(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記土壌容器は、前記入口と出口の双方に金属のメッシュフィルタが取り付けられたことを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
前記演算制御部は、前記被検物質濃度計測手段と前記入側ガス濃度計測手段の測定値の差が、触媒リセット判定用閾値以下となった場合に、前記触媒に吸着していた被検物質の放出が完了したと判断することを特徴とする請求項1〜8のうちいずれかに記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
前記演算制御部は、前記被検物質濃度計測手段と前記入側ガス濃度計測手段の測定値の差が、エラー判定用閾値以上となる場合に、エラー表示させることを特徴とする請求項1〜9のうちいずれか1項記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
前記混合ガスを前記収容空間へ直接導入する第1状態と、前記混合ガスを前記収容空間へ導入せずに前記被検物質濃度計測手段へ導入する第2状態と、の間で切替える流路切替機構を備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
前記第1状態において計測した前記被検物質の濃度と前記第2状態において計測した前記被検物質の濃度とに基づいて、前記被検物質濃度計測手段が検出可能な物質が前記触媒から放出されているか否かを判定する放出判定手段を備えたことを特徴とする請求項11に記載の土壌中揮発性物質抽出装置。
【背景技術】
【0002】
土壌汚染物質の揮発性物質には、例えば石油系炭化水素を含有するものがある。この石油系炭化水素とは、石油関連施設で扱っている石油製品に由来するものであり、例えば、ガソリン、灯油、軽油、A重油、C重油、潤滑油類(鉱油、合成油)、原油等を構成する炭化水素化合物類である。現在、土地の使用用途変更などの際に土壌汚染調査の結果報告が義務付けられており、その一環として土壌中の石油系炭化水素成分の含有量を調べる必要がある。
【0003】
これまでの分析法としては、土壌中の石油系炭化水素成分をn−ヘキサンで抽出・分離し、n−ヘキサンを加熱により蒸発させ、残渣物の重量を測定する方法(n−ヘキサン抽出−重量法)、土壌中の石油系炭化水素成分を四塩化炭素にて抽出・分離し、四塩化炭素抽出液の赤外吸収分光分析(IR)を行ない成分含有量を測定する方法(四塩化炭素抽出−IR法)、土壌中の石油系炭化水素成分を二硫化炭素にて抽出・分離し、二硫化炭素抽出液をガスクロマトグラフィー(GC、検出装置FID)にて、分析し、チャートの面積比より成分含有量を測定する方法(二硫化炭素抽出−GC法)等が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、土壌中の石油系炭化水素成分をテトラクロロエチレンにて抽出し、その抽出液のIR分析を行ない、成分含有量を測定する方法(テトラクロロエチレン抽出−IR法)等が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、土壌中の炭化水素簡易分析器として採取した土壌の炭化水素を抽出溶媒で抽出し、抽出液の濁度から炭化水素含有量を測定する器具が市販されている。
【0005】
他に、水中の油分を測定する方法として、水中の油分を抽出溶媒で抽出した後、油分抽出液から抽出溶媒を揮散させ、残留分を燃焼させることにより発生した二酸化炭素から油分を測定する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかし、これらの方法は何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる抽出液を使用するものであり、したがってこれらの抽出液をそのまま排出すると、環境汚染の原因となり、またこれらの抽出液を無害化するには、多くの費用と労力を必要とする。
【0007】
これに対して抽出液を使用しない方法として、土壌中の軽質の炭化水素留分を加熱により蒸発させ、トラップし(パージアンドトラップ、PT)、それをGCにて分析し、チャートの面積比より油分量を測定する方法(PT−GC法)が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
しかし、この方法は土壌中に含まれる石油系炭化水素成分が軽質留分である場合に適用される方法であり、軽質留分以外に中重質留分を含む場合、中重質留分については前記した抽出液を使用する二硫化炭素抽出−GC法を適用する方法(PEC法)が採用されている。したがって軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対しては、従来法では何れも大気汚染或いは土壌汚染の原因となる有機溶媒による抽出操作が用いられていた。
【0009】
また、軽質留分から中重質留分まで幅広い石油系炭化水素成分を含む土壌に対して有機溶媒による抽出操作を必要とせず、且つ簡便に石油系炭化水素成分の含有量を測定する方法として、石油系炭化水素成分を含む土壌を加熱部のサンプル室内に装填して加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、サンプル室に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を反応室に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、土壌中に含まれる該成分の含有量を測定することを特徴とする土壌中の石油系炭化水素成分含有量を測定する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0010】
さらに、これらの知見に基づき、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を、酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量測定する方法が開示されている。(例えば、特許文献4及び特許文献5参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、これらの知見と、石油系炭化水素成分を含む土壌を気化装置内に装填し加熱処理して土壌中に含有される該成分を気化させると共に、上記気化装置に酸素と窒素の混合ガスを導入し気化された該成分を、酸化触媒を充填した反応管に送り込んで燃焼させ、これにより発生した二酸化炭素量を測定し、該二酸化炭素量より土壌中に含まれる該成分の含有量を測定する方法において、上記酸化触媒としてプラチナ触媒を使用する土壌中の石油系炭化水素成分含有量を測定する方法で開示された手法に基づき製品化しようとすると、土壌および土壌を加熱する空気を加熱するために大掛かりな加熱炉(電気炉等)が必要となる。そのため、加熱に必要な安定した温度に到達するまで数時間を要し、その間は測定を開始することが出来ない。また、加熱炉は常時300℃近い温度を保つ必要があり装置外部にまで熱が伝わり素手で装置に触れると熱傷の危険性があり、測定時には熱傷防止の防護手袋やゴーグルが必要となる。さらに、触媒により燃焼したガスは全て専用の袋に回収(採取)しなければならない。このように一連の測定の手順が煩雑化し汚染調査を行う現場で測定者の安全を確保しつつ、且つ短時間に計測することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の土壌中揮発性物質抽出装置は、揮発性物質を含む土壌を収容する土壌容器と、 前記土壌容器を収容する収容空間と、前記土壌に酸素と窒素の混合ガスを送入する送入手段と、前記混合ガスを加熱する加熱手段と、触媒を用いて、前記収容空間から出たガスの燃焼を行なう燃焼手段と、燃焼ガスに含まれている被検物質の濃度を計測する被検物質濃度計測手段と、を備え、前記土壌容器は、前記混合ガスの入口及び出口を有することを特徴とする。
【0015】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記収容空間は、内壁で遮蔽された少なくとも2つの空間を有しており、一方の空間には常温状態の酸素と窒素の混合ガスを通過させ、他方の空間には前記土壌を収容させて前記加熱手段により加熱された前記混合ガスを通過させることを特徴とする。
【0016】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記加熱手段は、前記一方の空間を通過した前記混合ガスを急加熱して前記他方の空間に導入することを特徴とする。
【0017】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記加熱手段は、常温状態で送入された前記混合ガスを制御して急加熱させることを特徴とする。
【0018】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記収容空間に導入される前の前記混合ガスの濃度を計測する入側ガス濃度計測手段を有することを特徴とする。
【0019】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記燃焼ガス濃度計測手段と前記燃焼前ガス濃度計測手段の測定値の差に基づいて、前記揮発性物質によって得られるガスの濃度を算出する演算制御部を備えることを特徴とする。
【0020】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記演算制御部は、前記燃焼ガス濃度計測手段と前記燃焼前ガス濃度計測手段の測定値の差が、測定終了用閾値以下となった場合に、計測を終了させることを特徴とする。
【0021】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記演算制御部は、前記燃焼ガス濃度計測手段と前記燃焼前ガス濃度計測手段の測定値の差が、エラー判定用閾値以上となる場合に、エラー表示させることを特徴とする。
【0022】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記土壌に酸素と窒素の混合ガスを送入する前記送入手段によって送られる前記混合ガスの流路を切り換えることで、前記収容空間に導入せずに、前記燃焼手段に直接案内する触媒パージ用ガス配管を備えることを特徴とする。
【0023】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記燃焼ガス濃度計測手段は、前記触媒パージ用ガス配管によって前記燃焼手段に直接案内された前記混合ガスの濃度を計測することで、前記触媒に吸着されている物質の放出状況を判定することを特徴とする。
【0024】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記収容空間と前記燃焼手段の間に設けられ、前記収容空間で気化されたガスを再加熱して前記燃焼手段に導入する第2加熱手段を備えることを特徴とする。
【0025】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記収容空間を構成する気化容器の外周に、前記気化容器を加熱する加熱ガス通過空間放熱防止ヒーターが設けられることを特徴とする。
【0026】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記燃焼手段は、前記触媒が効果を発揮する温度に制御する触媒加熱手段を備えることを特徴とする。
【0027】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記燃焼手段は、前記触媒を収容する触媒容器の外周に、前記触媒容器を加熱する触媒容器放熱防止ヒーターを備えることを特徴とする。
【0028】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記土壌は、カプセル状の容器に収容され、前記収容空間は前記カプセル状の容器を収容することを特徴とする。
【0029】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記カプセル状の容器を自動的に昇降させる昇降装置を備えることを特徴とする。
【0030】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記送入手段は、前記混合ガスの流量を一定に制御させることを特徴とする。
【0031】
上記土壌中揮発性物質抽出装置は、前記収容空間は温度センサを備えており、土壌内に含有する揮発性物質の気化が終了した後、前記収容空間の温度が常温に戻るまで送入手段により酸素と窒素の混合ガスを前記収容空間に通過させることを特徴とする。
【0032】
上記土壌中揮発性物質抽出装置の前記燃焼ガス濃度計測手段は、燃焼したガスの濃度変化を時系列で計測し土壌中揮発性物質の種別を判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、土壌に含まれる揮発性物質成分を気化させるために用いる酸素と窒素の混合ガスは、計測するときだけ急加熱することが可能で、電気炉のように加熱に必要な熱量を得る時間を要さず短時間で計測が可能となる。したがって、測定時の低エネルギー化が図られる。
【0034】
また、内壁で遮蔽された少なくとも2つの空間を有した計測する土壌を収容する収容空間の、収容空間が計測装置外部に露出する面をもつ一方に常温状態の前記混合ガスを通過させて、装置内部にある前記土壌を収容させた他方の空間には加熱手段により加熱された前記混合ガスを通過させることで、急加熱された前記混合ガスの熱を収容空間が露出する装置外部面に伝えにくくすることが可能で、収容空間が計測装置外部に露出する面を素手で触れても熱傷を負うことを防ぐことができ、測定作業者の安全が図られる。さらに、収容空間が計測装置外部に露出する面をもつ一方の収容空間に常温状態の前記混合ガスを通過させたのち、その前記混合ガスを加熱することに用いることにより、いわゆる予熱効果を得ることが可能となり、測定時の低エネルギー化が図られる。
【0035】
計測する土壌を、フィルターを取り付けたカプセル状の容器を用いて測定することで土壌の微細な粉塵のカプセル外への排出を防止しながら測定試料を交換することが容易になり、さらに、加熱した前記混合ガスを通過させても土壌の微細な粉塵がカプセル外部に排出されないことで配管内部の詰まりを防ぐことが可能となり測定装置のメンテナンスの軽減が図られる。
【0036】
燃焼ガス濃度計測手段を備えており、加熱する前の前記混合ガスを燃焼ガス濃度計に通過させて、予め前記混合ガスに含有する二酸化炭素の濃度を計測しておくことで、燃焼ガスの濃度計測値から加熱前の前記混合ガスの二酸化炭素の濃度を差し引く演算処理をすることで、加熱前の混合ガスに含有する二酸化炭素の濃度(いわゆるバックグランド)の影響を取り除くことが可能となり測定精度の向上が図られる。さらに、灯油、軽油、A重油、C重油等の炭化水素化合物類はそれぞれ気化する温度が異なるため、前記混合ガスの流量を一定に制御し燃焼したガスの濃度変化を時系列で計測し土壌中揮発性物質濃度を計測する事で、土壌中に含有されていた炭化水素化合物類の種別も土壌中揮発性物質濃度と同時に判定することが可能となる。これにより、従来、測定試料を持ち帰り分析していた炭化水素化合物類の種別判定を汚染調査現場でできることで判定に要する時間の短縮が図られる。
【0037】
更に、入側濃度計測手段と燃焼ガス濃度計測手段との差分を利用すれば、加熱前の混合ガスに含有する二酸化炭素の濃度(いわゆるバックグランド)が計測中(経時的)に変動する場合であっても、常に、この影響を取り除きながら計測することが可能となる、。結果、計測精度を一層高めることが可能となる。更に、この2つの計測手段の差を利用することで、土壌からの揮発性物質の気化が完了したか否かを高精度に検知することも可能になり、測定の終了タイミングも高精度に制御することが可能となる。
【0038】
また、計測前の暖気運転時に、混合ガスを収容空間に導入せずに、燃焼手段に直接案内する触媒パージ用ガス配管を利用すれば、触媒に吸着している異物を放出させることができる。特に、触媒を加熱しながらこの暖気運転を行うことで、より確実に異物の放出が可能となるので、実測時の測定誤差を低減することが可能となる。
【0039】
計測装置内部は複数の温度センサを備えており、加熱−気化−燃焼−冷却−計測の各工程において最適な温度制御と異常監視をすることが可能で、異常加熱の防止、加熱中の収容空間開閉停止などの安全設計を施すことが可能となり、計測装置と計測作業及び計測作業者の安全を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の第1実施形態に係る土壌中揮発性物質抽出装置の気化と燃焼に係る構造の詳細について
図1で説明する。気化・燃焼部1は、内部に収容空間118を有する気化容器116と、測定する試料となる土壌を入れるカプセル状の試料容器115と、前記試料用器115と試料投入室蓋145を収容空間118へ収容させるために、試料用器115および試料投入室蓋145を自動的に昇降させる収容昇降装置3とを有している。また、気化容器116は、試料容器115と試料投入室蓋145を収容することにより、収容空間118を2つの空間に仕切られるようになっている。収容空間118の一端側(加熱された混合ガスが通過する側)は、前記試料容器115を収容するとともに、加熱された混合ガス(例えば、摂氏250度〜300度)を通過させる加熱ガス通過空間119となる。また、前記収容空間118の他方側(常温の混合ガスが通過する側)は、常温(例えば、摂氏0度〜40度)の酸素と窒素の混合ガスを導入する混合ガス入口2aを備えた常温ガス通過空間120となる。なお、気化容器116には、前記常温ガス通過空間120とインラインヒーター113(詳細は後述)を接続して前記常温の混合ガスを通過させる混合ガス配管2cと、前記インラインヒーター113と加熱ガス通過空間119を接続して前記インラインヒーター113で加熱された前記混合ガスを通過させる加熱混合ガス配管2dとを備えている。
【0042】
更にこの気化・燃焼部1は、インラインヒーター113は、混合ガス配管2cを通過した常温の混合ガスを加熱する。このインラインヒーター113には、インラインヒーター113内の混合ガスの温度を計測するインラインヒーター温度計測センサ121が設けられている。
【0043】
前記インラインヒーター113は、金属製の円管内に加熱用のヒーターが内蔵され円管内を通過する気体を急激(例えば数秒〜数分以内)に高温(例えば摂氏600度程度)に加熱することができる。また、インラインヒーター113の内蔵ヒーターへの供給電源を制御(例えば電圧を調節)することで、発熱温度を制御することができる。
【0044】
この結果、加熱ガス通過空間119は、前記混合ガス配管2dを通過した前記加熱混合ガスにより高温状態(例えば、摂氏250度〜300度)となる。これにより、加熱ガス通過空間119に収容される前記試料容器115の土壌中に含有される炭化水素化合物成分が気化する。
【0045】
この気化・燃焼部1は、前記加熱ガス通過空間119の温度を計測する気化ガス温度計測センサ147と、前記加熱ガス通過空間119と酸化用の触媒を充填した触媒容器117の間を接続する気化ガス配管2eと、前記気化ガス配管2eを通過した気化成分を含んだ前記加熱混合ガスを燃焼させる前記触媒容器117と、触媒容器117に充填した触媒158と、前記触媒158を予め加熱する前記触媒容器117に取り付けられた触媒加熱ヒーター157と、前記触媒容器117に前記触媒158を充填する時に開閉する触媒容器蓋149と、前記触媒加熱ヒーター157の温度を計測する触媒温度計測センサ159と、前記触媒容器117に取り付けられるとともに触媒容器117で燃焼させることで発生した二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスを排出する燃焼ガス出口2bと、二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスの温度を計測する燃焼ガス温度計測センサ161と、を備えている。この触媒容器117により、気化混合ガスを、測定対象となる二酸化炭素に置換することができる。
【0046】
次に、土壌中の揮発性物質抽出装置2の全体に係る構造の詳細について
図2で説明する。土壌中揮発性物質抽出装置2(以下装置2という)は、空気供給系統として、前記装置2の筐体10と、前記筐体10に取り付けられた外気導入口101と、前記外気導入口101から前記気化・燃焼部1へ導入される常温の酸素と窒素の混合ガスを前記筐体10の内部に取り入れる送入するポンプ105と、送入する前記混合ガスから粉塵を取り除くエアーフィルター103と、送入された前記混合ガスの流量を一定に制御する流量制御装置107と、前記混合ガスの温度を計測する送入温度計測センサ108と、前記外気導入口101から取り入れられた前記混合ガスを前記気化・燃焼部1へ送入するか、それとも迂回させる流路に切り替えるかを決定する流路切替電磁弁109と、前記流路切替電磁弁109と気化・燃焼部1の間に接続されて前記混合ガスが通過する空気配管155と、前記流路切替電磁弁109と排気系統のガス濃度計測配管167を直結するバイパス配管111と、を備える。
【0047】
更に、装置2は、排気系統として、燃焼ガス出口2bに接続され、気化・燃焼部1から排出された前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスが通過する燃焼ガス配管135と、前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスをガス濃度検出部133で計測できる温度(例えば、摂氏5度〜30度)にまで冷却する冷却装置(冷却ファン)123と、前記冷却装置123の近傍を前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスを通過させて冷却を行う冷却部125と、前記冷却部125の入口を通過する前記二酸化炭素を含んだ前記加熱混合ガスの温度を計測する冷却部ガス入口温度計測センサ129と、前記冷却部125の出口を通過する前記二酸化炭素を含んだ冷却後の混合ガスの温度を計測する冷却部ガス出口温度計測センサ163と、前記流路切替電磁弁109及びバイパス配管111で迂回されてガス濃度計測配管167に案内された前記常温の混合ガスが、冷却部125へ逆流することを防止する逆流防止電磁弁141と、冷却部ガス出口温度計測センサ163が冷却後の前記混合ガス温度を検出した結果、前記冷却後の加熱混合ガスがガス濃度検出部133で計測できる温度にまで冷却することが出来ない場合にガス濃度検出部133を保護するために前記加熱混合ガスを強制排気配管165へ流路切替する強制排気電磁弁131と、この強制排気配管165に設けられる強制排気口139と、前記冷却部125でガス濃度検出部133が計測できる温度にまで冷却された前記二酸化炭素を含んだ混合ガスが通過するガス濃度計測配管167と、前記ガス濃度計測配管167を通過する前記二酸化炭素を含んだ混合ガスの湿度を調節する除湿部127と、前記二酸化炭素を含んだ混合ガスの濃度を計測するガス濃度検出部133と、ガス濃度検出部133で計測された前記二酸化炭素を含んだ混合ガスを外部へ排出する、前記筐体10に取り付けられた排気口137とを備える。
【0048】
更に、装置2は、制御系統として、装置2の測定に必要な操作をする操作部13と、操作に必要な項目と設定値及び測定結果などを表示する表示部14と、前記ポンプ105と前記流量制御装置107を制御する流量制御部17と、前記筐体10の内部に取り付けられた複数の温度計測センサの温度を計測する温度計測部19と、収容昇降装置3の開閉を制御するロック制御部23と、ガス濃度検出部133の濃度を計測制御する計測制御部21と、前記流量制御部17と温度計測部19と計測制御部21からの信号をもとに演算制御する演算制御部15と、前記流量制御部17と前記温度計測部19とロック制御部23と前記計測制御部21と前記演算制御部15と前記操作部13と前記表示部14の各部を接続する入出力信号線143を備える。
【0049】
尚、温度影響で計測制御に支障がでる装置(例えば、演算制御部15や温度計測部19などの計測部や制御部)を保護するために、前記気化・燃焼部1は遮熱壁11で囲われている。
【0050】
次に、気化容器116の収容空間118に対して、試料容器115や試料投入室蓋145を挿入または挿抜する収容昇降装置3について
図3および
図4で説明する。
図3は試料容器115が気化容器116内部に形成された収容空間118に収納された状態を表わしている。また、
図4は試料容器115が前記収容空間118の外部に出ている状態を表わしている。収容昇降装置3は、前記試料用器115と試料投入室蓋145を収容空間118へ収容または取り出しをするために、これらを自動的に昇降または下降させるモーター153と、前記モーターに駆動されるモータープーリー303と、前記モータープーリー303の動力を軸プーリー307に伝えるベルト305と、前記軸プーリー307に取り付けられ、前記ベルト305で伝えられた動力により軸プーリー307と共に回転するボールネジ309と、前記ボールネジ309と螺合して、その回転により前記軸プーリー307の取付側または逆方向に動くアーム取付台311と、前記アーム取付台311に取り付けられた前記スライドアーム151と、前記スライドアーム151に取り付けられた試料投入室蓋145と、前記試料投入室蓋145に連結棒313で取り付けられ、連結棒313が収容空間118に挿入されることで収容空間118を2つの空間(加熱ガス通過空間119および常温ガス通過空間120)に遮蔽する遮蔽壁315と、さらに前記連結棒313で取り付けられた試料容器取付台317を備える。
【0051】
更に収容昇降装置3は、筺体10に取り付けられた支柱301と、前記支柱301に取り付けられたスライドレール325と、前記スライドレール325に沿って移動するスライダー323と、前記支柱301または前記スライドレール325のいずれかに取り付けられて前記スライダー323の位置を検知する上部位置センサ319及び下部位置センサ321とを備える。尚、前記スライダー323は前記アーム取付台311に接続されて、前記アーム取付台311と連動して前記スライドレール325に沿って移動する。
【0052】
更に収容昇降装置3の前記試料容器取付台317には前記試料容器115がセットされる。
【0053】
更に収容昇降装置3の気化容器116の内部に形成される収容空間118は、前記遮蔽壁315により略真ん中の所定の位置で遮蔽され、前記常温ガス通過空間120と、前記加熱ガス通過空間119とが形成される。加熱ガス通過空間119は、高温の混合ガスにより高温状態にされ、試料容器115に入れられた土壌に含有される炭化水素化合物成分を気化させる。一方、遮蔽壁315により遮蔽された常温ガス通過空間120には、常温の混合ガスが通過される。つまり、気化容器116の内側(下部側)を高温の気化空間、外側(上部側)を常温の冷却空間の階層空間構造にすることで、高温状態の加熱ガス通過空間119の高温の熱は、遮蔽壁315及び常温ガス通過空間120により冷却され、気化容器116の外部に高温状態のまま伝わらないようになっている。これにより、測定者は高温の熱にさらされることなく安全に作業を行うことができる。
【0054】
次に、カプセル状の土壌試料容器の実施形態について
図5で詳しく説明する。
図5は測定土壌503をカプセル状の試料容器115に入れた状態を表わしている。カプセル状試料容器5は、測定する土壌503を入れる試料容器受115bと、前記試料容器115bに被せる形で蓋をする試料容器蓋115aから構成されている。
【0055】
更に、カプセル状試料容器5は、前記試料容器115に入れた前記土壌503へ前記収容空間118において前記インラインヒーター113で加熱された前記混合ガスを通過させると共に、土壌503が前記試料容器115外部に流出しないような細目状のメッシュフィルタ501が取り付けられた構造を成している。なお、このメッシュフィルタ501は、前記試料容器蓋115aの上面側と、前記試料容器受115bの底面側にそれぞれ設けられている。
【0056】
次に、この装置2の使用方法(計測方法)について説明する。装置2の演算制御部15の所定の記憶装置(例えば、ROM)には、以下に説明する計測および操作に必要な各部の動作が予めプログラムとして内蔵されている。内蔵されたプログラムは測定者の操作部13からの操作命令を受けて実行される。また、内蔵されたプログラムは操作項目と測定中の状態や測定結果などを表示部14に表示する。これにより操作者はその表示される情報を見ることで適切な操作を適切なタイミングで行うことができ、短時間で高精度な計測を行うことができる。
【0057】
揮発性物質成分を含む土壌503をカプセル状の試料容器115の試料容器受115bに入れて、試料容器蓋115aを被せる。装置2の操作部13で収容昇降装置3を駆動させて
図4で示すように試料容器115がセットできるように試料容器取付台317を収容空間118から筺体10の外部に出す。試料容器115をセットした後、
図3で示すように再び操作部13で収容昇降装置3を駆動させて試料容器115を収容空間118の内部に収納する。尚、収容装置3ではモーター153やボールネジ309を使用して試料容器115を収容空間118から取り出す方法を開示しているが、手動でも他の駆動装置を使用しても構わない。
【0058】
図3で示すように試料容器115を収容空間118にセットし、装置2の操作部13で測定開始操作を行う。操作部13から演算制御部15に送られた命令により、演算制御部15は、予め記憶された制御プログラムに基づいて、以下の手順に従い装置2の制御動作を自動的に実行する。
【0059】
ポンプ105が駆動して筺体10に取り付けられた外気導入口101から常温の酸素と窒素の混合ガスが吸引され、エアーフィルター103で前記混合ガス中に含まれた塵や埃が取り除かれる。次に前記混合ガスは、ポンプ105に吸引された後に吐き出されれて流量制御装置107に送入される。このとき、前記混合ガスは、流量制御部17からの信号により流量制御装置107で一定の流量に制御される。
【0060】
一定の流量に制御された前記混合ガスは、流路切替電磁弁109と逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131の切替制御によって、バイパス配管111からガス濃度計測配管167へと送入される。この混合ガスは、除湿部127で除湿された後にガス濃度検出部133へと送入される。このとき、前記混合ガスは、燃焼系統となる空気配管155、気化容器116、触媒容器117、燃焼ガス配管135などには流れない。また、排気系統における強制排気配管165にも流さないようにしている。
【0061】
ガス濃度検出部133は、前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度を計測する。計測された前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度は前記混合ガスのバックグランド値として演算制御部15の所定の記憶領域に記憶される。
【0062】
前記バックグランド値として前記混合ガスの二酸化炭酸ガス濃度を計測している間に、気化・燃焼部1では、触媒加温ヒーター157で触媒容器117に入れられた触媒158を加熱する。この時、演算制御部15は、触媒容器117の触媒温度を触媒効果に適した温度(例えば、摂氏250度〜300度)に制御する。これは触媒容器117に取り付けられた触媒温度計測センサ159により触媒容器117の温度を検出することで行う。検出された触媒容器117の温度(温度信号)は、温度計測部19で信号変換処理される。演算制御部15は、信号変換処理された温度信号に基づいて触媒加温ヒーター157を制御し、触媒容器117の温度を一定に制御する。
【0063】
前記触媒温度計測センサ159の温度が規定値に到達した後、前記ポンプ105から吐き出されて一定の流量に制御された前記混合ガスは、前記流路切替電磁弁109で流路を制御されて、空気配管155に送入される。この時、前記混合ガスは前記バイパス配管111には流れない。空気配管155に送入された常温の前記混合ガスは、気化容器116に取り付けられた前記混合ガス入口2aからの遮蔽壁315で遮蔽された常温ガス通過空間120に送入され、さらに前記常温ガス通過空間120に接続された混合ガス配管2cを通過してヒーターが内蔵されたインラインヒーター113へと送入される。
【0064】
前記インラインヒーター113は、前記混合ガスが前記空気配管155に送入されると同時に加熱を始める。結果、常温の前記混合ガスは前記インラインヒーター113を通過するときに加熱される。加熱された前記混合ガスは加熱混合ガス配管2dを通過して前記遮蔽壁315で遮蔽された加熱ガス通過空間119へ送入される。この時のインラインヒーター113に内蔵されたヒーターの温度は、含有された揮発性物質を気化させるために適した温度(例えば、摂氏250度〜300度)に制御される。具体的には、演算制御部15は、インラインヒーター温度計測センサ121で検出されて温度計測部19で信号変換処理された温度信号に基づいて、インラインヒーター113に内蔵されたヒーターの温度を所定の温度範囲内で一定に制御する。
【0065】
前記加熱ガス通過空間119送入された前記混合ガスは、試料容器取付台317にセットされた試料容器115に取り付けられたメッシュフィルタ501を通過して、前記試料容器115の中の土壌503を加熱する。そして土壌503に含有された揮発性物質を気化させる。気化した揮発性物質は前記混合ガスと一緒に気化ガス配管2eを通過して前記触媒容器117の中の触媒158へと送入され、触媒158で燃焼されて、二酸化炭素ガスとなる。
【0066】
前記触媒158で燃焼されることで発生した二酸化炭素ガス(以下、燃焼ガスという)は、触媒容器117に取り付けられた燃焼ガス出口2bから燃焼ガス配管135を通過して冷却装置123に取り付けられた冷却部125に導入される。この冷却部125で常温まで冷却された燃焼ガスは、逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131で流路を制御されてガス濃度計測配管167へと送入され、除湿部127で除湿された後にガス濃度検出部133へと送入される。このとき、前記燃焼ガスは流路を制御されるので、バイパス配管111と強制排気配管165には流れない。
【0067】
ガス濃度検出部133で計測された前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度の計測値は、計測開始時刻から終了時刻まで時系列に前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度の値として演算制御部15に記憶される。計測は、装置2の操作部13で測定開始操作が行われ一定時間が経過した後に終了する。計測時間は任意に設定してもよいが、前記燃焼ガスの二酸化炭酸ガス濃度が、予め計測した前記混合ガスのバックグランド値として演算制御部15に記憶されている値と同等又は測定終了用閾値以下になった時点で計測を終了とすることもできる。これは、土壌503に含有された揮発性物質の気化が終了したと判断されるためである。
【0068】
土壌汚染物質の揮発性物質には、例えば石油系炭化水素を含有するものがある。例えば、石油系炭化水素が完全燃焼する場合には、前記演算制御部15にプログラムされた下記の反応式(1)を適用することで、前記演算制御部15は二酸化炭素の発生量により土壌中に含有されていた揮発性物質の含有量を算出して前記表示部14に測定結果を表示する。
【0069】
CmHn+(m+n/4)O2→mCO2+n/2H2O・・・・(1)
【0070】
予め土壌に含有されている汚染物質成分が判明しているとき、例えば軽油等の場合は、m=1、n=1.8として測定者が前記操作部13から入力しておくと、前記演算制御部15は前記反応式(1)を使えば汚染物質の含有量をより正確に算出することできる。
【0071】
さらに、灯油、軽油、A重油、C重油等の炭化水素化合物類は、それぞれ気化する温度や速度が異なるため、前記混合ガスの流量を一定に制御し燃焼したガスの濃度変化をガス濃度検出部133で時系列に計測する事で、前記演算制御部15は土壌中に含有されていた炭化水素化合物類の種別も土壌中揮発性物質濃度と同時に判定することが可能となる。例えば、気化速度が異なる場合は、計測の時系列中に発生するそれぞれのガス濃度上昇のピークタイミングが異なる事から、そのピークに達する時間によって、含有している化合物の種別を判定することが出来る。また例えば、含有している複数種類の化合物のそれぞれの含有量を計測したい場合は、低温側から順番に、それぞれの気化温度に合わせて段階的に温度を上昇させながら、それぞれの含有量を計測することもできる。測定者は、測定後に、mとnの正確な値を前記操作部13から入力すると前記演算制御部15は前記反応式(1)を使えば汚染物質の含有量をより正確に算出する。
【0072】
以上のようにして得られた測定データは、前記演算制御部15の所定の記憶領域(例えば、RAM)に保存することが可能である。さらに、その前記測定データは、前記演算制御部15から電子記憶媒体等に複写することも、前記演算制御部15に直接パーソナルコンピュータ等を接続して複写するもできる。
【0073】
前記演算制御部15は、内蔵されたプログラムに従い測定開始操作が行われて一定時間が経過したか、あるいは土壌503に含有された揮発性物質の気化が終了したと判断したら測定を終了する。測定終了と同時に、前記演算制御部15は前記インラインヒーター113の加熱を停止する。加熱を停止された前記インラインヒーター113には常温状態の前記混合ガスが通過してインラインヒーター113に内蔵されたヒーターが急激に冷却される。さらに、停止したインラインヒーター113を通過した常温に近い前記混合ガスによって、前記加熱ガス通過空間119、前記試料容器115、前記試料容器取付台317、連結棒313および遮蔽壁315も冷却される。このとき、前記加熱ガス通過空間119に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147と、ポンプ105側に設けられている送入温度計測センサ108からの温度信号は、温度計測部19で信号変換処理され演算制御部15に入力される。2つのセンサの温度が同等になれば、気化容器116が十分に冷却されたと判定できる。気化容器116の冷却中は、この前記混合ガスは、気化・燃焼部1及び強制排気配管165を経由して筐体10に取り付けられた強制排気口139から排出する。なお、気化容器116の冷却中であっても、次の測定が控えている場合は、触媒158の加熱は継続しておくことが望ましい。この流路制御は、流路切替電磁弁109と逆流防止電磁弁141と強制排気電磁弁131で行う。従って、ガス濃度計測配管167および前記バイパス配管111に前記混合ガスは流れない。
【0074】
次に、別の土壌を計測する場合は、再び前記装置2の前記操作部13で前記収容昇降装置3を駆動させて、
図4で示すように、前記試料容器取付台317を前記収容空間118から前記筺体10の外部に出して前記試料容器115がセットできるようにする。この際、計測が終了した前の前記試料容器115を取り外し、次に計測する土壌503をカプセル状の前記試料容器115に入れて前記試料容器取付台317にセットした後、前回同様の操作を繰り返す。
【0075】
全ての計測が終了した場合、測定者は、再び前記装置2の前記操作部13で終了を入力する。終了命令を受けた前記演算制御部15は内蔵プログラムに従い以下の動作が自動的に実行される。まず前記演算制御部15は、前記インラインヒーター113と前記触媒加温ヒーター157の加熱を停止する。加熱を停止された前記インラインヒーター113には、常温状態の前記混合ガスが通過してインラインヒーター113に内蔵されたヒーターが急激に冷却される。さらに、インラインヒーター113を通過した前記混合ガスにより、前記加熱ガス通過空間119と前記試料容器115と前記試料容器取付台317と連結棒313および遮蔽壁315が冷却される。さらに、この混合ガスは触媒容器117と触媒158にも流れ込んでこれらを冷却する。また、上記加熱の停止と同時に、前記逆流防止電磁弁141と前記強制排気電磁弁131で流路を制御して、前記強制排気配管165を経由して強制排気口139から前記混合ガスを排出する。このとき前記ガス濃度計測配管167および前記バイパ配管111に前記混合ガスは流れない。
【0076】
次に、前記加熱ガス通過空間119に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147と、送入温度計測センサ108と燃焼ガス温度計測センサ161と、触媒温度計測センサ159と、冷却部ガス入口温度センサ129の5つのセンサの温度が同等になれば、全ての冷却が終了したと判定する。結果、前記ポンプ105を停止させて前記表示部14に終了を表示させて測定者に知らせる。なお、これらのセンサからの温度信号は温度計測部19で信号変換処理され演算制御部15に伝達される。
【0077】
以上要するに、計測する土壌503を気化容器116(収容空間)にセットして、前記土壌にポンプ105(送入手段)により送入された酸素と窒素の混合ガスをインラインヒーター113(加熱手段)で急加熱して前記気化容器116(収容空間)に導入すると、土壌内に含有する揮発性物質が前記インラインヒーター113(加熱手段)により気化され、さらに気化した該ガスを触媒158(燃焼手段)で燃焼させた後、冷却装置123と冷却部125(冷却手段)で冷却して再び常温状態のガスにしてからガス濃度検出部133(燃焼ガス濃度計測手段)で該ガスの濃度を計測することで土壌中揮発性物質濃度を計測する事ができる。
【0078】
この手法によると計測時にのみ加熱・冷却をすればよいことになり電気炉を使用する必要がなくなるので、測定時の低エネルギー化が図れる。また、電気炉による計測では計測に必要な最適温度に到達するまで数時間程度を要するが、この手法では短時間(例えばひとつの試料を計測する時間は10分程度)で計測が可能となり、土壌汚染を調査したい現場で迅速に計測することが実現できる。換言すると本第1実施形態は、土壌に含まれる揮発性物質成分を気化させるために用いる酸素と窒素の混合ガスは、計測するときだけ急加熱することが可能で、電気炉のように加熱に必要な熱量を得る時間を要さず短時間で計測が可能となる。したがって、測定時の低エネルギー化が図られる。さらに、2つの空間に遮断された収容空間の一方の空間を通過した常温の前記混合ガスを急加熱して、土壌中を入れた他方の空間に導入することで、急加熱する他方の空間の熱を、一方の空間で遮蔽して装置外部に放出させない。この結果、測定者の安全を確保できる。また、気化した揮発性物質成分を燃焼させたガスをガス濃度検出部で時系列的に計測することで、汚染濃度の検出と汚染物質成分の判別することができる。
【0079】
更に、気化容器116(収容空間)は、内壁で遮蔽された2つの空間を有しており、常温ガス通過空間120(一方の空間)に常温状態の酸素と窒素の混合ガスを通過させ、加熱ガス通過空間119(他方の空間)には該土壌503を収容させて前記インラインヒーター113(加熱手段)により加熱された前記混合ガスを通過させる。つまり、気化容器116の内側(下部側)を高温の気化空間、外側(上部側)を常温の冷却空間の階層空間構造にすることで、高温状態の加熱ガス通過空間119の高温の熱は、遮蔽壁315及び常温ガス通過空間120により冷却され、常温近辺まで冷却することができ、該気化容器116(収容空間)が露出する該装置2の外部面に伝えにくくすることが可能で、該気化容器116(収容空間)が該装置2の外部に露出する面を素手で触れても熱傷を負うことを防ぐことができ、測定作業者の安全が図られる。
【0080】
前記インラインヒーター113(加熱手段)は常温ガス通過空間120(一方の空間)を通過した常温状態の前記混合ガスを急加熱して加熱ガス通過空間119(他方の空間)に導入する。これにより、前記加熱ガス通過空間119(他方の空間)の熱は、常温ガス通過空間120(一方の空間)に伝わることになるが同時に、通過する前記混合ガスによりその熱は奪われることになる。つまり、常温ガス通過空間120(一方の空間)に導入された常温状態の前記混合ガスは、常温ガス通過空間120(一方の空間)を冷却する効果と同時に、いわゆる予熱効果を得ることが可能となり、測定時の低エネルギー化が図られる。
【0081】
前記インラインヒーター113(加熱手段)は常温状態で送入された前記混合ガスを前記インラインヒーター113に取り付けられたインラインヒーター温度計測センサ121の温度を監視して、前記インラインヒーター113に内蔵されたヒーターの加熱温度を制御(例えば摂氏300度程度に)することができる。この手法では電気炉のように必要な最適温度に到達するまでの時間を必要とせず短時間(例えば1分程度)で目標加熱温度にまで到達させることが可能となり、現場で迅速に計測することが実現できる。さらに、前記加熱混合ガス配管2dや前記気化容器116への熱伝導により奪われる熱量を考慮して、加熱初期(例えば数秒間)において前記インラインヒーター113に内蔵されたヒーターの加熱温度を目標加熱温度以上に制御(例えば摂氏500度程度に)することで、より短時間に目標加熱温度にまで到達させることが可能となる。また、前記混合ガスをインラインヒーター113に導入する前に前記インラインヒーター113を予熱(例えば摂氏50度程度になるように前記内蔵ヒーターに電圧を加える)しておくことでさらに短時間に目標加熱温度にまで到達させることが可能となる。
【0082】
前記土壌503は、前記試料容器115(カプセル状の容器)に収容して、該気化容器116(収容空間)に収容させることができる。これにより測定毎の試料交換が簡単に行える。さらに、前記試料容器115には細目状のメッシュフィルタ501が取り付けられており、前記混合ガスが通過するときに前記土壌503の微細な粉塵が前記試料容器115の外部に流出することを防ぐ。更に、前記混合ガスが通過する該気化容器116(収容空間)や触媒158などを汚損することがなく、メンテナンス性の向上が図られ、短時間に数多くの試料を計測したい土壌汚染現場での利便性が向上できる。
【0083】
前記試料容器115(カプセル状の容器)を自動的に昇降させる収容昇降装置3(昇降手段)は、単に前記試料容器115(カプセル状の容器)を該気化容器116(収容空間)に収容させるだけでなく安全装置の役割も果たしている。例えば、前記土壌503に含有された揮発性物質を気化させるために、高温(例えば摂氏300度)の前記混合ガスを使用するが、収容昇降装置3により前記試料容器115(カプセル状の容器)は、該気化容器116(収容空間)に収容され、前記装置2の外部から直接触れることが出来なくなる。また、該気化容器116(収容空間)に取り付けられた気化ガス温度計測センサ147の温度が前記送入温度計測センサ108と同程度の温度であることを条件にして収容昇降装置3の上昇を可能にするプログラムを有しているので、測定者が高温状態の前記試料容器115(カプセル状の容器)に触れることを防ぎ測定者を熱傷から守ることができる。当然のことながら、前記装置2内にある他の温度センサの温度監視、上部位置センサ319と下部位置センサ321の信号や前記インラインヒーター113などの動作と複合的に条件設定をすることも可能である。
【0084】
前記ポンプ105と前記流量制御装置107(送入手段)は、常温状態で送入された前記混合ガスを流量制御装置107で一定流量に制御する。この混合ガスは、前記インラインヒーター113(加熱手段)で急加熱させて前記加熱ガス通過空間119(他方の空間)に導入して前記土壌503に含有された揮発性物質が気化させる。このときに、前記土壌503および前記土壌503を入れる前記試料容器蓋115aと前記試料容器受115bに取り付けられた細目状のメッシュフィルタ501により加熱された前記混合ガスは抵抗を受けることになるが、前記流量制御装置107により常に一定流量に制御することが実現できる。つまり、計測する前記土壌503の種類や、細目状のメッシュフィルタ501のガス透過抵抗のバラツキなどに影響されることなく前記土壌503に含有された揮発性物質を気化させることができる。
【0085】
該気化容器116(収容空間)は気化ガス温度計測センサ147(温度センサ)が取り付けられており、前記土壌503に含有する揮発性物質の気化が終了した後、気化ガス温度計測センサ147の温度が前記送入温度計測センサ108と同程度の温度(常温)に戻るまでを条件にして、前記ポンプ105と前記流量制御装置107(送入手段)により酸素と窒素の混合ガスを前記収容空間に通過させるプログラムを有しているので、測定者が高温状態の前記試料容器115(カプセル状の容器)に触れることを防ぎ測定者を熱傷から守ることができる。
【0086】
気化した該ガスを触媒158(燃焼手段)で燃焼させるとき、前記触媒容器117の内部に取り付けられた触媒温度計測センサ159の温度を監視して、前記混合ガスをインラインヒーター113に導入する前に、前記触媒加温ヒーター157(触媒加熱手段)の温度を、触媒効果を発揮する温度(例えば摂氏280度)に制御することができる。これにより、気化した該ガスを触媒158(燃焼手段)で完全燃焼させることが可能となり、汚染物質の含有量を正確に算出することできる。
【0087】
前記ガス濃度検出部133(燃焼ガス濃度計測手段)は、気化した該ガスを触媒158(燃焼手段)で燃焼したガスの濃度変化を時系列で計測することができる。これにより、例えば灯油、軽油、A重油、C重油等の炭化水素化合物類はそれぞれ気化する温度が異なるため、土壌中に含有されていた炭化水素化合物類の種別も土壌中揮発性物質濃度と同時に判定することが可能となる。
【0088】
次に、
図6及び
図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る土壌中揮発性物質抽出装置2について説明する。なお、第1実施形態に係る土壌中揮発性物質抽出装置と同一又は類似する部品又は部材については、この第1実施形態と同じ名称及び符号を用いることで、ここでの説明を省略し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0089】
気化・燃焼部1は、内部に収容空間118を有する気化容器116の外周に、加熱ガス通過空間放熱防止ヒーター180が設けられている。この加熱ガス通過空間放熱防止ヒーター180は、土壌に含有される揮発性成分物質を気化させるために必要な熱量が、この気化容器116によって放熱により奪われないようにする。具体的には、気化容器116における加熱ガス通過空間119側に加熱ガス通過空間放熱防止ヒーター180が取り付けられている。これにより、加熱ガス通過空間119内の試料容器115と、加熱ガス通過空間119を通過する混合ガスの温度低下を抑制する。
【0090】
気化・燃焼部1は、加熱ガス通過空間119と触媒容器117を接続する気化ガス配管2eの途中に、第2インラインヒータ114(第2加熱手段)が設置されている。また、この第2インラインヒータ114には、内部を通過するガスの温度を計測する第2インラインヒーター温度計測センサ122が設けられている。従って、第2インラインヒーター温度計測センサ122で検出された温度信号は、温度計測部19で信号変換処理され、演算制御部15に伝達される。演算制御部15は、この温度信号に基づいて、第2インラインヒーター114に内蔵されたヒーターの温度を制御して、内部を通過するガスの温度を所定範囲内で一定に制御する。この結果、第2インラインヒータ114は、加熱ガス通過空間119で気化されたガスを加熱することによって、気化ガス配管2eなどによる放熱で、ガスの温度が下がるのを抑制する。この結果、触媒容器117内に安定した高い温度のガスを供給することが可能となり、触媒158によるガスの完全燃焼が促進され、計測精度を更に高めることが可能となる。
【0091】
触媒容器117には、内部の触媒158を直接的に加熱する触媒加熱ヒーター157に加えて、容器の外周側にも触媒容器放熱防止ヒーター184が設けられている。この触媒容器放熱防止ヒーター184は、触媒258の熱が触媒容器117からの放熱で奪われることを抑制する。
【0092】
更に本装置2では、触媒容器117と流路切替電磁弁109の間が、触媒パージ用ガス配管112によって接続されている。即ち、流路切替電磁弁109は、ポンプ105によって取り込まれた外気を、空気配管155を介して気化容器116に供給するか、または触媒パージ用ガス配管112を介して触媒容器117に供給するかを、選択できるようになっている。なお、第1実施形態では、この流路切替電磁弁109は、バイパス配管111によってガス濃度計測配管167側に接続されていたが、ここではバイパス配管111は省略されている。バイパス配管111の機能は、この触媒パージ用ガス配管112が兼ねるようになっている。
【0093】
この触媒パージ用ガス配管112は、外気導入口101から取り入れられた混合ガスを、収容空間118に導入することなく、直接、触媒容器117に供給する。触媒258には、常温になると二酸化炭素を吸着し、高温になるとその二酸化炭素を放出する特性を有するものがある。例えば、この土壌中揮発性物質抽出装置2が停止している最中に触媒258に吸着した二酸化炭素が、実際の計測時に放出されると、計測誤差が生じる可能性がある。従って、本第2実施形態の土壌中揮発性物質抽出装置2では、計測前に、触媒258を触媒加熱ヒーター157及び触媒容器放熱防止ヒーター184で加熱することで二酸化炭素を放出させると同時に、流路切替電磁弁109によって、混合ガスを触媒パージ用ガス配管112を介して触媒容器117内に直接的に導入することで、触媒258が吸着していた二酸化炭素と一緒に混ざり合った混合ガスを、燃焼ガス配管135及びガス濃度計測配管167を介して排気口137から排出する。この混合ガスをガス濃度検出部133で計測すれば、触媒258が吸着していた二酸化炭素によって一時的に二酸化炭素濃度が上昇し、その後、通常の状態(外気の二酸化炭素濃度レベル)に復帰することを検出できる。このようにして、触媒258が吸着している二酸化炭素の放出をガス濃度検出部133及び演算制御部15で確認してから、実際の計測を開始することで、より一層、計測精度を向上させることができる。
【0094】
また、混合ガスを外部から取り入れるポンプ105と、このポンプ105によって送入された混合ガスの流量を一定に制御する流量制御装置107の間には、入側除湿部128が設けられている。流量制御装置107は、ポンプ105から送られる混合ガスの流量を絞り込む際、混合ガスが圧縮されることによって内部に含まれる水蒸気が凝縮し易い。そこで本第2実施形態のように、流量制御装置107の手間において、混合ガスを入側除湿部128で除湿することで、流量制御装置107における結露を防止する。
【0095】
更にこの第2実施形態では、排出口137側に設置される出側ガス濃度検出部133に加えて、外気導入口101から収容空間118までの間に、入側ガス濃度検出部142が設置されている。ここでは、入側ガス濃度検出部142が、エアーフィルター103とポンプ105の間に設置されており、外気導入口101からエアーフィルター103を通過した混合ガス(空気)のガス濃度(ここでは二酸化炭素濃度)を計測する。入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の出力を比較することで、各種計測の判断に用いることが可能となる。
【0096】
次に第2実施形態の装置2における特徴的な操作手順について説明する。この手順は、演算制御部15が入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の出力結果を利用して自動的に実行される。なお、下記手順1〜4を除いた他の手順については、既に第1実施形態で説明した手順と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0097】
(手順1)触媒のリセット・・・計測前の暖気運転として、触媒加熱ヒーター157及び触媒容器放熱防止ヒーター184で触媒258を加熱し、更に、流路切替電磁弁109によって、混合ガスを触媒パージ用ガス配管112を介して触媒容器117内に直接導入する。この結果、触媒258が吸着していた二酸化炭素が、加熱によって放出され、その二酸化炭素が混合ガスと一緒に排気口137から排出される。触媒258の二酸化炭素が完全に放出されたか否かは、排気口137の手前にある出側ガス濃度検出部133の計測値から演算制御部15が判断する。この際、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の計測値の差から判断すると、バックグラウンドの二酸化炭素値がキャンセルされるので、より高精度な判定が可能となる。両者の計測値の差が大きいときは、まだ、触媒258による二酸化炭素の放出が継続されていることを意味しているので暖気運転を継続して実測動作への移行を禁止する。一方、両者の計測値の差が、触媒リセット判定用の閾値以下まで小さくなったら、触媒258が吸着している二酸化炭素の放出が完了したと判断し、次の(手順2)のバックグランド計測に移行する。
【0098】
(手順2)バックグランド計測・・・上記(手順1)における暖気運転が終了したら、そのまま、この暖気運転状態を維持し、外気の二酸化炭素のガス濃度を計測する。この計測は、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の双方で実施する。
【0099】
(手順3)個体差のオフセット・・・上記(手順2)の計測結果を利用して、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の測定値の個体差をオフセットする。具体的に、例えば、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の測定値にずれがある場合は、出側ガス濃度検出部133の測定値側を基準として、入側ガス濃度検出部142の測定値をオフセット(補正)し、両者の測定結果が殆ど同じとなるようにする。なお、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の測定値のずれが大きく、そのずれがエラー判定用閾値以上となる場合は、センサー自体のトラブルの可能性があるので、補正を行わずに表示部14にエラー表示を行う。このなお、ここでは入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の一方の測定値を基準とする場合を例示したが、両者の平均値を基準として、双方の出力値を補正してもよい。
【0100】
(手順4)実測作業・・・上記(手順1)〜(手順3)が終了したら、実測に移行する。まず、触媒温度計測センサ159によって触媒258の温度を一定に制御し、更に、加熱ガス通過空間放熱防止ヒーター180によって気化容器116を加熱する。なお、気化容器116の加熱は、手順1〜手順3の間に予め行っていても良い。その後、ポンプ105から吐き出され一定の流量に制御された混合ガスを、流路切替電磁弁109で空気配管155に切り替えて、インラインヒーター113で加熱しながら気化容器116に送り込む。この混合ガスは、試料容器115の中の土壌503を加熱して、土壌503に含有された揮発性物質を気化させる。気化した揮発性物質は、再度、第2インラインヒーター114で加熱されてから、混合ガスと一緒に触媒容器117の中の触媒158へと送入され、触媒158で燃焼されて二酸化炭素ガスとなる。この二酸化炭素ガス(以下、燃焼ガスという)は、出側ガス濃度検出部133へと送入され、二酸化炭素濃度が検出される。
【0101】
実測中、演算制御部15は、出側ガス濃度検出部133と入側ガス濃度検出部142の双方で二酸化炭素濃度を経時的に検出していく。更に、出側ガス濃度検出部133で計測された計測値と、入側ガス濃度検出部142で計測された計測値の差を算出し、これを実際の検出濃度とする。この検出濃度から、揮発性物質による二酸化炭素ガス量を計算して記憶手段に記憶する。実測時間は、出側ガス濃度検出部133で計測された計測値と、入側ガス濃度検出部142で計測された計測値の差が、測定終了用閾値以下まで小さくなった時点を終了とすることが好ましい。これは、土壌503に含有された揮発性物質の気化が終了したと判断できるからである。
【0102】
以上、本第2実施形態の土壌中揮発性物質抽出装置2によれば、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の双方を用いて計測を行うので、常にバックグラウンドの二酸化炭素濃度をキャンセルできるようになり、計測精度を一層高めることが可能となる。例えば、狭い部屋内で土壌中揮発性物質抽出装置2を使用する際は、土壌503内の揮発性物質による二酸化炭素が、排気口137から排出されるので、この部屋自体の二酸化炭素濃度が計測中に上昇する可能性がある。また、この部屋に数名の計測者がいる場合は、その呼気によって室内の二酸化炭素濃度が上昇する可能性がある。このように、外部環境(バックグラウンド)の二酸化炭素濃度が変動するような計測環境であっても、本第2実施形態の装置2によれば、常に、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の差を利用して濃度を算出しているので、土壌503に含まれる揮発性物質のみの二酸化炭素濃度の増加分を高精度で測定することが可能となる。
【0103】
同様に、土壌503に含まれる揮発性物質のみによる二酸化炭素濃度を高精度で測定できることから、その濃度が零に近づいた時を正確に判定することが可能となり、測定の終了タイミングも高精度に判定できる。結果、誤って、途中で測定を終了させてしまったり、無駄に長時間に亘って測定を行ったりする不都合を解消できる。
【0104】
更に、実測前に、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の双方で混合ガスの二酸化炭素濃度を測定しているので、入側ガス濃度検出部142と出側ガス濃度検出部133の一方が故障して濃度検出に誤差が生じる場合に、他方の計測値からそれを速やかに検出できる。従って、センサーが故障していることに気づかないまま、測定を行ってしまうトラブルも未然に防止できる。
【0105】
また、本装置2によれば、加熱ガス通過空間放熱防止ヒーター180、及び触媒容器放熱防止ヒーター184が設けられているので、インラインヒーター113及び第2インラインヒーター114によって加熱された混合ガスが、収容容器116や触媒容器117で放熱されることを抑制できる。結果、土壌503の揮発性物質の揮発効率や、気化したガスを二酸化炭素ガスに置換する燃焼効率を高めることが出来るので、計測精度が高められる。更には、計測時間を短縮することが可能となる。特に本第2実施形態では、第2インラインヒーター114によって、揮発性物質が気化した混合ガスの温度を更に高精度で制御しながら、触媒容器117に供給できるので、燃焼効率を高めることが可能となっている。
【0106】
また更に、本装置2によれば、触媒パージ用ガス配管112によって、外気導入口101から取り込まれた混合ガスを、気化容器116を介さずに、触媒容器117に直接供給することで、実測前に、触媒258に吸着している二酸化炭素を放出できるようになっている。この結果、土壌503の揮発性物質から得られる二酸化炭素と、触媒258に吸着している二酸化炭素の混在が低減されるので、計測精度を一層高めることが可能となる。なお、ここでは特に図示しないが、この触媒バージ用ガス配管112で、混合ガスを加熱することも可能である。
【0107】
この第2実施形態では、入側ガス濃度検出部142が、外気導入口101から収容空間118までの間に配置されている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、装置2内の混合ガスの流路上ではなく、外気(混合ガス)を直接計測できる場所に入側ガス濃度検出部142を配置しても良い。即ち、この収容空間118に取り込まれるであろう混合ガスの濃度を計測できる場所であれば、入側ガス濃度検出部142をどこに配置しても良い。