(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り起こし片の前記挿通孔を挿通する接触部の前後方向の幅を、前記連通凹部を挿通する基端部の前後方向の幅より小幅に形成し、前記挿通孔の開口面積を前記連通凹部の開口面積に対して小面積としたことを特徴とする請求項1に記載の同軸コネクタ。
【背景技術】
【0002】
電子機器の内部回路へ同軸ケーブルを接続する場合には、通常、機器内に配設されるプリント配線基板に同軸コネクタを実装し、同軸ケーブルの端末に接続する同軸プラグ等の相手方コネクタを嵌合接続している。プリント配線基板に実装される同軸コネクタは、相手方コネクタの内部導体に接続する中心コンタクトと、中心コンタクトの周囲に同軸上に配置され、相手方コネクタの外部導体に接続する筒状シェルとが絶縁ハウジングに取り付けられ、それぞれ底面側に突出させた脚部をプリント配線基板の信号パターンと接地パターンへ半田付けして、プリント配線基板へ実装される。これにより、中心コンタクトの軸回りに等距離に配置される筒状シェルが接地電位となり、同軸ケーブルのインピーダンスに整合する高周波伝送路が形成されると共に、筒状シェルは高周波信号路を外部と遮断するシールドとして作用する。
【0003】
このように構成される同軸コネクタが車両内の電子機器と同軸ケーブルとの接続に用いられるいわゆる車載用コネクタである場合には、振動や経年変化で接続している相手側コネクタが不用意に外れないように相手側コネクタと高いロック強度で結合されるので、相手側コネクタを外す際には強い抜去力が各脚部に作用し、プリント配線基板のパターンとの半田接続部が損傷して接続不良が発生する恐れがある。そこで、従来は、絶縁ハウジングの外周面を金属板を折り曲げ加工したシールドケースで囲い、シールドケースの半田付け脚部をプリント配線基板のパターンへ半田付けして、プリント配線基板への実装強度を補強している。
【0004】
また、中心コンタクトに完全シールドを施す目的で、絶縁ハウジングの外周面をシールドケースで囲い、シールドケースの半田付け脚部をプリント配線基板の接地パターンへ半田付けした同軸コネクタが特許文献1により知られている。以下、この従来の同軸コネクタ100を、
図12と
図13を用いて説明する。
【0005】
図12に示すように、同軸コネクタ100は、相手側コネクタの挿入方向に沿って絶縁ハウジング101に穿設された中心孔に後方から取り付けられる中心コンタクト102と、中心孔の周囲の絶縁ハウジング101に穿設された円環状溝に中心コンタクト102と同軸上に取り付けられる筒状シェル103と、絶縁ハウジング101の外周面と後面を覆うシールドケース104とから構成されている。中心コンタクト102は、下方に折り曲げられる脚部102aが絶縁ハウジング101の後面(図中左側の面)に当接するまで中心孔の後方から挿入し、その位置で係止片が中心孔の内面に係止して、中心孔内に前後方向に位置決めされる。また、筒状シェル103も、円筒状スリーブ103aの後端に連設された一対のL字状脚部103bが絶縁ハウジング101の後面に当接するまで円環状溝の後方から円筒状スリーブ103aを挿入し、その位置で係止片103cを円環状溝の係止段部101aに係止して、円環状溝に前後方向に位置決めされる。
【0006】
円筒状スリーブ103aは、中心コンタクト102の同軸回りの全周を囲って中心コンタクト102をシールドするのが望ましいが、完全な円筒体とした円筒状スリーブ103aを後方から挿入して絶縁ハウジング101へ取り付けるとすると、絶縁ハウジング101を円筒状スリーブ103a内外で分離する2部品で構成する必要があり、それぞれを円筒状スリーブ103aに対して前後方向に相対位置決めする構成や組み立て工程が加わわることとなる。そこで、従来の同軸コネクタ100では、
図13に示すように、円筒状スリーブ103aの下方に前後方向に沿った切り欠き105を形成して分離し、この切り欠き105を介して円筒状スリーブ103a内外の絶縁ハウジング101を一体としている。一方、円筒状スリーブ103aに切り欠き105が形成されることにより、中心コンタクト102を完全にシールドすることができないので、筒状シェル103のL字状脚部103bを半田接続するプリント配線基板の同じ接地パターンに、半田付け脚部104aを半田付けしたシールドケース104を絶縁ハウジング101の外周面に取り付け、中心コンタクト102の周囲全体を漏れなく囲って完全にシールドしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プリント配線基板への実装強度を補強する目的で、半田付け脚部をプリント配線基板のパターンへ半田付けしたシールドケースを絶縁ハウジングの外周面に取り付ける従来の同軸コネクタは、接地電位の筒状シェルと金属板を折り曲げ加工したシールドケースが隣接してその間に電位差が発生し、同軸コネクタの高周波特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0009】
また、絶縁ハウジングに取り付けられる筒状シェルには、相手方コネクタを挿抜する際に、挿入方向(前後方向)に高いロック強度に設定された係合部を乗り越える以上の強い挿抜去力が作用するので、筒状シェルを絶縁ハウジング対して前後方向に強固に位置決めする位置決め手段が必要となり、各部品の構造が複雑化し、組み立て工程も煩雑となる。
【0010】
また、上述の特許文献1に開示された従来の同軸コネクタ100についても、シールドケース104と筒状シェル103は、プリント配線基板の接地パターンを介してのみ接続するので、接地パターンから離れた位置との間に電位差が生じて高周波ノイズが流れ、充分なシールド性能が得られない恐れがあった。
【0011】
更に、挿入方向(後方)に挿入力を受ける筒状シェル103を絶縁ハウジング101に対して後方へ抜け止めする為に、筒状シェル103と絶縁ハウジング101とにそれぞれ係止片103cと係止段部101aを形成する必要があるので構造が複雑化するものとなっていた。
【0012】
更に、筒状シェル103の係止片103cは、係止段部101aとの係止位置より前方まで挿入しなければ、係止段部101aへ前方から係止させることができないので、筒状シェル103に前後方向の遊びが生じ、相手側コネクタから受ける強い挿抜去力は遊びのある筒状シェル103に集中し、L字状脚部103bの接地パターンとの半田接続部が損傷する恐れがあった。
【0013】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、高周波特性が向上し、シールドケースと絶縁ハウジングと筒状シェルとを簡単な構成で相対位置決めして組み立てることができる同軸コネクタを提供する。
【0014】
また、絶縁ハウジングの位置決め孔に挿通して取り付けられる筒状シェルを、挿通方向にがたつきなく位置決めし、相手側コネクタから強い挿抜去力を受けても、筒状シェルの半田接続部が損傷しない同軸コネクタを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的を達成するため、請求項1の同軸コネクタは、前方から後方へ挿入される相手方コネクタの内部導体に接続する中心コンタクトと、中心コンタクトを前後方向に挿通させる第1位置決め孔が形成され、中心コンタクトを第1位置決め孔内に位置決め支持する絶縁性のインシュレータと、インシュレータを前後方向に挿通させる円筒部を有し、中心コンタクトと同軸上にインシュレータの外側に取り付けられる筒状シェルと、筒状シェルを前後方向に挿通させる第2位置決め孔が形成され、筒状シェルを第2位置決め孔内に位置決めして取り付ける絶縁ハウジングと、半田付け脚部を有し、導電性金属板を折り曲げ加工して絶縁ハウジングの外周面に取り付けられるシールドケースとを備え、プリント配線基板のパターンへシールドケースの半田付け脚部を半田接続し、プリント配線基板への実装強度を補強する同軸コネクタであって、
筒状シェルと絶縁ハウジングにそれぞれ挿通孔と連通凹部を形成し、絶縁ハウジングに筒状シェルとインシュレータを取り付けた状態で、インシュレータの外周面から凹設される係合凹部を放射状に
挿通孔と連通凹部を介して絶縁ハウジングの外周面に開口させ、シールドケースの連通凹部を覆う部位から切り起こした切り起こし片を
挿通孔の周縁に当接させてシールドケースと筒状シェルを接触させるとともに、連通凹部と
挿通孔を挿通する切り起こし片の先端部をインシュレータの係合凹部へ係合し、インシュレータ、筒状シェル、絶縁ハウジング及びシールドケースを前後方向で相対的に位置決めすることを特徴とする。
【0016】
シールドケースの切り起こし片を絶縁ハウジングの連通凹部と筒状シェルの挿通孔を挿通させて、その先端部をインシュレータの係合凹部へ係合することにより、インシュレータ、筒状シェル、絶縁ハウジング及びシールドケースは前後方向で相対的に位置決めされる。
【0017】
また、筒状シェルの挿通孔を挿通するシールドケースの切り起こし片は、
挿通孔の周縁に当接して接触するので、筒状シェルとシールドケース間に電位差が生じることがなく、高周波ノイズが流れない。
【0018】
請求項2の同軸コネクタは、切り起こし片の挿通孔を挿通する接触部の前後方向の幅を、連通凹部を挿通する基端部の前後方向の幅より小幅に形成し、挿通孔の開口面積を連通凹部の開口面積に対して小面積としたことを特徴とする。
【0019】
挿通孔の開口面積が連通凹部の開口面積に対して小面積としたので、挿通孔を通して高周波ノイズが中心コンタクトへ侵入しにくく、中心コンタクトを流れる高周波信号が外部に漏れにくい。
【0020】
一方、相手側コネクタの挿抜の際に、最大曲げモーメントが発生する切り起こし片の基端部の挿抜方向である前後方向の幅を接触部より太幅とするので、切り起こし片が塑性変形しにくい。
【0021】
請求項3の同軸コネクタは、
挿通孔の周縁の一部を切り起こし片の折り曲げ方向に向かって挿通孔の中心側に傾斜する傾斜縁とし、折り曲げて挿通孔に挿通させる切り起こし片を傾斜縁に圧接させることを特徴とする。
【0022】
切り起こし片の折り曲げ方向に向かって
挿通孔の周縁の幅は細幅となり、切り起こし片が傾斜縁に当接した後も折り曲げることにより、傾斜縁に圧接する。
【0023】
請求項4の同軸コネクタは、前方から後方へ挿入される相手方コネクタの内部導体に接続する中心コンタクトと、中心コンタクトを前後方向に挿通させる第1位置決め孔が形成され、中心コンタクトを第1位置決め孔内に位置決め支持する絶縁性のインシュレータと、導電性金属板を折り曲げ加工して中心コンタクトと同軸上にインシュレータの外側に固定される筒状シェルと、筒状シェルを前後方向に挿通させる第2位置決め孔が形成され、筒状シェルを第2位置決め孔内に位置決めして取り付ける絶縁ハウジングと、半田付け脚部を有し、絶縁ハウジングの外周面に取り付けられるシールドケースとを備え、プリント配線基板のパターンへシールドケースの半田付け脚部を半田接続し、プリント配線基板への実装強度を補強する同軸コネクタであって、
絶縁ハウジングとシールドケースにそれぞれ連通凹部と係合孔を形成し、絶縁ハウジングにシールドケースを取り付けた状態で、連通凹部を放射状に係合孔を介してシールドケースの外周面に開口させ、筒状シェルの連通凹部に連通する部位から外方に切り起こした外方切り起こし片を、連通凹部を挿通させてシールドケースの係合孔へ係合し、シールドケースと筒状シェルを接触させるとともに、筒状シェル、絶縁ハウジング及びシールドケースを前後方向で相対的に位置決めすることを特徴とする。
【0024】
筒状シェルの外方切り起こし片を絶縁ハウジングの連通凹部に挿通させて、その先端部をシールドケースの係合孔へ係合することにより、筒状シェル、絶縁ハウジング及びシールドケースが前後方向で相対的に位置決めされる。
【0025】
また、筒状シェルの外方切り起こし片は、シールドケースの係合孔に係合して接触するので、筒状シェルとシールドケース間に電位差が生じることがなく、高周波ノイズが流れない。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、絶縁ハウジングの外周面に取り付けられるシールドケースの切り起こし片を折り曲げて、その先端部をインシュレータの係合凹部へ係合させるだけで、中心コンタクト以外の各部品が相対的に位置決めされ、組み立てられる。
【0027】
また、組み立て工程で同時にシールドケースと筒状シェルを電気接続させることができるので、シールドケースや筒状シェルに高周波ノイズが流れにくい。
【0028】
また、中心コンタクトは、その軸回りが筒状シェルとシールドケースにより重ねて覆われるので、完全に外部と遮断してシールドできる。
【0029】
請求項2の発明によれば、挿通孔の開口面積が比較的小面積なので、筒状シェルによるシールド効果を維持できる。
【0030】
また、相手側コネクタから強い挿抜去力を受けても、切り起こし片が塑性変形することなく、挿抜方向に対して絶縁ハウジングとシールドシェル金具を位置決めできる。
【0031】
請求項3の発明によれば、シールドケースの切り起こし片と筒状シェルを低接触抵抗で電気接続できる。
【0032】
また、切り起こし片が挿通孔の傾斜縁に圧接することにより、筒状シェルは、プリント配線基板に固定されるシールドケースの切り起こし片によってがたつきなく位置決めされ、相手側コネクタの挿抜去力が筒状シェルの半田接続部に集中して作用することがなく、プリント配線基板のパターンとの半田接続不良が発生しない。
【0033】
請求項4の発明によれば、筒状シェルの外方切り起こし片を折り曲げて、その先端部をシールドケースの係合孔へ係合させるだけで、筒状シェル、絶縁ハウジング及びシールドケースの各部品が相対的に位置決めされ、組み立てられる。
【0034】
また、組み立て工程で同時にシールドケースと筒状シェルを電気接続させることができるので、シールドケースや筒状シェルに高周波ノイズが流れにくい。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第1実施の形態に係る同軸コネクタ1を、
図1乃至
図9を用いて説明する。本発明の一実施の形態に係る同軸コネクタ1は、電子機器内のプリント配線基板上に実装されるいわゆる雌形のレセプタクルコネクタであり、図示しない同軸ケーブルの端末に接続される相手側コネクタの同軸プラグと嵌合接続する。ここでは、同軸プラグが
図1において左斜め下方から同軸コネクタ1に挿入されるものとして、以下の同軸コネクタ1の各部の説明は、同軸プラグとの接続方向を前方とし、前方からみた各方向を上下左右方向として説明する。
【0037】
これらの図に示すように、同軸コネクタ1は、中心コンタクト2の後述する固定部21の長手方向の軸を中心軸として、中心軸回りに内側から中心コンタクト2、インシュレータ3、筒状シェル4、絶縁ハウジング5及びシールドケース6とが重ねて組み立てられて構成される。
【0038】
中心コンタクト2は、
図2に示すように、インシュレータ3の後述するコンタクト収容孔31内に圧入して固定される固定部21と、固定部21の前方に連設され、同軸コネクタ1が同軸プラグと接続した際に同軸プラグの内部導体に接触する中心接続部22と、固定部21の後端から下方に向かってクランク状に連設された信号脚部23が、導電性の金属板を加工して細長ロッド状に一体に形成されている。信号脚部23は、クランク状に形成されることにより、同軸コネクタ1の底面に沿って配置される図示しないプリント配線基板の対応部位に形成された信号パターンに対向し、信号パターンに半田接続される。
【0039】
インシュレータ3は、中心コンタクト2と絶縁して同軸上に接地電位の筒状シェル4を配置するために、絶縁性の合成樹脂で円筒状に形成されたもので、
図3に示すように、円筒本体32の中心軸に沿って中心コンタクト2を位置決め収容するコンタクト収容孔31(
図9(a)参照)が穿設され、円筒本体32の後方の軸回りに、円筒本体32の外周面からコンタクト収容孔31に連通しない深さの円環状の係合凹部33が凹設されている。円筒本体32の後端には、中心コンタクト2の信号脚部23を囲って周囲と絶縁する絶縁収容部34が一体に形成され、信号脚部23の後方は、円筒本体32の後端にヒンジ結合された絶縁収容部34の絶縁蓋体34aにより覆われる。
【0040】
筒状シェル4は、
図4に示すように、導電性の薄板金属板をプレス加工して、後方から挿入するインシュレータ3を収容する円筒状の接地筒部42と、接地筒部42の後方の両側に下方に向かって一体に連設された一対の接地脚部41と、接地筒部42の後端にヒンジ結合された抜け止め蓋体43が一体に形成されている。円筒状の接地筒部42は、中心コンタクト2を位置決めしたインシュレータ3をその内方に収容することにより、中心コンタクト2の同軸回りに配置され、同軸コネクタ1が同軸プラグと接続した際に同軸プラグの外部導体に接触する。
【0041】
抜け止め蓋体43には、一対の接地脚部41の後方に開口する係合溝41aに係合可能な係合突片43aが形成され、
図4に示す波線に示す状態で、後方からインシュレータ3を接地筒部42内に収容した後、実線に示すように直角に折り曲げて係合突片43aを係合溝41aに係合し、インシュレータ3の後方を施蓋する。
【0042】
一対の接地脚部41は、接地筒部42の後方の両側から左右にL字状に連設され、その水平底面がプリント配線基板の対応部位に形成された接地パターンに対向し、接地パターンに半田接続することにより、筒状シェル4の全体を接地電位としている。
【0043】
接地筒部42の後方よりの左右対称の位置には、それぞれ縦長の
挿通孔44が穿設されている。各
挿通孔44は、上部開口の前後方向の開口幅が下部開口より広く、上部開口と下部開口の前後方向の周縁は、それぞれ
挿通孔44の前後方向の中心に向かって下方に傾斜する傾斜縁44aで連続している。左右両側の挿通孔44は、インシュレータ3の係合凹部33と対応する前後方向の部位に形成され、従って、インシュレータ3を接地筒部42へ収容すると、係合凹部33と
挿通孔44が連通する。
【0044】
接地筒部42の外周面の上下の2カ所の部位には、絶縁ハウジング5の後述する位置決め孔51の内壁面に凹設されるガイド溝に係合する位置決め突起45が突設されている。位置決め突起45をガイド溝に係合させて位置決め孔51内に収容することによって、筒状シェル4の一対の接地脚部41が絶縁ハウジング5の後方で下方に突出するように軸回りに位置決めされる。
【0045】
絶縁ハウジング5は、リフロー炉内の高温下で変形しない耐熱性に優れた絶縁合成樹脂を用いて、
図5に示すように、直方体状のハウジング本体52と、ハウジング本体52の前端のフランジ部55と、フランジ部55の前方で前方から同軸プラグを挿入する挿入孔53aが形成された挿入筒部53と、挿入筒部53の上部に沿ってフランジ部55から前方に突出するロック突部54とが一体に形成されている。また、ハウジング本体52から挿入筒部53にかけて、その内方の中心軸に沿って、筒状シェル4の接地筒部42を前後方向で位置決め収容する位置決め孔51が穿設されている。
【0046】
ハウジング本体52の左右両側面には、両側面から平面に開口し、位置決め孔51に連通する連通凹部54がそれぞれ凹設されている。連通凹部54は、筒状シェル4の接地筒部42に形成された挿通孔44と対応する前後方向の部位に形成され、従って、位置決め孔51にインシュレータ3を取り付けた接地筒部42を後方から挿入して位置決めすると、インシュレータ3の係合凹部33と、筒状シェル4の
挿通孔44と、連通凹部54が中心軸に直交する放射状に連通する。また、挿入筒部53の内方に、インシュレータ3の円筒本体32を介して中心コンタクト2の中心接続部22と接地筒部42が挿入筒部53と同軸上に露出する。
【0047】
絶縁ハウジング5のハウジング本体52の外周面は、導電性金属板を折り曲げ加工して形成されるシールドケース6により覆われる。シールドケース6は、
図6に示すように、直方体状のハウジング本体52の外周面のうち、ここでは中心軸回りの平面と左右両側面を囲うコの字門型に形成され、その左右の側板6a、6bに、それぞれコの字状の切り欠きを穿設することにより、下端を基端として内方に折り曲げ自在の切り起こし片7、7が形成されている。側板6a、6bの前端は、下方に突出してプリント配線基板のスルーホールに挿通する位置決め板部61となり、その後方の残る側板6a、6bの下端は、外方に直角に折り曲げられた半田付け脚部62となっている。
【0048】
切り起こし片7、7は、シールドケース6を絶縁ハウジング5の外周面に取り付けた際に、連通凹部54の外方の対応部位に形成され、
図8(a)、
図9(a)に示すように、内側に折り曲げるとその先端部71が、インシュレータ3まで達し、インシュレータ3の係合凹部33に係合する。
【0049】
切り起こし片7の前後方向の幅は、基端側から先端側に向かって細幅に形成され、内方に折り曲げられて絶縁ハウジング5の連通凹部54を挿通する部位の基端部72より、筒状シェル4の挿通孔44を挿通する部位の接触部73の前後方向の幅が細幅となっている。基端部72の前後方向の幅は、絶縁ハウジング5の連通凹部54の前後方向の幅と同一かわずかに狭く、これにより、基端部72の前後両側縁は、前後方向で対向する連通凹部54の内壁面に当接する。また、接触部73の前後方向の幅は、
挿通孔44の上部開口の前後方向の幅より狭く、下部開口の幅より広い。従って、切り起こし片7を内側に折り曲げる過程で接触部73の前後両側縁は、傾斜縁44aに圧接し、筒状シェル4に微小接触抵抗で電気接続する。
【0050】
同軸コネクタ1の組み立ては、始めに、信号脚部23が下方となる向きで中心コンタクト2の固定部21を後方からコンタクト収容孔31へ圧入し、中心接続部22をコンタクト収容孔31内の前方に臨ませた状態で中心コンタクト2をインシュレータ3に固定した後、
図3の波線で示す状態から直角に折り曲げた絶縁蓋体34aにより信号脚部23の後方を覆い、信号脚部23の周囲を絶縁収容部34で囲う。
【0051】
続いて、中心コンタクト2を取り付けたインシュレータ3の円筒本体32を、絶縁収容部34が一対の接地脚部41の間に配置されるように、筒状シェル4の接地筒部42の後方から挿入して接地筒部42内に収容する。インシュレータ3の円筒本体32を接地筒部42内に収容した後、
図4に示す波線に示す状態の抜け止め蓋体43の一対の係合突片43aをそれぞれ下方に直角に折り曲げて係合溝41aへ係合し、円筒本体32を後方に対して抜け止めし接地筒部42内に仮保持する。インシュレータ3を仮保持した状態で、インシュレータ3の係合凹部33と筒状シェル4の
挿通孔44は連通している。
【0052】
中心コンタクト2とインシュレータ3が同軸上に組み付けられた筒状シェル4は、位置決め突起45を位置決め孔51の内壁面に凹設されるガイド溝に係合させながら、接地筒部42を位置決め孔51の後方から挿入する。一対の接地脚部41が絶縁ハウジング5の後面に当接するまで、位置決め孔51に接地筒部42を挿入した筒状シェル4は、位置決め突起45がガイド溝に係合し、
図8(b)、
図9(c)に示すように、左右の両側に形成される
挿通孔44が、それぞれ絶縁ハウジング5の左右側壁に凹設された連通凹部54に臨むように中心軸回りに位置決めされる。
【0053】
続いて、絶縁ハウジング5の後方から、ハウジング本体52を覆うようにコの字門型に形成されたシールドケース6をスライドさせ、前端を絶縁ハウジング5のフランジ部55の後面に当接させるとともに、後端の取り付け片を絶縁ハウジング5の後面まで折り曲げて、ハウジング本体52の外周面に取り付ける。シールドケース6を絶縁ハウジング5に取り付けた状態で、その両側板6a、6bに形成された切り起こし片7、7は、係合凹部33と連通凹部54に放射方向に連通する絶縁ハウジング5の連通凹部54に臨む。
【0054】
この状態で
図8(a)、
図9(a)(b)に示すように、切り起こし片7、7を中心軸に向かって基端から折り曲げると、その先端部71と接触部73と基端部72が、それぞれ、係合凹部33と挿通孔44と連通凹部54の前後方向の内壁面若しくは傾斜縁44aに当接し、中心軸回りに組み付けられたインシュレータ3、筒状シェル4、絶縁ハウジング5及びシールドケース6を一括して前後方向に対し相対位置決めして固定できる。このとき、相手側プラグから挿入力若しくは抜去力を受けてより大きな曲げモーメントが発生する切り起こし片7の基端部72の曲げモーメントが作用する前後方向の幅を、その先端側より太幅としているので、前後方向の撓みが少く、シールドケース6に対して強固にインシュレータ3、筒状シェル4及び絶縁ハウジング5を固定できる。一方で、切り起こし片7の接触部73の前後方向の幅を基端部72より細幅とするので、連通凹部54の開口面積に比べて筒状シェル4に穿設する挿通孔44の開口面積を小面積とすることができ、筒状シェル4とシールドケース6によるシールド効果を維持できる。
【0055】
また、切り起こし片7を折り曲げて、接触部73を上方から傾斜縁44a間に圧接するので、接地電位とするシールドケース6と筒状シェル4間を低接触抵抗で電気接続できる。
【0056】
全ての部品を相対的に位置決めして組み立てた同軸コネクタ1は、シールドケース6の下方に突出する位置決め板部61を、実装するプリント配線基板のスルーホールに挿通させて基板上に位置決めし、位置決めした状態で、絶縁ハウジング5の底面に沿って露出する信号脚部23をプリント配線基板の対応部位に形成された信号パターンに半田接続するとともに、接地脚部41と半田付け脚部62をそれぞれ対応部位に形成された接地パターンへ半田接続する。これにより、信号パターンに接続する中心コンタクト2の同軸回りの周囲は、接地パターンに接続する筒状シェル4とシールドケース6とに囲まれ、同軸プラグの内部導体に接続する中心コンタクト2の周囲で切り起こし片7を介して筒状シェル4とシールドケース6間を接触させているので、高周波ノイズが筒状シェル4やシールドケース6の長い導電路を流れることがなく、より効果的に高周波ノイズを遮断できる。
【0057】
切り起こし片7は、必ずしもシールドケース6の左右の側板6a、6bから切り起こす必要はなく、絶縁ハウジング5の中心軸回りの外周面を覆うシールドケース6のいずれの面から切り起こして形成してもよい。以下、絶縁ハウジング5の平面を覆うシールドケース6から切り起こし片11が切り起こされた本発明の第2実施の形態に係る同軸コネクタ10を
図10を用いて説明する。
図10では、第1実施の形態に係る同軸コネクタ1と同一若しくは同様に作用する構成は、同一の番号を用いてその詳細な説明を省略する。
【0058】
同軸コネクタ10では、インシュレータ3の係合凹部33と、筒状シェル4の挿通孔44と、絶縁ハウジング5の連通凹部54は、それぞれ上方の部位に形成され、係合凹部33と
挿通孔44と連通凹部54が中心軸から上方の鉛直線に沿って連通している。切り起こし片11は、連通凹部54を覆うシールドケース6の平面の部位にコの字状の切り欠きを穿設して形成され、後端を基端として前方に向かって内方に折り曲げ自在となっている。
【0059】
中心軸側の内方から中心コンタクト2、インシュレータ3、筒状シェル4を重ねて取り付けた絶縁ハウジング5の外周面に、シールドケース6を取り付け、切り起こし片11を内側に折り曲げると、その先端部と挿通孔44を挿通する接触部と連通凹部54を挿通する基端部が、それぞれ、係合凹部33と挿通孔44と連通凹部54の前方の壁面若しくは前縁に当接し、筒状シェル4とシールドケース6を電気接続すると共に、後方から挿入して組み付けられたインシュレータ3、筒状シェル4及び絶縁ハウジング5を後方に対して抜け止めし、プリント配線基板に固定されたシールドケース6に一括して前後方向に位置決めできる。
【0060】
また、切り起こし片7、11は、シールドケース6から切り起こしているが、
図11に示す第3実施の形態に係る同軸コネクタ12のように、内側の筒状シェル4の接地筒部42から切り起こして外側に折り曲げるものであってもよい。この同軸コネクタ12についても、第1実施の形態に係る同軸コネクタ1と同一若しくは同様に作用する構成は、同一の番号を用いてその詳細な説明を省略する。
【0061】
第3実施の形態に係る同軸コネクタ12では、接地筒部42に挿通孔44を形成せず、第1実施の形態で挿通孔44が形成される部位にコの字状の切り欠きを穿設し、下端を基端として外方に折り曲げ自在の外方切り起こし片13、13を形成している。一方、シールドケース6の第1実施の形態で切り起こし片7が切り起こされる部位に外方切り起こし片13、13がそれぞれ係合する係合孔14、14を穿設している。
【0062】
この同軸コネクタ12は、同様に中心軸側の内方から中心コンタクト2、インシュレータ3、筒状シェル4を重ねて取り付けた絶縁ハウジング5の外周面に、シールドケース6を取り付け、係合孔14、14内で上方に起立する外方切り起こし片13、13をそれぞれ外側に水平に折り曲げ、係合孔14、14の前後方向で対向する内縁間に係合する。これにより、筒状シェル4とシールドケース6が外方切り起こし片13を介して電気接続すると共に、プリント配線基板に固定されたシールドケース6に対して、後方から挿入して組み付けられた筒状シェル4と絶縁ハウジング5を後方へ抜け止めし、一括して前後方向に位置決めして組み立てることができる。
【0063】
上述実施の形態では、切り起こし片7、11の前後方向の幅を、基端側から先端側に向かって細幅としているが、必ずしもこの実施の形態に限らず、同一幅であってもよい。
【0064】
また、接地される筒状シェル4により周囲が囲まれシールドされる中心コンタクト2は、1本であったが、複数のコンタクトが筒状シェル4に囲まれた同軸コネクタであってもよく、この場合には、筒状シェルやその他の構成部品は、必ずしも円筒状に形成されなくてもよい。