【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0046】
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒は水)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T
1)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T
0)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T
1/T
0)}/0.5
【0047】
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0048】
<ポリイミドフィルムサンプルの作成>
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物を、基材のガラス板上にバーコーターによって塗布し、その塗膜を、減圧下25℃で30分間、脱泡及び予備乾燥した後で、常圧下、熱風乾燥器に入れて、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmのポリイミドフィルムを形成した。このポリイミドフィルムを用いて特性を評価した。
【0049】
<機械的特性(引張試験)>
引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を行い、引張弾性率、引張破断伸び、引張破断強度を求めた。
【0050】
<ガラス転移温度測定>
TAインスツルメンツ(株)製 固体粘弾性アナライザー RSAIII(圧縮モード 動的測定、周波数62.8rad/sec(10Hz)、歪量はサンプル高さの3%に設定)を用い、雰囲気窒素気流中、−140℃から450℃まで温度ステップ3℃で、各温度到達後30秒後に測定を行ない次の温度に昇温して測定を繰り返す方法で、損失弾性率(E'')の極大点を求め、その温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
【0051】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
a−BPDA:2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
i−BPDA:2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
DSDA:3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度:120g/L、以下同様)
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.19g/L)
MPD:m−フェニレンジアミン(77g/L)
2,4−TDA:2,4−ジアミノトルエン(62g/L)
HAB:3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(1.3g/L)
MBAA:ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)メタン(200g/L)
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(0.000019g/L)
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(0.0018g/L)
1,2−DMZ:1,2−ジメチルイミダゾ−ル
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
2MZ:2−メチルイミダゾ−ル
DBU:1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0052】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、25℃で12時間撹拌して、固形分濃度9.0質量%、溶液粘度16.3Pa・s、対数粘度0.95のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0053】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、50℃で8時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度35.5Pa・s、対数粘度1.25のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0054】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度63.0Pa・s、対数粘度1.86のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0055】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、2E4MZの34.23g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.6質量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.64のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0056】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの20.25g(0.101モル)と、1,2−DMZの24.31g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの29.75g(0.101モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度32.0Pa・s、対数粘度0.42のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0057】
〔実施例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにMPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.9質量%、溶液粘度13.5Pa・s、対数粘度0.75のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドフィルムについて、その特性を表1に示した。
【0058】
〔実施例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これに2,4−TDAの14.67g(0.120モル)と、1,2−DMZの28.86g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの35.33g(0.120モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.8質量%、溶液粘度1.0Pa・s、対数粘度0.21のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0059】
〔実施例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにHABの21.18g(0.098モル)と、1,2−DMZの47.09g(カルボキシル基に対して2.50倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの28.82g(0.098モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.4質量%、溶液粘度1.5Pa・s、対数粘度0.50のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0060】
〔実施例9〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにMBAAの24.66g(0.086モル)と、1,2−DMZの41.41g(カルボキシル基に対して2.50倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの25.34g(0.086モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.5質量%、溶液粘度2.0Pa・s、対数粘度0.75のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0061】
〔実施例10〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの12.93g(0.120モル)と、1,2−DMZの28.73g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にODPAの37.07g(0.120モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.9質量%、溶液粘度2.0Pa・s、対数粘度0.58のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0062】
〔実施例11〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にi−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.6質量%、溶液粘度0.8Pa・s、対数粘度0.22のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0063】
〔実施例12〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの11.59g(0.107モル)と、1,2−DMZの25.77g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にDSDAの38.41g(0.107モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度1.2Pa・s、対数粘度0.35のポリイミド前駆体水溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0064】
〔実施例13〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの12.57g(0.116モル)と、1,2−DMZの27.93g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にBTDAの37.43g(0.116モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.8質量%、溶液粘度73.8Pa・s、対数粘度0.45の水溶性ポリイミド前駆体溶液を得た。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物について、その特性を表1に示した。
【0065】
〔比較例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの17.92g(カルボキシル基に対して0.75倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0066】
〔比較例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、2MZの25.50g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0067】
〔比較例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、DBUの47.29g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0068】
〔比較例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにBAPPの29.13g(0.071モル)と、1,2−DMZの17.05g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの20.87g(0.071モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0069】
〔比較例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.92g(0.085モル)と、1,2−DMZの20.49g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にa−BPDAの25.08g(0.085モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0070】
〔比較例6〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの23.93g(0.120モル)と、1,2−DMZの28.73g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にPMDAの26.07g(0.120モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0071】
〔比較例7〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.26g(0.083モル)と、2E4MZの22.86g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にODPAの25.74g(0.083モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0072】
〔比較例8〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの8.94g(0.083モル)と、ODAの11.03g(0.055モル)と、1,2−DMZの33.10g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にPMDAの30.03g(0.138モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶性を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0073】
〔参考例1〕
TPE−Rの29.23g(0.1モル)とDMAcの234.60gとを、攪拌機、還流冷却器(水分分離器付き)、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのガラス製反応容器に、25℃において添加し、その混合液に窒素ガス流通下攪拌しながら、a−BPDAの29.42g(0.1モル)を添加し、2時間反応させポリイミド前駆体溶液を得た。そして、この溶液をDMAcの293.25gで希釈し30℃において1.3ポイズとした。この溶液にDMZの5.87g(0.06モル)を添加し、この溶液を、ホモジナイザーを備えたアセトン(6.5L)に徐々に加えポリイミド前駆体粉末を析出させた。この懸濁液を濾過し、アセトン洗浄し、40℃で10時間真空乾燥して、60.52gのポリイミド前駆体の粉末を得た。
【0074】
このポリイミド前駆体粉末3gに対して、水の26.10gおよび1,2−DMZの0.9g(0.0094モル)を加え、60℃で攪拌しながら2時間で溶解し均一なポリイミド前駆体水溶液を得た。この水溶液をGC−MSを用いて発生ガスの分析を行ったところ、6.28%のDMAcが検出され、有機溶媒の残存が確認された。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】