(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)実施形態の概要
電気二重層キャパシタ1のパッケージを構成する凹状容器2(
図1)は、段部4が形成されている。これにより凹状容器2は、凹部13の底部を構成する第1の底面と、段部4の上側の面を構成する第2の底面から成る同一平面にない平行な2つの底面を有している。
第1の底面、第2の底面には、それぞれ、外部に貫通して端子12、10に接続する金属層11、9が形成されている。そして、電極6、5は、それぞれ、金属層11、9の上面に接続している。
【0014】
電極6、5の間にはセパレータ7が設置されており、また、凹部13には、電解質が入れられている。
封口板3は、接合材8によって凹部13の開口部に接合しており、凹部13と封口板3により空洞部(キャビティ)が形成されている。
このように、電極6、5は、何れも凹部13の底面に設置されるため、上方からの作業により電気二重層キャパシタ1を製造することができる。
そのため、製造作業が単純になり、生産性の向上、及び歩留まりの向上を図ることができる。
【0015】
(2)実施形態の詳細
本実施の形態の電子部品を構成する電気化学セルについて図面を参照して説明する。なお、以下では、実施の形態として電気二重層キャパシタを例として説明するが、電子部品を非水電解質電池など、他の種類の電気化学セルとすることも可能である。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る電気二重層キャパシタ1の側面断面図である。電気二重層キャパシタ1は直方体形状を有しており、大きさは、高さが1[mm]程度、幅と長さが5×5[mm]程度である。
【0017】
電気二重層キャパシタ1、段部4が形成された凹部13を有する凹状容器2、封口板3、電極5、電極6、セパレータ7、接合材8、金属層9、端子10、金属層11、端子12、及び、凹部13に封入された電解質などを用いて構成されている。
端子10、12は、表面実装のための端子であり、以下では、端子10、12の側を下方向、封口板3の側を上方向とする。
なお、
図1では、部材の接合関係が分かりやすいように、封口板3と電極5の間、電極5、セパレータ7、電極6の間に間隙を図示しているが、凹部13にこれらの部材を隙間なく詰め込んでもよい。
【0018】
凹状容器2は、底面に段部4が形成された凹部13を有している。
凹状容器2は、例えば、アルミナを用いたセラミックスで構成されており、グリーンシートと呼ばれる柔軟性を有するセラミックスシートを複数枚重ねて焼成して一体化することにより形成される。グリーンシートには、凹部13と段部4の形状に対応する開口部が形成されており(即ち、凹部13に対応するグリーンシートは枠形状の部材となっている)、開口部が重ねられて段部4や凹部13が形成される。
なお、図示しないが、凹状容器2の開口部の端部には、接合材8が接合するためのメタライズ層が形成されている。
【0019】
金属層9は、凹部13の底面に形成されており、凹状容器2の外部に貫通し、凹状容器2の側面を経て、凹状容器2の底面に形成された端子10に電気的に接続している。
金属層11は、段部4の上面に形成されており、凹状容器2の外部に貫通し、凹状容器2の側面を経て、凹状容器2の底面に形成された端子12に電気的に接続している。
【0020】
金属層9、11は、グリーンシートに導体印刷し、凹状容器2を焼成することにより形成されている。金属層9、11の、凹状容器2の外側の側面に形成された部分は、凹状容器2を積層した後、追加形成されたものである。
金属層9、11の導体印刷は、例えば、タングステン(W)などの耐食性があり、凹状容器2の焼成に耐えうる高融点の金属材料を含むインキでスクリーン印刷することにより行われる。特に、タングステンは、融点が高く、酸化しにくく、セラミックス面との適度な密着強度を有し、焼成後も実用的な電気抵抗を有するため、凹部13に形成する金属層9、11として適している。
また、金属層9、11の表面のうち少なくとも電解質に接する部分(電極5、電極6に接合する集電体の部分を含む)には、保護膜(導電性保護層)として、アルミニウム、チタン、ニオブなどの耐食性のよい金属を真空蒸着法やRFスパッタリング法などの厚膜法などで形成してもよい。更に、導電性の樹脂を用いることも可能である。
金属層9、11として使用するタングステンの上に、これらアルミニウム、チタン、ニオブなどの膜や導電性の樹脂を設けると、タングステンが電解質中に溶解するのを防ぐことができる。すなわち、金属層9、11が溶出して品質が低下するのを防ぐことができる。但し、この導電性保護層は、金属層9、11のうち、正極側と接続される側にだけ設けるようにしてもよい。
なお、導電性保護層としては、Au、Cuによる湿式メッキを用いることで形成してもよい。さらにCu合金系メッキやAu合金系メッキにより形成してもよい。
本実施形態及び変形例では、金属層9、11に対する導電性保護層(保護膜)についての図示を省略するが、上記の通り形成することが好ましい。
【0021】
端子10、12は、金属層9、11と共にグリーンシートにタングステンを含むインキなどで導体印刷して焼成した後、その表面に金やニッケルなどをメッキして形成されている。メッキには、電解メッキ、無電解メッキなどがあり、また、真空蒸着などの気相法によって形成してもよい。
これにより、端子10、12の高いハンダ濡れ性が確保され、電気二重層キャパシタ1を基板に良好に表面実装することができる。
なお、本実施の形態では、端子10、12を凹状容器2の外側底面部に設けたが、外側側面部に形成したり、あるいは、外側底面から側面に連続して形成してもよい。
【0022】
電極6は、活性炭を主成分とする電極活物質をシート状に形成して切断することにより形成されており、例えば、天然素材ではヤシガラ、人造材料では、石炭ピッチ、石油ピッチやフェノール系樹脂の炭化物をそれぞれ水蒸気や化学薬品または電気学的に賦活したものが用いられる。
電極6は、凹部13において、金属層11の上面に導電性接着剤などによって接合しており、金属層11の電極6と接合している部分は、集電体として機能している。電極6は、金属層11を介して端子12に電気的に接続している。
【0023】
電極5は電極6と同じ素材によって形成されている。電極5は、段部4の上側の面において、金属層9の表面に一端部分が導電性接着剤などによって接合しており、他端側は、凹部13の内部に張り出している。金属層9の電極5と接合している部分は、集電体として機能している。電極5は、金属層9を介して端子10に電気的に接続している。
【0024】
段部4の高さは、電極6の厚さよりも大きく設定されており、電極6の上側の面と電極5の下側の面は、所定の間隔を隔てて互いに対面している。
このように、2つの集電体(金属層11、9)は、凹部13の底部において平行かつ同一平面にない第1の底面(凹部13の底)と第2の底面(段部4の上側の面)に形成されており、平板状の電極6、5が対峙するようにこれらを保持している。
そのため、電極5と電極6は、両方とも凹部13の同じ側(底側)に集電体が形成されている。
【0025】
セパレータ7は、電極5と電極6の間に設置され、電極5と電極6の接触による短絡を防止する。
セパレータ7の材質としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、変性PEEK、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などの耐熱性樹脂などの表面に親水性を付与した材料から成る不織布、又はガラス繊維を用いることができる。またセルロース系のセパレータを用いてもよい。
セパレータ7は、電極5、6短絡防止機能を備える他、より多くの電解質を含ませておく機能、すなわち、電解質の高い保液機能を備えるいことが好ましい。本実施形のセパレータ7としては、PTFEを使用するが、保液機能の観点からはガラス繊維が最も望ましい。
また、セパレータ7の形状としては、段部4側以外の外周部(3箇所の端部)が上側に湾曲している形状や、段部4側以外の外周部に外周壁が配設された凹形状としてもよい。この場合のセパレータ7は、段部4以外の外周部の内側側面が電極5の側面と対向するように配置される。これにより、電極5と電極6との接触を、より確実に回避することができる。
【0026】
凹部13に封入される電解質は、例えば、PC(プロピレンカーボネート)やSL(スルホラン)などの非水溶媒に(CH3)・(CH4)3N・BF4などの支持塩を溶かした溶液で構成されている。このように本実施の形態では支持塩として液体を用いるが、ゲル状や固体状の電解質を用いることも可能である。封止方法にも依存するが、電解質として、液体の溶媒を用いる場合は、沸点が200℃以上あることが望ましい。更に、封口時に印加された熱によって蒸気圧が上がらないことが望ましい。電解液中に沸点が100℃未満の低沸点の溶媒を添加することはできるが、少なくとも樹脂の融点における蒸気圧が0.2MPa−G以下が望ましい。
電解液を注入する場合、電解液を凹部13に注液後、減圧や加熱や加圧を単独又は組み合わせることによって、電解質を電極の細部にまで含浸させることができる。
【0027】
接合材8は、凹部13の上端の縁部に全周に渡って設置される金属部材であり、封口板3を加圧しながら加熱することにより溶解し、封口板3と凹状容器2を接合する。
具体的には、ローラ電極を封口板3の縁部に適当な圧力で接触させ、通電しながら回転走行させるパラレルシーム溶接を用いることができる。接触抵抗により接合材8が加熱され、加圧と加熱が行われる。パラレルシーム溶接以外にも、レーザによる加熱溶接も可能である。
【0028】
パラレルシーム溶接を行う場合、接合材8と封口板3の相性がよい材料を選択するのが望ましく、例えば、接合材8に電解ニッケル、無電解ニッケルを用いた場合は、封口板3は、コバールに電解ニッケル、又は無電解ニッケルを施したものを用いる。これにより、必要以上に溶接パワーを上げなくて済む。
また、接合材8として、金ろう、銀ろうなどのろう材やハンダ材を用いることも可能である。
【0029】
封口板3は、コバールやニッケルなどで構成された金属製の板材であり、接合材8を介して凹状容器2の上端部分に接合している。これにより、凹部13が封口されて気密な空洞部が形成される。
なお、電極5が封口板3に接触しないように、電極5と封口板3の間に絶縁体のシートを挟んでもよい。
また本実施形態では封口板3に電極5が配設されていないので、電解質との接触を回避するために封口板3の少なくとも凹部13の開口部に対応する部分、好ましくは全面(凹部13側)に保護層を設けるようにしてもよい。この場合の保護層には、電解質による化学的な腐食を防止する機能と、絶縁機能を備える必要がある。
本実施形態では、化学的な腐食を防止するための保護層(第一層目)としてカーボン系の保護層を封口板3に形成する。カーボン系保護層は、スパッタリング、CVD(Chemical Vaper Deposition)、FCVA(Filtered Cathodic Vacuum Arc)などの方法を用いて形成することができる。
そして、絶縁性を確保するために、カーボン系保護層の上に第二層目として、エポキシ系、フッ素系、又はフェノール系の保護層を設けている。この第二層目の保護層は、2流体ノズルまたは1液性のノズルを用いたスプレー、弾性材料を用いた転写、浸漬、又は、圧縮空気を用いてディスペンサー(液体定量吐出装置、例えば、ムサシエンジニアリング製)、モーノポンプ(例えば、ヘイシン社製)、ドクターブレード、バーコーター、刷毛等の塗布により形成する。
また、エポキシ系保護層の材料としてはエポキシ樹脂等が、フッ素系保護層の材料としてはN−メチルピロリドン(NMP)に溶解したPVDF(ポリフッ化ビニリデン)やPTFEの微粉末を界面活性剤に分散させた懸濁液等が、フェノール系保護層の材料としてはフェノール溶液とホルムアルデヒドの混合溶液等が、それぞれ使用される。
また、第二層目の保護層は、電解質と接するため、撥水機能を備えた材質とするのが好ましい。
さらに、封口板3の保護層として、腐食防止機能及び絶縁機能(好ましくは更に撥水機能)を備えた材料、例えば、シリコーン樹脂(ゴム)やフッ素系ゴムを使用することで、保護層を一層で構成してもよい。
更に、電気二重層キャパシタ1では、封口板3を集電体として使用しないため、必ずしも金属である必要はなく、セラミックスや樹脂などの他の種類の材料の単体または複合化した材料を用いることができる。
加えて、電気二重層キャパシタ1は、リフロー時に加熱するため、封口板3として使用する材料は、凹状容器2と熱膨張率が近いことが望ましい。
【0030】
ところで、従来技術では、電極6を正極、電極5を負極としていたが、これは、次の理由による。
即ち、従来技術では、封口板3が集電体を兼ねていたため、電極5が正極の場合、封口板3が溶け出さないように、アルミ、チタン、ニオブ、ステンレスなど、材料の選択の幅が狭まるのに対し、電極5が負極だと、ニッケル、銅、真鍮、亜鉛、スズ、金、ステンレス、タングステン、アルミニウムなど、多くの金属を用いることができるからである。
【0031】
ところが、電気二重層キャパシタ1では、封口板3が集電体として機能しないため、電極5を正極としても封口板3が溶け出さないため、各種の材料を用いることができる。
そこで、電気二重層キャパシタ1では、従来技術のように、電極6を正極、電極5を負極とすることもできるが、電極6を負極、電極5を正極とする。
ところで、電解質として、電解液とその支持塩の組み合わせによって、電気化学的な安定性の表す電位窓の範囲が異なり、蓄電量を向上させるために、電位窓の範囲を上下限域まで電極の電位を変化させてエネルギーを取り出すために、正極電極の表面積を負極電極よりも大きくしたいとの要望があるが、電極5は、段部4の上側の面に形成するため、表面積が電極6よりも大きくなり、この要望も満たすことができる。また、電極の極性が上述の場合の逆であっても成り立つ。
【0032】
以上、電気二重層キャパシタ1の構成の一例について説明したが、各種の変形が可能である。
例えば、凹状容器2をアルミナを主成分とするセラミックスで構成したが、例えば、耐熱性樹脂、ガラス、セラミックスガラスなどの耐熱材料で構成することも可能である。
耐熱樹脂としては、加熱して溶着できることから熱可塑性の樹脂がより望ましく、PTFE、PEEK、LCP(液晶ポリマー)などを用いることができる。凹状容器2の開口部と封口板3を2液性の硬化樹脂とし、加熱により化学反応を促進して接合してもよい。
凹状容器2をガラスやガラスセラミックスで形成する場合は、低融点のガラスやガラスセラミックスに導体印刷により配線を施し、積層した後、低温で焼成する。
【0033】
また、凹状容器2を樹脂で構成する場合、金属層9、11に対応する金属端子をインサート成型したり、あるいは、凹部13に対応する開口部が形成された樹脂製のシート材を金属端子と共に積層することにより凹状容器2を形成することができる。
更に、凹状容器2を樹脂で構成する場合、封口板3を樹脂製とし、圧力を加えながら熱したり、レーザを照射したり、あるいは超音波を加えることにより凹状容器2と封口板3を溶着させることができる。この場合、接合材8が必要なくなる。
【0034】
なお、本実施の形態では、凹部13に段部4を形成することにより電極5を設置する第2の底面を形成したが、例えば、凹部13の側面から凸状に張り出す突起部を形成し、当該突起部の上側の面を第2の底面として電極5を設置してもよい。
また、本実施の形態において、金属層9、金属層11、端子10、端子12、接合材8は、アルミニウム、ステンレススチール、タングステン、ニッケル、銀、又は金から選ばれる金属、又は、炭素を含む樹脂を主体とする材質で構成することが可能である。また、前記の複数の金属材料を積層し、同時に用いることも可能である。
【0035】
以上に説明した実施の形態により次の効果を得ることができる。
(1)封口板3に予め電極を接合する必要がなく、電極5と電極6を凹部13に一方向(上方から)から設置することができる。そのため、電気二重層キャパシタ1の組立作業が凹状容器2に対して全て上方からの作業となり、作業が容易となって生産性が高まる。また、歩留まりも向上する。また、電解質も入れやすくなる。
(2)生産時に扱う部品点数が減り、工程が簡素化されるので生産性が高まる。
(3)封口板3に電極5を接合しないため、金属の溶出に伴う短絡の可能性が低減する。また、電極5を正極としても封口板3を構成する金属が溶け出さないため、電極5を正極、電極6を負極とし、正極の表面積を負極の表面積より大きくすることができる。
(4)凹状容器2を樹脂で構成することができ、この場合、封口板3を樹脂で構成して、凹状容器2と封口板3を溶着させることにより接合することができる。これにより、接合材8が不要となる。また、凹状容器2の材質の選択肢が広がる。
(5)電極5、6を対面するように配置し、大電流を流すことが可能となる。
【0036】
(変形例1)
図2は、変形例1に係る電気二重層キャパシタ1の断面図である。
以下、各種の変形例について説明するが、先に実施の形態で説明した電気二重層キャパシタ1と同じ構成については同じ符号を付して説明する。
【0037】
本変形例に係る凹状容器2では、凹部13の開口部に全周に渡って段部14が設けてある。
一方、封口板3の外形は、凹部13の開口部と同じ形状に形成されており、封口板3は、段部14に接触するまで開口部に挿入されている。封口板3の厚さは、開口部の段部14までの内周壁の高さよりも小さく設定されており、開口部の内周壁が封口板3の上に突出している。
【0038】
封口板3の上面と開口部の内周壁の突出した部分より形成される角部には、全周に渡って接合材31が形成されており、接合材31によって封口板3が開口部に接合している。
接合材31は、接合材8と同様の部材が用いられ、凹部13の開口部に封口板3をはめた後、角部にろう材などを設置して溶融させることにより接合材31が形成される。また、3と14を直接加熱して、溶着しても良い。
本変形例によれば、開口部に対する封口板3の位置決めが容易となり、また、位置決めが正確となるため、電気二重層キャパシタ1の生産性を高めることができる。
【0039】
(変形例2)
図3は、変形例2に係る電気二重層キャパシタ1の断面図である。
本変形例では、上方に突出する突起部15が段部4の全端部に渡って形成されている。
電極5は、突起部15によって段部4の端部で上方に押し上げられ、また、段部4の端部に金属層9が露出していないため、段部4の端部での電極5と電極6の短絡をより効果的に抑制することができる。
【0040】
(変形例3)
図4(a)は、変形例3に係る電気二重層キャパシタ1の断面図である。
本変形例では、電極5の上面に導電体18が設置してある。導電体18は、集電体として機能する。
導電体18は、例えば、アルミニウム箔によって構成され、電極5の上面、即ち、電極5の電極6と対面する面と反対側の面の全体に電気的に接続し、導電体18の段部4側の端部は、金属層9に電気的に接続している。
【0041】
ここで、電極5と導電体18の接合について説明する。
図4(b)は、電極5に導電体18を接合したところを示した図である。
導電体18は、電極5の上側の面に金属層9との接合領域19(接合しろ)を確保してスポット抵抗溶接やスポットレーザ溶接、または、超音波溶接等の各種方法にて接合される。また、導電性接着剤などで電気的な接続を得ることも可能である。
図4(c)は、接合領域19を折り曲げたところを示した図である。接合領域19を折り曲げるため、電極5と導電体18の間には隙間が生じる。
このように折り曲げた接合領域19がスポット抵抗溶接やスポットレーザ溶接、または、超音波溶接等の各種方法にて接合される。また、導電性接着剤などで電気的な接続を得ることも可能である。
本変形例では、金属層9の電極5との接合部分が集電体として機能するうえ、導電体18も集電体として機能するため、電気二重層キャパシタ1の性能を高めることができる。
【0042】
(変形例4)
図5は、変形例4に係る電気二重層キャパシタ1の断面図である。
本変形例では、凹部13の底面から凹状容器2の底部方向に貫通する貫通電極21、22(ビア(VIA))を設けた。
貫通電極21は、円柱形状を有しており、上端は、金属層9に電気的に接続し、下端は端子10に電気的に接続している。
金属層9は、貫通電極21を介して端子10に接続するため、凹状容器2を貫通し、凹状容器2の側面を経由して端子10に至る配線は不要となる。
【0043】
貫通電極22は、材質、形状共に貫通電極21と同様に構成されており、上端は金属層11に電気的に接続し、下端は端子12に電気的に接続している。
金属層11は、貫通電極22を介して端子12に接続するため、凹状容器2を貫通し、凹状容器2の側面を経由して端子12に至る配線は不要となる。
【0044】
実施の形態で説明したように、凹状容器2は、グリーンシートを積層して形成するが、グリーンシートには貫通電極21、22が貫通する孔が予め形成されており、グリーンシートを積層することにより貫通電極21、22を形成するための貫通孔が形成される。
導電性ペーストを注入して固化させたり、あるいは、円柱状の金属を挿入するなどして当該貫通孔に貫通電極21、22を形成される。
【0045】
また、樹脂シートを積層して凹状容器2を形成する場合は、グリーンシートと同様の孔を樹脂シートに形成しておくことにより貫通電極21、22用の貫通孔を形成することができる。
凹状容器2をインサート成形により形成する場合は、金型により貫通電極21、22用の貫通孔を形成することができる。
【0046】
図6の各図は、本変形例に係る電気二重層キャパシタ1の底面を示した図である。
図6(a)は、貫通電極21、22を1本ずつ形成した例である。
貫通電極21は、凹状容器2の底面の中心線上に形成されている。そして、端子10は、凹状容器2の端部の辺に沿って形成された部分と、中央から貫通電極21の方に延びた部分のT字型に形成されている。
このように、凹状容器2の底面の端部から貫通電極21までの全面に端子10を形成せずに、T字型に形成することにより、端子10を形成するための金属の量を節約することができる。貫通電極22も同様に構成されている。
【0047】
図6(b)は、金属層9に対して3つの貫通電極21a、21b、21cを形成し、金属層11に対して3つの貫通電極22a、22b、22cを形成した例である。
貫通電極21a〜21cは、凹状容器2の中心線に対して対称に形成されている。そして、端子10は、凹状容器2の端部の辺に沿って形成された部分と、中央から貫通電極21a〜21cのそれぞれに延びた部分から形成されている。貫通電極22a〜22cも同様である。
【0048】
このように、貫通電極21、22の本数を増やすと、貫通電極21、22を電流が導通する際の抵抗を低減することができる。
以上、貫通電極21、22が1本ずつ、及び3本ずつの場合について説明したが、これは一例であって、任意の本数とすることができる。
【0049】
図6(c)は、
図6(a)の例において、凹部13を上から見たところを示した図である。
金属層9は、段部4の上面において、貫通電極21の上端面と、その周辺に形成されており、金属層11は、凹部13において、貫通電極22の上端面と、その周辺に形成されている。
金属層9、11は、それぞれ、段部4の上面全体、凹部13の底面の全体に形成してもよいが、図のように貫通電極21、22の周辺部の領域に形成すると金属層9、金属層11の製造コストを低減することができる。
【0050】
図6(d)は、
図6(b)の例において、凹部13を上から見たところを示した図である。
金属層9a、9b、9cは、段部4の上面において、貫通電極21a、21b、21cの上端面と、その周辺に形成されており、金属層11a、11b、11cは、凹部13において、貫通電極22a、22b、22cの上端面と、その周辺に形成されている。
【0051】
また、端子10、12の極性を視認できるように端子10、12の形状を不対称とするように構成することもできる。
例えば、
図7(a)の例では、端子10の貫通電極21の延びた部分の幅よりも、端子12の貫通電極22に延びた部分の幅を広くすることにより端子10、12を識別できるようにしてある。
また、
図7(b)の例では、3つの貫通電極21a、21b、21cに対し、2つの貫通電極22a、22bを形成し、貫通電極の本数の差によって端子10、12を識別できるようにしてある。
【0052】
図7(c)は、
図7(a)の例において、凹部13を上から見たところを示した図である。
金属層9は、段部4の上面において、貫通電極21の上端面と、その周辺に形成されており、金属層11は、凹部13において、貫通電極22の上端面と、その周辺に形成されている。
金属層11は、金属層9よりも大きく形成されており、金属層9、11の形状が不対称であるため極性を容易に視認できる。
【0053】
図7(d)は、
図7(b)の例において、凹部13を上から見たところを示した図である。
金属層9a、9b、9cは、段部4の上面において、貫通電極21a、21b、21cの上端面と、その周辺に形成されており、金属層11a、11bは、凹部13において、貫通電極22a、22bの上端面と、その周辺に形成されている。
金属層9a、9b、9cと金属層11a、11bの個数が異なるため、極性を容易に視認することができる。
【0054】
(変形例5)
図8(a)は、変形例5に係る電気二重層キャパシタ1の断面図である。
電気二重層キャパシタ1は、変形例4で説明した貫通電極21、22と同様の貫通電極25、26が形成されている。
貫通電極25、26は、凹状容器2の底面側(端子10、12に接続する側)の断面積よりも凹部13の底面側(金属層9、11に接続する側)の断面積が大きくなっている。
【0055】
このように貫通電極25、26の断面積を設定すると、貫通電極25、26の抜け落ちを防止することができる。
製造工程で接合材8を溶融して封口板3と凹状容器2を接合する際に、加熱によって電解質の蒸気圧が上昇し、貫通電極25、26に押し出す外力が作用するが、貫通電極25、26を用いると、効果的に抜け落ちを防止することができる。
なお、貫通電極21、22を用いて金属層9と端子10、及び金属層11と端子12の電気的な接続を図るため、
図8(b)に示したように、端子10、金属層11を凹状容器2の端部まで形成しなくてもよい。
【0056】
(変形例6)
図9は、変形例6に係る電気二重層キャパシタの断面図である。
樹脂製のシート材を積層して凹状容器2を形成する場合、金属層9、11を金属板によって形成することが可能である。
この場合、凹部13の形状に対応して開口部が形成されたシート材を積層し、その際に、金属層9、11を構成する金属板も積層する。
これらシート材と金属板を積層した後、加熱してこれらを熱融着すると凹状容器2が形成される。
そして、金属層9、11の端部を曲げて凹状容器2の底面に固定すると、金属層9、11の端部によって、端子10、12が形成される。
また、金属板を型に固定して、当該型に樹脂を注入するインサート成型によって凹状容器2を形成することも可能である。
【0057】
以上に説明した、実施の形態、及び変形例により、次の構成を得ることができる。
凹部13で封口板3で封口して構成される空洞部において、凹部13の底部は、第1の底面として機能し、段部4の上側の面は、第1の底面と同一平面にない第2の底面として機能しているので、凹状容器2と封口板3からなる容器は、第1の底面と、前記第1の底面と同一平面にない第2の底面が形成された空洞部を有する容器として機能している。
金属層11は、前記第1の底面に形成され、外部に貫通する第1の導電体として機能し、金属層9は、前記第2の底面に形成され、外部に貫通する第2の導電体として機能している。
電極6は、前記空洞部で前記第1の導電体に設置された第1の電極として機能し、電極5は、前記空洞部で前記第2の導電体に設置され、前記第1の電極と所定距離を隔てて対面する第2の電極として機能している。
凹部13に封入した電解質は、前記第1の電極と前記第2の電極に接する電解質として機能している。
【0058】
凹部13は、段部4を有し、段部4の上側の面が第2の底面として機能しているため、前記空洞部の底面には段差を有する段部が形成されており、前記第2の底面は、前記段部の上側の面で構成されている。
【0059】
金属層9は、端子10に電気的に接続し、金属層11は、端子12に電気的に接続しているため、前記第1の導電体と前記第2の導電体は、それぞれ、前記容器の底面に形成された第1の接続端子と第2の接続端子と接続している。
【0060】
変形例3では、電極5の上側の面の全体に集電体として導電体18が設置してあり、電極5の上側の面は、電極6に対面する面(下側の面)と反対側の面に想到するため、導電体18は、前記第2の電極の、前記第1の電極に対面する面の裏側の面に設置され、前記第2の導電体に接続する第3の導電体として機能している。
【0061】
また、電極5は、封口板3に接合しないため、電極5を正極、電極6を負極とすることができ、電極5の表面積を電極6より大きくできるため、前記第1の電極と、前記第2の電極は、それぞれ、負極と正極であり、前記第2の電極は、前記第1の電極よりも表面積を大きくすることができる。
【0062】
変形例2で段部4の縁に形成された突起部15は、前記段部の端部の辺に形成された前記容器の上方向に突起する凸部として機能している。
【0063】
実施の形態などでは、金属層9、金属層11が封口板3で封口された凹部13の側面を外部に貫通しているため、前記第1の導電体と前記第2の導電体は、前記空洞部の側面を貫通している。
【0064】
変形例4などでは、貫通電極21が段部4の上側の面(第2の底面)から凹状容器2の底面へ貫通し、貫通電極22が凹部13の底(第1の底面)から凹状容器2の底面へ貫通するため、前記第1の導電体は、前記第1の底面を貫通し、前記第2の導電体は、前記第2の底面を貫通している。
【0065】
また、電気二重層キャパシタ1は、例えば、携帯電話のメモリやクロックのバックアップ電源として使用することができる。
この場合、携帯電話は、主電源の電池を装着すると同時に電気二重層キャパシタ1を充電しておき、電池交換時や主電源の電圧が低下した場合に、電気二重層キャパシタ1に蓄積された電荷を放電してメモリに電力を供給したり、クロック等の機能を保持する。
そのため、当該携帯電話は、電気二重層キャパシタ1で構成された電子部品と、主電源の電池を装着すると同時に前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、メモリやクロックなどの所定の機能を発揮する他の電子部品と、蓄電した電荷を放電してメモリやクロックに電力を供給するなど、前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段を備えた電子装置として機能している。
【0066】
また、電気二重層キャパシタ1の製造方法は、まず、凹部13を有する凹状容器2を形成するため、第1の底面と、前記第1の底面と同一平面にない第2の底面が形成された凹部を有する容器を形成する容器形成ステップを有している。
次に、凹状容器2と共に、金属層9、11や貫通電極21、22を形成することができ、また、凹状容器2を形成した後に、貫通孔に21、22を形成することもできるため、前記容器形成ステップと共に、あるいは、前記容器製造ステップの後に、前記第1の底面から外部に貫通する第1の導電体と、前記第2の底面から外部に貫通する第2の導電体を形成する導電体形成ステップを有している。
次に、凹状容器2の開口部から電極6を金属層11に設置するため、前記凹部の開口部から前記第1の導電体に第1の電極を設置する第1の電極設置ステップを有している。
次に、凹状容器2の開口部から、電極6と所定距離を隔てて対面するように電極5を金属層9に設置するため、前記凹部の開口部から前記第2の導電体に、前記第1の電極と所定距離を隔てて対面するように第2の電極を設置する第2の電極設置ステップを有している。
なお、電極6と電極5の間にセパレータ7を設置する場合は、セパレータ7を電極6の上面に設置した後、電極5を取り付ける。
次に、凹部13に電解質を供給するため、前記第1の電極と前記第2の電極に接する電解質を供給する電解質供給ステップを有している。
次に、凹状容器2の開口部を封口板3で封口するため、前記開口部を封口部材で封口するステップを有している。
【0067】
本実施形態及びその変形例として、電子部品を構成する電気化学セルについて電気二重層キャパシタを例として説明したが、上述したように、電子部品を非水電解質電池など、他の種類の電気化学セルとすることも可能である。
例えば、負極(電極5)に、金属リチウムによって活性化された酸化ケイ素(50wt%)と導電助剤(40wt%)とポリアクリル酸系の結着剤(20wt%)で構成された電極シートを用い、正極(電極6)に、リチウム−マンガン−酸素の元素がスピネル型の結晶構造を有する活物質(85wt%)と導電助剤(10wt%)とPTFE系の結着剤(5wt%)で構成された電極シートを用い、ガラス繊維で出来たセパレーターと、1MのLiN(SO2CF3)2をPCに溶解して電解液で構成される電池が可能である。ここで、正極と負極の大きさは、長さ1mm×幅1.5mm×厚み0.2mmとすることができる。
更に、上述の正極活物質以外にも、Li4Ti5O12、Li4Mn5O12、LiCoO2など用いることもできる。また、負極の活物質として、Li−Si−O、Li−ALなどを用いることもできる。 加えて、PCにLiBF4を1M溶解した電解液などを用いることで、リチウムイオン電池を構成することができる。この時、各活物資に、導電助剤や結着剤を併用できる。
この場合、携帯電話は、主電源の電池を装着すると同時に電気二重層キャパシタ1を充電しておき、電池交換時や主電源の電圧が低下した場合に、電気二重層キャパシタ1に蓄積された電荷を放電してメモリに電力を供給したり、クロック等の機能を保持する。
【0068】
また、電子部品、電子装置の構成として、以下の各構成a〜Iを採用することも可能である。
(1)構成a「 第1の底面と、前記第1の底面と同一平面にない第2の底面が形成された空洞部を有する容器と、
前記第1の底面に形成され、外部に貫通する第1の導電体と、
前記第2の底面に形成され、外部に貫通する第2の導電体と、
前記空洞部で前記第1の導電体に設置された第1の電極と、
前記空洞部で前記第2の導電体に設置され、前記第1の電極と所定距離を隔てて対面する第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極に接する電解質と、
を具備したことを特徴とする電子部品。」
(2)構成b「前記空洞部の底面には段差を有する段部が形成されており、
前記第2の底面は、前記段部の上側の面で構成されていることを特徴とする構成aに記載の電子部品。」
(3)構成c「 前記第1の導電体と前記第2の導電体は、それぞれ、前記容器の底面に形成された第1の接続端子と第2の接続端子と接続していることを特徴とする構成a、又は構成bに記載の電子部品。」
(4)構成d「 前記第2の電極の、前記第1の電極に対面する面の裏側の面に設置され、前記第2の導電体に接続する第3の導電体を具備することを特徴とする構成a、構成b、又は構成cに記載の電子部品。」
(5)構成e「 前記第1の電極と、前記第2の電極は、それぞれ、負極と正極であり、前記第2の電極は、前記第1の電極よりも表面積が大きいことを特徴とする構成aから構成dまでのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品。」
(6)構成f「 前記段部の端部の辺には、前記容器の上方向に突起する凸部が形成されていることを特徴とする構成aから構成eまでのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品。」
(7)構成g「 前記第1の導電体と前記第2の導電体は、前記空洞部の側面を貫通していることを特徴とする構成aから構成fまでのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品。」
(8)構成h「 前記第1の導電体は、前記第1の底面を貫通し、前記第2の導電体は、前記第2の底面を貫通していることを特徴とする構成aから構成fまでのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品。」
(9)構成I「 構成aから構成hまでのうちの何れか1つの請求項に記載の電子部品と、
前記電子部品に蓄電する蓄電手段と、
所定の機能を発揮する他の電子部品と、
前記蓄電した電荷を用いて前記他の電子部品に電力を供給する電力供給手段と、
を具備したことを特徴とする電子装置。」