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特許5733057プラットフォーム装置、プログラム、及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733057
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】プラットフォーム装置、プログラム、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/48 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   G06F9/46 452B
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-147431(P2011-147431)
(22)【出願日】2011年7月1日
(65)【公開番号】特開2013-15968(P2013-15968A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】堀田 良子
(72)【発明者】
【氏名】寺嶌 立太
(72)【発明者】
【氏名】長屋 隆之
(72)【発明者】
【氏名】西 智樹
【審査官】 漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−213609(JP,A)
【文献】 特開平09−159482(JP,A)
【文献】 特開2010−257134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションを実行する際に利用され、かつ各々予め定めた異なる機能を表す複数の関数と、該複数の関数各々が表す機能が作用する五感に応じた五感関連度とが対応付けて記憶された記憶手段と、
前記関数を利用するアプリケーションの登録要求があった際に、該登録要求があったアプリケーションが利用する関数に対応して前記記憶手段に記憶された五感関連度に基づいて、前記登録要求があったアプリケーションに優先度を付与して登録する登録手段と、
前記登録手段により登録されたアプリケーションを実行し、実行結果が車両に搭載された出力装置により出力されるように制御すると共に、複数のアプリケーションの実行結果が、同一の出力装置を同時に使用する場合には、前記優先度の高いアプリケーションの実行結果が前記出力装置から出力されるように制御する制御手段と、
を含むプラットフォーム装置。
【請求項2】
前記関数を、アプリケーションの実行により提示される情報の緊急度に応じて異なる複数の機能を表す関数とし、該関数に前記緊急度に応じた五感関連度を対応付けて前記記憶手段に記憶した請求項1記載のプラットフォーム装置。
【請求項3】
前記登録手段は、さらに、前記緊急度に応じて、前記アプリケーションに優先度を付与する請求項2記載のプラットフォーム装置。
【請求項4】
前記制御手段は、アプリケーションの実行結果が前記車両に搭載された出力装置により出力されるように制御する際に、前記緊急度が変化した場合には、該緊急度の変化により変更された該アプリケーションの優先度に応じて、実行結果の出力状態を制限する請求項記載のプラットフォーム装置。
【請求項5】
前記登録手段は、さらに、前記アプリケーションの実行と前記車両の運転との関連性に基づいて、前記アプリケーションに優先度を付与する請求項1〜請求項のいずれか1項記載のプラットフォーム装置。
【請求項6】
アプリケーションが実行された際の該アプリケーションの実行状態と、車両の操作を含む運転状態とに基づいて、該アプリケーションに付与された優先度、及び該アプリケーションで利用される関数に対応する五感関連度の少なくとも一方を補正する補正手段を含む請求項1〜請求項のいずれか1項記載のプラットフォーム装置。
【請求項7】
前記補正手段は、車両の操作を指示するアプリケーションまたは関数については、該アプリケーションまたは該関数の実行により、対応する車両の操作が行われた場合に、該アプリケーションに付与された優先度または該関数に対応する五感関連度が高くなるように補正し、車両の操作を指示するアプリケーション以外のアプリケーションまたは関数については、該アプリケーションまたは該関数の実行中に、前記運転状態が危険行動を示している場合に、該アプリケーションに付与された優先度または該関数に対応する五感関連度が低くなるように補正する請求項記載のプラットフォーム装置。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のプラットフォーム装置を構成する各手段として機能させるためのプラットフォームプログラム。
【請求項9】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のプラットフォーム装置と、
車両に搭載され、該車両の運転操作を含む運転状態を取得して、前記プラットフォーム装置に送信する送信手段と、
前記送信手段により送信された運転状態に基づいて実行された、前記プラットフォーム装置に登録されたアプリケーションの実行結果を受信して出力する出力装置と、を含む車載クライアント装置と、
を含むプラットフォームシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットフォーム装置、プログラム、及びシステムに係り、特に、プラットフォームに登録されるアプリケーションに優先度を付与するプラットフォーム装置、プログラム、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種データを統合して格納するデータベースと、複数の独立したアプリケーションソフトと、それぞれのアプリケーションソフトからデータベースへの読み書きを可能とするミドルウェアと、アプリケーションソフトを利用するユーザインタフェースとを備えたプラットフォームサービスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、コピー、プリンタ、ファクシミリ等の複数のアプリケーションが画像形成装置を共有して選択的に使用するディジタル複写機システムにおいて、二つ以上のアプリケーションから画像形成装置の使用要求が発生した場合に、予め設定された優先順位に基づいて使用順序を決定するシステム制御手段を備えていることを特徴とするディジタル複写機システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、運転者の運転負荷状態及び程度に基づいて、入出力の仕方を変更する制御部を備えることを特徴とする車載情報サービスシステムが提案されている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3の車載情報サービスシステムでは、運転負荷が高い状況では、音声等による入出力要求を中断し、運転負荷が低くなったときに再度入出力要求を再開する対話管理手段を設けている。さらに、運転手が自由にシステムからの入出力要求を中断したり、再開したりできる手段を設けている。
【0005】
また、運転者の将来の位置を推定し、推定した将来の位置における運転者の運転負荷を推定する運転負荷推定装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。特許文献4の運転負荷推定装置では、運転負荷及び情報の種類に応じて最適な出力手順を決定し、適切なタイミングで情報を提示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−265805号公報
【特許文献2】特開平6−350772号公報
【特許文献3】特開2004−301698号公報
【特許文献4】特開平−104009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、複数のアプリケーションに対する優先度を設定していないため、アプリケーションの実行結果を車両に搭載されたクライアント装置に提示するような運転の文脈で利用した場合、事故が起こる可能性が高い危険な状況において、警報ではなく音楽が流れてしまうというように、複数のアプリケーションが適切な優先度で実行されない場合がある、という問題がある。
【0008】
また、特許文献2の技術では、ユーザが予め設定した優先順位に基づいてアプリケーションの使用順位を決定しているため、運転の文脈で利用した場合には、ドライバが運転とは関係ないアプリケーションの優先順位を高く設定することで、危険につながる可能性があるアプリケーションの優先度が高くなってしまう可能性がある、という問題がある。
【0009】
また、特許文献3の技術では、運転負荷が高い場合には、全ての動作を中断するため、安全運転を促進するサービスであっても、動作が制限されてしまう、という問題がある。
【0010】
また、特許文献4の技術では、「運転者に対する必要性を反映した評価値」を情報に付与することで、運転者に提示するデータの順序を決定しているが、実際に必要性をどのように数値化するかに関して記載されていない。また、運転負荷の推定方法に関しても具体的な方法が記載されていない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、プラットフォームに登録される複数のアプリケーションが個々に開発されたものであっても、運転時における安全性を考慮して整合性のとれた優先度を個々のアプリケーションに付与することができるプラットフォーム装置、プログラム、及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のプラットフォーム装置は、アプリケーションを実行する際に利用され、かつ各々予め定めた異なる機能を表す複数の関数と、該複数の関数各々が表す機能が作用する五感に応じた五感関連度とが対応付けて記憶された記憶手段と、前記関数を利用するアプリケーションの登録要求があった際に、該登録要求があったアプリケーションが利用する関数に対応して前記記憶手段に記憶された五感関連度に基づいて、前記登録要求があったアプリケーションに優先度を付与して登録する登録手段と、前記登録手段により登録されたアプリケーションを実行し、実行結果が車両に搭載された出力装置により出力されるように制御すると共に、複数のアプリケーションの実行結果が、同一の出力装置を同時に使用する場合には、前記優先度の高いアプリケーションの実行結果が前記出力装置から出力されるように制御する制御手段と、を含んで構成されている。
【0013】
本発明のプラットフォーム装置によれば、記憶手段に、アプリケーションを実行する際に利用され、かつ各々予め定めた異なる機能を表す複数の関数と、複数の関数各々が表す機能が作用する五感に応じた五感関連度とが対応付けて記憶されている。五感関連度は、五感の運転へのディストラクションを考慮した値とすることができる。アプリケーションの開発者は、この記憶手段に記憶された関数を利用してアプリケーションを作成する。
【0014】
そして、プラットフォーム装置へのアプリケーションの登録要求があった際に、登録手段が、登録要求があったアプリケーションが利用する関数に対応して記憶手段に記憶された五感関連度に基づいて、登録要求があったアプリケーションに優先度を付与して登録する。そして、制御手段が、登録手段により登録されたアプリケーションを実行し、実行結果が車両に搭載された出力装置により出力されるように制御すると共に、複数のアプリケーションの実行結果が、同一の出力装置を同時に使用する場合には、優先度の高いアプリケーションの実行結果が出力装置から出力されるように制御する。
【0015】
このように、アプリケーションに利用される関数に、その関数が表す機能が作用する五感に応じた五感関連度を対応付けて記憶しておき、アプリケーションが利用する関数に対応した五感関連度に基づいて、アプリケーションに優先度を付与するため、プラットフォームに登録される複数のアプリケーションが個々に開発されたものであっても、運転時における安全性を考慮して整合性のとれた優先度を個々のアプリケーションに付与することができる。
【0016】
また、前記関数を、アプリケーションの実行により提示される情報の緊急度に応じて異なる複数の機能を表す関数とし、該関数に前記緊急度に応じた五感関連度を対応付けて前記記憶手段に記憶することができる。これにより、緊急度に応じて、アプリケーションの実行結果を動的に変更することができる。
【0017】
また、前記登録手段は、さらに、前記緊急度に応じて、前記アプリケーションに優先度を付与することができる。これにより、緊急度に応じて、アプリケーションの優先度を動的に変更することができる。
【0018】
また、前記登録手段は、さらに、前記アプリケーションの実行と前記車両の運転との関連性に基づいて、前記アプリケーションに優先度を付与することができる。これにより、ドライバの運転行動を考慮した優先度を付与することができる。
【0019】
また、本発明のプラットフォーム装置は、アプリケーションが実行された際の該アプリケーションの実行状態と、車両の操作を含む運転状態とに基づいて、該アプリケーションに付与された優先度、及び該アプリケーションで利用される関数に対応する五感関連度の少なくとも一方を補正する補正手段を含んで構成することができる。
【0020】
また、前記補正手段は、車両の操作を指示するアプリケーションまたは関数については、該アプリケーションまたは該関数の実行により、対応する車両の操作が行われた場合に、該アプリケーションに付与された優先度または該関数に対応する五感関連度が高くなるように補正し、車両の操作を指示するアプリケーション以外のアプリケーションまたは関数については、該アプリケーションまたは該関数の実行中に、前記運転状態が危険行動を示している場合に、該アプリケーションに付与された優先度または該関数に対応する五感関連度が低くなるように補正することができる。これにより、より実際の運転行動に沿った優先度に自動的に補正することができる。
【0021】
また、前記制御手段は、アプリケーションの実行結果が前記車両に搭載された出力装置により出力されるように制御する際に、該アプリケーションの優先度または緊急度に応じて、実行結果の出力状態を制限することができる。これにより、ドライバが運転に注意を要する状況などでは、アプリケーションの実行結果の出力状態が制限されることにより、運転の安全性を確保することができる。
【0022】
また、本発明のプラットフォームプログラムは、コンピュータを、上記のプラットフォーム装置を構成する各手段として機能させるためのプログラムである。
【0023】
なお、本発明のプログラムを記憶する記憶媒体は、特に限定されず、ハードディスクであってもよいし、ROMであってもよい。また、CD−ROMやDVDディスク、光磁気ディスクやICカードであってもよい。更にまた、該プログラムを、ネットワークに接続されたサーバ等からダウンロードするようにしてもよい。
【0024】
また、本発明のプラットフォームシステムは、上記のプラットフォーム装置と、車両に搭載され、該車両の運転操作を含む運転状態を取得して、前記プラットフォーム装置に送信する送信手段と、前記送信手段により送信された運転状態に基づいて実行された、前記プラットフォーム装置に登録されたアプリケーションの実行結果を受信して出力する出力装置と、を含む車載クライアント装置と、を含むシステムである。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明のプラットフォーム装置、プログラム、及びシステムによれば、アプリケーションに利用される関数に、その関数が表す機能が作用する五感に応じた五感関連度を対応付けて記憶しておき、アプリケーションが利用する関数に対応した五感関連度に基づいて、アプリケーションに優先度を付与するため、プラットフォームに登録される複数のアプリケーションが個々に開発されたものであっても、運転時における安全性を考慮して整合性のとれた優先度を個々のアプリケーションに付与することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施の形態のプラットフォームシステムの概略構成を示すブロック図である。
図2】関数記憶部に記憶された関数、関数の機能、機能作用五感、及び情報緊急度の一例を示す図である。
図3】機能作用五感に対する五感関連度の一例を示す図である。
図4】関数に対する五感関連度の計算の一例を示す図である。
図5】運転との関連性に対する運転関連度の一例を示す図である。
図6】本実施の形態のプラットフォーム装置における優先度スコアリング処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態のプラットフォーム装置におけるアプリケーション実行処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図8】各アプリケーション実行処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図9】緊急度の変化によるアプリケーションの実行結果の提示の変更の一例を示すイメージ図である。
図10】出力制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図11】本実施の形態のプラットフォーム装置における優先度補正処理(優先度)ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図12】本実施の形態のプラットフォーム装置における優先度補正処理(五感関連度)ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0028】
図1に示すように、本実施の形態のプラットフォームシステム1は、プラットフォーム装置10と、車載クライアント装置60とを含んで構成されている。
【0029】
車載クライアント装置60は、車載クライアント装置60全体の制御を司るCPU、各種プログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含むコンピュータで構成することができる。
【0030】
また、車載クライアント装置60は、車載カメラや車載ネットワーク(CAN)等で構成された運転情報取得部62と、表示装置やスピーカ等の出力デバイス64とを備えている。運転情報取得部62は、アプリケーションの実行に必要な、車両の操作を含む運転状態を示す運転情報を取得して、プラットフォーム装置10へ送信する。
【0031】
プラットフォーム装置10は、プラットフォーム装置10全体の制御を司るCPU、後述する優先度スコアリング処理、アプリケーション実行処理、及び優先度補正処理を含むプラットフォーム処理ルーチンのプログラム等を記憶した記憶媒体としてのROM、ワークエリアとしてデータを一時格納するRAM、及びこれらを接続するバスを含むコンピュータで構成することができる。
【0032】
このコンピュータは、機能的には、図1に示すように、アプリケーション管理部20と、アプリケーション実行制御部40とを含んだ構成で表すことができる。
【0033】
アプリケーション管理部20は、さらに、プラットフォームへ登録前のアプリケーションが記憶される登録前アプリケーション記憶部22と、アプリケーションを実行する際に利用され、かつ各々予め定めた異なる機能を表す関数を記憶した関数記憶部24と、登録前のアプリケーションに優先度を付与する優先度スコアリング部26と、優先度が付与されたアプリケーションをプラットフォーム上に登録するアプリケーション登録部28とを含んだ構成で表すことができる。なお、優先度スコアリング部26及びアプリケーション登録部28が、本発明の登録手段の一例である。
【0034】
また、アプリケーション実行制御部40は、さらに、車載クライアント装置60から受信した運転情報が記憶される運転情報記憶部42と、アプリケーションの実行を制御するアプリケーション実行部44と、アプリケーションの実行結果が車載クライアント装置60の出力デバイス64で出力されるように制御する出力制御部46と、アプリケーションまたは関数の実行と運転情報とに基づいて、優先度を補正する優先度補正部48とを含んだ構成で表すことができる。なお、アプリケーション実行部44及び出力制御部46が、本発明の制御手段の一例である。
【0035】
登録前アプリケーション記憶部22は、後述する関数記憶部24に記憶された関数を利用したアプリケーションが記憶される。本実施の形態では、各アプリケーションは個々の開発者により開発され、プラットフォームへの登録要求があった場合に、プラットフォーム提供者側で、各アプリケーションの審査及び優先度の付与を行って、プラットフォームへ登録する形態を想定している。従って、登録前アプリケーション記憶部22には、個々の開発者から登録要求のあったアプリケーションが記憶される。
【0036】
関数記憶部24には、各アプリケーションで共通に利用される機能を実現するための複数の関数が記憶される。また、関数の機能は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の人間の五感に作用するものである。例えば、図2に示すように、関数として、「音を鳴らす」、「画像表示」、「警報提示」、「映像を流す」等の機能を実現するための関数を定めておくことができる。
【0037】
さらに、各関数が表す機能を、情報の緊急度に応じた複数の段階で定めることができる。例えば、「音を鳴らす」という関数が表す機能を、緊急度が高い場合には、ブザー音等の音を鳴らす、緊急度が中程度の場合には、人の声による音声出力を行う、緊急度が低い場合には、音楽を流す、のように設定することができる。なお、本実施の形態では、情報の緊急度を、事故や問題が発生するまでの時間として与えるものとし、事故や問題が発生するまでの時間が短いほど緊急度が高いことを意味する。
【0038】
また、関数が表す機能各々が作用する五感を、機能作用五感として定める。なお、同一の五感であっても、例えば、「聴覚」に作用する関数を、警報のような単純な音を鳴らす関数、音楽や人の声のような複雑な音を鳴らす関数のように詳細化して、機能作用五感を設定する。また、機能作用五感毎に、アプリケーションを実行する際の優先順位を示す優先度の算出に用いられる五感関連度を定めておく。例えば、図3に示すように、機能作用五感に対する五感関連度を定めることができる。五感関連度は、運転操作と機能作用五感との関わりに基づいて、運転へのディストランクションを考慮した値を設定する。具体的には、運転操作に深く関わる「視覚」は、ディストラクション度高(五感関連度(=優先度)低)、運転操作との関わりが比較的少ない「聴覚」は、ディストラクション中(五感関連度中)、運転操作との関わりがない「味覚」、「嗅覚」、「触覚」は、ディストラクション低(五感関連度高)と設定することができる。
【0039】
また、各関数が表す機能毎に、優先度の算出に用いられる情報の緊急度に応じた情報緊急度を付与する。情報緊急度は、緊急度が高いほど優先度が高くなる値を設定する。
【0040】
これらの関数、関数が表す機能、機能毎の機能作用五感、機能作用五感毎の五感関連度、及び機能毎の情報緊急度は、プラットフォーム提供者において、関数を新たに作成した際に、その関数の初期値として関数記憶部24に記憶する。
【0041】
優先度スコアリング部26は、アプリケーション開発者からのアプリケーション登録要求があった際に、登録要求があったアプリケーションに優先度の初期値を付与する。優先度は、上述の五感関連度、情報緊急度、及び後述する運転関連度に基づいて算出される。
【0042】
具体的には、登録要求があったアプリケーションで利用されている関数を判定し、その関数が表す機能のうち、予め定めた緊急度の初期値に対応する関数の機能を選択し、その関数が表す機能に対応する機能作用五感が示す五感関連度を取得する。選択した関数の機能に対して、機能作用五感が複数定められている場合には、機能作用五感各々が示す五感関連度を合計する。例えば、関数「警報提示」を利用するアプリケーションの登録要求があった場合には、図2を参照して、緊急度の初期値を∞とすると、関数の機能「人の声と動画」が選択される。関数の機能「人の声と動画」に対応する機能作用五感は、「聴覚(人の声)」及び「視覚(動画)」であり、図3を参照して、これらが示す五感関連度「聴覚(人の声)=150」及び「視覚(動画)=1」が取得される。そして、図4に示すように、関数「警報提示」(「人の声と動画」)に対して、「151」という五感関連度が計算される。
【0043】
また、登録要求があったアプリケーションで利用されている関数について、予め定めた緊急度の初期値に対応する情報緊急度を取得する。上記の例の場合、図2を参照して、情報緊急度「1」が取得される。
【0044】
また、登録要求があったアプリケーションの実行と車両の運転との関連性に基づいて、運転関連度を取得する。運転関連度は、アプリケーションの実行により、ドライバに車両の操作を指示する「操作」、アプリケーションの実行により、ドライバの認知及び判断に影響を与える「認知・判断」、及びアプリケーションの実行が、ドライバの操作、認知、及び判断のいずれにも影響を与えない「関連なし」の3種類を定めることができる。運転との関連性に対する運転関連度を、例えば、図5に示すように、予め定めておくことができる。運転関連度は、運転との関連性を考慮して、「関連なし」<「認知・判断」<「操作」となる値を設定する。優先度スコアリング部26は、登録要求があったアプリケーションで利用されている関数やアプリケーションの動作に基づいて、運転との関連性を判定し、図5を参照して、運転との関連性に対する運転関連度を取得する。
【0045】
また、優先度スコアリング部26は、上記のように取得した五感関連度、情報緊急度、及び運転関連度に基づいて、下記(1)式に従って、登録前アプリケーションに付与する優先度を算出する。
【0046】
優先度=(五感関連度の合計+運転関連度)×情報緊急度 (1)
【0047】
なお、(1)式は、優先度の算出方法の一例であり、五感関連度、情報緊急度、及び運転関連度の総和や積、重み付き和などにより優先度を算出してもよい。
【0048】
アプリケーション登録部28は、優先度スコアリング部26で優先度が付与されたアプリケーションを、アプリケーション実行部44に登録する。
【0049】
アプリケーション実行部44は、車載クライアント装置60からアプリケーションの実行要求があった場合に、対応するアプリケーションを実行する。複数のアプリケーションを実行する場合には、並列処理により実行する。ただし、アプリケーションの実行結果が、車載クライアント装置60の同一の出力デバイス64を同時に利用して出力される場合には、各アプリケーションに付与された優先度が高いアプリケーションの実行結果が優先的に出力されるように制御する。
【0050】
また、アプリケーション実行部44は、各アプリケーションの実行結果により、情報の緊急度が変化した場合には、変化した緊急度に対する情報緊急度を用いて、(1)式により優先度を再計算し、再計算後の優先度に基づいて、各アプリケーションの実行を制御する。
【0051】
出力制御部46は、アプリケーション実行部44によるアプリケーションの実行結果が、車載クライアント装置60の出力デバイス64により出力されるように制御する。また、ドライバが運転に注意を要する状況にある場合には、情報緊急度または優先度に応じて、実行結果の出力状態を制限する。具体的には、情報緊急度または優先度が高い場合には、表示装置に表示されるGUIのボタン類を一部使用できなくしたり、表示される内容やスピーカから出力される内容を変更したりすることができる。表示される内容を変更する場合には、表示される情報量を低減するように、優先順位の高い項目のみを表示したり、表示文字数を減らしたり、同じ意味を表すものをまとめたり、記号やアイコン表示に変更したり、スクリーンセーバーに切り替えたりすることができる。スピーカからの出力を変更する場合には、スピーカへの出力を停止したり、音量を下げたり、出力内容がニュースであればヘッドラインや要約にするなど情報量を低減したり、リラックスできるBGMに変更したりすることができる。
【0052】
優先度補正部48は、アプリケーションが実行された際のアプリケーションの実行状態と運転情報との関係を蓄積しておき、特定の運転行動が一定数以上記録された際に、アプリケーションに付与された優先度の初期値を補正する。
【0053】
具体的には、あるアプリケーションの運転関連度が「操作」である場合には、そのアプリケーションが指示した運転行動(操作)を実際にドライバが行った確率が高ければ高いほど、そのアプリケーションの優先度を高くする。これは、そのアプリケーションが指示した運転行動によってドライバの運転挙動が変わり、安全運転につながった可能性があるためである。例えば、あるアプリケーションがブレーキを踏むようにドライバに指示を提示した場合に、ドライバが実際にブレーキを踏んだ場合には、そのアプリケーションの優先度を上げる。より具体的には、アプリケーションが運転行動を指示して実際にブレーキを踏む確率が閾値(例えば、0.8)を超えた場合に優先度を上げ、逆に実際にブレーキを踏む確率が閾値以下の場合は優先度を下げることができる。また、アプリケーションの指示により実際にブレーキを踏んだ事例が5回ある度に、そのアプリケーションの優先度の初期値に+10するような演算で優先度を補正することもできる。
【0054】
また、ドライバが実際にブレーキを踏んだ場面で、複数の運転関連度が「操作」であるアプリケーションが実行されており、どちらのアプリケーションも同じ運転操作を提示した場合には、その操作を提示した時刻が早ければ早いほど、そのアプリケーションの優先度を高くする。例えば、「アプリケーションA」と「アプリケーションB」とが動作中に、「アプリケーションA」が操作Xをドライバに指示した後に、「アプリケーションB」が同一の操作Xをドライバに指示した場合において、ドライバが実際に操作Xを行った場合には、「アプリケーションB」より「アプリケーションA」の優先度を高くする。
【0055】
逆に、あるアプリケーションの運転関連度が「認知・判断」または「関連なし」である場合には、そのアプリケーションを利用している場合に、ドライバが急ブレーキを踏む、急ハンドルを切るなどの危険な運転が起きれば起きるほど、その優先度を低くする。これは、そのアプリケーションの動作がドライバにとって運転のディストラクションとなり、ドライバの運転挙動が変わったと考えられるためである。例えば、映画を見るアプリケーションを実行中にドライバが急ブレーキを踏んだ確率が閾値(例えば0.2)を超えた場合に優先度を下げたり、実際に急ブレーキを踏んだ事例が2回ある度に優先度を−10したりするような演算で優先度を補正する。
【0056】
また、優先度補正部48は、アプリケーション実行時に利用された関数の実行状態と運転情報との関係を蓄積しておき、特定の運転行動が一定数以上記録された際に、その関数を利用するアプリケーションに付与された優先度の算出に用いられた五感関連度を補正する。
【0057】
具体的には、ある関数を利用した元のアプリケーションの運転関連度が「運転操作」である場合には、その関数が指示した運転行動を実際にドライバが行った確率が高ければ高いほど、その関数を利用するアプリケーションに付与された優先度の算出に用いられた五感関連度を高くする。これは、その関数が指示した運転行動によってドライバの運転挙動が変わり、安全運転につながった可能性があるためである。例えば、「警報提示」の関数が利用されたアプリケーションAにおいて、警報の提示が実行された場合に、ドライバが実際にブレーキを踏んだ場合には、五感関連度を上げる。より具体的には、その関数が運転行動を指示してブレーキを踏む確率が閾値(例えば0.8)を超えた場合に、五感関連度を上げ、逆に実際にブレーキを踏む確率が閾値以下の場合は五感関連度を下げたり、ブレーキを踏んだ事例が5回あるたびに五感関連度を+10したりするような演算で、五感関連度を補正する。
【0058】
逆に、ある関数を利用する元のアプリケーションの運転関連度が「認知・判断」または「運転と関連なし」である場合には、その関数を利用した場合に、ドライバが急ブレーキを踏む、急ハンドルを切るなどの危険な運転が起きれば起きるほど、五感関連度を低くする。これは、その関数の動作がドライバにとって運転のディストラクションとなり、ドライバの運転挙動が変わったと考えられるためである。例えば、映画を見るアプリケーションの中で「映像を流す」という関数を動作中に、ドライバが急ブレーキを踏んだ確率が閾値(例えば0.2)を超えた場合に五感関連度を下げたり、実際に急ブレーキを踏んだ事例が2回ある度に五感関連度を−10したりするような演算を行い、五感関連度を補正する。
【0059】
なお、五感関連度が補正されることにより、その五感関連度を用いて算出された優先度も補正される。また、優先度及び五感関連度の補正は、複数のドライバの運転情報を用いて行ってもよいし、個人のドライバの運転情報を用いて行ってもよい。
【0060】
次に、本実施の形態のプラットフォームシステム1の作用について説明する。ここでは、プラットフォーム装置10に既に「白線認識アプリケーション」及び「地震警報アプリケーション」が登録されている状態で、新たに「先行車接近警報アプリケーション」を登録し、3つのアプリケーションがプラットフォーム装置10上で実行されるように制御する場合を例に説明する。
【0061】
まず、アプリケーション開発者から「先行車接近警報アプリケーション」の登録要求があった場合には、プラットフォーム装置10において、図6に示す優先度スコアリング処理が実行される。
【0062】
まず、ステップ100で、登録要求のあった登録前アプリケーション「先行車接近警報アプリケーション」を、登録前アプリケーション記憶部22に記憶する。次に、ステップ102で、登録前アプリケーション「先行車接近警報アプリケーション」に利用されている関数を判定する。ここでは、「先行車接近警報アプリケーション」に、関数「警報提示」が利用されているものとする。
【0063】
次に、ステップ104で、関数記憶部24に記憶された関数と五感関連度との対応(例えば、図2及び図3)を参照して、緊急度の初期値を∞とし、関数「警報提示」の機能「人の声と動画」に対応する機能作用五感「聴覚(人の声)」及び「視覚(動画)」が示す五感関連度「聴覚(人の声)=150」及び「視覚(動画)=1」を取得する。そして、各五感関連度を合計し、「151」という五感関連度の初期値を設定する。
【0064】
次に、ステップ106で、上記ステップ102で判定された関数「警報提示」について、関数記憶部24に記憶された関数と情報緊急度との対応(例えば、図2)を参照して、緊急度の初期値を∞とし、情報緊急度を取得し、「1」という情報緊急度の初期値を設定する。
【0065】
次に、ステップ108で、登録前アプリケーション「先行車接近警報アプリケーション」で利用されている関数やアプリケーションの動作に基づいて、アプリケーションの運転との関連性を判定する。例えば、利用されている関数やアプリケーションの動作と運転との関連性とを対応付けたテーブルを予め作成しておき、このテーブルを参照して、運転との関連性を判定することができる。「先行車接近警報アプリケーション」が、先行車の接近を検出し、警報を鳴らして、ドライバにブレーキを踏むことを指示するアプリケーションである場合、「先行車接近警報アプリケーション」の運転との関連性は、「操作」であると判定される。そして、予め定めた運転との関連性と運転関連度との対応(例えば、図5)を参照して、運転との関連性「操作」に対する運転関連度を取得し、「1000」という運転関連度の初期値を設定する。
【0066】
次に、ステップ110で、上記ステップ104で設定した五感関連度の初期値「151」、上記ステップ106で設定した情報緊急度の初期値「1」、上記ステップ108で設定した運転関連度の初期値「1000」に基づいて、(1)式に従って、優先度の初期値を算出する。ここでは、優先度の初期値=(151+1000)×1=1151となる。そして、算出した優先度の初期値を「先行車接近警報アプリケーション」に付与して、処理を終了する。
【0067】
なお、既に登録済みの「白線認識アプリケーション」及び「地震警報アプリケーション」についても、登録時に上記と同様の処理により、優先度の初期値が付与されている。具体的には、「白線認識アプリケーション」について、利用される関数が「画像表示」、運転関連度が「認知・判断」の場合には、「白線認識アプリケーション」の五感関連度の初期値は310、情報緊急度の初期値は1、運転関連度の初期値は300となり、優先度の初期値610が付与されている。また、「地震警報アプリケーション」について、利用される関数が「警報提示」、運転関連度が「関連なし」の場合には、「地震警報アプリケーション」の五感関連度の初期値は151、情報緊急度の初期値は1、運転関連度の初期値は0となり、優先度の初期値151が付与されている。
【0068】
次に、3つのアプリケーションの実行について説明する。車載クライアント装置60側からアプリケーションの実行要求を受け付けた場合に、プラットフォーム装置10において、図7に示すアプリケーション実行処理が実行される。
【0069】
まず、ステップ200で、車載クライアント装置60から送信された運転情報を取得して、運転情報記憶部42に記憶する。
【0070】
次に、ステップ202で、実行要求のあった各アプリケーションを実行する。ここでは、図8(a)に示す先行車接近警報アプリケーション処理、同図(b)に示す白線認識アプリケーション処理、及び同図(c)に示す地震警報アプリケーション処理が並列処理により実行される。
【0071】
先行車接近警報アプリケーション処理では、ステップ2020aで、運転情報に含まれる車両周辺を撮像した撮像画像に基づいて、先行車を認識し、先行車までの距離を算出する。先行車認識の手法については、従来既知の手法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。次に、ステップ2022aで、運転情報に含まれる自車両の速度と、上記ステップ2020aで算出した先行車までの距離とに基づいて、先行車に衝突するまでの時間tを算出する。時間tが所定時間以上の場合には∞とし、この時間tが情報の緊急度となる。次に、ステップ2024aで、関数記憶部24に記憶された関数(F)「警報提示」を呼び出す。そして、関数の引数として、情報の緊急度(時間t)を与えたときの関数「警報提示」の機能に基づいて、アプリケーションの実行結果(提示音、提示画像)を出力して、リターンする。
【0072】
白線認識アプリケーション処理では、ステップ2020bで、運転情報に含まれる撮像画像に基づいて、白線を認識する。白線認識の手法については、従来既知の手法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。白線認識処理では、事故や問題が発生するまでの時間を算出していないため、情報の緊急度を∞とする。次に、ステップ2024bで、関数記憶部24に記憶された関数(F)「画像表示」を呼び出す。そして、関数の引数として、情報の緊急度(∞)を与えたときの関数「画像表示」の機能(「静止画」)に基づいて、アプリケーションの実行結果(提示位置、提示画像)を出力して、リターンする。
【0073】
地震警報アプリケーション処理では、ステップ2020cで、運転情報に含まれる車両位置、及び地震情報に基づいて、地震が起こるまでの時間Tを認識する。時間Tが所定時間以上の場合には∞とし、この時間Tが情報の緊急度となる。次に、ステップ2024cで、関数記憶部24に記憶された関数(F)「警報提示」を呼び出す。そして、関数の引数として、情報の緊急度(時間T)を与えたときの関数「警報提示」の機能に基づいて、アプリケーションの実行結果(提示音、提示画像)を出力して、リターンする。
【0074】
次に、ステップ204へ移行して、上記ステップ202の処理で得られた情報の緊急度が、前回処理時から変化したか否かを判定する。緊急度が変化した場合には、ステップ206へ移行し、変化していない場合には、ステップ208へ移行する。ここでは、地震警報アプリケーション処理で得られた情報の緊急度(時間T)が、前回処理時の∞から「15秒」に変化したとし、先行車接近警報アプリケーション及び白線認識アプリケーションにより得られる情報の緊急度は変化しなかったものとする。
【0075】
その場合、ステップ206へ移行して、各アプリケーションの優先度を再計算する。先行車接近警報アプリケーション及び白線認識アプリケーションについては、情報の緊急度が変化していないため、優先度も変化しない。地震警報アプリケーションについては、図2を参照して、五感関連度は160、情報緊急度は10、運転関連度は変更なしで0となり、優先度=(160+0)×10=1600と再計算される。従って、先行車接近警報アプリケーション、白線認識アプリケーション、及び地震警報アプリケーションの中で、地震警報アプリケーションの優先度が最も大きくなる。前処理まで、図9(a)に示すように、優先度が最も大きかった先行車接近警報アプリケーションの実行結果が表示装置に表示されていた場合において、上記のように優先度が変化すると、同図(b)に示すように、先行車の認識結果の表示の上から、地震警報が表示装置に表示される。また、スピーカからの音による提示も、地震警報アプリケーションの実行結果の提示を優先し、例えば、「15秒後に地震発生。すぐに路肩に車を停めてください。」のような警報を提示することができる。
【0076】
次に、ステップ208で、ドライバが運転に注意を要する状況にあるか否かにより、情報緊急度または優先度に応じて、出力状態を制限する出力制御処理を実行するか否かを判定する。例えば、運転情報に基づいて、車速が所定値以上の場合、市街地を走行中の場合等に、ドライバが運転に注意を要する状況にあると判定することができる。出力制御処理を実行する場合には、ステップ210へ移行し、実行しない場合には、ステップ212へ移行する。
【0077】
ステップ210では、図10に示す出力制御処理を実行する。
【0078】
まず、ステップ2100で、実行結果を出力したアプリケーションに付与された優先度が所定の閾値thより小さいか否かを判定する。優先度<thの場合には、ステップ2102へ移行して、実行結果のスピーカへの出力を停止する。優先度≧thの場合には、ステップ2104へ移行する。
【0079】
ステップ2104では、優先度が所定の閾値thより小さいか否かを判定する。閾値thは閾値thより大きな値である。優先度<thの場合には、ステップ2106へ移行して、実行結果をスピーカから出力する際の音量を下げる。優先度≧thの場合には、ステップ2108へ移行する。
【0080】
ステップ2108では、優先度が所定の閾値thより小さいか否かを判定する。閾値thは閾値thより大きな値である。優先度<thの場合には、ステップ2110へ移行して、実行結果により出力されるコンテンツが声のコンテンツか否かを判定する。声のコンテンツの場合には、ステップ2112へ移行し、スピーカから出力する提示音(声)をリラックスできるBGMに変更する。優先度≧thの場合、または声のコンテンツではない場合には、ステップ2114へ移行する。
【0081】
ステップ2114では、優先度が所定の閾値thより小さいか否かを判定する。閾値thは閾値thより大きな値である。優先度<thの場合には、ステップ2116へ移行して、実行結果により出力されるコンテンツがニュースか否かを判定する。ニュースの場合には、ステップ2118へ移行し、出力するニュースの内容を、ヘッドラインや要約のみに変更する。優先度≧thの場合、またはニュースではない場合には、ステップ2120へ移行し、アプリケーションによる実行結果をそのまま出力する。
【0082】
次に、図11を参照して、プラットフォーム装置10において実行される優先度補正処理(優先度)ルーチンについて説明する。本ルーチンは、上記のアプリケーション実行処理ルーチンと並行して実行される。
【0083】
ステップ300で、アプリケーションが実行された際のアプリケーションの実行状態と運転情報とを対応付けて蓄積する。次に、ステップ302で、蓄積された運転情報に基づいて、例えば、急ブレーキを踏む等の所定の運転行動が一定数以上蓄積されたか否かを判定する。所定の運転行動が一定数以上蓄積された場合には、ステップ304へ移行し、一定数に満たない場合には、ステップ300へ戻って、運転情報及びアプリケーションの実行状態の蓄積を継続する。
【0084】
ステップ304では、処理対象のアプリケーションについて、優先度スコアリング処理(図6)のステップ106で判定した運転関連度が「操作」か否かを判定する。運転関連度が操作の場合には、ステップ306へ移行し、そのアプリケーションが指示した操作を実際にドライバが行った確率を算出する。そして、ステップ310へ移行して、上記ステップ306で算出した確率が、所定の閾値(例えば、0.8)を超えた場合に、そのアプリケーションに付与されている優先度を上げるように補正する。また、逆に上記ステップ306で算出した確率が、所定の閾値以下の場合には、アプリケーションに付与されている優先度を下げるように補正する。
【0085】
一方、上記ステップ304で、処理対象のアプリケーションの運転関連度が操作ではない、すなわち運転関連度が「認知・判断」または「関連なし」であると判定された場合には、ステップ308へ移行する。ステップ308では、そのアプリケーションの実行中に、ドライバが急ブレーキを踏む等の危険行動をとった確率を算出する。そして、ステップ310へ移行して、上記ステップ308で算出した確率が、所定の閾値(例えば、0.2)を超えた場合に、そのアプリケーションに付与されている優先度を下げるように補正して、処理を終了する。
【0086】
次に、図12を参照して、プラットフォーム装置10において実行される優先度補正処理(五感関連度)ルーチンについて説明する。本ルーチンは、上記のアプリケーション実行処理ルーチンと並行して実行される。
【0087】
ステップ320で、アプリケーション実行時に利用された関数の実行状態と運転情報とを対応付けて蓄積する。次に、ステップ322で、蓄積された運転情報に基づいて、例えば、急ブレーキを踏む等の所定の運転行動が一定数以上蓄積されたか否かを判定する。所定の運転行動が一定数以上蓄積された場合には、ステップ324へ移行し、一定数に満たない場合には、ステップ320へ戻って、運転情報及び関数の実行状態の蓄積を継続する。
【0088】
ステップ324では、処理対象の関数を利用した元のアプリケーションについて、優先度スコアリング処理(図6)のステップ106で判定した運転関連度が「操作」か否かを判定する。運転関連度が操作の場合には、ステップ326へ移行し、その関数が指示した操作を実際にドライバが行った確率を算出する。そして、ステップ330へ移行して、上記ステップ326で算出した確率が、所定の閾値(例えば、0.8)を超えた場合に、その関数を利用した元のアプリケーションに付与された優先度の算出の際に用いた五感関連度(優先度スコアリング処理(図6)のステップ104で設定した五感関連度)を上げるように補正する。また、逆に上記ステップ326で算出した確率が、所定の閾値以下の場合には、五感関連度を下げるように補正する。
【0089】
一方、上記ステップ324で、処理対象の関数を利用した元のアプリケーションの運転関連度が操作ではない、すなわち運転関連度が「認知・判断」または「関連なし」であると判定された場合には、ステップ328へ移行する。ステップ328では、その関数の実行中に、ドライバが急ブレーキを踏む等の危険行動をとった確率を算出する。そして、ステップ330へ移行して、上記ステップ328で算出した確率が、所定の閾値(例えば、0.2)を超えた場合に、その関数を利用した元のアプリケーションに付与された優先度の算出の際に用いた五感関連度を下げるように補正して、処理を終了する。
【0090】
以上説明したように、本実施の形態のプラットフォームシステムによれば、アプリケーションに利用される関数に、その関数が表す機能が作用する五感に応じて、五感の運転へのディストラクションを考慮した五感関連度を対応付けて記憶しておく。各アプリケーションに優先度を付与する際には、各アプリケーションで利用されている関数に対応した五感関連度を用いることにより、プラットフォームに登録される複数のアプリケーションが個々に開発されたものであっても、運転時における安全性を考慮して整合性のとれた優先度を個々のアプリケーションに付与することができる。
【0091】
また、優先度を算出する際に、情報緊急度を用いることで、アプリケーションの実行により緊急度が変化した場合には、優先度を動的に変更することができる。
【0092】
また、優先度を算出する際に、アプリケーションの運転との関連性に応じた運転関連度を用いることで、ドライバの運転行動を考慮した優先度を算出することができる。
【0093】
また、アプリケーションまたは関数の実行状態と運転行動との関連に基づいて、優先度または五感関連度を補正するため、より実際の運転行動に沿った優先度に補正することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態では、出力制御処理により、実行結果の出力状態を制限する場合について説明したが、車載クライアント装置側からプラットフォーム装置側へのアクセスを禁止するように制御してもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、アプリケーションの運転との関連性を、「操作」、「認知・判断」及び「操作」の3種類を用いる場合について説明したが、関連あり、なしの2種類としてもよいし、関連度に応じてより詳細に分類した4種類以上を用いてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 プラットフォームシステム
10 プラットフォーム装置
20 アプリケーション管理部
22 登録前アプリケーション記憶部
24 関数記憶部
26 優先度スコアリング部
28 アプリケーション登録部
40 アプリケーション実行制御部
42 運転情報記憶部
44 アプリケーション実行部
46 出力制御部
48 優先度補正部
60 車載クライアント装置
62 運転情報取得部
64 出力デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12