特許第5733749号(P5733749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5733749充電終了時点特定方法、充電終了時点特定装置及びパック電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5733749
(24)【登録日】2015年4月24日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】充電終了時点特定方法、充電終了時点特定装置及びパック電池
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/10 20060101AFI20150521BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150521BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20150521BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H02J7/10 B
   H02J7/10 H
   H01M2/10 E
   H01M10/48 P
   H01M10/44 A
   H01M10/44 P
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-96284(P2011-96284)
(22)【出願日】2011年4月22日
(65)【公開番号】特開2012-228142(P2012-228142A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 透
(72)【発明者】
【氏名】松浦 信一
【審査官】 高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−007564(JP,A)
【文献】 特開平11−355972(JP,A)
【文献】 特開2007−285739(JP,A)
【文献】 特開2003−023734(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/12
H02J 7/34 − 7/36
H01M 2/10
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電圧及び充放電電流を時系列的に検出し、検出した電圧が所定電圧より高く、且つ検出した充電電流が所定時間以上所定電流より小さいと判定した時点を第1時点として特定し、検出した充放電電流に基づいて充放電した容量を積算し、積算した容量に基づいて前記第1時点と異なる第2時点を特定し、前記第1及び第2時点を前記二次電池の充電を終了すべき時点とする充電終了時点特定方法において、
検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高くない場合、充放電した容量をゼロリセットし、
前記検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高い場合、前記充放電した容量に充電した容量の加算と放電した容量の減算で積算し、
積算結果が、前記二次電池が充電されたことを示す場合、積算した容量の絶対値が所定容量より大きいか否かを判定し、
大きいと判定した時点を、前記第2時点として特定すること
を特徴とする充電終了時点特定方法。
【請求項2】
前記所定容量は、前記二次電池に充電可能な総容量として予め設定された容量に対する所定割合の容量であることを特徴とする請求項1に記載の充電終了時点特定方法。
【請求項3】
前記所定割合は、40%から60%の範囲にあることを特徴とする請求項に記載の充電終了時点特定方法。
【請求項4】
二次電池の電圧及び充放電電流を時系列的に検出し、検出した電圧が所定電圧より高く、且つ検出した充電電流が所定時間以上所定電流より小さいと判定した時点を第1時点として特定し、検出した充放電電流に基づいて充放電した容量を積算し、積算した容量に基づいて前記第1時点と異なる第2時点を特定し、前記第1及び第2時点を前記二次電池の充電を終了すべき時点とする充電終了時点特定装置において、
検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高くない場合、充放電した容量をゼロリセットし、
前記検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高い場合、前記充放電した容量に充電した容量の加算と放電した容量の減算で積算するようにしてあり、
積算結果が、前記二次電池が充電されたことを示す場合、積算した容量の絶対値が所定容量より大きいか否かを判定する手段を備えること
を特徴とする充電終了時点特定装置。
【請求項5】
前記所定容量は、前記二次電池に充電可能な総容量として予め設定された容量に対する所定割合の容量であることを特徴とする請求項に記載の充電終了時点特定装置。
【請求項6】
前記所定割合は、40%から60%の範囲にあることを特徴とする請求項に記載の充電終了時点特定装置。
【請求項7】
請求項4から6の何れか1項に記載の充電終了時点特定装置と、該充電終了時点特定装置によって充電を終了すべき時点が特定される1又は複数の二次電池とを備えることを特徴とするパック電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に充放電した容量に基づいて充電を終了すべき時点を特定する充電終了時点特定方法、充電終了時点特定装置及びパック電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池に代表される二次電池の充電では、所定電流にて定電流充電し、端子電圧(以下、電池電圧という)が二次電池に許容される最大電圧より低く設定された所定電圧に達した後に定電圧充電に移行する、いわゆる定電流・定電圧充電方式が主に用いられる。電池電圧が最大電圧を超えた場合は、電池の寿命及び充放電容量を損ねることとなり、発火に至る虞もあるため、充電中は電池電圧が最大電圧を超えないように制御される。
【0003】
満充電容量(FCC;Full Charge Capacity )は、二次電池が満充電から放電終止電圧(学習ポイント電圧)に至るまでの間に放電された放電電流の積算値に基づいて、充放電の1サイクル毎に更新される。充電された二次電池の残容量は、直前に更新されたFCCから、放電方向を正とする充放電電流(充電電流及び放電電流)の積算値を減算して算出される。充放電電流は、二次電池の充放電路に介装された電流検出抵抗に生じる電圧降下によって検出されるが、±5mA程度の範囲内の充放電電流は検出が困難である。例えば二次電池から外部の電気機器等のシステム側に流入する漏れ電流が放電電流として検出されない場合、FCCが実際よりも小さな容量に更新され、残容量も実際より小さな容量として算出される。
【0004】
ところで、二次電池を充電する際に、何らかの原因で充電の完了が正常に検出されなくなった場合、許容される充電容量を超えて充電が継続される結果、二次電池が過熱して発火、破裂等の事故に至る可能性がある。これを防止するために、充電した容量を監視して充電異常を検出する技術が考案されている。
【0005】
例えば、特許文献1では、二次電池の充電中に充電した容量又は残容量を算出し、算出した容量が公称容量又は学習容量の略1.5〜2倍以上か否かを診断することにより、二次電池と充電制御系との故障診断を行う故障診断方法及び電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−325363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、上述したように実際よりも小さなFCC及び残容量が算出された場合に、充電が正常に行われているにも関わらず、二次電池及び/又は充電制御系の故障と診断されることがあった。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、充電した容量及び残容量が実際とは異なる容量として算出された場合であっても、充電を終了すべき時点を的確に特定することが可能な充電終了時点特定方法、充電終了時点特定装置及びパック電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る充電終了時点特定方法は、二次電池の電圧及び充放電電流を時系列的に検出し、検出した電圧が所定電圧より高く、且つ検出した充電電流が所定時間以上所定電流より小さいと判定した時点を第1時点として特定し、検出した充放電電流に基づいて充放電した容量を積算し、積算した容量に基づいて前記第1時点と異なる第2時点を特定し、前記第1及び第2時点を前記二次電池の充電を終了すべき時点とする充電終了時点特定方法において、検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高くない場合、充放電した容量をゼロリセットし、前記検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高い場合、前記充放電した容量に充電した容量の加算と放電した容量の減算で積算し、積算結果が、前記二次電池が充電されたことを示す場合、積算した容量の絶対値が所定容量より大きいか否かを判定し、大きいと判定した時点を、前記第2時点として特定することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る充電終了時点特定方法は、前記所定容量は、前記二次電池に充電可能な総容量として予め設定された容量に対する所定割合の容量であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る充電終了時点特定方法は、前記所定割合は、40%から60%の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る充電終了時点特定装置は、二次電池の電圧及び充放電電流を時系列的に検出し、検出した電圧が所定電圧より高く、且つ検出した充電電流が所定時間以上所定電流より小さいと判定した時点を第1時点として特定し、検出した充放電電流に基づいて充放電した容量を積算し、積算した容量に基づいて前記第1時点と異なる第2時点を特定し、前記第1及び第2時点を前記二次電池の充電を終了すべき時点とする充電終了時点特定装置において、検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高くない場合、充放電した容量をゼロリセットし、前記検出した電圧が前記第1時点の特定に係る電圧より高い場合、前記充放電した容量に充電した容量の加算と放電した容量の減算で積算するようにしてあり、積算結果が、前記二次電池が充電されたことを示す場合、積算した容量の絶対値が所定容量より大きいか否かを判定する手段を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る充電終了時点特定装置は、前記所定容量は、前記二次電池に充電可能な総容量として予め設定された容量に対する所定割合の容量であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る充電終了時点特定装置は、前記所定割合は、40%から60%の範囲にあることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るパック電池は、上述の充電終了時点特定装置と、該充電終了時点特定装置によって充電を終了すべき時点が特定される1又は複数の二次電池とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明にあっては、時系列的に検出した二次電池の電圧が所定電圧より高くなっている間に充電した容量と放電した容量とを相殺させて積算し、積算結果が充電側に振れており且つ積算結果の絶対値が所定容量より大きくなった時点を、充電を終了すべき時点として特定する。
つまり、電池電圧が所定電圧に達するまで容量の積算が保留されており、電池電圧が所定電圧を超えている間に充電した容量から放電した容量を減算した容量が所定容量より大きくなった時点が、充電を終了すべき時点として特定される。これにより、電池電圧が所定電圧に達するまでに充電した容量とは無関係に、充電を終了すべき時点が精度よく特定される。
【0019】
本発明にあっては、二次電池の電圧が所定電圧より高くなった後に充電電流が所定時間以上所定電流より低下した時点を、充電を終了すべき第1時点として特定し、第1時点を特定するための前記所定電圧に係る電圧よりも二次電池の電圧が高くなっている間に充電した容量と放電した容量とを相殺させて積算し、積算結果が充電側に振れており且つ積算結果の絶対値が所定容量より大きくなった時点を、充電を終了すべき第2時点として特定する。
つまり、電池電圧が満充電検出開始電圧と同等の電圧を超えている間に充電した容量から放電した容量を減算した容量が所定容量より大きくなった時点が、充電を終了すべき第2時点として特定される。これにより、満充電に近い状態に至るまでに充電した容量とは無関係に、充電を終了すべき第2時点が特定され、第2時点の特定精度が高まる。また、第1時点が特定されない場合であっても、第2時点を特定することができる。
【0020】
本発明にあっては、二次電池に充電可能な総容量として予め設定されている容量、例えば設計容量に対する所定割合の容量を所定容量として設定する。
これにより、変動する容量に依存することなく、充電を終了すべき第2時点が特定される。
【0021】
本発明にあっては、想定される二次電池の使用温度範囲の高/低に応じて、例えば設計容量の40%〜60%の範囲内で所定容量を小/大に設定する。
所定容量が設計容量の40%より小さい場合は、二次電池が常温又は高温で使用される場合であっても第1時点が特定される前に第2時点が特定される虞があり、設計容量の60%より大きい場合は、第1時点が特定されてから第2時点が特定されるまでの遅れ時間が無駄に増大する。
【0022】
本発明にあっては、上述した充電終了電圧特定装置によって二次電池の充電を終了すべき時点が特定される。
これにより、充電した容量及び残容量が実際とは異なる容量として算出された場合であっても、充電を終了すべき時点を的確に特定することが可能な充電終了時点特定装置が、パック電池に適用される。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電池電圧が所定電圧に達するまで容量の積算が保留されており、充電した容量が実際よりも小さな容量として積算されるような場合であってもその影響を受けることがなく、二次電池の電圧が所定電圧を超えた後に充電した容量から放電した容量を減算した容量が所定容量より大きくなった時点が、充電を終了すべき時点として特定される。これにより、電池電圧が所定電圧に達するまでに充電した容量とは無関係に、充電を終了すべき時点が精度よく特定される。
従って、充電した容量及び残容量が実際とは異なる容量として算出された場合であっても、充電を終了すべき時点を的確に特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。
図2】電池セルのうち代表的(平均的)な1セルの充電時間に対するセル電圧及び充電容量を示す特性図である。
図3】第1時点を特定するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
図4】第2時点を特定するCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係るパック電池の構成例を示すブロック図である。図中10はパック電池であり、パック電池10は、リチウムイオン電池からなる電池セル1a,1b,1cをこの順番に直列接続してなる二次電池1と、該二次電池1の温度を検出する温度センサ2とを備える。電池セル1aの正極端子及び電池セル1cの負極端子の夫々が、二次電池1の正極端子及び負極端子に相当する。二次電池1は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の電池であってもよい。また、二次電池1を構成する電池セルの数は3つに限定されず、1つ、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0026】
二次電池1の正極端子は、該二次電池1の充放電電流を遮断する遮断部3を介してプラス(+)端子91に接続されている。二次電池1の負極端子は、該二次電池1の充放電電流を検出するための電流検出抵抗4を介してマイナス(−)端子92と接続されている。パック電池10は、プラス(+)端子91と、マイナス(−)端子92と、該マイナス(−)端子92に抵抗器93を介して接続されたバッテリコネクト端子94とを介してパーソナルコンピュータ(PC)、携帯端末等の電気機器(図示せず)に着脱可能に装着されるようになっている。プラス(+)端子91から、遮断部3、二次電池1及び電流検出抵抗4を介してマイナス(−)端子92に至る経路が、充放電路(以下、充電路ともいう)に相当する。
【0027】
遮断部3は、二次電池1の放電電流及び充電電流の夫々をオン・オフするNチャネル型のMOSFET(スイッチング素子)35及び36と、2端子間にヒューズ31,31が直列に介装された非復帰遮断素子30との直列回路を有し、該直列回路が二次電池1の正極端子及びプラス(+)端子91間に接続されている。MOSFET35,36に代えて、トランジスタ等の他のスイッチング素子を用いてもよい。MOSFET35及び36夫々のゲートには、放電時及び充電時に、後述するAFE6からH(ハイ)レベルのオン信号が与えられる。ヒューズ31,31の接続点と非復帰遮断素子30の他の1端子間には、加熱抵抗32,32の並列回路が介装されている。
【0028】
遮断部3は、また、非復帰遮断素子30の他の1端子にドレインが接続されたNチャネル型のMOSFET33と、該MOSFET33のゲートに出力端子が接続されたOR回路34とを有する。MOSFET33のソースは、二次電池1の負極端子に接続されている。OR回路34の出力端子がH(ハイ)レベルになった場合、MOSFET33のドレイン及びソース間が導通し、加熱抵抗32,32にヒューズ31,31を介して二次電池1の電圧及び/又は外部からの電圧が印加されて、ヒューズ31,31が溶断するようになっている。これにより、充放電路が非可逆的に遮断される。非復帰遮断素子30において充放電路を遮断するものは、ヒューズ31,31に限定されない。
【0029】
電池セル1a,1b,1c夫々の両端は、各電池セルの過電圧状態を検出して検出信号をOR回路34に与える保護回路5の入力端子と、電池セル1a,1b,1cのセル電圧を切り替えてマイクロコンピュータからなる制御部7に与えるアナログフロントエンド(Analogue Front End。以下AFEという)6の入力端子とに接続されている。AFE6の他の入力端子は、電流検出抵抗4の両端に接続されている。
【0030】
保護回路5は、電池セル1a,1b,1c夫々のセル電圧及び基準電圧を比較するコンパレータと、タイマとを各別に備える(何れも図示せず)。基準電圧は、本実施の形態では4.3Vであるが、これに限定されるものではない。各コンパレータの夫々は、電池セル1a,1b,1cのセル電圧が4.3Vより高くなった場合、タイマの計時を開始させる信号を出力する。そして、各タイマが計時する時間が例えば1.5秒を経過した場合、二次電池1の過電圧状態が検出されて、OR回路34の一方の入力端子に過電圧状態の検出信号が与えられる。これにより、遮断部3のヒューズ31,31が溶断されて、二次電池1の充放電路が遮断される。
【0031】
AFE6は、図示しないコンパレータを有し、電流検出抵抗4の両端電圧と、基準電圧との比較結果から二次電池1の過電流を検出した場合、MOSFET35,36にL(ロウ)レベルのオフ信号を与えて充放電電流を遮断させる。AFE6は、また、I/Oポート73から過電圧状態の検出信号を与えられた場合にも、MOSFET35,36にオフ信号を与えるようになっている。
【0032】
制御部7は、CPU70を有し、CPU70は、プログラム等の情報を記憶するROM71、一時的に発生した情報を記憶するRAM72、過電圧状態の検出信号をOR回路34の他方の入力端子及びAFE6に出力すると共にバッテリコネクト端子94の電圧を入力するI/Oポート73、アナログの電圧をデジタルの電圧に変換するA/D変換器74、時間を計時するタイマ75、並びに外部の電気機器と通信するための通信部76と互いにバス接続されている。
【0033】
A/D変換器74には、AFE6から与えられた各電池セル1a,1b,1cの何れかのセル電圧と、温度センサ2から与えられた電圧と、電流検出抵抗4の両端電圧とが与えられておりA/D変換器74は、これらのアナログの電圧をデジタルの電圧に変換する。
通信部76は、外部の電気機器との間でデータを授受するためのシリアルデータ(SDA)端子95と、クロックを受信するためのシリアルクロック(SCL)端子96とに接続されている。通信部76と外部の電気機器との間では、他の通信方式によって通信してもよい。
【0034】
上述したパック電池10の構成のうち、二次電池1、温度センサ2、遮断部3、保護回路5及び抵抗器93を除いた構成が、本発明に係る充電終了時点特定装置に相当する。
【0035】
さて、CPU70は、ROM71に予め格納されている制御プログラムに従って、演算及び入出力等の処理を実行する。例えば、CPU70は、A/D変換器74を介して電流検出抵抗4の電圧を時系列的に取り込み、取り込んだ電圧から換算された充放電電流を積算して二次電池1に充放電した容量と二次電池1の残容量とを積算すると共に残容量のデータを生成する。生成された残容量のデータは、通信部76を介して外部の電気機器に送信される。CPU70は、更に、A/D変換器74を介して温度センサ2の電圧を、例えば250m秒周期で時系列的に取り込み、取り込んだ電圧に基づいて電池温度を検出する。
【0036】
CPU70は、また、AFE6からA/D変換器74に与えられた電池セル1a,1b,1cのセル電圧を250m秒周期で時系列的に検出し、検出したセル電圧のうち最も高いセル電圧を特定してRAM72に記憶する。電圧の検出周期は250m秒に限定されない。
【0037】
本実施の形態では、充電中に最も高いセル電圧が満充電検出開始電圧(請求項2の所定電圧に対応)を超え、且つ、充電電流が所定時間以上満充電検出の閾値電流(所定電流)を下回った場合、CPU70が満充電検出フラグを1にセットする。これにより、二次電池1の充電を終了すべき時点(第1時点)が特定される。CPU70は、更に、最も高いセル電圧が積算開始電圧(請求項1の所定電圧に対応)を超えている間に充電した容量から放電した容量を減算して充放電した容量を残容量とは別に算出し、この充放電した容量が設計容量(又は定格容量、初期容量若しくは学習容量。以下、単に設計容量という)の50%(所定容量)を超えた場合に、満充電検出フラグを1にセットする。これにより、二次電池1の充電を終了すべき時点(第2時点)が特定される。第1時点又は第2時点の何れかが特定された場合、二次電池1の充電が停止される。
【0038】
二次電池1が定電流・定電圧方式で充電される場合、二次電池1の満充電を高い精度で検出すべく第1時点が先に特定される。何らかの原因で第1時点が特定されない場合であっても、二次電池1の安全を確保するために第2時点が特定される。このため、第2時点は、二次電池1が実際に満充電となった後に速やかに特定されるように、判定の閾値が調整される。
【0039】
図2は、電池セル1a,1b,1cのうち代表的(平均的)な1セルの充電時間に対するセル電圧及び充電容量を示す特性図である。図において、横軸は充電時間(分)を表し、縦軸はセル電圧(V)と、電池セル1a,1b,1cのうちの1つに充電した充電容量(mAh)とを表す。図中の実線、長い破線及び短い破線の夫々は、設計容量が約2250mAhであってセル温度が20℃、40℃及び0℃である電池セル1a,1b,1cのうちの1つを、定電流(1.5A)・定電圧(4.2V)にて充電した場合の特性を示す。
【0040】
図2では図示していないが、セル電圧が充電電圧(ここでは4.2V)に達したあたりから充電電流が下に凸の曲線を描いて減少し続ける。そこで、CPU70は、セル電圧が例えば4.0V(所定電圧=満充電検出開始電圧)を超え、且つ充電電流が例えば20秒間(所定時間)以上50mA(所定電流)を下回った時に、第1時点を特定して満充電検出フラグを1にセットする。これにより、二次電池1の満充電が検出される。使用する二次電池1の種類や特定に応じて充電電圧及び満充電検出開始電圧を適宜設定すればよい。
【0041】
次に、第2時点を特定する場合について説明する。セル温度が20℃及び40℃の場合、セル電圧が、第1時点を特定するための満充電検出開始電圧である4.0Vに達した時の充電容量は、図2より1500mAhと読み取れる。電池セル1a,1b,1cの設計容量は2250mAhであるから、この時は設計容量(使用開始初期のFCCに相当)に対して約67%(1500/2250の百分率)まで充電されている。従って、設計容量に対して残り33%の容量を充電することにより、満充電となる。本実施の形態では、7%の余裕を見て残り40%の容量を充電した時点を第2時点として特定する。
【0042】
尚、充放電の回数を重ねることにより、二次電池1が劣化してFCCが設計容量より減少して行くため、第2時点が特定される時までにFCCを超えて充電される容量は、FCCの劣化に応じて増加する傾向となる。従って、第2時点が第1時点より先に特定され易くなる虞はない。
【0043】
一方、セル温度が0℃の場合、セル電圧が4.0Vに達した時の充電容量は、図2より1000mAhと読み取れる。この時は設計容量に対して約44%(1000/2250の百分率)まで充電されている。従って、設計容量に対して残り56%の容量を充電することにより、二次電池1が満充電となる。本実施の形態では、4%の余裕を見て残り60%の容量を充電した時点を第2時点として特定する。
【0044】
以上のことから、低温での使用を重視する場合は、セル電圧が4.0V(満充電検出開始電圧)を超えてから、設計容量に対して更に60%の容量を充電した時点を第2時点として特定すればよい。準低温から準高温で使用する場合は、上述した40%及び60%の間をとって、設計容量に対して更に50%の容量(所定容量)を充電した時点を第2時点として特定するのが妥当である。
【0045】
以下では、上述したパック電池10の制御部7の動作を、それを示すフローチャートを用いて説明する。以下に示す処理は、ROM71に予め格納された制御プログラムに従ってCPU70により実行される。
図3は、第1時点を特定するCPU70の処理手順を示すフローチャートであり、図4は、第2時点を特定するCPU70の処理手順を示すフローチャートである。図3及び図4夫々の処理は、250ms周期で起動されるが、これに限定されるものではない。図3及び図4の処理でRAM72から読み出される最大セル電圧は、前述したように250ms周期でRAM72に書き込まれたものである。
【0046】
図3の処理が起動された場合、CPU70は、A/D変換器74でデジタル値に変換された充放電電流を取り込み(S11)、取り込んだ充放電電流の極性に基づいて、二次電池1が充電中であるか否かを判定する(S12)。充電中ではない場合(S12:NO)、CPU70は、そのまま図3の処理を終了する。充電中である場合(S12:YES)、CPU70は、RAM72から最大セル電圧を読み出し(S13)、読み出した最大セル電圧が満充電検出開始電圧(ここでは4.0V)より高いか否かを判定し(S14)、満充電検出開始電圧より高くない場合(S14:NO)、そのまま図3の処理を終了する。
【0047】
最大セル電圧が満充電検出開始電圧より高い場合(S14:YES)、CPU70は、充電中に取り込んだ充放電電流、即ち充電電流が、満充電検出の閾値(ここでは50mA)より小さいか否かを判定し(S15)、小さくない場合(S15:NO)、そのまま図3の処理を終了する。充電電流が上記閾値より小さい場合(S15:YES)、CPU70は、ここで使用するタイマ75が既に計時中であるか否かを判定し(S16)、計時中ではない場合(S16:NO)、タイマ75によって20秒の計時を開始して(S17)、処理をステップS11に戻す。
【0048】
タイマ75が既に計時中である場合(S16:YES)、CPU70は、タイマ75による計時が終了したか否かを判定し(S18)、終了していない場合(S18:NO)、処理をステップS11に戻す。計時が終了した場合(S18:YES)、CPU70は、RAM72に記憶する満充電検出フラグを1にセットして(S19)、図3の処理を終了する。
【0049】
次に、図4の処理について説明する。図4の処理で参照される充放電量は、250msの時間内に二次電池1に充電された容量から放電された容量を減算した容量であり、図示しない他の処理で算出されてRAM72に記憶されている。
【0050】
図4の処理が起動された場合、CPU70は、RAM72から最大セル電圧を読み出し(S21)、読み出した最大セル電圧が積算開始電圧(例えば4.0V)より高いか否かを判定し(S22)、積算開始電圧より高くない場合(S22:NO)、「充放電した容量」をゼロクリアして(S23)RAM72に記憶する。これにより、最大セル電圧が積算開始電圧を超えるまでは「充放電した容量」の初期化を250ms周期で実行する。その後、CPU70は図4の処理を終了する。
【0051】
最大セル電圧が積算開始電圧より高い場合(S22:YES)、CPU70は、「充放電した容量」に単位時間内の充放電量を加算し(S24)、充放電量が加算された「充放電した容量」が、設計容量の0.5倍(50%)より大きいか否かを判定する(S25)。「充放電した容量」が負の容量として放電側に振れている場合を含めて、設計容量の0.5倍より大きくない場合(S25:NO)、CPU70は、そのまま図4の処理を終了する。設計容量の0.5倍より大きい場合(S25:YES)、CPU70は、RAM72に記憶する満充電検出フラグを1にセットして(S26)、図4の処理を終了する。
【0052】
尚、図4の処理では、二次電池1に充電する容量を正の容量とし、「充放電した容量」が正の容量の場合に充電側に振れている扱いとしたが、二次電池1が放電する容量を正の容量としてもよい。このとき、「充放電した容量」が負の容量の場合に充電側に振れていることになるため、図4のステップS25にて、「充放電した容量」の絶対値が設計容量の0.5倍より大きいか否かを判定すればよい。
【0053】
また、図4の処理では積算開始電圧を満充電検出開始電圧と同じ4.0Vとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、積算開始電圧が、満充電検出開始電圧と±0.1V程度異なる電圧であっても同様の効果を奏する。この場合、「充放電した容量」の積算を開始する時の最大セル電圧が高いほど、二次電池1が満充電に近い状態にあるといえるため、第2時点を特定するための所定容量を小さくすることができ、第2時点が特定されるまでの遅れ時間が減少する。
【0054】
以上のように本実施の形態によれば、250ms周期で検出した最大セル電圧が、例えば4.0Vより高くなっている間に充電した容量と放電した容量とを相殺させて積算し、積算結果が充電側に振れており且つ積算結果の絶対値が所定容量より大きくなった時点を、充電を終了すべき時点として特定する。
つまり、最大セル電圧が4.0Vに達するまで容量の積算が保留されており、最大セル電圧が4.0Vを超えている間に充電した容量から放電した容量を減算した容量が所定容量より大きくなった時点が、充電を終了すべき時点として特定される。これにより、最大セル電圧が4.0Vに達するまでに充電した容量とは無関係に、充電を終了すべき時点が精度よく特定される。
従って、充電した容量及び残容量が実際とは異なる容量として算出された場合であっても、充電を終了すべき時点を的確に特定することが可能となる。
【0055】
また、最大セル電圧が満充電検出開始電圧(4.0V)より高くなった後に充電電流が20秒間以上50mAより低下した時点を、充電を終了すべき第1時点として特定し、最大セル電圧が積算開始電圧(4.0V)よりも高くなっている間に充電した容量と放電した容量とを相殺させて積算し、積算結果が充電側に振れており且つ積算結果の絶対値が所定容量より大きくなった時点を、充電を終了すべき第2時点として特定する。
つまり、最大セル電圧が満充電検出開始電圧と同等の積算開始電圧を超えている間に充電した容量から放電した容量を減算した容量が所定容量より大きくなった時点が、充電を終了すべき第2時点として特定される。
従って、満充電に近い状態に至るまでに充電した容量とは無関係に充電を終了すべき第2時点を特定できるため、第2時点の特定精度を高めることが可能となる。また、何らかの原因で第1時点が特定されない場合であっても、第2時点を特定して二次電池の充電を終了させることが可能となる。
【0056】
更にまた、二次電池に充電可能な総容量として予め設定されている設計容量の50%の容量を所定容量として設定する。
従って、学習容量のような変動する容量に依存することなく、充電を終了すべき第2時点を特定することが可能となる。
【0057】
更にまた、想定される二次電池の使用温度範囲の高/低に応じて、設計容量の40%〜60%の範囲内で所定容量を小/大に設定する。
従って、二次電池が常温〜高温又は低温の何れで使用されるかに応じて、所定容量を適切に設定することが可能となる。
【0058】
更にまた、充電終了電圧特定装置によって二次電池の充電を終了すべき時点が特定される。
従って、充電した容量及び残容量が実際とは異なる容量として算出された場合であっても、充電を終了すべき時点を的確に特定することが可能な充電終了時点特定装置をパック電池に適用することが可能となる。
【0059】
尚、本実施の形態にあっては、セル電圧が4.0V(満充電検出開始電圧)を超えてから第2時点を特定するまでに更に充電する容量(所定容量)を、想定される二次電池1の使用温度に応じて設計容量に対する40%〜60%の範囲内で設定すればよいことを示し、フローチャートでは設計容量の50%の容量としたが、これに限定されるものではない。例えば、検出したセル温度の高/低に応じて所定容量を小/大に変更するようにしてもよい。
【0060】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 二次電池
1a、1b、1c 電池セル
4 電流検出抵抗
6 AFE
7 制御部
10 パック電池
70 CPU
71 ROM
72 RAM
73 I/Oポート
図1
図2
図3
図4