(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アイソタクチックポリプロピレンが、高温型核磁気共鳴(高温NMR)測定によって求められるメソペンタッド分率([mmmm])が94%以上98%未満である立体規則性度を有することを特徴とする、請求項1に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記アイソタクチックポリプロピレンが、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を少なくとも1種類以上含有し、そのフィルム中における前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の残存含有量が、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4000ppm以上6000ppm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さが、1μm以上6μm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記アイソタクチックポリプロピレンが、以下の工程(1)〜(2)を含む方法によって得られたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム;
工程(1):有機金属化合物触媒成分(II)と、四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、更に電子供与体(a)、及び電子受容体(b)を接触させて、固体状チタン触媒成分(I)を得る工程;
工程(2):前記固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン系重合用触媒の存在下にてプロピレンを重合して、アイソタクチックポリプロピレンを得る工程。
前記工程(1)が、有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)との反応物と、四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、更に前記電子供与体(a)及び電子受容体(b)を接触させて、固体状チタン触媒成分(I)を得る工程であることを特徴とする、請求項6に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
前記オレフィン系重合用触媒が、前記固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、芳香族カルボン酸エステルとを含むオレフィン系重合用触媒であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、好ましくは四塩化チタンと、必要に応じて電子供与体(a)と、有機金属化合物触媒(II)とを反応させて得られた反応生成物に、更に電子供与体(a)及び電子受容体(b)とを接触させて固体状チタン触媒成分(I)を得る工程(1);及び前記固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、必要に応じて電子供与体(III)とを含むオレフィン系重合用触媒の存在下にてプロピレンを重合し、アイソタクチックポリプロピレンを得る工程(2)を含む方法により得られたアイソタクチックポリプロピレン原料樹脂を成形して得られたフィルムであって、フィルム形成しているアイソタクチックポリプロピレンのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万以上45万以下で、分子量分布Mw/Mnが7以上12以下、かつ、Mz/Mnが20以上40以下であり、分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差の値が、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8%以上20%以下であることを特徴とする、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムである。
本発明において用いられる上記オレフィン系重合用触媒は、立体規則性が高く、分子量分布の広い重合体を与える傾向にあるため好ましい。
【0025】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂は、結晶性のアイソタクチックポリプロピレン樹脂であり、プロピレンの単独重合体である。
【0026】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン原料樹脂は、多段階の重合や、複数種のポリプロピレンの混合によっても製造することもできるが、1段階の重合、すなわち、単段重合反応により得られた樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン原料樹脂が、単段重合反応により得られた樹脂である場合には、簡便な重合体製造装置を用いて原料樹脂の製造を行うことができるため、経済的である上、ポリプロピレン原料樹脂中の高分子量成分が、より微分散した状態となるため好ましい。
【0027】
<ポリプロピレン原料樹脂の製造方法>
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造に用いられるポリプロピレン原料樹脂は、好ましくは、以下のオレフィン系重合用触媒を用いて製造される。
【0028】
(オレフィン系重合用触媒)
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いられるポリプロピレン原料樹脂は、固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、必要に応じて電子供与体(III)とを含むオレフィン系重合用触媒の存在下にプロピレンを重合して得られたものであることが好ましい。
すなわち、本発明においてオレフィン系重合用触媒とは、固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)を含むものである事が好ましい。また、前記オレフィン系重合用触媒には、必要に応じて電子供与体(III)を含んでいてもよい。
(固体状チタン触媒成分(I))
固体状チタン触媒成分(I)は、例えば以下の工程(1)を含む方法によって製造することができる。
工程(1):有機金属化合物触媒成分(II)と四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、又は有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)との反応物と、四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、更に電子供与体(a)、及び電子受容体(b)とを接触させて、固体状チタン触媒成分(I)を得る工程。
ここで、前記工程(1)が、有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)の反応物と、四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、更に電子供与体(a)、及び電子受容体(b)とを接触させて、固体状チタン触媒成分(I)を得る工程であることがより好ましい。
上記の四塩化チタンは、必要に応じて、下記のチタン化合物に変更することも可能である。また、後述する固体状チタン触媒成分(I)の調製法に記載の四塩化チタンも適宜、下記のチタン化合物に置き換えることも出来る。
【0029】
(固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いられるチタン化合物)
本発明の固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いることができるチタン化合物としては、たとえば下記の一般式で表される4価のチタン化合物が挙げられる。
Ti(OR)
gX
4−g
(式中、Rは好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4で表される整数である。)
より具体的には、
TiCl
4、TiBr
4などのテトラハロゲン化チタン;
Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O−n−C
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(O−iso−C
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2などのジハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(O−n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化アルコキシチタン;
Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4、Ti(OC
4H
9)
4、Ti(O−2−エチルヘキシル)
4などのテトラアルコキシチタンなどを挙げることができる。
これらの中で好ましいものは、テトラハロゲン化チタンであり、特に四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
(固体状チタン触媒成分(I)の調製方法)
固体状チタン触媒成分(I)の調製方法に関し、上述の有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)の反応物と、四塩化チタンとを反応させて得られた反応生成物に、更に電子供与体(a)、及び電子受容体(b)とを接触させて、固体状チタン触媒成分(I)を得る方法については、例えば特開昭56−110707号公報にその詳細が記載されているが、概略は以下の通りである。
まず、有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)との反応生成物を得る。
有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)との反応は、後述する溶媒中で、反応温度−20℃から200℃、好ましくは−10℃〜100℃で、30秒間〜5時間行うことが好ましい。前記有機金属化合物触媒成分(II)と電子供与体(a)を接触させる順序に制限はなく、使用する量比は、有機金属化合物触媒成分(II)の金属元素1モルに対し、電子供与体(a)が0.1〜8モル、好ましくは1〜4モルである。使用する溶媒の量は、0.5〜5リットルが好ましく、0.5〜2リットルがより好ましい。
また、前記溶媒としては脂肪族炭化水素が好ましい。
この段階で得られた反応生成物は、固液分離を行わず、反応終了後の液状態のままで次の反応に用いても良い。
【0031】
次に、前記反応生成物と四塩化チタンとを接触させる。
前記反応生成物と四塩化チタンとの反応は、反応温度が0〜200℃、好ましくは10〜90℃で、5分間〜8時間行うことが好ましい。前記反応生成物と四塩化チタンとを反応させる際、脂肪族炭化水素、又は芳香族炭化水素を溶媒として用いることが出来るが、これら溶媒を用いずに反応を行う方が好ましい。
前記反応生成物と四塩化チタン、好ましく用いられる溶媒との接触は任意の順で行えばよい。また、この接触操作、すなわち、四塩化チタンと好ましく用いられる溶媒中への前記反応生成物への添加工程は、5時間以内に終了することが好ましい。所定量の接触が完了した後、これら反応生成物と四塩化チタン、溶媒との混合物を、10℃〜90℃で保持することが好ましい。保持する時間は、8時間以内であることが好ましい。
反応に用いる前記反応生成物、四塩化チタン、及び溶媒の使用量は、四塩化チタン1モルに対し、溶媒が0〜3000mlであることが好ましく、前記反応生成物はその金属原子数と四塩化チタン中のTi原子数の比(有機金属化合物触媒成分(II)の金属原子数/Ti)で0.05〜10が好ましく、0.06〜0.2であることがより好ましい。
上記の工程が終了後、濾別、又はデカンテーションにより液状部分を分離除去した後、更に溶媒で洗浄を繰り返して固体生成物を得る。得られた固体生成物は、溶媒に懸濁させた状態のまま次の工程に使用しても良く、乾燥して固形物として取り出して使用してもよい。
【0032】
次いで前記固体生成物に電子供与体(a)と電子受容体(b)とを反応させる。
この反応は溶媒を用いないで行う事が出来るが、脂肪族炭化水素を用いて行う方が好ましい。電子供与体(a)の使用量は、前記固体生成物100gに対して、10g〜1000gが好ましく、50g〜200gがより好ましい。また、電子受容体(b)の使用量は、前記固体生成物100gに対して、10g〜1000gが好ましく、20g〜500gがより好ましい。また、溶媒使用量は、0〜3000mlが好ましく、100〜1000mlがより好ましい。
これらの成分を、−10℃〜40℃で、30秒間〜60分間接触させた後、40℃〜200℃、より好ましくは50℃〜100℃で30秒間〜5時間保持させる。固体生成物、電子供与体(a)、電子受容体(b)、及び溶媒を接触させる順序は任意である。例えば、電子供与体(a)と電子受容体(b)とを、固体生成物と混合する前に、予め接触させておいても良く、この場合は電子供与体(a)と電子受容体(b)とを10〜100℃で30分間〜2時間接触させた後、40℃以下に冷却したものを、固体生成物と混合することが好ましい。
固体生成物と電子供与体(a)及び電子受容体(b)の接触保持終了後、濾別、もしくはデカンテーションにより液状部分を除去し、更に溶媒で洗浄を繰り返すことにより固体状チタン触媒成分(I)が得られる。
得られた固体状チタン触媒成分(I)は乾燥して固体物として取り出すか、又は溶媒に懸濁させた状態のままで、次の反応に用いることが出来る。
【0033】
(固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いられる有機金属化合物触媒成分(II))
固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いる有機金属化合物触媒成分(II)は、後述するプロピレンの重合時に用いられる有機金属化合物触媒成分(II)と同様のものが用いられる。好ましくは以下の一般式で表される有機アルミニウム化合物である。
AlR
nR’
n’X
3−(n+n’)
(式中、R、R’は、アルキル基、アリール基、アルカリール基、シクロアルキル基等の炭化水素基を表す。また、R、R’はアルコキシ基であってもよい。Xはフッ素、塩素、臭素、及びヨウ素のハロゲンを表わす。また、n、n’は0<n+n’≦3を満たす任意の整数である。)
その具体例としてはトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−i−ヘキシルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリ−n−デシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム類、ジエチルアルミニウムモノクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムモノクロライド、ジ−i−ブチルアルミニウムモノクロライド、ジエチルアルミニウムモノフルオライド、ジエチルアルミニウムモノブロマイド、ジエチルアルミニウムモノアイオダイド等のジエチルアルミニウムモノハライド類、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド類、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、i−ブチルアルミニウムジクロライド等のアルキルアルミニウムハライド類などが挙げられる。その他、モノエトキシジエチルアルミニウム、ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルキルアルミニウム類を用いる事も出来る。
これらの有機アルミニウム化合物は2種以上を混合して用いることもできる。
【0034】
(固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いられる電子供与体(a))
電子供与体(a)としては、以下に示す種々のものを用いることができるが、本発明においては、エーテル類を主体に用い、その他の電子供与体はエーテル類と共用することが好ましい。
電子供与体(a)として用いられるものは、酸素、窒素、硫黄、燐のいずれかの原子を有する有機化合物、すなわち、エーテル類、アルコール類、エステル類、アルデヒド類、脂肪酸類、ケトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、尿素、又はチオ尿素類、イソシアネート類、アゾ化合物、ホスフイン類、ホスファイト類、ホスフィナイト類、チオエーテル類、チオアルコール類などである。
【0035】
前記電子供与体(a)の具体例としては、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジ−i−ヘキシルエーテル、ジ−n−オクチルエーテル、ジ−i−オクチルエーテル、ジ−n−ドデシルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、ナフトール等のアルコール類、メタクリル酸メチル、酢酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸アミル、酪酸ビニル、酢酸ビニル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸2−エチルヘキシル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル2−エチルヘキシル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニス酸プロピル、ケイ皮酸エチル、ナフトエ酸メチル、ナフトエ酸エチル、ナフトエ酸プロピル、ナフトエ酸ブチル、ナフトエ酸2−エチルヘキシル、フェニル酢酸エチルなどのエステル類、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドなどのアルデヒド類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、シュウ酸、こはく酸、アクリル酸、マレイン酸などの脂肪酸、安息香酸などの芳香族酸、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ベンゾフェノンなどのケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、メチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、トリエタノールアミン、β−(N,N−ジメチルアミノ)エタノール、ピリジン、キノリン、α−ピコリン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサエチレンジアミン、アニリン、ジメチルアニリンなどのアミン類、ホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N,N’,N’,N’’−ペンタメチル−N’−β−ジメチルアミノメチルリン酸トリアミド、オクタメチルピロホスホルアミド等のアミド類、N,N,N’,N’−テトラメチル尿素等の尿素類、フェニルイソシアネート、トルイルイソシアネートなどのイソシアネート類、アゾベンゼンなどのアゾ化合物、エチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキシドなどのホスフィン類、ジメチルホスファイト、ジn−オクチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジエチルホスファイト、エチルブチルホスファイト、ジフェニルホスフィナイトなどのホスファイト類、ジエチルチオエーテル、ジフェニルチオエーテル、メチルフェニルチオエーテル、エチレンサルファイド、プロピレンサルファイドなどのチオエーテル、エチルチオアルコール、n−プロピルチオアルコール、チオフェノールなどのチオアルコール類などを挙げる事も出来る。
【0036】
上記以外の電子供与体(a)としては、フタル酸エステル類等の芳香族多価カルボン酸エステルも例として挙げることが出来る。具体的には、フタル酸エチル、フタル酸n−ブチル、フタル酸イソブチル、フタル酸ヘキシル、フタル酸へプチル等のフタル酸アルキルエステルが好ましく、フタル酸ジイソブチルがより好ましい。
これらのうち、電子供与体(a)としては、エーテル類が好ましく、特に好ましく用いられる化合物は、イソアミルエーテルである。これらの電子供与体(a)は2種類以上を混合、又は組合せて使用する事も出来る。
【0037】
(固体状チタン触媒成分(I)の製造に用いられる電子受容体(b))
電子受容体(b)は、周期律表3〜6族、13〜16族の元素のハロゲン化物であることが好ましい。具体例としては、無水塩化アルミニウム、四塩化ケイ素、塩化第一錫、塩化第二錫、四塩化チタン、四塩化ジルコニウム、三塩化リン、五塩化リン、四塩化バナジウム、五塩化アンチモンなどが挙げられる。これらの化合物は2種類以上を混合して用いることも出来る。上記化合物のうち、最も好ましいのは四塩化チタンである。
本発明の固体状チタン触媒成分(I)としては、上述の製造方法によって得られたものだけでなく、分子量分布が広く、立体規則性の高いオレフィン重合体が得られる触媒を用いることも出来る。
【0038】
(オレフィン系重合用触媒の調製方法)
前述の工程(1)で得られた固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、必要に応じて電子供与体(III)を所定量組み合わせて、本発明のオレフィン系重合用触媒を得ることができる。
本発明においては、前記オレフィン系重合用触媒が、固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、電子供与体(III)を含むオレフィン系重合用触媒であることが好ましい。
本発明のオレフィン系重合用触媒においては、固体状チタン触媒成分(I)1gに対して、有機金属化合物触媒成分(II)を、0.1〜500g組み合わせて用いることが好ましい。
【0039】
(オレフィン系重合用触媒として用いられる有機金属化合物触媒成分(II))
前記の固体状チタン触媒成分(I)と組み合わせてオレフィン系重合用触媒を形成する有機金属化合物触媒成分(II)としては、第13族金属を含む化合物、たとえば、有機アルミニウム化合物や、第1族金属とアルキルアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物などを用いることができる。これらの中でも、有機アルミニウム化合物を用いる事が好ましい。
前記有機金属化合物触媒成分(II)としては、具体的には、EP585869A1等の公知の文献に記載された有機金属化合物触媒成分を、好ましい例として挙げることができる。
具体的な好ましい有機金属化合物触媒成分(II)の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム化合物、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン含有アルキルアルミニウム化合物が挙げられる。これらの中でもハロゲン含有アルキルアルミニウムが好ましく、更にはジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリドが好ましい。
【0040】
(オレフィン系重合用触媒として用いられる電子供与体(III))
本発明において好適に用いられるオレフィン系重合用触媒は、前記有機金属化合物触媒成分(II)と共に、必要に応じて電子供与体(III)を含んでいてもよい。電子供与体(III)として好ましくは、前述の電子供与体(a)と同じものが挙げられる。
また、電子供与体(III)としては、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸オクチル、安息香酸2‐エチルヘキシル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸2−エチルヘキシル、アニス酸メチル、アニス酸エチル、アニス酸プロピル、ケイ皮酸エチル、ナフトエ酸メチル、ナフトエ酸プロピル、ナフトエ酸ブチル、ナフトエ酸2−エチルヘキシル、フェニル酢酸エチルなどの芳香族モノカルボン酸エステルや、フタル酸エステルなどの芳香族ポリカルボン酸エステルを用いることができる。
本発明のオレフィン系重合用触媒として、更に好ましくは、α−オレフィンを反応させて予備活性化したのちに、前記エステルを加えて本発明の触媒としたものである。
前述の化合物以外にも、有機ケイ素化合物を電子供与体(III)として用いることができる。この有機ケイ素化合物としては、たとえば下記一般式(4)で表される化合物を用いることができる。
R
nSi(OR’)
4−n ・・・(4)
(式中、RおよびR’は炭化水素基であり、nは0<n<4の整数である。)
【0041】
上記のような一般式(4)で示される有機ケイ素化合物としては、具体的には、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシランなどが用いられる。
このうちビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。
【0042】
また、国際公開第2004/016662号パンフレットに記載されている下記式(5)で表されるシラン化合物も、本発明の電子供与体(III)として好ましく用いることができる。
Si(OR
a)
3(NR
bR
c) ・・・(5)
上記式(5)中、R
aは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、R
aとしては、炭素数1〜6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基などが挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜6の炭化水素基が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0043】
式(5)中、R
bは、炭素数1〜12の炭化水素基または水素である。R
bとしては、炭素数1〜12の不飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂肪族炭化水素基、または水素などが挙げられる。具体例としては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0044】
式(5)中、R
cは、炭素数1〜12の炭化水素基、または水素である。R
cとしては、炭素数1〜12の不飽和脂肪族炭化水素基、飽和脂肪族炭化水素基、または水素などが挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、isoブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0045】
上記式(5)で表される化合物の具体例としては、
ジメチルアミノトリエトキシシラン、
ジエチルアミノトリメトキシシラン、
ジエチルアミノトリエトキシシラン、
ジエチルアミノトリ−n−プロポキシシラン、
ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、
メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、
t−ブチルアミノトリエトキシシラン、
エチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、
エチル−iso−プロピルアミノトリエトキシシラン、
メチルエチルアミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0046】
また、電子供与体(III)として用いられる、前記有機ケイ素化合物の他の例としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
RNSi(OR
a)
3 ・・・(6)
(式(6)中、RNは、環状アミノ基である。また、R
aはアルキル基を表す。)
前記環状アミノ基として、例えば、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基等が挙げられる。
【0047】
上記式(6)で表される化合物として具体的には、
(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、
(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、
(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、
(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、
オクタメチレンイミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0048】
これらの有機ケイ素化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。また、電子供与体(III)として他に有用な化合物としては、複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物、所謂ポリエーテル化合物も好ましい例として挙げられる。このような化合物としては、例えば特開平4−218507号公報などに開示されているものを挙げることが出来る。
【0049】
これらのポリエーテル化合物の中でも、1,3−ジエーテル類が好ましく、特に、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパンが好ましい。
【0050】
これらの化合物は、単独で用いることも、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、電子供与体(III)として、芳香族カルボン酸エステルを用いることが特に好ましい。
すなわち、本発明においては、前記オレフィン系重合用触媒が、前記固体状チタン触媒成分(I)と、有機金属化合物触媒成分(II)と、芳香族カルボン酸エステルとを含むオレフィン系重合用触媒であることが特に好ましい。
なお、前記オレフィン系重合用触媒は、上記のような各成分以外にも必要に応じてオレフィン重合に有用なその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、たとえば、シリカなどの無機酸化物担体、帯電防止剤、粒子凝集剤、保存安定剤などが挙げられる。但し、上記オレフィン系重合用触媒から得られる樹脂をコンデンサーフィルム材料として用いる場合には、シリカなどの無機酸化物は出来る限り使用しないことが好ましい。
【0051】
本発明に係るポリプロピレン原料樹脂は、好ましくは前記の様なオレフィン系重合用触媒の存在下で、プロピレンを単独で重合することによって得られるものである。
前述のオレフィン系重合用触媒を用いたポリプロピレン原料樹脂の製造方法では、多段重合を行わなくても、少ない段数の重合、例えば単段重合であっても、分子量分布の広いポリプロピレンを得ることができる。特に、メルトフローレート(以下、「MFR」ということもある)が同等である従来のチタン、マグネシウム、ハロゲンを含む固体状チタン触媒を用いたオレフィン重合体よりも、分子量の大きい成分の比率が比較的高く、かつ分子量の低い成分の比率も高いポリプロピレン原料樹脂が得られる。この特徴は、後述するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により確認することができる。すなわち、分子量分布値を表す、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)値、およびZ平均分子量(Mz)/数平均分子量(Mn)値の両方が高いポリプロピレン原料樹脂を得ることができる。
【0052】
<2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂>
前記オレフィン系重合用触媒より得られたポリプロピレン原料樹脂をキャスト原反シートに成形し、前記キャスト原反シートに二軸延伸を施すことにより、本願発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが出来る。
本発明のフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が25万以上45万以下、好ましくは、25万以上40万以下である。GPC法により得られる重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の比から計算される分子量分布は、7以上12以下であり、7.5以上12以下がより好ましく、7.5以上11以下であることが更に好ましい。さらに、Z平均分子量(Mz)/数平均分子量(Mn)の比から計算される分子量分布は、20以上40以下であり、20以上30以下がより好ましく、25以上30以下であることが更に好ましい。ここで、「ポリプロピレン樹脂」とは、前記ポリプロピレン原料樹脂をキャスト原反シートに成形し、前記キャスト原反シートに2軸延伸を施すことによって形成した2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂のことを意味する。
【0053】
本発明のフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂において、重量平均分子量が45万を超えると、樹脂流動性が著しく低下し、キャスト原反シートの厚さの制御が困難となる。その結果、本発明の目的である1〜6μmと非常に薄い延伸フィルムを、フィルムの幅方向に精度良く作製することが出来なくなるため、実用上好ましくない。また、ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が25万に満たない場合、押し出し成形法による成形性は良好となるが、シートおよびフィルムの厚みムラが発生し易くなる上、出来たシートの力学特性や、熱的特性、機械的特性の低下とともに延伸性が著しく低下し、2軸延伸成形が出来なくなるという製造上や、製品性能上の問題が生じるため、好ましくない。すなわち、本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいては、前記フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が、25万以上45万以下であれば、樹脂流動性や、フィルムの延伸性が低下せず、キャスト原反シートの厚さを制御して、フィルムの厚みが1〜6μmという非情に薄い延伸フィルムを精度よく作成することができるため好ましい。
【0054】
特に、前記オレフィン系重合用触媒を用いてプロピレンの重合を行うことにより、Mz/Mn値の高い重合体が得られる。
分子量分布が広い、すなわち、Mw/Mn値が高いポリプロピレン原料樹脂は、成形性や剛性に優れることが当業者においては常識とされている。一方で、Mz/Mn値が高いことは、高分子量成分の含有比率が高いことを表しており、さらなる延伸性の向上や、β晶の形成に有利であると考えられる。
【0055】
前記オレフィン系重合用触媒を用いて重合されたポリプロピレン原料樹脂は、多段重合を行わなくてもMz/Mn値が高いことから、高分子量成分の含有比率が高く、更には触媒レベル、即ちナノレベルで、その高分子量成分が、ポリプロピレン原料樹脂成分中に分散していると考えられる。その為、内部構造の均一性がより高まり、更なる延伸性の向上や、β晶の形成に有利であると考えられる。
【0056】
2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の重量平均分子量、及び分子量分布測定値を得るためのゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置には、特に制限はなく、ポリオレフィン類の分子量分析が可能な一般に市販されている高温型GPC装置、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵型高温GPC測定機、HLC−8121GPC−HT等を利用することが可能である。具体的な測定条件としては、GPCカラムとして、東ソー株式会社製、TSKgelGMHHR−H(20)HTを3本連結させたものが用いられる。また、カラム温度は140℃に設定され、溶離液にはトリクロロベンゼンを用い、流速は1.0ml/minに設定して測定を行う。検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算される。このようにして得られる重量平均分子量の対数値を、対数分子量「Log(M)」と称する。
【0057】
さらに、本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂は、前述の重量平均分子量、及び分子量分布の範囲を有すると同時に、分子量微分分布曲線において、前述の対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差の値が、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8%以上20%以下の値、好ましくは12%以上18%以下の値、より好ましくは16%以上18%以下の値である必要がある。このことは、対数分子量Log(M)が4〜5の間、つまり重量平均分子量のより低分子量側、すなわち、重量平均分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」とも称する)の分布値が、重量平均分子量のより高分子量側、すなわち、Log(M)=6前後、すなわち重量平均分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」とも称する)の分布値に比較して、ある程度高い構成であることを意味している(
図1参照)。本発明においては、低分子量成分の代表値としてLog(M)=4.5における微分分布値を、高分子量成分の代表値として、Log(M)=6のときの微分分布値を採用した。
【0058】
つまり、分子量分布Mw/Mnが7〜12であるといっても、この数値は単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の構成状況までは分からない。そこで、本態様においては、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂が、広い分子量分布を有すると同時に、その分子量分布の構成を調整し、重量平均分子量1万から10万の成分を、重量平均分子量100万の成分に対して、ある一定割合以上含む分布構成とすることにより、フィルムの延伸性と耐電圧性を両立させている。
【0059】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂においては、低分子量成分の構成を、高分子量成分の構成より多くする必要が有るため、重量平均分子量のより低分子量側であるLog(M)=4.5の微分分布値から、高分子量側のLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差は、「正」でなければならず、その量は、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8%以上の値を必要とする。しかしこの差が20%を超えると、低分子量成分が多くなりすぎるため、製膜性や機械的耐熱性に難点が生じるため、実用上好ましくない。
【0060】
前述の微分分布値は、GPC法においては、一般に次のようにして測定することができる。GPCの示差屈折検出計(RI検出器)において検出される強度分布の時間曲線(一般には、溶出曲線と呼ぶ)を、分子量既知の物質から得た検量線を用い、対数分子量(Log(M))に対する分布曲線とする。ここで、RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、分布曲線の全面積を100%とした場合の対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることが出来る。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得ることができる。したがって、本発明における「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布のことを意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読み、本態様に係る関係を得ることが出来る。
【0061】
従来の技術では、立体規則性度(結晶性)の値を高くすることによって、高い耐電圧性を実現できるが、それだけでは、延伸性が低下し、非常に薄いフィルムを得ることは困難である。2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の重量平均分子量、分子量分布、高分子量成分、及び低分子量成分の構成比を前記範囲に収まるように調整することにより、さらなる耐電圧性と延伸性とを付与することができる。
【0062】
本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、前記フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分子量分布の構成において、重量平均分子量がより低分子量側の、重量平均分子量Mwが約31600(Log(M)=4.5)の成分が、重量平均分子量がより高分子量側の、重量平均分子量Mwが100万(Log(M)=6)の成分よりも多く存在する。前記ポリプロピレン樹脂の立体規則性度と分子量分布がほぼ同一のフィルムにおいては、ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量が小さい程、その絶縁破壊電圧が高い、すなわち、耐電圧性が良好であることが知られている。このように、分子量分布、すなわち、Mw/Mn、及びMz/Mnを前記範囲内に維持しながら、低分子量成分を多く存在させることにより、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性を向上させることが出来る。
【0063】
本発明のポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造するためのポリプロピレン原料樹脂を製造する重合方法としては、上述の調製方法に限らず、一般的に公知の重合方法をなんら制限無く用いることが出来る。一般的に公知の重合方法としては、例えば、気相重合法、塊状重合法、スラリー重合法が例として挙げられる。
【0064】
本発明のポリプロピレン原料樹脂の重合法としては、1つの重合反応機による単段(一段)重合反応であってもよく、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合反応であっても良い。さらには、反応器中に水素あるいはコモノマーを分子量調整剤として添加して行う重合方法であっても良い。
【0065】
また、本発明のポリプロピレン2軸延伸フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂のLog(M)=4.5の微分分布値から、高分子量側のLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差の値を、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8〜20%の間に調整する方法としては、重合条件によって、分子量分布を調整したポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法、分解剤によって、高分子量成分を選択的に分解処理したポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法、あるいは異なる分子量の樹脂をブレンドしたポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法などが挙げられる。
【0066】
重合条件によって、分子量分布の構成を調整したポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法を用いる場合、前記本発明のオレフィン系重合用触媒を用いてポリプロピレン原料樹脂を製造する方法であれば、単段重合反応によって、分子量分布や重量平均分子量の構成を容易に調整することが可能となるため好ましい。
一方、多段重合反応により製造したポリプロピレン原料樹脂を用いてフィルムの製造を行う場合、例えば、次のような方法でポリプロピレン原料樹脂を製造することができる。
【0067】
触媒の存在下、高分子量重合反応器と低分子量または中分子量反応器の複数の反応器を用いて、高温で重合を行う。生成樹脂の高分子量成分、及び低分子量成分は、反応器における順番を問わず調整することができる。まず、第1重合工程において、原料であるプロピレン、及び触媒が第1重合反応器に供給される。これらの成分とともに、分子量調整剤としての水素を、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量を混合する。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70〜100℃程度、滞留時間は20分〜100分間程度であることが好ましい。複数の反応器は、例えば直列に繋いで使用することができ、その場合、第1の工程の重合生成物は、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに連続的に次の反応器に送られる。続いて、第1重合工程の重合生成物よりも低い重量平均分子量、あるいは高い重量平均分子量を有する重合物を調整するための第2の重合が行われる。第1及び第2の反応器の収量(生産量)を調整することによって、高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を調整することが可能となる。
【0068】
使用される触媒としては、本発明に係る前記オレフィン系重合用触媒を用いる事が好ましい。また、助触媒成分やドナーを含んでも構わない。触媒や重合条件を適宜調整することによって、分子量分布をコントロールすることが可能となるため好ましい。
【0069】
過酸化分解によって、分子量分布を調整したポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法を用いる場合、過酸化水素や有機過酸化物などの分解剤による過酸化処理によってポリプロピレン原料樹脂の分子量分布を調整した、ポリプロピレン原料樹脂を用いる事が好ましい。
ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに過酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれることが知られている。したがって、高分子量成分から高い確率で分解が進行し、その結果、低分子量成分が増大し、分子量分布の構成を調整することが出来る。低分子量成分を適度に含有しているポリプロピレン原料樹脂を過酸化分解により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。
【0070】
重合して得たポリプロピレン原料樹脂の重合粉、あるいはペレットと、有機過酸化物として、例えば、1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンなどを、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対して、0.001質量%〜0.5質量%程度、目標とする高分子量成分、及び低分子量成分の組成(構成)を考慮しながら調整添加する。 目的の組成を有するポリプロピレン原料樹脂の重合粉、又はペレットを、溶融混練器機にて、180℃〜300℃程度で溶融混練することによって、目的の分子量分布を有するポリプロピレン原料樹脂を得ることが出来る。
【0071】
ブレンド(樹脂混合)により低分子量成分の含有量を調整したポリプロピレン原料樹脂を用いてポリプロピレン2軸延伸フィルムを製造する方法を用いる場合には、異なる分子量の原料樹脂を、少なくとも2種類以上の原料樹脂を、ドライあるいは、溶融混合方法によって得られたポリプロピレン原料樹脂を用いる事が好ましい。
一般的には、主要樹脂(A)に、それより重量平均分子量が高いか、あるいは低い添加樹脂(B)を、主要樹脂(A)の総質量に対して、1〜40質量%程度混合する、2種のポリプロピレン混合系をポリプロピレン原料樹脂として用いる事が好ましい。前記ポリプロピレン混合系は、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましい。
【0072】
また、前記混合調整を用いる場合、MFRにより、樹脂の平均分子量を測定することもできる。この場合、主要原料(A)と添加樹脂(B)のMFRの差は、1〜30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から良い。
異なる分子量のポリプロピレン原料樹脂(A)、および添加樹脂(B)を混合する方法としては、特に制限はないが、重合粉あるいはペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、主要樹脂(A)と添加樹脂(B)の重合粉あるいはペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法などがあるが、いずれでも構わない。
【0073】
使用するミキサーや混練機にも特に制限は無く、また、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの何れを用いてもよい。さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
【0074】
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練さえ得られれば、混練温度にも特に制限はないが、一般的には、200℃から300℃の範囲であり、230℃から270℃が好ましい。混練温度が300℃をこえると、樹脂の劣化を招くので好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによって、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることが出来る。
【0075】
本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルム中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を良化するために可能な限り少ないことが好ましく、ポリプロピレンフィルムの総質量に対して、質量基準で50ppm以下、好ましくは40ppm以下である。
【0076】
上述の方法等によって、本発明のポリプロピレン2軸延伸フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂のLog(M)=4.5の微分分布値から、高分子量側のLog(M)=6のときの微分分布値を引いた差の値を、Log(M)=4.5のときの微分分布値に対して、8〜20%の間に調整することができる。本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記オレフィン系重合用触媒を用いることにより得られたポリプロピレン原料樹脂を、フィルムに成型して得られたものである事が好ましい。
また、本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂が、前述の如き重量平均分子量、及び分子量分布を有すると同時に、高温核磁気共鳴測定(NMR)によって求められる立体規則性度であるメソペンタッド分率[「mmmm」]が、94%以上98%未満であり、さらに好ましくは、95%以上97%以下である分子特性を有することを特徴とするコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムであることが好ましい。
【0077】
メソペンタッド分率[mmmm]が94%以上であると、立体規則性の高い成分により、樹脂の結晶性が向上し、高い耐電圧特性が奏される。一方、メソペンタッド分率[mmmm]が94%未満であると、耐電圧性や、機械的耐熱性が劣る傾向にある。また、メソペンタッド分率[mmmm]が98%以上であると、キャスト原反シート成形の際の固化速度(結晶化速度)が早くなりすぎ、シート成形用の金属ドラムからの剥離が発生し易くなったり、延伸性が低下する。すなわち、本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率[mmmm]が、94%以上98%未満であれば、樹脂の結晶性が向上して高い耐電圧特性を有すると共に、キャスト原反シート成形の際の固化速度が速くなりすぎず、シート成形用の金属ドラムからの剥離が発生しにくいため好ましい。
ここで、「メソペンタッド分率[mmmm]」とは、5個隣接したモノマー単位の立体規則性含量を決定するための指標である。
【0078】
前記メソペンタッド分率([mmmm])を測定するための高温NMR装置としては、特に制限はなく、ポリオレフィン類の立体規則性度が測定可能な一般に市販されている高温型核磁気共鳴(NMR)装置、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500等が利用可能である。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、溶媒には、オルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))を用いる。高温NMRによる方法は、公知の方法、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、610頁」に記載の方法により行うことが出来る。
【0079】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとされる。
【0080】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(「mmmm」や「mrrm」など)に由来する各シグナルの強度の積分値の百分率で算出される。「mmmm」や「mrrm」などに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参照して決定することができる。
【0081】
このように、本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂は、前記載の低分子量成分、すなわち、重量平均分子量が1万〜10万の低分子量成分の適度な含有によって、従来技術のようにメソペンタッド分率で、98%を超えるような非常に高い立体規則性度を有せずとも、高い耐電圧性を維持したまま、延伸性を付与することができる。
前記メソペンタッド分率([mmmm])は、前出の重合条件や触媒の種類、触媒量など、適宜調整することによって、コントロールすることができる。
本発明において、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの高温耐電圧性(絶縁破壊強度)とは、JIS−C2330(対応規格 IEC60674−3−1 1998) 7.4.11.2(絶縁破壊電圧・平板電極法:B法)に準じて交流(AC)による絶縁破壊電圧値を測定した交流絶縁破壊強度、及びJIS−C2330 7.4.11.2(絶縁破壊電圧・平板電極法:B法)に準じ、絶縁破壊電圧値を直流(DC)にて測定した直流絶縁破壊強度のことを意味する。本発明において、「高温耐電圧性に優れる」とは、前記の交流絶縁破壊強度の値が300Vac/μm以上であり、直流絶縁破壊強度の値が480Vdc/μm以上であることを意味する。
【0082】
このようにして、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムの高温下における短期間の耐電圧性(絶縁破壊電圧値)は改善することができる。しかしながら、市場、特に、前出の自動車産業用途においては、高温下で、高電圧を負荷し続けた場合のフィルムの長寿命化(長期耐用性)が、一層求められている。
上述のような高温下、高電圧をコンデンサーに負荷し続けると、コンデンサー素子においては、フィルム内で自己発熱が発生し、酸化、及び熱劣化が時間と共に進行し、その結果、コンデンサー性能、すなわち、コンデンサーの静電容量が低下する。
【0083】
このようなコンデンサー素子(あるいはコンデンサーフィルム)の長期耐用性は、コンデンサー素子に、実際に使用する温度や電圧よりも高温・高電圧を負荷させて、コンデンサー素子(あるいはコンデンサーフィルム)の寿命(長期耐用性)を評価する方法が一般に良く知られている。具体的には、100℃以上(例えば105℃)の環境温度の下、直流高電圧(例えば600〜900V)を、コンデンサー素子に負荷し続けた場合、コンデンサー素子の静電容量の変化率を長期間(例えば2000時間:約80日間)にわたり記録する方法が良く知られている。
【0084】
劣化の進行が少なく長期耐用性が良好なフィルム、すなわち長寿命のフィルムを用いたコンデンサーは、上述のような高電圧を2000時間負荷しても、フィルムの劣化の程度が少ないため、静電容量の低下が小さい。一方、劣化の進行が速く、長期耐用性に劣るフィルムを用いたコンデンサーの場合は、時間とともに静電容量の低下が大きくなる傾向にある。
このように、コンデンサーフィルムの長期耐用試験は、コンデンサー素子として、前述の高温、高電圧を所定時間(例えば2000時間:約80日間)負荷し続けた場合の静電容量変化によって評価されるため、この静電容量変化の改善が重要な技術要件となる。
ここで、本発明のコンデンサー用フィルムの長期耐用性(静電容量変化)とは、105℃の高温槽中にて、コンデンサー素子に直流1.0kVの電圧を1分間負荷し、電圧負荷を終えた後の素子の容量をLCRテスターで測定し、素子を再度高温槽内に戻し、2回目の電圧負荷を行い、2回目の容量変化(累積)を求め、これを4回繰り返す手法により評価した、1回目と4回目の電気容量の変化率のことを意味する。本発明において、「長期耐用性に優れる」とは、前記手法で測定した4回目の電気容量変化率が、−20%以下の値であることを意味する。
【0085】
本発明は、さらに、長期使用時に、時間と共に進行する劣化を抑制することのできる、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムにも関する。具体的には、前記2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているアイソタクチックポリプロピレンが、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を少なくとも1種類以上含有し、そのフィルム中における前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の残存含有量は、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4000ppm以上6000ppm以下であることを特徴とする、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【0086】
上記本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いられるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)(BASF社製、商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](BASF社製、商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製、商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(BASF社製、商品名:イルガノックス1098)などが挙げられる。このうち、高分子量であり、ポリプロピレン樹脂との相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が最も好ましい。
【0087】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムにおけるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量、すなわち、フィルム中における残存量は、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4000ppm以上6000ppm以下である。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量(フィルム中における残存量)が、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4000ppm未満の場合、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの長期寿命試験中における酸化劣化抑制効果が不十分である。すなわち、高温、高電圧下における長期耐用性の向上効果、すなわち、静電容量の低下の抑制が十分に発揮されず好ましくない。一方、フィルム中のカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の残存量が、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で6000ppmを超えると、酸化防止剤自身が電荷のキャリア(ある種の不純物)となる場合があり、結果として、高電圧下において電流を発生し、熱暴走あるいは破裂などと呼ばれる破壊に至らしめる現象が発生するため、かえって長期耐性を失うことになるので好ましくない。カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤のフィルム中の残存量は、より好ましくは、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4500ppm以上6000ppm以下であり、さらにより好ましくは、5000ppm以上6000ppm以下である。
【0088】
ポリプロピレン樹脂と分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、上述の最適な範囲で含有させたコンデンサー用フィルムは、前述の分子量分布調整によって得られる高い耐電圧性(絶縁破壊電圧値)を維持したまま、100℃以上という非常に高温の寿命促進試験において、1000時間、すなわち、40日以上の長期に渡って、静電容量が低下せず(劣化が進行せず)、長期耐用性に優れている。
フィルム中のカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の含有量を上述の範囲にコントロールする方法については、後述の酸化防止剤の箇所にて説明する。
【0089】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分子特性(重量平均分子量、分子量分布、分子量分布の構成、立体規則性度)は、フィルム製造用の原料樹脂そのものの値ではなく、製膜工程を経た後のフィルムを形成している樹脂の値のことを指す。このフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂は、製膜工程中に、押出器内では、熱劣化、酸化劣化、せん断劣化、または伸長劣化などを、少なからず発生して、分解が進んでいる。それに伴い、重量平均分子量、分子量分布、立体規則性も、ポリプロピレン原料樹脂と製膜後のフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂とでは、多くの場合、異なるものとなる。フィルムの耐電圧性や耐熱性に影響を及ぼすものは、フィルムの状態となっている、ポリプロピレン樹脂の分子特性の方である。
【0090】
劣化の進行度合い、即ち分子量分布や立体規則性の変化は、押出器内の窒素パージ(酸化の抑制)、押出機内のスクリュー形状(せん断力)キャスト時のTダイの内部形状(せん断力)、酸化防止剤の添加量(酸化の抑制)、キャスト時の巻き取り速度(伸長力)などにより調整することが可能である。
【0091】
ポリプロピレン原料樹脂中には、必要に応じて押出機内での劣化を抑制するための酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
【0092】
ポリプロピレン原料樹脂中に添加される酸化防止剤としては、押出機内での熱劣化、又は酸化劣化を抑制することを目的とした酸化防止剤(以下、「1次剤」とも称する)と、コンデンサーフィルムとしての長期使用における劣化抑制、コンデンサー性能向上に寄与する酸化防止剤(以下、「2次剤」とも称する)の少なくとも2つの目的を持って使用される。
これら1次剤と2次剤は、それぞれ異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0093】
1次剤、及び2次剤として、異なる種類の酸化防止剤を用いる場合、押出機内での劣化抑制を目的とする1次剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対して、質量基準で1000ppm〜4000ppm程度添加できる。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない。ここで、「ほとんど残存しない」とは、フィルム中の前記1次剤の残存量が、ポリプロピレンの原料樹脂の総質量に対して、質量基準で100ppm未満のことを指す。
【0094】
本発明が目的とする、コンデンサーとして長期使用した際の劣化抑制、性能向上に寄与する2次剤としては、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられる。このうち、高分子量であり、ポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、最も好ましい。
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対して、質量基準で5000ppm以上7000ppm以下の範囲であることが好ましく、5500ppm以上7000ppm以下であることがより好ましい。
【0095】
本発明に係るコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに含有される、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤のフィルム中における残存量を、前記フィルムの総質量に対して、質量基準で4000ppm以上6000ppm以下とするためには、その添加量を前述の範囲とする必要がある。これは、前述の様に、押出機内での劣化抑制を目的とする1次剤の有無によらず、押出機内で少なからず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤も消費されるためである。押出器内でのカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量は、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対して、質量基準で、通常1000ppm〜2000ppm程度である。
【0096】
即ち、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対する、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量が、質量基準で5000ppmより少ないと、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム内における前記酸化防止剤の残存量が4000ppmより少なくなるため、高電圧下における長期耐用性の向上効果が十分に発揮されない。一方、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量が7000ppmより多いと、フィルム中の前記酸化防止剤の残存量が6000ppmを超え、前述の如く、酸化防止剤自身が、電荷のキャリア(ある種の不純物)となり、かえって長期耐性を失う傾向にある。
【0097】
押出機内での熱劣化、又は酸化劣化を抑制することを目的とする1次剤として、上述の酸化防止剤を使用しない場合、この目的の酸化防止剤として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤で代用することができる。この場合、押出機内での成形工程での劣化抑制に、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤がかなり消費されるので、1次剤を用いない場合の、前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加量は、ポリプロピレン原料樹脂の総質量に対して、質量基準で6000ppm以上7000ppm以下とすることが好ましい。
【0098】
<キャスト原反シートの成形方法>
本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための、延伸前のキャスト原反シートを成形する方法としては、公知の各種方法を採用することが出来る。例えば、原料となるポリプロピレン原料樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン原料樹脂ペレット(および/あるいは重合粉)あるいは、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットからなる原料ペレット類を押出機に供給した後、170〜320℃で加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃で再度加熱溶融してTダイから溶融押し出しする。その後、80℃〜140℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させ、未延伸のキャスト原反シートを成形する方法等を採用できる。
【0099】
このシート成形の際に、金属ドラム群の温度を、80℃〜140℃、好ましくは90℃〜120℃に保持することにより、得られるキャスト原反シートを形成しているポリプロピレン樹脂のβ晶分率は、X線法で1%以上50%以下、好ましくは、5%以上30%未満程度となる。なお、この値は、β晶核剤を含まない時の値である。
キャスト原反シートを形成しているポリプロピレン樹脂のβ晶分率が低すぎる場合は、耐電圧特性などコンデンサーの特性が向上するものの、フィルム表面を平滑化するため、素子巻き等の加工適性に劣る傾向にある。しかしながら、前記β晶分率が前述の範囲であれば、コンデンサー特性と素子巻き加工性の両物性を十分に満足させることができる。
【0100】
前記β晶分率は、X線回折強度測定によって得られた値である。その方法は、「A.Turner−Jones et al.,Makromol.Chem.,75巻,134頁 (1964)」に記載されている方法によって算出される値であり、通常、K値と呼ばれている値である。即ち、前記β晶分率とは、α晶由来の3本の回折ピークの高さの和と、β晶由来の1本の回折ピークの比によってβ晶の比率を表現したものである。
上記キャスト原反シートの厚さには特に制限はないが、通常、0.05mm〜2mm、好ましくは、0.1mm〜1mmである。
【0101】
<2軸延伸ポリプロピレンフィルムの成形方法>
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って作製することができる。延伸は、縦、及び横の2軸に配向させる2軸延伸が好ましい。また、延伸方法としては、逐次2軸延伸方法が好ましい。逐次2軸延伸方法としては、まずキャスト原反シートを100〜160℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間にポリプロピレンキャスト原反シートを通して、流れ方向に3〜7倍に延伸し、直ちに室温に冷却する。この縦延伸工程の温度を適切に調整することにより、すなわち、上述の100〜160℃に保つことにより、β晶が融解してα晶に転移し、その結果、フィルム表面の凹凸が顕在化する。引き続き、前記延伸フィルムをテンターに導いて160℃以上185℃以下の温度で幅方向に3〜11倍に延伸した後、緩和、熱固定を施し巻き取る。巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の温度下でエージング処理を施された後、所望の製品幅に裁断することが出来る。
【0102】
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。
本発明のフィルムの表面には、素子巻き適性を向上させつつ、コンデンサー特性を良好とする適度な表面粗さを付与することが好ましい。
【0103】
すなわち、本発明は、さらに、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくともその一方の面の表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.05μm以上0.15μm以下、且つ最大高さ(Rz)で0.5μm以上1.5μm以下であるように微細粗面化されていることを特徴とする、コンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【0104】
RaやRz(旧JIS定義のRmax)がある程度大きい値であると、巻き取り、巻き戻しなどの加工や、コンデンサー加工の際には、素子巻き加工において、フィルム間に適度な空隙が生じるためフィルムが適度にすべり、巻取りにシワが入りにくく、かつ横ズレも起きにくくなる。しかし、それらの値が大きすぎると、表面光沢性や透明性などに実用上の問題を生じる。また、コンデンサーにおいては、フィルム間の層間空隙が大きくなることによる重量厚み低下が起こり、耐電圧性の低下を招くため、好ましくない。逆に、突起体積が低く、フィルムの表面がある程度平滑でRaやRzがある程度小さい値であると、耐電圧性の面では有利となるが、前記突起体積が低い値でRaやRzが小さくなりすぎると、フィルムが滑りにくく、巻き加工の際にシワが発生しやすくなり、生産性が低下するため好ましくない。また、細かなシワなどはコンデンサーの耐電圧性の悪化をも招くので実用上問題がある。
【0105】
RaおよびRz(旧JIS定義のRmax)の測定は、例えばJIS−B0601:2001(対応規格ISO4287 1997)等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式、あるいは非接触式表面粗さ計などを用いて測定される。装置のメーカーや型式には何ら制限は無い。本発明における検討では、小坂研究所社製、万能表面形状測定器SE−30型を用い、粗さ解析装置AY−41型によって、JIS−B0601:2001に定められている方法に準拠してRaおよびRz(旧JIS定義のRmax)を求めた。接触法(ダイヤモンド針等による触針式)、非接触法(レーザー光等による非接触検出)のどちらでも測定可能であるが、本発明においては、接触法により測定し、その値の信頼性を、必要に応じて非接触法値により補足参照して行った。
【0106】
フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法など、公知の各種粗面化方法を採用することが出来るが、その中でも、不純物の混入などの必要がない、β晶の生成割合をコントロールする手法を用いた粗面化法が好ましい。延伸後のポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂のβ晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度やキャストスピードによってもコントロールすることができる。また、縦延伸工程のロール温度ではβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメーターについて最適な製造条件を選択することで、フィルム表面に微細な粗表面を得ることが出来る。
【0107】
本発明においては、本発明に係る範囲の低分子量成分による、2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の結晶化挙動の変化によって、特徴的な微結晶が形成する。そのため、フィルム表面に微細な凹凸を得るためのβ晶生成にも有用な効果を得ることが出来る。つまり、β晶生成の割合を調整するために、ポリプロピレン原料樹脂の製造条件を従来条件から大きく変更しなくても、本発明に係る特徴的な分子量分布の構成とすることによって、球晶サイズが小さく、かつ球晶密度が大きくなりすぎないように制御することができる。そのため、本発明に係る前記表面粗さを実現することができ、他の性能を損なうことなく、効果的に巻き加工適性を付与することが可能となる。
【0108】
本発明は、さらに、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さが、1μm以上6μm以下、好ましくは1.5μm以上4μm以下であり、より好ましくは1.5μm以上3.5μm以下、さらに好ましくは1.8μm以上3μm以下であることを特徴とする極薄のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
本発明において、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さとは、JIS−C2330に準拠して、JIS B7502 1994(対応規格 ISO3611 1978)により、マイクロメーターを用いて測定した、2軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの値のことを指す。
【0109】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、金属蒸着加工工程などの後工程において、接着特性を高める目的で、延伸・熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行っても構わない。コロナ放電処理としては公知の方法を用いることができるが、雰囲気ガスとして空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガス中で処理することが望ましい。
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムには、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の他、塩素吸収剤等の必要な安定剤をコンデンサー特性に影響を及ぼさない範囲内で添加しても良く、塩素吸収剤としては、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸が好ましく用いられる。
【0110】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルム中に含まれる総灰分は、電気特性を良化するために、可能な限り少ないことが好ましく、ポリプロピレンフィルムの総質量に対して、質量基準で50ppm以下、好ましくは、40ppm以下である。
また、本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムの上述の特性(重量平均分子量、分子量分布、立体規則制度、フィルムの厚み、耐電圧性、延伸性能、酸化防止剤の含有量、及び表面粗さ等)は、キャスト原反シートを2軸延伸して得られたポリプロピレンフィルム、すなわち、金属化工程前のポリプロピレンフィルムの特性のことを指す。
【0111】
<コンデンサー用金属化ポリプロピレンフィルム>
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムをコンデンサーとして加工する際の電極は、特に限定されるものではなく、例えば、金属箔や、少なくとも片面を金属化した紙やプラスチックフィルムであることが好ましいが、小型・軽量化が一層要求されるコンデンサー用途においては、本発明のフィルムの片面もしくは両面を直接金属化した電極が好ましい。すなわち、本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面を金属化することにより、本発明のコンデンサー用金属化ポリプロピレンフィルムを得ることができる。このときフィルムの片面もしくは両面を金属化するのに用いられる金属としては、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、ニッケルなどの単体、複数種の混合物、合金などを制限無く用いることができる。このうち、環境や、経済性、コンデンサー性能などを考慮し、亜鉛やアルミニウムを用いることが、好ましい。
【0112】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムを直接金属化する方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。生産性や経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法としては、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを挙げることができるが、特に限定されるものではなく、適宜最適なものを選択すればよい。
【0113】
蒸着により金属化する際のマージンパターンも特に限定されるものではないが、コンデンサーの保安性等の特性を向上させる点から、フィッシュネットパターンないしはTマージンパターン等といった、いわゆる特殊マージンを含むパターンが好ましい。このようなパターンを本発明のフィルムの片方の面上に施した場合、保存安定性が高まり、コンデンサーの破壊、ショートの防止、などの点からも効果的であり好ましい。
マージンを形成する方法はテープ法、オイル法など、一般に公知の方法を、何ら制限無く使用することが出来る。
【0114】
本発明のコンデンサー用2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、表面が微細に粗面化されているため、素子巻き適性に優れており、耐電圧特性も高い。また、フィルムの厚みが1〜6μmと非常に薄いフィルムであるため、高い静電容量を発現し易い上、長期耐用性にも優れているので、小型、かつ、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上の高容量のコンデンサーに極めて好適である。
【実施例】
【0115】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0116】
〔特性値の測定方法ならびに効果の評価方法〕
各実施例における特性値の測定方法及び効果の評価方法はつぎの通りである。
(1)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、および微分分布値の測定
2軸延伸ポリプロピレンフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、分布曲線の微分分布値の評価は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、以下の条件で測定し行った。
測定機:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC
HLC−8121GPC−HT型カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHHR−H(20)HTを3本連結
カラム温度:140℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線の作製には、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用い、測定結果はポリプロピレン値に換算した。
【0117】
微分分布値は、次のような方法で得た。
まず、RI検出計において検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、検量線を用いて重量平均分子量(Log(M))に対する分布曲線とした。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得ることが出来る。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6のときの微分分布値を読んだ。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、通常、GPC測定装置に内蔵の解析ソフトウェアを用いて行うことが出来る。
【0118】
(2)メソペンタッド分率([mmmm])測定
ポリプロピレンフィルムを以下の溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で、メソペンタッド分率([mmmm])を求めた。
測定機:日本電子株式会社製、高温FT−NMR JNM−ECP500
観測核:
13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン〔ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(4/1)〕
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4500回
シフト基準:CH
3(mmmm)=21.7ppm
5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrmなど)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrmなどに由来する各シグナルの帰属に関しては、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」などのスペクトルの記載を参考とした。
【0119】
(3)2軸延伸ポリプロピレンフィルムの高温耐電圧性(交流絶縁破壊強度)の評価
テスト延伸により得た2軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性は、JIS−C2330 7.4.11.2(絶縁破壊電圧・平板電極法:B法)に準じて交流(AC)による絶縁破壊電圧値を測定することによって評価した。昇圧速度は100Vac/sec、破壊の際の遮断電流は10mAとし、測定回数は18回とした。ここでは、測定された平均電圧値を、フィルムの厚みで割ったものを、絶縁破壊強度として評価に用いた。送風循環式高温槽内にフィルム及び電極冶具をセットして、評価温度100℃にて、測定を行った。
高温交流絶縁破壊強度は、300Vac/μm以上が、望ましいと言える。
【0120】
(4)フィルム厚の評価
2軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さ(μm)は、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0121】
(5)極薄フィルムの生産容易性
生産設備にて、極薄フィルムを生産した際の生産性(延伸容易)を、生産中(フィルムの延伸中)の破断頻度等を勘案し、定性的に判断した。本発明において、破断頻度が小さいフィルムを、極薄フィルムの生産性が高いとし、破断頻度が大きいフィルムを、極薄フィルムの生産性が低いとして評価した。
【0122】
(6)2軸延伸ポリプロピレンフィルム中の酸化防止剤残存量の測定
2軸延伸ポリプロピレンフィルムを裁断し、溶媒を加え、超音波抽出でフィルム中に残存している酸化防止剤を抽出した。
得られた抽出液を、高速液体クロマトグラフ/紫外線検出器を用いて2次剤の測定を行った。得られたクロマトグラフのピーク強度から、予め求めてある検量線を用いて、2次剤の残存量を計算した。
【0123】
(7)表面粗さの測定
2軸延伸ポリプロピレンフィルムの中心線平均粗さ(Ra)、および、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)の測定は、小坂研究所社製、万能表面形状測定器SE−30型を用い、粗さ解析装置AY−41型によって、JIS−B0601に定められている方法に準拠して求めた。測定回数は3回行い、その平均値を評価に用いた。本評価では、接触法により測定し、その値の信頼性を、必要に応じて非接触法値により補足、確認した。
【0124】
(8)極薄フィルムの高温耐電圧性(直流絶縁破壊強度)の評価
2軸延伸フィルムの耐電圧性は、JIS−C2330 7.4.11.2(絶縁破壊電圧・平板電極法:B法)に準じ、絶縁破壊電圧値を直流(DC)にて測定することによって評価した。昇圧速度は100Vdc/sec、破壊の際の遮断電流は10mAとし、測定回数は18回とした。ここでは、測定された平均電圧値を、フィルムの厚みで割ったものを、絶縁破壊強度として評価に用いた。送風循環式高温槽内にフィルム及び電極冶具をセットして、評価温度100℃にて、測定を行った。
絶縁破壊強度は、480Vdc/μm以上が、実用上望ましいと言える。
【0125】
(9)コンデンサーフィルムとしての適性評価
極薄化、表面の微細化、高温下での高い耐電圧性について勘案し、コンデンサーフィルムとしての適性を総合的に判断した。好適なものを「A」とし、従来と変わらないものを「B」と評価した。
【0126】
(10)コンデンサー素子の作製
2軸延伸ポリプロピレンフィルムに、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗12Ω/□にてアルミニウム蒸着を施し、金属化ポリプロピレンフィルムを得た。小幅にスリットした後に、2枚の金属化フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機 3KAW−N2型を用い、巻き取り張力400gにて、1150ターン巻回を行った。
素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて6時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサーを得た。出来上がったコンデンサーの静電容量は、100μF(±5μF)であった。
【0127】
(11)コンデンサー素子の高温耐電圧性試験
得られたコンデンサー素子の高温耐電圧試験を以下の手順で行った。
まず、予め素子を試験温度(105℃)にて1時間以上予熱した後、試験前の初期の電気容量を、日置電機株式会社製LCRハイテスター3522−50にて評価した。次に、105℃の高温槽中にて、高圧電源を用い、コンデンサー素子に直流1.0kVの電圧を1分間負荷した。電圧負荷を終えた後の素子の容量をLCRテスターで測定し、電圧負荷前後の容量変化率を算出した。ついで、素子を再度高温槽内に戻し、2回目の電圧負荷を行い、2回目の容量変化(累積)を求め、これを4回繰り返した。1回目と4回目の容量変化率を評価に用いた。
4回目の電気容量変化率が、−20%以下が実用上好ましいといえる。
【0128】
〔重合触媒:固体状チタン触媒成分(I)の調製〕
精製したn−ヘプタン500ml、ジエチルアルミニウムクロリド0.5モル(有機金属化合物触媒成分(II))にジイソアミルエーテル1.2モル(電子供与体(a))を25℃で2分間かけて加え、10分間保持した。(反応液(I))
窒素置換された2リットルの反応器に四塩化チタン4.0モルを加え、35℃に昇温後、これに前記の反応液(I)を3時間かけて加え、30分間保持した。次いで75℃に昇温し、1時間保持した。
前記の液体を室温まで冷却し、上澄み液を取り除き、次いで精製n−ヘプタン1リットルを加え、静置させ、上澄みを取り除く、所謂洗浄操作を合計4回実施した。
得られた固体の100グラムを精製n−ヘプタンに懸濁させ、20℃のイソアミルエーテル80グラム(電子供与体(a))と四塩化チタン180グラム(電子供与体(b))とを室温にて1時間かけて加え、65℃で1時間保持した。その後、室温まで徐冷し、上澄み液を除去、精製n−ヘプタンを2リットル加える洗浄操作を合計4回繰り返し、固体状チタン触媒成分(I)を得た。
【0129】
〔重合実施例〕
内容積600リットルの重合器に、室温で200リットルのプロピレンおよび水素6200NLを加えた後、ジエチルアルミニウムクロリド100ミリモル(有機金属触媒成分(II))、パラトルイル酸メチル80ミリモル(電子供与体(III))、および固体状チタン触媒成分(I)をチタン原子換算で15ミリモルを加え、速やかに重合器内を70℃まで昇温した。70℃で1時間保持した後、未反応のプロピレンをパージし、窒素雰囲気下、精製ヘプタン200リットルに懸濁した。その後、乾燥した窒素雰囲気の別容器に前記スラリーを移送し、80リットルのメタノールと、20%水酸化ナトリウム水溶液400ミリリットルを更に加え、攪拌した。
攪拌完了後、静置して上記の水−メタノール相を除去した後、水による洗浄を繰り返し、次いでヘプタンを濾別し、ヘプタンによる洗浄操作を行った。更に80℃で一晩減圧乾燥し、ポリプロピレン重合体粒子を得た。
【0130】
〔ポリプロピレン樹脂〕
前記固体状チタン触媒成分(I)を用い、重合条件を変化させることにより低分子量成分量を調整したポリプロピレン原料樹脂A、およびポリプロピレン原料樹脂Bを得た。
また、比較のため、マグネシウム、塩素、チタンおよびフタル酸ジイソブチルを含む公知の固体状チタン触媒成分を含み、電子供与体(III)を含まないオレフィン系重合用触媒を用いて、重合条件を適宜変化させることによってポリプロピレン原料樹脂C、およびポリプロピレン原料樹脂Dを得た。
さらに、ポリプロピレン原料樹脂Dに過酸化処理を施し、低分子量成分量を調整してポリプロピレン原料樹脂Eを得た。
また、ポリプロピレン原料樹脂Aに過酸化処理を施し、低分子量成分量を調整してポリプロピレン原料樹脂Fを得た。
表1および2には、これらポリプロピレン原料樹脂から製造したフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値を示した。
【0131】
<研究用小型延伸装置による製造>
〔実施例1〕
前記固体状チタン触媒成分(I)を用いたポリプロピレン原料樹脂Aを押出機に供給して、樹脂温度250℃で溶融し、Tダイを用いて押出し、金属ドラムに巻きつけて固化させ、厚さ約250μmのキャスト原反シートを作製した。引き続きこの未延伸キャスト原反シートをブルックナー社製研究用延伸装置KARO IV ラボストレッチャーにて、150℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸した後、直ちに横方向に10倍に延伸して、厚さ5μmの薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性、並びにフィルムの物性値を表1にまとめる。なお、表1の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0132】
〔実施例2〕
実施例1のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、低分子量成分の含有量が異なるポリプロピレン原料樹脂Bを押出機に供給した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表1にまとめる。なお、表1の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0133】
〔比較例1〕
実施例1のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、フタル酸ジイソブチルを用いた触媒から得たポリプロピレン原料樹脂Cを押出機に供給した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表1にまとめる。なお、表1の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0134】
〔比較例2〕
実施例1のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、フタル酸ジイソブチルを用いた触媒から得たポリプロピレン原料樹脂Dを押出機に供給した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表1にまとめる。なお、表1の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0135】
〔比較例3〕
実施例1のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、ポリプロピレン原料樹脂Dに過酸化処理を施し、低分子量成分量を調整して作製したポリプロピレン原料樹脂Eを押出機に供給した以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表1にまとめる。なお、表1の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0136】
<生産設備による極薄フィルムの製造>
〔実施例3〕
実施例1のポリプロピレン原料樹脂Aを押出機に供給して、樹脂温度250℃で溶融し、Tダイを用いて押出し、表面温度を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させ、厚さ約125μmのキャスト原反シートを作製した。引き続きこの未延伸キャスト原反シートを140℃の温度で、流れ方向に5倍に延伸し、直ちに室温まで冷却した後、ついでテンターにて165℃の温度で横方向に10倍に延伸して、厚さ2.5μmの非常に薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表2にまとめる。また、得られた2軸延伸ポリプロピレンフィルムから作製したコンデンサー素子の耐電圧性を表3にまとめる。なお、表2の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率、2次酸化防止剤残存量はフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0137】
〔実施例4〕
実施例3のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、ポリプロピレン原料樹脂Fを押出機に供給した以外は、実施例3と同様にして、厚さ2.5μmの非常に薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表2にまとめる。また、得られた2軸延伸ポリプロピレンフィルムから作製したコンデンサー素子の耐電圧性を表3にまとめる。なお、表2の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率、2次酸化防止剤残存量はフィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0138】
〔比較例4〕
実施例3のポリプロピレン原料樹脂Aに代えて、ポリプロピレン原料樹脂Eを押出機に供給した以外は、実施例3と同様にして、厚さ2.5μmの非常に薄い2軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。得られたフィルムの分子特性並びにフィルムの物性値を表2にまとめる。また、得られた2軸延伸ポリプロピレンフィルムから作製したコンデンサー素子の耐電圧性を表3にまとめる。なお、表2の分子量微分分布値差、分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mn)、メソペンタッド分率、2次酸化防止剤残存量は、フィルムを形成しているポリプロピレン樹脂の分析値である。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
実施例1、2、3および4で明らかな通り、本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムは、高い絶縁破壊電圧値を有しているフィルムであるので、耐熱性能、及び高耐電圧性能に優れた、コンデンサー用フィルムとして、極めて好適なものであった。
【0143】
しかしながら、分子量分布が狭く、微分分布値差(低分子量成分量)が本発明の範囲外である従来技術では、絶縁破壊電圧値が劣るものであった(比較例1)。さらに、分子量分布が広くても、微分分布値差(低分子量成分量)が本発明の範囲外であると、絶縁破壊電圧値が劣るものであった(比較例2)。比較例1のポリプロピレン原料樹脂を過酸化分解し、微分分布値差(低分子量成分量)を増やしても、耐電圧性向上の効果は得られたものの、十分満足できる結果は得るには至らなかった(比較例3)。
【0144】
本発明の2軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合は、2.5μm厚フィルムが容易に得られた上、高い耐電圧性と微細な表面性能を兼ね備えていた(実施例3)のに対し、従来技術によると、延伸中破断が多く、2.5μm厚フィルムが容易には得られ難い上、耐電圧性能も充分とは言えないものであった(比較例4)。