特許第5733476号(P5733476)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5733476チオエステル変性ポリマー、その製造法およびそれを含有するゴム組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733476
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】チオエステル変性ポリマー、その製造法およびそれを含有するゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/20 20060101AFI20150521BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20150521BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20150521BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20150521BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20150521BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08C19/20
   C08L9/00
   C08L15/00
   C08K3/36
   C08K5/54
   B60C1/00 A
   B60C1/00 B
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-516522(P2014-516522)
(86)(22)【出願日】2013年12月6日
(86)【国際出願番号】JP2013082810
(87)【国際公開番号】WO2014088091
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2014年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2012-267053(P2012-267053)
(32)【優先日】2012年12月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066005
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100114351
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 和子
(72)【発明者】
【氏名】田邊 祐介
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−010917(JP,B1)
【文献】 特開平10−251222(JP,A)
【文献】 特開平04−227734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00−19/44
C08L15/00−15/02
C08L9/00−9/10
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオカルボン酸を用い、液状乃至固体状のポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレンブタジエン、ブチルゴム、EPDMまたは天然ゴムをチオエステル基のみで変性させてなるチオエステル変性ポリマー。
【請求項2】
チオカルボン酸がチオ安息香酸またはチオ酢酸である請求項1記載のチオエステル変性ポリマー。
【請求項3】
液状乃至固体状のポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレンブタジエン、ブチルゴム、EPDMまたは天然ゴムに、チオカルボン酸またはその金属塩を反応させることを特徴とするチオエステル基のみで変性させたチオエステル変性ポリマーの製造法。
【請求項4】
チオカルボン酸金属塩がナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩である請求項3記載のチオエステル変性ポリマーの製造法。
【請求項5】
チオカルボン酸が金属塩である場合、化学量論量以上のプロトン酸の存在下で反応が行われる請求項3または4記載のチオエステル変性ポリマーの製造法。
【請求項6】
請求項1記載のチオエステル変性ポリマーをジエン系ゴムに配合してなるジエン系ゴム組成物。
【請求項7】
ジエン系ゴムおよびチオエステル変性ポリマーの合計量100質量部中、チオエステル変性ポリマーを0.1〜30質量部配合した請求項6記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項8】
さらに、シリカ10〜150質量部およびシラン系カップリング剤1〜20質量部を配合した請求項7記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項9】
空気入りタイヤのキャップトレッドおよび/またはサイドトレッド成形用として用いられる請求項6、7または8記載のジエン系ゴム組成物。
【請求項10】
請求項9記載のジエン系ゴム組成物から成形されたキャップトレッド部および/またはサイドトレッド部を有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオエステル変性ポリマー、その製造法およびそれを含有するゴム組成物に関する。さらに詳しくは、分子中に二重結合を有するポリマーを変性させてなるチオエステル変性ポリマー、その製造法およびそれを含有するゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無水マレイン酸グラフト変性ポリマーに対し、ヒドロキシル基またはアミノ基を有するポリリン酸、アミノポリカルボン酸または1,3-ジケトンであるキレート配位子を反応させることにより、無水マレイン酸基に対してさらにこれらの官能性基が導入されたキレート導入高分子が記載されている。ここで、グラフト変性されるポリマーとしてはEPR、BR、IR等のゴムが用いられること、キレート構造はチオエステル結合等と確実に結合することができると記載されているが、キレート構造はポリマーにグラフトされた無水マレイン酸を介して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4965245号公報
【特許文献2】特開2012−219237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、分子中に二重結合を有するポリマーを直接変性せしめたチオエステル変性ポリマー、その製造法およびそれを含有するゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によって、チオカルボン酸を用い、液状乃至固体状のポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレンブタジエン、ブチルゴム、EPDMまたは天然ゴムをチオエステル基のみで変性させてなるチオエステル変性ポリマーが提供される。かかるチオエステル変性ポリマーは、分子中に二重結合を有するポリマーに、チオカルボン酸またはその金属塩を反応させることによって製造され、得られた変性ポリマーはジエン系ゴムに配合して用いられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るチオエステル変性ポリマーは、ラジカル開始剤、光源、熱源、不活性雰囲気などを特別必要とすることなく、分子中に二重結合を有するポリマーである液状乃至固体状のポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレンブタジエン、ブチルゴム、EPDMまたは天然ゴムに変性基であるチオカルボン酸基エン・チオール反応により直接導入することを可能としており、このような簡便な方法で得られた変性ポリマーは一般的な含イオウ官能基であるチオール基(特許文献2参照)と比較して熱的に安定なチオエステル基を有するため、貯蔵安定性、熱的安定性、耐酸性、耐酸化性などにすぐれている。このチオエステル変性ポリマーを、ジエン系ゴム、特にシリカ含有ジエン系ゴムに配合すると、モジュラス、硬度、発熱性などを低下させることなく、引張強度、破断伸び、特に高温時(100℃)における引張強度、破断伸びを改善せしめる。このように、耐熱性、強靱性にすぐれたゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド、サイドトレッド成形用ゴムコンパウンドとして有効に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
分子中に二重結合を有するポリマーは、主鎖中、側鎖中および末端の少なくとも1個所に二重結合を有するポリマーであり、かかるポリマーとしては、液状乃至固体状のポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)、EPDM等が用いられ、スチレンブタジエンゴムはE-SBR(乳化重合SBR)、S-SBR(溶液重合SBR)であってもよく、またブタジエンゴムはハイシスポリブタジエンであってもよく、末端二重結合は変性されていてもされていなくてもよい。末端に二重結合を有するポリマーとしては、片末端または両末端に二重結合を有するポリマーが用いられ、主鎖中あるいは側鎖中に含まれる変性成分としてはポリアルキレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミドなどがあげられる。
【0008】
変性剤として用いられるチオカルボン酸は、-COSH基を有するものであり、脂肪族または芳香族のチオカルボン酸であって例えばチオ酢酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸、チオ吉草酸、チオ安息香酸等が挙げられるが、好ましくは
チオ安息香酸 C6H5COSH または C6H5CSOH
用いられる。
【0009】
これらのチオカルボン酸、これらの金属塩、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩の形で反応に供することもできる。チオカルボン酸金属塩として反応に用いられた場合には、化学量論量以上のプロトン酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸やそれらの塩、塩化アンモニウム等の存在下で反応に供することが好ましい。
【0010】
分子中に二重結合を有するポリマーとチオカルボン酸またはその金属塩との反応は、有機溶媒、例えばトルエン、n-ヘキサン、テトラヒドロフラン等の存在下で、あるいは水性媒体の存在下で約0〜100℃、一般には室温条件下で約5分間〜20時間程度攪拌することによって行われる。また、液状ポリマーにあっては、有機溶媒または水性媒体の不存在下でも反応を行うことができ、固体状ポリマーであっても、混合装置などを用いるミキサー内混合によって反応を行うことができる。
【0011】
これら両者間の反応は、このようなマイルドな条件下で行うことができ、エン・チオール反応によって、ポリマーの二重結合部位にチオカルボン酸基導入し、チオエステル基を形成させる。導入されるチオカルボン酸基量は、要求される変性度によって異なるが、一般にはポリマー1g当り約1〜300mg、好ましくは約3〜150mg程度である。また、反応に供されたチオカルボン酸(塩)、液状ポリマーにあっては90%以上が変性反応に消費され、また固体状ポリマーにあっては50%以上が反応に消費される。
【0012】
得られたチオエステル変性ポリマーは、ジエン系ゴム、特にシリカ含有ジエン系ゴムに配合される。チオエステル変性ポリマーは、ジエン系ゴムとの合計量100質量部中0.1〜30質量部、好ましくは1〜10質量部の割合で用いられる。チオエステル変性ポリマーの割合がこれよりも少なく用いられると、所望の変性効果が得られず、一方これ以上の割合で用いられると、未加硫ゴムの加工性が低下するようになる。
【0013】
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が単独であるいはブレンドゴムとして用いられ、好ましくはNR、BRまたはこれらのブレンドゴムが用いられる。SBRとしては、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)のいずれをも用いることができる。特に好ましくは、チオエステル変性に用いられた、分子中に二重結合を有するポリマーと同じジエン系ゴムが用いられる。
【0014】
ジエン系ゴム組成物中には、チオエステル変性ポリマー含有ジエン系ゴム100質量部当り10〜150質量部、好ましくは30〜150質量部のシリカまたはシリカとカーボンブラックの両者が添加して用いられる。これらの充填剤、特にシリカの添加は、転がり抵抗などを低減させるが、これ以上の割合で用いられると、逆に転がり抵抗などを悪化させる。
【0015】
シリカとしては、BET比表面積(ASTM D1993-03準拠)が70〜200m2/g、好ましくは70〜190m2/gのものが用いられる。これらは、ハロゲン化けい素または有機けい素化合物の熱分解法などで製造される乾式法シリカやけい酸ナトリウムの酸による分解法などで製造される湿式法シリカなどであり、コストおよび性能の面から、湿式法シリカが好んで用いられる。実際には、ゴム工業用として上市されている市販品をそのまま用いることができる。
【0016】
シリカに求められる特性およびジエン系ゴムとの分散性(シリカはゴムポリマーとの親和性に乏しく、またゴム中でシリカ同士がシラノール基を通して水素結合を生成し、シリカのゴム中への分散性を低下させる性質を有する)を高めるために、シランカップリング剤がチオエステル変性ポリマー含有ジエン系ゴム100質量部当り1〜20質量部、好ましくは3〜18質量部程度配合される。シランカップリング剤としては、シリカ表面のシラノール基と反応するアルコキシシリル基とポリマーと反応する硫黄連鎖を有するビス(トリアルコキシシリルプロピル)サルファイド
(RO)3Si(CH2)3-(S)n-(CH2)3Si(OR)3
R:炭素数1〜2のアルキル基
n:1〜4の整数
例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド等が好んで用いられる。
【0017】
カーボンブラックとしては、一般にSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF等のファーネスブラックが用いられる。空気入りタイヤのトレッド部、特にキャップトレッド部の形成の際の有効な成分であるこれらのカーボンブラックは、シリカと共に、チオエステル変性ポリマー含有ジエン系ゴム100質量部当り3〜120質量部の割合で用いられる。
【0018】
以上の各成分を必須成分とするゴム組成物中には、加硫剤としての硫黄およびチアゾール系(MBT、MBTS、ZnMBT等)、スルフェンアミド系(CBS、DCBS、BBS等)、グアニジン系(DPG、DOTG、OTBG等)、チウラム系(TMTD、TMTM、TBzTD、TETD、TBTD等)、ジチオカルバミン酸塩系(ZTC、NaBDC等)、キサントゲン酸塩系(ZnBX等)等の加硫促進剤のいずれか一種類以上、好ましくは含硫黄加硫促進剤が配合されて用いられる。さらに、ゴムの配合剤として一般的に用いられている他の配合剤、例えばタルク、クレー、グラファイト、珪酸カルシウム等の補強剤または充填剤、ステアリン酸等の加工助剤、酸化亜鉛、軟化剤、可塑剤、老化防止剤などが必要に応じて適宜配合されて用いられる。
【0019】
組成物の調製は、ニーダ、バンバリーミキサ等の混練機または混合機およびオープンロール等を用いる一般的な方法で混練することによって行われ、得られた組成物は、所定形状に成形された後、用いられたジエン系ゴム、加硫剤、加硫促進剤の種類およびその配合割合に応じた加硫温度で加硫され、空気入りタイヤのトレッド部等を形成させる。
【実施例】
【0020】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0021】
実施例1
容量50mlの一口ナスフラスコ中に、液状イソプレンゴム(クラレ製品LIR-30;Mn28000)108gおよびトルエン140mlを室温条件下で加え、そのトルエン溶液中にチオ安息香酸(東京化成工業製品)5.40gを滴下し、室温条件下で2時間攪拌した。その後、反応混合物からトルエンを留去し、淡黄色液状ゴムのチオ安息香酸変性ポリイソプレンを定量的に得た。
【0022】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ安息香酸の消失と仕込みチオ安息香酸の99%以上が液状イソプレンの側鎖中の二重結合と反応していることを確認した。なお、印はポリマー中に導入されたチオ安息香酸エステル基由来およびチオエステル基が結合している炭素上のプロトン由来のシグナルであることを示している。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=8.0(br)
7.6〜7.5(br)
7.5〜7.4(br)
7.3(br)
7.2(br)
5.2〜5.0(br)
4.8〜4.6(br)
4.0〜3.7(br)
2.2〜1.8(br)
1.8〜1.6(br)
1.6〜1.4(br)
1.4〜1.1(br)
1.1〜0.7(br)
【0023】
実施例2
実施例1において、チオ安息香酸の代わりにチオ酢酸(東京化成工業製品)2.97gを用い、淡黄色オイル状のチオ酢酸変性ポリイソプレンを定量的に得た。
【0024】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ酢酸の消失と仕込みチオ酢酸の99%以上が液状ポリイソプレンの側鎖中の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=5.2〜5.0(br)
4.8〜4.6(br)
3.8〜3.5(br)
2.3(s)
2.2〜1.8(br)
1.8〜1.6(br)
1.6〜1.4(br)
1.4〜1.1(br)
1.1〜0.8(br)
【0025】
実施例3
実施例1において、液状ゴムとして同量(108g)の液状ポリブタジエンゴム(クラレ製品LBR-307;Mn8000)を用い、またチオ安息香酸量を5.41gに変更して、淡黄色オイル状のチオ安息香酸変性ポリブタジエンを定量的に得た。
【0026】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ安息香酸の消失と仕込みチオ安息香酸の90%以上が液状ポリブタジエンの主鎖中の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=8.3〜8.1(br)
7.9(br)
7.8(br)
7.7〜7.3(br)
5.9〜5.7(br)
5.7〜5.3(br)
5.1〜4.9(br)
3.9〜3.7(br)
3.4〜2.8(br)
2.3〜2.0(br)
2.0〜1.2(br)
1.2〜0.9(br)
【0027】
実施例4
実施例3において、チオ安息香酸の代わりにチオ酢酸(東京化成工業製品)2.96gを用い、淡黄色オイル状のチオ酢酸変性ポリブタジエンを定量的に得た。
【0028】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ酢酸の消失と仕込みチオ酢酸の95%以上が液状ポリブタジエンの主鎖中の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=5.9〜5.7(br)
5.7〜5.3(br)
5.1〜4.9(br)
3.8〜3.6(br)
3.1〜2.7(br)
2.3(br、s)
2.3〜2.0(br)
2.0〜1.2(br)
1.2〜0.9(br)
0.8〜0.6(br)
【0029】
実施例5
実施例1において、液状ゴムの代わりに同量(108g)のポリスチレンブタジエンゴム(旭化成ケミカルズ製品タフデン1000;Mn430000)を用い、またチオ安息香酸量を5.41gに変更して、白色固体状のチオ安息香酸変性ポリスチレンブタジエンゴムを定量的に得た。
【0030】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ安息香酸の消失と仕込みチオ安息香酸の60%以上がポリスチレンブタジエンの主鎖中、側鎖中および末端の少なくとも1個所の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=8.3〜8.1(m)
7.9(br)
7.8(m)
7.7〜7.4(m、br)
7.3(br)
7.2〜7.0(br)
5.6〜5.5(br)
5.5〜5.2(br)
5.1〜4.9(br)
3.9〜3.7(br)
2.6〜2.5(br)
2.3〜2.2(br)
2.2〜1.8(br)
1.8〜1.6(br、m)
【0031】
実施例6
実施例5において、チオ安息香酸の代わりにチオ酢酸(東京化成工業製品)5.41gを用い、白色固体状のチオ酢酸変性ポリスチレンブタジエンゴムを定量的に得た。
【0032】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ酢酸の消失と仕込みチオ酢酸の60%以上がポリスチレンブタジエンの主鎖中、側鎖中および末端の少なくとも1個所の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=7.3(br)
7.2〜7.0(br)
5.6〜5.5(br)
5.5〜5.2(br)
5.1〜4.9(br)
3.5〜3.2(br)
2.6〜2.5(br)
2.4(br、s)
2.3〜2.2(br)
2.2〜1.8(br)
1.8〜1.6(br、m)
【0033】
実施例7
実施例2において、チオ安息香酸の代わりにチオ酢酸カリウム(東京化成工業製品)4.46g(39ミリモル)と塩化アンモニウム(同社製品)2.3g(43ミルモル)とを用い、淡黄色オイル状のチオ酢酸変性ポリイソプレンを定量的に得た。
【0034】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRとから、チオ酢酸を用いた実施例2と同様の生成物が得られていることを確認した。
【0035】
実施例8
容量1000mlの一口ナスフラスコ中に、固体状ポリブタジエンゴム(日本ゼオン製品NIPOL BR1200;Mn460,000、シス含有量97%以上)100gおよびトルエン200mlを室温条件下で加え、そのトルエン溶液中にチオ安息香酸(東京化成工業製品)5.00gを滴下し、室温条件下で2時間攪拌した。その後、反応混合物からトルエンを留去し、淡黄色ゴム状のチオ安息香酸変性ポリブタジエンを定量的に得た。
【0036】
反応生成物の1H-NMRと13C-NMRスペクトルから、チオ安息香酸の消失と仕込みチオ安息香酸の90%以上が固体状ポリブタジエン中の二重結合と反応していることを確認した。
1H-NMR(CDCl3、20℃):δ=8.0-7.9(br)
7.6〜7.5(br)
7.5〜7.3(br)
5.7〜5.2(br)
5.1〜4.9(br)
3.9〜3.7(br)
2.4〜1.8(br)
1.8〜1.2(br)
【0037】
比較例
SBR(乳化結合SBR;日本ゼオン製品NIPOL 1502) 70質量部
BR(日本ゼオン製品NIPOL BR1220) 30 〃
シリカ(日本シリカ製品ニップシールAQ) 50 〃
シランカップリング剤(エボニック・デグサ製品Si69) 4 〃
カーボンブラック 5 〃
(昭和キャボット製品ショウブラックN339M)
酸化亜鉛(正同化学製品亜鉛華3号) 3 〃
ステアリン酸(日本油脂製品) 1 〃
老化防止剤(住友化学製品アンチゲン6C) 1 〃
オイル(日本シェル石油製品エクストラクト4号S) 6 〃
硫黄(軽井沢精錬所製品油処理硫黄) 2 〃
含S加硫促進剤(三新化学製品サンセラーCM-PO) 1 〃
上記各成分の内、イオウおよび加硫促進剤を除く各成分を容量1.7Lの密閉式バンバリーミキサで5分間混練した後、ミキサ外に放出して室温迄冷却した。そこに、イオウおよび加硫促進剤を加えてオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。
【0038】
このゴム組成物を、所定の金型内で160℃、20分間のプレス加硫を行い、試験片を作製した。この試験片について、次の各項目の測定を行った。なお、ゴム組成物については、ムーニービスおよびスコーチ時間が測定された。
ムーニービス:JIS K6300準拠
L形ロータを使用し、ムーニー粘度ML1+4 100℃の値を
測定
指数が小さい程良好である
スコーチ時間:JIS K6300準拠
125℃で粘度が5ポイント上昇する時間(分)を測定
指数が大きい程加工性が良好である
硬度:JIS K6255準拠して、直径29mm、厚さ12.5mmの円柱状加硫ゴム
試料を作製し、JIS K6253に準拠して、20℃の条件下でリュブ
ケJIS硬度を測定
指数が大きい程良好である
引張応力、破断伸び:JIS K6251準拠
室温および100℃で測定
指数が大きい程良好である
tanδ:岩本製作所製粘弾性スペクトロメータを用い、伸張変形歪率
10±2%、振動数20Hz、温度0℃および60℃の条件下で測定
tanδ(0℃)は、指数が大きい程ウェットグリップ性能にすぐ
れている
tanδ(60℃)は、指数が小さい程低発熱性であることを示して
いる
【0039】
実施例9〜13
比較例において、BR30質量部の一部が実施例8で得られたチオ安息香酸変性ポリブタジエン(変性BR)で置換して用いられた。得られた測定結果は、BRおよび変性BRの配合量と共に次の表に示される。測定値は、比較例で得られた値を100とする指数で示されている。



実施例
比較例 10 11 12 13
〔配合量(質量部)〕
BR 30 29.9 29 25 20 −
変性BR − 0.1 1 5 10 30
〔測定値〕
ムーニービス 100 101 100 101 100 101
スコーチ時間 100 100 99 98 94 91

硬度 100 99 101 99 100 99
M100( 20℃) 100 97 98 100 101 100
M100(100℃) 100 99 100 99 102 103
引張強度( 20℃) 100 101 104 106 108 110
引張強度(100℃) 100 102 106 108 110 112
破断伸び( 20℃) 100 101 103 107 107 112
破断伸び(100℃) 100 102 103 106 107 109
tanδ( 0℃) 100 98 97 98 97 96
tanδ(60℃) 100 100 98 100 98 100