特許第5733497号(P5733497)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733497
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】二重気孔構造研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20150521BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B24B37/00 L
   H01L21/304 622F
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-216044(P2010-216044)
(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公開番号】特開2011-67945(P2011-67945A)
(43)【公開日】2011年4月7日
【審査請求日】2013年7月4日
(31)【優先権主張番号】12/586,859
(32)【優先日】2009年9月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078662
【弁理士】
【氏名又は名称】津国 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146031
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 明夫
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ビー・ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・サンフォード−クレイン
【審査官】 橋本 卓行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−058475(JP,A)
【文献】 特開2005−101541(JP,A)
【文献】 特開2004−243445(JP,A)
【文献】 特開2001−244223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00−37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性、光学および半導体基材の少なくとも1種の研磨に有効な研磨パッドであって、多孔質研磨層を含み、多孔質研磨層がポリウレタンマトリックス内に二重気孔構造を有し、二重気孔構造が第1の気孔群を有し、第1の気孔群が孔壁を有し、孔壁が厚さ15〜55μm、25℃で測定した貯蔵弾性率10〜60MPaを有し、および孔壁内に第2の気孔群を含有し、第2の気孔群の平均孔径が5〜30μmであり、および多孔質研磨層を、ポリマーフィルムまたはシート基材に固定するか、あるいは織物または不織構造に作って形成する研磨パッド。
【請求項2】
第1の気孔の平均直径が、少なくとも35μmである、請求項1の研磨パッド。
【請求項3】
孔壁の横断面内に位置する第2の気孔群の気孔率が、10〜55%である、請求項1又は2の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性、光学および半導体基材の少なくとも1種の研磨に有効な多孔質ポリウレタン研磨パッドに関する。例えば、本発明の研磨パッドは、半導体ウエーハ材料のケミカルメカニカルポリッシング(CMP)、より具体的には、半導体基材を研磨する低欠陥法に特に有効である。
【0002】
半導体の製造は通常、いくつかのケミカルメカニカルポリッシング(CMP)プロセスを含む。各CMPプロセスでは、研磨パッドが、研磨溶液、例えば砥粒含有研磨スラリーまたは無砥粒反応性液体と組み合わさって、後続の層を受容するために、平坦化するかまたは平坦性を維持する方法で過剰な材料を除去する。これらの層の積み重ねが、集積回路を形成する方法で組み合わさる。これらの半導体デバイスの製造は、作動速度を高め、漏れ電流を減らし、消費電力を低減するデバイスに対する要件のために、より複雑化し続けている。デバイス構造の観点から、これは、より微細なフィーチャー形状および増大した金属化レベルの数と言い換えられる。これらのますます厳しいデバイス設計要件が、ますます小さなライン間隔および対応するパターン密度の増大の採用に追いやっている。デバイスのスケールの小型化し複雑さが増大すると、CMP消耗品、例えば研磨パッドおよび研磨溶液に対するより大きな要求をまねくようになった。その上、集積回路のフィーチャー寸法が減少するにつれて、CMPに起因する欠陥度(defectivity)、例えば、引掻きがより大きな問題となる。さらに、集積回路のフィルム厚さの減少は、ウエーハ基材に許容できるトポグラフィーを提供すると同時に欠陥度の改良を要求する。これらのトポグラフィー要件が、ますます厳しい平坦性、ラインディッシングおよび小さなフィーチャーアレイエロージョン研磨規格を要求する。ウエーハ処理量を改良するためにさらに高い研磨除去速度が必要であり、そして金属および絶縁材料の両方が同時に研磨されるので、絶縁材料に対する金属の相対的な除去速度が重要である。将来のウエーハ集積化ニーズを満たすために、絶縁材(例えばTEOS)の金属(例えば銅)に対するより高い除去速度選択比が必要である。
【0003】
これまで、キャストポリウレタン研磨パッドが、集積回路を製造するために使用される大部分の研磨操作に対して、機械的結着性および耐薬品性を提供してきた。例えば、ポリウレタン研磨パッドは、十分な引張強さおよび引裂抵抗に対する伸び;研磨中の摩耗問題を回避するための磨耗抵抗;並びに強酸性および腐食性の研磨溶液による攻撃に抗するための安定性を有する。Dow Electronic Materialsから供給されるIC1000(商標)研磨パッドは、多数の基材、例えばアルミニウム、バリヤ材料、絶縁材、銅、ハードマスク、low−k絶縁材、タングステンおよび超low−k絶縁材(IC1000は、Dow Electronic Materialsまたはその関連会社の商標である)の研磨に適切な業界標準ポリウレタン研磨パッドを表す。
【0004】
ここ数年にわたって、半導体製造会社はますます、欠陥度が低いことがより重要な要件である仕上げまたは最終研磨操作用のポロメリック研磨パッド、例えばPolitex(商標)ポリウレタンパッドに移行している(PolitexはDow Electronic Materialsまたはその関連会社の商標である)。本明細書において、用語ポロメリックとは、水溶液または非水溶液から製造された多孔質ポリウレタン研磨パッドを指す。これらの研磨パッドの利点は、これらが低い欠陥度で有効な除去を与えることである。この欠陥度の低減は、劇的なウエーハ収量増加をもたらし得る。
【0005】
特に重要な研磨用途は、先端のウエーハ集積デザインを満たすために、TEOS除去速度が銅除去速度よりも高いという銅およびTEOS絶縁材両方を同時に除去する能力と相まって低い欠陥度が必要である銅バリヤ研磨である。市販パッド、例えばPolitex研磨パッドは、将来のデザインに対して十分に低い欠陥度を与えておらず、そしてまたTEOS:Cu選択比も十分に高くない。他の市販パッドは、研磨の間に浸出して研磨を妨害するフォームを過剰な量生成する界面活性剤を含有する。さらに、界面活性剤は、絶縁材を汚染し半導体の機能性能を下げるおそれのあるアルカリ金属を含有する可能性がある。
【0006】
他のパッドタイプ、例えばIC1000研磨パッドと比べて、ポロメリックパッドを用いてより低い欠陥度を達成する可能性のために、ポロメリック研磨パッドに関するTEOS除去速度が低いにもかかわらず、いくつかの先端の研磨用途は、全ポロメリックパッドCMP研磨操作に向かっている。これらの操作は低欠陥を与えるが、パッドに起因する欠陥をさらに減少させ研磨速度を高める課題が残っている。
【0007】
発明の陳述
本発明の一つの局面は、磁性、光学および半導体基材の少なくとも1種の研磨に有効な研磨パッドであって、多孔質研磨層を含み、多孔質研磨層がポリウレタンマトリックス内に二重気孔構造を有し、二重気孔構造が第1の気孔群を有し、第1の気孔群が孔壁を有し、孔壁が厚さ15〜55μm、25℃で測定した貯蔵弾性率10〜60MPaを有し、そして孔壁内に第2の気孔群を含有し、第2の気孔群の平均孔径が5〜30μmであり、多孔質研磨層を、ポリマーフィルムまたはシート基材に固定するか、あるいは織物または不織構造に作って形成する研磨パッドを提供する。
【0008】
本発明の別の局面は、磁性、光学および半導体基材の少なくとも1種の研磨に有効な研磨パッドであって、多孔質研磨層を含み、多孔質研磨層がポリウレタンマトリックス内に二重気孔構造を有し、二重気孔構造が第1の気孔群を有し、第1の気孔群が孔壁および平均直径少なくとも40μmを有し、孔壁が厚さ20〜50μm、25℃で測定した貯蔵弾性率10〜50MPaを有し、そして孔壁内に第2の気孔群を含有し、第2の気孔群が平均孔径5〜25μmであり、多孔質研磨層を、ポリマーフィルムまたはシート基材に固定するか、あるいは織物または不織構造に作って形成する研磨パッドを提供する。
【0009】
詳細な説明
本発明の研磨パッドは、磁性、光学および半導体基材の少なくとも1種の研磨に有効である。特に、本ポリウレタンパッドは、半導体ウエーハの研磨に有効であり;そして特に、本パッドは、欠陥度が極めて低いことが平坦化する能力よりも重要であり、そして複数の材料、例えば銅、バリヤ金属および絶縁材料(TEOS、low−kおよび超low−k絶縁材を含むがこれらに限定されない)を同時に除去する必要がある先端の用途、例えば銅バリヤ用途の研磨に有効である。本明細書において、「ポリウレタン」とは、二官能性または多官能性イソシアネートから誘導される生成物、例えばポリエーテルウレア、ポリイソシアヌレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、これらのコポリマーおよびこれらの混合物である。発泡の発生および絶縁材汚染の可能性を回避するために、これらの配合物は、界面活性剤フリー配合物であるのが有利である。研磨パッドは、支持ベース基材上にコーティングされたポリウレタンマトリックス内に、二重気孔構造を有する多孔質研磨層を含む。二重気孔構造は、大きな気孔の第1群、並びにこの大きな気孔の気泡壁内およびその間の小さな気孔の第2群を有する。この二重気孔構造は、欠陥を減らす働きをする一方で、研磨システムの一部に対して除去速度を上げる。
【0010】
多孔質研磨層は、ポリマーフィルム基材に固定するか、あるいは織物または不織構造に形成して、研磨パッドを形成する。多孔質研磨層を、ポリマー基材、例えば非多孔質ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムまたはシート上に付着する場合、フィルムまたはシートへの接着性を高めるために、バインダー、例えばプロプリエタリウレタン(proprietary urethane)またはアクリル接着剤を用いるのが有利であることが多い。これらのフィルムまたはシートは、多孔性を含むことができるが、これらのフィルムまたはシートは、非多孔質であるのが有利である。非多孔質フィルムまたはシートの利点は、それらが均一な厚さまたは平坦性を促し、研磨パッドの全体的な剛性を高めかつ全体的な圧縮率を下げ、そして研磨の間スラリーウィッキング効果(wicking effects)を排除することである。
【0011】
別の態様では、織物または不織構造が多孔質研磨層のベースとして働く。非多孔質フィルムのベース基材としての使用には上記概略のような利点があるが、フィルムには欠点もある。なかでも、非多孔質フィルムをベース基材として用いる場合、研磨パッドと研磨工具のプラテンとの間に気泡がトラップされるおそれがある。これが、研磨の非均一性、より高い欠陥度、高いパッド摩耗および低減されたパッド寿命にかかわる重要な問題を招く。フェルトをベース基材として用いる場合、空気はフェルトを透過することができ、気泡がトラップされないので、これらの問題は解消する。次に、研磨層をフィルムに付着する場合、研磨層のフィルムへの接着性は、接着ボンドの強度に依存する。いくつかの攻撃的な研磨条件下で、このボンドが機能しなくなり研磨の突発故障(catastrophic failure)を招くおそれがある。フェルトを用いる場合、研磨層は実際にはフェルトに特定の深さ侵入し、そして強く、機械的に連結された界面を形成する。織物構造は許容できるが、不織構造は、多孔質ポリマー基材に強く結合するためのさらなる表面積を与えることができる。適切な不織構造の優れた例は、繊維を結び付けるためにポリウレタンを含浸させたポリエステルフェルトである。典型的なポリエステルフェルトは厚さが500〜1500μmである。
【0012】
第1の気孔群(本明細書でマクロ孔とも呼ぶ)は、研磨面に開いており、典型的には、平均直径が少なくとも35μmである。本明細書において、第1の気孔の平均直径とは、横断面で研磨パッドの研磨面に平行な方向に測定した気孔の平均最大幅を表す。第1の孔またはマクロ孔は、平均直径が少なくとも40μmであるのが有利である。これらの大きな気孔は、スラリー輸送および研磨ごみ除去を促す。マクロ孔は、研磨面に対して直角の長い構造を有し、研磨パッドの寿命全体にわたってばらつきのない研磨表面積を与える。第1の気孔は、テーパー状側壁を、または好ましくは垂直の側壁を有する柱状構造を有することができる。
【0013】
さらに、第1の気孔群は孔壁を含有する。これらの孔壁の厚さは15〜55μmである。この壁の厚さは、パッドの剛性および研磨能力に寄与する。気泡壁が薄すぎると、ばらつきのない研磨に必要な剛さに欠け、パッドの摩耗が高く、パッド寿命が短縮される。同様に、気泡壁が厚すぎると、有効な研磨に適切な構造に欠ける。気泡壁は厚さ20〜50μmを有するのが有利である。厚さのほかに、適切な研磨力を対象基材、例えばウエーハに移すために、気泡壁は、必要な剛性またはモジュラスを有することが重要であり、同時に低い欠陥度で研磨を達成するのに十分低いモジュラスを有する。本明細書において、モジュラスは、ポリマーをジメチルホルムアミドに溶かし、この溶液をガラス板上にコーティングし、溶剤を高温で除去し、次に乾燥したコーティングをガラス板から取り外して独立した非多孔質フィルムを残し、このフィルムを、25℃、湿度50%で5日間コンディショニングし、次に周波数10/rad/secおよび温度25℃で、ASTM D5026-06 "Standard Test Method for Plastics: Dynamic Mechanical Properties: In Tension"にしたがって、薄膜治具を用いて試験して測定した材料の引張貯蔵弾性率(E’)を表す。この試験方法を通じて、貯蔵弾性率10〜60MPaが欠陥度の低い優れた研磨結果を与える。壁の貯蔵弾性率は10〜50MPaであるのが有利である。壁の貯蔵弾性率は10〜40MPaであるのが最も有利である。10MPaを下回る貯蔵弾性率で、孔壁は、凝固(coagulation)製造プロセスの機械的応力を耐えるのに十分な剛さを有しない。60MPaを超える貯蔵弾性率で、欠陥値が、要求の厳しい研磨プロセスに許容できないレベルまで上がる。このことから、孔壁内のポリマーのモジュラスと、研磨中に生じた欠陥のレベルとの間に関係が存在する。
【0014】
第1の気孔群(マクロ孔)に加えて、マクロ孔壁内の第2の気孔群(本明細書でミクロ孔とも呼ぶ)は、研磨パッドにさらなる研磨上の利点を与える。第2の気孔群は、平均孔径が5〜30μmであり、第1の気孔よりも球状の形状を有する傾向がある。本明細書において、第2の孔径は、第2の気孔を二分する研磨面に対して直角に切断したマクロ孔気泡壁内のミクロ孔の平均直径を表す。第2の気孔は平均孔径5〜25μmを有するのが有利である。
【0015】
ミクロ孔径のほかに、気泡壁の気孔率は、少なくとも10体積%であるが、55体積%を超えないのが有利である。本明細書において、気孔率は、第2の気孔を二分する研磨面に対して直角に切断した気泡壁を、走査型電子顕微鏡で500×倍に拡大して、気泡壁内の目に見える気孔の割合を表す。好ましくは、気泡壁の気孔率は、少なくとも20体積%であるが、50体積%を超えないのが有利である。気泡壁は、気孔率約20〜40体積%を有するのが最も有利である。さらに、孔壁は場合により、厚さがミクロ孔の平均寸法の2〜10倍、または好ましくはミクロ孔の平均孔径の4〜10倍に等しい。
【0016】
溶剤/非溶剤凝固技術による多孔質ポリマー構造の創出は、人工皮革(例えばEncyclopedia of Polymer Science "LeatherLike Materials"を参照)または合成膜(例えばEncyclopedia of Polymer Science "Membrane Technology"を参照)の製造に長年用いられてきた。この凝固プロセスでは、溶剤中のポリマーの溶液を、そのポリマーに対して非溶剤である溶液に加える。ポリマー相が溶液から分離して、ポリマーリッチ相およびポリマープア相を形成する。ポリマーリッチ相は孔壁を構成し、ポリマープア相は気孔それ自体を構成する。ポリマーの化学的性質および凝固条件を制御することにより、種々の用途に対して幅広い気孔構造を作り出すことができる。溶剤型ポリマー溶液を用いて多孔質構造を作り出すほかに、水性の分散性ポリマーコーティングを溶剤/非溶剤交換以外のプロセスにより凝固することができる。水性のポリマー分散液を不安定化する可能なアプローチとして、pHの変化、イオン強度の変化または温度の変化がある。
【0017】
溶剤/非溶剤凝固(浸漬沈殿と呼ぶこともある)のほかに、他の技術により同様の多孔質構造を作り出すことができる。これらは、焼結、ストレッチング、トラックエッチング、テンプレートリーチング(template leaching)および転相のようなプロセスを含む。後者は、溶剤蒸発による沈殿、蒸気相からの沈殿、制御された蒸発による沈殿および熱的沈殿を含む。相互連結気孔を製造する他の方法は、超臨界流体の使用による、または低密度フォーム技術によるものである。
【0018】
実施例
表1に、以下の例に記載されたパッドの特性をまとめる。全体的なパッド特性、マクロ孔の計測データ、研磨データ、およびポロメリック研磨パッドを定義するいくつかの特徴に対する値を含む。例1〜3は、市販ポリウレタンポロメリック研磨パッドの比較例を表す。例4〜7は、市販研磨パッドよりも改良された研磨性能を示す研磨パッドを表す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1の詳細は以下の通りである:
DMA測定:ポロメリックコーティングの孔壁を形成するポリマーの引張貯蔵弾性率を、キャストフィルムの動的機械分析により測定した。これらは、ジメチルホルムアミドに溶解したポリマーをガラス板上にコーティングし、溶剤を高温で除去し、次に乾燥したコーティングをガラス板から取り外して、気泡および他の欠点を含まない、厚さ約300ミクロンの独立したフィルムを残すことにより調製した。25℃および相対湿度50%で5日間のフィルムコンディショニングの後、Rheometric Scientific(商標)Solids Analyzer RSA IIIを用いて、引張貯蔵弾性率を測定した。引張測定を、薄膜治具を用い、周波数10rad/secおよび温度25℃で、ASTM D5026-06 "Standard Test Method for Plastics: Dynamic Mechanical Properties: In Tension"にしたがって行った。サンプルの寸法は長さ20mm、幅6.5mmであった。
【0021】
気孔計測測定:ポロメリック研磨層の表面に存在する第1の気孔(マクロ孔)は、Media Cybernetics(登録商標)により開発されたImage-Pro(登録商標)ソフトウエアと組み合わせて、Nikon SMZ800(商標)顕微鏡を用いる光学鏡検法によって特性決定した。いくつかの気孔パラメータをこのソフトウエアで求めた。これらは、測定面積(A)内に存在する気孔の数(P);各気孔の平均面積(MPA);気孔直径;および気孔の割合を含む。これらのパラメータから、各孔壁の平均厚さ(w)を、式:
w =(A/πP)1/2−(MPA/π)1/2
を用いて算出した。
【0022】
研磨条件:全ての研磨データは、Applied Mirra(登録商標)200 mm Polisherで研磨した直径20inch(51cm)のパッドを用いてもたらした。パッドを、ピッチ100mil(2.5mm)、幅30mil(0.8mm)、および深さ15mil(0.4mm)の寸法を有するクロスハッチ(cross-hatch)デザインを型押しするか、またはピッチ180mil(4.6mm)、幅30mil(0.8mm)、および深さ15mil(0.4mm)の寸法を有するクロスハッチグルーブパターンを機械加工した。用いたスラリーは、流量200ml/minで、Dow Electronic Materialsにより製造されたLK393c4であった。プラテン速度(Platen speed)およびキャリヤヘッド速度(carrier head speed)はそれぞれ、93rpmおよび87rpmであり、ダウンフォースは1.5psiであった。
【0023】
ブランケットCuおよびTEOSウエーハをそれぞれ用いて、銅および絶縁材除去速度データを測定した。欠陥計測データを、ブランケットCuウエーハから、KLA SP1 Blanket Wafer Inspection Toolを用いて、検出限界0.08ミクロンで、続いて欠陥分類をVistec INS3300 Leica Defect Review Microscopeを用いて求めた。
【0024】
例1:比較パッドA(POLITEX(商標)CMP研磨パッド)
比較パッドAは、半導体ウエーハの研磨に長年広く用いられているポリウレタンポロメリックパッドであった。
【0025】
このパッドは、ジメチルホルムアミド(DMF)中のポリウレタン溶液を、ウレタン含浸不織ポリエステルフェルト基材上にコーティングし、次にそれを非溶剤/溶剤凝固浴に浸漬し、多孔質コーティングをその基材上に形成することにより製造した。すすぎおよび乾燥の後、このコーティングされた基材を研磨紙で磨いて、表皮層を除去して気孔構造を露出させた。次にパッドを型押して、研磨層にクロスハッチグルーブパターンを作り出した。型押グルーブパターンは、研磨の間、パッド表面にわたるスラリーの分布を促す。
【0026】
比較パッドAの気孔構造は、表1に与えられた寸法を有する大きな垂直の気孔を含んでいた。この気孔は、典型的には、直径70ミクロン、長さ数百ミクロン(横断面で研磨面に平行に測定)であった。大部分の気孔は、気孔が研磨面に向かって細くなるテーパー状であった。このテーパー構造は、パッドの摩耗によって多様な気孔密度をもたらし;そして多様な気孔密度は、パッド寿命の間、パッド表面が浸食されるにつれて一貫性のない研磨性能を与えた。
【0027】
この気泡壁は気孔率が低く、そして5〜40ミクロンの望ましい範囲でミクロ孔を含まなかった。存在する気孔は全て、直径5ミクロンより著しく小さく、通常1ミクロン未満であった。マクロ孔計測データから、前に示した式を用いて孔壁の厚さを算出することができた。比較パッドAに対して算出した孔壁厚さは20ミクロンであった。この値が低かったので、ウエーハ表面に対して、より高い欠陥度をもたらす過度な接触力の一因となった。上述したDMA法により測定した孔壁を形成するポリマーのモジュラスは、71MPaの値を有した。この値は、望ましいものよりも高く、そして研磨の間により高い欠陥をもたらした。
【0028】
表1の研磨データおよび条件を参照すると、このパッドの研磨性能は、低欠陥研磨用途の要求に対して不適切であった。例えば、欠陥度値は高すぎ、そしてTEOS除去速度は低すぎて、市販ウエーハ集積構造に対する処理量の必要条件を満たさなかった。特に、TEOS:Cu除去速度選択比は、先端の低欠陥または将来の研磨ニーズには低すぎた。
【0029】
例2:比較パッドB(H7000HN-PET、Fujibo)
比較パッドBは、半導体ウエーハ研摩に用いられている、Fujibo CorporationからH7000HN-PETの呼称で販売される、ポリウレタンポロメリックパッドであった。このパッドは、研磨層をポリエステルフィルム基材上にコーティングされるほかは、例1で用いたのと同様のプロセスにより製造されるようであり、そして気孔構造を制御するために配合物に添加された界面活性剤、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含んでいた。比較パッドBの気孔構造は、比較パッドAのそれと異なっていた。比較パッドBは、大きなマクロ孔およびマクロ孔の孔壁内のより小さなミクロ孔の両方からなる気孔構造を有していた。
【0030】
この気孔構造のいくつかの局面が低欠陥研磨用途の要求に望ましいが、比較パッドBは、界面活性剤をポリウレタン配合物に添加することにより、二重気孔構造を実現した。これらの界面活性剤の一部は、研磨されるデバイスの電気性能を危うくするおそれのある金属イオン、例えばナトリウムを含有し、一方で他の界面活性剤は研磨の間に許容できないフォーム発生をもたらすおそれがあった。
【0031】
次に、マクロ孔壁内のミクロ孔が集中すると、気泡壁を極めて高度に弱体化し、パッドの高い摩耗およびパッド寿命の低減を導くおそれがあった。最後に、表1から、算出した孔壁厚さは63ミクロンであったことが分かる。したがって、気孔構造は、気孔それ自体の直径と同等の寸法である壁によって隔てられている気孔からなっていた。このような気孔構造は、スラリー輸送と、パッドとウエーハ間の接触力とに悪影響を及ぼし、より要求の厳しい低欠陥研磨用途に無能であった。
【0032】
例3:比較パッドC(SPM3100(商標))
比較パッドCは、ケイ素ウエーハ研摩に用いられているポロメリックパッドであった。このパッドは、Dow Electronic MaterialsによりSPM3100の呼称で製造された。このパッドは、研磨層をポリエステルフィルム基材上にコーティングしたほかは、例1で用いたのと同様のプロセスにより製造した。比較パッドCは、望ましい気孔形態を有し、大小両方の気孔と望ましい壁厚さとを有するが、孔壁内のポリマーのモジュラスは、低欠陥度研磨には高すぎた。この例は、低欠陥研磨用途の要求に必要な極めて低い欠陥レベルを達成するために、孔壁内のポリマーのモジュラスを、臨界値未満に制御する必要性を明示した。また、TEOS:Cu除去速度選択比は、先端の低欠陥または将来の研磨ニーズに対して許容し難いほど低かった。
【0033】
例4:(フィルムベースベース基材)
ポリウレタンを、DMF中で、ポリエチレンプロピレングリコールアジペートポリオール(0.0102モル)およびブタンジオール(0.0354モル)の混合物を、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(0.0454モル)と反応させることにより、重量平均分子量50,000および分散度1.6を有するポリウレタンを形成することで合成した。得られたポリウレタン溶液の室温粘度は、固形分25wt%で、約3000cPであった。界面活性剤は、配合物中に含まれなかった。
【0034】
上述のポリウレタン溶液のウエット厚さ75mil(1.9mm)の層を、厚さ7.5mil(0.2mm)のポリエステルフィルム基材上に、17℃でコーティングした。コーティングされたフィルムを、DMF14.5%および水85.5%を含有する浴に浸漬し、17℃に保持して、ポリマーのコーティングを凝固し、大きな気孔と小さな気孔の両方を含有する多孔質ミクロ構造を形成した。
【0035】
すすぎおよび乾燥の後、コーティングされたフィルムを研磨紙で磨いて、表皮層を除去して気孔構造を露出した。研磨層にグルーブを機械加工して、ピッチ180mil(4.6mm)、深さ15mil(0.4mm)および幅30mil(0.8mm)の公称寸法を有するクロスハッチグルーブパターンを作り出した。これらのグルーブは、研磨の間、パッド表面にわたるスラリーの分布を促した。
【0036】
ポリウレタン配合物および凝固条件の組み合わせが、マクロ孔壁内にミクロ孔を有する、平均壁厚さ30ミクロンのマクロ孔からなる望ましい気孔形態をもたらした。ミクロ孔は、ほぼ球状、直径約10ミクロンであり、そしてその集中は、ミクロ孔の間に連続的なマクロ孔壁が存在するようなものであった。したがって、比較パッドBに存在する重なり合うミクロ孔の高い集中とは異なり、この例におけるミクロ孔はマクロ孔壁の強度または剛性を危うくしなかった。
【0037】
ポリウレタンポロメリック二重気孔構造はいくつかの利点を有した。第一に、先端のノードを研磨するのに必要なより高い値へのTEOS除去速度の増加に寄与し、そしてさらに重要なことには、TEOS:Cu除去速度選択比が好ましい値まで著しく上がった。表1から、例4のTEOS除去速度およびTEOS:Cu選択比は、例1の比較パッドAの対応する値よりも著しく高いことが分かる。比較パッドAは、第1の孔壁内に第2のミクロ孔が欠けていて、パッドウエーハギャップにスラリーを保持および輸送する同じ能力を持たなかった。例2の比較パッドBは、ミクロおよびマクロ気孔率の両方を有するが、ミクロ孔の集中とマクロ孔壁の厚さの両方が高すぎて、最適な接触およびウエーハとパッド表面の間のスラリー輸送を維持できなかった。したがって比較パッドBにより実現したTEOS除去速度は、低欠陥研磨用途の要求に不適切であった。
【0038】
例4の有利な二重気孔構造の第二の利点は、パッドの摩耗につれての研磨性能の変化を減らしたことであった。マクロ孔だけの構造を有するパッド、例えば例1の比較パッドAの場合、研磨中にパッドがすり減るにつれて、除去速度の変化が起こった。これはテーパー状横断面を有するマクロ孔が招いた、パッドがすり減るにつれて気孔横断面が変化するという結果であった。本発明の有利な二重気孔構造を有するパッドの研磨データは、パッドが摩耗するにつれて、パッド寿命全体にわたって除去速度はほぼ一定または一定に保たれ、欠陥度も変化しないこと(市販パッドA、BおよびCよりも著しい利点)を確立した。
【0039】
例4の二重気孔構造の第三の利点は、ミクロ孔の存在が、ダイヤモンドコンディショニングによりパッド表面にテクスチャーを作り出す必要性を減らしたことであった。従来の研磨パッドの場合は、研磨前および研磨中に、砥粒ダイヤモンドコンディショニングディスクを用いて、パッド表面をコンディショニングするのが普通である。この工程は時間がかかり、かつ高価なダイヤモンドコンディショニングディスクを購入する必要を強いる。研磨作業から、例4の構造を有するパッドは、研磨前または研磨中のダイヤモンドコンディショニングを行うとしても最小限必要とし、そして簡単な費用のかからないナイロンブラシを用いてのパッド表面のコンディショニングが、パッド寿命全体にわたって安定した除去速度および低い欠陥度を維持するに十分なことが分かった。ダイヤモンドコンディショニングの削除または少なくとも最小化は、パッド摩耗の減少およびパッド寿命の増大をもたらした。
【0040】
例4の二重気孔構造の第四の利点は、研磨性能の、パッド表面に型押しまたは機械加工したマクログルーブ(macrogroove)デザインへの依存が減ったことであった。マクログルーブは、研磨中のパッドとウエーハの間のスティクション(stiction)を防止し、パッド−ウエーハギャップにおけるスラリー輸送を可能にするのに必要であった。しかし、従来の研磨パッドとは異なり、例4のパッドのマクログルーブデザインの変化は、研磨性能に対して微かな影響しか及ぼさなかった。
【0041】
孔壁内のポリマーの貯蔵弾性率は39MPaであった。この値は、有効なTEOS除去速度、および高いTEOS:Cu除去速度選択性の値3.5と共に、低欠陥度研磨を与えた。例4のパッドは、極めて低い欠陥カウント値6を有し、比較パッド例A、BおよびCの欠陥レベルより著しく低かった。
【0042】
例5:(フェルトベース基材)
例4において、ポリウレタン溶液のウエット厚さ75milの層を17℃で製造したが、それをポリウレタン含浸不織ポリエステルフェルト基材上にコーティングした。基材(Dow Electronic Materials製)は、密度0.340g/cm3、圧縮率14%、厚さ49mil(1.2mm)および硬度49Shore DOであった。
【0043】
コーティングされたフェルトを、DMF14.5体積%および水85.5体積%を含有する浴に浸漬し、17℃に保持して、ポリマーのコーティングを凝固し、大きな気孔と小さな気孔の両方を含有する多孔質ミクロ構造を形成した。すすぎおよび乾燥の後、コーティングされた基材を研磨紙で磨いて、表皮層を除去して気孔構造を露出した。次に、研磨層を型押して、ピッチ100mil(2.5mm)、深さ15mil(0.4mm)および幅30mil(0.8mm)の公称寸法を有するクロスハッチグルーブパターンを作り出した。型押グルーブパターンは、研磨の間、パッド表面にわたるスラリーの分布を促した。
【0044】
フェルト基材は、透過性フェルト層を通って気泡が消え得るので、気泡が研磨パッドと研磨工具のプラテンの間にトラップされないという点で、乏しい研磨性能をもたらすフィルムよりも利点を有する。次に、研磨層をフィルムに付着する場合、研磨層のフィルムへの接着性は、接着ボンドの強度に依存する。いくつかの攻撃的な研磨条件下では、このボンドが機能しなくなり研磨の突発故障を招くおそれがある。フェルトを用いる場合、研磨層は実際にはフェルトに特定の深さ侵入し、そして強く、機械的に連結された界面を形成する。例4とは異なり、例5では、同じ研磨層をフィルム基材ではなくポリエステルフェルト上にコーティングした。ポリエステルフェルトは、ポリエステルフィルムよりもはるかに圧縮性であり、硬くなかった。研磨層は同じポリマー配合物から製造し、凝固条件は例4と同じなので、例5において同様の二重気孔構造、壁厚さおよび孔壁ポリマーモジュラス値が達成された。唯一の違いは、ベース基材であった。表1から、例5の不織パッドが、低欠陥値、高いTEOS除去速度および高いTEOS:Cu除去速度選択比を達成したことが分かる。
【0045】
この例は、良好な研磨性能は、不織フェルトベース基材を用いても達成可能であること、そしてフィルムと比べて、空気の閉じ込めおよび接着ボンドの故障の問題が解消することを明示した。
【0046】
例6:(フェルトベース基材)
例4においてポリウレタン溶液のウエット厚さ75milの層を、17℃で製造し、ポリウレタン含浸不織ポリエステルフェルト基材上にコーティングした。この基材(Dow Electronic Materials製)は、密度0.318g/cm3、圧縮率17%、厚さ44mil(1.1mm)および硬度39Shore DOを有した。
【0047】
コーティングされたフェルトを、例5で述べたのと同じプロセス工程および条件を用いて、研磨パッドに変えた。
【0048】
例6はさらに、不織フェルト基材が優れた研磨性能をもたらすことを明示した。
【0049】
例7:(フィルムベース基材)
ポリウレタンを、DMF中で、ポリエチレンプロピレングリコールアジペート(0.0117モル)およびブタンジオール(0.0259モル)の混合物を、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(0.0373モル)と反応させることにより、重量平均分子量40,000および分散度1.6を有するポリウレタンを形成することにより合成した。このポリウレタン溶液をフィルム上にコーティングし、そして例4で述べたのと同じプロセス工程および条件を用いて、研磨パッドに変えた。
【0050】
例7は、ポリウレタン配合物を変性して孔壁内のポリマーのモジュラスを下げるという点で、例4と異なる。二重気孔構造および孔壁厚さを含む研磨パッドの他の局面は、例4の研磨パッドと同様のままである。
【0051】
孔壁内のポリマーのモジュラスと、研磨の間に生じる欠陥のレベルとの間に、明瞭な関係が存在する。したがって例7および4を比較すると、孔壁内のポリマーのモジュラスの値は、それぞれ17および39MPaであり、欠陥レベルはそれぞれ2および6であり、孔壁モジュラスを下げると欠陥度が減少することを明確に示している。
【0052】
本発明の研磨パッドは、従来のポロメリック研磨パッドにより達成されなかったいくつかの利点を提供する。例えば、二重気孔率研磨パッドは、低欠陥度と共に、高いTEOS除去速度および高いTEOS:Cu除去速度選択性を促す。さらに、二重気孔率研磨パッドは、低減されたブレークイン(break-in)を要し、かつ安定した除去速度を与え;そして低減されたコンディショニングでこれらの安定した速度を達成する。本パッドは、制限された摩耗で1,000ウエーハの優れた寿命を与える。さらに、織物および不織基材は、優れた層間接着性を与え、かつ空気の閉じ込めを無くす。最後に、本研磨パッドは界面活性剤フリーであり、研磨の間泡立たないか、あるいは絶縁材およびlow−k絶縁材に拡散して研磨を妨げるおそれのあるアルカリ金属の一因とならない。