍回路10の蒸発器16によって冷却される。また、制御部7は、センサ信号S4aに基づいて特定したブラインタンク4内のブラインの温度が−33℃を下回るまで(「条件A」が満たされている間)、上記の「処理A」を継続して実行する。これにより、ブラインタンク4、各冷凍ユニット2および水素ガス冷却用熱交換器3の間で循環させられているブラインの温度が徐々に低下する。
【0058】
一方、上記の「処理A」を継続することで、温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−33℃を下回ったときに、制御部7は、「条件B」が満たされたとして「処理B」を実行する。具体的には、制御部7は、電磁弁15aを制御して凝縮器12から電子膨張弁15b(蒸発器16)への冷媒の通過を遮断させると共に、電磁弁13aを制御して凝縮器12から電子膨張弁13b(蒸発器14)への冷媒の通過を許容させる。これにより、凝縮器12において凝縮された冷媒が電子膨張弁13bを介して蒸発器14に供給される結果、蒸発器14と一体化されている凝縮器22が蒸発器14によって好適に冷却され、低温側冷凍回路20(蒸発器24)においてブラインを冷却するのに必要とされる充分な量の冷媒が凝縮器22において凝縮される。
【0059】
また、制御部7は、電子膨張弁23を制御して開度を増加させることで蒸発器24への冷媒の吐出量を増加させる。これにより、ブラインタンク4から配管5a、蒸発器16および配管5bを介して蒸発器24に供給されるブラインが蒸発器24内の冷媒と熱交換させられて充分に冷却され、配管5c,5d、水素ガス冷却用熱交換器3および配管5eを介してブラインタンク4内に回収される。この場合、本例の水素ガス冷却装置1では、低温側冷凍回路20の蒸発器24によってブラインを冷却する「処理B」に先立って高温側冷凍回路10の蒸発器16によってブラインを冷却する「処理A」が実行されて、「処理B」に際して蒸発器24に供給されるブラインの温度が−33℃を下回る充分に低い温度となっている。したがって、蒸発器24内における冷媒の気化量が過剰に高くなって低温側冷凍回路20内の冷媒圧力が過剰に高くなる事態を招くことなく、ブラインを好適に冷却することが可能となる。
【0060】
また、水素ガス冷却用熱交換器3による水素ガスの冷却を行っていないこの状態においては、上記の「処理B」を継続することで、各冷凍ユニット2から水素ガス冷却用熱交換器3に供給されるブラインの温度(水素ガス冷却用熱交換器3を通過してブラインタンク4に回収されるブラインの温度)が徐々に低下する。この際に、水素ガス冷却用熱交換器3に供給されるブラインの温度が−38℃を下回ったときには、前述した「第3の処理」が実行されて、各冷凍ユニット2によって冷却されたブラインの大半が水素ガス冷却用熱交換器3に供給されることなく、配管5f,5eを介してブラインタンク4に回収される。したがって、「処理B」を継続して実行することにより、水素ガス冷却用熱交換器3が過冷却されることなく、ブラインタンク4内のブラインがさらに温度低下した状態となる。
【0061】
なお、上記の「処理B」における高温側冷凍回路10の制御に関しては、「第3の蒸発器」に相当する蒸発器16への冷媒の供給を停止すると共に「第1の蒸発器」に相当する蒸発器14への冷媒の供給を開始することにより、蒸発器16によってブラインを冷却することなく蒸発器14によって凝縮器22を冷却する上記の制御方法だけでなく、「処理B」を開始してからの経過時間が短いとき(高温側冷凍回路10の冷却可能温度の下限よりもブラインの温度が高いとき:一例として、ブライン温度が−40℃以上のとき)には、蒸発器16への冷媒の供給量を減少させると共に蒸発器14への冷媒の供給を開始することにより、蒸発器16によるブラインの冷却を継続しつつ蒸発器14によって凝縮器22を冷却する方法を採用することもできる。
【0062】
一方、各冷凍ユニット2によるブラインの冷却処理が継続されて、温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度(「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における熱媒液の温度」の一例)が−55℃(「予め規定された第1の温度」の一例)を下回ったときに、制御部7は、ブラインの温度が−55℃になったと特定した時点から予め規定された時間(数十秒から数百秒:一例として、300秒)が経過した時点において、センサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持しているか否かを判別する。この際に、後述するように水素ガス冷却用熱交換器3による水素ガスの冷却が行われず、ブラインタンク4内のブラインが−55℃を下回る温度を維持しているときに、制御部7は、「第1の条件」が満たされていると判別し、動作中の各冷凍ユニット2のうちの1台の冷凍能力を低下させる「第1の処理」を実行する。
【0063】
具体的には、冷凍ユニット2a〜2dの4台を動作させている本例(「複数の冷凍ユニットを動作させている状態」の一例)において「第1の条件」が満たされたと判別した制御部7は、一例として、冷凍ユニット2bを停止させる処理(冷凍ユニット2bの高温側冷凍回路10および低温側冷凍回路20を停止させる処理:「冷凍能力を低下させる」との処理の一例)を「第1の処理」として実行する。この際には、液送ポンプ6aによってブラインタンク4から液送されるブラインが停止状態の冷凍ユニット2bを通過させられるが、水素ガス冷却用熱交換器3における水素ガスの冷却が行われることなく、動作中の冷凍ユニット2a,2c,2dによって継続的に冷却されるため、ブラインタンク4内のブラインは、−55℃を下回る温度に維持される。これにより、ブラインタンク4内のブラインの温度が上昇する事態を招くことなく、冷凍ユニット2bを停止させた分だけ、水素ガス冷却装置1によって消費されるエネルギーが低減される。
【0064】
また、制御部7は、上記のようにブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持していると特定して冷凍ユニット2bを停止させた時点から予め規定された時間(本例では、300秒)が経過した時点において、センサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持しているか否かを再び判別する。この際に、ブラインタンク4内のブラインが−55℃を下回る温度を維持しているときに、制御部7は、「第1の条件」が満たされていると判別し、動作中の冷凍ユニット2a,2c,2dのうちの1台(一例として、冷凍ユニット2a)を停止させる処理を「第1の処理」として実行する。
【0065】
さらに、制御部7は、上記のようにブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持していると特定して冷凍ユニット2aを停止させた時点から予め規定された時間(本例では、300秒)が経過した時点において、センサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持しているか否かを再び判別する。この際に、ブラインタンク4内のブラインが−55℃を下回る温度を維持しているときに、制御部7は、「第1の条件」が満たされていると判別し、動作中の冷凍ユニット2c,2dのうちの1台(一例として、冷凍ユニット2d)を停止させる処理を「第1の処理」として実行する。
【0066】
また、制御部7は、上記のようにブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持していると特定して冷凍ユニット2dを停止させた時点から予め規定された時間(本例では、300秒)が経過した時点において、センサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る温度を維持しているか否かを再び判別する。この際に、制御部7は、ブラインタンク4内のブラインが−55℃を下回る温度を維持しており、「第1の条件」が満たされていると判別しても、冷凍ユニット2cの1台だけが動作中で、他の冷凍ユニット2a,2b,2dが停止状態のため、動作中の冷凍ユニット2cを停止させることなく、動作させた状態を維持する。
【0067】
これにより、動作を継続させられている冷凍ユニット2cによってブラインの冷却が継続されるため、周囲温度が高温となる夏期等においても、ブラインタンク4内のブラインが−55℃を下回る極低温に維持される。また、冷凍ユニット2a〜2dのうちの冷凍ユニット2a,2b,2dの3台を停止させたことにより、水素ガス冷却装置1によるエネルギーの消費量が充分に低減される。
【0068】
一方、ガスステーションにおいて水素燃料電池車などの自動車に水素ガスを充填する際には、一例として、ガスステーション側設備Xから水素ガス冷却装置1の制御部7に給気開始信号が出力され、これに伴い、制御部7が、水素ガス冷却用熱交換器3における水素ガスの冷却処理を開始する。この際に、制御部7は、まず、三方弁Va,Vbを制御して各冷凍ユニット2から配管5cに流出したブラインのすべてを配管5dに案内させると共に、二方弁Vcを制御して開口率を上昇させる。これにより、ブラインタンク4内に貯留されている極低温のブラインが各冷凍ユニット2を通過して水素ガス冷却用熱交換器3に供給される。
【0069】
また、ガスステーション側設備Xにおいては、ガスタンクXaからディスペンサーXbにガス配管Xcを介して水素ガスが供給されてディスペンサーXbから自動車の燃料タンク(ガスタンク:車両側タンク)内に充填される。この際に、水素ガスが水素ガス冷却用熱交換器3を通過させられる際に配管5dを介して水素ガス冷却用熱交換器3に供給された極低温のブラインと熱交換させられて冷却されるため、充分に温度低下した水素ガス(−33℃〜−40℃の水素ガス)が車両側タンク内に充填される結果、その充填効率を充分に向上させることが可能となる。
【0070】
また、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを冷却することで温度上昇したブラインは、配管5eを介してブラインタンク4に回収される。このため、水素ガスの冷却時には、温度上昇したブラインが流入することでブラインタンク4内のブラインの温度が上昇する。したがって、温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が「予め規定された第2の温度」の一例である−52℃を超えたときに、制御部7は、「第2の条件」が満たされたと判別して、冷凍能力を低下させている冷凍ユニット2(本例では、停止状態の冷凍ユニット2a,2b,2d)のすべて(「冷凍能力を低下させている冷凍ユニットのうちの少なくとも1台」が「すべて」の例)の冷凍能力を上昇させる「第2の処理」を実行する。
【0071】
この場合、停止状態に制御することで冷凍ユニット2の冷凍能力を低下させる構成が採用された本例の水素ガス冷却装置1では、停止状態の冷凍ユニット2を動作させる(再稼働させる)ことによって冷凍能力を上昇させることとなる。具体的には、冷凍ユニット2a,2b,2dの3台を停止させることで3台の冷凍能力を低下させている状態において、上記したようにセンサ信号S4aに基づいて特定されるブラインの温度が−52℃を超えて「第2の条件」が満たされたときに、制御部7は、停止状態の3台の冷凍ユニット2の動作を開始させる。
【0072】
より具体的には、制御部7は、停止状態の冷凍ユニット2a,2b,2dを制御して高温側冷凍回路10の圧縮機11および低温側冷凍回路20の圧縮機21による冷媒の圧縮処理を開始させると共に、ブラインタンク4内のブラインの温度に拘わらず、低温側冷凍回路20(蒸発器24)によるブラインの冷却を行うことなく高温側冷凍回路10(蒸発器16)によってブラインを冷却する「処理A」を実行させる。また、制御部7は、冷凍ユニット2a,2b,2dの動作を開始させてから予め規定された時間(一例として、300秒)が経過した時点において、ブラインタンク4内に設置されている温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいてブラインタンク4内のブラインの温度を特定する。
【0073】
この際に、例えば水素ガス冷却用熱交換器3において大量の水素ガスを冷却することで高温のブラインがブラインタンク4内に回収され、センサ信号S4aに基づいて特定されるブラインの温度が−33℃以上になっているとの「条件A」が満たされているときに、制御部7は、上記の「処理A」を継続して実行しつつ、センサ信号S4aに基づくブラインタンク4内のブラインの温度の監視を継続する。
【0074】
一方、冷凍ユニット2a,2b,2dの動作を開始させてから予め規定された時間が経過した時点においてセンサ信号S4aに基づいて特定したブラインタンク4内のブラインの温度が−33℃を下回っているときや、上記のように「処理A」を継続することでセンサ信号S4aに基づいて特定されるブラインタンク4内のブラインの温度が−33℃を下回ったときに、制御部7は、「条件B」が満たされたと判別し、電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bを制御して蒸発器14への冷媒の供給量を増加させて蒸発器14によって低温側冷凍回路20の凝縮器22を冷却しつつ低温側冷凍回路20(蒸発器24)によってブラインを冷却する「処理B」を各冷凍ユニット2a,2b,2dに実行させる。
【0075】
これにより、水素ガス冷却用熱交換器3における水素ガスの冷却によって温度上昇したブラインが−33℃を下回る極低温まで充分に冷却され、停止させられることなく動作を継続させられて「処理B」を実行している冷凍ユニット2c、および停止状態から再稼働させられて「処理A」に続いて「処理B」を実行している冷凍ユニット2a,2b,2dの4台によって、ブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回るまで「処理B」がそれぞれ実行される。この結果、水素ガスを冷却している水素ガス冷却用熱交換器3に対して、水素ガスの冷却に適した極低温のブラインが継続的に供給されるため、−33℃〜−40℃の範囲内の温度まで水素ガスを充分に冷却できる状態が維持される。
【0076】
また、自動車(車両側タンク)への水素ガスの充填が完了したときには、ガスステーション側設備Xから水素ガス冷却装置1の制御部7に給気終了信号が出力される。この際に、水素ガスの冷却が完了したと判別した制御部7は、温度センサ3aからのセンサ信号S3aに基づいて水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度を特定し、特定した温度に応じて、前述したように三方弁Va,Vbおよび二方弁Vcを制御する処理を実行する。また、制御部7は、温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいてブラインタンク4内のブラインの温度を特定し、特定した温度に基づいて前述した「第1の処理」や「第2の処理」を実行する。これにより、水素ガス冷却用熱交換器3における水素ガスの冷却が行われない状態が続いたときには、ブラインタンク4内のブラインの温度が−55℃を下回る状態が維持されつつ、動作中の冷凍ユニット2が1台ずつ停止させられる。
【0077】
このように、この水素ガス冷却装置1では、二元冷凍回路を有する複数の冷凍ユニット2を備えると共に、制御部7が、複数の冷凍ユニット2を動作させている状態で「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置(本例は、ブラインタンク4内)」におけるブラインの温度が「予め規定された第1の温度(本例では、−55℃)」を下回ってから「予め規定された時間(本例では、300秒)」が経過した時点において「予め規定された第1の位置」におけるブラインの温度が「予め規定された第1の温度」を下回っているとの「第1の条件」が満たされたときに、動作中の各冷凍ユニット2のうちの1台の冷凍能力を低下させる「第1の処理(本例では、冷凍ユニット2を停止させる処理)」を実行すると共に、冷凍ユニット2を1台だけ動作させている状態で「第1の条件」が満たされたときに動作中の冷凍ユニット2を停止させることなく動作させた状態を維持する。
【0078】
したがって、この水素ガス冷却装置1によれば、水素ガス冷却用熱交換器3に供給するブラインの温度が「第1の温度」まで充分に低下し、すべての冷凍ユニット2を動作させ続ける必要がないときに「第1の処理」の実行によって少なくとも1台の冷凍ユニット2の冷凍能力を低下させることで、ブラインが過冷却される事態を回避することができると共に、冷凍能力を低下させた冷凍ユニット2の分だけ水素ガス冷却装置1によるエネルギーの消費量を低減することができる。また、少なくとも1台の冷凍ユニット2を動作させ続けることで、例えば水素ガスの冷却によってブラインの温度が上昇したとしても、動作を継続させている冷凍ユニット2によってそのブラインを速やかに冷却し、水素ガスの冷却に適した温度のブラインを水素ガス冷却用熱交換器3に対して継続的に供給することができるため、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0079】
また、この水素ガス冷却装置1によれば、制御部7が、「予め規定された第1の位置」におけるブラインの温度が「予め規定された第2の温度(本例では、−52℃)」を超えているとの「第2の条件」が満たされたときに、冷凍能力を低下させている冷凍ユニット2のうちの少なくとも1台の冷凍能力を上昇させる「第2の処理(本例では、停止状態の冷凍ユニット2の動作を開始させる処理)」を実行することにより、例えば水素ガスの冷却によってブラインの温度が急激に上昇したとしても、冷凍能力を上昇させた冷凍ユニット2によってこれを速やかに冷却することができるため、水素ガスの冷却に適した温度のブラインを水素ガス冷却用熱交換器3に対して確実に供給することができ、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを一層確実に冷却することができる。
【0080】
さらに、この水素ガス冷却装置1では、低温側冷凍回路20の凝縮器22を冷却するための蒸発器14に加え、ブラインを冷却可能な蒸発器16と、蒸発器14,16への冷媒の供給量を調整する電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bとを備えて高温側冷凍回路10が構成され、かつ、ブラインが高温側冷凍回路10における蒸発器16および低温側冷凍回路20における蒸発器24をこの順で通過するようにブライン配管5(配管5b)によって両蒸発器16,24が相互に接続されると共に、制御部7が、「第2の処理」において停止状態の冷凍ユニット2の動作を開始させることでその冷凍ユニット2の冷凍能力を上昇させるときに、蒸発器24によるブラインの冷却を行うことなく蒸発器16によってブラインを冷却する「処理A」を実行した後に、電磁弁13a,15aおよび電子膨張弁13b,15bを制御して蒸発器14への冷媒の供給量を「処理A」の実行時よりも増加させて蒸発器14によって凝縮器22を冷却しつつ蒸発器24によってブラインを冷却する「処理B」を実行する。
【0081】
したがって、この水素ガス冷却装置1によれば、ブラインの温度が高温で冷凍能力を上昇させる際に低温側冷凍回路20によるブラインの冷却を実行しないことで、低温側冷凍回路20内の冷媒圧力が過剰に上昇するのを回避することができるため、圧縮機21が破損する事態や、圧縮機21の破損を回避するために低温側冷凍回路20を緊急停止させる事態を回避することができる。また、ブラインの温度が高温のときに「処理A」を実行して、高温のブラインの冷却に適した高温側冷凍回路10(蒸発器16)によってブラインを冷却することで高温のブラインを短時間で温度低下させ、低温側冷凍回路20によって好適に冷却可能な温度までブラインの温度が低下したときに「処理B」を実行して極低温までブラインを冷却可能な低温側冷凍回路20(蒸発器24)によってブラインを冷却することにより、高温のブラインを目標温度まで短時間で確実に冷却することができる。これにより、ブラインを目標温度まで低下させるのに要するエネルギー量も少量化することもできる。
【0082】
また、この水素ガス冷却装置1によれば、ブラインタンク4と、冷凍ユニット2によって冷却したブラインを水素ガス冷却用熱交換器3に供給する配管5c,5dからなる「第1の配管」に配設されて水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量を調整する二方弁Vc、および「第1の配管」に配設されてブラインタンク4へのブラインの戻り量を調整する三方弁Va,Vbとを備え、制御部7が、ブライン循環路内の「予め規定された第2の位置(本例では、水素ガス冷却用熱交換器3内)」におけるブラインの温度が予め規定された「第3の温度(本例では、−38℃)」を下回っているとの「第3の条件」が満たされたときに、三方弁Va,Vbおよび二方弁Vcを制御して水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量を減少させる「第3の処理」を実行することにより、水素ガス冷却用熱交換器3が過冷却される事態を好適に回避できる結果、水素ガス冷却用熱交換器3内の配管の過冷却に起因する劣化を回避して水素ガス冷却用熱交換器3の耐用寿命を充分に長くすることができる。
【0083】
さらに、この水素ガス冷却装置1によれば、制御部7が、「予め規定された第2の位置」におけるブラインの温度が「第3の温度」よりも高温の予め規定された「第4の温度(本例では、−35℃)」を超えているとの「第4の条件」が満たされたときに、三方弁Va,Vbおよび二方弁Vcを制御して水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量を増加させる「第4の処理」を実行することにより、水素ガスの冷却に適した極低温のブラインを水素ガス冷却用熱交換器3に対して確実に供給することができる結果、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0084】
また、この水素ガス冷却装置1によれば、制御部7が、ブラインタンク4に配設された温度センサ4aからのセンサ信号S4aに基づいて特定したブラインの温度を「予め規定された第1の位置の熱媒液の温度」として特定することにより、例えば、「第1の位置」とは異なる位置のブラインの温度を監視して「第1の位置」におけるブラインの温度を演算し、演算した温度に基づいて「第1の条件」などが満たされているかを判別して「第1の処理」などを実行する構成の「水素ガス冷却装置」とは異なり、温度センサ4aからのセンサ信号S4aによって特定したブラインの温度に基づいて「第1の条件」などが満たされているか否かを直接的に判別することができるため、煩雑な演算処理を実行することなく、「第1の処理」等を的確に実行してブラインを効率良く冷却することができる。また、大量のブラインが貯留されるブラインタンク4内のブラインの温度を監視する構成を採用することで、水素ガス冷却装置1全体としてのブラインの平均的な温度に基づいて「第1の条件」などが満たされているか否かを的確に判別することができる。
【0085】
なお、「水素ガス冷却装置」の構成は、上記の水素ガス冷却装置1の構成に限定されない。例えば、「水素ガス冷却装置」を構成する「冷凍ユニット」の台数は、上記の水素ガス冷却装置1の例のような4台に限定されず、2台、3台、および5台以上の任意の台数の「冷凍ユニット」を備えて構成することができる。また、「冷凍ユニット」における「高温側冷凍回路」は、上記の水素ガス冷却装置1における冷凍ユニット2の高温側冷凍回路10のように「第3の蒸発器(蒸発器16)」を備えた冷凍回路に限定されず、「高温側冷凍回路」の「蒸発器」によって「低温側冷凍回路」の「凝縮器」を冷却すると共に「低温側冷凍回路」の「蒸発器」によって「熱媒液」を冷却可能に構成された通常の二元冷凍回路を備えてこれを構成することができる。
【0086】
さらに、「第1の条件」が満たされたときに動作中の冷凍ユニット2を停止させることで冷凍能力を低下させる処理を「第1の処理」として実行する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、「第1の条件」が満たされたときに動作中の「冷凍ユニット」のうちの少なくとも1台において、「膨張弁」の開度や「圧縮機」の運転速度を調整することで「蒸発器」への冷媒供給量を減少させて冷凍能力を低下させる処理を「第1の処理」として実行する構成を採用することもできる。また、「第1の処理」において冷凍能力を低下させる台数については、1台に限定されず、2台以上の任意の台数において冷凍能力を低下させる構成を採用することができる。
【0087】
さらに、「第2の条件」が満たされたときに停止状態の冷凍ユニット2を操作させる(再稼働させる)ことで冷凍能力を上昇させる処理を「第2の処理」として実行する構成を例に挙げて説明したが、「第1の処理」において冷凍ユニット2を停止させずに冷凍能力を低下させる構成を採用している場合には、「第2の条件」が満たされたときに冷凍能力を低下させている「冷凍ユニット」のうちの少なくとも1台において、「膨張弁」の開度や「圧縮機」の運転速度を調整することで「蒸発器」への冷媒供給量を増加させて冷凍能力を上昇させる処理を「第2の処理」として実行する構成を採用することもできる。また、「第2の処理」において冷凍能力を上昇させる台数については、「冷凍能力を低下させている冷凍ユニットのすべて」に限定されず、1台以上の任意の台数において冷凍能力を上昇させる構成を採用することができる。
【0088】
さらに、前述した水素ガス冷却装置1では、各冷凍ユニット2によって冷却するブラインの温度が高いとき(ブラインタンク4内のブラインの温度が−33℃以上のとき)に、低温側冷凍回路20によってブラインを冷却することなく高温側冷凍回路10の蒸発器16によってブラインを冷却する構成が採用されているが、このような構成に代えて、ブラインの温度が高いときにも、高温側冷凍回路10(蒸発器16)および低温側冷凍回路20(蒸発器24)の双方によってブラインを冷却する構成を採用することができる。
【0089】
また、ブラインタンク4内を「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置」とし、かつ水素ガス冷却用熱交換器3内を「熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置」としてブラインタンク4内のブラインの温度や水素ガス冷却用熱交換器3内のブラインの温度を特定する構成を例に挙げて説明したが、「第1の位置」や「第2の位置」は、この例に限定されない。さらに、ブライン配管5内の任意の位置(「第1の位置」や「第2の位置」とは異なる位置)のブラインの温度に基づいて「第1の位置」や「第2の位置」のブラインの温度を特定する(演算する)構成を採用することもできる。
【0090】
さらに、上記の水素ガス冷却装置1におけるブラインタンク4に代えて、各冷凍ユニット2の蒸発器24を通過させたブラインを貯液可能なブラインタンク(貯液槽)を設け、そのブラインタンクから水素ガス冷却用熱交換器3にブラインを供給して水素ガスを冷却する構成を採用することもできる。具体的には、一例として、上記の水素ガス冷却装置1の各構成要素のうち、ブラインタンク4を取り除いて配管5eを各配管5aに直接接続し、かつ三方弁Va,Vbおよび配管5fを取り除いて各配管5cを配管5dに直接接続すると共に、図1に一点鎖線で示すように、配管5dにおける各配管5cとの接続部位と二方弁Vcの配設部位との間にブラインタンク8(「貯液槽」の他の一例)を配設する。
【0091】
このような構成を採用することにより、各冷凍ユニット2によって冷却したブラインをブラインタンク8に貯液した後にブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3に供給すると共に、水素ガス冷却用熱交換器3から回収したブラインを各冷凍ユニット2に直接供給して冷却した後に再びブラインタンク8に貯液することができる。この場合、このような構成の「水素ガス冷却装置」では、配管5dにおけるブラインタンク8と水素ガス冷却用熱交換器3との間の部位が「第2の配管」に相当すると共に、この「第2の配管」に配設されている二方弁Vcが「第3の調整弁」に相当してブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3へのブラインの供給量を調整する。
【0092】
また、ブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3にブラインを供給する構成の「水素ガス冷却装置」では、一例として、制御部7が、「熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置(一例として、水素ガス冷却用熱交換器3内)」における熱媒液の温度が「予め規定された第3の温度(例えば、−38℃)」を実質的に下回っているとの「第5の条件」が満たされたときに、「第3の調整弁」としての二方弁Vcを制御してブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3への熱媒液の供給量を減少させる「第5の処理」を実行することにより、前述した水素ガス冷却装置1と同様にして、水素ガス冷却用熱交換器3が過冷却される事態を好適に回避できる結果、水素ガス冷却用熱交換器3内の配管の過冷却に起因する劣化を回避して水素ガス冷却用熱交換器3の耐用寿命を充分に長くすることができる。
【0093】
さらに、ブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3にブラインを供給する構成の「水素ガス冷却装置」では、一例として、制御部7が、上記の「予め規定された第2の位置」における熱媒液の温度が「第3の温度」よりも高温の「予め規定された第4の温度(例えば、−35℃)」を実質的に超えているとの「第6の条件」が満たされたときに、「第3の調整弁」としての二方弁Vcを制御してブラインタンク8から水素ガス冷却用熱交換器3への熱媒液の供給量を増加させる「第6の処理」を実行することにより、上記の水素ガス冷却装置1と同様にして、水素ガスの冷却に適した極低温の熱媒液を水素ガス冷却用熱交換器3に対して確実に供給することができる結果、水素ガス冷却用熱交換器3において水素ガスを確実に冷却することができる。
【0094】
また、「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回る」との状態は、「第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を下回る」との状態(例えば、「ブラインタンク4内(第1の位置)におけるブラインの温度が−55℃(予め規定された第1の温度)を下回る」との状態)だけでなく、「熱媒液循環路内の第1の位置とは異なる位置における熱媒液の温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」、および「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」などの各種のパラメータが、「第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第1の温度を下回る」との条件を満たす値となっている状態がこれに含まれる。
【0095】
同様にして、「熱媒液循環路内の予め規定された第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を実質的に超える」との状態は、「第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を超える」との状態(例えば、「ブラインタンク4内(第1の位置)におけるブラインの温度が−52℃(予め規定された第2の温度)を超える」との状態)だけでなく、「熱媒液循環路内の第1の位置とは異なる位置における熱媒液の温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」、および「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」などの各種のパラメータが、「第1の位置における熱媒液の温度が予め規定された第2の温度を超える」との条件を満たす値となっている状態がこれに含まれる。
【0096】
さらに、「熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を実質的に下回る」との状態は、「第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を下回る」との状態(例えば、「水素ガス冷却用熱交換器3内(第2の位置)におけるブラインの温度が−38℃(予め規定された第3の温度)を下回る」との状態)だけでなく、「熱媒液循環路内の第2の位置とは異なる位置における熱媒液の温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」、および「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」などの各種のパラメータが、「第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第3の温度を下回る」との条件を満たす値となっている状態がこれに含まれる。
【0097】
同様にして、「熱媒液循環路内の予め規定された第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第4の温度を実質的に超える」との状態は、「第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第4の温度を超える」との状態(例えば、「水素ガス冷却用熱交換器3内(第2の位置)におけるブラインの温度が−35℃(予め規定された第4)の温度を超える」との状態)だけでなく、「熱媒液循環路内の第2の位置とは異なる位置における熱媒液の温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒温度」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒温度の温度差」、「高温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「低温側冷凍回路内の予め規定された位置における冷媒圧力」、「高温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」、および「低温側冷凍回路内の予め規定された2つの位置における冷媒圧力の差圧」などの各種のパラメータが、「第2の位置における熱媒液の温度が予め規定された第4の温度を超える」との条件を満たす値となっている状態がこれに含まれる。
【0098】
また、ブラインタンク4,8等の「貯液槽」を設けずに、各冷凍ユニット2と水素ガス冷却用熱交換器3との間でブラインを循環させる構成を採用することもできる(図示せず)。さらに、ガスステーション側設備Xからの給気開始信号の出力に連動して水素ガスの冷却処理を開始し、給気終了信号の出力に連動して水素ガスの冷却処理を終了する構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、例えば、水素ガス冷却用熱交換器3から流出するブラインの温度を監視すると共に、水素ガスの充填開始に伴って水素ガス冷却用熱交換器3から流出するブラインの温度が規定温度以上になったときに水素ガスの冷却処理を開始し、水素ガスの充填終了に伴って水素ガス冷却用熱交換器3から流出するブラインの温度が規定温度を下回ったときに水素ガスの冷却処理を終了する構成を採用することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 水素ガス冷却装置
2a〜2d 冷凍ユニット
3 水素ガス冷却用熱交換器
3a,4a 温度センサ
4 ブラインタンク
5 ブライン配管
5a〜5f 配管
6a,6b 液送ポンプ
7 制御部
10 高温側冷凍回路
11,21 圧縮機
12,22 凝縮器
13a,15a 電磁弁
13b,15b,23 電子膨張弁
14,16,24 蒸発器
20 低温側冷凍回路
S3a,S4a センサ信号
Va,Vb 三方弁
Vc 二方弁
【要約】
【課題】熱媒液の過冷却に起因するエネルギーの浪費や配管等の劣化を招くことなく、水素ガス冷却用熱交換器に対して水素ガスの冷却に適した極低温の熱媒液を確実に供給し得る水素ガス冷却装置を提供する。
【解決手段】複数の冷凍ユニット2a〜2dを動作させている状態でブラインタンク4内のブライン(熱媒液)の温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回ってから予め規定された時間が経過した時点においてブラインタンク4内のブラインの温度が予め規定された第1の温度を実質的に下回っているとの第1の条件が満たされたときに動作中の各冷凍ユニット2a〜2dのうちの1台の冷凍能力を低下させる第1の処理を実行すると共に、冷凍ユニット2a〜2dのうちの1台だけ動作させている状態で第1の条件が満たされたときに動作中の冷凍ユニット2a〜2dのうちの1台を停止させることなく動作させた状態を維持する。
【選択図】図1
図1
図2