【実施例】
【0018】
以下に、加工機用の回転支持治具にかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の加工機用の回転支持治具6は、
図1〜
図4に示すごとく、一方治具部61、他方治具部62及びバリ取り工具63を備えている。
一方治具部61は、回転装置2の一方の回転支軸21に、中心軸線601を一致させて装着されるよう構成されている。他方治具部62は、一方治具部61と組み合わせて運搬可能であり、回転装置2において一方の回転支軸21と同一軸線上に配置された他方の回転支軸22に、中心軸線601を一致させて装着されるよう構成されている。
図3、
図4に示すごとく、バリ取り工具63は、一方治具部61に対して、この一方治具部61の中心軸線601を回転中心として回転自在に取り付けられ、一方治具部61と他方治具部62との間に挟持する円筒状ワーク8の端面80にバリ取り加工を行うよう構成されている。
【0019】
以下に、本例の加工機用の回転支持治具6につき、
図1〜
図8を参照して詳説する。
図5に示すごとく、本例の加工機は、ホブ盤1であり、回転支持治具6は、ホブ盤1で加工を行う円筒状ワーク8を回転装置2に支持するために用いる。ホブ盤1は、円筒状ワーク8を保持して回転する回転装置2と、刃具7を装着して円筒状ワーク8に加工を行う加工装置3とを備えている。ホブ盤1には、複数のグリッパ5が旋回中心軸線401から同一半径距離に配設され、各グリッパ5を回転装置2に順次対向させるよう旋回する旋回ローダ4が配設されている。
各グリッパ5は、円筒状ワーク8、回転支持治具6及び刃具7のいずれも直接又は間接的に把持可能に構成されているとともに、回転装置2との間での回転支持治具6及び円筒状ワーク8の受渡し、及び加工装置3との間での刃具7の受渡しを行うよう構成されている。
【0020】
本例のホブ盤1は、旋回ローダ4によって、ホブ盤1に対して円筒状ワーク8の搬送と回転支持治具6及び刃具7の段替え(交換)とを可能にしたものである。本例の加工装置3及び回転装置2においては、断面円形状の円筒状ワーク8に対して歯切りを行い、製品としてのはすば歯車を製造する。
図6、
図7に示すごとく、本例の円筒状ワーク8は、歯車用であって中心穴83を有する円盤形状を有しており、グリッパ5は、円盤形状の外周を挟持するよう構成されている。グリッパ5は、一対の挟持部51の間隔を可変させることにより、外径が異なる複数種類の円筒状ワーク8を把持できるよう構成されている。
図6は、外径の大きな歯車を形成するためのワーク8Aを示し、
図7は、外径の小さな歯車を形成するためのワーク8Bを示す。
【0021】
図5に示すごとく、加工装置3は、刃具7を装着する刃具装着部(ホブ軸)31の回転中心軸線301を、水平方向に傾斜して向けられるよう構成されている。回転装置2は、上下方向に向く回転中心軸線201を回転中心として回転するよう構成されている。加工装置3は、回転装置2によって回転する円筒状ワーク8の外周を、回転する刃具7によって切削して、はすば状の歯面81を加工する。
加工装置3は、刃具装着部31を、回転可能であるとともに前後及び上下に移動させるよう構成されている。加工装置3は、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向の延長上に配設されている。
【0022】
図3、
図4に示すごとく、回転装置2は、回転駆動源によって、回転テーブルに設けられた一方の回転支軸21を回転させるよう構成されており、他方の回転支軸22は、一方の回転支軸21の回転を受けて回転するようになっている。本例の回転装置2は、回転中心軸線201を鉛直方向に向けて配設されており、一方の回転支軸21は鉛直方向下側に配設され、他方の回転支軸22は鉛直方向上側に配設される。他方の回転支軸22は、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に取り付けられている。
図5に示すごとく、加工前の円筒状ワーク8は、旋回ローダ4によって、一方の回転支軸21に装着された一方治具部61と、他方の回転支軸22に装着された他方治具部62との間に搬入される。加工後の円筒状ワーク8は、旋回ローダ4によって、一方の回転支軸21に装着された一方治具部61と、他方の回転支軸22に装着された他方治具部62との間から搬出される。
【0023】
同図に示すごとく、本例の旋回ローダ4は、旋回中心支柱41の旋回中心軸線401を回転中心として複数のグリッパ5を旋回可能に配設して構成されている。旋回中心支柱41の旋回中心軸線401は上下方向に向けられており、各グリッパ5は、旋回中心支柱41の旋回中心軸線401を回転中心として水平方向に旋回するよう構成されている。
本例のグリッパ5は、旋回中心支柱41の外周において互いに90°ずれた位置の4箇所に配設されている。各グリッパ5は、旋回中心支柱41に対して、個別に上下移動可能である。なお、グリッパ5は、旋回中心支柱41の回りの2箇所もしくは3箇所、あるいは5箇所以上に等間隔に配設することもできる。
【0024】
本例の旋回ローダ4は、円筒状ワーク8、回転支持治具6、及び刃具7を保持するパレット70のいずれもの搬入・搬出を行うよう構成されている。各グリッパ5は、回転装置2に対向する内部受渡位置501と、旋回中心支柱41に対して回転装置2が位置する方向とは反対方向に位置する外部受渡位置502とに逐次回転するよう構成されている。
本例の各グリッパ5は、回転装置2との間での加工前の円筒状ワーク8の供給及び加工後の円筒状ワーク8の取出、回転装置2との間での回転支持治具6の供給及び取出、及び加工装置3との間での刃具7の供給及び取出を行うよう構成されている。
図示は省略するが、旋回ローダ4に対して回転装置2が配設された方向とは反対側の方向には、円筒状ワーク8、回転支持治具6及びパレット70のいずれをも搬送可能である搬送装置が配設される。
【0025】
図1に示すごとく、回転支持治具6は、一方治具部61の上に他方治具部62が組み合わさった状態で、旋回ローダ4によって回転装置2まで搬送(運搬)される。また、回転支持治具6、円筒状ワーク8及び刃具7は、外部受渡位置502にあるグリッパ5によって外部搬送台又はロボットから把持され、旋回ローダ4が旋回してこのグリッパ5を内部受渡位置501へ移動させることによって、回転装置2に対向する位置まで搬送される。
【0026】
回転支持治具6は、次のようにして回転装置2に装着される。
図5に示すごとく、まず、外部受渡位置502にあるグリッパ5が外部搬送台又はロボットから、一方治具部61の上に他方治具部62が載置された回転支持治具6を把持する。次いで、旋回ローダ4が旋回し、外部受渡位置502にあるグリッパ5を内部受渡位置501まで移動させる。次いで、内部受渡位置501に移動したグリッパ5を下降させ、一方治具部61を一方の回転支軸21に装着する。次いで、旋回ローダ4の旋回中心支柱41に設けられた他方の回転支軸22を下降させ、この他方の回転支軸22に他方治具部62を装着する。その後、他方の回転支軸22を上昇させておき、一方治具部61と他方治具部62との間に円筒状ワーク8を受入可能な状態を形成する。
【0027】
図1、
図3に示すごとく、本例のバリ取り工具63は、一方治具部61の中心軸線601を回転中心として回転自在なリング部631と、リング部631から周方向一方に突出して設けられた支持アーム部632と、支持アーム部632において一方治具部61の中心軸線601と平行な中心軸線を回転中心として回転自在に支持された回転工具部633とを有している。支持アーム部632には、ホブ盤1の架台に配設(立設)された回り止め部材65と係合するストッパ溝64が設けられている。
そして、バリ取り工具63は、一方治具部61が一方の回転支軸21に装着されたときに、支持アーム部632のストッパ溝64が回り止め部材65と係合することにより、一方の回転支軸21及び一方治具部61が回転する際に、一方治具部61の中心軸線601の回りに回転しないようにすることができる。
【0028】
図8に示すごとく、本例の刃具7は、旋回ローダ4の各グリッパ5によって把持されるパレット70に保持される。パレット70は、グリッパ5に把持される土台部71と、土台部71の中心からオフセットした位置に形成され、刃具7を保持する刃具保持部72とを有している。土台部71は、各グリッパ5によって把持しやすいように、円盤形状に形成されている。刃具保持部72は、一対の受け部721によって、軸方向を水平方向に向けた刃具7の両端部分の軸部を受けるよう構成されている。
図5に示すごとく、加工装置3は、刃具装着部31を前進及び上下させて、この刃具装着部31に、グリッパ5に把持されたパレット70の刃具保持部72における刃具7を装着するよう構成されている。
【0029】
図1に示すごとく、回転支持治具6は、他方治具部62の中心位置において下方へ突出する中心軸部621を、一方治具部61の中心位置に形成された中心穴611内に挿入して、一方治具部61と他方治具部62との中心位置決めを行った状態で組み合わさるよう構成されている。円筒状ワーク8の中心には、中心穴83が形成されており、一方治具部61と他方治具部62とによって円筒状ワーク8を挟持するときには、中心穴83内に挿通された中心軸部621が中心穴611に挿入される。一方治具部61と他方治具部62とは、円筒状ワーク8を挟持する場合と、円筒状ワーク8を挟持しない場合とのいずれにおいても、中心軸部621と中心穴611との中心位置決めを行って組み合わせるよう構成されている。
【0030】
図3に示すごとく、一方治具部61においては、中心穴611に対する下方位置には、上下に摺動可能な可動軸部612が、バネ614による付勢力によって上方に付勢された状態で、一方本体部610内に配設されている。円筒状ワーク8を挟持せずに一方治具部61と他方治具部62とが直接組み合わさるときには、他方治具部62の中心軸部621によって、可動軸部612がバネ614による付勢力に抗して下方に押し込められた状態で、中心軸部621が、中心穴611と可動軸部612の中心凹部613とに挿入される。また、円筒状ワーク8を挟持して一方治具部61と他方治具部62とが組み合わさるときには、可動軸部612がバネ614による付勢力によって上方に位置する状態で、中心軸部621が、中心穴611と可動軸部612の中心凹部613とに挿入される。また、円筒状ワーク8を挟持する場合と挟持しない場合のいずれにおいても、中心軸部621の下端に形成された鍔部622が可動軸部612の中心凹部613に係合される。
【0031】
同図に示すごとく、他方治具部62においては、バネ624による付勢力を受けて一方治具部61の一方本体部610の中心部分に押さえられる中心位置出しテーパ部623が形成されている。また、他方治具部62には、バネ626による付勢力を受けて、円筒状ワーク8を一方治具部61に対して押さえ込むための押込み部材625が配設されている。
【0032】
一方治具部61の上端面の全周には、円筒状ワーク8の端面80における外周側部分が当接する円環状受面615が形成されている。この円環状受面615の高さ位置は、バリ取り工具63の回転工具部633の切刃634の高さ位置と同じになっている。そして、円環状受面615に円筒状ワーク8の下側の端面80を受けるときには、この円筒状ワーク8の下側の端面80に回転工具部633の切刃634が合わさるようになっている。他方治具部62の下端面の全周には、円筒状ワーク8を挟持しないで一方治具部61と他方治具部62とが合わさるときに、一方治具部61の円環状受面615に当接する円環状押さえ部627が形成されている。
【0033】
本例の加工機用の回転支持治具6は、一方治具部61にバリ取り工具63を取り付けることにより、バリ取り工具63における回転工具部633の切刃634の高さ位置の調整を不要にしたものである。
回転支持治具6は、一方治具部61と他方治具部62とを組み合わせて運搬が可能であり、一方治具部61にはバリ取り工具63が取り付けられている。これにより、回転支持治具6を、一方の回転支軸21と他方の回転支軸22とを有する回転装置2へ搬送する際には、バリ取り工具63も同時に搬送することができる。そのため、一対の回転支軸に支持して加工する円筒状ワーク8の大きさ・形状に対応するバリ取り工具63を、予め回転支持治具6の一方治具部61に取り付けておくことができる。
【0034】
回転装置2の一方の回転支軸21に装着した一方治具部61と、回転装置2の他方の回転支軸22に装着した他方治具部62との間に円筒状ワーク8を挟持し、この円筒状ワーク8の外周に対して加工装置3の刃具7によって歯面81の加工を行う際には、回転装置2の周辺に配設された回り止め部材65によってバリ取り工具63の回り止めを行う。そして、回転装置2を回転させるときには、一方治具部61に対するバリ取り工具63の周方向位置が固定され、バリ取り工具63に対して円筒状ワーク8が回転する。これにより、円筒状ワーク8の外周に対して歯面81の加工を行う際に、バリ取り工具63によって、円筒状ワーク8の端面80に形成されるバリ82(切削を行った各歯面81の端部に形成される突起)を切削除去することができる。
【0035】
また、本例においては、一方治具部61と他方治具部62との間に円筒状ワーク8を支持し、この円筒状ワーク8を回転装置2によって回転させるときには、円筒状ワーク8の回転を受けて回転工具部633も回転させることができる。そして、円筒状ワーク8の外周に対して歯面81の加工を行う際に、回転する回転工具部633によって、円筒状ワーク8の端面80に形成されるバリ82を切削除去することができる。これにより、回転工具部633の上端面の全周に形成された切刃634によって、バリ82の切削除去をより効果的に行うことができる。
【0036】
また、一方治具部61に予めバリ取り工具63が取り付けられていることにより、この一方治具部61と他方治具部62との間に挟持する円筒状ワーク8の端面80の位置に合わせて、バリ取り工具63の切刃634の高さ位置を設定しておくことができる。これにより、バリ取り工具63の切刃634の高さ位置の調整を不要にすることができる。そして、これに伴って、円筒状ワーク8の外周に歯面81等の加工を行うサイクルタイムを短縮することができる。