【課題を解決するための手段】
【0012】
保管および搬送時に安定し、良好な流量特性を有し、チューインガムを製造する方法での使用時に特に都合がよい粉末を得るために、本発明は、(i)溶媒、好ましくは水からのマンニトールの結晶化と、続いて(ii)得られた結晶の懸濁液から結晶を分離するステップ、(iii)結晶を乾燥させるステップ、(iv)選別するステップとによって得られるマンニトール結晶で形成される粉状組成物であって、レーザー粒度分析によって求めた体積粒度分布が、
−72〜99.9%、好ましくは75〜99%、一層好ましくは80〜98%、なお一層好ましくは85〜97%の粒子が粒度75μmを超え、
−0.1〜60%、好ましくは1〜55%、一層好ましくは2〜40%、なお一層好ましくは3〜35%の粒子が250μmを超えるものであり、
−平均直径が100〜300μm、好ましくは120〜270μm、一層好ましくは150〜250μm、なお一層好ましくは170〜230μmである、前記組成物に関する。
【0013】
本発明の意味の範囲内で、「マンニトール結晶で形成される粉状組成物」または「マンニトール結晶で形成される粉末」とは、マンニトールの純粋な溶液または純粋ではない溶液すなわち、乾燥物質に対して20〜100%のマンニトールを含む溶液の結晶化によって得られる生成物を意味するものと理解される。たとえば、欧州特許第0 202 168号明細書について言及されよう。
【0014】
このような方法には、大部分が個々の結晶から形成される組成物を得られるようにするという顕著な特徴がある。「大部分が」とは、個々の結晶の50%を超え、好ましくは個々の結晶の60〜100%、特に70〜99.9%、一層好ましくは80〜98%を意味するものと理解される。「個々の」という表現を用いるのは、単位の概念、凝集体との対比で、結晶の凝結体または圧縮塊を意味するものと理解される。
【0015】
本発明の意味の範囲内で、「結晶」は、結晶化すなわち、物質を液体、溶媒和(溶媒に溶解させた)状態または気体状態から固体状態に変化させることによって直接的に得られる、周期構造を有する多面体を意味するものと理解される。
【0016】
このため、結晶組成物の造粒によって得られるマンニトール粉末は、この粉末の結晶が凝集されたものであるという点で本発明の意味の範囲内に含まれるマンニトール結晶で形成される粉末をなさない。当業者であれば、結晶の凝集体に言及する。同様に、マンニトールシロップを噴霧して得られる粉末も、本発明の意味の範囲に含まれるマンニトール結晶で形成される組成物をなさない。この粉末が、非晶質相を伴うまたは伴わずに、塊として集合した微結晶からなるスポンジ構造を有する球体で構成され、各々の球体が微粒化時に噴霧されるシロップ滴を乾燥させて得られるためである。当業者であれば、atomisateに言及する。最後に、本発明による結晶で形成される組成物は、得られる粒子が互いに塊になった微結晶で形成されるという点で、溶融によって得られる圧縮塊とは区別される。これらの組成物(凝集体、atomisate、圧縮塊)は、本発明による組成物とは構造的に異なり、事実、物理的特性が異なる上に用途も異なる。
【0017】
第1の変形例によれば、ポリオール溶液を冷却するプロセスまたは蒸発させるプロセスによって結晶化を実施する。
【0018】
第2の変形例によれば、物理化学的なプロセスによって結晶化を実施する。一般に、希釈剤、特にアルコールなどの有機溶媒を加えることで、結晶化を実施する。
【0019】
第3の変形例によれば、数回に分ける形で、すなわち連続的に結晶化することによって結晶化を実施し、各ステップで得られる結晶を溶媒に溶解した後、再び結晶化させる。
【0020】
一般に、結晶化ステップには、粒子を選別するステップが続き、その前に得られた結晶の粉砕がなされることもある。
【0021】
好ましくは、粒子の選別を、ふるい分けによるか、あるいは空気分級機での分級プロセスによって実施する。
【0022】
粒度分布値については、試料の吸引(1400ワットの吸引器)による粉末分散用(乾燥法)のモジュールを取り付けたBECKMAN−COULTER社のLS 230型レーザー回折粒度分析装置で、製造業者の技術マニュアルと仕様書に従って求める。
【0023】
ホッパー下でのスクリュー速度および分散シュートの振動強度の動作条件は、光学濃度が4%〜12%、理想的には8%になるように定められる。
【0024】
LS 230型レーザー回折粒度分析装置の測定範囲は、0.4μm〜2000μmである。結果を容量基準のパーセンテージで算出し、ミクロン単位(μm)で示す。使用する算出方法は、フラウンホーファー理論に基づくものである。よって、75μmを超える粒度が75〜2000μmで測定される粒子に対応し、250μmを超える粒度が250〜2000μmで測定される粒子に対応する。
【0025】
粒度分布曲線を用いることで、体積平均径(算術平均)D4,3の値をさらに求めることが可能になる。
【0026】
本発明の一変形例によれば、マンニトール結晶で形成される粉状組成物は、流れ等級が55以上であり、好ましくは60〜90に該当し、一層好ましくは65〜85に該当し、特に68〜80に該当する。
【0027】
HOSOKAWA社から販売されているPTE型のPOWDER TESTER機器を用いて、流動性を評価する。この機器は、標準化されて再現可能な条件で、粉末の流動性を測定し、流動性指数とも呼ばれる流れ等級を、Mr Ralph Carrによる研究(1965)に基づいて算出できるようにするものである。流れ等級は、以下の4種類の試験を用いて得られる値から算出される。圧縮率、安息角、スパチュラ角、均一度(PTE型のPOWDER TESTER機器の技術マニュアルを参照のこと)。この最後の試験のために、使用する粒度は上述したレーザー粒度分析で得られたものである。
【0028】
このような流動性値は、本発明による粉状組成物に、チューインガムを製造するための方法で使用する良好な特性を与えるものであり、特に、そのときにガムベースに堆積させる粉末の量の厳密な調節が可能である。また、この流動性は、医薬分野におけるマンニトールの多くの用途にとって都合のよいものである。これによって、サシェまたは硬質ゼラチンカプセルに一層容易に充填可能になり、錠剤プレスのマトリックスの一層容易な充填を可能にすることで、錠剤の製造も楽になる。
【0029】
好都合な一変形例によれば、マンニトール結晶で形成される粉状組成物は、マンニトールの豊富さが96〜100重量%、好ましくは97〜99.9重量%、一層好ましくは98〜99.8重量%である。
【0030】
もうひとつの好都合な変形例によれば、マンニトール結晶で形成される粉末は、圧縮率が30〜15%、好ましくは27〜12%、一層好ましくは24〜10%である。
【0031】
このような圧縮率値は、マンニトール粉末に、保管時における粉状態での一層良好な安定性を与えるものである。圧縮率値が20%を超えると、この粉末は自由に流れなくなり、ホッパー内でアーチを形成する傾向を示す(HOSOKAWA PTE装置ハンドブック)。40〜50%の圧縮率の具体的な値については、ひとたび材料をホッパーに投入すると、そこから材料を排出することすらできなくなる。
【0032】
好都合なことに、マンニトール結晶で形成される粉状組成物は、曝気密度が0.480g/ml、好ましくは0.540〜0.700g/ml、一層好ましくは0.580〜0.650g/mlであり、充填密度が0.700〜0.860g/ml、好ましくは0.725〜0.830g/ml、一層好ましくは0.750〜0.800g/mlである。
【0033】
このような曝気密度および充填密度値は、マンニトール粉末に、包装および搬送のコストが業界標準を満たせるだけの十分に高い密度、つまり製造業者が生成物と一緒に多くの空気を包装および搬送せずにすむ密度を与えるものである。かたや、密度が過剰に高い粉末では、その技術的使用時に欠陥が生じ、圧縮率に欠け、溶解速度が遅く、正確な計量が困難である。
【0034】
本発明による、マンニトール結晶で形成される粉状組成物の充填密度値および曝気密度値ならびに圧縮率値は、HOSOKAWAから販売されているPTE型のPOWDER TESTER装置を用いて、製造業者の仕様書に沿って求められる。
【0035】
この装置は、標準化された再現可能な条件下で、特に曝気嵩密度および充填嵩密度を測定することで粉末の流動性能を測定し、続いて、このデータから以下の式で圧縮率値を算出できるようにするものである。
【数1】
【0036】
充填密度および曝気密度の測定は、上述したようなPTE型のPOWDER TESTER装置で、前記POWDER TESTERの動作指示書にて推奨される方法(デフォルトの設定では充填密度の測定で振盪動作180回)を用いて実施される。
【0037】
このような粉状組成物は、ケーキングに対して特に高い耐性を有し、なおかつ最新技術のマンニトールに対して極めて良好な流動性と密度特性とを有し、その良好な流動性およびダストの形成されにくさがゆえに、チューインガムを製造するための方法で使用するのに特に適している。
【0038】
また、本発明は、本発明による粒度が75μmを超える粒子を72〜99.9%、好ましくは75〜99%、一層好ましくは80〜98%、なお一層好ましくは85〜97%含むマンニトール結晶で形成される粉状組成物を製造するための方法であって、
a)溶媒から、好ましくは水からマンニトールを結晶化するステップと、
b)得られた結晶の懸濁液から結晶を分離するステップと、
c)結晶を乾燥させるステップと、
d)結晶を選別するステップと、
e)粉状組成物を回収するステップと、を含む方法にも関する。
【0039】
乾燥については、たとえば流動空気層、あるいは空気乾燥機または回転乾燥機といった当業者間で周知の手段で実施可能である。
【0040】
得られた結晶の懸濁液からの結晶の分離は一般に、遠心処理ステップまたは濾過ステップによって実施されることになるが、このような遠心処理法または濾過法の使用は、当業者間で周知である。
【0041】
好都合なことに、選別のステップd)は、ふるい分けによる分級または空気を用いる分級のプロセスによって実施される。
【0042】
「空気分級機」とは、空気流を用いて粒度に応じて粉末を分離する装置を意味するものと理解される。このような分級機については、Pierre BlazyおよびEl−Aid Jdidによる文献「Classification pneumatique」、Technique de l’ingenieur, traite Genie des Procedesに記載されている。これらの分級機は、水平気体流または垂直気体流または混合気体流を用いる静的選別チャンバを有するものであっても構わない。このような分級機は、バッフルを持つものであってもよいし、持たないものであってもよい。もうひとつのタイプの空気分級機に、遠心力を利用した分級機がある。後者のうち、スタティックサイクロン、水平軸ロータを有する分級機、垂直軸の機械式分級機が説明されている。
【0043】
好ましくは、結晶化によって結晶粉末を得た上で、粒子を選別する。好ましくは、粒子の選別を空気分級機によって実施する。空気分級機が、好ましくは垂直気体流を用いる静的分級機であると都合がよい。空気分級機がジグザグ分級機であると、特に好都合である。
【0044】
このような分級機は、米国特許第1 861 248号明細書に記載されている。
【0045】
ジグザグ分級機における選別は、空気重力選別である。選別領域において、固体粒子は重力と空気の流れによる抵抗力とを受けることになるため、これは固体粒子をその落下時の挙動に応じて分級する選別プロセスである。実際のところ、この選別は、選別領域での異なる粒子の軌道の差異を利用してなされている。
【0046】
好都合なことに、ジグザグ分級機はいくつかのステージを含む。この分級機は、好ましくは13のステージを含む。これらのステージが存在することで、すべてのステージに同じ空気を用いることが可能になり、軽い粒子の上昇流と大きな粒子の下降空気流の両方で選別を繰り返すことが可能になる。
【0047】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、粒子を選別するステップd)が、流路を1本しか含まないジグザグ分級機によって実施される。好ましくは、この流路は、幅20mm、深さ220mmである。
【0048】
分級機は、ジグザグの流路を作製するために複数の部分を一定の角度で組み合わせて構成される。好ましくは、ジグザグ分級機は120°の角度を呈する。この流路は断面が矩形である。その具体的な幾何学形状と空気の流れの方向によって、2本の別々の粒子流すなわち、上昇空気流によって運び出される微粒子流と、各セクションの一番下の壁に沿って下降する大粒子流とが誘導される。
【0049】
よって、ステージごとに2本の粒子流が新たな選別の対象となり、その後、粒子はもとの粒子流で動き続けるか、あるいは逆方向の流れに乗って運ばれる。
【0050】
分級機の性能については、一方では各ステージでの粒子の挙動によって、他方ではステージ間の相互作用によって判断される。
【0051】
本発明による方法の利点として、上述したようなジグザグ分級機がマンニトール結晶で形成される粉状組成物を2種類の画分(細かい画分と大きな画分)に分級可能にすることがあげられる。
【0052】
これを達成するために、ジグザグ分級機に上昇空気ジェット(一次空気)を送り込み、その速度がカットオフ径の特徴付けを可能にしている。
【0053】
直径がカットオフ径より大きい粒子は空気ジェットをよそに下降するのに対し、それ以外の粒子は上昇空気に取り込まれる。
【0054】
好都合なことに、ジグザグ分級機の各ステージは高さが92mmである。好ましくは、第9ステージのレベルで供給がなされる。
【0055】
好ましい変形例によれば、選別のステップd)が、以下のステップを含む。
d.1)ジグザグ分級機に、平均算術径が80〜145μmのマンニトール結晶で形成される粉状組成物を供給し、
d.2)算術径が100〜300μm、好ましくは120〜270μm、一層好ましくは150〜250μm、なお一層好ましくは170〜230μmであり、なおかつレーザー粒度分析によって求めた体積粒度分布が、0.1〜60%、好ましくは1〜55%、一層好ましくは1〜40%、なお一層好ましくは1〜35%の粒子が250μmを超えるものであるマンニトール結晶で形成される粉状組成物の画分を回収できるように一次空気流量を調節する。
【0056】
ステップd.1)に基づいてマンニトール結晶で形成される粉状組成物をジグザグ分級機に供給するための流量が、9〜15kg/h、好ましくは10〜13kg/h、一層好ましくは12kg/hであると好都合である。
【0057】
本発明によるマンニトール結晶で形成される粉状組成物は、好都合なことに、食品業界、たとえば菓子分野、特にチューインガムの分野で使用可能である。
【0058】
チューインガムの分野では、後述するように、本発明によるマンニトール結晶で形成される粉状組成物中に微粒子が事実上存在しないことで、粉末の流動性が高められ、チューインガムの板状生地の粉掛け時にタルクを完全に置き換えることができるようになり、アスベスト混入の可能性によるタルクの潜在的な毒性についてのあらゆる問題が回避され、粉末が空気中に舞う量が減ることで粉末のロスが低減され、取扱者の作業条件が改善される。
【0059】
しかしながら、これをたとえば、
−パン焼き(揚げ菓子(「ドーナツ」)などのケーキのデコレーションで、特にその流動性能によって、パンおよびケーキ製造用の混合用途での秤量および混合システムで、業務でのパン焼き(各秤量)または業務でのケーキ製造、
−フォンダン、
−サシェ、硬質ゼラチンカプセルおよび錠剤などの医薬品の形態、
−インスタント調製物、
−香料用のキャリア
−強力な甘味料用のキャリア、
−シリアルおよび朝食用シリアル(アイシングあり)、
−砂糖無添加のソース
の分野などの他の何らかの目的に用いることを妨げるものは何もない。
【0060】
限定を意味するものではなく、本発明によるマンニトール結晶で形成される粉状組成物の特定の実施形態および特定の好都合な特性を示すだけのものである以下の実施例を用いることで、本発明について一層よく理解できるであろう。