(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733538
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】切換式ロッカアーム
(51)【国際特許分類】
F01L 13/00 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
F01L13/00 301V
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-501339(P2013-501339)
(86)(22)【出願日】2011年3月18日
(65)【公表番号】特表2013-522542(P2013-522542A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011029065
(87)【国際公開番号】WO2011116331
(87)【国際公開日】20110922
【審査請求日】2014年3月18日
(31)【優先権主張番号】61/315,464
(32)【優先日】2010年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ツゥアフェス,オースチン
(72)【発明者】
【氏名】ラドゥレスク,アンドレー,ダン
(72)【発明者】
【氏名】セクール,マヨ
(72)【発明者】
【氏名】クライン,フィリップ,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,トニー
(72)【発明者】
【氏名】シェレン,ジェームズ アール.
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−041017(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/068629(WO,A2)
【文献】
特開2007−100585(JP,A)
【文献】
特開2009−203853(JP,A)
【文献】
特開平04−094406(JP,A)
【文献】
特開平10−220211(JP,A)
【文献】
特開2004−044449(JP,A)
【文献】
特開2004−278536(JP,A)
【文献】
特開2003−343227(JP,A)
【文献】
特開2003−254024(JP,A)
【文献】
特表平07−505462(JP,A)
【文献】
特表2009−516806(JP,A)
【文献】
特表2009−509081(JP,A)
【文献】
特表2007−526423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L1/00−1/46
9/00−9/04
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カムに係合するロッカアームであって、
第1端部と、第2端部と、第1及び第2外側サイドアームとを有する外側アームと
前記第1及び第2外側サイドアームの間に配置され、第1端部と、第2端部と、前記第1及び第2端部間に配置されたカム接触面とを有する内側アームと、を備え
前記内側アームは、その第1端部を前記外側アームの第1端部に隣接して前記外側アームに回動可能に取付けられ、前記内側アームは、その第2端部に隣接してラッチボアを有し、該ラッチボアは、略円筒状の側壁及びボア壁を有し、
前記ロッカアームは、更に、
略円筒状で第1直径を有する頭部と、略円筒状で前記第1直径よりも小さい第2直径を有する本体部と、位置決めピン受凹部とを有するラッチと、
略円筒状の内側及び外側表面を有し、前記外側表面は、少なくとも一部が前記ラッチボアの略円筒状の側壁に係合し、前記内側表面は、少なくとも一部が前記ラッチの本体部に係合し、更に、略円筒状の前記内側及び外側表面間に延びる位置決めプラグ孔を有するスリーブと、
前記スリーブを貫通して位置決めピン受凹部内に延びて、前記ラッチの軸回りの回転を制限するように構成された位置決めプラグとを備えていることを特徴とするロッカアーム。
【請求項2】
前記位置決めプラグは、前記位置決めプラグ孔内に圧入されることを特徴とする請求項1に記載のロッカアーム。
【請求項3】
前記位置決めプラグは、中空であることを特徴とする請求項1に記載のロッカアーム。
【請求項4】
前記位置決めプラグは、略円筒状の第1及び第2側壁を備え、略円筒状の前記第1側壁は、略円筒状の前記第2側壁よりも大きい直径を有し、略円筒状の第2側壁は、前記位置決めピン受凹部内に延びていることを特徴とする請求項1に記載のロッカアーム。
【請求項5】
前記位置決めプラグは、略円筒状の前記第1側壁から径方向に延びるフランジを備え、該フランジは、前記スリーブの外側表面に隣接して配置されることを特徴とする請求項4に記載のロッカアーム。
【請求項6】
前記内側アーム、前記スリーブ及び前記ラッチのうちの一つは、前記ラッチを前記内側アーム及び前記スリーブのうちの少なくとも一方に対して位置決めするように構成された基準マーキングを有していることを特徴とする請求項1に記載のロッカアーム。
【請求項7】
前記スリーブは、前記ラッチを前記スリーブに対して位置決めするように構成された基準マーキングを有していることを特徴とする請求項6に記載のロッカアーム。
【請求項8】
前記内側アームは、前記ラッチを前記内側アームに対して位置決めするように構成された基準マーキングを有していることを特徴とする請求項6に記載のロッカアーム。
【請求項9】
第1アームと、ラッチボアを有する第2アームとを含む切換式ロッカアームにおいて、ラッチを位置決めする方法であって、
前記第1アームに係合するように構成された第1アーム接触表面と、ラッチ位置決め基準とを有するラッチを設け、
ラッチを挿入するように構成された開口と、スリーブ位置決め基準とを有するスリーブを設け、
前記ラッチを前記スリーブの前記開口に挿入してラッチサブアセンブリを形成し、
前記ラッチ位置決め基準が前記スリーブ位置決め基準に対して所定の位置になるまで、前記ラッチを前記スリーブに対して回転させ、
前記ラッチサブアセンブリを前記第2アームの前記ラッチボアに挿入することを特徴とする方法。
【請求項10】
更に、位置決めプラグを設け、
前記位置決めプラグを前記スリーブに形成されたプラグ孔に挿入することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記位置決めプラグを挿入するステップは、前記ラッチを前記スリーブに挿入するステップの前に行うことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
更に、前記スリーブ内で前記ラッチを第1方向に、前記ラッチが位置決めプラグに干渉するまで、回転させ、
前記第1アーム接触表面と前記スリーブ位置決め基準との間の第1角度を測定し、
前記スリーブ内で前記ラッチを前記第1方向と反対の第2方向に、前記ラッチが前記位置決めプラグに干渉するまで、回転させ、
前記第1アーム接触表面と前記スリーブ位置決め基準との間の角度を測定し、
前記第1及び第2角度に基づいて前記ラッチの位置を調整することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記調整するステップは、前記ラッチを第1及び第2方向のうちの一方に、前記第1角度と前記第2角度との差の2分の1に略等しい角度まで回転させることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
切換式ロッカアームにおいてラッチを位置決めする方法であって、
位置決めプラグと、略円筒状の内側及び外側表面、並びに、前記内側表面から前記外側表面へ延びる位置決めプラグ開口を有するスリーブと、を設け、
前記位置決めプラグを前記位置決めプラグ孔に挿入して、充分な圧力をかけて前記位置決めプラグを前記位置決めプラグ孔内に圧入し、これにより、前記位置決めプラグを前記スリーブに固定し、
第1端部に略円筒状の頭部を有し、該頭部から第2端部に向かって軸方向に延びる略円筒状の本体部を有し、前記第2端部に隣接して位置決めピン受凹部を有するラッチを設け、
前記本体部の少なくとも一部が前記スリーブの前記内側表面に接触して、前記位置決めプラグが前記位置決めピン受凹部に受入れられるように、前記ラッチを前記スリーブに挿入することを特徴とする方法。
【請求項15】
更に、前記第2端部にラッチ位置決め基準を有する前記ラッチを設け、
第1端部と、第2端部と、該第2端部上のスリーブ位置決め基準とを有する前記スリーブを設け、
前記ラッチを前記スリーブに対して第1方向に、前記位置決めプラグが前記位置決めピン受凹部に干渉するまで回転させ、
前記ラッチ位置決め基準と前記スリーブ位置決め基準との間の第1角度を測定することを特徴とする請求項14に記載の方法
【請求項16】
更に、前記ラッチを前記スリーブに対して前記第1方向とは反対の第2方向に、前記位置決めプラグが前記位置決めピン受凹部に干渉するまで、回転させ、
前記ラッチ位置決め基準と前記スリーブ位置決め基準との間の第2角度を測定することを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
更に、前記ラッチを前記スリーブに対して、前記ラッチ位置決め基準と前記スリーブ位置決め基準との間の角度が前記第1角度と前記第2角度との間になるように回転させることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
更に、前記ラッチ及び前記スリーブを挿入するように構成されたボアを更に有する前記ロッカアームを設け、
前記ラッチ及び前記スリーブを前記ロッカアームに挿入し、
ラッチ位置決め基準マークとスリーブ位置決め基準マークのうちの一方をロッカアーム基準マークに位置決めすることと、を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2010年3月19日に提出された米国仮特許出願第61/315464号の優先権を主張する。その出願のすべてがここに含まれる。
(技術分野)
本出願は、内燃エンジン用の切換式ロッカアームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
切換式ロッカアームは、2以上の状態間を切換えることにより、バルブの作動の制御を可能にし、通常、内側アーム及び外側アームのような複数のアームを含んでいる。状況に応じて、これらのアームは、低リフトローブ、高リフトローブ及び無−リフトローブといった異なるカムローブに係合する。内燃エンジンの運転に適した状態にロッカアームのモードを切換えるために機構が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
カムに係合するためのロッカアームが開示されている。外側アーム及び内側アームは、運動を内燃エンジンのバルブに伝達するように構成されている。ラッチ機構は、ラッチ、スリーブ及び位置決め部材を含む。スリーブは、ラッチ及び内側アームのボアに係合し、また、ラッチをスリーブ及び内側アームに対して適切に位置決めするのに使用される位置決め部材用の開口を設ける。スリーブ、ラッチ及び内側アームは、ラッチの最適な位置を決定するために使用される基準マークを有している。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】3つのローブを有するカム102によって作動中の形態とされた切換式ロッカアーム100の一実施形態の斜視図である。
【
図2】切換式ロッカアーム100の一実施形態の斜視図である。
【
図3】切換式ロッカアーム100の一実施形態の他の方向から見た斜視図である。
【
図4】切換式ロッカアーム100の一実施形態の分解斜視図である。
【
図5】切換式ロッカアーム100の一実施形態の平面図である。
【
図7】ラッチ結語状態にあるラッチ機構201の
図5における7−7線に沿った断面図である。
【
図8】ラッチ解除状態にあるラッチ機構201の断面図である。
【
図9A-9F】位置決めピン221に対するいくつかの関連装置を示す図である。
【
図10】ラッチ200の一実施形態を示す図である。
【
図11】ラッチ機構201の他の実施形態を示す図である。
【
図12-14】切換式ロッカアームの組立方法の一例を示す図である。
【
図15】ピン1000の他の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
当然のことながら、図面において、図示された要素の形態は、形態の一例を示しているに過ぎない。当業者は、単一の要素を複数の要素として設計することができ、あるいは、複数の要素を単一の要素として設計することができることを理解するであろう。内部の機構として示される要素は、外部の機構として機能することができ、その逆も成立する。
【0006】
更に、添付の図面及び以下の説明において、これらの図面及び説明を通して、同様の部分は、それぞれ同じ参照符号を用いて示されている。図は、縮尺どおりではないことがあり、ある部分の比率は、図示の便宜のために誇張されている。
【0007】
説明の便宜上、以下の説明において特定の用語を使用するが、これに限定されるものではない。ここで使用される「上方」、「下方」及びその他の方向を示す用語は、これらの通常の意味を有し、また、記載された図を普通に見たときのこれらの方向をいうものとする。
【0008】
図1は、3つのローブを有するカム102、ラッシュアジャスタ110、バルブ112、スプリング114及びスプリングリテーナ116によって作動中の状態とされた切換式ロッカアーム100の一実施形態の斜視図を示している。カム102は、第1及び第2高リフトローブ104、106及び低リフトローブ108を有する。この切換式ロッカアーム100は、外側アーム120及び内側アーム122を有している。作動中、高リフトローブ104、106は外側アーム122に接触するのに対して、低リフトローブ108は内側アーム122に接触する。これらのローブは、外側アーム120及び内側アーム122を周期的に下方に移動させる。下方への運動は、内側アーム122によってバルブ112に伝達され、これにより、バルブが開く。ロッカアーム100は、高リフトモードから低リフトモードへの間で切換可能である。高リフトモードでは、外側アーム120が内側アーム122にラッチ結合される。エンジンの運転中、高リフトローブは、周期的に外側アーム120を下方に押す。外側アーム120が内側アーム122にラッチ結合されているので、高リフト運動が外側アーム120から内側アーム122に伝達され、更に、バルブ112に伝達される。ロッカアーム100がその非切換モードにあるとき、外側アーム120は、内側アーム122にラッチ結合されず、外側アーム120によって生じる高リフト運動は、内側アーム122に伝達されない。代りに、低リフトローブ108が内側アーム122に接触して、低リフト運動が生じてバルブ112に伝達される。外側アーム120は、内側アーム122にラッチ結合されていないとき、軸118の回りを回動するが、運動をバルブ112に伝達しない。
【0009】
図2は、切換式ロッカアーム100の一実施形態の斜視図を示している。切換式ロッカアーム100は、例示のためだけに示され、当然のことながら、開示を目的とする切換式ロッカアーム100の構造は、ここに含まれる図に示されるロッカアーム100の構造に限定されない。
【0010】
図2に示されるように、切換式ロッカアーム100は、第1外側アーム124及び第2外側アーム126を有する外側アーム120を含む。内側アーム122は、第1外側アーム124と第2外側アーム126と間に配置される。これらの内側アーム122及び外側アーム120は、両方とも回動軸118に取付けられ、この回動軸118は、ロッカアーム100の第1端部101に隣接して配されて、内側アーム122を外側アーム120に締結する共に、内側アーム112の外側アーム120に対する回動軸118の回りの自由な角度の回動を可能にする。外側アーム120及び内側アーム122に取付けられた分離した回動軸118を有する図示の実施形態に加えて、回動軸118は、外側アーム120又は内側アーム122の一部としてもよい。
【0011】
図2に示されるロッカアーム100は、3−ローブ付カムの中央の低リフトローブに係合するように構成されたローラ128を有する。外側アーム120の第1及び第2スライダパッド130、132は、
図1に示される第1及び第2高リフトローブ104、106に係合するように構成されている。第1及び第2捩じりバネ134、136は、外側アーム120を高リフトローブ104、106によって配置した後、上方に付勢するように機能する。第1及び第2オーバ−トラベルリミッタ140、142は、捩じりバネ134、136の過度の巻付け及びバネ134、136への潜在的な過度に応力の作用を防止する。オーバ−トラベルリミッタ140、142は、低リフトモード中に外側アーム120がその最大回転に達したとき、第1及び第2オイルギャラリ144、146に接触する。この点で、オーバ−トラベルリミッタ140、142とギャラリ144、146とが衝突して外側アーム120の下方への更なる回動を阻止する。
【0012】
図3は、ロッカアーム100の他の方向から見た斜視図を示している。第1スライダパッド130の下部から第1クランプローブ150が突出している。同様に、第2スライダパッド132の下部に第2クランプローブ(図示せず)が配置されている。製造工程中において、クランプローブ150は、スライダパッド130、132の研削中にクランプによって係合される。これらの表面の研削は、パッド130、132が互いに平行に維持されて、外側アーム120が変形されないことを要求する。クランプローブ150でのクランプは、他のクランプ構造の下で生じるであろう外側アーム120の変形を防止する。例えば、好ましくは外側アーム120に一体化されたクランプローブ150でのクランプは、外側アーム124、126を互いに向けて引き締めるクランプによって生じるであろういかなる機械的な応力も解消するのに役立つ。他の実施形態において、クランプローブ150は、スライダパッド130、132の直ぐ下部に配置され、これにより、研削機械の接触力によって外側アーム120に生じるトルクは、ほぼゼロか最小限になる。特定の適用例では、変形を最小化するために、外側アーム120の他の部分に圧力をかける必要があるかもしれない。
【0013】
図4は、
図2及び3の切換式ロッカアーム100の分解斜視図を示している。
図4に示されるように、組立てられるとき、ローラ128は、ニードルローラ−タイプのアセンブリ129の一部で、このアセンブリ129は、ローラ128とローラ軸182との間に取付けられるニードル180を有している。ローラ軸182は、内側アーム122にローラ軸孔183、184を介して取付けられる。ローラアセンブリ129は、ラッチ解除状態において、低リフトカム108の回転運動を内側ロッカアーム120に伝達し、更に、その運動をバルブ112に伝達するのに役立つ。回動軸118は、ロッカアーム100の第1端部101で、内側アーム122にカラー123を介して取付けられ、また、外側アーム120に回動軸孔160、162を介して取付けられている。ラッチ解除状態において、外側アーム120の内側アーム122に対する空回りは、回動軸118の回りで生じる。このときの空回りは、ラッチ解除状態における外側アーム120の内側アームに対する運動を意味する。この運動は、ラッチ解除状態において、カム102の第1及び第2高リフトローブ104、106の回転運動をバルブ112に伝達しない。
【0014】
ローラアセンブリ129及びパッド130、132以外の他の構造でも、カム102からロッカアーム100への運動の伝達を可能にする。例えば、パッド130、132のようなスムースな非回転表面(図示せず)が内側アーム122に配置されて低リフトローブ108に係合し、ローラアセンブリがロッカアーム100に取付けられて高リフトローブ104、106からロッカアーム100の外側アーム120に運動を伝達するようにしてもよい。
【0015】
内側アーム122を外側アーム120にラッチ結合する機構201は、図示の実施形態ではロッカアーム100の第2端部103の付近にあり、
図4に示されるように、ラッチピン200、カラー210、位置決めピン220及びラッチスプリング230を備えている。この機構201は、内側アーム122の内側にボア240内に取付けられるように構成されている。以下に説明するように、組立てられたロッカアーム100において、ラッチ200は、高リフトモードで伸長して内側アーム122を外側アーム120に締結する。低リフトモードにおいて、ラッチ200は、内側アーム122内に格納されて、外側アーム120の空動きを許容する。第1及び第2オイルギャラリ144、146を通して供給された油圧は、例えば、ソレノイドによって制御することができ、ラッチ200がラッチ結合されるか、されないかを制御する。ギャラリ孔172にプラグ170が挿入されて、耐圧シールを形成し、第1及び第2オイルギャラリ144、146を閉じて、これらがオイルをラッチ機構201に導通できるようにする。
【0016】
図5は、ロッカアーム100の平面図を示している。
図5に示されるように、外側アーム120から内側アーム122に向ってオーバ−トラベルリミッタ140、142が延びて、ギャラリ144、146と重なり、リミッタ140、142とギャラリ144、146とが干渉するようにしている。6−6線に沿った断面を表す
図6に示されるように、リミッタ140の接触表面143は、ギャラリ144の断面形状に合うように輪郭が形成されている。これは、リミッタ140、142がギャラリ144、146に接触するとき、力を均等に分配するのに役立つ。
【0017】
図7は、ラッチ結合状態にあるラッチ機構201の
図5の7−7線に沿った断面を示している。ラッチ200は、ボア240の中に配置されている。ラッチ200は、付勢バネ230が挿入されるスプリングボア202を有している。ラッチ200は、後面203及び前面204を有している。また、ラッチ200は、略円筒状の第1表面205及び略円筒状の第2表面206を有している。略円筒状の第1表面205は、略円筒状の第2表面よりも大きい直径を有している。スプリングボア202は、これらの第1及び第2表面205、206と略同心である。
【0018】
スリーブ210は、略円筒状の第1ボア壁241に接合する略円筒状の外側表面211及び略円筒状の内側表面215を有している。ボア240は、略円筒状の第1ボア壁241、及び、この略円筒状の第1ボア壁241よりも大きい直径を有する略円筒状の第2ボア壁242を有している。スリーブ210の略円筒状の外側表面211及びラッチ200の略円筒状の第1表面205は、略円筒状の第1ボア壁241に係合して、耐圧シールを形成する。また、更に、スリーブ210の略円筒状の内側表面215は、ラッチ200の略円筒状の第2表面206とで耐圧シールを形成する。これらのシールは、容積室250内に油圧が発生できるようにし、この容積室250は、ラッチ200の略円筒状の第2表面206を取囲む。
【0019】
図7に示されるラッチ200のデフォルト位置は、ラッチ結合位置である。スプリング230がラッチ200をボア240から外方に向ってラッチ結合位置へ付勢する。容積室250に作用される圧力がラッチ200を後退させて、これをラッチ解除位置へ移動させる。また、例えば、スプリング230がラッチ200をラッチ解除位置に付勢し、ボア壁208と後部表面203との間へ油圧を供給することにより、ラッチ200をボア240から外側アーム120へ外方に向って伸長させるような他の構造とすることもできる。
【0020】
ラッチ結合状態において、ラッチ200は、アーム係合表面213で外側アーム120のラッチ係合表面214に係合する。
図7に示されるように、外側アーム120は、下方への移動が妨げられて、ラッチ200を介して運動を内側アーム122に伝達する。位置決め構造212は、内側アーム122の外側から第1ピン開口217を通り、そして、スリーブ210の第2ピン開口218を通して位置決めピン221が挿入される溝の形を採っている。位置決めピン221は、ほぼ中実でスムースである。リテーナ222がピン221を適当な位置に固定する。位置決めピン221は、ラッチ200のボア240内での過度の回転を防止する。
【0021】
図8に見られるように、加圧されたオイルを容積室250内に導入したとき、ラッチ200は、ボア240内に後退して、外側アーム120を内側アーム122に対して空回りできるようにする。そして、外側アーム120は、ラッチ200によって下方への移動が妨げられることなく、空回りする。加圧されたオイルは、オイル開口280を通して容積室250に導入され、このオイル開口280は、オイルギャラリ144、146に流体接続している。ラッチ200が後退したとき、その後部表面203がボア壁208に当接する。望ましい一実施形態では、ラッチ200の後部表面203は、略円筒状の第1及び第2ボア壁241、242に略直交し、かつ、ボア壁208に平行の平坦な環状表面、すなわち、シール表面207を有している。この平坦な環状表面207は、ボア壁208に対するシールを形成し、このシールは、容積室250からラッチ200の略円筒状の第1表面205及び略円筒状の第1ボア壁241によって形成されたシールを通るオイルの漏れを減少させる。
【0022】
図9A〜9Fは、位置決めピン221のためのいくつかの保持装置を示している。
図9Aにおいて、ピン221は、均一の厚さを有する円筒状である。
図9Cに示されるはめ込みリング910がスリーブ210に配置された凹部224内に配置されている。ピン221は、歯912を変形させながらリング910に挿入されて、ピン221をリング910に固定する。そして、ピン221は、内側アーム122によって凹部224の中で取囲まれて適当な位置に固定される。
図9Bに示される他の実施形態では、ピン221は、リング910の歯912が圧入されるスロット902を有し、リング910をピン221に固定する。
図9Dに示される他の実施形態では、ピン221は、
図9Eに示される類のE−形クリップ914、又は、
図9Fに示されるような湾曲されたE−形クリップ914を挿入することができるスロット904を有して、ピン221を内側アーム122に対して適当な位置に固定する。更に他の実施形態では、型打ちしたリングの代りにワイヤリングを使用してもよい。組立時には、E−形クリップ914が凹部224内に配置されて、スリーブ210が内側アーム122に挿入された時点で、位置決めピン221がクリップ914を通して挿入される。
【0023】
ラッチ200の一例が
図10に示されている。このラッチ200は、概して頭部290と本体部292とに分けられる。前部表面204は、凸状に湾曲された突出表面である。この表面形状は、外側アーム120に向って延び、これにより、ラッチ200のアーム係合表面213が外側アーム120に適切に係合する機会を増大させることになる。アーム係合表面213は、略平坦な表面を有している。アーム係合表面213は、略円筒状の第2表面206との第1境界285から第2境界286へ延び、また、前部表面との境界287から、表面232との境界233へ延びている。表面232からラッチ200の縦軸Aの方向に最も遠くへ延びているアーム係合表面213の部分は、第1境界285と第2境界286との間のほぼ等距離に配置されている。反対に、表面232から軸Aの方向に最も小さく延びているアーム係合表面213の部分は、ほぼ第1及び第2境界285、286上に配置されている。前部表面204は、凸状に湾曲された表面である必要はなく、代りに、V字状表面、あるいは、他の形状とすることもできる。この構造は、ボア240内のラッチ200のより大きな回転を許容すると共に、ラッチ200のアーム係合表面213と外側アーム120とが適切に係合する可能性を改善する。
【0024】
代わりのラッチ機構201が
図11に示されている。位置決めプラグ1000は、中空のカップ状のプラグの形で、スリーブ孔1002に圧入され、位置決め構造212内に延びることによってラッチ200を位置決めして、ラッチ200のスリーブ210に対する過度の回転を防止している。以下に更に説明するように、位置合せスロット1004は、ラッチ200をスリーブ210内で回転させることができる構造を提供することにより、スリーブ210内でのラッチ200の位置決め、結果的には、内側アーム122内でのラッチ200の位置決めを補助する。この位置合せスロット1004は、ラッチ200を回転させ、また、その方向を確認する構造として役立てることができる。
【0025】
図12〜
図14を参照して、切換式ロッカアーム100の組立方法の一例は、次のとおりである。位置決めプラグがスリーブ孔1002に圧入されて、ラッチ200がスリーブ210の略円筒状の内側表面215に挿入される。そして、ラッチ200は、位置決め構造212がプラグ1000に到達するまで時計回りに回転され、その時点で位置決め構造212とプラグ1000との干渉が更なる回転を阻止する。
図12に示されるように、測定角度A1は、アーム係合表面213とスリーブ基準1010、1012との間の角度に対応し、これらのスリーブ基準1010、1012は、スリーブ孔1002に直交する。また、位置合せスロット1004は、ラッチ200のための基準線として役立ち、また、キースロット1014は、スリーブ210上に配置された基準として役立つことができる。そして、ラッチ200は、位置決め構造212がプラグ1000に到達するまで反時計回りに回転され、更なる回転を阻止する。
図13に示されるように、第2の測定角度A2は、アーム係合表面213とスリーブ基準1010、1012との間の角度に対応する。角度A1及びA2を得るため、反時計回りに回転させ、その後に時計回りに回転させてもよい。
図14に示されるように、内側アーム122への挿入時に、スリーブ210及びピンサブアセンブリ1200は、内側アーム基準1020とスリーブ基準1010、1012との間で測定した角度Aまで回転され、その結果、アーム係合表面213は、内側アーム基準1020によって示されるように、内側アーム122に対して水平に向けられる。回転角度Aの大きさは、ラッチ200が外側アーム120に係合する可能性を最大限にするように選択すべきである。そのような一例は、内側アーム基準1020から測定された角度A2とA1との差の半分の角度だけサブアセンブリ1200を回転させることである。この開示の技術的な範囲内において、角度Aを他の大きさに調整することも可能である
【0026】
他の実施形態のピン1000の輪郭を
図15に示す。ここでは、ピン1000は、中空で、部分的に内部容積室1050を取囲んでいる。このピン1000は、略円筒状の第1壁部1030及び略円筒状の第2壁部1040を有している。略円筒状の第1壁部1030は、第2壁部1040の直径D2よりも大きい直径を有している。フランジ1025は、位置決めピン1000がスリーブ210のピン開口218を通り抜けて下方に移動しないようにしている。
【0027】
この開示の目的のため、特別の定めがない限り、「1つ(「a」又は「an」)」を表す語は、「1つ以上」をも意味する。「含む(include)」又は「含んでいる(including)」を表す用語は、本明細書及び請求の範囲において使用される場合、「備え(comprising)」を表す用語が請求の範囲において転換語として用いられるときに解釈されるのと同様、両立的なものであるとする。更に、「又は(or)」を表す用語が用いられる場合(例えば、A又はB)、「A又はB、若しくは、A及びBの両方」を意味するものとする。本出願人が「A又はBのみで、A及びBの両方ではない」を表すことを意図する場合は、「A又はBのみで、A及びBの両方ではない」という表現が用いられる。したがって、ここで「又は」という用語の使用は、両立的なものであり、排他的な使用法ではない。Bryan A.Garner、A Dictionary of Modern Legal Usage 624(第2版 1995年)を参照。また、「中で(in)」又は「中へ(into)」を表す用語は、本明細書又は請求の範囲において使用される場合、付加的に「上に(on)」又は「上へ(onto)」をも意味するものとする。更に、「接続(connect)」を表す用語は、本明細書又は請求の範囲において使用される場合、「直接的な接続」だけでなく、例えば他の一要素又は複数要素を介して接続されるような「非直接的な接続」をも意味するものとする。ここで使用される「約(about)」は、当業者により理解されるものであり、それが使用される状況に依存してある範囲で変化する。それが使用される所与の状況において、当業者にとって不明確なものに使用されている場合、「約(about)」は、特定のものに対して最大で前後10%までを意味する。約XからYは、約Xから約Yを意味するものとし、但し、X及びYは特定の数値である。
【0028】
本発明の開示は、様々な実施形態を記載しており、また、これらの実施形態を多少詳細に説明してきたが、本出願人は、請求の範囲に記載された発明の技術的範囲をそのような詳細に制限すること、又は、いかなる点においても限定することを意図していない。更なる利点及び修正が当業者には容易に明らかになるであろう。このため、本発明は、そのより広い概念の特徴において、特定の詳細及び図示されて説明された実施形態に限定されるものではない。したがって、本出願人により請求の範囲に記載された発明の技術的思想又は技術的範囲から逸脱することなく、そのような詳細から様々な発展が可能である。更に、上述の実施形態は、例示的なものであり、本出願又は以降の出願において請求の範囲に記載される可能な全ての組み合わせに対して、どれ一つとして必須の機構又は要素ではない。