特許第5733743号(P5733743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5733743-光半導体装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733743
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/64 20100101AFI20150521BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20150521BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L33/00 450
   H01L33/00 410
   H01L33/00 420
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-279496(P2010-279496)
(22)【出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2012-129361(P2012-129361A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年1月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 孝志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】赤沢 光治
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/123052(WO,A1)
【文献】 特開2010−087324(JP,A)
【文献】 特開2009−267040(JP,A)
【文献】 特開2010−153500(JP,A)
【文献】 特開2008−192909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 − 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹型金型内に、波長変換層と厚みが10〜1000μmである無機高熱伝導層をこの順に形成し、該無機高熱伝導層の上に封止樹脂を充填後、LEDチップが実装された基板を該封止樹脂内に埋設して、封止加工することを特徴とする、光半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体装置に関する。さらに詳しくは、LED(発光ダイオード)を具備した、放熱性に優れる光半導体装置及び該光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、白色発光ダイオード(LED)が大幅な省エネを実現する、新しい照明光源として注目されている。白色LED装置は、青色を放射するGaN系LEDチップと、LEDチップから放射される光によって励起されてLEDとは異なる波長の光を発光する蛍光体とを組み合わせることにより得られる。
【0003】
最近では、一般照明や自動車用ヘッドライト等の特殊照明といった、ハイパワー用途の白色LEDが開発されつつある。ハイパワー白色LEDでは、波長変換部材の局所的な発熱が問題となっており、LEDの放熱性について種々の検討がされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、LEDチップのレンズカバーを有機材料を含まない材料にて構成することによって、レンズカバーの耐熱性が向上すると共に、熱伝導率を0.9W/mK以上と比較的高いものとしている。また、特許文献2では、色変換部材(波長変換部材)の特定位置に光拡散材を配置させることによって、光拡散材を波長変換部材の全体に分散させる場合と比べて使用量を低減でき、かつ、LED光束の集中を緩和させ、波長変換部材の局所的な発熱を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−250817号公報
【特許文献2】特開2009−130299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のレンズカバーは、熱伝導率が0.9W/mK以上のものであるが、高出力LED用途としては依然満足できるものではない。また、特許文献2に記載の色変換部材(波長変換部材)は、蛍光体粒子と光拡散材を含むことから、熱伝導率が十分に高いものとは言えない。よって、放熱性がさらに優れる光半導体装置が求められる。
【0007】
本発明の課題は、放熱性の高い光半導体装置及び該光半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、凹型金型内に、波長変換層と厚みが10〜1000μmである無機高熱伝導層をこの順に形成し、該無機高熱伝導層の上に封止樹脂を充填後、LEDチップが実装された基板を該封止樹脂内に埋設して、封止加工することを特徴とする、光半導体装置の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光半導体装置は、放熱性に優れることから、高出力の白色LED装置としても好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の光半導体装置の一例を示す図である。
図2図2は、本発明の光半導体装置の製造方法の一態様について、具体的な状態を示す図である。左がLEDチップを埋設する封止樹脂層の構成樹脂溶液、無機高熱伝導層、及び無機蛍光体粉末を含有する波長変換層を、凹型金型内に配置した状態、中が封止加工した状態、右が凹型金型を取り除いた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の光半導体装置は、LEDチップが実装された基板、該LEDチップを埋設した封止樹脂層、無機高熱伝導層、及び無機蛍光体粉末を含有する波長変換層を具備するものであって、前記基板上に、封止樹脂層、無機高熱伝導層、及び波長変換層が、直接又は間接的に、この順に積層されていることを特徴とする。なお、本明細書において、封止樹脂層、無機高熱伝導層、及び波長変換層が「直接積層」している状態とは、封止樹脂層上に無機高熱伝導層と波長変換層がこの順に直接積層又は配置された状態を表わし、「間接的に積層」している状態とは、封止樹脂層と無機高熱伝導層との間、及び/又は、無機高熱伝導層と波長変換層との間、に任意の他の樹脂層(例えば、光核酸粒子を含有する樹脂層)を介して積層又は配置された状態を表す。
【0012】
無機蛍光体は、LEDチップから放射された光によって励起されると、波長変換した光を放射する。その際に、無機蛍光体の損失エネルギーが波長変換層に吸収されて、波長変換層の温度が上昇する。しかし、波長変換層の周囲に熱伝導性の高くない層が存在する場合には、波長変換層の熱が拡散されないために、結果的に、光半導体装置の温度が高くなり、封止材等の劣化を招くことになる。一方、装置の輝度を向上する観点からは、波長変換層は、該波長変換層や封止樹脂層などを含む封止部の最外層に位置することが好ましい。そこで、本発明では、波長変換層と、LEDチップを包埋する封止樹脂層との間に、熱伝導性の高い無機物によって構成される熱伝導層を設ける。即ち、波長変換層で発生した熱を、熱伝導層から、封止樹脂層、基板へと順に伝導させて放熱し易くすることで、光半導体装置の放熱性を高めて、ひいては、封止部の劣化が抑制されて装置の耐久性が高められると考えられる。
【0013】
本発明の光半導体装置の構成について、図1を用いて説明する。なお、以降の説明において、封止樹脂層、無機高熱伝導層、及び波長変換層をまとめて、本発明の光半導体装置における封止部ということもある。
【0014】
図1における1は、LEDチップが実装された基板を示す。
【0015】
本発明におけるLEDチップ(光半導体素子)は、通常、光半導体装置に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、窒化ガリウム(GaN、屈折率:2.5)、ガリウムリン(GaP、屈折率:2.9)、ガリウム砒素(GaAs、屈折率:3.5)などが挙げられ、これらの中では、紫外光〜可視光青色域を発光し、蛍光体を介して白色LEDの製造ができるという観点から、GaNが好ましい。
【0016】
LEDチップが搭載される基板も特に限定されないが、例えば、メタル基板、ガラス−エポキシ基板に銅配線を積層したリジッド基板、ポリイミドフィルム上に銅配線を積層したフレキシブル基板などが挙げられ、平板や凹凸板等いずれの形態のものも用いることができる。
【0017】
当該基板へのLEDチップの搭載方法としては、発光面に電極が配置されたLEDチップを搭載するのに好適なフェイスアップ搭載法、発光面とは逆の面に電極が配置されたLEDチップを搭載するのに好適なフリップリップ搭載法などが挙げられる。
【0018】
図1における2は、LEDチップを埋設した封止樹脂層を示す。
【0019】
封止樹脂層を構成する樹脂としては、従来から光半導体封止に用いられる樹脂であれば特に限定はなく、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性透明樹脂等が挙げられ、これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、耐熱性及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0020】
また、本発明においては、光拡散性を向上させる観点から、封止樹脂層に光拡散粒子を分散させてもよい。
【0021】
光拡散粒子としては、例えば、シリカ、チタニア、アルミナ等の透明な無機微粒子が挙げられる。なかでも、屈折率が高くなるほど拡散効果が大きくなるので、屈折率が好ましくは1.4以上の無機微粒子、例えば、シリカ微粒子が好ましい。
【0022】
光拡散粒子の平均粒子径は、後方光散乱損失を抑制する観点から、0.5〜60μmが好ましく、1.0〜50μmがより好ましい。また、光拡散粒子の形状は、光拡散による光損失を抑制するために球形であることが好ましい。なお、本明細書において、粒子の平均粒子径は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0023】
封止樹脂層における光拡散粒子の含有量は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは10重量%以上であると放熱性が向上する。また、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下であると封止樹脂層の透明性が優れる。従って、封止樹脂層における光拡散粒子の含有量は1〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0024】
また、本発明における封止樹脂層は、前記以外に、硬化剤や硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0025】
封止樹脂層は、市販品であっても、公知の方法に従って合成したものであってもよいが、例えば、前記構成樹脂が液状である場合、光半導体装置の製造時に、LEDチップを封止加工する際の加熱によって、該構成樹脂、必要により光拡散粒子を分散させた構成樹脂を層状に成型して封止樹脂層としてもよい。
【0026】
封止樹脂層の厚みは、耐熱性とLEDチップの封止性の観点から、300〜5000μmが好ましく、500〜3000μmがより好ましい。
【0027】
図1における3は無機高熱伝導層を示し、無機高熱伝導層とは、無機材料により構成される高い熱伝導性を示す層を意味し、本質的には、高い熱伝導性を示す無機材料からなる熱伝導性層のことである。
【0028】
無機高熱伝導層を構成する無機材料としては、高い熱伝導性を示すものであれば特に限定はなく、例えば、アルミン酸イットリウム(YAG、Ce等の賦活剤非含有)、ガラス等の透光性セラミックスが挙げられる。
【0029】
前記無機材料により構成される層は、市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。例えば、所望の無機材料に、バインダー樹脂、分散剤、焼結助剤等の添加剤を添加し、溶媒の存在下で湿式混合して、スラリー溶液を調製後、得られたスラリー溶液を成型し、加熱焼結することにより作製することができる。前記バインダー樹脂、分散剤、及び焼結助剤等の添加剤としては、加熱焼結により分解除去されるものであれば、当該分野で公知のものを特に限定なく用いることができる。また、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、熱伝導層に前記原料が混入していてもよいが、加熱焼結により完全に除去される方が好ましい。
【0030】
無機高熱伝導層の厚みは、放熱性の観点から、10〜1000μmが好ましく、30〜800μmがより好ましい。
【0031】
得られた無機高熱伝導層の熱伝導率は、光半導体装置の放熱性につながることから、1W/mK以上が好ましく、10W/mK以上がより好ましい。
【0032】
なお、本発明においては、無機高熱伝導層を構成する無機材料の全体的な使用量を低減する観点から、光半導体装置の大きさによって一概には言えないが、前記無機高熱伝導層を、例えば、好ましくは2〜20mm×2〜20mm(角)×0.05〜1mm(高)、より好ましくは5〜15mm×5〜15mm(角)×0.10〜0.8mm(高)に切断したものを用いてもよい。
【0033】
図1における4は、無機蛍光体粉末を含有する波長変換層を示す。波長変換層が封止部の最外層にあるために、本発明の光半導体装置は、LEDチップからの光取り出し効率を高くすることができる。
【0034】
波長変換層を構成する樹脂としては、前記封止樹脂層を構成する樹脂と同じものが例示される。なかでも、耐熱性及び耐光性の観点から、シリコーン樹脂が好ましい。なお、これらの樹脂は市販品であっても、公知の方法に従って合成したものでもよい。
【0035】
無機蛍光体としては、LEDチップからの発光を、その波長より長波長を有する光に変換することができるものであれば特に限定はなく、従来から光半導体装置に用いられる公知の蛍光体を用いることができる。具体的には、青色を黄色に変換する機能を有する好適な市販の蛍光体として、YAG、TAG、α-サイアロン等が例示される。
【0036】
無機蛍光体粉末としては、前記無機蛍光体が粉末状を呈しているのであれば特に限定はないが、蛍光体の量子効率や光散乱性の観点から、該粉末の平均粒子径としては、0.1〜200μmが好ましく、1〜50μmがより好ましい。
【0037】
波長変換層における無機蛍光体粉末の含有量は、蛍光体の種類及び波長変換層の厚みによって白色化の程度が異なることから一概には決定されないが、1〜70重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。
【0038】
また、本発明における波長変換層は、前記以外に、硬化剤や硬化促進剤、さらに老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を含有することができる。
【0039】
波長変換層は、市販品であっても、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。例えば、前記無機蛍光体粉末を含有する樹脂溶液を、表面を剥離処理した離型シート(例えば、ポリエチレン基材)の上に、アプリケーター等を用いて適当な厚みに塗工し、任意の温度で加熱して乾燥することにより成形して、波長変換層とすることができる。
【0040】
波長変換層の厚みは、放熱性の観点から、50〜1000μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。
【0041】
また、波長変換層面積としては、2〜20mm×2〜20mm(角)が好ましく、5〜15mm×5〜15mm(角)がより好ましい。なお、本発明において、封止樹脂層、無機高熱伝導層、及び、波長変換層は、それぞれの厚みは異なっていてもよいが、大きさ(面積)は同じであることが好ましい。
【0042】
このように、本発明の光半導体装置は前記構成を有するが、次に、本発明の光半導体装置の製造方法について図2を用いて説明する。よって、本発明は、また、本発明の光半導体装置の製造方法を提供する。
【0043】
先ず、凹型金型内に封止部を設置する(図2の左図参照)。即ち、凹型金型底部に、波長変換層と無機高熱伝導層をこの順に形成する。この際、波長変換層と無機高熱伝導層は、予め、それぞれ層状に調製したものを凹型金型底部の大きさになるようサイズ調整してから載置しても、波長変換層の構成樹脂溶液を凹型金型底部に注入して加熱乾燥することにより波長変換層を形成後に別途調製した無機高熱伝導層を積層してもよい。その後、設置された無機高熱伝導層の上に、例えば、封止樹脂層の構成樹脂が液状である場合、該構成樹脂溶液を、必要により、光拡散粒子を分散させた後に充填する。
【0044】
次に、LEDチップが実装された基板を、充填された封止樹脂層とLEDチップが対向するように載置した後、封止加工する(図2の中図参照)。封止加工の加熱温度は、80〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましい。加熱時間は、0.5〜10分が好ましく、0.5〜5分がより好ましい。なお、封止樹脂層への気泡の混入を防止する観点から、前記封止加工の作業は減圧下で行うことができる。
【0045】
その後、成型されたパッケージは、室温下においても形状が変化しなくなるまで、放置後、金型をはずすことにより、本発明の光半導体装置が得られる(図2の右図参照)。なお、封止樹脂層の硬化に必要な時間まで加温加圧してポストキュアを行ってもよい。
【0046】
かくして得られた本発明の光半導体装置は、可視光域380〜780nmの入射光に対する光透過率が90%以上であるために、無機高熱伝導層を積層していても、白色LED装置としての輝度低下がなく好ましい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例等によりなんら限定されるものではない。
【0048】
〔光拡散粒子及び無機蛍光体の平均粒子径〕
光拡散粒子及び無機蛍光体の平均粒子径とは、光拡散粒子及び無機蛍光体の一次粒子の平均粒子径のことであり、透過型電子顕微鏡TEMにて、画像に映った粒子100個の直径を測定し、それらの平均値を平均粒子径とする。
【0049】
実施例1
(波長変換層)
市販のシリコーンエラストマー(LR7665、旭化成ワッカーシリコーン社製)に、セリウム賦活YAG:Ce3+(平均粒子径9μm)を26重量%となるよう配合して混合したものを、PETフィルム(厚み50μm)の上に、アプリケーターを用いて厚み100μmに塗工し、100℃で5分加熱することにより成形した。得られた成形体は、抜型成形装置を用いて、8mm×8mmサイズ(厚み約100μm)の小片に切り出して、波長変換層を作製した。
【0050】
(無機高熱伝導層)
アルミン酸イットリウム(YAG)(平均粒子径9μm)に、該無機材料の重量が20重量%となるように、バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールを添加し、さらにイソプロピルアルコールを適量添加して、スラリー状溶液を調製した。次いで、得られたスラリー状溶液を成形後、焼結後の厚みが500μmになるように、1000℃で5時間加熱焼結して、無機高熱伝導層を作製した。なお、得られた無機高熱伝導層は、十分に冷めた後に、抜型成形装置を用いて8mm×8mmサイズに切断加工した。
【0051】
(光半導体装置)
凹型金型(底面8×8mm、高さ1.1mm)の底部に、前記で得られた波長変換層と無機高熱伝導層をこの順に載置し、その上に、封止樹脂層として、市販のシリコーンエラストマー(LR7665)に溶融シリカ粒子(FB-40S、電気化学工業社製、平均粒子径40μm)を50重量%となるよう配合して混合したものを充填した。その上から、青色LEDチップ(1mm×1mm×0.17mm高)が実装された基板を、充填された樹脂とLEDチップが対向するように載置した後、160℃で5分加熱して封止加工する。その後、室温下においても形状が変化しなくなるまで放置した後、金型をはずして光半導体装置を作製した。
【0052】
実施例2
実施例1において、無機高熱伝導層を以下に示すものに変更する以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0053】
(無機高熱伝導層)
ガラス(平均粒子径5μm)に、該無機材料の重量が20重量%となるように、バインダー樹脂としてのポリビニルアルコールを添加し、さらにイソプロピルアルコールを適量添加して、スラリー状溶液を調製した。次いで、得られたスラリー状溶液を成形後、焼結後の厚みが35μmになるように、800℃で5時間加熱焼結して、無機高熱伝導層を作製した。なお、得られた無機高熱伝導層は、十分に冷めた後に、抜型成形装置を用いて8mm×8mmサイズに切断加工した。
【0054】
実施例3
実施例1において、封止樹脂層に溶融シリカ粒子を配合しない以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0055】
実施例4
実施例2において、封止樹脂層に溶融シリカ粒子を配合しない以外は、実施例2と同様にして光半導体装置を作製した。
【0056】
実施例5
実施例1において、無機高熱伝導層の厚みを500μmから300μmに変更する以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0057】
比較例1
実施例1において、無機高熱伝導層を使用しない以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0058】
比較例2
実施例1において、無機高熱伝導層を用いるかわりに、以下に示す低熱伝導層に変更する以外は、実施例1と同様にして光半導体装置を作製した。
【0059】
(無機低熱伝導層)
市販のシリコーンエラストマー(LR7665)を、PETフィルム(厚み50μm)の上に、アプリケーターを用いて厚み100μmに塗工し、150℃で5分加熱することにより成形した後、抜型成形装置を用いて、8mm×8mmサイズ(厚み約100μm)の小片に切り出して、無機低熱伝導層とした。
【0060】
参考例1
実施例1において、無機高熱伝導層及び波長変換層を使用しない以外は、実施例1と同様にして光半導体装置(封止樹脂層のみを有する光半導体装置)を作製した。
【0061】
得られた半導体装置について、以下の試験例1〜3に従って、特性を評価した。結果を表1〜2に示す。
【0062】
試験例1(最大温度)
非接触放射温度計(株式会社チノー製)を用いて、投入電流1Aにおける光半導体装置の最大温度を測定した。
【0063】
試験例2(刺激値Y、xy色度)
瞬間マルチ測光システム(MCPD-3000、大塚電子社製)を用いて、投入電流1Aにおける光半導体装置の刺激値Y、XYZ表色系におけるxy色度図(CIE1931)を測定した。刺激値Yは、光半導体装置の輝度の指標であり、投入電流1Aにおいては、18000以上であると輝度に優れることを示す。
【0064】
試験例3(光透過性)
紫外可視スペクトル測定器(U4100、日立社製)を用いて、波長560nmに対する光透過率を測定して、光透過性を評価した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
結果、実施例の光半導体装置は、高熱伝導層が設置されていない比較例1、あるいは、低熱伝導層を有する比較例2の光半導体装置に比べて、1A投入時の最大温度が大幅に低いものであった。これより、波長変換層で発生した熱は、高熱伝導層に熱伝導して放熱されていることが分かる。また、実施例1と参考例1は1A投入時の最大温度がほぼ同じであることから、実施例1の装置においては、波長変換層で発生した熱がほぼ全量熱伝導して放熱されたものと示唆される。さらに、実施例1〜5の光半導体装置は、熱伝導層が透明であるために、色度や輝度の低下が認められない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光半導体装置は、例えば、LEDを発光源とする一般照明器具、ディスプレイのバックライト、自動車のヘッドライト等ハイパワー用途に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0069】
1 LEDチップが実装された基板
2 LEDチップを埋設可能な封止樹脂層
3 無機高熱伝導層
4 無機蛍光体粉末を含有する波長変換層
5 凹型金型
図1
図2