(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
廃水に凝集剤を添加して、廃水中に含まれる固形分を結合させてフロックとして、固液分離する廃水処理に際して、高清澄度の濾液を得るために、プリコート式の真空濾過装置を用いた廃水処理設備がある(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
廃水処理設備は、
図1に示す如く、プリコート槽11と、真空濾過装置16と、凝集反応装置10と備えている。
【0004】
凝集反応装置10は、凝集反応槽14と、該凝集反応槽14に廃水を供給する廃水供給手段(廃水槽12、廃水供給配管28)と、凝集剤等を供給する凝集剤等供給手段(アルカリ液槽18、無機凝集剤槽20、供給配管26、26)を備えている。
【0005】
これらの各槽18、20は攪拌機22、22を備えている。即ち、凝集反応槽14に供給した廃水に、アルカリ液を一定量添加後、硫酸バンドで中和してフロックを形成する。アルカリ液槽18や無機凝集剤槽20は、それぞれ、薬剤を10〜20倍程度に希釈懸濁させて、ポンプ(ダイヤフラム式)24で供給配管26を介して凝集反応槽14へ供給している。なお、図例中、36は濾過原液槽、38はフィルタドラム、46はスクレーパ装置、47はケーキ回収ボックスである。
【0006】
そして、上記構成の廃水処理設備では、下記のような問題点が指摘されるようになってきた。
【0007】
真空濾過装置16、プリコート槽11、凝集反応槽14、そしてアルカリ液槽18および無機凝集剤槽20にそれぞれ攪拌機22、22および凝集反応槽14への定量供給ポンプ24、24、供給配管26、26、更には、凝集反応槽14にpH計13を必要とする。
【0008】
また、アルカリ液槽18の消石灰は、水難溶性であるため、下記のような理由により、通常、無機凝集剤槽20の硫酸バンドより先に添加する必要がある。
【0009】
pH計による制御は1点制御であり、消石灰添加で溶解させてアルカリとなった廃水に、所定のpHまで硫酸バンド溶液を添加して所定のpHまで下げることが必要なためである。
【0010】
なお、廃水の種類によっては硫酸バンドを先に添加したほうが油分の除去が良好となる場合もある。
【0011】
これらの理由により、相対的に大きな設備床面積が必要となるとともに設備費も嵩み、更には、運転費用も嵩む傾向にあった。
【0012】
これらの問題点を解決するために、凝集反応槽14に貯留した廃水に粉状の凝集剤等を直接に添加して濾過原液とすることが考えられる。そうすれば、アルカリ液槽18や無機凝集剤槽20が不要になるとともに、これらの各槽18、20から、凝集反応槽14へアルカリ液や凝集剤を供給するポンプ24、24や供給配管26、26が不要となるためである。
【0013】
特許文献1には、下記構成の真空プリコート濾過方法が提案され、廃水(原水)が供給された凝集反応槽14に粉状凝集剤を直接添加して濾過原液を調製できる旨が記載されている。
【0014】
以下に、特許文献1における請求項1および段落0040の記載を引用する。
【0015】
「[請求項1]回転を与えたフィルタドラムの上方より、濾過原液をフィルタドラムの上面における軸方向にほぼ一様に連続して流し込み、フィルタドラムのプリコート層により固形分と液分とに分離し、固形分をプリコート層上で捕捉し、液分をフィルタドラムの内部に吸引すると同時に固形分をケーキ状に脱水処理し、その脱水ケーキ層を前記プリコート層から剥離して取り出すことを特徴とするトップフィード型連続式真空プリコート濾過方法。」
【0016】
「[0040]また、本発明方法では濾過原液に所定量の凝集剤を添加し、攪拌混合したうえでフィルタドラムの上方から流し込むようにしている。一般に、凝集剤は水に溶解しにくい、つまり溶けるのに時間がかかる、溶解度も低いという性質がある。このため、あらかじめ多量の水に溶かして水溶液を作り、これを濾過原液供給配管の途中に注入したり、凝集タンクを設け、これに供給したりする。これに対して、本発明方法ではトップフィード方式にしたことにより、凝集剤を粉体のまま凝集タンクに投入し、すなわち濾過原液に対して高濃度で凝集剤を添加し、懸濁粒子群を凝集させてフィルタドラムの上方に導き、その上方から流し込み、濾過処理することができる。その結果、従来技術ではフロックが大きいと(参照付記;粗大なフロックが濾過原液槽底部に沈澱してしまう。)、濾過吸着に支障をきたしていたが、本発明方法ではトップフィード方式を採っていることにより、フロックを大きくすれば大きくする程、濾過吸着が向上するので、フロックをできるだけ大きくし、処理能率を高めることができる。さらにまた、従来技術では凝集剤の低濃度の添加では凝集しにくい懸濁液であっても、本発明方法では濾過原液に凝集剤を高濃度で添加し、凝集効果を高め、フロックを形成させて処理能率を向上させることが可能となる。」
【0017】
しかし、上記特許文献1における粉状凝集剤の直接使用による濾過原液の調製は、本発明における粉状凝集剤の廃水への直接投入を開示しているとは、下記理由により認められない。
【0018】
上記プリコート式の真空濾過方法において、濾過原液の、フィルタドラムの濾過原液槽(フィルタタンク)内に液没位置(濾過吸着工程A:
図27)における、濾過原液(粉状の凝集剤を使用して大きなフロックを含有する場合の)の濾過吸着の支障をどのように解消しているかの説明が何ら記載されていないためである。即ち、濾過原液槽には、フィルタドラムの頂部に供給されて濾過されずに流下した、又は、直接凝集反応槽から分岐配管を介して流入して大きなフロックを含む濾過原液が貯留されて、前述のとおり、粗大なフロックが底部に沈澱してしまい、フィルタドラム表面に吸着されることがないので真空濾過が困難となるためである。
【0019】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、プリコート式の真空濾過装置を用いる廃水処理設備に関連する先行技術文献として特許文献2等が存在する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の廃水処理設備の一実施形態について、図例に基づいて説明する。
【0026】
図2に廃水処理設備のフローシートの一例を示す。このフローシートは、研磨廃水、ダイカスト離型剤廃水、フレキソインキ廃水等の廃水処理を想定したものである。
【0027】
基本構成として、凝集反応装置10と濾過分離装置(真空濾過装置)16とを備えている。そして、凝集反応装置10は、攪拌機22を備えた凝集反応槽14と、該凝集反応槽14に、廃水を供給する廃水供給手段12、28と、粉状(粉末)凝集剤を供給する凝集剤供給手段15を備えている。
【0028】
ここで粉状凝集剤の供給手段15から供給される粉状凝集剤組成物は、無機凝集剤とpH緩衝剤とを少なくとも含むものを使用する。ここで、無機凝集剤とともにpH緩衝剤を使用するのは、下記理由による。
【0029】
pH緩衝剤を使用することにより、無機凝集剤の添加により濾過原液が中性域から外れることなく、無機凝集剤の凝集作用の低下を阻止できるためである。
【0030】
具体的には、無機凝集剤としては、硫酸バンド(Al
2(SO
4)
3・nH
2O)、PAC(Al
2(OH)
nCl
6-n)等のアルミニウム塩、並びに、硫酸第一鉄(FeSO
4)、塩化第二鉄(FeCl
3)、硫酸第二鉄(Fe
2(SO
4)
3)等の鉄塩を使用できる。
【0031】
また、pH緩衝剤としては、目的のpH領域(通常、4〜14)を緩衝する緩衝薬剤を選択すればよい。弱酸のpKaを中心として前後0.5pH単位にある弱酸とその共役塩基の混合物とする(大木他編「化学辞典」東京化学同人、1994発行、「緩衝液」の項参照)。pH緩衝剤としては、例えば、各種リン酸塩を使用可能である。
【0032】
更に、必要により、高分子凝集剤を、粉状凝集剤組成物に添加したり、又は、濾過原液供給配管の途中に供給可能としたりしてもよい。
【0033】
高分子凝集剤としては、上記例示の廃水の場合、アニオン系のものを使用する。アニオン系高分子凝集剤としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、CMCナトリウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解塩等をあげることができる。
【0034】
廃水槽(原水槽)12は、前記研磨廃水等を貯留し、廃水槽12と凝集反応槽14との間には、廃水供給配管28が配されている。なお、廃水槽12は、図示しないが、通常、攪拌機及びポンプを備えている。
【0035】
凝集反応槽14は、攪拌機22を備えている。そして、凝集反応槽14と真空濾過装置16の濾過原液槽36との間には、濾過原液(フロックを含んだ廃水:スラッジ)の供給ポンプ25を備えた濾過原液供給配管31が配されている。
【0036】
そして、廃水(例えば、研磨廃水)は、通常、pH5.5〜9(望ましくは、pH6〜8)の範囲にあるものを使用する。pHが当該範囲を外れる場合は、アルカリ剤を添加して上記範囲になるようにpH調整しておく。廃水として上記範囲のものを使用するのは、前記pH緩衝剤の添加により緩衝能が発揮できる範囲であるためである。
【0037】
廃水が供給された凝集反応槽14では、廃水のpHが中性域(pH5.5〜9、望ましくはpH6〜8)の範囲にあるため、廃水中の粒子がマイナスに荷電している。そして、硫酸バンド等の無機凝集剤を含有する粉状凝集剤を供給して攪拌することにより、凝集剤中のプラスの荷電が粒子のマイナスの荷電と反応し、粒子は互いにくっつきあうことで、フロック(凝集塊)(粒径100〜500μm)が形成される。
【0038】
pH緩衝剤を含有させることで、粉状の硫酸バンド等の無機凝集剤を直接、凝集反応槽へ添加できる理由は、下記の如くである。硫酸バンド(硫酸アルミニウム)を例に採るが、他のアルミニウム塩系の場合は勿論、鉄塩系の場合も同様である。
【0039】
粉状凝集剤中にpH緩衝剤が含有されており、液性を中性に維持することが出来れば、pH中性域付近で水酸化アルミニウムの正電荷をもつAl(OH)
3(s)を形成することが可能となる。その結果、Al(OH)
3(s)が負に帯電したコロイド粒子を取り込み、電気的に中和することでファンデンワルス力(粒子間引力)により粒子同士が引付けあっていわゆる緩速凝集(sweep coagulation)を生じる(藤田賢二著「水処理薬品ハンドブック」技法堂出版、2003発行、p23〜24、図-2.1.5硫酸アルミニウム凝集における凝集領域参照)。
【0040】
そして、フロックが生成した濾過原液(スラッジ)を濾過分離装置(真空濾過装置)16へ供給する。そして、凝集反応槽14と濾過原液槽36との間に、設定濾過原液面位置に供給口31aを有して凝集反応槽14からの濾過原液を供給する濾過原液供給配管31が配されている。
【0041】
なお、スラッジに高分子凝集剤を添加(供給)することにより、含まれるフロックをさらに大径化できるとともにフロック強度(耐破壊強度)を増大させることができる。
【0042】
そして、本実施形態では真空濾過装置16は、基本的には、
図3に示すような原理を備えたプリコート式真空濾過装置を使用する。
【0043】
即ち、濾過原液槽(濾過槽)36と、濾過原液槽36に下側を浸漬させて配されるフィルタドラム38とを備えている。該フィルタドラム38の中心回転軸側と、真空ポンプ40を備えた気密分離槽(減圧室)42との間が濾液配管44で接続されている。
【0044】
そして、該フィルタドラム38は強制駆動により低速回転可能(例えば、0.5〜2min
-1)とされ、該フィルタドラム38の回転方向に対面する側にスクレーパ手段(スクレーパ装置)の掻取り刃48が配されている。該スクレーパ手段は、掻取り刃48を所定速度で前進可能とされ、ケーキ49が付着したプリコート層50を連続的に剥離して常に新しいプリコート層50の表面を露出させる。こうして、安定した連続濾過を可能とし清澄度の高い処理水(濾液)が得られる。
【0045】
上記汎用のフィルタドラム38は、本実施形態では、下記構成とされている(
図4参照)。
【0046】
回転自在とするフィルタドラム38の内筒部56と外筒部58との間を、仕切板60により複数個の均等な濾室62を区画形成するとともに、各濾室62にはその仕切板60の回転方向内側面の付近においては、回転軸を兼ねる濾液主管64より分岐された枝管66を続かせ、該フィルタドラム38をその下半部が槽内に位置するように濾過原液槽(濾過槽)36を設置してある。
【0047】
フィルタドラム38は、外筒部58が金網で形成され、該金網にプリコート層50の支持体である濾布54が張設固定されている。フィルタドラム38の両側中央に設けられた回転軸を兼ねる濾液主管64は、その中間部に駆動用のチェーンホイール68を取り付けるとともに、端部は中空の回転継手を介してバキューム装置(前述の真空ポンプ40を備えた気密分離槽42)に接続させている。
【0048】
このように形成されたものは、先ず、濾過原液槽36に所定濃度のプリコート液をプリコート槽11から供給し、フィルタドラム38を低速回転させると同時にバキューム装置(真空ポンプ40)を駆動させる。このとき、内筒部56と外筒部58との間に仕切板60をもって区画形成されている複数個の均等な濾室62内は濾液主管から分岐された枝管66が続かせてある。
【0049】
このため、槽内に濾過原液(プリコート液又は反応液)がない空のときは、均等に減圧されて外筒部58を通じ等量の大気を吸引するものである。
【0050】
次に、図示の如く、矢示方向に右回転する6個の濾室62よりなるフィルタドラム38の下半部を槽内に位置させて、槽内に濾過原液(プリコート液又は反応液)を供給した場合の吸引作用は下記の如くになる。以下、理解容易のため、A〜Fの各位置になった濾室62については、それぞれ、各位置符号を括弧付きで付記する。
【0051】
濾過ゾーンに相当する右下位置Aに至った濾室62(A)はその表面に濾過原液中の分散質を吸着させると共に濾室62(A)中に濾液を吸引することになる。このとき、枝管66の吸引口部には未だ濾液が達しないので濾室62(A)中に吸引された濾液は濾液主管64に送られることはない。
【0052】
こうして、フィルタドラム38が徐々に回動されて左下位置Bに至った濾室62(B)はその内部に吸引されている濾液が枝管66の吸引口部に達することとなるため枝管66、濾液主管64を経て濾液は徐々に吸引排出され、濾室62(B)の外筒部58の表面には左下位置において吸着されたケーキが剥離することのない程度に吸引力が働くことになる。
【0053】
次いで、左位置Cに回動されてきた濾室62(C)においては内部の濾液が左下位置Bと同様枝管66の吸引口部に達している。このため、枝管66、濾液主管64を経て濾液は更に排出され濾室62(C)の表面上半部はこれに吸着されているケーキを介して大気と通じることとなる。このとき、枝管66の吸引口部が濾液中に位置しているため、該上半部の空気通過量は微量であり、他の濾室62に対する吸引力に悪影響を及ぼすことがない。
【0054】
更に、左上位置Dまで回動された濾室62(D)は、前記左位置Cと同様に、ケーキ中の水分を吸引して乾燥ゾーンとしての働きをすることになる。このため、濾室62(D)中の濾液量も減少する。
【0055】
次いで、右上位置Eまで回動された濾室62(E)は内部の濾液が回転方向側に流動して枝管66の吸引口部は解放されて濾室62の表面より吸引する大気の量は若干増加して、乾燥ゾーンとしての働きも増大する。このとき、濾室62(E)の内部に残っている濾液が濾室62(E)の表面の下方部分にある。このため、直接大気を吸引する濾室62(E)の表面の少なくとも他の濾室62に対する吸引力に余り悪影響を及ぼすことがなく、濾過ゾーンにあたる右下位置Aや左下位置B等との真空バランスを良くしている。
【0056】
そして右位置Fに濾室62が回動されてきた際に、該濾室62(F)の外周に掻取り刃48の先端を臨ませておくことにより左上位置Dと右上位置Eよりなる乾燥ゾーンにおいて乾燥されたケーキが付着したプリコート層を剥離することができる。
【0057】
次いで、右位置Fまで濾室62が回動されてくると、該濾室62(F)は右上位置Eの濾室62(E)と同様に作用する。このとき、濾室62(F)は、その下方部は徐々に濾過槽36中の濾過原液に浸漬されてくることにより、表面から吸引される大気量は右上位置Eにおける濾室62(E)の大気の吸引量よりもいっそう減少し、他の濾室62の吸引に対する悪影響は殆どないものとなる。
【0058】
このような過程を経てフィルタドラム38は、回動を続けることによって、乾燥ゾーンである左上位置Dや右上位置E、および、濾過ゾーンである右下位置Aや左下位置Bの真空効率は極めて高くなり、切替弁はなくても効率的な濾過作業を連続して行なうことができることとなる。
【0059】
次に、スクレーパ手段(スクレーパ装置)46の詳細について説明する(
図5参照)。当然、他の慣用のスクレーパ手段でもよい。
【0060】
機枠72上に設けられた支持台74には、フィルタドラム38の外周面に形成されたプリコート層50に向かって移動できるスクレーパ装置46が傾斜して取り付けられている。
【0061】
スクリュー軸76が支持台74に取り付けられた軸受に軸支されており、スクリュー軸76はプリコート層50に対して傾斜して取り付けられると共に該スクリュー軸76の先端にホルダー78が直角に固定されている。該ホルダー78の一端には切欠部80が設けられて該切欠部80にかみそり刃状の厚さ1mm以下(望ましくは0.1〜0.6mm)の薄鋼板よりなる掻取り刃48が載せられている。該掻取り刃48の全面はこれを押える突起部87をもつ山形状の弾性薄板よりなる押え金具82により切欠部80の面に保持される。該押え金具82は締付用ボルト84を締付けることにより掻取り刃48を押え金具82の先端部と突起部87の先端部により弾性支持して緊締しうるようになっている。なお、スクリュー軸76の雄ねじ部86は雌ネジ88を持つスリーブ90にねじ込まれている。該スリーブ90の外径部分はウォームホイール92にキー止めされている。ウォームホイール92はウォーム軸94をもつウォーム96に噛合う。ウォーム96とウォームホイール92とは軸受けと一体となったギヤーケース98内に収納されている。また、ウォーム軸94は図示されない係脱装置によりウォームホイール92に係脱自在になっている。さらに、スクリュー軸76の端部にはスクリュー軸76の前進を阻止するストッパ用カラー100が取り付けられ、スクリュー軸76に嵌められたスリーブ90にはハンドル99が取り付けられている。
【0062】
このように構成されたものは、ウォーム軸94を回転してウォーム96を回転させれば、スクリュー軸76はプリコート層50に向かってゆるやかに前進しケーキが付着したプリコート層50を傾斜した掻取り刃48の刃先により薄く削りとることができる。この際、掻取り刃48の刃先部分は摩耗するが、掻取り刃48の厚さは0.1〜0.6mmと極めて薄いため、刃先部分が摩耗しても厚刃の場合に見られるような平坦部をもつ刃先になることがない。このためケーキ掻取り時に刃先に作用する摩擦抵抗は厚刃の場合より少なくてケーキ層の切削作用は余り変わらない。
【0063】
したがって、ケーキ掻取りにより露出したプリコート層には縞状の目詰まりが生ずることがなく、ホルダー78に取り付けられた掻取り刃48は長時間の使用に耐えることができる。
【0064】
また、掻取り刃48は弾性薄板よりなる押え金具82により弾性支持されている。このため、掻取り刃48は全体としてホルダー78に無理なく装着されてケーキ中に硬い塊状の異物が介在するような場合でも掻取り刃48は押え金具82の弾性作用により先端部分が微小変形して異物を乗り越え、又は掬いだすことができ、刃先はその先端部に加わる衝撃によって刃こぼれを起こすことはない。
【0065】
なお、掻取り刃48の厚さは前記の如く、0.1〜0.6mmとすることが望ましいが、掻取り刃48の材質によっては、0.05〜1mmの範囲まで可能である。
【0066】
さらに、本実施形態では、フィルタドラム38が前記の如く、吸引濾過圧を、切替弁を使用せずに、安定した吸引圧で濾過可能としてあるため、プリコート層に付着するケーキの含水率が安定している。したがって、掻取り位置におけるケーキ付着プリコート層の表面強度の波打ち(変動)が小さい。このため、異物と干渉しない常態時において、掻取り刃の切削が円滑に行なわれ、また、掻取り刃の摩耗はドラムの位置に関わらず均等に生じることになり、掻き取り性能の低下やプリコート層の破損による濾過性能の低下を生じることがない。
【0067】
そして、本実施形態の更に望ましい形態は、上記構成において、濾過原液槽36の底壁とフィルタドラム38との間に攪拌翼(攪拌手段)を配されているものとすることにある。
【0068】
この攪拌手段は、濾過原液槽36におけるフロックの沈降堆積を防止するために設置するものである。フロックの堆積は、濾過効率の低下を招く。
【0069】
攪拌手段としては、水平回転攪拌式(パドル式:ファンタービン形)(
図6)、揺動攪拌式(揺りかご式)(
図7)等が考えられる。
【0070】
水平回転攪拌式の場合は、フロックの沈降堆積を防止するには、パドル(回転翼)102の回転数を増大させる必要がある。しかし、回転数を増大させると、フロックが破壊して、フロック径が小さくなるため、フロックを捕獲するプリコート層を形成する濾過助剤の粒径を大きくできない。濾過助剤の粒径を大きくすることができれば、プリコート層の粒子間隙が大きくなって、濾過速度が増大する。ちなみに、従来の濾過助剤(例えば珪藻土)の汎用粒径は40μm程度であった。
【0071】
また、回転軸104の軸受け部を濾過原液槽36内に設ける必要があり、液封シール構造とする必要がある。
【0072】
上記水平回転攪拌式に対して揺動攪拌式は、揺動レバーの原動軸を液外(フィルタドラムの回転軸部位)に設ける構造となる。このため、濾過原液槽36内に軸支のためのシール構造が不要である。また、濾過原液槽36の底部に沿って、攪拌部材を緩やかに揺動させることにより、フロックを破壊せずに沈降防止が容易である。
【0073】
ここで、揺動攪拌翼の形態は、濾過原液槽36の円弧状底部に沿って揺動する棒体、アングル体、帯板体であってもよいが、
図7に示すような投影円弧状の面状枠体や面状多孔体の円弧状攪拌翼106とすることが望ましい。
【0074】
このとき、円弧状攪拌翼106と濾過原液槽36底面との隙間は、形成フロックの大きさによるが、例えば、1〜25mmとする。
【0075】
円弧状攪拌翼106の形態は、円弧状であれば特に限定されず、多孔板状でもよいが、一対の円弧状板の間を、等間隔で配した棒材やアングルや羽板で連結したものが、攪拌効果が得易くて望ましい。
【0076】
なお、円弧状攪拌翼106の揺動駆動は、図示しないが、原動機に連結された汎用の往復運動機構を使用して行なう。
【0077】
さらに、本実施形態で、濾過原液槽36の底部に凝集反応槽14への濾過原液戻し配管37を形成し、沈降フロックを凝集反応槽14へ戻し可能としておくことが望ましい。フロックが大きすぎて沈降して真空濾過できない場合に、凝集反応槽14へ戻して再処理可能とするためである。
【0078】
次に、上記攪拌装置を備えた真空濾過装置の使用態様について説明をする。
【0079】
1)プリコート操作
濾過助剤分散液を、濾過原液槽36へポンプ供給する。なお、濾過助剤としては、特に限定されず、例えば、珪藻土やパーライト等を使用できる。
【0080】
そして、フィルタドラム38を低速回転(例えば、1min
-1)させるとともに真空吸引(例えば、40kPa)し、さらに、円弧状攪拌翼106を揺動運動(往復運動)させる。このときの往復運動サイクルは、20〜50Hzとする。
【0081】
このとき、スクレーパ装置の掻取り刃48の先端は、フィルタドラム38の外周面からプリコート層50の設定厚み分を離した位置に静止させておく。
【0082】
円弧状攪拌翼106を往復揺動運動させることにより、大きな粒径の濾過助剤でも濾過原液槽36の底部に堆積することはない。また、フィルタドラム38の濾布面には、プリコート液に浸漬して入る状態で、前述の如く、高い吸引圧が作用する。このため、粒径の大きな濾過助剤を効率よくフィルタドラム38に張り付かせて、プリコート層が効率よく形成される。ここで、例えば、珪藻土の場合、40〜80μmの粒径のものを使用する。
【0083】
なお、クラック防止のために、プリコート時、清水を供給する。
【0084】
2)凝集操作
廃水は凝集反応槽14のレベル計の液面位置信号を受けて設定液面位置(H位置)になるまで、廃水槽12から凝集反応槽14に供給ポンプで供給する。
【0085】
凝集反応槽14には、粉状凝集剤組成物(pH緩衝剤を添加した無機凝集剤)を粉状凝集剤供給手段(ユニット)15から供給する。その後、凝集反応槽14にフロックを生成させながら、連続的に真空濾過装置16の濾過原液槽36に同時的に供給する。なお、粉状凝集剤の供給を行った後、攪拌を停止し、生成フロックを凝集反応槽14底部に沈降させた後、供給ポンプ25により濾過原液を沈降フロックとともに真空濾過装置16の濾過原液槽36へ供給してもよい。
【0086】
3)濾過操作
濾過原液(スラッジ)は、濾過原液槽36に装備されたL位置の信号を受けてH位置になるまで、凝集反応槽14から、濾過原液供給配管31を介して濾過原液槽36へ供給する。なお、濾過原液供給配管31の供給口31aは、濾過原液の設定液面(H位置)に位置する。
【0087】
このとき、フィルタドラム38は、各濾室62を真空吸引するとともに、低速回転させる。また、スクレーパ装置46の掻取り刃48はプリコート層50の表面位置にあり、所定速度で前進するようになっている。このときの前進速度は、0.02〜0.20mm/minとする。
【0088】
なお、アニオン系の高分子凝集剤は、粉状凝集剤の構成成分としてもよいが、濾過原液供給配管31途中で供給してもよい。
【0089】
このため、高分子凝集剤を添加すると、フロックは1〜5mmまで生長する。高分子凝集剤の添加量は、例えば、凝集後のSS濃度(昭和46年環境庁告示第59号付表8にて規定)が4000mg/Lまでの廃水に対しては、1.0〜5.0mg/Lとする。
【0090】
高分子凝集剤の添加量が過多であると、余剰の高分子凝集剤の粘性により、濾過抵抗が増大し、過少であると、高分子凝集剤による添加効果、フロックの強度増大及び濾過助剤の大径化を可能とすることが困難となる。
【0091】
そして、フロックが成長した状態でも、揺りかご式の円弧状攪拌翼106により緩やかに揺動攪拌するため、フロックが沈降することがなく、フロックが破壊されることも殆どない。このときの、往復サイクルは20〜50Hzとする。
【0092】
そして、前述の如く、各濾室62の吸引圧は濾過に十分な真空度に維持されているため、良好にフロックがプリコート層に捕獲されてケーキとなる。
【0093】
また、攪拌翼106を設けずにフロックが大きくなりすぎて濾過原液槽36に沈降した場合は、前述の如く、濾過原液槽36底部から濾過原液戻し配管37を介して凝集反応槽14へ戻して、攪拌機22等でフロックを破壊し、再調製すればよい。