【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0035】
以下の例で用いた特性の測定方法を以下に示す。
<固形分濃度>
試料溶液(その質量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の質量(その質量をw2とする)を測定する。固形分濃度[質量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度[質量%]=(w2/w1)×100
【0036】
<対数粘度>
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒は水)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T
1)を測定した。対数粘度は、ブランクの水の流下時間(T
0)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T
1/T
0)}/0.5
【0037】
<溶液粘度(回転粘度)>
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
【0038】
<芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造>
ポリイミド前駆体水溶液組成物を、内径150mm、長さ300mmの円筒金型の内側表面に、回転数100rpmで回転させながら均一に塗布し、その後回転数が200rpmでこの塗膜を、80℃で30分間、120℃で30分間、200℃で10分間、次いで250℃で10分間加熱処理して、厚さが50μmの芳香族ポリイミドシームレスベルトを得た。
得られた芳香族シームレスベルトについて目視により状態観察を行った。また、この芳香族ポリイミドシームレスベルトの特性を評価した。
【0039】
<芳香族ポリイミドシームレスベルトの状態観察>
発泡または割れなどの不具合が全くないものを○、発泡または割れなどの不具合がある領域が全体の30%以下のものを△、発泡または割れなどの不具合がある領域が30%を越えているものを×とした。
【0040】
<機械的特性(引張試験)>
引張り試験機(オリエンテック社製RTC−1225A)を用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を行い、引張弾性率、引張破断伸び、引張破断強度を求めた。
【0041】
<ガラス転移温度測定>
TAインスツルメンツ(株)製 固体粘弾性アナライザー RSAIII(圧縮モード 動的測定、周波数62.8rad/sec(10Hz)、歪量はサンプル高さの3%に設定)を用い、雰囲気窒素気流中、−140℃から450℃まで温度ステップ3℃で、各温度到達後30秒後に測定を行ない次の温度に昇温して測定を繰り返す方法で、損失弾性率(E'')の極大点を求め、その温度をガラス転移点(Tg)として求めた。
【0042】
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
ODPA:4,4’−オキシジフタル酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
a−BPDA:2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD:p−フェニレンジアミン(25℃における水に対する溶解度:120g/L、以下同様)
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(0.19g/L)
BAPP:2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン(0.000019g/L)
TPE−R:1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(0.0018g/L)
1,2−DMZ:1,2−ジメチルイミダゾ−ル
2E4MZ:2−エチル−4−メチルイミダゾール
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
【0043】
〔実施例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの29.87g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度63.0Pa・s、対数粘度1.86のポリイミド前駆体水溶液組成物を得た。
このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、前記の芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造に従って芳香族ポリイミドシームレスベルトを製造した。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドシームレスベルトについて、状態観察及び特性の評価結果を表1に示した。
【0044】
〔実施例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、2E4MZの34.23g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.6質量%、溶液粘度10.3Pa・s、対数粘度0.64のポリイミド前駆体水溶液組成物を得た。
このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、前記の芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造に従って芳香族ポリイミドシームレスベルトを製造した。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドシームレスベルトについて、状態観察及び特性の評価結果を表1に示した。
【0045】
〔実施例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの20.25g(0.101モル)と、1,2−DMZの24.31g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの29.75g(0.101モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度8.7質量%、溶液粘度32.0Pa・s、対数粘度0.42のポリイミド前駆体水溶液組成物を得た。
このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、前記の芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造に従って芳香族ポリイミドシームレスベルトを製造した。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドシームレスベルトについて、状態観察及び特性の評価結果を表1に示した。
【0046】
〔実施例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの10.97g(0.055モル)及びPPDの5.92g(0.055モル)と、1,2−DMZの20.43g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの16.12g(0.055モル)及びODPAの16.99g(0.055モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.1質量%、溶液粘度6.5Pa・s、対数粘度0.50のポリイミド前駆体水溶液組成物を得た。
このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、前記の芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造に従って芳香族ポリイミドシームレスベルトを製造した。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドシームレスベルトについて、状態観察及び特性の評価結果を表1に示した。
【0047】
〔実施例5〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにODAの14.86g(0.074モル)及びPPDの3.44g(0.032モル)と、1,2−DMZの20.43g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの21.83g(0.074モル)及びODPAの9.87g(0.032モル)を加え、70℃で4時間撹拌して、固形分濃度9.0質量%、溶液粘度5.2Pa・s、対数粘度0.46のポリイミド前駆体水溶液組成物を得た。
このポリイミド前駆体水溶液組成物を用いて、前記の芳香族ポリイミドシームレスベルトの製造に従って芳香族ポリイミドシームレスベルトを製造した。
得られたポリイミド前駆体水溶液組成物及びポリイミドシームレスベルトについて、状態観察及び特性の評価結果を表1に示した。
【0048】
〔参考例1〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにPPDの13.44g(0.124モル)と、1,2−DMZの17.92g(カルボキシル基に対して0.75倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの36.56g(0.124モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0049】
〔参考例2〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにBAPPの29.13g(0.071モル)と、1,2−DMZの17.05g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にs−BPDAの20.87g(0.071モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0050】
〔参考例3〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.92g(0.085モル)と、1,2−DMZの20.49g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にa−BPDAの25.08g(0.085モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0051】
〔参考例4〕
攪拌機、窒素ガス導入・排出管を備えた内容積500mLのガラス製の反応容器に、溶媒として水の450gを加え、これにTPE−Rの24.26g(0.083モル)と、2E4MZの22.86g(カルボキシル基に対して1.25倍当量)とを加え25℃で1時間攪拌し、溶解させた。この溶液にODPAの25.74g(0.083モル)を加え、70℃で4時間撹拌したが、均一に溶解することがなく、ポリイミド前駆体水溶液組成物を得ることができなかった。
結果を表2に示した。
【0052】
〔参考例5〕
TPE−Rの29.23g(0.1モル)とDMAcの234.60gとを、攪拌機、還流冷却器(水分分離器付き)、温度計、窒素導入管を備えた1000mLのガラス製反応容器に、25℃において添加し、その混合液に窒素ガス流通下攪拌しながら、a−BPDAの29.42g(0.1モル)を添加し、2時間反応させポリイミド前駆体溶液を得た。そして、この溶液をDMAcの293.25gで希釈し30℃において1.3ポイズとした。この溶液にDMZの5.87g(0.06モル)を添加し、この溶液を、ホモジナイザーを備えたアセトン(6.5L)に徐々に加えポリイミド前駆体粉末を析出させた。この懸濁液を濾過し、アセトン洗浄し、40℃で10時間真空乾燥して、60.52gのポリイミド前駆体の粉末を得た。
【0053】
このポリイミド前駆体粉末3gに対して、水の26.10gおよび1,2−DMZの0.9g(0.0094モル)を加え、60℃で攪拌しながら2時間で溶解し均一なポリイミド前駆体水溶液を得た。この水溶液をGC−MSを用いて発生ガスの分析を行ったところ、6.28%のDMAcが検出された。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】