特許第5732795号(P5732795)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732795
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】車両用ドアハンドル装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 85/16 20140101AFI20150521BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20150521BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   E05B85/16 Z
   B60J5/04 H
   B60J5/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-212498(P2010-212498)
(22)【出願日】2010年9月22日
(65)【公開番号】特開2012-67491(P2012-67491A)
(43)【公開日】2012年4月5日
【審査請求日】2013年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】石田 俊彦
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−085032(JP,A)
【文献】 米国特許第05123687(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 85/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアのドア外板をなすパネル部材の車両室内側に固定されるフレーム部材と、
前記車両ドアの移動方向における前記フレーム部材の一側に回動自在に連結され、付勢部材により前記フレーム部材との相対位置が初期位置に保持されるように付勢されるホルダ部材と、
前記パネル部材の車両外側に配置され、前記車両ドアの移動方向における一側及び他側で前記パネル部材を貫通して前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ回動自在に嵌挿される第1連結部及び第2連結部を有するハンドグリップとを備え、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか一方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材により前記初期位置に保持された前記ホルダ部材に対し前記ハンドグリップの前記第1連結部を回動させて前記車両ドアを前記全閉状態で保持する全閉ラッチ機構及び前記車両ドアを前記全開状態で保持する全開ラッチ機構のいずれか一方を解除するための操作力を発生し、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか他方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材の付勢力に抗して前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材を回動させつつ前記フレーム部材に対し前記ハンドグリップの前記第2連結部を回動させて前記全閉ラッチ機構及び前記全開ラッチ機構のいずれか他方を解除するための操作力を発生してなり、
前記第2連結部が貫通する前記パネル部材の透孔が、前記第1連結部から離隔する側に形成する隙間を閉塞するキャップ部材と、
前記ハンドグリップ及び前記キャップ部材間に形成され、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材が回動する際に、前記フレーム部材に対し前記第2連結部の前記回動を抑制する凹凸形状とを備えたことを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
車両ドアのドア外板をなすパネル部材の車両室内側に固定されるフレーム部材と、
前記車両ドアの移動方向における前記フレーム部材の一側に回動自在に連結され、付勢部材により前記フレーム部材との相対位置が初期位置に保持されるように付勢されるホルダ部材と、
前記パネル部材の車両外側に配置され、前記車両ドアの移動方向における一側及び他側で前記パネル部材を貫通して前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ回動自在に嵌挿される第1連結部及び第2連結部を有するハンドグリップとを備え、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか一方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材により前記初期位置に保持された前記ホルダ部材に対し前記ハンドグリップの前記第1連結部を回動させて前記車両ドアを前記全閉状態で保持する全閉ラッチ機構及び前記車両ドアを前記全開状態で保持する全開ラッチ機構のいずれか一方を解除するための操作力を発生し、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか他方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材の付勢力に抗して前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材を回動させつつ前記フレーム部材に対し前記ハンドグリップの前記第2連結部を回動させて前記全閉ラッチ機構及び前記全開ラッチ機構のいずれか他方を解除するための操作力を発生してなり、
前記ホルダ部材は、前記フレーム部材に対し回動自在に固定されており、
前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材が回動する際に、前記第1連結部は前記ホルダ部材を摺動することを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
車両ドアのドア外板をなすパネル部材の車両室内側に固定されるフレーム部材と、
前記車両ドアの移動方向における前記フレーム部材の一側に回動自在に連結され、付勢部材により前記フレーム部材との相対位置が初期位置に保持されるように付勢されるホルダ部材と、
前記パネル部材の車両外側に配置され、前記車両ドアの移動方向における一側及び他側で前記パネル部材を貫通して前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ回動自在に嵌挿される第1連結部及び第2連結部を有するハンドグリップとを備え、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか一方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材により前記初期位置に保持された前記ホルダ部材に対し前記ハンドグリップの前記第1連結部を回動させて前記車両ドアを前記全閉状態で保持する全閉ラッチ機構及び前記車両ドアを前記全開状態で保持する全開ラッチ機構のいずれか一方を解除するための操作力を発生し、
全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか他方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材の付勢力に抗して前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材を回動させつつ前記フレーム部材に対し前記ハンドグリップの前記第2連結部を回動させて前記全閉ラッチ機構及び前記全開ラッチ機構のいずれか他方を解除するための操作力を発生してなり、
前記第2連結部は、前記車両ドアを開側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記ホルダ部材に対し前記第1連結部が回動する際に、前記全閉ラッチ機構に機械的に連結された伝達部材に解除操作力を伝達する作用部を備え、
前記作用部は、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記第2連結部が回動する際に前記伝達部材と摺接するように、前記第2連結部の回動中心を中心とする円弧面を有することを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、
前記第2連結部に形成されたガイド溝と、
前記フレーム部材に設けられ、前記ガイド溝に嵌入して前記ホルダ部材に対する前記第1連結部の回動を案内するガイド突部とを備え、
前記ガイド突部は、前記フレーム部材に対する前記第2連結部の回動軸をなすことを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式の車両ドアの開閉操作を車両外側から行うための車両用ドアハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアハンドル装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。この車両用ドアハンドル装置は、車両ドアのパネル部材の車両室内側に固定されるフレーム部材と、パネル部材の車両外側に配置されフレーム部材に係合・支持されるハンドグリップと、これらフレーム部材及びハンドグリップ間に介装されるリンク機構とを備えて構成される。そして、全閉状態にある車両ドアを開操作する場合には、該車両ドアを移動させる一方向と同方向にハンドグリップを操作してこれを引き起こすことで、全閉ロック機構を解除する。一方、全開状態にある車両ドアを閉操作する場合には、該車両ドアを移動させる他方向(前記一方向とは反対方向)にハンドグリップを操作しリンク機構を介してハンドグリップをスライド動作させることで、全開ロック機構を解除する。このように、車両ドアの開操作及び閉操作のいずれにおいても、該車両ドアをスライド移動させる方向と同方向にハンドグリップを操作することによって一連の動作でスムーズに車両ドアを開閉できるようになっている。
【0003】
一方、特許文献2に記載された車両用ドアハンドル装置では、ハンドグリップに、施錠時の交信開始用のスイッチとして機能する押しボタンスイッチ及び解錠時の交信開始用のスイッチとして機能する静電センサをその通信アンテナとともに搭載することが提案されている。従って、仮にこれらスイッチ等を、車両ドアを開閉操作するためのトリガーを与えるスイッチと解釈すれば、ユーザ認証デバイス(いわゆる携帯機)を所持するユーザが近づき当該スイッチを操作することで、ユーザ適合を確認し、その後、ロック機構を解除し、続けて車両ドアを電動で開閉作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−85032号公報
【特許文献2】特開2009−235849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の車両用ドアハンドル装置では、パネル部材を挟んでその車両室内側及び車両外側にそれぞれ配置されるフレーム部材及びハンドグリップをリンク機構を介して連携する際の組付方法について何ら言及されていない。現実的には、フレーム部材、ハンドグリップ及びリンク機構を予めユニット化した状態でパネル部材に固定することになると推定される。この場合、実質的に装置全体が車両外側に露出することになって防犯性が低下し、あるいはパネル部材との結合強度を十分に確保できずに剛性不足に陥る可能性がある。
【0006】
一方、特許文献1の車両用ドアハンドル装置では、車両ドアを開閉操作するために、ユーザは、特定の位置を狙ってスイッチを操作する必要がある。このため、スイッチの配置や大きさによっては、使い勝手が悪くなる可能性がある。結果として、ユーザがスイッチを操作する場合、ハンドグリップを握り、指の操作支点をハンドグリップ上に固定した安定した状態で、スイッチを操作することになり、自ずと操作性が悪化することになる。
【0007】
本発明の目的は、組付性に優れ、且つ、車両ドアの開閉操作に対し違和感のない方向へのハンドグリップの操作によって車両ドアを開閉することができる車両用ドアハンドル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1〜3に記載の発明は、車両ドアのドア外板をなすパネル部材の車両室内側に固定されるフレーム部材と、前記車両ドアの移動方向における前記フレーム部材の一側に回動自在に連結され、付勢部材により前記フレーム部材との相対位置が初期位置に保持されるように付勢されるホルダ部材と、前記パネル部材の車両外側に配置され、前記車両ドアの移動方向における一側及び他側で前記パネル部材を貫通して前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ回動自在に嵌挿される第1連結部及び第2連結部を有するハンドグリップとを備え、全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか一方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材により前記初期位置に保持された前記ホルダ部材に対し前記ハンドグリップの前記第1連結部を回動させて前記車両ドアを前記全閉状態で保持する全閉ラッチ機構及び前記車両ドアを前記全開状態で保持する全開ラッチ機構のいずれか一方を解除するための操作力を発生し、全閉状態にある前記車両ドアを開側に移動させる方向及び全開状態にある前記車両ドアを閉側に移動させる方向のいずれか他方と同方向に前記ハンドグリップが操作されることで、前記付勢部材の付勢力に抗して前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材を回動させつつ前記フレーム部材に対し前記ハンドグリップの前記第2連結部を回動させて前記全閉ラッチ機構及び前記全開ラッチ機構のいずれか他方を解除するための操作力を発生してなることを要旨とする。
【0009】
同構成によれば、前記車両ドアの開操作及び閉操作のいずれにおいても、該車両ドアをその移動方向における側(開側又は閉側)に移動させる方向と同方向に前記ハンドグリップを操作することによって、これに連動して前記全閉ラッチ機構又は前記全開ラッチ機構を解除して前記車両ドアを開閉することができる。このように、前記車両ドアの開閉操作に対し違和感のない方向への前記ハンドグリップの操作によって、前記車両ドアを開閉することができる。特に、前記ハンドグリップの前記第1連結部及び前記第2連結部は、前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ回動自在に嵌挿される構成であるため、前記パネル部材の車両外側から前記第1連結部及び前記第2連結部を貫通させて前記ホルダ部材及び前記フレーム部材にそれぞれ嵌め挿し込むことで、前記ハンドグリップを容易に組み付けることができる。
【0010】
なお、「解除するための操作力」は、前記全閉ラッチ機構又は前記全開ラッチ機構を最終的に解除するための解除力が、「機械的連結を通じて伝わるハンドグリップの操作力」であってもよいし、「ハンドグリップの操作力をトリガーとして働く電気的な解除力」であってもよい。
【0011】
とくに、請求項に記載の発明は、前記第2連結部が貫通する前記パネル部材の透孔が、前記第1連結部から離隔する側に形成する隙間を閉塞するキャップ部材と、前記ハンドグリップ及び前記キャップ部材間に形成され、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材が回動する際に、前記フレーム部材に対し前記第2連結部の前記回動を抑制する凹凸形状とを備えたことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、前記フレーム部材に対して前記ホルダ部材が回動して前記全開ラッチ機構を解除するための操作力が発生する際に、前記凹凸形状により、前記全閉ラッチ機構を解除するための操作力が発生することを抑制できる。従って、動作信頼性が向上することができる。
【0013】
とくに、請求項に記載の発明は、前記ホルダ部材は、前記フレーム部材に対し回動自在に固定されており、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材が回動する際に、前記第1連結部は前記ホルダ部材を摺動することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、前記フレーム部材に対し前記ホルダ部材が回動するとき、該ホルダ部材の回動に伴う前記第1連結部の位置ずれを前記ホルダ部材に対する摺動によって吸収することができる。一方、前記ホルダ部材は、前記フレーム部材に対し回動自在に固定されているため、その回動動作を安定して行うことができる。
とくに、請求項3に記載の発明は、前記第2連結部は、前記車両ドアを開側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記ホルダ部材に対し前記第1連結部が回動する際に、前記全閉ラッチ機構に機械的に連結された伝達部材に解除操作力を伝達する作用部を備え、前記作用部は、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記第2連結部が回動する際に前記伝達部材と摺接するように、前記第2連結部の回動中心を中心とする円弧面を有することを要旨とする。
同構成によれば、前記車両ドアを閉側に移動させる方向と同方向への前記ハンドグリップの操作に伴い前記フレーム部材に対し前記第2連結部が回動する際、前記作用部は、前記円弧面が前記伝達部材と摺接する。従って、前記フレーム部材に対し前記第2連結部が回動しても、前記伝達部材(全閉ラッチ機構)に対し解除操作力が伝達されることがなく、必要な操作力を軽減することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用ドアハンドル装置において、前記第2連結部に形成されたガイド溝と、前記フレーム部材に設けられ、前記ガイド溝に嵌入して前記ホルダ部材に対する前記第1連結部の回動を案内するガイド突部とを備え、前記ガイド突部は、前記フレーム部材に対する前記第2連結部の回動軸をなすことを要旨とする。
【0016】
同構成によれば、前記ガイド溝に嵌入する前記ガイド突部によって、前記ホルダ部材に対する前記第1連結部の回動が案内されるため、前記ハンドグリップの動作をより安定化することができる。また、前記ガイド突部を、前記フレーム部材に対する前記第2連結部の回動軸として兼用することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、組付性に優れ、且つ、車両ドアの開閉操作に対し違和感のない方向へのハンドグリップの操作によって車両ドアを開閉することができる車両用ドアハンドル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)(b)は、本発明の第1の実施形態を示す平面図及び側面図。
図2】同実施形態を示す拡大図。
図3】同実施形態の動作を示す模式図。
図4】(a)(b)は、同実施形態の開操作時の動作を示す説明図。
図5】(a)(b)は、同実施形態の閉操作時の動作を示す説明図。
図6】スライドドアを示す模式図。
図7】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図6は、本発明が適用される車両ドアとしてのスライドドア1を車両幅方向外側から見た正面図である。このスライドドア1は、車両前後方向に移動することで車両ボディに形成された乗降用の開口部を開閉する。同図に示されるように、このスライドドア1は、その車両後側及び前側に内蔵された全閉ラッチ機構としてのリアロック2及びフロントロック3を備える。これらリアロック2及びフロントロック3は、スライドドア1を全閉状態で保持するためのものである。また、スライドドア1は、その車両前側下部に内蔵された全開ラッチ機構としての全開ロック4を備える。この全開ロック4は、スライドドア1を全開状態で保持するためのものである。
【0022】
さらに、スライドドア1は、フロントロック3の上側に内蔵されたリモコン5を備える。このリモコン5は、リアロック2、フロントロック3及び全開ロック4とそれぞれ機械的に連係されている。また、リモコン5は、スライドドア1のドア外板をなすパネル部材としてのドアアウターパネル10に設置されたハンドグリップ11と機械的に連係されている。このハンドグリップ11は、樹脂材からなり、車両前後方向に延在する。ハンドグリップ11がスライドドア1を開側に移動させる方向と同方向に操作されると、その操作力がリモコン5を介してリアロック2、フロントロック3及び全開ロック4に伝達されてスライドドア1の全閉状態又は全開状態での保持が解除可能になっている。
【0023】
さらにまた、スライドドア1は、リアロック2近傍に内蔵されたアクチュエータ6を備える。このアクチュエータ6は、リアロック2に駆動連結されるとともに、リモコン5に機械的に連係されている。そして、このアクチュエータ6が駆動されると、その駆動力がリアロック2に伝達されるとともに、リモコン5を介してフロントロック3及び全開ロック4に伝達されてスライドドア1の全閉状態又は全開状態での保持が解除可能になっている。
【0024】
図1(a)(b)は、本実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を車両上側から見た平面図及び車両幅方向(ドア厚さ方向)に車両室内側から見た側面図である。同図に示されるように、この車両用ドアハンドル装置は、ドアアウターパネル10の車両室内側に固定される樹脂材からなるフレーム部材12を備える。このフレーム部材12は、その車両外側面がドアアウターパネル10の外形に沿うように成形されており、車両後側(スライドドア1の移動方向における開側)の端部及び車両前側(スライドドア1の移動方向における閉側)の端部に収容部12a及び開口部12bをそれぞれ有する。収容部12aは、車両外側に開口する略四角箱状に成形されており、開口部12bは、車両幅方向(ドア厚さ方向)に連通している。なお、ドアアウターパネル10には、フレーム部材12の収容部12a及び開口部12bに対応した位置で透孔10a,10bが形成されている。
【0025】
また、車両用ドアハンドル装置は、収容部12aに収容された樹脂材からなる略四角箱状のホルダ部材13を備える。このホルダ部材13は、収容部12aの車両前側の端部において、車両上下方向に中心線の延びるピン14によりフレーム部材12に回動自在に連結・固定されている。そして、このピン14は、フレーム部材12及びホルダ部材13に各端末の係止された付勢部材としてのコイルスプリング15に挿通されている。コイルスプリング15は、フレーム部材12及びホルダ部材13の相対位置(相対回動位置)がそれらの底壁同士の重なる所定の初期位置に保持されるように付勢力を発する。
【0026】
なお、ホルダ部材13には、その車両後側の開口端から前側に延出する支持部13aが形成されるとともに、その後側壁から前側に突設された上下一対の支持壁部13bが形成されている。
【0027】
前記ハンドグリップ11は、ホルダ部材13(収容部12a)及びフレーム部材12の開口部12bに臨む後端部及び前端部の対向面から内側(車両室内側)にそれぞれ延出する第1連結部としての腕部11a及び第2連結部としての脚部11bを有する。ハンドグリップ11は、ドアアウターパネル10の透孔10a,10bを車両外側から貫通するこれら腕部11a及び脚部11bがホルダ部材13及び開口部12bにそれぞれ挿入されることで、フレーム部材12との間にドアアウターパネル10を挟んだ状態でフレーム部材12等に連結される。
【0028】
このとき、ハンドグリップ11は、腕部11aにおいてホルダ部材13に対し回動自在に嵌挿される。すなわち、図2に拡大して示したように、腕部11aの先端部には、上下方向に中心線の延びる円柱状の回動連結部21が設けられている。この回動連結部21は、ホルダ部材13内で前記支持部13a及び両支持壁部13bに挟持されており、腕部11a(ハンドグリップ11)は、前記初期位置にあるホルダ部材13内の回動連結部21を支点に回動自在となっている。
【0029】
なお、回動連結部21は、支持部13a及び両支持壁部13b間で車両後側への若干の移動が許容されている。また、腕部11aは、回動連結部21の車両前側でその上面及び下面から突設されたハンドル凸部48を有する。このハンドル凸部48は、ホルダ部材13に突設されたリンク凸部49の車両後側面に当接又は近接する。これらハンドル凸部48及びリンク凸部49は、ハンドグリップ11に強い引張り力が働いたときに、相互に干渉することで、ハンドグリップ11のホルダ部材13からの脱落を抑制する。
【0030】
ハンドグリップ11は、脚部11bにおいてフレーム部材12に対し回動自在に嵌挿される。すなわち、脚部11bの上面及び下面には、前記回動連結部21を中心とする円弧状のガイド溝22が形成されている。このガイド溝22は、車両室内側端で後側に連通する開口22aを有する。一方、開口部12bには、ガイド溝22に嵌入する一対の略円柱状のピン23が突設されている。脚部11b(ハンドグリップ11)は、フレーム部材12に対しホルダ部材13をピン14周りに回動させつつ、ガイド溝22に嵌入するピン23を支点に回動自在となっている。なお、フレーム部材12に対しホルダ部材13がピン14周りに前記初期位置から回動する際、前記回動連結部21は、支持部13a及び両支持壁部13b間で車両後側に移動する。
【0031】
脚部11bは、その先端部から車両後側に延出する作用部24を有する。この作用部24には、前記リモコン5と機械的に連結されたベルクランク25が係合されている。従って、スライドドア1を開側に移動させる方向と同方向(即ち後方)にハンドグリップ11が操作され、該ハンドグリップ11が前記初期位置にあるホルダ部材13内の回動連結部21を支点に前側(脚部11b側)が車両外側に開くように回動すると、作用部24を通じてベルクランク25に操作力が伝達される。この操作力が、リモコン5を介してリアロック2、フロントロック3及び全開ロック4に伝達されることで、前述のスライドドア1の全閉状態又は全開状態での保持が解除可能になっている。
【0032】
なお、ハンドグリップ11の前端部には、フレーム部材12及び脚部11bに各端末の係止された復帰スプリング28が保持されている。この復帰スプリング28は、ハンドグリップ11がホルダ部材13内の回動連結部21を支点に脚部11bが開口部12b内に挿入される側に回動する付勢力を発する。従って、ハンドグリップ11は、前記コイルスプリング15によりホルダ部材13が前記初期位置に保持され、復帰スプリング28により脚部11bが開口部12b内に挿入される側に保持されることで、通常は後端部及び前端部ともにドアアウターパネル10側に閉じた状態(以下、非操作状態ともいう)になっている。
【0033】
また、ハンドグリップ11は、その前端部に非操作状態における慣性力を調整するためのウェイト29を支持する。換言すれば、コイルスプリング15の付勢力は、復帰スプリング28の付勢力(ハンドル戻し力)、ウェイト29等による慣性バランスでの荷重とバランスをとった荷重に設定されている。
【0034】
ドアアウターパネル10には、ハンドグリップ11の車両前側でキャップ部材30が取着されている。このキャップ部材30は、ドアアウターパネル10に臨む対向面から内側(車両室内側)に延出する延出部30aを有しており、ハンドグリップ11の脚部11bが貫通する前記透孔10bがその車両前側(腕部11aから離隔する側)に形成する隙間に延出部30aが挿入される態様で該隙間を閉塞する。
【0035】
また、ハンドグリップ11及びキャップ部材30間には、スライドドア1を閉側に移動させる方向と同方向へのハンドグリップ11の操作に伴いフレーム部材12に対しホルダ部材13が回動する際に、フレーム部材12に対し腕部11aが回動することを抑制する凹凸形状が設定されている。すなわち、図3に模式的に示したように、ハンドグリップ11には、キャップ部材30に臨む車両前側面から後側に凹設された係合凹部26が形成されている。一方、キャップ部材30には、ハンドグリップ11に臨む車両後側面から後側に突設された係合凸部27が形成されている。前記初期位置にあるホルダ部材13に対しハンドグリップ11が回動連結部21周りに回動する際には、係合凸部27が係合凹部26(ハンドグリップ11)の移動軌跡を遮らないように設定されている。従って、通常は、ハンドグリップ11が回動連結部21周りに回動する際に、係合凹部26及び係合凸部27が係合することはない。
【0036】
一方、スライドドア1を閉側に移動させる方向と同方向へのハンドグリップ11の操作に伴いフレーム部材12に対しホルダ部材13が回動する際には、フレーム部材12に対し部11が回動しようとすると、係合凹部26に係合凸部27が嵌入しようとする。これにより、係合凸部27が係合凹部26に干渉して該係合凹部26が押し戻され、フレーム部材12に対する部11の回動が規制される。
【0037】
前記フレーム部材12の収容部12a底面には、開操作スイッチ31が取着されている。この開操作スイッチ31は、収容部12aの底壁及びホルダ部材13の底壁を貫通して腕部11a底面に圧接する可動端子31aを有している。開操作スイッチ31は、ハンドグリップ11の前述の非操作状態では、可動端子31aが導通状態になるように設定されている。一方、開操作スイッチ31は、ハンドグリップ11が回動連結部21周りに回動し、あるいはホルダ部材13がピン14周りに回動すると、腕部11a底面に追従する可動端子31aが非導通状態になるように設定されている。
【0038】
また、前記フレーム部材12の収容部12aには、ホルダ部材13の車両後側で、閉操作スイッチ32が取着されている。この閉操作スイッチ32は、ホルダ部材13の車両後面に圧接する可動端子32aを有している。閉操作スイッチ32は、ホルダ部材13が前記初期位置にある状態では、可動端子32aが非導通状態になるように設定されている。一方、閉操作スイッチ32は、ホルダ部材13がピン14周りに回動すると、ホルダ部材13に押圧される可動端子31aが導通状態になるように設定されている。
【0039】
なお、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32は、それぞれ適宜の制御回路36(図6参照)を介して前記アクチュエータ6に電気的に接続されている。制御回路36は、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の状態に応じて、アクチュエータ6を駆動制御する。なお、制御回路36は、スライドドア1内及び車両ボディ内のいずれに設けられていてもよい。
【0040】
次に、本実施形態の動作について総括して説明する。
まず、スライドドア1が全閉状態にあるものとして、その側部に立つ利用者が、非操作状態にあるハンドグリップ11を握ってこれをスライドドア1が開側(車両後側)に移動する方向と同方向に操作したとする。このとき、図4に示すように、コイルスプリング15により前記初期位置に保持されたホルダ部材13に対しハンドグリップ11の腕部11aが回動連結部21周りに回動する。このとき、閉操作スイッチ32(可動端子32a)が非導通状態を保持したまま、開操作スイッチ31(可動端子31a)が導通状態から非導通状態へと切り替わる。この開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の論理が前述の制御回路36により検出されると、アクチュエータ6が駆動されて、スライドドア1の全閉状態での保持が解除されるようになっている。つまり、このときのハンドグリップ11の操作は、開操作スイッチ31の論理を切り替えるための操作力を発生することで、スライドドア1の全閉状態での保持を解除するためのトリガーになっている。
【0041】
一方、スライドドア1が全開状態にあるものとして、その側部に立つ利用者が、非操作状態にあるハンドグリップ11を握ってこれをスライドドア1が閉側(車両前側)に移動する方向と同方向に操作したとする。このとき、図5に示すように、コイルスプリング15の付勢力に抗してフレーム部材12に対しホルダ部材13をピン14周りに回動させつつフレーム部材12に対しハンドグリップ11の脚部11bがピン23周りに回動する。このとき、開操作スイッチ31(可動端子31a)が導通状態から非導通状態へと切り替わるとともに、閉操作スイッチ32(可動端子32a)が非導通状態から導通状態へと切り替わる。この開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の論理が前述の制御回路36により検出されると、アクチュエータ6が駆動されて、スライドドア1の全開状態での保持が解除されるようになっている。つまり、このときのハンドグリップ11の操作は、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の論理を切り替えるための操作力を発生することで、スライドドア1の全開状態での保持を解除するためのトリガーになっている。なお、前記作用部24のベルクランク25との係合面は、ピン23を中心とする円弧面24aとなっている。従って、フレーム部材12に対しハンドグリップ11の脚部11bがピン23周りに回動する際、ベルクランク25は円弧面24aに摺接するのみでこれに操作力(解除操作力)が伝達されることはない。
【0042】
ところで、利用者が、非操作状態にあるハンドグリップ11を握ってこれをスライドドア1が開側(車両後側)に移動する方向と同方向に操作し、ハンドグリップ11を前記回動連結部21を支点に前側(脚部11b側)が車両外側に十分に開くように回動させたとする(図4参照)。このとき、作用部24を通じてベルクランク25に操作力(解除操作力)が伝達されるとともに、該操作力がリモコン5を介してリアロック2、フロントロック3及び全開ロック4に伝達される。従って、この場合、スライドドア1の全閉状態・全開状態に関わらず、その保持が解除可能となる。
【0043】
次に、本実施形態の組付態様について説明する。
まず、ハンドグリップ11の組み付けに先立って、ホルダ部材13及びスイッチ31,32等の予め組み付けられたフレーム部材12をドアアウターパネル10の車両室内側に固定しておく。この状態で、ハンドグリップ11の腕部11aを後側の透孔10a及びホルダ部材13に挿入してこれをドアアウターパネル10の内側に延在させる。このとき、腕部11aの回動連結部21は、未だホルダ部材13の支持部13a及び支持壁部13b間に挟まれていない。
【0044】
次いで、ハンドグリップ11の脚部11bを前側の透孔10b及びフレーム部材12の開口部12bに挿入する。このとき、ガイド溝22の開口22aは、ピン23の車両前側に配置される。
【0045】
その後、ハンドグリップ11を回動連結部21の嵌挿方向である車両後側に移動させると、該回動連結部21がホルダ部材13の支持部13a及び支持壁部13b間に挿入・挟持される。同時に、開口部12bの各ピン23が対応するガイド溝22の開口22aから進入して、ガイド溝22に対し摺動自在に嵌入される。これにより、回動連結部21(腕部11a)がホルダ部材13に対し回動自在に嵌挿され、あるいはガイド溝22(脚部11b)がフレーム部材12(ピン23)に対し回動自在に嵌挿される。なお、脚部11bの作用部24は、その車両後側への移動に伴い、ベルクランク25を案内してこれとの係合状態となる。
【0046】
ハンドグリップ11の車両後側への移動に伴い、透孔10bの前側に形成される隙間が、前記キャップ部材30によって閉塞されることは既述のとおりである。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0047】
(1)本実施形態では、スライドドア1の開操作及び閉操作のいずれにおいても、該スライドドア1を該当側(開側又は閉側)に移動させる方向と同方向にハンドグリップ11を操作することによって、これに連動してリアロック2及びフロントロック3又は全開ロック4を解除してスライドドア1を開閉することができる。このように、スライドドア1の開閉操作に対し違和感のない方向へのハンドグリップ11の操作によって、スライドドア1を開閉することができる。特に、ハンドグリップ11の腕部11a及び脚部11bは、ホルダ部材13及びフレーム部材12にそれぞれ回動自在に嵌挿される構成であるため、ドアアウターパネル10の車両外側から腕部11a及び脚部11bを貫通させてホルダ部材13及びフレーム部材12にそれぞれ嵌め挿し込むことで、ハンドグリップ11を容易に組み付けることができる。
【0048】
(2)本実施形態では、フレーム部材12に対してホルダ部材13が回動して全開ロック4を解除するための操作力が発生する際に、ハンドグリップ11の係合凹部26及びキャップ部材30の係合凸部27(凹凸形状)により、リアロック2及びフロントロック3を解除するための操作力が発生することを抑制できる。従って、動作信頼性が向上することができる。
【0049】
(3)本実施形態では、フレーム部材12に対しホルダ部材13が回動するとき、該ホルダ部材13の回動に伴う腕部11aの位置ずれをホルダ部材13に対する摺動によって吸収することができる。一方、ホルダ部材13は、フレーム部材12に対し回動自在に固定されているため、その回動動作を安定して行うことができる。
【0050】
(4)本実施形態では、ガイド溝22に嵌入するピン23によって、ホルダ部材13に対する腕部11aの回動が案内されるため、ハンドグリップ11の動作をより安定化することができる。また、ピン23を、フレーム部材12に対する脚部11bの回動軸として兼用することができる。
【0051】
(5)本実施形態では、スライドドア1を閉側に移動させる方向と同方向へのハンドグリップ11の操作に伴いフレーム部材12に対し脚部11bが回動する際、作用部24は、円弧面24aがベルクランク25と摺接する。従って、フレーム部材12に対し脚部11bが回動しても、ベルクランク25(リアロック2及びフロントロック3)に対し解除操作力が伝達されることがなく、必要な操作力を軽減することができる。
【0052】
(6)本実施形態では、ハンドグリップ11の閉操作時に比べて、開操作時の車両外側へのハンドグリップ11の引き起こし量が大きく確保されているため、ベルクランク25を通じてリアロック2等に操作力を伝達する場合であっても、より少ない操作力でリアロック2等を解除することができる。特に、スライドドア1の全閉状態では、密閉用のウェザーストリップの反力、リアロック2等までの伝達経路における抵抗等で非常に大きな負荷が生じることになるが、より少ない操作力でリアロック2等を解除することができる。
【0053】
(7)本実施形態では、ハンドグリップ11の開操作又は閉操作自体をスイッチ31,32で検出してリアロック2等を解除できるため、利用者は該解除のための特別な操作(例えばボタンの押操作など)を意識することなくリアロック2等を解除できる。
【0054】
(8)本実施形態では、ドアアウターパネル10を挟んでその車両室内側及び車外側にフレーム部材12及びハンドグリップ11を支持する構造のため、剛性及び対盗難防止性を向上することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図7に従って説明する。なお、第2の実施形態は、主として第1の実施形態のフレーム部材に対するホルダ部材の支持構造を変更した構成であるため、同様の部分についてはその詳細な説明は省略する。
【0056】
図7(a)に示すように、本実施形態のフレーム部材41は、車両後側(スライドドア1の移動方向における開側)の端部に、上下方向に開口する長孔42を有する。この長孔42は、概ね車両後側に延在する。そして、フレーム部材41には、長孔42に遊挿されるピン14により、樹脂材からなる略四角箱状のホルダ部材43がピン14を中心に回動自在に、且つ、長孔42内でのピン14の移動範囲で移動可能に連結されている。なお、前記第1の実施形態と同様、フレーム部材12及びホルダ部材13の相対位置(相対回動位置)は、前記コイルスプリング15(図1参照)により、それらの底壁同士が重なる所定の初期位置に保持されるように付勢されている。
【0057】
一方、本実施形態のハンドグリップ46は、ホルダ部材43に臨む後端部の対向面から内側(車両室内側)に延出する第1連結部としての腕部46aを有する。そして、腕部46aの先端(後端)は、前記回動連結部21近傍でホルダ部材43に当接する当接部47を形成する。
【0058】
このような構成にあって、全閉状態にあるスライドドア1の側部に立つ利用者が、非操作状態にあるハンドグリップ11を握ってこれをスライドドア1が開側(車両後側)に移動する方向と同方向に操作したとする。このとき、図7(b)に示すように、コイルスプリング15により前記初期位置に保持されたホルダ部材43に対しハンドグリップ46の腕部46aが、当接部47をホルダ部材43に当接したまま回動連結部21周りに回動する。なお、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32(図1参照)の論理が前述の制御回路36により検出されることで、アクチュエータ6が駆動されて、スライドドア1の全閉状態での保持が解除されることは前記第1の実施形態と同様である。
【0059】
一方、全開状態にあるスライドドア1の側部に立つ利用者が、非操作状態にあるハンドグリップ11を握ってこれをスライドドア1が閉側(車両前側)に移動する方向と同方向に操作したとする。このとき、図7(c)に示すように、コイルスプリング15の付勢力に抗してフレーム部材41に対しホルダ部材43をピン14周りに回動させつつフレーム部材41に対しハンドグリップ46の脚部11bがピン23周りに回動する(図5参照)。この際、ホルダ部材43は、腕部46a(回動連結部21)の車両後側への移動に伴い当接部47に押圧されることで、フレーム部材41に対し長孔42の長手方向に移動する。なお、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の論理が前述の制御回路36により検出されることで、アクチュエータ6が駆動されて、スライドドア1の全開状態での保持が解除されることは前記第1の実施形態と同様である。
【0060】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態における(1)(2)(4)〜(8)の効果と同様の効果が得られるようになる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0061】
・前記各実施形態において、閉操作スイッチ32を開操作スイッチ31の上下方向に並設してもよい。この場合、ハンドグリップ11,46を開側及び閉側に操作したときの腕部11a,46aの変位量が大きいことから、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の検出感度を調整することで、同様にハンドグリップ11,46の開操作及び閉操作を検出できる。
【0062】
また、検出感度の異なる開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32を、脚部11bの上下方向に並設してもよい。
・前記各実施形態において、開操作スイッチ31及び閉操作スイッチ32の可動端子の導通・非導通及びその論理は一例であって、これに限定されるものではない。
【0063】
・前記各実施形態において、ホルダ部材13は、ドアハンドル装置の長手方向において、どちらの端部側に設けられてもよい。
・前記各実施形態において、ハンドグリップ11及び全開ロック4間の機械的な連係構造を割愛して、アクチュエータ6の駆動のみで全開ロック4を解除するようにしてもよい。
【0064】
・前記各実施形態において、スライドドア1を電動で開閉駆動する装置を備える場合、ハンドグリップ11,46の開閉操作に伴うリアロック2等の解除に連動して、スライドドア1の開閉作動を開始するようにしてもよい。あるいは、スライドドア1の開閉作動中にその移動方向と反対方向にハンドグリップ11,46が操作されることで、スライドドア1を停止させたり反転作動させたりしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…スライドドア(車両ドア)、2…リアロック(全閉ラッチ機構)、3…フロントロック(全閉ラッチ機構)、4…全開ロック(全開ラッチ機構)、10…ドアアウターパネル(パネル部材)、10b…透孔、11,46…ハンドグリップ、11a…腕部(第1連結部)、11b…脚部(第2連結部)、12,41…フレーム部材、13,43…ホルダ部材、15…コイルスプリング(付勢部材)、22…ガイド溝、23…ピン(ガイド突部)、24…作用部、24a…円弧面、25…ベルクランク(伝達部材)、26…係合凹部(凹凸形状)、27…係合凸部(凹凸形状)、30…キャップ部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7