特許第5733326号(P5733326)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733326
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】電流形インバータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20150521BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20150521BHJP
【FI】
   H02P5/41 303Z
   H02M7/48 E
【請求項の数】11
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-32513(P2013-32513)
(22)【出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2014-165957(P2014-165957A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2013年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006622
【氏名又は名称】株式会社安川電機
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】原 英則
(72)【発明者】
【氏名】山中 克利
(72)【発明者】
【氏名】前村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】久米 常生
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−229669(JP,A)
【文献】 特開2007−267477(JP,A)
【文献】 特開2003−324990(JP,A)
【文献】 特開2011−229372(JP,A)
【文献】 特開平01−298693(JP,A)
【文献】 特開平10−225181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電流源から供給される直流電力を交流電力へ変換する複数の電力変換部と、
前記複数の電力変換部を制御する制御部と、を備え、
前記直流電流源は、
交流−直流変換または直流−直流変換によって直流電力を生成し、当該直流電力を直流リアクトルを介して前記複数の電力変換部へ供給する変換部を備え、
前記制御部は、
前記複数の電力変換部の前記直流電流源に対する接続モードとして、前記複数の電力変換部を前記直流電流源に対して直列に接続する直列接続モードと、前記複数の電力変換部を前記直流電流源に対して並列に接続する並列接続モードとを切り替えて実行し、
前記接続モードの実行を、
前記接続モードに応じた直流電圧指令を生成し、当該直流電圧指令を直流電流指令と前記直流リアクトルに流れる電流との差に応じて補正し、補正後の直流電圧指令に基づいて前記変換部を制御することによって行う
ことを特徴とする電流形インバータ装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記直列接続モードおよび前記並列接続モードに加え、前記直流電流源に対して並列接続した2以上の電力変換部の組を直列に接続した直並列接続モードを切り替えて実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の電流形インバータ装置。
【請求項3】
前記電力変換部からの交流電力の供給対象は交流電動機であり、
前記制御部は、
前記交流電動機の速度に基づいて前記接続モードを切り替える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電流形インバータ装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記交流電動機の速度が所定値未満である場合に、前記直列接続モードを実行し、前記交流電動機の速度が所定値以上である場合に、前記並列接続モードを実行する
ことを特徴とする請求項3に記載の電流形インバータ装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記交流電動機の加速に基づいて前記接続モードを切り替える際に、前記交流電動機の界磁を強める
ことを特徴とする請求項3または4に記載の電流形インバータ装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記交流電動機の加速に基づいて前記接続モードを切り替える際に、前記交流電動機のトルク電流を制限する
ことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の電流形インバータ装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記交流電動機のトルク電流を、前記接続モードの切り替え前後でモータの出力電力が変化しないように制限する
ことを特徴とする請求項6に記載の電流形インバータ装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記交流電動機の速度に応じた時比率で前記接続モードを交互に切り替えるスイッチング制御を実行する
ことを特徴とする請求項3〜7のいずれか1つに記載の電流形インバータ装置。
【請求項9】
2以上の前記電力変換部に対して1つの前記交流電動機を接続する
ことを特徴とする請求項3〜8のいずれか1つに記載の電流形インバータ装置。
【請求項10】
前記電力変換部ごとにそれぞれ前記交流電動機を接続する
ことを特徴とする請求項3〜9のいずれか1つに記載の電流形インバータ装置。
【請求項11】
前記直流電流源と前記複数の電力変換部との間に複数の切替器を有し、
前記制御部は、
前記複数の切替器を制御することによって前記接続モードを切り替える
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の電流形インバータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、電流形インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電動機の回転速度が高速になった場合に、交流電動機の電機子巻線の状態を低速用巻線から高速用巻線へ切り替える技術が知られている。
【0003】
かかる技術は、低速用巻線から高速用巻線へ切り替えることによって交流電動機で発生する逆起電圧を低減し、これにより、速度制御範囲を広げて低速領域から高速領域までの広範囲な運転を可能とするものである(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−11492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、交流電動機に対する速度制御範囲の拡大を巻線切り替えによって行う場合、交流電動機の巻線状態が切り替わることから、例えば、モータパラメータの切り替えなどが必要となり、制御が複雑になっていた。
【0006】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、巻線切り替えを行うことなく交流電動機に対する速度制御範囲を拡大することができる電流形インバータ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る電流形インバータ装置は、複数の電力変換部と、制御部とを備える。前記電力変換部は、直流電流源から供給される直流電力を交流電力へ変換する。前記直流電流源は、交流−直流変換または直流−直流変換によって直流電力を生成し、当該直流電力を直流リアクトルを介して前記複数の電力変換部へ供給する変換部を備える。前記制御部は、前記複数の電力変換部を制御する。さらに、前記制御部は、前記複数の電力変換部の前記直流電流源に対する接続モードとして、前記複数の電力変換部を前記直流電流源に対して直列に接続する直列接続モードと、前記複数の電力変換部を前記直流電流源に対して並列に接続する並列接続モードとを切り替えて実行し、前記接続モードの実行を、前記接続モードに応じた直流電圧指令を生成し、当該直流電圧指令を直流電流指令と前記直流リアクトルに流れる電流との差に応じて補正し、補正後の直流電圧指令に基づいて前記変換部を制御することによって行う
【発明の効果】
【0008】
実施形態の一態様によれば、巻線切り替えを行うことなく交流電動機に対する速度制御範囲を拡大することができる電流形インバータ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図2図2は、コンバータ部の構成例を示す図である。
図3図3は、インバータ部の構成例を示す図である。
図4図4は、図1に示す電流形インバータ装置の特性を示す図である。
図5図5は、電動機を加減速した場合の電流形インバータ装置の動作説明図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る他の電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図8図8は、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図9図9は、図8に示す電流形インバータ装置における接続モードとスイッチの状態と電動機の結合状態との関係を示す図である。
図10図10は、図8に示す電流形インバータ装置の特性を示す図である。
図11図11は、電動機を加減速した場合の図8に示す電流形インバータ装置の動作説明図である。
図12図12は、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図13図13は、図12に示す電流形インバータ装置の特性を示す図である。
図14図14は、図12に示す電流形インバータ装置における接続モードとスイッチの状態と電動機の結合状態との関係を示す図である。
図15図15は、第5の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。
図16図16は、回転速度と切替信号のオン比率との関係を示す図である。
図17図17は、切替信号の波形の一例を示す図である。
図18図18は、電動機を加速した場合のスイッチのオン比率、直列接続状態および並列接続状態の時比率の関係を示す図である。
図19図19は、電動機の回転速度と出力有効電力の最大値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する電流形インバータ装置の実施形態を詳細に説明する。なお、公知の電流形インバータ装置と同様の処理を行う公知の要素については説明を省略または簡略化している。また、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。図1に示す電流形インバータ装置1は、3相交流電源2(以下、単に交流電源2と記載する)から供給される交流電力を所望の交流電力へ変換して3相交流電動機3(以下、単に電動機3と記載する)へ出力する。
【0012】
電動機3は、例えば永久磁石式同期電動機である。かかる電動機3は、電機子巻線が互いに絶縁された2重巻線により構成された3相2重巻線電動機であり、第1の3相巻線5と、第2の3相巻線6とを有する。図1に示す例では、第1および第2の3相巻線5、6はY結線で構成されるが、デルタ結線で構成してもよい。
【0013】
電動機3の出力軸には位置検出器4が接続される。位置検出器4は、電動機3の回転子の位相θ(以下、回転子位相θと記載する)を検出する。位置検出器4は、たとえばエンコーダやレゾルバなどである。
【0014】
電流形インバータ装置1は、R相端子TR、S相端子TS、T相端子TTを備えており、これらの端子TR、TS、TTは交流電源2のR相、S相およびT相のそれぞれに接続される。また、電流形インバータ装置1は、U1相端子TU1、U2相端子TU2、V1相端子TV1、V2相端子TV2、W1相端子TW1、W2相端子TW2を備える。端子TU1、TV1、TW1は、電動機3の第1の3相巻線5に接続され、端子TU2、TV2、TW2は、電動機3の第2の3相巻線6に接続される。
【0015】
さらに、電流形インバータ装置1は、コンバータ部10と、インバータ部11a、11bと、直流リアクトル12a、12bと、電流検出部13と、直流母線切替部15と、制御部16を備える。
【0016】
コンバータ部10は、端子TR、TS、TTを介して交流電源2に接続され、交流電源2から供給される交流電力を直流電力へ変換し、直流リアクトル12a、12bを介してインバータ部11a、11bへ直流電力を出力する。なお、交流電源2、コンバータ部10および直流リアクトル12a、12bにより直流電流源が構成されるが、直流電流源はその他の構成であってもよく、例えば、交流電源2は電池などの直流電源であり、かつコンバータ部10はDC/DCコンバータなどであってもよい。
【0017】
図2は、コンバータ部10の構成例を示す図である。図2に示すように、コンバータ部10は、スイッチング素子とダイオードの直列回路が3相ブリッジ接続されて構成される。そして、コンバータ部10のスイッチング素子が制御部16から出力される駆動信号Sc1〜Sc6によってオン/オフ制御されることによって、交流電源2から出力される3相交流電力が直流電力へ変換される。
【0018】
インバータ部11a、11b(電力変換部の一例)は、それぞれ端子TU1、TV1、TW1および端子TU2、TV2、TW2を介して電動機3に接続され、直流リアクトル12a、12bを介してコンバータ部10から供給される直流電力を交流電力へ変換して電動機3へ出力する。
【0019】
図3は、インバータ部11aの構成例を示す図である。図3に示すように、インバータ部11aは、ブリッジ回路30およびフィルタ回路31を備える。ブリッジ回路30は、スイッチング素子とダイオードの直列回路が3相ブリッジ接続されて構成される。スイッチング素子が制御部16によってオン/オフ制御されることによって、正側入力端子P1および負側入力端子N2を介して直流リアクトル12a、12b側から供給される直流電力が3相交流電力へ変換され、出力端子Tu1、Tv1、Tw1を介して出力される。
【0020】
フィルタ回路31は、U相端子Tu1、V相端子Tv1およびW相端子Tw1のそれぞれにコンデンサの一端が接続され、これらのコンデンサの他端が共通に接続される。かかるフィルタ回路31により、インバータ部11aから出力される電流の高周波成分が除去される。インバータ部11bは、インバータ部11aと同一構成であり、以下、総称してインバータ部11と呼ぶ場合がある。
【0021】
なお、コンバータ部10およびインバータ部11のスイッチング素子は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)やMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などの半導体素子である。なお、コンバータ部10およびインバータ部11において、スイッチング素子が逆阻止型のIGBTである場合、ダイオードはなくてもよい。
【0022】
直流リアクトル12aは、コンバータ部10の正出力側とインバータ部11aの正側入力端子P1との間に接続され、直流リアクトル12bは、コンバータ部10の負出力側とインバータ部11bの負側入力端子N2との間に接続される。これら直流リアクトル12a、12bは、コンバータ部10とインバータ部11を接続する直流回路に流れる直流電流を平滑化してインバータ部11へ出力する。
【0023】
なお、直流リアクトル12a、12bは、同一のインダクタンス値を有する。また、インバータ部11aと直流リアクトル12aとにより電流形インバータが構成され、また、インバータ部11bと直流リアクトル12bとにより電流形インバータが構成される。
【0024】
電流検出部13は、直流リアクトル12aに流れる電流を検出する。電流検出部13は、例えば、磁電変換素子であるホール素子を利用して電流を検出する電流センサである。
【0025】
直流母線切替部15は、制御部16からの切替信号Sp、Snに基づいて、2つのインバータ部11a、11bをコンバータ部10に対して直列に接続するか並列に接続するかを切り替える。かかる直流母線切替部15は、スイッチSW1〜SW3(切替器の一例)を備える。スイッチSW1〜SW3は、スイッチング素子とダイオードとの直列接続回路により構成される。なお、スイッチング素子は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体素子である。また、スイッチング素子が逆阻止型のIGBTである場合、ダイオードはなくてもよい。
【0026】
スイッチSW1は、インバータ部11aの正側入力端子P1とインバータ部11bの正側入力端子P2との間に接続される。また、スイッチSW2は、インバータ部11aの負側入力端子N1とインバータ部11bの負側入力端子N2との間に接続される。また、スイッチSW3は、インバータ部11aの負側入力端子N1とインバータ部11bの正側入力端子P2との間に接続される。
【0027】
制御部16からの切替信号SpがHighレベルになることで切替信号SnがLowレベルになり、この結果、スイッチSW1、SW2がオンになり、SW3がオフになる。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが並列に接続される。また、制御部16からの切替信号SpがLowレベルになることで切替信号SnがHighレベルになり、この結果、スイッチSW1、SW2がオフになり、スイッチSW3がオンになる。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが直列に接続される。以下、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが並列に接続される状態を並列接続モードと呼び、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが直列に接続される状態を直列接続モードと呼ぶ。
【0028】
コンバータ部10は、定常状態において直流リアクトル12a、12bに流れる直流電流を一定に保つため、直流リアクトル12a、12bのコンバータ部10側に加える電圧がインバータ部11の動作により直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側に加わる直流電圧と同一になるように制御部16により制御される。
【0029】
したがって、インバータ部11a、11bが同一の回路構成であり、直流リアクトル12a、12bが同一のインダクタンス値である場合、並列接続モードにおいて、各インバータ部11a、11bに入力される電圧は、直流母線電圧Vpnに等しい電圧である。また、インバータ部11a、11bが同一の回路構成であり、直流リアクトル12a、12bが同一のインダクタンス値である場合、直列接続モードにおいて、各インバータ部11a、11bに入力される電圧は、直流母線電圧Vpnの1/2の電圧である。
【0030】
制御部16は、位置検出器4によって検出された回転子位相θおよび電流検出部13の検出電流Idcに基づき、コンバータ部10、インバータ部11および直流母線切替部15を制御する。
【0031】
かかる制御部16は、速度演算器21と、比較器22と、切替速度設定器23と、NOT回路24と、インバータ制御器25と、定出力制御器26と、コンバータ電圧指令器27と、コンバータ制御器28とを備える。
【0032】
速度演算器21は、位置検出器4からの回転子位相θに基づいて電動機3の回転速度Ndetを演算する。比較器22は、速度演算器21から出力される回転速度Ndetと切替速度設定器23から出力される回転速度設定値Ns1とを比較し、比較結果を切替信号Spとして出力する。回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1未満である場合、比較器22は、Lowレベルの切替信号Spを出力する。一方、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1以上である場合、比較器22は、Highレベルの切替信号Spを出力する。
【0033】
NOT回路24は、比較器22から出力される切替信号Spのレベルを反転して切替信号Snとして出力する。比較器22からLowレベルの切替信号Spが入力された場合、NOT回路24は、Highレベルの切替信号Snを出力する。一方、比較器22からHighレベルの切替信号Spが入力された場合、NOT回路24は、Lowレベルの切替信号Snを出力する。
【0034】
切替信号Spは、上述したように、スイッチSW1、SW2に入力され、切替信号Snは、スイッチSW3に入力される。したがって、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1未満である場合、スイッチSW1、SW2がオフになり、スイッチSW3がオンになるため、電流形インバータ装置1は、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが直列に接続される直列接続モードになる。
【0035】
一方、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1以上である場合、スイッチSW1、SW2がオンになり、スイッチSW3がオフになるため、電流形インバータ装置1は、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが並列に接続される並列接続モードになる。
【0036】
このように、電流形インバータ装置1では、電動機3の回転速度に応じて、コンバータ部10に対するインバータ部11a、11bの接続モードが切り替わる。これにより、巻線切り替えを行うことなく電動機3に対する速度制御範囲を拡大することができる。かかる接続モードについては、後で詳述する。
【0037】
インバータ制御器25は、公知のインバータ制御技術により、駆動信号Si1〜Si12を生成し、インバータ部11へ出力する。例えば、インバータ制御器25は、位置検出器4から出力される回転子位相θや定出力制御器26から出力されるd軸弱め界磁電流指令値Idrcなどに基づいて駆動信号Si1〜Si12の生成を行う。
【0038】
駆動信号Si1〜Si6によってインバータ部11aのスイッチング素子が制御され、駆動信号Si7〜Si12によってインバータ部11bのスイッチング素子が制御される。
【0039】
定出力制御器26から出力されるd軸弱め界磁電流指令値Idrcは、界磁弱め制御に用いられる。定出力制御器26は、電動機3の回転速度に応じたd軸弱め界磁電流指令値Idrcを生成する。
【0040】
インバータ制御器25は、電動機3の回転子位相θに同期したd−q軸回転座標系のq軸成分およびd軸成分を用いて指令演算を行っており、d軸電流指令Idrをd軸弱め界磁電流指令値Idrcとすることで、d軸電流を界磁を弱める方向に増加させて界磁弱め制御を行う。なお、界磁弱め制御の方法はd軸弱め界磁電流指令値Idrcによるものに限られず、他の公知技術によって界磁弱め制御を行ってもよい。
【0041】
コンバータ電圧指令器27は、比較器22から出力される切替信号Spに基づき、直流電圧指令Vpnrを生成してコンバータ制御器28へ出力する。
【0042】
コンバータ制御器28は、公知のコンバータ制御技術により、直流電圧指令Vpnr、電動機3に対する力率指令φr(不図示)および電流検出部13の検出電流Idcに基づいて駆動信号Sc1〜Sc6を生成し、コンバータ部10へ出力する。駆動信号Sc1〜Sc6によってコンバータ部10のスイッチング素子が制御され、コンバータ部10から直流電力が出力される。
【0043】
なお、コンバータ制御器28は、力行運転の場合、直流電圧指令Vpnrおよび力率指令φrをそれぞれ正の値とし、回生運転の場合、直流電圧指令Vpnrおよび力率指令φrの符号を反転させそれぞれ負の値とする。コンバータ制御器28は、直流リアクトル12aを流れる直流電流に対する直流電流指令Idcrefと電流検出部13が検出した直流リアクトル12aを流れる電流Idcとの差に基づき、直流電圧指令Vpnrを補正する。なお、直流電流指令Idcrefは、インバータの定格容量から必要となる直流電流値を元に予め決定される。コンバータ部10は、補正された直流電圧指令および力率指令φrに基づいてコンバータ制御器28により生成された駆動信号Sc1〜Sc6により、直流リアクトル12aを流れる電流を直流電流指令Idcrefに保ちつつ正負の可変直流電圧を出力する。また、インバータ部11は、直流電圧指令が正の場合と負の場合とで出力交流電流の位相を反転させることにより、力行運転および回生運転を行うことができる。
【0044】
電流形インバータ装置1では、上述のように電動機3の回転速度に応じてコンバータ部10に対するインバータ部11a、11bの接続モードが切り替わり、これにより、電動機3に対する速度制御範囲を拡大することができる。以下、電流形インバータ装置1についてさらに詳細に説明する。
【0045】
図4は、電流形インバータ装置1の特性を示す図であり、具体的には、直流母線電圧Vpn、出力有効電力Pおよびトルクτと、電動機3の回転速度との関係を示す図である。また、図4においては電動機3の回転速度が回転速度設定値Ns1未満である領域を低速領域とし、電動機3の回転速度が回転速度設定値Ns1以上である領域を高速領域としている。出力有効電力Pは、電流形インバータ装置1が出力できる有効電力の最大値である。
【0046】
図4に示すように、電動機3の回転速度が回転速度設定値Ns1未満である低速領域は、電動機3の回転速度が基底回転速度値Nbase未満の定トルク領域と電動機3の回転速度が基底回転速度値Nbase以上の定出力領域とに分けられる。一方、電動機3の回転速度が回転速度設定値Ns1以上である高速領域は、定出力領域である。
【0047】
電流形インバータ装置1では、コンバータ部10により直流リアクトル12aを流れる直流電流が一定に保たれ、この直流電流に基づき、出力電力がインバータ部11a、11bから出力される。コンバータ部10から出力される直流母線電圧Vpnには、上限値Vpnmaxが存在することから、直流母線電圧Vpnは、上限値Vpnmaxまでの範囲に制限される。
【0048】
基底回転速度値Nbaseは、定トルク領域と定出力領域とを分ける基準であり、例えば、上述した界磁弱め制御が行われた場合に直流母線電圧Vpnが設定値Vpnaに達するときの電動機3の回転速度である。設定値Vpnaは、例えば、上限値Vpnmaxよりも所定値ΔVpnだけ低い値である。
【0049】
定トルク領域では、界磁弱め制御が行われず、電動機3の誘起電圧および3相巻線5、6のインピーダンスによる電圧降下は電動機3の回転速度に比例する。そのため、電動機3の回転速度の増加に伴い直流母線電圧Vpnが高くなる。かかる定トルク領域ではd軸弱め界磁電流指令値Idrcはゼロで界磁が一定であり、その全速度範囲において最大トルクτrateまでのトルクを出力できる。
【0050】
定出力制御器26は、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbaseに達するまで、d軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに維持する。電動機3の回転速度Ndetが基底回転速度値Nbaseを超えると、定出力制御器26は、回転速度Ndetが高くなるほどd軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロから界磁を弱める方向に増加させてインバータ制御器25へ出力する。このとき、d軸弱め界磁電流指令値Idrcは、回転速度Ndetに反比例して永久磁石の作る界磁が弱められるような値とする。これにより、電動機3の誘起電圧が一定値に維持される。
【0051】
界磁弱め制御は、q軸電流(トルク電流)を一定に維持しつつd軸弱め界磁電流指令値Idrcによりd軸電流(界磁電流)を弱め界磁方向に増加させることによって行われる。かかる界磁弱め制御による定出力制御では、q軸電流が一定でありかつ上述のとおり電動機3の誘起電圧が一定であることから、電流形インバータ装置1の出力有効電力Pは電動機3の回転速度に関わらず一定である。
【0052】
定出力領域では、界磁弱め制御により回転速度Ndetの変化に関わらず電動機3の誘起電圧が一定であるが、3相巻線5、6のインピーダンスによる電圧降下は電動機3の回転速度の増加に伴い大きくなる。そのため、電動機3の端子電圧が高くなる。なお、上述の所定値ΔVpnは、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbaseから回転速度設定値Ns1まで増加する間のインピーダンスによる電圧降下の増大分を考慮して決定される。
【0053】
電流形インバータ装置1では、直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側には、この電動機3の端子電圧に略等しい電圧が印加される。電動機3の端子電圧が高くなり電動機3の回転速度が回転速度設定値Ns1に達すると、直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側に印加される電圧は、コンバータ部10から出力される直流母線電圧Vpnの上限値Vpnmaxに到達する。したがって、電動機3の回転速度をそれ以上高くすると、コンバータ部10は直流リアクトル12a、12bを流れる直流電流を一定に維持する電圧を出力できず、電流形インバータ装置1は電動機3の速度を制御することができなくなる。
【0054】
そこで、電流形インバータ装置1の制御部16は、直列接続モードから並列接続モードへ切り替えることで、直流リアクトル12a、12bのコンバータ部10側に印加しなければならない電圧を低くし、これにより、回転速度Ndetを回転速度設定値Ns1以上にする。
【0055】
定出力制御器26は、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達した場合、d軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻す。さらに、定出力制御器26は、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1を超えると、回転速度Ndetの増加に伴い界磁を弱める方向に大きくなり、永久磁石による界磁が回転速度Ndetに反比例して弱められるd軸弱め界磁電流指令値Idrcをインバータ制御器25へ出力する。これにより、高速領域において定出力制御が行われる。
【0056】
直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側には、直列接続モードでは2台の電動機3の端子電圧の合計値に略等しい電圧が印加されている。これに対して並列接続モードでは、1台の電動機3の端子電圧が印加される。図4に示すVpnは、この直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側に印加される電圧を示している。これに対し、図4に示すVpn1は、回転速度設定値Ns1に至るまで、弱め界磁無しで電動機3を運転した場合の、1台の電動機3の端子電圧を表している。回転速度設定値Ns1にて、直流リアクトル12a、12bのインバータ部11側の電圧Vpnが、並列接続モードへの切り替えと界磁弱め制御の解除により、コンバータ部10の出力電圧の上限値Vpnmaxからコンバータ1台の電動機3の端子電圧Vpn1に低下することがわかる。
【0057】
定出力領域では、永久磁石の界磁は回転速度Ndetに反比例して弱められていたため、回転速度NdetがNs1のときには永久磁石の界磁は、Nbase/Ns1倍に弱められている。したがって回転速度Ns1にて界磁弱め制御を解除すると、界磁はNs1/Nbase倍に強まる。そのため、q軸電流値が変化しないと、電動機3のトルクτは界磁に比例して大きくなり、出力有効電力Pも界磁に比例して大きくなる。そこで、インバータ制御器25は、直列接続モードから並列接続モードに切り替わる際、q軸電流指令値をNbase/Ns1倍することで制限する。これにより、接続モードの切り替えの前後で電動機3の出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。なお、例えば、速度制御が行われているような場合は、速度制御器の動作によりq軸電流指令は上記に制限されるため、本q軸電流指令値の制限は設けなくてもよい。
【0058】
コンバータ電圧指令器27は、回転速度設定値Ns1以上の定出力領域では、例えば、3相交流電源2の交流電圧を全波整流した電圧を直流電圧指令Vpnrとして出力する。さらに、定トルク領域では、コンバータ電圧指令器27は、例えば回転速度Nにおいては3相交流電源2の交流電圧を全波整流した電圧をN/Ns1倍した電圧を直流電圧指令Vpnrとして出力する。コンバータ制御器28は、かかる直流電圧指令Vpnrを直流リアクトル12aを流れる直流電流に対する直流電流指令Idcrefと電流検出部13が検出した直流リアクトル12aを流れる電流Idcとの差に基づき補正する。これにより、コンバータ部10は図4の電圧Vpnに等しい電圧を出力し、直流リアクトル12aに流れる電流を一定に保つことができる。
【0059】
かかる制御により、直列接続モードから並列接続モードへの切り替え前後で電動機3の出力トルクτは連続し、電動機3の回転速度を滑らかに変化させることができる。また、接続モードの切り替え前後で出力有効電力Pは変化せず、コンバータ部10の必要容量を増大させることもなく、切り替えを行うことができる。
【0060】
電流形インバータ装置1は、直列接続モードと並列接続モードとを切り替えて電動機3を制御するため、以下に説明するように、直列接続モードのみの場合や、並列接続モードのみの場合に比べ、電動機3の速度制御範囲を拡大することができる。
【0061】
電動機3の定出力範囲は、電動機3が永久磁石式同期電動機である場合、電動機3の回転速度の増加に伴って弱め界磁制御によって励磁電流(d軸電流)が増加する。そのまま速度が増加してゆくと、電動機3に流さなければならない電流が増加し、電流形インバータ装置1の最大出力電流を超過することから電動機3の定出力範囲が制限される。
【0062】
そこで、本実施形態に係る電流形インバータ装置1は、並列接続のみで電動機3を駆動する電流形インバータ装置に比べ、直流電流源であるコンバータ部10の電圧定格を2倍に上げ、電動機3の端子電圧の2倍の電圧が直流リアクトル12a、12bのインバータ部11に印加されてもよいようにしている。
【0063】
このようにコンバータ部10の電圧定格を2倍に上げることで、電流形インバータ装置1では、低速領域において2つのインバータ部11をコンバータ部10に対して直列接続可能にしている。2つインバータ部11をコンバータ部10に対して直列に接続した場合、コンバータ部10の出力電流を、インバータ部11a、11bに共通に供給する電流とすることで、並列接続のみで電動機3を駆動する電流形インバータに接続される直流電流源と同じ出力電力容量にできる。
【0064】
また、電流形インバータ装置1は、高速領域において、2つインバータ部11をコンバータ部10に対して並列に接続することで電動機3の端子電圧に対する許容容量をアップでき、これにより、低速領域から高速領域への移行において、界磁弱め制御を解除できる。すなわち、電流形インバータ装置1は、低速領域から高速領域への移行において、d軸電流を一度ゼロにして界磁弱め制御を解除し、電動機3の界磁を再び定出力開始前のレベルまで強め、電動機3の誘起電圧を高めている。これにより、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1以上の場合、界磁弱め制御のために必要な励磁電流(d軸電流)を並列接続のみで電動機3を駆動する電流形インバータ装置よりも小さくしている。すなわち、回転速度Ndetが回転速度Ns1以上で、並列接続のみで電動機3を駆動するときより、電流形インバータ装置が出力すべき電流を小さくでき、速度制御範囲を拡大できる。
【0065】
また、低速領域から高速領域への移行において界磁弱め制御を解除した場合、移行直前の低速領域でのトルクを得るためのq軸電流は移行直後の高速領域では1/2でよい。そこで、電流形インバータ装置1は、低速領域から高速領域への移行において、並列接続に切り替えても、コンバータ部10が流さなければならない電流は増加しない。
【0066】
以上のように、低速領域では直列接続モードでインバータ部11を動作させ、高速領域では並列接続モードでインバータ部11を動作させ、直列接続モードから並列接続モードへの切り替え時に界磁弱め制御を解除することで、速度制御範囲における回転速度Nmaxを並列接続のみの電流形インバータ装置で電動機3を駆動した場合よりも大きな値とすることができ、従来の巻線切替方式と同様に速度制御範囲の拡大が可能となる。しかも、電流形インバータ装置1では、低速領域と高速領域の切り替えにより、直流電流源の出力電力容量を増加させる必要がなく、接続モードを切り替えない場合と同じ出力電力容量とすることができる。
【0067】
図5は、電動機3を停止状態(ゼロ速度)と回転速度Nmaxの間で加減速した場合の電流形インバータ装置1の動作説明図である。図5に示すように、制御部16は、インバータ部11を直列接続モードにより動作させて、時刻T0から電動機3の加速を開始し、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbaseに達する時刻T1まで界磁弱め制御を行わない定トルク制御を行う。
【0068】
その後、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbaseに達すると、制御部16は、界磁弱め制御を開始して定出力制御を行う。回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達する時刻T2になると、制御部16は、直列接続モードから並列接続モードへ切り替え、インバータ部11を並列接続モードにより動作させる。制御部16は、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達すると一旦界磁弱め制御を停止した後で回転速度Ndetの増加に伴って界磁弱めの大きさを大きくする新たな界磁弱め制御による定出力制御を行う。
【0069】
制御部16は、時刻T3において回転速度Ndetが最大速度値Nmaxに達すると、一定速度運転に入る。その後、時刻T4にて速度指令値をゼロにして、電動機3の減速を開始する。制御部16は、時刻T5において回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達すると、並列接続モードから直列接続モードへ切り替え、インバータ部11を直列接続モードにより動作させる。制御部16は、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達すると一旦界磁弱めの大きさを大きくした後で回転速度Ndetの減少に伴って界磁弱めの大きさを小さくする新たな界磁弱め制御による定出力制御を行う。
【0070】
その後、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbase未満になる時刻T6において、制御部16は、定トルク制御を開始し、回転速度Ndetがゼロになるまで、定トルク制御を継続して行う。なお、回転速度がNbaseを超える定出力領域では、出力可能なトルクτが減少するため、出力可能な最大トルクを出力しながらの加減速では、速度上昇・下降特性の直線性が鈍くなる。
【0071】
以上のように、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1は、直列接続モードと並列接続モードとを切り替えて電動機3を制御し、前者から後者への移行時に界磁弱め制御を解除するため、接続モードを切り替えないインバータ装置に比べて電動機3の速度制御範囲を拡大することができる。
【0072】
また、電流形インバータ装置1は、電動機の巻線切り替えを行わずに電動機3の速度制御範囲を拡大することから、電動機3の巻き線状態が変化しない。したがって、かかる電流形インバータ装置1では、電動機の巻線切り替えに伴う種々の課題を解消することができる。
【0073】
例えば、巻線切り替え方式では、巻線の切り替え前後でモータパラメータ(例えば、トルク定数値、電機子巻線抵抗値、電機子巻線インダクタンス値)を変更しなければならない。そのため、初期のパラメータ設定値が増え、制御が複雑になる。一方、電流形インバータ装置1では、電動機3の巻き線状態が変化しないことから、上述のようなモータパラメータの変更を行うことなしに、電動機3を制御することができる。
【0074】
また、巻線切り替え方式では、高速領域において高速用巻線だけに通電が行われるため、巻線で発生する銅損が増大する。例えば、高速用巻線の巻数と低速用巻線の巻数が1:2である場合、高速領域では、結果的にモータスロットにある巻線の半分しか使用しないことになる。そのため、巻線のスロット面積に占める巻線の実質的な占積率は低速領域の半分に低下し巻線銅損が2倍に増加する。一方、電流形インバータ装置1では、電動機3の巻き線状態が変化せず、通電されない巻線がないことから、巻線の実質的な占積率が低下しない。
【0075】
また、従来の巻線切り替え方式では、電動機において少なくとも9個の端子を設けることになるため、電動機およびインバータ装置の小型・軽量化を阻害する要因になる。一方、電流形インバータ装置1では、巻線切り替えが行われないため、電動機3において9個の端子よりも少ない6個の端子を設ければよい。そのため、電動機3の端子数を削減でき、電動機3およびインバータ装置の小型・軽量化を図ることができる。
【0076】
なお、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1の構成例として、図1に示す構成を説明したが、直流リアクトル12a、12bと直流母線切替部15の位置関係は、図6に示す関係であってもよい。図6は、第1の実施形態に係る他の電流形インバータ装置1Aの構成例を示す図である。なお、かかる電流形インバータ装置1Aにおいて直流電流指令Idcrefは、直列接続モード、並列接続モードを通じて想定される最大の直流電流を元に予め決定される。
【0077】
また、上述では、インバータ部11a、11bを同一の回路構成としたが、異なる構成としてもよい。例えば、インバータ部11aとインバータ部11bが同じ容量の負荷を駆動するのであれば、互いに異なる定格電力容量のインバータ部とすることもできる。また、直流リアクトル12a、12bのインダクタンス値を異なるインダクタンス値にしてもよい。
【0078】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置について説明する。第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1は、二重巻線電動機である一台の電動機3を動作させるが、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置は、2台の電動機を同一の回転速度で制御したり、また電動機3a、3bが機械的に結合されているときは第1の実施形態と同じ制御を行う。なお、以下においては、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
図7は、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。図7に示すように、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置1Bは、インバータ部11aに電動機3aが接続され、インバータ部11bに電動機3bが接続される。なお、インバータ部11a、11bは同一構成であり、例えば、図3に示すように構成される。また、電動機3a、3bも同一構成である。
【0080】
第2の実施形態に係る電流形インバータ装置1Bにおいては、電動機3a、3bの回転速度は同一であり、図7に示す電流形インバータ装置1Bは、電動機3aの回転子位相θのみを位置検出器4によって検出する。
【0081】
なお、位置検出器4は、電動機3aの回転子位相θに代えて電動機3bの回転子位相θを検出するようにしてもよい。また、位置検出器4に代えて速度検出器を用いる場合、速度検出器は電動機3a、3bのいずれか一つの速度を検出すればよい。
【0082】
電流形インバータ装置1Bの制御部16Bは、電流形インバータ装置1の制御部16と同様の制御を行う。これにより、直流電流源であるコンバータ部10の出力電力容量の増加を抑えつつ、電動機3a、3bの速度制御範囲を拡大することができる。
【0083】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置について説明する。第2の実施形態に係る電流形インバータ装置1Bは、2つのインバータ部11a、11bにより2台の電動機3a、3bを同一回転速度で動作させるものであるが、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置は、4つのインバータ部により4台の電動機を同一回転速度で動作させる。なお、以下においては、第1および第2の実施形態に係る電流形インバータ装置1、1Bと異なる点を中心に説明し、第1および第2の実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
図8は、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。図8に示すように、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置1Cは、直流電流源7と、4つのインバータ部11a〜11dと、直流母線切替部15Cと、制御部16Cとを備える。なお、図8では、電流検出部13などの電流検出部は省略しており、交流電源2およびコンバータ部10を直流電流源7として表している。
【0085】
各インバータ部11a〜11dには個別に電動機3a〜3dが接続される。すなわち、インバータ部11aには電動機3aが接続され、インバータ部11bには電動機3bが接続され、インバータ部11cには電動機3cが接続され、インバータ部11dには電動機3dが接続される。なお、インバータ部11a〜11dは同一構成であり、例えば、図3に示すように構成される。また、電動機3a〜3dも同一構成である。
【0086】
直流母線切替部15Cは、スイッチSW11〜SW19(切替器の一例)を備え、制御部16Cから出力される切替信号S11〜S19に基づき、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11dの接続を、直列接続、直並列接続、並列接続の3つの状態に切り替える。スイッチSW11〜SW19は、スイッチング素子とダイオードとの直列接続回路により構成される。なお、スイッチング素子は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体素子である。以下、直並列接続の状態を直並列接続モードと呼ぶ。
【0087】
スイッチSW11、SW14、SW17は、インバータ部11a〜11dの正側入力端子P1〜P4間を接続するスイッチである。具体的には、スイッチSW11は、インバータ部11aの正側入力端子P1とインバータ部11bの正側入力端子P2との間に接続される。スイッチSW14は、インバータ部11bの正側入力端子P2とインバータ部11cの正側入力端子P3との間に接続される。スイッチSW17は、インバータ部11cの正側入力端子P3とインバータ部11dの正側入力端子P4との間に接続される。
【0088】
また、スイッチSW12、SW15、SW18は、インバータ部11a〜11dの負側入力端子N1〜N4間を接続するスイッチである。具体的には、スイッチSW12は、インバータ部11aの負側入力端子N1とインバータ部11bの負側入力端子N2との間に接続される。スイッチSW15は、インバータ部11bの負側入力端子N2とインバータ部11cの負側入力端子N3との間に接続される。スイッチSW18は、インバータ部11cの負側入力端子N3とインバータ部11dの負側入力端子N4との間に接続される。
【0089】
また、スイッチSW13、SW16、SW19は、インバータ部11a〜11dの極性の異なる端子間を接続するスイッチである。具体的には、スイッチSW13は、インバータ部11aの負側入力端子N1とインバータ部11bの正側入力端子P2との間に接続される。スイッチSW16は、インバータ部11bの負側入力端子N2とインバータ部11cの正側入力端子P3との間に接続される。スイッチSW19は、インバータ部11cの負側入力端子N3とインバータ部11dの正側入力端子P4との間に接続される。
【0090】
制御部16Cは、速度演算器21と、切替速度設定器23Cと、切替判別器29とを備える。なお、図示していないが、制御部16Cは、制御部16と同様に、インバータ制御器25、定出力制御器26、コンバータ電圧指令器27およびコンバータ制御器28を備える。
【0091】
速度演算器21は、位置検出器4からの回転子位相θに基づいて電動機3の回転速度Ndetを演算する。切替速度設定器23Cは、第1回転速度設定値Ns1および第2回転速度設定値Ns2を切替判別器29へ出力する。
【0092】
切替判別器29は、速度演算器21から出力される回転速度Ndetと切替速度設定器23Cから出力される第1回転速度設定値Ns1および第2回転速度設定値Ns2とを比較し、比較結果に基づいた切替信号S11〜S19を出力する。
【0093】
具体的には、切替判別器29は、回転速度Ndetが第1回転速度設定値Ns1未満であれば、直列接続モードの切替信号S11〜S19を出力する。また、切替判別器29は、回転速度Ndetが第1回転速度設定値Ns1以上第2回転速度設定値Ns2未満であれば、直並列接続モードの切替信号S11〜S19を出力する。さらに、切替判別器29は、回転速度Ndetが第2回転速度設定値Ns2以上であれば、並列接続モードの切替信号S11〜S19を出力する。切替信号S11〜S19はそれぞれスイッチSW11〜SW19を動作させるための信号である。
【0094】
図9は、電流形インバータ装置1Cにおける接続モードとスイッチの状態と電動機3a〜3dの結合状態との関係を示す図である。図9に示すように、直列接続モードでは、スイッチSW13、SW16、SW19がオン状態であり、その他のスイッチSW11、SW12、SW14、SW15、SW17、SW18がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対して、電動機3a〜3dが4つのインバータ部11a〜11dを介して直列に接続される。
【0095】
直並列接続モードでは、スイッチSW11、SW12、SW16〜SW18がオン状態であり、その他のスイッチSW13〜SW15、SW19がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bを介してそれぞれ並列に接続された電動機3a、3bの組とインバータ部11c、11dを介してそれぞれ並列に接続された電動機3c、3dの組とが直列に接続される。
【0096】
並列接続モードでは、スイッチSW11、SW12、SW14、SW15、SW17、SW18がオン状態であり、その他のスイッチSW13、SW16、SW19がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対して、電動機3a〜3dが4つのインバータ部11a〜11dを介して並列に接続される。
【0097】
図10は、電流形インバータ装置1Cの特性を示す図であり、具体的には、直流母線電圧Vpn、出力有効電力Pおよびトルクτと、電動機3a〜3dの回転速度との関係を示す図である。
【0098】
また、図10においては電動機3a〜3dの回転速度が第1回転速度設定値Ns1未満である領域を低速領域とし、電動機3a〜3dの回転速度が第1回転速度設定値Ns1以上第2回転速度設定値Ns2未満である領域を中速領域としている。また、電動機3a〜3dの回転速度が第2回転速度設定値Ns2以上である領域を高速領域としている。
【0099】
図10に示すように、電流形インバータ装置1Cは、低速領域では、直列接続モードで動作し、中速領域では、直並列接続モードで動作し、高速領域では、並列接続モードで動作する。
【0100】
低速領域のうち、電動機3a〜3dの回転速度が基底回転速度値Nbase未満である領域では、制御部16Cは、定トルク制御を行う。一方、低速領域のうち、電動機3a〜3dの回転速度が基底回転速度値Nbase以上である領域では、制御部16Cは、定出力制御を行う。また、中速領域および高速領域では、制御部16Cは、定出力制御を行う。
【0101】
図10に示すように、直列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Ns1であり、直並列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Ns2であり、並列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Nmaxである。なお、図10において、Vpn1は、直並列接続モードにおいて界磁弱め制御が行われない場合の直流母線電圧Vpnであり、Vpn2は、並列接続モードにおいて界磁弱め制御が行われない場合の直流母線電圧Vpnである。
【0102】
したがって、直列接続モード、直並列接続モードおよび並列接続モードを切り替え、各切り替えにて界磁弱め制御を解除することによって、電動機3a〜3dの速度制御範囲を回転速度Nmaxまでとでき、これらのモードを切り替えない場合に比べて、直流電流源7の容量を出力有効電力Pに基づく容量に抑えつつ、速度制御範囲を拡大することができる。
【0103】
直列接続モードと直並列接続モードとの切り替え制御、および、直並列接続モードと並列接続モードとの切り替え制御は、第1の実施形態に係る接続モードの切り替え制御と同様の制御である。
【0104】
例えば、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達した場合、制御部16Cは、d軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻すことにより、電動機3a〜3dの界磁を強め、q軸電流指令値をNbase/Ns1倍することで制限する。これにより、直列接続モードから直並列接続モードへの切り替えの前後で電動機3a〜3dの出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。
【0105】
また、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns2に達した場合、制御部16Cがd軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻すことにより、電動機3a〜3dの界磁を強め、q軸電流指令値をNs1/Ns2倍することで制限する。これにより、直並列接続モードから並列接続モードへの切り替えの前後で電動機3a〜3dの出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。
【0106】
図11は電動機3a〜3dを加減速した場合の電流形インバータ装置1Cの動作説明図である。図11では、時刻T0から電動機3a〜3dの加速を開始して時刻T5において回転速度Ndetを最大速度値Nmaxまで上げ、その後、時刻T6から電動機3a〜3dの減速を開始して時刻T9で回転速度Ndetをゼロにした場合の各スイッチSW11〜SW19の状態を示す。
【0107】
図11に示すように、電流形インバータ装置1Cは、加速時には、直列接続モードから直並列接続モードへ移行し、その後、直並列接続モードから並列接続モードへ移行する。また、電流形インバータ装置1Cは、減速時には、並列接続モードから直並列接続モードへ移行し、その後、直並列接続モードから直列接続モードへ移行する。なお、電動機3の回転速度が基底回転速度値Nbaseを超えると定出力領域となり速度上昇・下降特性の直線性が徐々に保てなくなる。
【0108】
以上のように、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置1Cでは、インバータ部11を4つとし、直列接続モード、直並列接続モードおよび並列接続モードを切り替えて実行する。そのため、第2の実施形態に係る電流形インバータ装置1Bに比べ、速度制御範囲をさらに拡大することができる。
【0109】
なお、図8に示す例では、4つのインバータ部11a〜11dに対して4台の電動機3a〜3dを接続したが、4つのインバータ部11a〜11dに対して1台の電動機を接続するようにしてもよい。この場合、電動機として、第1〜第4の3相巻線を有する四重巻線電動機を用いる。そして、各3相巻線に対してインバータ部11a〜11dのそれぞれを接続する。このようにすることで、電動機を、速度制御範囲を拡大しつつ動作させることができる。
【0110】
また、4つのインバータ部11a〜11dに対して2台の電動機を接続するようにしてもよい。この場合、電動機として、第1および第2の3相巻線を有する二重巻線電動機を2つ用いる。そして、一方の電動機に対してインバータ部11a、11bを接続し、他方の電動機に対してインバータ部11c、11dを接続する。このようにすることで、2台の電動機を速度制御範囲を拡大しつつ動作させることができる。
【0111】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置について説明する。第3の実施形態に係る電流形インバータ装置1Cは、4つのインバータ部11a〜11dにより電動機3a〜3dを同一回転速度で動作させるものであるが、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置は、6つのインバータ部により6台の電動機を同一回転速度で動作させる。なお、以下においては、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置1Cと異なる点を中心に説明し、上述した実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略する。
【0112】
図12は、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。図12に示すように、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置1Dは、直流電流源7と、6つのインバータ部11a〜11fと、直流母線切替部15Dと、制御部16Dとを備える。
【0113】
各インバータ部11a〜11fには個別に電動機3a〜3fが接続される。なお、インバータ部11a〜11fは同一構成であり、例えば、図3に示すように構成される。また、電動機3a〜3fも同一構成である。
【0114】
直流母線切替部15Dは、スイッチSW11〜SW25(切替器の一例)を備え、制御部16Dから出力される切替信号S11〜S25に基づき、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11fの接続を、直列接続、3直列2並列接続、2直列3並列接続、並列接続の4つの状態に切り替える。3直列2並列接続は、並列接続された2台の電動機の組が3つ直列に接続された状態であり、2直列3並列接続は、並列接続された3つの電動機の組が2つ直列に接続された状態である。
【0115】
スイッチSW11〜SW25は、スイッチング素子とダイオードとの直列接続回路により構成される。なお、スイッチング素子は、例えば、IGBTやMOSFETなどの半導体素子である。以下、直列2並列接続の状態を3直列2並列接続モードと呼び、2直列3並列接続の状態を2直列3並列接続モードと呼ぶ。
【0116】
スイッチSW11〜SW19は、第3実施形態にかかる直流母線切替部15Cと同様の接続である。また、スイッチSW20、SW23は、インバータ部11d〜11fの正側入力端子P4〜P6間を接続するスイッチであり、スイッチSW21、SW24は、インバータ部11d〜11fの負側入力端子N4〜N6間を接続するスイッチである。また、スイッチSW22、SW25は、インバータ部11d〜11fの極性の異なる入力端子間を接続するスイッチである。
【0117】
スイッチSW20は、インバータ部11dの正側入力端子P4とインバータ部11eの正側入力端子P5との間に接続される。スイッチSW23は、インバータ部11eの正側入力端子P5とインバータ部11fの正側入力端子P6との間に接続される。スイッチSW21は、インバータ部11dの負側入力端子N4とインバータ部11eの負側入力端子N5との間に接続される。スイッチSW24は、インバータ部11eの負側入力端子N5とインバータ部11fの負側入力端子N6との間に接続される。スイッチSW22は、インバータ部11dの負側入力端子N4とインバータ部11eの正側入力端子P5との間に接続される。スイッチSW25は、インバータ部11eの正側入力端子P5とインバータ部11fの負側入力端子N6との間に接続される。
【0118】
制御部16Dは、速度演算器21と、切替速度設定器23Dと、切替判別器29Dとを備える。なお、図示していないが、制御部16Dは、制御部16と同様に、インバータ制御器25、定出力制御器26、コンバータ電圧指令器27およびコンバータ制御器28を備える。
【0119】
速度演算器21は、位置検出器4らの回転子位相θに基づいて電動機3a〜3fの回転速度Ndetを演算する。切替速度設定器23Dは、第1回転速度設定値Ns1、第2回転速度設定値Ns2および第3回転速度設定値Ns3を切替判別器29Dへ出力する。切替判別器29Dは、速度演算器21から出力される回転速度Ndetと切替速度設定器23Dから出力される第1回転速度設定値Ns1、第2回転速度設定値Ns2および第3回転速度設定値Ns3を比較し、比較結果に基づいた切替信号S11〜S25を出力する。
【0120】
具体的には、切替判別器29Dは、回転速度Ndetが第1回転速度設定値Ns1未満であれば、直列接続モードの切替信号S11〜S25を出力する。また、切替判別器29Dは、回転速度Ndetが第1回転速度設定値Ns1以上第2回転速度設定値Ns2未満であれば、3直列2並列接続モードの切替信号S11〜S25を出力する。
【0121】
また、切替判別器29Dは、回転速度Ndetが第2回転速度設定値Ns2以上第3回転速度設定値Ns3未満であれば、2直列3並列接続モードの切替信号S11〜S25を出力する。さらに、切替判別器29Dは、回転速度Ndetが第3回転速度設定値Ns3以上であれば、並列接続モードの切替信号S11〜S25を出力する。切替信号S11〜S25はそれぞれスイッチSW11〜SW25を動作させるための信号である。
【0122】
図13は、電流形インバータ装置1Dにおける接続モードとスイッチの状態と電動機3a〜3fの結合状態との関係を示す図である。図13は、図9に対応する図であり、各接続モードでのスイッチSW11〜SW25の状態と電動機3a〜3fの結合状態が示される。
【0123】
図13に示すように、直列接続モードでは、スイッチSW13、SW16、SW19、SW22、SW25がオン状態であり、その他のスイッチSW11、SW12、SW14、SW15、SW17、SW18、SW20、SW21、SW23、SW24がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対して、電動機3a〜3fが6つのインバータ部11a〜11fを介して直列に接続される。
【0124】
また、3直列2並列接続モードでは、スイッチSW11、SW12、SW16〜SW18、SW22〜SW24がオン状態であり、その他のスイッチSW13〜SW15、SW19〜SW21、SW25がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bを介してそれぞれ並列に接続された電動機3a、3bの組とインバータ部11c、11dを介してそれぞれ並列に接続された電動機3c、3dの組とインバータ部11e、11fを介してそれぞれ並列に接続された電動機3d、3eの組とが直列に接続される。
【0125】
また、2直列3並列接続モードでは、スイッチSW11、SW12、SW14、SW15、SW19〜SW21、SW23、SW24がオン状態であり、その他のスイッチSW13、SW16〜SW18、SW22、SW25がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a〜11cを介してそれぞれ並列に接続された電動機3a〜3cの組とインバータ部11d〜11fを介してそれぞれ並列に接続された電動機3d〜3fの組とが直列に接続される。
【0126】
また、並列接続モードでは、スイッチSW11、SW12、SW14、SW15、SW17、SW18、SW20、SW21、SW23、SW24がオン状態であり、その他のスイッチSW13、SW16、SW19、SW22、SW25がオフ状態である。これにより、コンバータ部10に対して、電動機3a〜3fが6つのインバータ部11a〜11fを介して並列に接続される。
【0127】
図14は、電流形インバータ装置1Dの特性を示す図であり、具体的には、直流母線電圧Vpn、出力有効電力Pおよびトルクτと、電動機3a〜3fの回転速度との関係を示す図である。
【0128】
また、図14においては電動機3a〜3fの回転速度が第1回転速度設定値Ns1未満である領域を低速領域とし、電動機3a〜3fの回転速度が第1回転速度設定値Ns1以上第2回転速度設定値Ns2未満である領域を第1中速領域としている。また電動機3a〜3fの回転速度が第2回転速度設定値Ns2以上第3回転速度設定値Ns3未満である領域を第2中速領域としている。電動機3a〜3fの回転速度が第3回転速度設定値Ns3以上である領域を高速領域としている。
【0129】
図14に示すように、電流形インバータ装置1Dは、低速領域では、直列接続モードで動作し、第1中速領域では、3直列2並列接続モードで動作し、第2中速モードでは、2直列3並列接続モードで動作し、高速領域では、並列接続モードで動作する。
【0130】
低速領域のうち、電動機3a〜3fの回転速度が基底回転速度値Nbase未満である領域では、制御部16Dは、定トルク制御を行う。一方、低速領域のうち、電動機3a〜3fの回転速度が基底回転速度値Nbase以上である領域では、制御部16Dは、定出力制御を行う。また、第1中速領域、第2中速領域および高速領域では、制御部16Dは、定出力制御を行う。
【0131】
図14に示すように、直列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Ns1であり、3直列2並列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Ns2であり、2直列3並列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Ns3であり、並列接続モードにおける最大制御速度は回転速度Nmaxである。
【0132】
したがって、直列接続モード、3直列2並列接続モード、2直列3並列接続モードおよび並列接続モードを切り替え、各切り替えにて界磁弱め制御を解除することによって、電動機3a〜3fの速度制御範囲を回転速度Nmaxまでとでき、これらのモードを切り替えない場合に比べて、直流電流源7の容量を出力有効電力Pに基づく容量に抑えつつ速度制御範囲を拡大することができる。なお、図14において、Vpn1は、3直列2並列接続モードにおいて界磁弱め制御が行われない場合の直流母線電圧Vpnであり、Vpn2は、2直列3並列接続モードにおいて界磁弱め制御が行われない場合の直流母線電圧Vpnであり、また、Vpn3は、並列接続モードにおいて界磁弱め制御が行われない場合の直流母線電圧Vpnである。
【0133】
直列接続モードと3直列2並列接続モードとの切り替え制御、3直列2並列接続モードと2直列3並列接続モードとの切り替え制御、および、2直列3並列接続モードと並列接続モードとの切り替え制御は、第1の実施形態に係る接続モードの切り替え制御と同様の制御である。
【0134】
例えば、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1に達した場合、制御部16Dは、d軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻すことにより、電動機3a〜3fの界磁を強め、q軸電流指令値をNbase/Ns1倍することで制限する。これにより、直列接続モードから3直列2並列接続モードへの切り替えの前後で電動機3a〜3fの出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。
【0135】
また、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns2に達した場合、制御部16Dがd軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻すことにより、電動機3a〜3fの界磁を強め、q軸電流指令値をNs1/Ns2倍することで制限する。これにより、3直列2並列接続モードから2直列3並列接続モードへの切り替えの前後で電動機3a〜3fの出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。
【0136】
また、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns3に達した場合、制御部16Dがd軸弱め界磁電流指令値Idrcをゼロに戻すことにより、電動機3a〜3fの界磁を強め、q軸電流指令値をNs2/Ns3倍することで制限する。これにより、2直列3並列接続モードから並列接続モードへの切り替えの前後で電動機3a〜3fの出力トルクτは変化せず、出力有効電力Pも一定値のまま変化しない。
【0137】
以上のように、第4の実施形態に係る電流形インバータ装置1Dでは、インバータ部11を6つとし、直列接続モード、3直列2並列接続モード、2直列3並列接続モードおよび並列接続モードを切り替えて実行する。そのため、第3の実施形態に係る電流形インバータ装置1Cに比べ、速度制御範囲をさらに拡大することができる。
【0138】
なお、図12に示す例では、6つのインバータ部11a〜11fに対して6台の電動機3a〜3fを接続したが、6つのインバータ部11a〜11fに対して1台の電動機を接続するようにしてもよい。この場合、電動機として、第1〜第6の3相巻線を有する六重巻線電動機を用いる。そして、各3相巻線に対してインバータ部11a〜11fのそれぞれを接続する。このようにすることで、電動機を、速度制御範囲を拡大しつつ動作させることができる。
【0139】
また、6つのインバータ部11a〜11fに対して3台の電動機を接続するようにしてもよい。この場合、電動機として、第1および第2の3相巻線を有する二重巻線電動機を3つ用いる。そして、2つのインバータ部11の組に対して電動機を接続する。このようにすることで、3台の二重巻線電動機を、速度制御範囲を拡大しつつ動作させることができる。
【0140】
また、6つのインバータ部11a〜11fに対して2台の電動機を接続するようにしてもよい。この場合、電動機として、第1〜第3の3相巻線を有する三重巻線電動機を2つ用いる。そして、3つずつのインバータ部11の組に対して電動機を接続する。このようにすることで、2台の三重巻線電動機を、速度制御範囲を拡大しつつ動作させることができる。
【0141】
なお、上述においては、インバータ部11が2つ、4つ、6つの場合について説明したが、電動機は、3台であってもよく、また、8台以上であってもよい。例えば、インバータ部11が8つの場合、直列接続モード、4直列2並列接続モード、2直列4並列接続モードおよび並列接続モードの切り替えが実行される。また、インバータ部11が9つの場合、直列接続モード、3直列3並列接続モードおよび並列接続モードの切り替えが実行される。
【0142】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る電流形インバータ装置について説明する。第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1、1Aは、低速領域において直列接続モードで動作し、高速領域において並列接続モードで動作する。一方、第5の実施形態に係る電流形インバータ装置は、電動機3の回転速度が基底回転速度値Nbase以上かつ回転速度設定値Ns1未満の速度範囲を中速領域とし、コンバータ部に対するインバータ部の接続を直列と並列とに交互に接続することで、高効率となる速度領域を拡大する。
【0143】
なお、以下においては、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1、1Aと異なる点を中心に説明し、上述した実施形態と同様の機能を有する構成要素については同一符号を付して説明を省略する。また、後述する図18および図19においては、電動機3の巻線インピーダンスの電圧降下は無視している。
【0144】
図15は、第5の実施形態に係る電流形インバータ装置の構成を示す図である。図15に示す電流形インバータ装置1Eの制御部16Eは、比較器12(図1参照)に代えて切替信号生成器20を有し、また、インバータ制御器25Eの動作が電流形インバータ装置1のインバータ制御器25と異なる。
【0145】
切替信号生成器20は、速度演算器21から出力される回転速度Ndetと切替速度設定器23から出力される回転速度設定値Ns1とに基づいて、切替信号Spを生成する。NOT回路24は、切替信号Spのレベルを反転して切替信号Snとして出力する。そして、切替信号Spは、スイッチSW1、SW2に入力され、切替信号Snは、スイッチSW3に入力される。
【0146】
切替信号生成器20は、回転速度Ndetに応じたオン比率の切替信号Spを出力する。図16は、回転速度Ndet、切替信号Spのオン比率Trp、および、切替信号Snのオン比率Trnとの関係を示す図である。オン比率Trpは、切替信号SpにおけるHighレベルの期間の比であり、オン比率Trnは、切替信号SnにおけるHighレベルの期間の比である。
【0147】
図16に示すように、回転速度Ndetが基底回転速度値Nbase未満である場合、切替信号生成器20は、オン比率Trpが0%であるLowレベルの切替信号Spを出力する。一方、回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1以上である場合、切替信号生成器20は、オン比率Trpが100%であるHighレベルの切替信号Spを出力する。
【0148】
回転速度Ndetが基底回転速度値Nbase以上で回転速度設定値Ns1未満である場合、回転速度Ndetが速くなるほど、100%に近づくようにオン比率Trpが設定される。図17は、切替信号Sp、Snの波形の一例を示す図である。図17に示すように、切替信号Spは周期TC毎にLowレベルとなるオン期間TLとHighレベルとなるオフ期間THが設定され、切替信号Snは周期TC毎にHighレベルとなるオン期間TLとLowレベルとなるオフ期間THが設定される。切替信号Spのオン比率Trpは、TL/TCで表され、切替信号Snのオン比率Trnは、TH/TCで表される。
【0149】
切替信号Spのオン比率Trpが0%である場合、切替信号Snのオン比率Trnは100%であり、スイッチSW1、SW2がオフになり、スイッチSW3がオンになる。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが直列に接続される直列接続モードにより電動機3が制御される。
【0150】
また、切替信号Spのオン比率Trpが100%である場合、切替信号Snのオン比率Trnは0%であり、スイッチSW1、SW2がオンになり、スイッチSW3がオフになる。これにより、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが並列に接続される並列接続モードにより電動機3が制御される。
【0151】
また、0%<Trp(=1−Trn)<100%の場合、オン比率Trpに応じた時間だけHighになる切替信号Spが切替信号生成器20から出力される。また、NOT回路24により、オン比率Trnに応じた時間だけHighになる切替信号SnがNOT回路24から出力される。
【0152】
これにより、オン比率Trnに応じた時間だけコンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが直列接続状態になり、オン比率Trpに応じた時間だけコンバータ部10に対してインバータ部11a、11bが並列接続状態になるスイッチング制御が周期TC毎に繰り返し行われる。
【0153】
図18は、電動機3を加速した場合のスイッチSW1〜3のオン比率、直列接続状態および並列接続状態の時比率の関係を示す図である。図18に示すように、電動機3を加減速する場合には、直列接続状態の時比率および並列接続状態の時比率が0%と100%との間で連続して変化する。
【0154】
また、インバータ制御器25Eは、Nbase<Ndet<Ns1の範囲において、d軸電流指令を第1の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Nbase+Ns1)/(2Ns1)倍に制限する。
【0155】
このような制御により第5の実施形態に係る電流形インバータ装置1Eでは、図19に示すように特性が変化する電動機を仮想的に運転している場合と同等に電動機3を運転することが可能となる。図19は、電動機3の回転速度Ndetと出力有効電力Pとの関係を示す図である。
【0156】
このように、第5の実施形態に係る電流形インバータ装置1Eは、電動機3の回転速度に応じた時比率で、コンバータ部10に対してインバータ部11a、11bの接続状態を直列接続状態と並列接続状態とで交互に切り替えるスイッチング制御を行うことによって、高効率領域を拡大することができる。
【0157】
なお、第5の実施形態の上記例では、第1の実施形態に係る電流形インバータ装置1、1Aからの変更点について説明したが、上述した電流形インバータ装置1B〜1Dについても同様の処理により、高効率領域を拡大することができる。例えば、電流形インバータ装置1Bにおいて、上述した切替信号生成器20を設け、上述したインバータ制御器25Eと同様の制御を行うことで高効率領域を拡大することができる。
【0158】
また、電流形インバータ装置1Cにおいては、切替判別器29により、電動機3の回転速度Ndetに応じて、接続モードを交互に切り替えるスイッチング制御を行うことによって高効率となる速度領域を拡大することができる。
【0159】
具体的には、Nbase<Ndet<Ns1の速度範囲において、切替判別器29は、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11dの接続状態を直列接続モードと2直列2並列接続モードとに交互に接続するスイッチング制御を行う。このスイッチング制御では、d軸電流指令を第3の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Nbase+Ns1)/(2Ns1)倍に制限する。
【0160】
また、Ns1<Ndet<Ns2の速度範囲において、切替判別器29が、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11dの接続状態を2直列2並列接続モードと並列接続モードに交互に接続するスイッチング制御を行う。このスイッチング制御では、d軸電流指令を第3の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns2のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Ns1+Ns2)/(2Ns1)倍に制限する。
【0161】
また、電流形インバータ装置1Dにおいては、切替判別器29Dにより、電動機3の回転速度Ndetに応じて、接続モードを交互に切り替えるスイッチング制御を行うことによって高効率となる速度領域を拡大することができる。
【0162】
具体的には、Nbase<Ndet<Ns1の速度範囲において、切替判別器29Dは、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11fの接続状態を直列接続モードと3直列2並列接続モードとに交互に接続するスイッチング制御を行う。このスイッチング制御では、d軸電流指令を第4の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns1のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Nbase+Ns1)/(2Ns1)倍に制限する。
【0163】
また、Ns1<Ndet<Ns2の速度範囲において、切替判別器29Dは、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11fの接続状態を3直列2並列接続モードと2直列3並列接続モードに交互に接続するスイッチング制御を行う。このスイッチング制御では、d軸電流指令を第4の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns2のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Ns1+Ns2)/(2Ns2)倍に制限する。
【0164】
また、Ns2<Ndet<Ns3の速度範囲において、切替判別器29Dは、直流電流源7に対するインバータ部11a〜11fの接続状態を2直列3並列接続モードと並列接続モードに交互に接続するスイッチング制御を行う。このスイッチング制御では、d軸電流指令を第4の実施形態にて回転速度Ndetが回転速度設定値Ns3のとき界磁弱め制御を解除する直前のd軸電流指令の半分とし、q軸電流指令を(Ns2+Ns3)/(2Ns3)倍に制限する。
【0165】
なお、上述した第1〜第5の実施形態に係る電流形インバータ装置1、1A〜1E等は、例えば、2以上の電動機を備えた電気鉄道車両、電気自動車、ハイブリッド自動車などのように広い速度制御範囲が必要とされる装置に対して適用することができる。
【0166】
また、上述の実施形態では、電動機3の回転速度を検出し、かかる検出結果に応じて接続モードを切り替えるものとして説明したが、結果的に電動機3の回転速度に応じて接続モードの切り替えを行えればよい。したがって、インバータ部11の出力電圧や出力電流を検出して接続モードの切り替えを行う場合も電動機3の回転速度に応じた制御に当然に含まれる。
【0167】
また、上述の実施形態では、電動機3を永久磁石式同期電動機としたが、界磁を弱める際に励磁電流(d軸電流)を増加させることが必要な電動機であればよい。
【0168】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0169】
1、1A〜1E 電流形インバータ装置
2 3相交流電源
3、3a〜3f 3相交流電動機
4 位置検出器
7 直流電流源
10 コンバータ部
11、11a〜11f インバータ部
12a〜12f 直流リアクトル
13 電流検出部
15、15C、15D 直流母線切替部
16、16B、16C、16D、16E 制御部
20 切替信号生成器
21 速度演算器
22 比較器
23、23C、23D 切替速度設定器
24 NOT回路
25、25E インバータ制御器
26 定出力制御器
27 コンバータ電圧指令器
28 コンバータ制御器
29、29D 切替判別器
SW1〜3、SW11〜25 スイッチ
図1
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