特許第5733462号(P5733462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733462
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】自動試料注入装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20150521BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20150521BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01N30/24 E
   G01N1/00 101K
   G01N35/10 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-500059(P2014-500059)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2012083354
(87)【国際公開番号】WO2013121680
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2012-30155(P2012-30155)
(32)【優先日】2012年2月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄
(72)【発明者】
【氏名】湊 浩之
【審査官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−043403(JP,A)
【文献】 特開2000−146775(JP,A)
【文献】 米国特許第04757437(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00−30/96
G01N 1/00− 1/44
G01N 35/00−35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料容器を装填可能なラックと、
前記試料容器内に収容された試料を吸引するためのサンプリングニードルと、
前記ニードルをラックに対して水平面及び垂直方向に相対的に移動させる動作、並びに試料の吸引及び注入動作を制御する制御部と、
前記ラックの所定の位置に配置され、水平断面での内壁面形状が点対称であって所定の深さの凹部をもち、前記ニードルが前記凹部の内側に接触する基準部位と、
前記基準部位と前記ニードルとの接触を電気的に検出するための検出部と、を備え、
前記制御部は、前記検出部の検出情報に基づいて前記ラックの基準位置情報を得ることを特徴とする自動試料注入装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記基準部位内に前記ニードルの先端を移動させた後、前記検出部の検出情報に基づいて前記基準部位と前記ニードルとの接触が検出されるまで、前記水平面内におけるX方向の正負の両方向及び前記水平面内で前記X方向に直交するY方向の正負の両方向、並びに前記垂直方向であるZ方向へ前記ニードルを移動させ、前記基準部位と前記ニードルとの接触位置に基づいて、前記基準部位の前記内壁面形状の対称中心の位置を前記基準部位のX位置及びY位置として計算し、前記基準部位の底面の位置を前記基準部位のZ位置とし、前記基準部位のX位置、Y位置及びZ位置に基づいて前記基準位置情報を得る請求項1に記載の自動試料注入装置。
【請求項3】
前記ラックは、互いに異なる位置に2つ以上の前記基準部位を備え、
前記制御部は、複数の前記基準部位に対してそれぞれ基準部位のX位置、Y位置及びZ位置を計算する請求項2に記載の自動試料注入装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記基準部位内で前記X方向又は前記Y方向で前記ニードルを移動させて前記基準部位のX位置又はY位置を計算し、得られたX位置又はY位置から前記ニードルを前記Y方向又は前記X方向で移動させて前記基準部位のY位置又はX位置を計算し、得られたY位置又はX位置から前記ニードルを前記X方向又は前記Y方向で再度移動させて前記基準部位のX位置又はY位置を再度計算し、再度得られたX位置又はY位置から前記ニードルを前記Y方向又は前記X方向で再度移動させて前記基準部位のY位置又はX位置を再度計算する請求項2又は3に記載の自動試料注入装置。
【請求項5】
前記基準部位は、その底面の中央から所定の間隔をもつ位置又は側面に液抜き用の貫通孔を備えている請求項1から4のいずれか一項に記載の自動試料注入装置。
【請求項6】
前記基準部位は、前記ラックの前記試料容器の装着位置に着脱可能に配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の自動試料注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動試料注入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフやイオンクロマトグラフなどにおいて、試料容器にそれぞれ収容された試料を自動で吸引する自動試料注入装置が用いられる。自動試料注入装置は、試料容器内から試料を吸引するために、サンプリングニードルを試料容器のニードル突き刺し位置へ突き刺す。このとき、試料容器のニードル突き刺し位置を正確に把握するために、予め定められた突き刺し位置情報に対しての補正情報を事前の調整によって取得しておく必要がある。
【0003】
また、試料容器は、通常、ラックと呼ばれるプレート状のものの上に複数個並べられる。ラックは自動試料注入装置のラック配置位置に配置される。ラックに設けられた基準位置とニードルとの位置関係の情報が取得される。その位置関係の情報に基づいて、ラック上の全ての試料容器のニードル突き刺し位置の補正情報が取得される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−146775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動試料注入装置において、ニードル突き刺し位置の補正情報を取得する調整は、ラックを自動試料注入装置に配置し、ラック上の基準位置点までニードルを人為的に操作して細かく移動させ、ニードル先端が基準位置に達したときの位置情報を自動試料注入装置に記憶させるという手順で行なわれていた(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
ラックの基準位置を取得するには、自動試料注入装置を操作者が細かく操作して行なう必要があり、工数が掛かるという問題があった。
【0007】
本発明は、ラックの基準位置情報を自動で得ることができる自動試料注入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる自動試料注入装置は、複数の試料容器を装填可能なラックと、上記試料容器内に収容された試料を吸引するためのサンプリングニードルと、上記ニードルをラックに対して水平面及び垂直方向に相対的に移動させる動作、並びに試料の吸引及び注入動作を制御する制御部と、上記ラックの所定の位置に配置され、水平断面での内壁面形状が点対称であって所定の深さの凹部をもつ基準部位と、上記基準部位と上記ニードルとの接触を電気的に検出するための検出部と、を備えている。上記制御部は、上記基準部位内に上記ニードルの先端を移動させた後、上記検出部の検出情報に基づいて上記基準部位と上記ニードルとの接触が検出されるまで、上記水平面内におけるX方向の正負の両方向及び上記水平面内で上記X方向に直交するY方向の正負の両方向、並びに上記垂直方向であるZ方向へ上記ニードルを移動させ、上記基準部位と上記ニードルとの接触位置に基づいて、上記基準部位の上記内壁面形状の対称中心の位置を上記基準部位のX位置及びY位置として計算し、上記基準部位の底面の位置を上記基準部位のZ位置とし、上記基準部位のX位置、Y位置及びZ位置に基づいて上記ラックの基準位置情報を得る。
【0009】
本発明の自動試料注入装置において、ラックの基準位置情報を得るためにニードルをX方向、Y方向、Z方向の各方向で移動させる順序は任意である。また、基準部位のX位置の計算、Y位置の計算、Z位置の計算の順序も任意である。
【0010】
本発明の自動試料注入装置において、上記ラックは、互いに異なる位置に2つ以上の上記基準部位を備え、上記制御部は、複数の上記基準部位に対してそれぞれ基準部位のX位置、Y位置及びZ位置を計算するようにしてもよい。ただし、ラックには基準部位が1つだけ設けられている構成であってもよい。
【0011】
また、上記制御部は、上記基準部位内で上記X方向又は上記Y方向で上記ニードルを移動させて上記基準部位のX位置又はY位置を計算し、得られたX位置又はY位置から上記ニードルを上記Y方向又は上記X方向で移動させて上記基準部位のY位置又はX位置を計算し、得られたY位置又はX位置から上記ニードルを上記X方向又は上記Y方向で再度移動させて上記基準部位のX位置又はY位置を再度計算し、再度得られたX位置又はY位置から上記ニードルを上記Y方向又は上記X方向で再度移動させて上記基準部位のY位置又はX位置を再度計算する例を挙げることができる。
【0012】
ただし、基準部位のX位置の計算とY位置の計算はそれぞれ1回ずつであってもよい。また、基準部位のX位置の計算とY位置の計算は互いに回数が異なっていてもよい。また、基準部位のX位置の計算とY位置の計算はそれぞれ3回ずつであってもよい。なお、基準部位のX位置の計算とY位置の計算のうち少なくとも一方の計算が複数回行なわれるときには、X位置の計算とY位置の計算は交互に行なわれる。
【0013】
また、上記基準部位は、その底面の中央から所定の間隔をもつ位置又は側面に液抜き用の貫通孔を備えているようにしてもよい。
【0014】
また、上記基準部位は、上記ラックの上記試料容器の装着位置に着脱可能に配置されている例を挙げることができる。ただし、基準部位は、試料容器の装着位置とは異なる位置に、固定されて又は着脱可能に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動試料注入装置は、水平断面での内壁面形状が点対称であって所定の深さの凹部をもち、ラックの所定の位置に配置された基準部位を用い、制御部の制御により、ニードル先端を基準部位内で移動させ、そのときのニードルと基準部位との接触位置情報に基づいて、記基準部位の内壁面形状の対称中心の位置を基準部位のX位置及びY位置として計算し、基準部位の底面の位置を基準部位のZ位置とし、基準部位のX位置、Y位置及びZ位置に基づいてラックの基準位置情報を得る。このように、本発明の自動試料注入装置はラックの基準位置情報を自動で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施例の構成を概略的に示す図である。
図2】同実施例で用いられるラックを示す図である。
図3】ラックに配置された基準部位を示す図である。
図4】ラックの基準位置情報を取得する際のニードルの動作を説明するための図である。
図5】ラックに配置される基準部位の他の例を示す図である。
図6】ラックに配置される基準部位のさらに他の例を示す図である。
図7】ラックに配置される基準部位に液抜き用の貫通孔を設ける場合の位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、一実施例の構成を概略的に示す図である。図2は、同実施例で用いられるラックを示す図である。図3はラックに配置された基準部位を示す図である。
【0018】
図1において、自動試料注入装置に、複数の試料容器を装填可能なラック1が配置されている。ラック1はクランプ機構(図示は省略)によって着脱可能に自動試料注入装置に装着されている。
【0019】
ラック1の上方に、ラック1に着脱可能に装着された試料容器(図示は省略)内に収容された試料を吸引するためのサンプリングニードル3が配置されている。ニードル3は少なくともその表面が導電性材料によって形成されている。
【0020】
ニードル3をニードル移動機構(図示は省略)の動作によってラック1に対して水平面(X方向とY方向)及び垂直方向(Z方向)に移動させるための制御部5が設けられている。制御部5は試料の吸引及び注入動作も制御する。
【0021】
ニードル3のX方向、Y方向、Z方向の移動は、それぞれステッピングモータ(図示は省略)を駆動源として行なわれる。また、これらのステッピングモータは制御部5によって制御される。その制御は常時はプログラムによる自動制御であるが、必要に応じて、キーボード等を通して手動で操作することも可能である。ニードル3の移動は、移動先の位置をX、Y、Zの3次元座標で指定することで制御される。
【0022】
図2に示されるように、ラック1は、その盤面に、試料容器を装着するための多数の試料容器装着用穴7を備えている。試料容器装着用穴7は正確な間隔寸法をもって配列されている。ラック1は、試料容器装着用穴7とは異なる位置に、基準部位9,11を備えている。
【0023】
基準部位9,11は、ラック1の対角線上の2つの角部の近くに1つずつ配置されている。基準部位9,11は少なくとも内壁面及び底面が導電性材料で形成されている。基準部位9,11は所定の深さの凹部を備えている。基準部位9,11の水平断面での内壁面形状は円形(点対称)である。
【0024】
図1に示されるように、基準部位9,11には内壁面及び底面と電気的に接続された導電線13が接続されている。導電線13は、ラック1が自動試料注入装置に装着された状態のとき、接地電位GNDに接続される。
【0025】
基準部位9,11とニードル3との接触を電気的に検出するための検出部15が設けられている。検出部15は例えば電圧計によって構成される。検出部15のプラス端子及びサンプリングニードルはプルアップ抵抗17を介して電源電位Vccに接続されている。検出部15のマイナス端子は導電線13及び接地電位GNDに接続されている。
【0026】
図4は、ラックの基準位置情報を取得する際のニードルの動作を説明するための図である。図4を参照してラックの基準位置情報を取得する動作を説明する。
【0027】
(手順1)制御部5の制御により、ニードル3の先端は、基準部位9について予め設定された設定基準位置(9−X0,9−Y0,9−Z0)に基づいて基準部位9のおおよその中央位置まで移動される。ニードル3の先端は基準部位9内に配置される。このときにニードル3がラック1や基準部位1の上面に接触することがないように、基準部位9の内径と深さはラック1の生産時の組み付けバラツキよりも十分に大きい値で設計されている。
【0028】
(手順2)ニードル3は、位置(9−X0,9−Y0,9−Z0)を始点として、前方向(X方向の正方向)に細かく移動される。ニードル3は検出部15の検出情報に基づいて基準部位9とニードル3との接触が検出されるまで移動される。基準部位9との接触が検出されたニードル3の位置を位置(9−X1)とする。次に、ニードル3は、後方向(X方向の負方向)に基準部位9と接触するまで細かく移動される。基準部位9との接触が検出されたニードル3の位置を位置(9−X2)とする。制御部5は位置(9−X1)と位置(9−X2)の中点を計算してX方向中央位置(9−X)とする。ニードル3はX方向中央位置(9−X)に移動される。このとき、ニードル3は位置(9−X,9−Y0,9−Z0)に位置する。
【0029】
(手順3)ニードル3は、位置(9−X,9−Y0,9−Z0)を始点として、右方向(Y方向の正方向)に基準部位9と接触するまで細かく移動される。基準部位9との接触が検出されたニードル3の位置を位置(9−Y1)とする。次に、ニードル3は左方向(Y方向の負方向)に基準部位9と接触するまで細かく移動される。基準部位9との接触が検出されたニードル3の位置を位置(9−Y2)とする。制御部5は位置(9−Y1)と位置(9−Y2)の中点を計算してY方向中央位置(9−Y)とする。ニードル3はY方向中央位置(9−Y)に移動される。このとき、ニードル3は位置(9−X,9−Y,9−Z0)に位置する。
【0030】
(手順4)位置(9−X,9−Y,9−Z0)を始点として、上記手順2と同じ動作が再度行なわれる。これにより、X方向中央位置(9−X)が再度計算される。ニードル3は位置(9−X,9−Y,9−Z0)に移動される。なお、上記手順2でX方向中央位置(9−X)に関して良好な位置精度が得られた場合は、手順4は省略されてもよい。
【0031】
(手順5)上記手順4で得られた位置(9−X,9−Y,9−Z0)を始点として、上記手順3と同じ動作が再度行なわれる。これにより、Y方向中央位置(9−Y)が再度計算される。ニードル3は位置(9−X,9−Y,9−Z0)に移動される。なお、上記手順3で中央位置(9−Y)に関して良好な位置精度が得られた場合は、手順5は省略されてもよい。また、上記手順4が省略された場合には手順5は行なわれない。
【0032】
(手順6)ニードル3は、位置(9−X,9−Y,9−Z0)を始点として、下方向(Z方向の正方向)に基準部位9と接触するまで細かく移動される。基準部位9との接触が検出されたニードル3の先端位置(基準部位9の底面の位置)を位置(9−Z)とする。これにより、基準部位9の位置(9−X,9−Y,9−Z)が得られる。
【0033】
(手順7)制御部5の制御により、ニードル3の先端は、基準部位11について予め設定された設定基準位置(11−X0,11−Y0,11−Z0)に基づいて基準部位11のおおよその中央位置まで移動される。ニードル3の先端は基準部位11内に配置される。基準部位11も、基準部位9と同様に、ラック1の生産時の組み付けバラツキ等を考慮した内径と深さで設計されている。
【0034】
(手順8)位置(11−X0,11−Y0,11−Z0)を始点として、上記手順2、手順3、手順4、手順5と同様の動作が行なわれる。これにより、位置(11−X,11−Y,9−Z0)が得られる。位置(11−X)は基準部位11のX方向中央位置である。位置(11−Y)は基準部位11のY方向中央位置である。
【0035】
(手順9)上記手順6と同様にして、ニードル3が位置(11−X,11−Y,9−Z0)を始点として下方向(Z方向の正方向)に細かく移動されて、基準部位9の底面の位置(11−Z)が求められる。これにより、基準部位11の位置(11−X,11−Y,11−Z)が得られる。
【0036】
(手順10)制御部5は、基準部位9の位置(9−X,9−Y,9−Z)及び基準部位11の位置(11−X,11−Y,11−Z)に基づいてラック1の位置補正情報を取得する。
【0037】
このように、本実施例は、ラックの基準位置情報を自動で得ることができる。さらに、得られたラック1の基準位置情報9,11に基づいて、位置補正情報を自動で取得することができる。
【0038】
上記実施例では、基準部位9,11はラック1に固定されているが、基準部位9,11は着脱式のものであってもよい。また、上記実施例では、基準部位9,11は試料容器装着用穴7とは異なる位置に設けられているが、基準部位はラック1の基準位置情報を取得する際に試料容器装着用穴7に着脱可能に配置されるものであってもよい。
【0039】
また、上記実施例では、ラック1に2つの基準部位9,11が設けられているが、ラック1に設けられる基準部位の個数は3個以上であってもよい。その場合、制御部5は、各基準部位についてそれぞれ基準部位のX位置、Y位置及びZ位置を計算する。基準部位の数が多い方がラック1の基準位置情報の精度は向上する。また、精度が要求されない場合には、ラック1に設けられる基準部位の個数は1個でもよい。
【0040】
上記実施例では、水平断面での基準部位9,11の内壁面形状は円形であるが、当該内壁面形状は円形に限定されず、点対称の形状であればどのような形状であってもよい。基準部位の水平断面での内壁面形状が点対称であれば、本発明の自動試料注入装置で計算されるX方向中央位置及びY方向中央位置は常に対称中心になるからである。
【0041】
例えば、基準部位9の水平断面での内壁面形状は、図5に示されるように正四角形であってもよいし、図6に示されるように菱形であってもよい。また、基準部位の水平断面での内壁面形状は、楕円形、正六角形などの正偶数角形、長方形を含む平行四辺形などであってもよい。
【0042】
図7は、ラックに配置される基準部位に液抜き用の貫通孔を設ける場合の位置の例を示す図である。
基準部位9は、その底面の中央から所定の間隔をもつ位置に液抜き用の貫通孔9aを備えている。基準部位9の底面に貫通孔9aが設けられていると、基準部位9内に液体が入り込んだときの液抜きが容易になる。なお、貫通孔9aは、位置補正情報の取得動作の妨げにならないように、底面中央から所定の間隔をもって配置されている。また、液抜き用の貫通孔は基準部位の側面に設けられていてもよい。
【0043】
以上の実施例は本発明の一例であり、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、上記実施例において、上記手順2と上記手順3を入れ替え、上記手順4と上記手順5を入れ替えてもよい。また、上記手順6は上記手順1から上記手順5の間のいずれかのタイミングで行なわれてもよい。同様に、上記手順9は上記手順8におけるいずれかのタイミングで行なわれてもよい。
【0044】
また、本発明において、検出部は、電圧計に限定されるものではなく、基準部位とニードルとの接触を電気的に検出できるものであればどのような構成であってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 ラック
3 ニードル
5 制御部
9,11 基準部位
9a 貫通孔
15 検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7