(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
雄ネジ部材と雌ネジ部材の螺合構造であって、それら雄ネジ部材、或いは、雌ネジ部材の少なくとも一方のネジ部材に、お互いのネジ部材が圧入する圧入部を設けると共に、その圧入部をお互いのネジ部材の螺合が開始されるよりも前の部位に形成したことを特徴とする螺合構造。
【背景技術】
【0002】
2部品を結合させる構造としては、ネジによる螺合が一般的である。例えばインキなどを収納した容器の外周に雄ネジを設け、前述した容器を密閉する為の蓋の内周に雌ネジを設ける。この雄ネジと雌ネジを噛み合わせた状態で、容器と蓋を相対的に回転させることによって、蓋と容器端面を互いに当接させることができる。そして、雄ネジと雌ネジは互いに接触している為、摩擦による抵抗等が発生し、当接した状態を維持することができる。これにより容器を密閉したり、また、当接させるのと反対方向に相対的に回転させることで蓋を取り外し、密閉状態を解除したりを自在に行うことができる。
【0003】
しかし、螺合開始時に2部品のセンターがずれていると、雄ネジと雌ネジ同士が乗り上げてしまうことがあり、まっすぐに螺合しない可能性がある。例えば、前述した容器と蓋の関係であれば、容器の端面と蓋が周状で均一に当接することにより密閉するが、斜めに螺合してしまうと容器の端面と蓋が均一に当接せず隙間が発生し、その隙間から内容物がこぼれてしまうことがある。
【0004】
上記の問題に対し、螺合開始時の位置を合わせる為、雄ネジと雌ネジの切り始めを斜めにすることで、ネジ山を適切な位置関係に移動するようガイドの役割をするという提案がなされている(特開2003−54182)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態を図に示し説明する(第1実施例)。 以下、この塗布具において塗布先部の方向を前方、軸筒の底部の方向を後方と定義する。
参照符号1は軸筒であり、その軸筒1は有底形状をなしていると共に、修正液やマーキングインキ、化粧料などの不溶解物質1aを含有したインキを内蔵している。
この軸筒1は押圧によりインキを吐出できるように、熱可塑性樹脂を用いた可撓性を有するものである。ここで使用する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどが挙げられる。また、前記樹脂のリサイクル材料を使用してもよい。インキの種類によって材料は適宜使い分けることができる。成形法としては、ダイレクトブロー成形、多層ブロー成形、インジェクションブロー成形、射出成形などが挙げられる。本実施例においては可撓性を持つ軸筒としたが、硬質容器にも応用できる。軸筒1の樹脂の着色に関しては樹脂練り込みやマスターバッヂによる着色などが挙げられるが、透明、或いは、半透明な樹脂から成形しても良い。
前記軸筒1には、沈降物を撹拌するための撹拌体2がインキと共に内蔵されている。また、軸筒1の後端部には、底部3が形成されており、その底部3から前方に向けて円柱状のストレート部4が形成されている。前記実施例と同様に、ストレート部4はキャップ5を嵌合する嵌合部ともなっている。
また、軸筒1の前端部にも円柱状のストレート部が形成されており、そのストレート部の外周面には、雄ネジ5が形成されている。前記雄ネジ5は、後述する前軸中筒6を一体に持つ前軸7の内面に形成された雌ネジ8と螺合し、軸筒1を密閉すると共に、インキを密閉するようになっている。
前記ストレート部4のなかで最も前方に位置するストレート部終点9から前記雄ネジ5の間は、横断面形状が楕円形状を有している。さらに前記ストレート部終点9から前記雄ネジ5の間には軸筒1の最大拡径部10が形成されているが、その最大拡径部10は徐々に拡径され、また、徐々に縮径する形状を有している。
つまり、軸筒1の形状はストレート部終点9から最大拡径部10まで拡径され、最大拡径部10から前方の軸筒1の開口部11の方向に向かって縮径し、前記雄ネジ5が形成される直前まで縮径されている(縮径終了部12)。
前記最大拡径部10付近は、その横断面形状が楕円形状をなしていると共に、軸筒1内面に曲線を描きながら一周する曲線状突起13が設けてあり、さらに前方側の楕円形状終了部14の内面にも周状突起15が設けてある。つまり、前記楕円形状終了部14と周状突起15は塗布具軸心方向に向かって軸筒1の内面に向けて突出している。本実施例ではダイレクトブロー成形を用いており、軸筒1の内面には、前記楕円形状終了部14と周状突起15が設けられているため、対応する軸筒1の外面には溝が形成され、露出している。この溝によって、曲線状突13は塗布具使用者の持ちやすさと押しやすさを考慮した形状としてあるが、もちろん、他の成形法を用いて軸筒1外面に溝が露出しないようにしても良い。
また、前記最大拡径部10の肉厚は、楕円形の短辺側が薄く、長辺側が厚く設計されている。これは使用者が軸筒1を押圧する際に短辺側を押しやすいよう、押圧部の剛性を下げる意図である。ただし、本実施例のように楕円形状であれば構造的に短辺側がたわみやすくなっているので、短辺の肉厚が長辺の肉厚より大きくなっても、短辺側を押しやすくすることができる。
また、前記雄ネジ5には、前記前軸7が螺着されている。もちろん、その前軸7の内面には、雌ネジ8が形成されており、その雌ネジ8と前記雄ネジ5とが螺合している。前記雄ネジ5と雌ネジ8が螺合することによって、軸筒1を密閉すると共に、インキを密閉するようになっている。そして、その前軸7の内側には前記前軸中筒6が一体に成形されている。さらに、前記前軸中筒6の外周面には周状リブ16が設けられている。前記周状リブ16は断面が半円状の形状をしており、軸方向に間隔をあけて2段に設けられている。
その周状リブ16は前述の通り2段形成されているが、そのうちの前軸中筒6の端面に近い位置に形成された周状リブ16は、軸筒1と螺合を開始する前に、軸筒1の開口部11の内側から接触するような高さに設計されている。尚、本実施例においては前軸中筒6を一周するような周状リブ16としたが、接触している部分が周状に均一であれば、圧入状態時に受ける力が均一になることで、一方向に引っ張られることがなく傾きにくくなりセンターがずれない。そのため、部分的に突起を形成し、放射状に等間隔配置したリブでもよい。リブの形状も、断面が半円状でなくても良く、断面が長方形などの形状をしていても同様の効果が得られる。また、周状リブの段数も自由に設計でき、リブの高さや軸方向の長さなども、使用する塗布具に合わせて自由に設計できる。
前記軸筒1との螺合の際、前記周状リブ16は軸筒1と接触したまま回転するため、周状リブ16が削れてしまう可能性がある。そのため、前軸7の材質は軸筒1の材質よりも硬質なものを使用すると、螺合時に前記周状リブ16が削れにくくすることが出来る。
尚、前記前軸7は軸筒1との螺合時にトルクがかかる為、ポリブチレンテレフタレートなどの剛性の高い材質の樹脂を使用しているが、その前軸7の剛性が軸筒1と比較して高い場合には、有効ネジ数が整数倍から離れていると、軸筒1の雄ネジ5周辺部が柔らかい為、多く螺合している側に引っ張られ、湾曲する傾向にある。その結果、軸筒1と前軸7の軸心がずれ、前軸が傾いてしまう首曲がり現象が発生する。これを防止する為には、ネジ同士が接触する面積をできる限り均一にすることが望ましい。接触する面積を均一にすることによって、軸筒1が前軸2から受ける力を均一にすることができる。具体的な手段としては、多く螺合している方向に引っ張られてしまうことがないように、軸筒1と前軸7の有効ネジ数を整数倍にすることが好ましいが、その整数倍の±0.2周程度であれば、同様な効果が得られる。
【0012】
前記軸筒1の内部には沈降物を撹拌する為の撹拌体2が内蔵されている。その撹拌体2は円柱形状をしているが、軸筒1の形状により球形などを選択してもよい。また、撹拌体2の端面を面取り、あるいは半球形に加工してもよい。攪拌体2の先端を先細りにすることによって、より前軸中筒6の前方部まで侵入させることができると共に、衝撃力によって沈降物を攪拌することができる。さらに、材質は内蔵するインキに比べて比重が大きい金属や高比重高分子、あるいは金属粉を含有した熱可塑性樹脂でもよい。尚、前記攪拌体2の重量であるが、生成された前記沈降物の重量に対して30パーセント以上にするのが好ましい。ただし、撹拌体2を重くしすぎると塗布具全体の重量が増加し、落下した際に軸筒1の破損につながる為、適切に設計する必要がある。そして、さらには、インキ中に含まれる微量の水分や、撹拌体2の製造から塗布具の組み立てまでの間に空気中の水分と触れることによる腐食を防止する為に、撹拌体2の表面に防錆処理を施したり、撹拌体2の材質をステンレス製などにしても良い。尚、撹拌体2の長さは、生成される沈降物に埋没しないような長さに設定することが望ましい。また、攪拌体2の断面積は大きいほうが撹拌効率が高いが、大き過ぎると沈降物が接触する表面積が大きくなり、その結果、撹拌体2の動き出しが悪くなるため、適切に設計する必要がある。
【0013】
前記前軸7の外側には周状のキャップ嵌合用リブ17が形成されている。一方、前軸7の内部前方にはリブ18が形成されている。そのリブ18の後方端面における前軸7の内部の直径(内接円径)は、撹拌体2の直径より大きく設計しており、これにより撹拌体2にて後述するインキ流通穴19を密閉することがないようにしてある。
前軸7の前方には周状の圧入用突起20が形成されている。また、前軸7の前方にはインキを吐出する塗布先部21が形成されている。前軸中筒6の内部と塗布先21との間にはインキ流通穴19が設けられている。また、そのインキ流通穴19の前方終了部付近には周状の前軸バネ座部22が設けられている。
前記塗布先部21はチップ23、芯体24、バネ25から構成されている。そのバネ25は芯体24の後方に設けた芯体バネ座部26と前軸バネ座部22により、両端を保持されている。チップ23は芯体24とバネ25を内部に持つような配置になっている。尚、芯体24はバネ25による弾撥力を受け、チップ23と常に接触して弁構造をなしている。以下、詳細に構成を述べる。
前記チップ23は中空形状を有しており、先端吐出口27に向かって段階的に縮径している。その先端吐出口27が最も縮径されており、先端吐出口27の内部の後方には弁座部28が形成されている。また、チップ23の外側には、前記前軸7への圧入のための周状溝29が形成されている。その周状溝29と、前記圧入用突起20が嵌合して固着している。尚、チップ23の材質は快削ステンレス鋼や洋白、真鍮など切削性のよいものが用いられている。
前記芯体24は中実形状で、先端にチップ24の先端から外部に突出した位置で保持されている塗布部30、中間部に拡径部31、後方に長く伸びた縮径部32の3つで構成されている。その拡径部31の前方には、球面状の弁部33が形成されており、後方には芯体バネ座部26が形成されている。この芯体24の材質もチップ23の材質と同様、快削ステンレス鋼など、切削性の良いものを用いることが望ましい。
前記バネ25は、内部に芯体24の縮径部32が入り込んでおり、後端が前記前軸バネ座部22に、先端が芯体拡径部31の後方のバネ座部26により保持されている。
そして、前記芯体24の塗布部30が塗布対象物に押し当てられたときに、芯体24は前記インキ流通穴19の後方へと移動する。この時、芯体24が後方に移動することで、芯体のバネ座部26に保持されていたバネ25の先端も後方に移動する。しかし、バネ25の後端は前軸バネ座部22に保持されたままとなる。そのため、芯体24を前方に付勢する弾撥力は失われていない。
尚、不使用時においては、前記バネ25の弾撥力により芯体24は前方に付勢され、チップ23の内部に設けた弁座部28と芯体24に設けた弁部33が圧接することで弁が閉められている。使用時には、前記チップ23から突出した芯体24の塗布部30を紙面に押し付けることで、前記芯体24がバネ25の弾発力に抗しながらも後方に移動し、チップ23内部の弁座部28と芯体24の弁部33との圧接が解除されて弁が開くという構造をなしている。
尚、塗布先部21の構造はチップ23からボールが突出し、そのボールを後方からバネにて付勢して弁構造をなすような構造でもよい。
【0014】
前記前軸2の前方には、キャップ34が着脱自在に取り付けられており、前記チップ23などを覆っている。即ち、そのキャップ34はチップ23の周辺部に付着したインキの乾燥を防止すると共に、不溶解物質の衣服などへの付着を防止している。そのキャップ34は一方が開口しており、内側にキャップ中筒35が設けられていると共に、このキャップ中筒35は前軸7のテーパー部36と密着することにより塗布先部21を密閉する役割を果たしている。具体的に説明すると、開口部37の周辺には同心円上に嵌合リブ38を複数個設け、この嵌合リブ38が前軸7の外側に形成された周状のキャップ嵌合用リブ17を乗り越えることにより嵌合するようになっている。また、キャップ34はクリップ39を一体に成形している。
尚、キャップ34の材質については、塗布先部21の保護の観点から、例えば、ポリカーボネートのような耐衝撃性が高い樹脂を用いるのが望ましい。さらに、前記軸筒1の中に内蔵したインキに含有されている有機溶剤などに対して高い耐性を持つグレードのポリカーボネートを使用することで、キャップ34を装着した塗布具を高温環境下に置いた際に前記有機溶剤が気化しキャップと接触する場合においても、白濁やクラックなどの劣化を起こしにくくしている。そのため、ポリカーボネートの特徴である高い透明性を保つことができ、強いては、ペン先の視認性を低下させることがなく、耐衝撃性も保つことができる。その具体的なポリカーボネートとしては、パンライトL−1225L(帝人化成株式会社製)などが挙げられる。
【0015】
次に作用について説明する。軸筒1に前軸7を螺合させる際、まず前軸中筒6を軸筒1の開口部11に差込み、仮セットを行う。この時、前軸中筒6に設けた周状リブ16のうち、前軸中筒6の端面に近い位置に形成された周状リブ16が軸筒1の開口部11の内周部に接触し、圧入された状態となり、前軸7は仮セットされた状態からセンターがずれることがない。その後、前軸7にトルクを掛けて軸筒1と螺合させる際も、前記周状リブ16の圧入により仮セットされた状態が保持されることでセンターがずれずに螺合が開始される。その結果、雄ネジ5と雌ネジ8が乗り上げたりせず、螺合不良や前軸7が曲がったまま螺合されてしまう不良を低減させることが出来る。また、前軸中筒6の端面から遠い位置に形成された周状リブ16は、軸筒1が前軸7との螺合を終了する直前から軸筒1の開口部11の内周部と接触し、圧入状態を形成する。つまり、周状リブ16が2箇所で接触していることでさらにセンターがずれにくくなるため、より安定した状態で螺合を終了させることが出来る。
また、自動組み立て機のターンテーブル等を使用して組立を行う際、軸筒1に前軸7を仮セットした状態でステーションを移動させても、周状リブ16のうち、前軸中筒6端面に近い位置に形成された周状リブ16が軸筒1の開口部11の内周部に接触し圧入されており、ステーション移動の際に振動やガタつきが発生しても仮セットされた前軸7は落下しにくくなる。これにより、組立性の向上を図ることが出来る。
【0016】
次に第二の実施例を示す。本実施例はボトル口部51と蓋52との結合構造である。
ボトル口部51は、ボトルに内蔵された内容液の流通口を持つ為に中空形状であり、外周部には雄ネジ53とストレート部54が形成されている。
蓋52は片側が開口されている形状であり、開口部周辺に雌ネジ55を形成し、前記雌ネジ55よりも奥側に、周状リブ56が形成されている。前記周状リブ56は前記ボトル口部51のストレート部54と接触し、圧入部を形成する。また、前記周状リブ56は、雄ネジ53と雌ネジ55の螺合が開始される前から圧入部を形成するような位置に設計されている。
さらに、前記周状リブ56は1段のみ形成されているが、第一の実施例と同様に周状リブの段数や断面形状、高さ、軸方向の長さなどは自由に設計することが出来る。
螺合終了時はボトル口部先端57と蓋天面58が接触することで密閉され、内容液が漏れ出さないようになっている。
【0017】
次に作用について説明する。ボトル口部51に蓋52を螺合させる際、蓋52をボトル口部51に被せるように仮セットを行う。この時、蓋52に設けた周状リブ56がボトル口部51のストレート部54に接触し、圧入された状態となり、蓋52は仮セットされた状態からセンターがずれることがない。その後、蓋52にトルクを掛けてボトル口部51と螺合させる際も、前記周状リブ56の圧入により仮セットされた状態が保持されることでセンターがずれずに螺合が開始される。その結果、雄ネジ53と雌ネジ55が乗り上げたりせず、螺合不良や蓋52が曲がったまま螺合されてしまう不良を低減させることが出来る。
また、ターンテーブル等を使用して組立を行う際、ボトル口部51に蓋52を仮セットした状態でステーションを移動させても、周状リブ56がボトル口部51のストレート部54に接触し圧入されており、ステーションが移動の際に振動やガタつきが発生しても仮セットされた蓋52は落下しにくくなる。これにより、組立性の向上を図ることが出来る。