特許第5733412号(P5733412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733412
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】質量分析データ解析方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20060101AFI20150521BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N27/62 D
   G01N27/62 V
   H01J49/26
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-537365(P2013-537365)
(86)(22)【出願日】2011年10月7日
(86)【国際出願番号】JP2011073196
(87)【国際公開番号】WO2013051148
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2014年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 弘明
(72)【発明者】
【氏名】山口 真一
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−064285(JP,A)
【文献】 特開平08−124519(JP,A)
【文献】 特開2006−017570(JP,A)
【文献】 特開2007−287531(JP,A)
【文献】 特開2005−201835(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/065704(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/059568(WO,A1)
【文献】 西岡 孝明,「代謝物質のマススペクトルデータベース」,和漢医薬学総合研究所年報,2008年 3月31日,Vol. 34,p. 5-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
H01J 49/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CiNii
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造が既知である既知物質から部分的な構造変化が生じた未知物質に由来するプリカーサイオンを1又は複数段階に開裂させることで生成されたプロダクトイオンを質量分析して得られるMSnスペクトル(nは1以上の整数)に基づいて、前記未知物質の構造を推定する質量分析データ解析方法であって、
a)予め与えられる前記構造変化に伴って前記既知物質に付加され得る付加部分構造の情報を取得する付加部分構造情報取得ステップと、
b)予め与えられる前記既知物質の構造式情報と、前記付加部分構造情報取得ステップにより取得された付加部分構造の情報と、前記未知物質に対するMSnスペクトルを求める際に得られる該未知物質に由来するプリカーサイオンの質量情報と、に基づいて、前記構造変化に伴って前記既知物質から未知の脱離部分構造が脱離した後の脱離後構造式を推定する脱離後構造推定ステップと、
c)該脱離後構造推定ステップで挙げられた脱離後構造式候補について、その構造式で示される構造から抽出される基幹部分構造と前記付加部分構造とを組み合わせたときの質量と、前記未知物質に対するMSnスペクトルから得られるプロダクトイオンの質量との一致性を判断することにより、各プロダクトイオンの構造式を推定してプロダクトイオン構造式候補を挙げるプロダクトイオン構造推定ステップと、
d)該プロダクトイオン構造推定ステップにより推定された複数のプロダクトイオンに対するプロダクトイオン構造式候補に基づき、それら構造式候補を開裂によって生成し得る構造式を探索することにより未知物質の構造式を推定する未知物質構造推定ステップと、
を有することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項2】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
既知物質のMSnスペクトルが追加情報として与えられている場合に、前記プロダクトイオン構造推定ステップは、該既知物質のMSnスペクトルから判明する既知物質由来のプロダクトイオンと未知物質のMSnスペクトルから判明する未知物質由来のプロダクトイオンとを比較することで、既知物質のいずれの部位に付加部分構造が付加したのかを推定し、プロダクトイオン構造式の絞り込みを行うことを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項3】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
未知物質の組成式が追加情報として与えられている場合に、前記脱離後構造推定ステップは、未知物質の組成と前記付加部分構造の差から求まる脱離部分構造の組成を利用して、脱離後構造式候補の絞り込みを行うことを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項4】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
未知物質由来の少なくとも1つのプロダクトイオンの組成式又は構造式が追加情報として与えられている場合に、前記プロダクトイオン構造推定ステップは、その追加情報を利用して一部のプロダクトイオンの構造式推定を省略する又はプロダクトイオン構造式候補の絞り込みを行うことを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項5】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
前記脱離後構造推定ステップにより推定された脱離後構造式候補が複数ある場合に、その複数の脱離後構造式候補のそれぞれについて、前記プロダクトイオン構造推定ステップ及び前記未知物質構造推定ステップにより未知物質の構造式を推定し、複数の構造式候補を求めることを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項6】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
未知物質の複数の構造式候補について蓋然性の高い順に順位付けして該順位とともに構造式候補を出力することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項7】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
未知物質のMSnスペクトル中の特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして実行されたMSn+1分析で得られたMSn+1スペクトルに対し、前記各ステップを実行することで得られた推定構造式を未知物質の1つのプロダクトイオンの構造式候補とした上で未知物質の構造式を推定することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項8】
請求項1に記載の質量分析データ解析方法であって、
未知物質に対し異なる分析条件の下で取得された複数のMSnスペクトルを用いて前記各ステップにより未知物質の構造式の候補をそれぞれ求め、その結果の積を未知物質の構造式推定結果として出力することを特徴とする質量分析データ解析方法。
【請求項9】
構造が既知である既知物質から部分的な構造変化が生じた未知物質に由来するプリカーサイオンを1又は複数段階に開裂させることで生成されたプロダクトイオンを質量分析して得られるMSnスペクトル(nは1以上の整数)に基づいて、前記未知物質の構造を推定する質量分析データ解析装置であって、
a)予め与えられる前記構造変化に伴って前記既知物質に付加され得る付加部分構造の情報を取得する付加部分構造情報取得手段と、
b)予め与えられる前記既知物質の構造式情報と、前記付加部分構造情報取得手段により取得された付加部分構造の情報と、前記未知物質に対するMSnスペクトルを求める際に得られる該未知物質に由来するプリカーサイオンの質量情報と、に基づいて、前記構造変化に伴って前記既知物質から未知の脱離部分構造が脱離した後の脱離後構造式を推定する脱離後構造推定手段と、
c)該脱離後構造推定手段により挙げられた脱離後構造式候補について、その構造式で示される構造から抽出される基幹部分構造と前記付加部分構造とを組み合わせたときの質量と、前記未知物質に対するMSnスペクトルから得られるプロダクトイオンの質量との一致性を判断することにより、各プロダクトイオンの構造式を推定してプロダクトイオン構造式候補を挙げるプロダクトイオン構造推定手段と、
d)該プロダクトイオン構造推定手段により推定された複数のプロダクトイオンに対するプロダクトイオン構造式候補に基づき、それら構造式候補を開裂によって生成し得る構造式を探索することにより未知物質の構造式を推定する未知物質構造推定手段と、
を備えることを特徴とする質量分析データ解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、nが2以上であるMSn型の質量分析装置で得られるMSnスペクトルデータ又はインソース分解(ISD=In-source Decay)等を利用して得られるMS1スペクトルデータを解析処理して物質の化学構造を解析するデータ解析方法及び装置に関し、さらに詳しくは、構造が既知である物質から何らかの要因によって構造の一部が変化して生じた、或いは、構造が既知である物質とその構造の大部分が共通であって一部構造のみが相違するような未知物質の構造を推定するための質量分析データ解析方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タンパク質を始めとする各種高分子化合物の構造解析に、MSn分析が可能な質量分析装置が盛んに利用されている。即ち、試料中の目的物質由来のイオンを衝突誘起解離(CID=Collision Induced Dissociation)により開裂させると、結合エネルギーなどに依存する特定の部位で分子結合が切れ、様々なプロダクトイオンやニュートラルロスが発生する。そこで、試料から生成される各種イオンの中から目的物質に応じた特定の質量電荷比m/zを持つイオンを選択し、その選択したイオンをCIDにより開裂させ、開裂によって発生した各種プロダクトイオン(フラグメントイオン)を質量分析してMS2スペクトルを取得する。このMS2スペクトルには目的物質由来の各種断片(プロダクトイオン、ニュートラルロスを含む)に関する情報が含まれるから、MS2スペクトルデータを解析処理することによって目的物質の化学構造を推定することができる。また、1回のCID操作だけで充分に小さな質量電荷比までイオンが開裂しない場合には、CID操作を複数回繰り返して得られるnが3以上のMSnスペクトルを利用して目的物質の構造解析が行われることもある。
【0003】
一方、電子イオン化法(EI)等によるイオン源を搭載した質量分析装置では、インソース分解と呼ばれる手法により、MS1スペクトルにおいて試料成分由来のイオンを断片化したプロダクトイオンのピークを得ることができる。したがって、MSnスペクトルではなく、このように目的物質由来のプロダクトイオンが観測されているMS1スペクトルを利用して目的物質の構造解析が可能な場合もある。以下、プロダクトイオンが観測されているMS1スペクトルとnが2以上であるMSnスペクトルとを併せて単にMSnスペクトルという。
【0004】
MSnスペクトルを用いて未知物質の構造を推定する最も一般的な方法は、MSnスペクトルパターンの照合を利用したデータベース検索である。即ち、様々な既知化合物について、化合物名、分子量、組成式、構造式、MSnスペクトルパターンなどを同定用データベース(ライブラリということもある)に登録しておき、未知物質に対する実測MSnスペクトルが得られたならば、所定の検索条件の下でその実測MSnスペクトルとピークパターンが一致する又は類似している化合物をデータベース上で検索することにより、未知物質を特定しその構造式を導出する。こうした同定用データベースとしては、ユーザ自身が作成するもののほか、公的機関などが公開している各種の既存データベースも利用される。
【0005】
一般に上記のような同定用データベースに格納されるデータ量は膨大なものとなるが、それでも分析対象となる全ての化合物が漏れなく収録されているわけではない。例えば農薬、医薬品、或いはそうした物質に対して生体内で生成される代謝物等においては、化合物の基本骨格が共通していて一部の構造が置換された(例えばメチル基をエチル基に、塩素を臭素に置換した)だけの類似した化合物が多数存在する。こうした化合物全てを同定用データベースに収録しておくことは実際的に不可能である。そのため、こうした化合物についてデータベース検索を行っても、物質が同定されず構造式を決定することができないということがよくある。
【0006】
上記課題を解決するために、特許文献1に記載の質量分析データ解析方法では、構造が既知である既知物質に構造が類似していることが分かっている未知物質の構造を解析するに際し、既知物質、未知物質それぞれのMSnスペクトルに共通する質量電荷比m/zをもつピークに対するフラグメント予測結果と、既知の構造変化パターンとの組合せにより、未知物質の構造を推定するようにしている。上記構造変化パターンとは、置換基の置き換えや、或る成分の付加、又は或る成分の脱離などに関する情報である。これにより、同定用データベースに収録されていない化合物についても、化合物を同定して構造式を求めることが可能となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の質量分析データ解析方法では、構造変化パターンとして登録されていないような構造変化を生じた未知物質については、その構造を推定することができない。例えば薬物代謝物の構造は、代謝前の物質の中の一部の部分構造が脱離した後に、その脱離部位又は全く別の部位に別の部分構造が付加したものと考えられるが、脱離する部分構造は代謝前の物質によって多岐に亘り、その全てを構造変化パターンとして予め登録しておくことは困難である。そのため、こうした物質の構造解析においては、未知物質の構造を特定できないケースが起こり易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−287531号公報
【発明の概要】
【発明が解決すべき課題】
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、代謝等に伴う構造変化パターンが予めデータベース等として用意されていない場合であっても、構造が既知である物質に類似した又は該物質から一部構造が変化した未知物質の構造を、MSnスペクトルデータに基づいて効率的に且つ高い信頼性で以て推定することができる質量分析データ解析方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された第1発明は、構造が既知である既知物質から部分的な構造変化が生じた未知物質に由来するプリカーサイオンを1又は複数段階に開裂させることで生成されたプロダクトイオンを質量分析して得られるMSnスペクトル(nは1以上の整数)に基づいて、前記未知物質の構造を推定する質量分析データ解析方法であって、
a)予め与えられる前記構造変化に伴って前記既知物質に付加され得る付加部分構造の情報を取得する付加部分構造情報取得ステップと、
b)予め与えられる前記既知物質の構造式情報と、前記付加部分構造情報取得ステップにより取得された付加部分構造の情報と、前記未知物質に対するMSnスペクトルを求める際に得られる該未知物質に由来するプリカーサイオンの質量情報と、に基づいて、前記構造変化に伴って前記既知物質から未知の脱離部分構造が脱離した後の脱離後構造式を推定する脱離後構造推定ステップと、
c)該脱離後構造推定ステップで挙げられた脱離後構造式候補について、その構造式で示される構造から抽出される基幹部分構造と前記付加部分構造とを組み合わせたときの質量と、前記未知物質に対するMSnスペクトルから得られるプロダクトイオンの質量との一致性を判断することにより、各プロダクトイオンの構造式を推定してプロダクトイオン構造式候補を挙げるプロダクトイオン構造推定ステップと、
d)該プロダクトイオン構造推定ステップにより推定された複数のプロダクトイオンに対するプロダクトイオン構造式候補に基づき、それら構造式候補を開裂によって生成し得る構造式を探索することにより未知物質の構造式を推定する未知物質構造推定ステップと、
を有することを特徴としている。
【0011】
上記課題を解決するために成された第2発明は、第1発明に係る質量分析データ解析方法を実施するための装置であり、構造が既知である既知物質から部分的な構造変化が生じた未知物質に由来するプリカーサイオンを1又は複数段階に開裂させることで生成されたプロダクトイオンを質量分析して得られるMSnスペクトル(nは1以上の整数)に基づいて、前記未知物質の構造を推定する質量分析データ解析装置であって、
a)予め与えられる前記構造変化に伴って前記既知物質に付加され得る付加部分構造の情報を取得する付加部分構造情報取得手段と、
b)予め与えられる前記既知物質の構造式情報と、前記付加部分構造情報取得手段により取得された付加部分構造の情報と、前記未知物質に対するMSnスペクトルを求める際に得られる該未知物質に由来するプリカーサイオンの質量情報と、に基づいて、前記構造変化に伴って前記既知物質から未知の脱離部分構造が脱離した後の脱離後構造式を推定する脱離後構造推定手段と、
c)該脱離後構造推定手段により挙げられた脱離後構造式候補について、その構造式で示される構造から抽出される基幹部分構造と前記付加部分構造とを組み合わせたときの質量と、前記未知物質に対するMSnスペクトルから得られるプロダクトイオンの質量との一致性を判断することにより、各プロダクトイオンの構造式を推定してプロダクトイオン構造式候補を挙げるプロダクトイオン構造推定手段と、
d)該プロダクトイオン構造推定手段により推定された複数のプロダクトイオンに対するプロダクトイオン構造式候補に基づき、それら構造式候補を開裂によって生成し得る構造式を探索することにより未知物質の構造式を推定する未知物質構造推定手段と、
を備えることを特徴としている。
【0012】
なお、第1発明及び第2発明において構造解析の対象である「未知物質」とは、例えば、構造が既知である或る物質から代謝等の化学変化により生成される物質である。また、「未知物質」は、既知物質を合成等により生成する際に、その構造の一部が置換されたり欠損したり或いは別の成分が付加されたりして生じる副産物であってもよい。
【0013】
また、nが1である場合のMSnスペクトル、つまりMS1スペクトル(マススペクトル)は、インソース分解による目的物質由来イオンの断片化(開裂)を行って生成されたプロダクトイオンを質量分析した結果であり、nが2以上である場合のMSnスペクトルは、CIDなどによる1又は複数段の開裂操作を行って生成されたプロダクトイオンを質量分析した結果である。
【0014】
即ち、上述したように、特許文献1に記載の従来技術では、代謝等に伴って変化する部分構造の置換パターンなどを構造変化パターンとしていたのに対し、第1及び第2発明では、部分構造の置換を、部分構造の脱離と付加という2つの段階に分けて考える。薬物代謝などによる物質の構造変化を考えたとき、一般に、脱離する部分構造は元の(脱離前の)物質の構造や反応条件などに依存するためにかなり幅広く、予想することが難しい。これに対し、付加される部分構造は代謝の種類などに殆ど依存するため、かなり絞られ、予想が容易である。そこで、付加される部分構造については例えばユーザが予め推定しておき、これを入力する(又は予め用意された多数の選択肢の中から選択する)ことで付加部分構造の情報を与えるようにする。
【0015】
第2発明に係る質量分析データ解析装置において脱離後構造推定手段は、上記付加部分構造の情報(例えば組成式)から求めた付加部分構造の質量と、未知物質に由来するプリカーサイオンの質量情報から求めた未知物質の質量とから、既知物質から未知の脱離部分構造が脱離した後の脱離後構造式の質量を算出し、該質量と既知物質の構造式情報とから脱離後構造式を推定する。脱離後構造式が1つに絞れない場合には、複数の脱離後構造式候補を挙げればよい。ただし、必ずしも脱離後構造式が得られるとは限らないから、1つも脱離後構造式が得られない場合には、例えば後述するように分析条件を変えて取得した別のMSnスペクトルを利用する等の方法が考えられる。
【0016】
プロダクトイオン構造推定手段は、上記脱離後構造式候補について、その構造式から推測し得る基幹部分構造と上記付加部分構造との組合せを試みて求まる質量を、未知物質のMSnスペクトル上の各ピークに対応したプロダクトイオンの質量と比較することで、未知物質由来の各プロダクトイオンの構造式を推定する。ここでも、1つのプロダクトイオンに対する構造式が1つに絞れない場合には、複数のプロダクトイオン構造式候補を挙げればよい。未知物質のMSnスペクトルから求まる各プロダクトイオンは未知物質の開裂により生成されたものであるから、未知物質構造推定手段は、複数のプロダクトイオン構造式候補から、その構造が生成され得るような開裂の態様を推定することで、未知物質の構造式を推定することができる。
【0017】
もちろん、第1及び第2発明では、既知物質又は未知物質に関して他の情報が既知である場合に、その情報を追加的に利用する処理を加えることで、推定の信頼度を上げたり処理速度を上げたりすることができる。
【0018】
例えば、既知物質のMSnスペクトルが追加情報として与えられていれば、例えば、該MSnスペクトルから判明する既知物質由来のプロダクトイオンと未知物質のMSnスペクトルから判明する未知物質由来のプロダクトイオンとを比較することで、既知物質のいずれの部位に付加部分構造が付加したのかを推定し、未知物質の構造式の推定の際の絞り込みを行うことができる。
【0019】
また、未知物質の組成式が追加情報として与えられていれば、付加部分構造の組成はもともと既知であるため、両者の差から脱離部分構造の組成も判明する。それにより、脱離後構造式候補の絞り込みが可能となる。さらにまた、未知物質由来の少なくとも1つのプロダクトイオンの組成式又は構造式が追加情報として与えられていれば、一部のプロダクトイオンの構造式推定が不要になる或いは構造式の絞り込みが可能となる。また、ユーザによる中間データ(推定した脱離部分構造やプロダクトイオンに対応する脱離後部分構造と付加部分構造との組合せ)の選別によって結果を絞り込むことも考えられる。
【0020】
また、第1発明に係る質量分析データ解析方法の一態様として、前記脱離後構造推定ステップにより推定された脱離後構造式候補が複数ある場合に、その複数の脱離後構造式候補のそれぞれについて、前記プロダクトイオン構造推定ステップ及び前記未知物質構造推定ステップにより未知物質の構造式を推定し、複数の構造式候補を求めるようにするとよい。これにより、未知物質の構造式候補の推定漏れを軽減できる。また、未知物質の構造式候補が複数存在する場合には、それら候補を蓋然性の高い順に順位付けして該順位とともに構造式候補を出力するとよい。順位付けの際には、例えばプロダクトイオン構造式候補を求める際の質量の一致の程度など、分析上得られる情報を利用するほか、分子内の結合エネルギーの大きさなどの理論的に計算される情報を利用してもよい。
【0021】
また、第1発明に係る質量分析データ解析方法の別の態様として、未知物質のMSnスペクトル中の特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして実行されたMSn+1分析で得られたMSn+1スペクトルに対し、前記各ステップを実行することで得られた推定構造式を未知物質の1つのプロダクトイオンの構造式候補とした上で未知物質の構造式を推定するようにしてもよい。これにより、例えばMS2スペクトルデータに基づいて未知物質の構造を特定できない場合でも、開裂操作を繰り返して取得したMS3、MS4スペクトルデータに基づいて未知物質の構造を高い信頼性で以て特定することが可能となる。
【0022】
また、第1発明に係る質量分析データ解析方法では、未知物質に対し異なる分析条件の下で取得された複数のMSnスペクトルを用いて前記各ステップにより未知物質の構造式の候補をそれぞれ求め、その結果を併せて蓋然性の高い構造式を抽出して未知物質の構造式推定結果として出力するようにしてもよい。ここでいう分析条件とは開裂条件を含む。分析条件を変えると開裂の態様が変化するため、同じ未知試料から異なるMSnスペクトルが得られる。このように互いに異なる複数のMSnスペクトルを利用して求められた未知物質の構造式候補が同一である場合には、その候補が正解の構造式である確率が高い。したがって、上記方法によれば、未知物質の構造が複雑であっても、高い信頼性で以て未知物質の構造式を特定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る質量分析データ解析方法及び装置によれば、例えば代謝といった化学変化などにより既知物質の構造の一部が変化した未知物質が同定用データベースに収録されていないような場合であっても、該未知物質の構造式を効率的に且つ高い信頼性で以て推定することができる。また、代謝等の構造変化に伴う構造変化パターンが不明であっても、構造変化に伴って付加する部分構造が既知である又は高い確度で推定可能でありさえすれば、未知物質の構造式を高い信頼性で以て推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係る質量分析データ解析装置を含む質量分析システムの一実施例の概略構成図。
図2】本実施例の質量分析システムにおける未知物質構造推定処理の手順の一例を示すフローチャート。
図3】本実施例の質量分析システムにおける既知物質の構造変化モデル及び部分構造が脱離した後の脱離後構造式の推定方法を説明する概念図。
図4】本実施例の質量分析システムにおける未知物質構造推定処理の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る質量分析データ解析装置を含む質量分析システムの一実施例について、図面を参照しながら説明する。図1は本実施例の質量分析システムの概略構成図である。
【0026】
MSn分析部本体1は、図示しないものの、イオン源、イオントラップ、飛行時間型質量分析器(TOFMS)、イオン検出器などを含み、試料から生成される各種イオンの中で特定の質量電荷比m/zをもつイオンをプリカーサイオンとしたMSn分析を実行し、所定質量電荷比範囲に亘るMSnスペクトルデータを取得する。典型的にはn=2であるが、nが3以上であってもよい。また、MSn分析部本体1が、インソース分解を利用して通常のMS1分析でもプロダクトイオンが観測されるような構成である場合には、n=1でもよい。典型的には、イオン源がEIである場合に、イオン化により生じた分子イオンのインソース分解を生じ易い。また、EI以外に、マトリクス支援レーザ脱離イオン化法、高速原子衝撃イオン化法などのイオン源でも、比較的多くのプロダクトイオンを生成することができる。また、MS2分析のみを実行する場合には、イオントラップとTOFMSとの組合せではなく、いわゆる三連四重極型質量分析計を利用することもできる。
【0027】
MSn分析部本体1で得られたMSnスペクトルデータを処理するデータ処理部2は、未知物質構造推定処理部21、スペクトルデータ記憶部22、既知物質構造式記憶部23、付加部分構造記憶部24、を機能的ブロックとして備える。既知物質構造式記憶部23には様々な物質(化合物)の構造式が格納されており、これは上述した同定用データベースを利用することができる。一方、付加部分構造記憶部24には、生体内代謝等の様々な構造変化に伴って物質に付加される部分構造、つまり付加部分構造の情報が格納されている。例えばヒトの体内で起こる様々な代謝において物質に付加される成分の構造についてはその多くが既知であるから、こうした既知の情報に基づいて例えば代謝の種類と付加部分構造とを対応付けて記憶しておくことができる。
【0028】
また、データ処理部2には、ユーザが操作する入力部3や、分析結果などが表示される表示部4が接続されている。なお、データ処理部2は、パーソナルコンピュータをハードウエア資源として、該コンピュータにインストールされた専用の処理/制御プログラムを実行することにより上記の各機能的ブロックが具現化される構成とすることができる。
【0029】
本実施例の質量分析システムは、構造式が既知である物質(以下「原物質」という)から代謝等、何らかの要因で構造の一部が変化した代謝物、副生成物、分解物など、構造が未知である未知物質の構造を推定するデータ解析処理に特徴を有する。ここでは、代謝により原物質から生成された代謝物を例に挙げて説明するが、物質の構造変化は代謝に限るものではなく、原物質の構造の一部が変化する様々な構造変化に対応可能である。
【0030】
図2はデータ処理部2で実施される代謝物構造推定処理の手順の一例を示すフローチャート、図3は既知物質の構造変化モデル及び部分構造が脱離した後の脱離後構造推定方法を説明する概念図、図4は代謝物構造推定処理の概念図である。この図2図4により、本実施例の質量分析システムにおける代謝物構造推定処理の詳細について説明する。
【0031】
処理開始時点において、解析対象である試料中の未知物質由来のイオンをプリカーサイオンとしてMS2分析を実行した結果であるMS2スペクトルデータがスペクトルデータ記憶部22に保存されているものとする。
入力部3からのユーザの指示等に基づいて処理が開始されると、未知物質構造推定処理部21は、処理対象である未知物質のMS2スペクトルデータをスペクトルデータ記憶部22から、原物質の構造式データを既知物質構造式記憶部23から、また原物質から未知物質への構造変化の際に付加される付加部分構造データを付加部分構造記憶部24から、それぞれ読み込む(ステップS1)。
【0032】
既知物質構造式記憶部23には多種の化合物の構造式データが格納されているため、ユーザが入力部3により原物質である化合物を指定することにより、該原物質の構造式データを読み出すようにすることができる。また、付加部分構造記憶部24にも多種の付加部分構造データが格納されており、ユーザが入力部3より例えば代謝の種類などの情報を与えることで、その代謝等に対応して付加し得る付加部分構造データを読み出すことができる。もちろん、既知物質構造式記憶部23や付加部分構造記憶24に格納されているデータを利用することなく、ユーザが入力部3から直接的に、原物質の構造式及び付加部分構造を入力するようにしてもよい。
【0033】
ここでは、構造式が既知である原物質Aから代謝等の構造変化によって未知物質Bが生じる際に、図3に示すように、原物質から何らかの部分構造Cが脱離するという第1段階と、部分構造が脱離した後の構造A’に付加部分構造Dが付加するという第2段階との、2段階の操作が起こると考える。ただし、付加部分構造Dは必ずしも部分構造Cが脱離した箇所に付加する(つまり構造的に脱離した基等と置換する)とは限らず、未知物質B’のように、脱離箇所とは全く別の部位に付加部分構造Dが付加する場合もある。
【0034】
図3において、破線で囲んだ、原物質Aの構造式、付加部分構造D、及び未知物質BのMS2スペクトル、が既知、つまり既に与えられている情報である。データ処理部2において未知物質構造推定処理部21は、まず、上記のような既知情報に基づいて、原物質Aから脱離部分構造Cが脱離した後の構造式(脱離後構造式)A’の候補を算出する(ステップS2)。
即ち、未知物質BのMS2スペクトルを求める際のプリカーサイオンの質量電荷比m/zから未知物質Bの質量が求まり、また未知物質Bに含まれる付加部分構造Dの質量も既知であるその構造から求まるから、その差から脱離後構造式A’の質量が計算される。そして、この脱離後構造式A’の質量と既知である原物質Aの構造式とから、脱離後構造式A’を推定することができる。もちろん、一般的には、唯一の構造式を確定的に求めることはできないので、推定し得る複数の脱離後構造式A’の候補をリストアップする。
【0035】
なお、上記のような既知情報のほかに、未知物質Bの組成式が追加的な情報として与えられている場合、付加部分構造Dの組成が既知であるために、未知物質Bから付加部分構造Dを取り除いた脱離後構造式A’に対応した組成が判明する。したがって、この組成情報を用いて脱離後構造式A’候補の絞り込みが可能であり、該候補の数を減らして以降の処理を簡単化することができる。また、ユーザによる脱離後構造式の選別を行うようにしてもよい。
【0036】
次に、ステップS2において算出された脱離後構造式A’の候補の中から1つを選択した上で(ステップS3)、その選択された脱離後構造式A’候補についてステップS4〜S5の処理を実施する。
まず、脱離後構造式A’は原物質の基本骨格を含むと考えられるから、1つの脱離後構造式A’候補から抽出した部分構造と既知の付加部分構造とを組み合わせることにより、未知物質Bの開裂により生じる各プロダクトイオンの構造式の候補を網羅的に算出する(ステップS4)。即ち、脱離後構造式A’の中でCIDにより結合が切れる部位は不明であるから、1つの脱離後構造式A’候補からCIDによって発生し得る部分構造には様々なパターンが考えられる。図4では、脱離後構造式A’候補からA’a、A’b、A’cで示す3つの部分構造を推定している。一方、付加部分構造Dも1つであるとは限らず複数である場合もある。そこで、脱離後構造式A’から求まる部分構造と付加部分構造Dの1つとを組み合わせたときの質量を網羅的に計算し、その各質量と未知物質のMS2スペクトルに現れているピークの質量電荷比から判明する各プロダクトイオンの質量との一致性を判断する。
【0037】
図4の例で説明すると、未知物質BのMS2スペクトルに現れているピークP1、P2の質量電荷比はそれぞれM1、M2であり、これからプロダクトイオンの質量が判明する。一方、脱離後構造式A’の部分構造と付加部分構造D(この例では、−OH、−CH3の2種類)とを組み合わせたときの質量を計算し、上記プロダクトイオンの質量との一致性を判断する。その結果、ピークP1のプロダクトイオンについては[A’a]+[−CH3,−OH]と[A’b]+[−OH]の2種類の質量が一致しており、ピークP2のプロダクトイオンについては[A’c]+[−OH]の1種類の質量が一致しているものとする。このように、ここでは質量の一致性のみを判断材料としているので、1つのプロダクトイオンに対し、脱離後構造式A’の部分構造と付加部分構造Dとの組合せが1つのみ抽出されるとは限らず、複数抽出される場合もある。この場合には、抽出された複数の組合せをプロダクトイオンの構造式候補として挙げればよい。
【0038】
なお、上記のような既知情報のほかに、原物質のMS2スペクトルが追加的情報として与えられている場合には、そのMS2スペクトルから得られるプロダクトイオンの質量と、未知物質のMS2スペクトルから得られるプロダクトイオンの質量とを比較することにより、いずれの部分構造に付加部分構造が付加されたのかを推定することができる。それにより、プロダクトイオンの構造式候補の絞り込みが可能となり、該候補の数を減らして以降の処理を簡単化することができる。
さらにまた、上記のような既知情報のほかに、未知物質由来のプロダクトイオンの少なくとも一部の組成式や構造式が追加的情報として与えられている場合には、これによりプロダクトイオンの構造式候補の絞り込みを行うことも可能となり、該候補の数を減らして以降の処理を簡単化することができる。
【0039】
ステップS4において未知物質B由来の各プロダクトイオンの構造式候補が挙げられたならば、それらプロダクトイオンの構造式候補を組み合わせ、未知物質Bの開裂により生成し得る組合せを見いだして、それを未知物質Bの構造式として選出する(ステップS5)。なお、適切な組合せが見いだせなければ、例えばステップS3で選択した脱離後構造式A’の候補が適切でない等の理由が考えられるから、解なしであると結論付ければよい。また、未知物質Bの構造式を1つに絞り切れない場合には、複数の構造式を候補として挙げてもよい。
【0040】
次に、ステップS2で得られた全ての脱離後構造式A’候補についてステップS4、S5の処理が実施されたか否かを判定し(ステップS6)、未処理の脱離後構造式A’の候補があればステップS3に戻り、未処理の脱離後構造式A’候補を選択して上述したステップS4、S5を実施する。ステップS6でYesと判定された場合には、ステップS7へ進み、それまでに挙げられた未知物質の構造式(又はその候補)を解析結果として表示部4から出力する。
【0041】
以上説明したように、本実施例におけるデータ処理部2では、代謝等による構造変化によって生じた未知物質の構造を推定する際に、その構造変化において既知である付加部分構造Dの情報を利用している。上述した従来技術で用いられているような構造変化パターンは、付加部分構造だけでなく、脱離部分構造C、脱離部分構造が脱離する部位、付加部分構造Dが付加する部位などの情報も含むため、非常に多様であって、起こり得る構造変化パターンの全てを予測しておくことは困難である。これに対し、上述したように、付加部分構造Dだけであれば、代謝の種類などから容易に予測可能であるし、その種類もかなり絞られる。したがって、構造変化に伴って付加し得る付加部分構造Dの情報を確実に与え、それに基づいて信頼性の高い且つ効率のよい未知物質の構造推定を行うことができる。
【0042】
なお、特に未知物質の構造式候補が複数存在する場合には、いずれの候補が適切であるのかをユーザが判断する助けになるような情報を併せて提供することが好ましい。そこで、複数の構造式候補を蓋然性の高い順に順位付けして、その順位とともに構造式候補を出力するとよい。このような順位付けを行う際には、例えばプロダクトイオン構造式候補を求める際の質量の一致の程度など、分析上得られる情報を利用するほか、分子内の結合エネルギーの大きさなどの理論的に計算される情報を利用してもよい。
【0043】
また、上記実施例はMS2分析結果に基づいた解析を行うものであるが、2段階以上の開裂操作を伴うnが3以上のMSn分析で得られるMSnスペクトルデータに基づく解析を行うものであってもよい。このようにMS3以上のスペクトルデータを用いる場合に、未知物質のMSnスペクトル中の特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして実行されたMSn+1分析で得られたMSn+1スペクトルに対し、上記ステップS2〜S6の処理を実行することで得られた推定構造式を未知物質の1つのプロダクトイオンの構造式候補とした上で未知物質の構造式を推定するようにしてもよい。
【0044】
また、CIDによる開裂操作ではコリジョンエネルギー、イオントラップ(又はコリジョンセル)内のCIDガス圧などの分析条件を変更すると、開裂の態様が変化し同じ未知物質に対して異なるパターンのMS2スペクトルが得られる場合がある。MS2スペクトルが相違すれば、プロダクトイオンが異なるから、図2に示したS4〜S5の処理内容が異なることになる。ただし、最終的に求まる未知物質Bの構造式は同じになる筈であるから、異なるMS2スペクトルに基づいて解析した結果の構造式が同一であれば、その構造式の信頼性は高いといえる。そこで、例えば、未知物質に対し異なる分析条件の下で得られた異なるMS2スペクトルに基づいて解析した結果の構造式が同一であるものを真の構造式として出力するとよい。また、そうした情報を上述した順位付けに利用してもよい。
【0045】
また、上記実施例は本発明の一例にすぎないから、本発明の趣旨の範囲で適宜に修正、変更、追加などを行っても本願請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1…MSn分析部本体
2…データ処理部
21…未知物質構造推定処理部
22…スペクトルデータ記憶部
23…既知物質構造式記憶部
24…付加部分構造記憶部
3…入力部
4…表示部
図1
図2
図3
図4