特許第5733255号(P5733255)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733255
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】加工機用の回転支持治具
(51)【国際特許分類】
   B23F 19/10 20060101AFI20150521BHJP
   B23F 5/22 20060101ALI20150521BHJP
   B23F 23/04 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B23F19/10
   B23F5/22
   B23F23/04
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-75886(P2012-75886)
(22)【出願日】2012年3月29日
(65)【公開番号】特開2013-202746(P2013-202746A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2013年12月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲智
(72)【発明者】
【氏名】大谷 昌弘
【審査官】 足立 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−262354(JP,A)
【文献】 米国特許第02206443(US,A)
【文献】 米国特許第03130642(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第04134441(DE,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101543916(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23F 19/10
B23F 5/22
B23F 23/04
B23B 9/00,5/16
B23Q 7/02−7/04,3/155,3/157,3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転装置の一方の回転支軸に、中心軸線を一致させて装着される一方治具部と、
上記回転装置において上記一方の回転支軸と同一軸線上に配置された他方の回転支軸に、中心軸線を一致させて装着される他方治具部と、
上記一方治具部に対して、該一方治具部の中心軸線を回転中心として回転自在に取り付けられ、上記一方治具部と上記他方治具部との間に挟持する円筒状ワークの端面にバリ取り加工を行うバリ取り工具と、を備えることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【請求項2】
請求項1に記載の加工機用の回転支持治具において、上記他方治具部は、上記一方治具部と組み合わせて運搬可能であることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の加工機用の回転支持治具において、上記バリ取り工具は、上記一方治具部の中心軸線を回転中心として回転自在なリング部と、該リング部から周方向一方に突出して設けられた支持アーム部と、該支持アーム部において上記一方治具部の中心軸線と平行な中心軸線を回転中心として回転自在に支持された回転工具部とを有していることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【請求項4】
請求項に記載の加工機用の回転支持治具において、上記バリ取り工具は、上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸の回転を受けて、上記一方治具部及び上記他方治具部が回転するときに、上記支持アーム部が、上記回転装置の周辺に配設された回り止め部材によって掛止されて、上記リング部の回転が阻止されるよう構成されていることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【請求項5】
請求項3に記載の加工機用の回転支持治具において、上記支持アーム部には、上記回転装置の周辺に配設された回り止め部材と係合するストッパ溝が設けられており、
上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸の回転を受けて、上記一方治具部及び上記他方治具部が回転するときに、上記回り止め部材と上記ストッパ溝との係合によって、上記一方治具部の中心軸線に対する、上記リング部、上記支持アーム部及び上記回転工具部の回転が阻止されるよう構成されていることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の加工機用の回転支持治具において、上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸は、上記円筒状ワークの外周に歯面を切削加工するホブ盤において、上記円筒状ワークを回転させる回転装置を構成しており、
上記バリ取り工具は、上記円筒状ワークの外周に歯面を切削加工する際にその軸方向に形成されるバリを除去するものであることを特徴とする加工機用の回転支持治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに組み合わせて運搬される一対の治具部にバリ取り工具を一体化させた加工機用の回転支持治具に関する。
【背景技術】
【0002】
円筒状ワークの外周に歯面を切削加工するホブ盤等においては、回転装置に円筒状ワークを支持するとともに、加工装置にホブ刃具を支持し、回転装置によって回転させる円筒状ワークの外周に、加工装置によって回転させるホブ刃具によって歯面を切削加工している。回転装置においては、円筒状ワークの両端部を支持するために、一対の治具部による回転支持治具を用いている。この回転支持治具は、円筒状ワークの形状に対応して、円筒状ワークに当接する一対の治具部の形状が異なる。
【0003】
また、ホブ刃具によって歯面を切削加工する際には、円筒状ワークの端面から、加工の際に形成されるバリが突出する。そのため、回転装置の周辺には、円筒状ワークに形成されるバリを除去するためのバリ取り工具(バリ取りバイト)を設置し、このバリ取り工具によって、円筒状ワークの端面に形成されるバリを切削除去している。
例えば、特許文献1のワーク切削用治具においては、第1治具の軸部を、ワークの第1穴部及び第2治具の第2穴部に挿通し、ナットを軸部に締め付けて、ワーク切削用治具にワークをアッセンブリ化することが開示されている。このワーク切削用治具は、歯車の歯を切削により形成するホブ盤、ホブ盤により形成された歯のバリを取るバリ取り装置等に適用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−262354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、回転装置の周辺においてバリ取り工具を設置する際には、円筒状ワークの位置に合わせて、作業者が現場でバリ取り工具の設置位置を調整している。そのため、バリ取り工具の設置位置の調整に時間がかかり、歯面を形成するサイクルタイムを短縮するには限界がある。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたもので、バリ取り工具の切刃の位置調整を不要にし、円筒状ワークの外周に歯面等の加工を行うサイクルタイムを短縮することができる加工機用の回転支持治具を提供しようとして得られたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回転装置の一方の回転支軸に、中心軸線を一致させて装着される一方治具部と、
上記回転装置において上記一方の回転支軸と同一軸線上に配置された他方の回転支軸に、中心軸線を一致させて装着される他方治具部と、
上記一方治具部に対して、該一方治具部の中心軸線を回転中心として回転自在に取り付けられ、上記一方治具部と上記他方治具部との間に挟持する円筒状ワークの端面にバリ取り加工を行うバリ取り工具と、を備えることを特徴とする加工機用の回転支持治具にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記加工機用の回転支持治具は、一方治具部にバリ取り工具を取り付けることにより、バリ取り工具の設置位置の調整を不要にしたものである。
回転支持治具の一方治具部にはバリ取り工具が取り付けられている。これにより、回転支持治具の一方治具部を、一方の回転支軸と他方の回転支軸とを有する回転装置へ搬送する際には、バリ取り工具も同時に搬送することができる。そのため、一対の回転支軸に支持して加工する円筒状ワークの大きさ・形状に対応するバリ取り工具を、予め回転支持治具の一方治具部に取り付けておくことができる。
【0009】
回転装置の一方の回転支軸に装着した一方治具部と、回転装置の他方の回転支軸に装着した他方治具部との間に円筒状ワークを挟持し、この円筒状ワークの外周に対して歯面等の加工を行う際には、回転装置の周辺に配設された部材等によってバリ取り工具の回り止めを行う。そして、回転装置を回転させるときには、一方治具部に対するバリ取り工具の周方向位置が固定され、バリ取り工具に対して円筒状ワークが回転する。これにより、円筒状ワークの外周に対して歯面等の加工を行う際に、バリ取り工具によって、円筒状ワークの端面に形成されるバリ(切削を行った端部に形成される突起)を切削除去することができる。
【0010】
また、一方治具部に予めバリ取り工具が取り付けられていることにより、この一方治具部と他方治具部との間に挟持する円筒状ワークの端面の位置に合わせて、バリ取り工具の切刃の位置を設定しておくことができる。これにより、バリ取り工具の切刃の位置調整を不要にすることができる。そして、これに伴って、円筒状ワークの外周に歯面等の加工を行うサイクルタイムを短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例にかかる、一方治具部と他方治具部とが組み合わさった状態の回転支持治具を示す斜視図。
図2】実施例にかかる、一方治具部と他方治具部とが離れた状態の回転支持治具を示す斜視図。
図3】実施例にかかる、一方治具部と他方治具部との間に円筒状ワークを挟持する回転支持治具を示す断面図。
図4】実施例にかかる、回転装置に装着された回転支持治具によって円筒状ワークを支持し、この円筒状ワークの外周に加工装置によって歯面を形成した後のホブ盤を示す斜視図。
図5】実施例にかかる、回転装置、加工装置及び旋回ローダを配設してなるホブ盤を示す斜視図。
図6】実施例にかかる、グリッパに把持したワークを示す斜視図。
図7】実施例にかかる、グリッパに把持した他のワークを示す斜視図。
図8】実施例にかかる、刃具を保持するパレットをグリッパに把持した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した加工機用の回転支持治具における好ましい実施の形態につき説明する。
上記加工機用の回転支持治具において、上記他方治具部は、上記一方治具部と組み合わせて運搬可能であってもよい(請求項2)。
この場合には、バリ取り工具が取り付けられた一方治具部と他方治具部とを組み合わせて、回転装置へ搬送することができる。そのため、回転支持治具の段替え(交換)を容易にすることができる。
【0013】
また、上記バリ取り工具は、上記一方治具部の中心軸線を回転中心として回転自在なリング部と、該リング部から周方向一方に突出して設けられた支持アーム部と、該支持アーム部において上記一方治具部の中心軸線と平行な中心軸線を回転中心として回転自在に支持された回転工具部とを有していてもよい(請求項3)。
【0014】
この場合には、回転支持治具を回転装置に支持したときには、回転装置の周辺に配設された部材等によって支持アーム部の回り止めを行う。
また、一方治具部と他方治具部との間に円筒状ワークを支持し、この円筒状ワークを回転装置によって回転させるときには、円筒状ワークの回転を受けて回転工具部も回転させることができる。そして、円筒状ワークの外周に対して歯面等の加工を行う際に、回転する回転工具部によって、円筒状ワークの端面に形成されるバリを切削除去することができる。これにより、回転工具部の全周に形成された切刃によって、バリの切削除去をより効果的に行うことができる。
【0015】
また、上記バリ取り工具は、上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸の回転を受けて、上記一方治具部及び上記他方治具部が回転するときに、上記支持アーム部が、上記回転装置の周辺に配設された回り止め部材によって掛止されて、上記リング部の回転が阻止されるよう構成されていてもよい(請求項4)。
この場合には、回り止め部材によってバリ取り工具のリング部の回り止めを容易に行うことができる。
【0016】
また、上記支持アーム部には、上記回転装置の周辺に配設された回り止め部材と係合するストッパ溝が設けられており、上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸の回転を受けて、上記一方治具部及び上記他方治具部が回転するときに、上記回り止め部材と上記ストッパ溝との係合によって、上記一方治具部の中心軸線に対する、上記リング部、上記支持アーム部及び上記回転工具部の回転が阻止されるよう構成されていてもよい(請求項5)。
この場合には、回り止め部材によってリング部、支持アーム部及び回転工具部の回り止めを容易に行うことができる。
【0017】
上記一方の回転支軸及び上記他方の回転支軸は、上記円筒状ワークの外周に歯面を切削加工するホブ盤において、上記円筒状ワークを回転させる回転装置を構成しており、上記バリ取り工具は、上記円筒状ワークの外周に歯面を切削加工する際にその軸方向に形成されるバリを除去するものであってもよい(請求項6)。
この場合には、バリ取り工具を取り付けた回転支持治具をホブ盤に適用し、ホブ盤において、歯面の切削加工を行うサイクルタイムを短縮することができる。
【実施例】
【0018】
以下に、加工機用の回転支持治具にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の加工機用の回転支持治具6は、図1図4に示すごとく、一方治具部61、他方治具部62及びバリ取り工具63を備えている。
一方治具部61は、回転装置2の一方の回転支軸21に、中心軸線601を一致させて装着されるよう構成されている。他方治具部62は、一方治具部61と組み合わせて運搬可能であり、回転装置2において一方の回転支軸21と同一軸線上に配置された他方の回転支軸22に、中心軸線601を一致させて装着されるよう構成されている。図3図4に示すごとく、バリ取り工具63は、一方治具部61に対して、この一方治具部61の中心軸線601を回転中心として回転自在に取り付けられ、一方治具部61と他方治具部62との間に挟持する円筒状ワーク8の端面80にバリ取り加工を行うよう構成されている。
【0019】
以下に、本例の加工機用の回転支持治具6につき、図1図8を参照して詳説する。
図5に示すごとく、本例の加工機は、ホブ盤1であり、回転支持治具6は、ホブ盤1で加工を行う円筒状ワーク8を回転装置2に支持するために用いる。ホブ盤1は、円筒状ワーク8を保持して回転する回転装置2と、刃具7を装着して円筒状ワーク8に加工を行う加工装置3とを備えている。ホブ盤1には、複数のグリッパ5が旋回中心軸線401から同一半径距離に配設され、各グリッパ5を回転装置2に順次対向させるよう旋回する旋回ローダ4が配設されている。
各グリッパ5は、円筒状ワーク8、回転支持治具6及び刃具7のいずれも直接又は間接的に把持可能に構成されているとともに、回転装置2との間での回転支持治具6及び円筒状ワーク8の受渡し、及び加工装置3との間での刃具7の受渡しを行うよう構成されている。
【0020】
本例のホブ盤1は、旋回ローダ4によって、ホブ盤1に対して円筒状ワーク8の搬送と回転支持治具6及び刃具7の段替え(交換)とを可能にしたものである。本例の加工装置3及び回転装置2においては、断面円形状の円筒状ワーク8に対して歯切りを行い、製品としてのはすば歯車を製造する。
図6図7に示すごとく、本例の円筒状ワーク8は、歯車用であって中心穴83を有する円盤形状を有しており、グリッパ5は、円盤形状の外周を挟持するよう構成されている。グリッパ5は、一対の挟持部51の間隔を可変させることにより、外径が異なる複数種類の円筒状ワーク8を把持できるよう構成されている。図6は、外径の大きな歯車を形成するためのワーク8Aを示し、図7は、外径の小さな歯車を形成するためのワーク8Bを示す。
【0021】
図5に示すごとく、加工装置3は、刃具7を装着する刃具装着部(ホブ軸)31の回転中心軸線301を、水平方向に傾斜して向けられるよう構成されている。回転装置2は、上下方向に向く回転中心軸線201を回転中心として回転するよう構成されている。加工装置3は、回転装置2によって回転する円筒状ワーク8の外周を、回転する刃具7によって切削して、はすば状の歯面81を加工する。
加工装置3は、刃具装着部31を、回転可能であるとともに前後及び上下に移動させるよう構成されている。加工装置3は、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向の延長上に配設されている。
【0022】
図3図4に示すごとく、回転装置2は、回転駆動源によって、回転テーブルに設けられた一方の回転支軸21を回転させるよう構成されており、他方の回転支軸22は、一方の回転支軸21の回転を受けて回転するようになっている。本例の回転装置2は、回転中心軸線201を鉛直方向に向けて配設されており、一方の回転支軸21は鉛直方向下側に配設され、他方の回転支軸22は鉛直方向上側に配設される。他方の回転支軸22は、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に取り付けられている。
図5に示すごとく、加工前の円筒状ワーク8は、旋回ローダ4によって、一方の回転支軸21に装着された一方治具部61と、他方の回転支軸22に装着された他方治具部62との間に搬入される。加工後の円筒状ワーク8は、旋回ローダ4によって、一方の回転支軸21に装着された一方治具部61と、他方の回転支軸22に装着された他方治具部62との間から搬出される。
【0023】
同図に示すごとく、本例の旋回ローダ4は、旋回中心支柱41の旋回中心軸線401を回転中心として複数のグリッパ5を旋回可能に配設して構成されている。旋回中心支柱41の旋回中心軸線401は上下方向に向けられており、各グリッパ5は、旋回中心支柱41の旋回中心軸線401を回転中心として水平方向に旋回するよう構成されている。
本例のグリッパ5は、旋回中心支柱41の外周において互いに90°ずれた位置の4箇所に配設されている。各グリッパ5は、旋回中心支柱41に対して、個別に上下移動可能である。なお、グリッパ5は、旋回中心支柱41の回りの2箇所もしくは3箇所、あるいは5箇所以上に等間隔に配設することもできる。
【0024】
本例の旋回ローダ4は、円筒状ワーク8、回転支持治具6、及び刃具7を保持するパレット70のいずれもの搬入・搬出を行うよう構成されている。各グリッパ5は、回転装置2に対向する内部受渡位置501と、旋回中心支柱41に対して回転装置2が位置する方向とは反対方向に位置する外部受渡位置502とに逐次回転するよう構成されている。
本例の各グリッパ5は、回転装置2との間での加工前の円筒状ワーク8の供給及び加工後の円筒状ワーク8の取出、回転装置2との間での回転支持治具6の供給及び取出、及び加工装置3との間での刃具7の供給及び取出を行うよう構成されている。
図示は省略するが、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向とは反対側の方向には、円筒状ワーク8、回転支持治具6及びパレット70のいずれをも搬送可能である搬送装置が配設される。
【0025】
図1に示すごとく、回転支持治具6は、一方治具部61の上に他方治具部62が組み合わさった状態で、旋回ローダ4によって回転装置2まで搬送(運搬)される。また、回転支持治具6、円筒状ワーク8及び刃具7は、外部受渡位置502にあるグリッパ5によって外部搬送台又はロボットから把持され、旋回ローダ4が旋回してこのグリッパ5を内部受渡位置501へ移動させることによって、回転装置2に対向する位置まで搬送される。
【0026】
回転支持治具6は、次のようにして回転装置2に装着される。
図5に示すごとく、まず、外部受渡位置502にあるグリッパ5が外部搬送台又はロボットから、一方治具部61の上に他方治具部62が載置された回転支持治具6を把持する。次いで、旋回ローダ4が旋回し、外部受渡位置502にあるグリッパ5を内部受渡位置501まで移動させる。次いで、内部受渡位置501に移動したグリッパ5を下降させ、一方治具部61を一方の回転支軸21に装着する。次いで、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に設けられた他方の回転支軸22を下降させ、この他方の回転支軸22に他方治具部62を装着する。その後、他方の回転支軸22を上昇させておき、一方治具部61と他方治具部62との間に円筒状ワーク8を受入可能な状態を形成する。
【0027】
図1図3に示すごとく、本例のバリ取り工具63は、一方治具部61の中心軸線601を回転中心として回転自在なリング部631と、リング部631から周方向一方に突出して設けられた支持アーム部632と、支持アーム部632において一方治具部61の中心軸線601と平行な中心軸線を回転中心として回転自在に支持された回転工具部633とを有している。支持アーム部632には、ホブ盤1の架台に配設(立設)された回り止め部材65と係合するストッパ溝64が設けられている。
そして、バリ取り工具63は、一方治具部61が一方の回転支軸21に装着されたときに、支持アーム部632のストッパ溝64が回り止め部材65と係合することにより、一方の回転支軸21及び一方治具部61が回転する際に、一方治具部61の中心軸線601の回りに回転しないようにすることができる。
【0028】
図8に示すごとく、本例の刃具7は、旋回ローダ4の各グリッパ5によって把持されるパレット70に保持される。パレット70は、グリッパ5に把持される土台部71と、土台部71の中心からオフセットした位置に形成され、刃具7を保持する刃具保持部72とを有している。土台部71は、各グリッパ5によって把持しやすいように、円盤形状に形成されている。刃具保持部72は、一対の受け部721によって、軸方向を水平方向に向けた刃具7の両端部分の軸部を受けるよう構成されている。
図5に示すごとく、加工装置3は、刃具装着部31を前進及び上下させて、この刃具装着部31に、グリッパ5に把持されたパレット70の刃具保持部72における刃具7を装着するよう構成されている。
【0029】
図1に示すごとく、回転支持治具6は、他方治具部62の中心位置において下方へ突出する中心軸部621を、一方治具部61の中心位置に形成された中心穴611内に挿入して、一方治具部61と他方治具部62との中心位置決めを行った状態で組み合わさるよう構成されている。円筒状ワーク8の中心には、中心穴83が形成されており、一方治具部61と他方治具部62とによって円筒状ワーク8を挟持するときには、中心穴83内に挿通された中心軸部621が中心穴611に挿入される。一方治具部61と他方治具部62とは、円筒状ワーク8を挟持する場合と、円筒状ワーク8を挟持しない場合とのいずれにおいても、中心軸部621と中心穴611との中心位置決めを行って組み合わせるよう構成されている。
【0030】
図3に示すごとく、一方治具部61においては、中心穴611に対する下方位置には、上下に摺動可能な可動軸部612が、バネ614による付勢力によって上方に付勢された状態で、一方本体部610内に配設されている。円筒状ワーク8を挟持せずに一方治具部61と他方治具部62とが直接組み合わさるときには、他方治具部62の中心軸部621によって、可動軸部612がバネ614による付勢力に抗して下方に押し込められた状態で、中心軸部621が、中心穴611と可動軸部612の中心凹部613とに挿入される。また、円筒状ワーク8を挟持して一方治具部61と他方治具部62とが組み合わさるときには、可動軸部612がバネ614による付勢力によって上方に位置する状態で、中心軸部621が、中心穴611と可動軸部612の中心凹部613とに挿入される。また、円筒状ワーク8を挟持する場合と挟持しない場合のいずれにおいても、中心軸部621の下端に形成された鍔部622が可動軸部612の中心凹部613に係合される。
【0031】
同図に示すごとく、他方治具部62においては、バネ624による付勢力を受けて一方治具部61の一方本体部610の中心部分に押さえられる中心位置出しテーパ部623が形成されている。また、他方治具部62には、バネ626による付勢力を受けて、円筒状ワーク8を一方治具部61に対して押さえ込むための押込み部材625が配設されている。
【0032】
一方治具部61の上端面の全周には、円筒状ワーク8の端面80における外周側部分が当接する円環状受面615が形成されている。この円環状受面615の高さ位置は、バリ取り工具63の回転工具部633の切刃634の高さ位置と同じになっている。そして、円環状受面615に円筒状ワーク8の下側の端面80を受けるときには、この円筒状ワーク8の下側の端面80に回転工具部633の切刃634が合わさるようになっている。他方治具部62の下端面の全周には、円筒状ワーク8を挟持しないで一方治具部61と他方治具部62とが合わさるときに、一方治具部61の円環状受面615に当接する円環状押さえ部627が形成されている。
【0033】
本例の加工機用の回転支持治具6は、一方治具部61にバリ取り工具63を取り付けることにより、バリ取り工具63における回転工具部633の切刃634の高さ位置の調整を不要にしたものである。
回転支持治具6は、一方治具部61と他方治具部62とを組み合わせて運搬が可能であり、一方治具部61にはバリ取り工具63が取り付けられている。これにより、回転支持治具6を、一方の回転支軸21と他方の回転支軸22とを有する回転装置2へ搬送する際には、バリ取り工具63も同時に搬送することができる。そのため、一対の回転支軸に支持して加工する円筒状ワーク8の大きさ・形状に対応するバリ取り工具63を、予め回転支持治具6の一方治具部61に取り付けておくことができる。
【0034】
回転装置2の一方の回転支軸21に装着した一方治具部61と、回転装置2の他方の回転支軸22に装着した他方治具部62との間に円筒状ワーク8を挟持し、この円筒状ワーク8の外周に対して加工装置3の刃具7によって歯面81の加工を行う際には、回転装置2の周辺に配設された回り止め部材65によってバリ取り工具63の回り止めを行う。そして、回転装置2を回転させるときには、一方治具部61に対するバリ取り工具63の周方向位置が固定され、バリ取り工具63に対して円筒状ワーク8が回転する。これにより、円筒状ワーク8の外周に対して歯面81の加工を行う際に、バリ取り工具63によって、円筒状ワーク8の端面80に形成されるバリ82(切削を行った各歯面81の端部に形成される突起)を切削除去することができる。
【0035】
また、本例においては、一方治具部61と他方治具部62との間に円筒状ワーク8を支持し、この円筒状ワーク8を回転装置2によって回転させるときには、円筒状ワーク8の回転を受けて回転工具部633も回転させることができる。そして、円筒状ワーク8の外周に対して歯面81の加工を行う際に、回転する回転工具部633によって、円筒状ワーク8の端面80に形成されるバリ82を切削除去することができる。これにより、回転工具部633の上端面の全周に形成された切刃634によって、バリ82の切削除去をより効果的に行うことができる。
【0036】
また、一方治具部61に予めバリ取り工具63が取り付けられていることにより、この一方治具部61と他方治具部62との間に挟持する円筒状ワーク8の端面80の位置に合わせて、バリ取り工具63の切刃634の高さ位置を設定しておくことができる。これにより、バリ取り工具63の切刃634の高さ位置の調整を不要にすることができる。そして、これに伴って、円筒状ワーク8の外周に歯面81等の加工を行うサイクルタイムを短縮することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ホブ盤
2 回転装置
21 一方の回転支軸
22 他方の回転支軸
3 加工装置
4 旋回ローダ
5 グリッパ
6 回転支持治具
61 一方治具部
62 他方治具部
63 バリ取り工具
7 刃具
8 円筒状ワーク
80 端面
図1
図2
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図8