(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下部走行体と、該下部走行体上に旋回自在に搭載されたアッパーフレームを有する上部旋回体と、該上部旋回体のエンジンルーム内に収容され且つ複数のエンジンブラケットによって支持されたエンジンとを備え、該エンジンルームの外部から導入されて該エンジンを冷却した後の空気を該エンジンルームの外部に排気させるための建設機械の排気構造であって、
前記アッパーフレームは、前記エンジンルーム内に連通する開口孔が形成された底板と、該底板に立設されて前後方向に延びる左右一対の縦板と、該底板に立設されて該一対の縦板同士を連結する横梁とを有し、
前記エンジンルームには、該エンジンルーム内の空気を取り込む取込口と、該取込口から取り込んだ空気を前記開口孔に向かって排出する排気口とを有する排気ダクトが配設され、
前記複数のエンジンブラケットのうち少なくとも1つは、
互いに間隔をあけて立設された一対の板材で形成され、基端部が前記排気ダクト内で前記アッパーフレームに溶接される一方、基端部から先端部にかけて、該排気ダクトに形成された切り欠き部に向かって延びることで、先端部が該排気ダクトの外側に突出した一対のエンジン支持脚と、
前記一対のエンジン支持脚の先端部に跨がって連結されて前記エンジンを載置させるエンジン台座板と、
前記排気ダクトの切り欠き部を塞ぐように配設され且つ前記一対のエンジン支持脚同士を連結する補強板とを有することを特徴とする建設機械の排気構造。
【背景技術】
【0002】
従来より、下部走行体と、下部走行体上に旋回自在に搭載された上部旋回体と、上部旋回体のエンジンルーム内に搭載されたエンジンとを備えた建設機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の建設機械では、上面側に空気導入口が形成され且つ下面側に空気排出口が形成された排気ダクトをエンジンルーム内に配置することで、エンジンルーム外部から導入されてエンジンを冷却した後の空気を、エンジンルームから排気ダクトを通って下向きに排気している。
【0004】
ここで、エンジンは、例えば特許文献2に示すように、縦板や横梁に溶接された門型のエンジン用マウント部材(エンジンブラケット)に支持されている。なお、特許文献2には具体的に開示されていないが、通常、エンジンブラケットの一対の支持脚の間には、剛性を確保するために、支持脚同士を連結する補強板が溶接されている。補強板は、エンジンブラケットの基端部から先端部に向かって傾斜して延びている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の建設機械では、排気ダクト内の空気の流れをエンジンブラケットが阻害してしまうという問題がある。具体的に、特許文献1の排気ダクトは、エンジンルーム内において、アッパーフレームの横梁寄りの位置に配設されている。そのため、特許文献2のエンジンブラケットの基端部は、排気ダクト内で横梁に溶接されることとなる。
【0007】
ここで、エンジンブラケットの補強板が基端部から先端部に向かって傾斜して延びていると、排気ダクト内の空気流路の一部、つまり、エンジンブラケットの一対の支持脚の間が補強板によって塞がれた状態となるため、補強板によって排気ダクトの空気の流れが阻害されてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンブラケットの形状を工夫することで、エンジンルームから排気ダクトを通って下向きに排出される空気の流れが阻害されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下部走行体と、該下部走行体上に旋回自在に搭載されたアッパーフレームを有する上部旋回体と、該上部旋回体のエンジンルーム内に収容され且つ複数のエンジンブラケットによって支持されたエンジンとを備え、該エンジンルームの外部から導入されて該エンジンを冷却した後の空気を該エンジンルームの外部に排気させるための建設機械の排気構造を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明は、前記アッパーフレームは、前記エンジンルーム内に連通する開口孔が形成された底板と、該底板に立設されて前後方向に延びる左右一対の縦板と、該底板に立設されて該一対の縦板同士を連結する横梁とを有し、
前記エンジンルームには、該エンジンルーム内の空気を取り込む取込口と、該取込口から取り込んだ空気を前記開口孔に向かって排出する排気口とを有する排気ダクトが配設され、
前記複数のエンジンブラケットのうち少なくとも1つは、
互いに間隔をあけて立設された一対の板材で形成され、基端部が前記排気ダクト内で前記アッパーフレームに溶接される一方、基端部から先端部にかけて、該排気ダクトに形成された切り欠き部に向かって延びることで、先端部が該排気ダクトの外側に突出した一対のエンジン支持脚と、
前記一対のエンジン支持脚の先端部に跨がって連結されて前記エンジンを載置させるエンジン台座板と、
前記排気ダクトの切り欠き部を塞ぐように配設され且つ前記一対のエンジン支持脚同士を連結する補強板とを有することを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明では、一対のエンジン支持脚の基端部が排気ダクト内でアッパーフレームに溶接され、基端部から先端部にかけて、排気ダクトの切り欠き部に向かって延びることで、先端部が排気ダクトの外側に突出している。一対のエンジン支持脚同士は、排気ダクトの切り欠き部を塞ぐように配設された補強板によって連結されている。
【0012】
このような構成とすれば、エンジンルームから排気ダクトを通って下向きに排出される空気の流れが補強板によって阻害されないようにして、排気ダクト内で空気をスムーズに流通させることができる。
【0013】
具体的に、エンジンブラケットの基端部は、排気ダクト内でアッパーフレームに溶接されているが、エンジンブラケットの先端部にはエンジンマウントを介してエンジンが載置されるため、エンジンブラケットの先端部を排気ダクトの外側に突出させておく必要がある。そのため、排気ダクトには、エンジンブラケットの先端部を挿通させるための切り欠き部が形成されており、本発明では、エンジンブラケットの剛性を確保するための補強板を、排気ダクトの切り欠き部を塞ぐように配設している。
【0014】
これにより、エンジンブラケットの補強板を、剛性を確保するための剛性部材としてだけではなく、切り欠き部から空気が漏れ出さないように塞いで排気ダクトの一部を構成する閉塞部材としても兼用することができる。また、補強板が排気ダクト内を横切らないように配設されているので、排気ダクト内の空気の流れを阻害することはない。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、
前記補強板の下端縁は、側面視で該排気ダクトの内側に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明では、補強板の下端縁が側面視で排気ダクトの内側に配置されているので、補強板の下端縁と排気ダクトの切り欠き部との境界位置から空気が漏れ出すのを防止して、排気ダクトを通る空気を排気口に導くことができる。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、
前記補強板の上端縁は、側面視で前記排気ダクトの外側に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
第3の発明では、補強板の上端縁が側面視で排気ダクトの外側に配置されているので、補強板の全長をできる限り長くして剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エンジンブラケットの補強板を、剛性を確保するための剛性部材としてだけではなく、切り欠き部から空気が漏れ出さないように塞いで排気ダクトの一部を構成する閉塞部材としても兼用することができる。また、補強板が排気ダクト内を横切らないように配設されているので、排気ダクト内の空気の流れを阻害することはない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。各図には、上下や前後左右の方向を矢印で示してある。特に言及しない限り、上下等の方向についてはこれら矢印で示す方向に従って説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る建設機械の構成を示す側面図である。
図1に示すように、この建設機械10は、後方小旋回型の小型機種であり、クローラ式の下部走行体11と、下部走行体11上に旋回自在に搭載された上部旋回体12とを備えている。
【0023】
上部旋回体12の後側には、エンジン25等を収容するためのエンジンルーム15が設けられている。上部旋回体12の右側には、図示しない燃料タンクや作動油タンク等を収容するための側部機械室16が設けられている。上部旋回体12の左側には、運転シートや操作レバー等を備えた操作スペース17が配置され、上部旋回体12の上側には、操作スペース17の上方を覆うようにフード18が設置されている。
【0024】
上部旋回体12の前側には、起伏自在で且つ左右方向に揺動自在に支持されたアタッチメント13が取り付けられている。アタッチメント13は、掘削作業等を行うためのものであり、基端部がスイングブラケット14を介して上部旋回体12のフロントブラケット29に回動可能に取り付けられたブーム13aと、ブーム13aの先端側に回動可能に取り付けられたアーム13bと、アーム13bの先端側に回動可能に取り付けられたバケット13cとを有する。
【0025】
この建設機械10では、操作レバー等を操作することにより、ブーム13a、アーム13b、及びバケット13cにそれぞれ対応する油圧シリンダ13dを伸縮させることで、アタッチメント13を起伏自在に動かすことができる。また、図示しないスイングシリンダを伸縮させることで、アタッチメント13を左右方向に揺動自在に動かすことができる。
【0026】
上部旋回体12の後部には、動作するアタッチメント13に対して前後のバランスを保持するために、高重量のカウンタウエイト19が設置されている。上部旋回体12のアッパーフレーム20は、円環状の旋回ベアリング24を介して下部走行体11に旋回可能に支持されている。
【0027】
図2に示すように、アッパーフレーム20は、底板21と、底板21に立設されて前後方向に延びる左右一対の縦板22と、一対の縦板22同士を連結する横梁23とを備えている。
【0028】
底板21には、アッパーフレーム20の後部に設けられたエンジンルーム15内に連通する開口孔21aが形成されている。開口孔21aは、エンジンルーム15に配設されたエンジン25を臨むように開口しており、エンジン25をメンテナンスするための作業孔として利用される。
【0029】
一対の縦板22は、アッパーフレーム20の左右方向における中央部位に配置されており、前後方向の強度及び剛性を強化している。縦板22の前部には、動作するアタッチメント13の荷重を受け止めるフロントブラケット29が取り付けられている。一対の縦板22は、前端部から中央部までは後側に向かって次第に離れるようにV字状に配置され、中央部から後端部までは前後方向に平行に延びて配置されている。
【0030】
横梁23は、底板21に立設されて左右方向に延びることで一対の縦板22同士を連結している。横梁23は、前後方向に間隔をあけて複数設けられており、左右方向の強度及び剛性を強化している。
【0031】
エンジンルーム15内には、右側から順に、エンジン冷却用のラジエータやオイルクーラ等の熱交換器50と、送風ファン51と、エンジン25とが配設されている。
【0032】
ここで、送風ファン51を駆動させると、エンジンルーム15のカバーに形成された図示しない吸気口から外気が導入されて熱交換器50で熱交換される。熱交換された後の空気は、エンジン25に向かって吹き出されることでエンジン25の冷却に利用される。エンジンルーム15内には、排気ダクト40が配設されており、エンジン25を冷却した後の空気は、
図2で矢印で示すように、排気ダクト40の取込口40aに向かって流れる。排気ダクト40は、一対の縦板22間に配設されて左右方向の略全幅にわたって延びている。
【0033】
図3に示すように、排気ダクト40は、前面壁41と、左右一対の側面壁42と、後面壁43とを有している。
【0034】
前面壁41は、後ろから2番目の横梁23の後面に取り付けられている。左右の側面壁42は、前面壁41と一体に形成されており、前面壁41の左右両端縁から後方に向かって延びている。左側の側面壁42には、後述する排気管27を挿通させる挿通孔42aが形成されている。
【0035】
後面壁43は、前面壁41及び側面壁42とは別体に形成されており、後述するエンジンブラケット30のダクト取付部31aに取り付けられている。後面壁43には、上方に開口するように切り欠かれた切り欠き部43aが形成されている。また、切り欠き部43aを挟んで左右両側には、取付孔43bが形成されている。前面壁、左右の側面壁42、及び後面壁43の内面には、断熱材45が取り付けられている(
図4参照)。
【0036】
このように、前面壁41、左右の側面壁42、及び後面壁43がアッパーフレーム20に取り付けられることにより、排気ダクト40の上面側に取込口40aが開口し、排気ダクト40の下面側に排気口40bが開口している。
【0037】
ここで、後面壁43の下部側は、後面壁43の上部側よりも後方に膨出しており、平面視で後面壁43の下端部が底板21の開口孔21aの一部に重なり合っている。これにより、排気ダクト40の上面側の取込口40aから取り込まれた空気は、排気ダクト40の下面側の排気口40bから開口孔21aを通ってエンジンルーム15外部に排出される。
【0038】
図4に示すように、エンジン25には、消音器26が接続されている。消音器26の排気下流側には、排気管27が接続されている。排気管27は、排気ダクト40内に配設され、横梁23に沿って車幅方向に延びている。排気管27の先端部は、右側の縦板22に取り付けられた保持ブラケット28に保持されている。
【0039】
排気管27の外周面には、底板21の開口孔21aに向かって排気ガスを排出するために、車両後側に向かって斜め下方に開口した吹出孔27aが複数形成されている(
図7参照)。排気管27の吹出孔27aから吹き出された高温の排気ガスは、その大部分が開口孔21aを通って底板21の下方に排出される。つまり、エンジンルーム15から排気ダクト40に取り込まれた空気は、排気ダクト40内で排気ガスと合流して排気ガスとともに下向きに排出される。
【0040】
図2に示すように、エンジン25は、四隅に配設されたエンジンブラケット30によって支持されている。具体的に、左前部及び左後部のエンジンブラケット30は、左側の縦板22に溶接されている。右後部のエンジンブラケット30は、後ろから1番目の横梁23に溶接されている。右前部のエンジンブラケット30は、後ろから2番目の横梁23に溶接されている。以下、この右前部のエンジンブラケット30の構造についてのみ説明する。
【0041】
図4〜
図7に示すように、右前部のエンジンブラケット30は、車幅方向に間隔をあけて立設された一対のエンジン支持脚31と、一対のエンジン支持脚31の上部に跨がってエンジン25が載置されるエンジン台座板32と、一対のエンジン支持脚31同士を連結する補強板33とを有している。
【0042】
エンジン支持脚31は、基端部が排気ダクト40内でアッパーフレーム20に溶接されている。具体的には、エンジン支持脚31の下縁部が底板21の上面に溶接されるとともに、エンジン支持脚31の前側の側縁部が横梁23の後側の面に溶接されている。エンジン支持脚31は、基端部から先端部にかけて、排気管27の下方を通って延びた後、排気ダクト40に形成された切り欠き部43aに向かって上方に延びることで、先端部が排気ダクト40の外側に突出している。
【0043】
エンジン支持脚31の側壁面には、車幅方向外方に突出するダクト取付部31aが設けられている。排気ダクト40の後面壁43は、ダクト取付部31aの後面に当接された状態で、締結ボルト46及び締結ナット47によってダクト取付部31aに共締めされている。
【0044】
エンジン台座板32は、一対のエンジン支持脚31に跨るようにその上部に溶接されている。これにより、エンジンブラケット30は、その断面が門型となっている。
【0045】
一対のエンジン支持脚31の間には、補強板33が配設されている。具体的に、補強板33は、排気ダクト40の切り欠き部43aを塞ぐように、車両後側に向かって斜め下方に傾斜した状態で配設されている。補強板33の両端部は、一対のエンジン支持脚31に溶接されてエンジン支持脚31同士を連結している。
【0046】
このような構成とすれば、エンジンブラケット30の補強板33を、剛性を確保するための剛性部材としてだけではなく、切り欠き部43aから空気が漏れ出さないように塞いで排気ダクト40の一部を構成する閉塞部材としても兼用することができる。また、補強板33が排気ダクト40内を横切らないように配設されているので、排気ダクト40内の空気の流れを阻害することはない。
【0047】
ここで、補強板33の下端縁は、側面視で排気ダクト40の内側に配置されている。これにより、排気ダクト40内を流れる空気は、補強板33に沿って斜め下方に導かれながら排気口40bから排出されるため、補強板33の下端縁と排気ダクト40の切り欠き部43aとの境界位置から空気が漏れ出すのを防止することができる。
【0048】
また、補強板33の上端縁は、側面視で排気ダクト40の外側に配置されている。これにより、補強板33の全長をできる限り長くして剛性を高めることができる。
【0049】
一対のエンジン支持脚31の間には、遮熱板35が配設されている。具体的には、
図7に示すように、排気管27から吹き出される排気ガスの排気通路に重なり合う位置に、遮熱板35が配設されている。
【0050】
底板21と遮熱板35との間には、スペーサ部材36が挟み込まれている。スペーサ部材36は、底板21の上面に溶接されている。遮熱板35は、締結ボルト37によってスペーサ部材36に締結固定されている。これにより、排気管27から吹き出された排気ガスが底板21に直接吹き付けられるのを防止している。
【0051】
また、右側の縦板22と右側のエンジン支持脚31との間、及び左側の縦板22と左側のエンジン支持脚31との間には、底板21の上面に断熱材45が配設されている(
図4及び
図6参照)。これにより、一対のエンジン支持脚31の外側に位置する底板21に対して排気ガスが直接吹き付けられないようにしている。