特許第5733207号(P5733207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733207
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】制振フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20150521BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20150521BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20150521BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20150521BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08J5/18CFD
   C08L67/02
   C08K3/22
   C08K3/34
   F16F15/02 Q
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-521912(P2011-521912)
(86)(22)【出願日】2010年7月5日
(86)【国際出願番号】JP2010061425
(87)【国際公開番号】WO2011004797
(87)【国際公開日】20110113
【審査請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-160100(P2009-160100)
(32)【優先日】2009年7月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100081765
【弁理士】
【氏名又は名称】東平 正道
(72)【発明者】
【氏名】武笠 和明
(72)【発明者】
【氏名】峯崎 琢也
(72)【発明者】
【氏名】千葉 彬史
(72)【発明者】
【氏名】原田 健司
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/018444(WO,A1)
【文献】 特開2008−189854(JP,A)
【文献】 特開2007−056165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位とからなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物を含有してなり、該樹脂組成物が下記条件(I)〜(III)をすべて満たし、厚さが20〜200μmの範囲である制振フィルム。
(I)樹脂組成物中におけるポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の含有量が、それぞれ45〜60質量%の範囲、5〜15質量%の範囲及び30〜50質量%の範囲である。
(II)樹脂組成物中におけるマイカ鱗片(Z)の平均粒子径が、5〜80μmの範囲である。
(III)JISK7127に準拠して測定した樹脂組成物の破壊点伸び率が、30〜70%の範囲である。
【請求項2】
前記樹脂組成物中における二酸化チタン(Y)とマイカ鱗片(Z)との質量比(二酸化チタン/マイカ鱗片)が、0.05〜0.21の範囲である請求項1に記載の制振フィルム。
【請求項3】
ポリエステル樹脂(X)における全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)及び全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する、主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)及び主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率[(A1+B1)/(A0+B0)]が、0.5〜1.0の範囲である請求項1または2に記載の制振フィルム。
【請求項4】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位が、イソフタル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ブラシル酸及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸からなる群より選ばれたジカルボン酸に由来する構成単位である請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項5】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位が、イソフタル酸及びアゼライン酸に由来する構成単位の少なくともいずれかである請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項6】
ポリエステル樹脂(X)における全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)の割合(A1/A0)が、0.5〜1.0の範囲である請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項7】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位が、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、メタキシレングリコール及び1,3−シクロヘキサンジオールからなる群より選ばれたジオールに由来する構成単位である請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項8】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位が、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール及びネオペンチルグリコールからなる群より選ばれたジオールに由来する構成単位である請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項9】
ポリエステル樹脂(X)における全ジオール成分構成単位数(B0)に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の割合(B1/B0)が、0.5〜1.0の範囲である請求項3に記載の制振フィルム。
【請求項10】
ポリエステル樹脂(X)における、(1)トリクロロエタン及びフェノールの混合溶媒(混合質量比(トリクロロエタン/フェノール):40/60)中、25℃で測定した固有粘度が0.2〜2.0dL/gの範囲であり、且つ(2)示差走査熱量計で測定した降温時における結晶化発熱ピークに基づく発熱量が5J/g以下である請求項1〜9のいずれかに記載の制振フィルム。
【請求項11】
アルミニウム合金5052材を基板とした板厚比(制振フィルムの厚み/基板の厚み)が1.0の非拘束形試験片を用い、周波数500Hz、測定温度範囲が0〜80℃の条件で中央加振法により測定した損失係数の最大値が、0.15以上である請求項1〜10のいずれかに記載の制振フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料を主体とした制振フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車輌、鉄道、航空機、家電・OA機器、精密機器、建築機械、土木建築物、靴、スポーツ用品などの振動の発生する箇所には、その振動エネルギーを吸収する材料として制振材が一般に使用されている。
【0003】
制振材のような振動エネルギーを吸収する材料として、例えば特許文献1には、主鎖のエステル結合間の炭素原子数が奇数である部分構造を有するポリエステル樹脂組成物が開示されている。このポリエステル樹脂組成物は室温付近での制振性能に優れており、制振材料として有望な材料である。しかし、ポリエステル樹脂に導電性材料であるカーボン粉末やマイカ粉末等を分散させた場合、制振材料の厚みを200μm未満で製造することは困難であり、フィルム用途向けの制振材料として使用できないという問題がある。
【0004】
また、制振材料として、加工性、機械的強度、材料コストの面から優れるブチルゴムやニトリルゴム(NBR)などのゴム材料が多く用いられている。ところがこれらのゴム材料は、一般の高分子材料の中では最も減衰性(振動エネルギーの伝達絶縁性能、あるいは伝達緩和性能)に優れてはいるものの、ゴム材料単独で制振材料として使用するには制振性(振動エネルギーを吸収する性質)が低いので、例えばフィルム用途向けの制振材料として使用する場合も十分な制振性能を発揮できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−052377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、以上のような状況から、容易に製造でき、軽量であり、優れた制振性を発揮し、且つ汎用性が高い制振フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、このような目的を達成する為に鋭意検討した結果、ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位とからなるポリエステル樹脂に二酸化チタン及びマイカ鱗片を分散させてなる樹脂組成物であって、JISK7127に準拠して測定した破壊点伸び率が30〜70%であるものを用いた場合に、上記の目的が達成できることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の制振フィルムである。
ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位からなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物を含有してなり、該樹脂組成物が下記条件(I)〜(III)をすべて満たし、厚さが20〜200μmの範囲である制振フィルム。
(I)樹脂組成物中におけるポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の含有量が、それぞれ35〜60質量%の範囲、5〜15質量%の範囲、及び30〜55質量%の範囲である。
(II)樹脂組成物中におけるマイカ鱗片(Z)の平均粒子径が5〜80μmの範囲である。
(III)JISK7127に準拠して測定した樹脂組成物の破壊点伸び率が、30〜70%の範囲である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の制振フィルムは、厚さ20〜200μmの範囲に容易に成形でき、軽量であり、優れた制振性を発揮する。
また本発明の制振フィルムは、二酸化チタン及びマイカ鱗片を含有するものであり、カーボン粉末などを用いる必要がないことから、多彩な色調を求められる用途や箇所にも使用できて汎用性が高い。
従って本発明の制振フィルムは、車輌、鉄道、航空機、船舶、家電・OA機器、精密機器、建築機械、土木建築物、住宅設備、医療機器、靴、スポーツ用品などの振動の発生する箇所に広く用いることができる。また、カセットテープラベル、ハードディスク、ハンディカメラ、デジタルカメラなどの制振ラベルとしても応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の制振フィルムは、ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位とからなるポリエステル樹脂(X)に二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物を含有してなり、該樹脂組成物のJISK7127に準拠して測定した破壊点伸び率が30〜70%の範囲であることを1つの要件とする(条件(III))。
なお、この破壊点伸び率は、前記樹脂組成物からなる縦10mm、横150mm、厚さ1.0mmの大きさの短冊型試験片を23℃、50%RHにて80時間以上放置して状態調節した後、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を5回行い、各々の伸び率の平均値を算出して求めた値である。
制振フィルムに用いる樹脂組成物の破壊点伸び率を30%以上とすることにより、厚さが20〜200μmのフィルムを容易に成形できるようになり、該破壊点伸び率を70%以下とすることにより、樹脂組成物のべたつきが抑えられ、フィルム成形する際に実用上問題なく製造できるようになる。
【0011】
本発明の制振フィルムにおける樹脂成分となるポリエステル樹脂(X)については、ジカルボン酸成分構成単位とジオール成分構成単位とからなり、全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)及び全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する、主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)及び主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率[(A1+B1)/(A0+B0)]が0.5〜1.0の範囲であることが好ましい。上記比率[(A1+B1)/(A0+B0)]がこの範囲にあることにより、当該樹脂における室温付近での制振性能を高めることができる。
ここで、上記“ジカルボン酸成分構成単位(又はジオール成分構成単位)の主鎖中の炭素原子数”とは、一つのエステル結合〔−C(=O)−O−〕と次のエステル結合とに挟まれたモノマー単位において、ポリエステル樹脂の主鎖に沿った最短経路上に存在する炭素原子数である。なお、各成分の構成単位数は、後述する1H−NMRスペクトル測定結果の積分値の比から算出できる。
【0012】
本発明において、ポリエステル樹脂(X)における全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)及び全ジオール成分構成単位数(B0)の合計量に対する、主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)及び主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位数(B1)の合計量の比率〔(A1+B1)/(A0+B0)〕は、0.7〜1.0の範囲であることがより好ましい。また、上記のジカルボン酸成分構成単位の主鎖中の炭素原子数及びジオール成分構成単位の主鎖中の炭素原子数は、奇数である、1、3、5、7、9が好ましい。
【0013】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数となるジカルボン酸成分構成単位の例としては、イソフタル酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、ウンデカン二酸、ブラシル酸、及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などに由来する構成単位が挙げられる。中でも、イソフタル酸、アゼライン酸、及び1,3−シクロヘキサンジカルボン酸に由来する構成単位が好ましく、イソフタル酸及びアゼライン酸に由来する構成単位の少なくともいずれかがより好ましい。ポリエステル樹脂(X)は、上記ジカルボン酸に由来する1種または2種以上の構成単位を含んでいてもよい。また、2種以上の構成単位を含む際には、イソフタル酸及びアゼライン酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。
【0014】
ポリエステル樹脂(X)における主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオール成分構成単位の例としては、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ペンタンジオール、1−メチル−1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,5−ペンタンジオール、2−プロピル−1,5−ペンタンジオール、メタキシレングリコール、1,3−シクロヘキサンジオール、及び1,3−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンなどに由来する構成単位が挙げられる。中でも、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、メタキシレングリコール及び1,3−シクロヘキサンジオールに由来する構成単位が好ましく、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール及びネオペンチルグリコールに由来する構成単位がより好ましい。ポリエステル樹脂(X)は、上記ジオールに由来する1種または2種以上の構成単位を含んでいてもよい。
【0015】
さらに、本発明の制振フィルムでは、ポリエステル樹脂(X)における全ジカルボン酸成分構成単位数(A0)に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジカルボン酸成分構成単位数(A1)の比率(A1/A0)が0.5〜1.0の範囲であることが好ましく、該比率(A1/A0)が0.7〜1.0の範囲であることがより好ましい。
また、本発明の制振フィルムでは、ポリエステル樹脂(X)における全ジオール成分構成単位数(B0)に対する主鎖中の炭素原子数が奇数であるジオールに由来する構成単位数(B1)の比率(B1/B0)が0.5〜1.0の範囲であることが好ましく、該比率(B1/B0)が0.7〜1.0の範囲であることがより好ましい。
上記比率(A1/A0)、(B1/B0)が0.5〜1.0の範囲にあることにより、当該樹脂における室温付近での制振性能をより高めることができる。
【0016】
本発明の制振フィルムにおいては、ポリエステル樹脂(X)は、(1)トリクロロエタン及びフェノールの混合溶媒(混合質量比:トリクロロエタン/フェノール=40/60)中、25℃で測定した固有粘度が0.2〜2.0dL/gの範囲であり、且つ(2)示差走査熱量計で測定した降温時における結晶化発熱ピークに基づく発熱量が5J/g以下であることが好ましい。上記(1)及び(2)を満足することにより、より高い制振性を得ることができる。
前記固有粘度は0.4〜1.5dL/gの範囲であることがより好ましく、前記発熱量は3J/g以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(X)には、前記したジカルボン酸成分構成単位及びジオール成分構成単位に加えて、本発明の効果を損なわない程度に他の構成単位が含まれていても良い。その種類に特に制限はなく、ポリエステル樹脂を形成し得るすべてのジカルボン酸及びそのエステル(これを「他のジカルボン酸類」と称する。)、ジオール(これを「他のジオール類」と称する。)或いはヒドロキシカルボン酸及びそのエステル(これを「ヒドロキシカルボン酸類」と称する。)に由来する構成単位を含むことができる。
【0018】
前記他のジカルボン酸類の例としては、テレフタル酸、オルトフタル酸、2−メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、及び3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなどのジカルボン酸あるいはジカルボン酸エステル;トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、及びトリカルバリル酸などの三価以上の多価カルボン酸、或いはその誘導体が挙げられる。
【0019】
また、前記他のジオール類の例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、及びトリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びポリブチレングリコールなどのポリエーテル化合物類;グリセリン、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコール類;1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,3−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,4−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,5−デカヒドロナフタレンジメタノール、1,6−デカヒドロナフタレンジメタノール、2,7−デカヒドロナフタレンジメタノール、テトラリンジメタノール、ノルボルナンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、5−メチロール−5−エチル−2−(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−1,3−ジオキサン、ペンタシクロドデカンジメタノール、及び3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンなどの脂環族ジオール類;4,4’−(1−メチルエチリデン)ビスフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、及び4,4’−スルホニルビスフェノール(ビスフェノールS)などのビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物;ヒドロキノン、レゾルシン、4,4’―ジヒドロキシビフェニル、4,4’―ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4’―ジヒドロキシジフェニルベンゾフェノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物のアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
【0020】
前記ヒドロキシカルボン酸類としては、例えばヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシ酢酸、2,4−ジヒドロキシアセトフェノン、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、4,4’−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、及び3,4−ジヒドロキシ桂皮酸などが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられるポリエステル樹脂(X)を製造する方法に特に制限はなく、従来公知の方法を適用することができる。一般的には原料であるモノマーを重縮合することにより製造できる。例えばエステル交換法、直接エステル化法などの溶融重合法または溶液重合法を挙げることができる。エステル交換触媒、エステル化触媒、エーテル化防止剤、また重合に用いる重合触媒、熱安定剤、光安定剤などの各種安定剤、重合調整剤等も従来既知のものを用いることができる。
前記エステル交換触媒としては、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの金属を含む化合物を、また前記エステル化触媒としては、マンガン、コバルト、亜鉛、チタン、カルシウムなどの金属を含む化合物を、また前記エーテル化防止剤としては、アミン化合物などを各々例示することができる。
また、前記重縮合触媒としては、ゲルマニウム、アンチモン、スズ、チタンなどの金属を含む化合物を挙げることができ、より具体的には、例えば酸化ゲルマニウム(IV);酸化アンチモン(III)、トリフェニルスチビン、及び酢酸アンチモン(III);酸化スズ(II);チタン(IV)テトラブトキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、及びチタン(IV)ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシドなどのチタン酸エステル類が例示される。また熱安定剤としてリン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸などの各種リン化合物を加えることも有効である。その他光安定剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、離型剤などを加えても良い。また、原料となるジカルボン酸成分としては、前記のジカルボン酸成分構成単位が由来するジカルボン酸の他に、それらのジカルボン酸エステル、ジカルボン酸塩化物、活性アシル誘導体、ジニトリルなどのジカルボン酸誘導体を用いることもできる。
【0022】
本発明の制振フィルムは、上記ポリエステル樹脂(X)に、振動エネルギー吸収を向上させる目的で、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を分散させた樹脂組成物を含有してなる。
ポリエステル樹脂(X)に分散させる二酸化チタン(Y)の形態としては、特に制限はなく、ルチル型のみやアナターゼ型のみを含む二酸化チタン、ルチル型及びアナターゼ型が混合された二酸化チタンが使用できる。また、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑制するための表面被覆処理剤としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛などの表面処理剤が挙げられる。さらに、導電性粉末を含むことで導電性を有する二酸化チタンも、本発明の制振フィルムに使用することができる。二酸化チタン(Y)はレーザー回折法により求めた平均粒子径(体積平均粒子径)が0.01〜0.5μmの範囲のものが好適である。
【0023】
ポリエステル樹脂(X)に分散させるマイカ鱗片(Z)の種類は、特に限定されないが、振動エネルギー吸収効果の高い鱗片状のマイカである白マイカが好ましい。また、分散させたマイカが制振フィルム内部で配向し易いため、本発明の制振フィルムに用いる樹脂組成物中におけるマイカの平均粒子径は5〜80μmの範囲とする必要がある(条件(II))。平均粒子径は、好ましくは20〜60μmの範囲であり、より好ましくは25〜50μmの範囲である。マイカの平均粒子径を5μm以上とすることにより制振性の向上効果が得られ、平均粒子径を80μm以下とすることにより厚さが20〜200μmのフィルムが容易に成形できるようになる。なお、平均粒子径はレーザー回折法((株)堀場製作所製、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910)により求めた体積平均粒子径(累計50%粒子径)を示す。
【0024】
また、本発明の制振フィルムに用いる樹脂組成物中におけるポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の含有量は、それぞれ35〜60質量%の範囲、5〜15質量%の範囲、30〜55質量%の範囲であることが必要である(条件(I))。前記ポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)の含有量は、好ましくはそれぞれ38〜55質量%の範囲、5〜12質量%の範囲、40〜55質量%の範囲であり、より好ましくはそれぞれ40〜55質量%の範囲、5〜10質量%の範囲、45〜55質量%の範囲である。また、ポリエステル樹脂(X)の含有量は、40質量%を超えることがさらに好ましい。 制振フィルムに用いる樹脂組成物中におけるポリエステル樹脂(X) の含有量を35質量%以上とすることにより厚さ20〜200μmのフィルムを容易に成形できるようになり、上記含有量を60質量%以下とすることにより、制振性向上効果が顕著に現れる含有量の二酸化チタン及びマイカ鱗片を分散させることが可能となる。
また、制振フィルムに用いる樹脂組成物中における二酸化チタン(Y) の含有量を5質量%以上とすることにより二酸化チタンによる制振性の向上効果が顕著に現れるようになり、二酸化チタン(Y) の含有量を15質量%以下とすることにより厚さ20〜200μmのフィルムが容易に成形できるようになる。
さらに、制振フィルムに用いる樹脂組成物中におけるマイカ鱗片(Z)の含有量を30質量%以上とすることにより制振性の向上効果が得られ、上記含有量を55質量%以下とすることにより厚さ20〜200μmのフィルムが容易に成形できるようになる。
【0025】
また、樹脂組成物中における二酸化チタン(Y)とマイカ鱗片(Z)との質量比(二酸化チタン/マイカ鱗片)は、0.05〜0.21の範囲とすることが好ましく、0.08〜0.20の範囲とすることがより好ましい。
上記質量比を0.05〜0.21の範囲とすることにより、前記制振性の向上効果及びフィルム成形の容易性がともにバランスよく得られることとなる。
【0026】
本発明の制振フィルムは、上記のポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)及びマイカ鱗片(Z)を含んで成るものであるが、必要に応じて、二酸化チタン及びマイカ鱗片以外の他の無機充填材や、1種以上の添加剤、例えば、分散剤、相溶化剤、界面活性剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、酸化防止剤、老化防止剤、耐候剤、耐熱剤、加工助剤、光沢剤、発泡剤、発泡助剤などを本発明の効果を阻害しない範囲で添加することができる。また、他の樹脂とのブレンドまたは成形後の表面処理なども、本発明の効果を阻害しない範囲で行うことができる。
本発明の制振フィルムは、ポリエステル樹脂(X)、二酸化チタン(Y)、マイカ鱗片(Z)及び必要に応じて他の成分を混合し、さらにフィルム成形することで得られる。混合方法は既知の方法を用いることができ、例えば、熱ロール、バンバリーミキサー、二軸混練機、押出機などの装置を用いて溶融混合する方法が挙げられる。その他、ポリエステル樹脂を溶剤に溶解或いは膨潤させ、二酸化チタン及びマイカ鱗片を混入させた後に乾燥する方法、各成分を微粉末状で混合する方法なども採用することができる。なお、二酸化チタン、マイカ鱗片、添加剤などの添加方法、添加順序などは特に限定されない。該混合物を用いた制振フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば押出機を用いてTダイより溶融した混合物をフィルム形状で押出す方法で好適に製造できる。
なお、本発明の制振フィルムの厚さは20〜200μmの範囲であるが、50〜200μmの範囲が好ましく、80〜180μmの範囲がより好ましい。
【0027】
本発明においては、上記のような構成とすることにより、アルミニウム合金 5052材を基板とした板厚比(制振フィルムの厚み/基板の厚み)が1.0の非拘束形試験片を用い、周波数が500Hz、測定温度範囲が0〜80℃の条件で中央加振法により測定した損失係数の最大値を0.15以上とすることができる。該損失係数の最大値は0.18以上とすることが好ましい。
また、本発明の制振フィルムでは、ポリエステル樹脂成分、二酸化チタン及びマイカ鱗片を主体としているので軽量であり、優れた制振性が得られる。
さらに、本発明は、特に厚さ20〜200μmという制振フィルムを容易に成形できることが特徴であり、樹脂成分にマイカ鱗片と共に二酸化チタンを所定の質量比率で添加することで、高い制振性能を有する制振材料が得られるだけでなく、従来考え得なかった制振フィルムを容易に製造する方法を開示するものである。
また、本発明の制振フィルムは、樹脂成分にマイカ鱗片と共に二酸化チタンを添加するものであり、カーボン粉末などを用いる必要がないことから、多彩な色調を求められる用途や箇所にも使用できて汎用性が高いものである。
【0028】
これらより、本発明の制振フィルムは、拘束形制振フィルム、非拘束形制振フィルム、ラベル、テープ、射出成形品、繊維、容器、発泡体、接着剤、塗料、などに成形または加工されて、車輌、鉄道、航空機、船舶、家電・OA機器、精密機器、建築機械、土木建築物、住宅設備、医療機器、靴、スポーツ用品などに適応される防振材、制振材、吸遮音材として広く使用することができる。また、カセットテープラベル、ハードディスク、ハンディカメラ、デジタルカメラなどの制振ラベルとしても応用することができる。また本無機繊維および/または有機繊維からなる補強繊維に未硬化の熱硬化性樹脂を含浸したシート状のプリプレグと積層することによって、積層体の制振性を向上させる用途で使用する制振フィルムとして、特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
ポリエステル樹脂(X)及び制振フィルムの評価は以下の方法によった。
(1)ポリエステル樹脂(X)における各構成単位のモル比:〔(A1+B1)/(A0+B0)〕、(A1/A0)、(B1/B0):
1H−NMRスペクトル(400MHz、日本電子工業(株)製、FT−NMR EX−90、測定モード:NON(1H))測定結果の積分値の比から算出した。
【0030】
(2)ポリエステル樹脂(X)の固有粘度([η]):
ポリエステル樹脂(X)の固有粘度([η])は、トリクロロエタン/フェノール=40/60(質量比)混合溶媒にポリエステル樹脂を溶解させ25℃に保持して、キャノンフェンスケ型粘度計を使用して測定した。
【0031】
(3)ポリエステル樹脂(X)の降温時における結晶化発熱ピークの熱量(ΔHc):
ポリエステル樹脂(X)の降温時における結晶化発熱ピークの熱量(ΔHc)は、島津製作所製DSC/TA−50WS型示差走査熱量計を使用して測定した。試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス気流中(30ml/分)、昇温速度20℃/分で280℃まで昇温し、280℃で1分間保持した後、10℃/分の降温速度で降温した際に現れる発熱ピークの面積から、結晶化発熱ピークの熱量(ΔHc)を求めた。
【0032】
(4)破壊点伸び率:
JISK7127に準拠して、縦10mm、横150mm、厚さ1.0mmの大きさの短冊型試験片を23℃、50%RHにて80時間以上放置して状態調節した後、引張試験機((株)東洋精機製作所製、ストログラフV1−C)を用いて、引張速度50mm/分、チャック間距離50mmの条件で引張試験を5回行い、伸び率の平均値を算出して求めた。
【0033】
(5)フィルム成形厚み:
樹脂組成物を成形した縦20mm、横20mm、厚さ約1mmの試験片を熱プレスにて200℃で3分間予備加熱したあと、2MPaで1分間加圧し、さらに冷却プレスにて1MPaで3分間冷却した。当該プレス処理を4回行い、プレス後の試験片の厚みの平均値を測定し比較することで評価した。
【0034】
(6)離型性:
各材料を60ccニーダーにて200℃で15分間混練した後、真鋳製ヘラを使用して混練槽から排出させる際に混練材料がブレードあるいは混練槽に残るかどうかで離型性を評価した。ブレードや混練槽への材料の付着が少なく、工業的な製造方法として問題ないと判断できるレベルをA、それ以外をBと評価した。
【0035】
(7)制振フィルムの最大損失係数:
制振フィルムを熱プレスにより厚みが約1mmのシートを成形した。得られたシートを縦10mm、横150mmの大きさに切り出して試験片とし、厚さ1mmの基板(アルミニウム合金 5052材)上に熱プレスにより熱圧着にて接着させて非拘束形制振材を作製した。得られた非拘束形制振材を損失係数測定装置(株式会社小野測器製)を用いて、測定温度範囲が0〜80℃の条件で中央加振法により500Hzでの損失係数を測定した。上記の測定温度範囲において得られた損失係数の最大値(最大損失係数)を比較することで制振性を評価した。なお、最大損失係数が大きいほど制振性が高い。
【0036】
実施例1
充填塔式精留塔、攪拌翼、分縮器、全縮器、コールドトラップ、温度計、加熱装置及び窒素ガス導入管を備えた内容積30リットル(L)のポリエステル製造装置に、イソフタル酸(エイ・ジイ・インターナショナル・ケミカル株式会社製)10834g(65.3モル)、アゼライン酸(コグニス社製、商品名:EMEROX1144、本商品はアゼライン酸を93.3モル%含み、ジカルボン酸の合計量は99.97モル%である。)5854g(32.3モル)、2−メチル−1,3−プロパンジオール(大連化学工業株式会社製)11683g(129.6モル)を加え、常圧、窒素雰囲気下で230℃迄昇温して3.5時間エステル化反応を行った。溜去される縮合水の量をモニターしながらイソフタル酸及びアゼライン酸の反応転化率が85モル%以上となった後、チタン(IV)テトラブトキシド・モノマー(和光純薬株式会社製)14.9g(総仕込み原料質量から縮合水質量を除いた初期縮合反応生成物の全質量に対するチタンの濃度が67.4ppm)を加え、昇温と減圧を徐々に行い、2−メチル−1,3−プロパンジオールを系外に抜き出しつつ、最終的に240〜250℃、0.4kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応混合物の粘度と攪拌トルク値が上昇し、適度な粘度に到達した時点あるいは2−メチル−1,3−プロパンジオールの留出が停止した時点で反応を終了した。
【0037】
得られたポリエステル樹脂の性状は、以下の通りである。
・[η]:0.72(dL/g)
・ΔHc:0(J/g)
1H−NMR〔400MHz,CDCl3,内部標準TMS):δ(ppm)=7.5〜8.9(Ph−,4H);3.5〜4.6(−C2−CH(CH3)−C2−,6H);1.0〜2.6(−CH2(CH3)CH2−,−CH2CH(C3)CH2−,−CO(C27CO−,13H〕
・(A1+B1)/(A0+B0):1.0、(A1/A0):1.0、(B1/B0):1.0
このポリエステル樹脂45質量%、二酸化チタン粉末(石原産業株式会社製、商品名:タイペークCR−80)5質量%及びマイカ鱗片(山口雲母株式会社製、商品名:SYA−21R、平均粒子径:27μm)50質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第1表に示す。なお、混練後の樹脂組成物中におけるマイカ鱗片の平均粒子径は22μmであった。
【0038】
参考例2
実施例1で得られたポリエステル樹脂40質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)10質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)50質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第1表に示す。
【0039】
参考例3
実施例1で得られたポリエステル樹脂40質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)5質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)55質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第1表に示す。
【0040】
実施例4
実施例1で得られたポリエステル樹脂50質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)5質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)45質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第1表に示す。
【0041】
比較例1
実施例1で得られたポリエステル樹脂36質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)4質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)60質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第2表に示す。
【0042】
比較例2
実施例1で得られたポリエステル樹脂40質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)60質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第2表に示す。
【0043】
比較例3
実施例1で得られたポリエステル樹脂62.5質量%及びマイカ鱗片(SYA−21R、平均粒子径:27μm)37.5質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第2表に示す。
【0044】
比較例4
実施例1で得られたポリエステル樹脂45質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)5質量%及びマイカ鱗片(山口雲母株式会社製、商品名:CS−060DC、平均粒子径:200μm)50質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第2表に示す。
【0045】
比較例5
実施例1で得られたポリエステル樹脂20質量%、二酸化チタン粉末(タイペークCR−80)20質量%及びマイカ鱗片(山口雲母株式会社製、商品名:CS−060DC、平均粒子径:200μm)60質量%とした混合物を、二軸混練機を用いて200℃で混練し、Tダイによりフィルム形状に押し出した。得られた制振フィルムの物性を第2表に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
第1表〜第2表から、本発明の制振フィルムは最大損失係数が高く、制振性に優れており、また、破壊点伸び率が30〜70%の範囲にある場合に厚さ200μm以下のフィルムを成形可能であることが分かる。
比較例の制振フィルムでは、最大損失係数が0.15以上であるが(比較例1〜5)、成形性や離型性が不良でフィルム化できるものはない。従って、本発明の制振フィルムは、厚さ200μm以下のフィルムが容易に成形可能で、且つ優れた制振性を発揮する特性を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の制振フィルムは、厚さ20〜200μmに容易に成形でき、軽量であり、優れた制振性を発揮する。また本発明の制振フィルムは、二酸化チタン及びマイカ鱗片を含有してなるものであり、カーボン粉末などを用いる必要がないことから、多彩な色調を求められる用途や箇所にも使用できて汎用性が高い。従って本発明の制振フィルムは、車輌、鉄道、航空機、船舶、家電・OA機器、精密機器、建築機械、土木建築物、住宅設備、医療機器、靴、スポーツ用品などの振動の発生する箇所に広く用いることができる。また、カセットテープラベル、ハードディスク、ハンディカメラ、デジタルカメラなどの制振ラベルとしても応用することができる。